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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1233600
審判番号 不服2008-27802  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2011-03-10 
事件の表示 平成11年特許願第202023号「健康体感装置および健康体感装置システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 6日出願公開、特開2001- 29503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年7月15日の出願であって、平成20年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月26日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成22年7月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月4日付けで意見書の提出及び手続補正がなされた。
さらに、当審において同年10月18日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対して、同年12月20日付けで意見書の提出及び手続補正がなされた。

第2 平成22年12月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年12月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
本件補正は、特許法第17条の2第1項第3号に規定する補正であるから、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かについて検討する。

1.本件補正の内容
本件補正は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項2を、
「【請求項2】
体感者に対して運動を与える複数の健康体感装置をスタートからゴールまでの間に配置した健康体感装置システムであって、
前記体感者の体力指数の演算を行う体力指数演算手段を備え、
前記複数の健康体感装置における各健康体感装置は、前記体感者が前記各健康体感装置を通過するために複数種類の運動のいずれか一つの運動を行わなければならないように設計され、前記体感者の入場時刻と退場時刻とを記録する時刻記録手段を有し、
前記体力指数演算手段は、前記複数の健康体感装置における各健康体感装置ごとに前記時刻記録手段によって記録された前記入場時刻および退場時刻ならびに予め定められた係数に基づいて、前記体感者の体力指数の演算を行い、
前記健康体感装置の一つは、
リング状の壁内に設けた平面空間内に複数のボールを配置するに際して、前記壁の所定箇所に設けた入り口から出口に向かって前記体感者が進行するとき、前記複数のボールを押しのけて移動させることにより前記体感者の通路ができるように前記複数のボールを配置した、
ことを特徴とする健康体感装置システム。」(平成22年10月4日付けの手続補正書参照)から、新たな請求項1として、
「【請求項1】
体感者に対して運動を与える複数の健康体感装置をスタートからゴールまでの間に配置した健康体感装置システムであって、
前記体感者の体力指数の演算を行う体力指数演算手段を備え、
前記複数の健康体感装置における各健康体感装置は、前記体感者が前記各健康体感装置を通過するために複数種類の運動のいずれか一つの運動を行わなければならないように設計され、前記体感者の入場時刻と退場時刻とを記録する時刻記録手段を有し、
前記体力指数演算手段は、前記複数の健康体感装置における各健康体感装置ごとに前記時刻記録手段によって記録された前記入場時刻および退場時刻ならびに予め定められた係数に基づいて、前記体感者の体力指数の演算を行い、
前記健康体感装置の一つは、
リング状の壁内に設けた平面空間内にFRPで製作された柔軟性のあるカラーボールを複数個敷き詰めることにより、前記壁の所定箇所に設けた入り口から出口に向かって前記体感者が進行するとき、前記カラーボールをかき分けながら前記出口を探すように前記複数個のカラーボールを配置した、
ことを特徴とする健康体感装置システム。」
に変更する補正事項を含む。

2.判断
本件補正により、補正前の請求項2に係る発明を特定する「複数のボールを押しのけて移動させる」という事項が、補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を特定する「カラーボールをかき分け(る)」という事項に変更された。
補正後の「カラーボールをかき分け(る)」という事項が、補正前の「複数のボールを押しのけて移動させる」という事項を限定するものでないことは明らかである。
してみると、本件補正は、特許請求の範囲を変更するものであり、特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明)を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.付言
以上のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、念のため、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

平成22年7月28日付けの拒絶理由通知で示した、本願出願前に頒布された刊行物1である特開昭54-154637号公報には、
「体感者に対して運動を与える複数の健康体感装置をスタートからゴールまでの間に配置した健康体感装置システムであって、
前記体感者の体力指数の演算を行う体力指数演算手段を備え、
前記体感者の入場時刻と退場時刻とを記録する時刻記録手段を有し、
前記複数の健康体感装置における各健康体感装置は、前記体感者が前記各健康体感装置を通過するために複数種類の運動のいずれか一つの運動を行わなければならないように設計され、
前記体力指数演算手段は、前記複数の健康体感装置における前記時刻記録手段によって記録された前記入場時刻および退場時刻ならびに予め定められた係数に基づいて、前記体感者の体力指数の演算を行う健康体感装置システム。」が記載されている。
複数種類の運動要素(本件補正発明の「健康体感装置」に相当)を備えるアスレチック運動施設において、体感者が適宜の要素を取捨選択して用いることは、ごく普通に行われていることであるから、体感者の利便性を考慮し、刊行物1に記載の発明において、アスレテイツクフイールド装置の入場時刻と退場時刻の記録及び体力指数の演算に代えて、個々の健康体感装置に対する入場時刻と退場時刻の記録及び体力指数の演算を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
また、体感装置として「リング状の壁内に設けた平面空間内に柔軟性のあるカラーボールを複数個敷き詰めることにより、体感者が移動するとき、前記カラーボールをかき分けながら移動するように前記複数個のカラーボールを配置」することは、例えば実願昭55-94757号(実開昭57-17686号)のマイクロフィルムに見られるとおり、周知の技術である。さらに、柔軟性のあるカラーボールをFRPで作成することは、当該技術分野において、FRPが素材として慣用されていることを考慮すれば、当業者が適宜なし得る事項である。
してみると、上記刊行物1に記載の発明の健康体感装置として、当該周知技術を用いることにより、本件補正発明を構成することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本件補正発明全体の効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第3 本願発明
平成22年12月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年10月4日付けの手続補正(以下「本願補正」という。)で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、上記のとおりのものである。

1.拒絶理由通知
当審による平成22年10月18日付けの最後の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「 理 由
平成22年10月4日受付けの手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



1.(略)

2.補正により、請求項2及び4には、「前記健康体感装置の一つは、リング状の壁内に設けた平面空間内に複数のボールを配置するに際して、前記壁の所定箇所に設けた入り口から出口に向かって前記体感者が進行するとき、前記複数のボールを押しのけて移動させることにより前記体感者の通路ができるように前記複数のボールを配置した」という事項が付加された。
上記事項によれば、リング状の壁内にはボールを移動させる空間が存在することになるが、そのような事項は、当初明細書等には記載されておらず(当初明細書には「柔軟性のあるカラーボールを・・・敷き詰めたものである。」(【0047】)と記載されている)、かつ、当初明細書等の記載から自明な事項とも認められない。
また、上記事項の「ボール」は、当初明細書等に記載されているFRP製の柔軟性のある柔らかいボール以外にも、例えば硬いボールや鉄製の重量のあるボール等も含むことから、上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。

なお、本願の各請求項に係る発明は、上記のとおり、当初明細書等の記載の範囲内のものではないことが明らかであるから、進歩性の判断は行っていないが、請求人がその補正の根拠と主張する本願明細書に記載の各健康体感装置は、周知のものである。(例えば、請求項3については特開平6-312031号公報又は特開平10-5445号公報、請求項4については特開平10-66785号公報又は実願昭55-94757号(実開昭57-17686号)のマイクロフィルムをそれぞれ参照)」

2.拒絶理由の適否の判断
請求項2に「前記健康体感装置の一つは、リング状の壁内に設けた平面空間内に複数のボールを配置するに際して、前記壁の所定箇所に設けた入り口から出口に向かって前記体感者が進行するとき、前記複数のボールを押しのけて移動させることにより前記体感者の通路ができるように前記複数のボールを配置した」という事項を付加する補正の根拠として、請求人は「本願明細書の段落[0047],[0048]および図33,図34に記載されている「エアフォレスト」と呼ぶ健康体感装置に基づいて」いる旨主張している。(平成22年10月4日付けの意見書参照)
しかしながら、上記補正事項の、特に「前記複数のボールを押しのけて移動させる」という事項に基づけば、本願発明は、「体感者が硬いボールを次々に移動させながら通路を形成し、体感者がそこを通って出口に向かって進行する」ような事項を実施例として含むことになる。
しかしながら、請求人の主張する上記箇所に、そのような実施例が記載されていないことは明らかであり、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)全体の記載を総合的に参酌しても、そのような実施例は、記載も示唆もされていない。また、そのような実施例が、当業者に自明なものであるとも認められない。

3.結論
したがって、当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。
よって、当該補正は、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないなから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第49条第1項第1号の規定により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-07 
結審通知日 2011-01-11 
審決日 2011-01-24 
出願番号 特願平11-202023
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A63B)
P 1 8・ 55- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 今関 雅子
北川 清伸
発明の名称 健康体感装置および健康体感装置システム  
代理人 永井 冬紀  

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