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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1234040
審判番号 不服2008-18906  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 特願2002- 98896「磁気テープ切り出しシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月20日出願公開、特開2002-367335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年4月1日(国内優先権主張平成13年4月2日)の出願であって、平成19年7月11日付けの拒絶理由通知に対する応答期間内の平成19年9月12日付けで手続補正がなされたが、同20年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月21日付けで手続補正がなされた。
その後、平成22年8月25日付けで前置報告の内容に基づき審尋がなされ、同年11月1日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年8月21日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]

平成20年8月21日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成20年8月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、特許請求の範囲については本件補正前の
(a)「【請求項1】
磁気テープ原反の欠陥部分の情報を記憶した外部記憶手段と、磁気テープを前記原反から繰り出してリールに巻回する巻取り装置と、前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く排出手段と、が互いに通信可能にネットワーク接続され、
前記排出手段は、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報に基づいて、前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く磁気テープ切出しシステム。
【請求項2】
前記磁気テープ原反の磁気テープにサーボ信号を書き込むとともに、書き込んだサーボ信号を読み取って適正に書き込みが行われたかを検査するサーボ信号書き込み装置を備え、
前記サーボ信号書き込み装置が前記欠陥情報を前記外部記憶手段に伝送して記録させる請求項1記載の磁気テープ切り出しシステム。
【請求項3】
前記欠陥情報は、前記巻回が終了したリールをそれぞれ識別する識別番号のうち、欠陥部分があるリールに対する識別番号を含む請求項1または請求項2記載の磁気テープ切り出しシステム。
【請求項4】
前記欠陥情報は、前記磁気テープ原反の磁気テープを長手方向に複数ブロックに区分し、該ブロックの番号で前記磁気テープの始端または終端からの長さの中で欠陥部分があることを表した位置情報を含む請求項1?請求項3のいずれか1項記載の磁気テープ切り出しシステム。」

(b)
「【請求項1】
磁気テープ原反の欠陥部分の情報を記憶した外部記憶手段と、磁気テープを前記原反から繰り出してリールに巻回する巻取り装置と、前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く排出手段と、が互いに通信可能にネットワーク接続され、
前記巻取り装置で、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報によらずに所定の取り数分を全て巻回した後、
前記排出手段で、巻回を全て終了した複数のリールのうち、欠陥部分の含まれるリールを前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて取り除く磁気テープ切り出しシステム。
【請求項2】
前記磁気テープ原反の磁気テープにサーボ信号を書き込むとともに、書き込んだサーボ信号を読み取って適正に書き込みが行われたかを検査するサーボ信号書き込み装置を備え、
前記サーボ信号書き込み装置が前記欠陥情報を前記外部記憶手段に伝送して記録させる請求項1記載の磁気テープ切り出しシステム。
【請求項3】
前記欠陥情報は、前記巻回が終了したリールをそれぞれ識別する識別番号のうち、欠陥部分があるリールに対する識別番号を含む請求項1または請求項2記載の磁気テープ切り出しシステム。
【請求項4】
前記欠陥情報は、前記磁気テープ原反の磁気テープを長手方向に複数ブロックに区分し、該ブロックの番号で前記磁気テープの始端または終端からの長さの中で欠陥部分があることを表した位置情報を含む請求項1?請求項3のいずれか1項記載の磁気テープ切り出しシステム。」
とするものである。

本件補正は補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記排出手段は、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報に基づいて、前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く」を「前記巻取り装置で、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報によらずに所定の取り数分を全て巻回した後、前記排出手段で、巻回を全て終了した複数のリールのうち、欠陥部分の含まれるリールを前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて取り除く」と限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかものであるか(成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5号に規定する要件を満たすか)否かを、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)について検討する。

2.引用例
拒絶査定時に引用された、本願の優先権主張の日前である平成7年2月7日に頒布された刊行物である特開平7-37362号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0004】製造直後の原反テープは、数十メートルないし数キロメートルの長さをもち、これがリールに巻かれている。このようなテープは、切出し装置により所定の長さに切断され、最終製品に加工されることが多い。」

(2)「【0007】
【発明の開示】この発明の目的は、切出し工程において、リールに巻かれたテープから不良部位を有するテープ部分のみを廃棄し、正常部分を最終製品に利用し、コストの軽減と資源の有効利用を図ることができるテープ切出し装置および方法を提供することにある。
【0008】この発明によるテープ切出し装置は、第1のリールに巻回されたテープを巻き戻しながら第2のリールに予め定められた第1の所定長ずつ巻き取ることによりテープを切出す装置であり、第1のリールに巻回されたテープの不良部位の位置データを記憶した記憶手段、第1のリールから第2のリールに巻き取られるテープの行路に設けられた、テープを切断する切断手段、第1のリールから読み戻されるテープの長さを計測する計測手段、上記記憶手段に記憶された不良部位の位置データに基づいて第1のリールから第2のリールに巻き取るべき上記第1の所定長の範囲内に不良部位が存在するかどうかを判定する手段、上記判定手段によって不良部位が存在しないと判定されたときに、第2のリールを駆動して第1のリールのテープを第2のリールに巻き取らせ、上記測長手段によって計測された長さが上記第1の所定長になったときに、上記切断手段によってテープを切断するように制御する第1の制御手段、および上記判定手段によって不良部位が存在すると判定されたときに、第1のリールからテープを第2の所定長巻き戻したのち上記切断手段によって切断するように制御する第2の制御手段を備えている。」

(3)「【0013】このようにして、この発明によれば、不良部位を有するテープ部分のみを除去できるので、テープをリールごと廃棄することなく、正常部分を最終製品として利用することが可能になり、コストの軽減と資源の有効利用を図ることができる。」

(4)「【0017】
【実施例】図1は、磁気テープ切出しシステムを示すものである。このシステムは、磁気テープの不良部位を検査し、その後、不良部位を排除しながら、不良部位のないテープ部分のみを所定の長さずつカセット内に巻き取り、最終製品であるカセットテープを製造するものである。
【0018】磁気テープ切出しシステムは、大きく分けると、磁気テープ検査機1、計測用コンピュータ2、記憶装置3、磁気テープ・ワインダ4、および制御用コンピュータ5から構成されている。」

(5)「【0030】制御用コンピュータ5は、磁気テープ・ワインダ4を制御するために、計測用コンピュータ2と通信することにより、または記憶装置3に直接アクセスすることにより、記憶装置3にある検査結果を読み取る。このとき、制御用コンピュータ5は、テープ・リール8の識別データに基づき、記憶装置3内の検査結果を特定する。識別データは、センサ(図示略)により検出され、コンピュータ5に入力されるか、またはオペレータによりコンピュータ5に入力される。 」

上記摘示事項(1)?(5)及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「第1のリールに巻回された磁気テープの不良部位の位置データを記憶した記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された不良部位の位置データに基づいて第1のリールから第2のリールに巻き取るべき所定長の範囲内に不良部位が存在するかどうかを判定する判定手段と、上記判定手段によって不良部位が存在しないと判定されたときに、第2のリールを駆動して第1のリールの磁気テープを所定長第2のリールに巻き取らせ、不良部位が存在すると判定されたときに、第1のリールから磁気テープを所定量巻き戻したのち切断手段によって切断する磁気テープ・ワインダとが、通信され、
不良部位を有するテープを除去する磁気テープ切出しシステム。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成7年4月21日に頒布された刊行物である特開平7-105660号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(6)「【0017】図3は、巻き取り工程で使用される巻き取り装置14を示したものである。巻き取り装置14は、磁気テープ1を、供給リールから、巻き取りリール15に向けて走行させる。巻き取りリール15は、図示しない空のカートリッジに内蔵されたリールである。16は、タコローラーである。17は、識別信号再生ヘッドである。18は、制御回路である。タコローラー17は、供給リール2から、巻き取りリール15に向けて走行する磁気テープ1の長さを測定する。識別信号再生ヘッド17は、磁気テープ1に記録された欠陥識別信号を再生する。制御回路18は、識別信号再生ヘッド17から、欠陥識別信号が再生されると、その識別信号に対応した検査区間に、磁気テープ1の欠陥があると判定する。制御回路18は、欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリール15を、不良のカートリッジとして、巻き取り中に、識別信号が検出されにかった他のカートリッジと区別して排出する。」

3.対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「第1のリールに巻回された磁気テープ」は、原反テープのことであるから(摘示事項(1))、本願補正発明の「磁気テープ原反」に相当する。
(2)引用発明の「不良部位」「位置データ」及び「記憶手段」は、本願補正発明の「欠陥部分」「情報」及び「外部記憶手段」にそれぞれ相当する。
(3)引用発明の「磁気テープ・ワインダ」は、第1のリールから第2のリールに磁気テープを巻き取るものであるから、本願補正発明の「磁気テープを前記原反から繰り出してリールに巻回する」「巻取り装置」に相当する。
(4)引用発明の「記憶手段」と「磁気テープ・ワインダ」とは、通信されるものであるから、「通信可能にネットワーク接続」されているものである。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
「磁気テープ原反の欠陥部分の情報を記憶した外部記憶手段と、磁気テープを前記原反から繰り出してリールに巻回する巻取り装置と、が互いに通信可能にネットワーク接続され(る)、
磁気テープ切り出しシステム。」

そして、次の各点で相違する。

<相違点>
(a)本願補正発明は、「前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く排出手段」を備えているのに対し、引用発明は、そのような排出手段を備えていない点。

(b)本願補正発明は、「外部記憶手段」「巻取り装置」及び「排出手段」が互いに通信可能にネットワーク接続されているのに対し、引用発明は、排出手段がネットワーク接続されていない点。

(c)本願補正発明は、「前記巻取り装置で、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報によらずに所定の取り数分を全て巻回した後、前記排出手段で、巻回を全て終了した複数のリールのうち、欠陥部分の含まれるリールを前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて取り除く」ものであるのに対し、引用発明は、そのような巻取り装置と排出手段の構成ではない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

相違点(a)について
磁気テープ切り出し装置に関して、引用発明及び本願補正発明と同一の技術分野に属する引用例2には、磁気テープに欠陥がある区間が巻き取られたリールを不良カートリッジとして、他のカートリッジと区別して排出する技術が記載されている。
そうすると、引用発明において、不良部位が存在しないと判定されたときに、第2のリールを駆動して第1のリールの磁気テープを所定長第2のリールに巻き取らせ、不良部位が存在すると判定されたときに、第1のリールから磁気テープを所定量巻き戻して切断する構成に代えて、引用例2の上記技術を適用して、「前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く排出手段」を備える構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。

相違点(b)について
同じく上記引用例2には、「制御回路18は、欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリール15を、不良のカートリッジとして、巻き取り中に、識別信号が検出されにかった他のカートリッジと区別して排出する」と記載され、「排出手段」である「制御回路」は、欠陥の含まれる磁気テープが巻き取られたリールを排出するものであり、「テープ巻き取り」と「カートリッジ排出」とは独立した機能といえる。
そうすると、引用発明において、「外部記憶手段」「巻取り装置」及び「排出手段」を互いに通信可能にネットワーク接続することは当業者が適宜なし得ることである。

相違点(c)について
相違点(a)で検討したように、「前記巻取り装置で、前記外部記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報によらずに巻回した後、前記排出手段で、巻回を終了したリールのうち、欠陥部分の含まれるリールを前記外部記憶手段の欠陥情報に基づいて取り除く」ことは当業者が容易に想到できたものであり、その際、巻き取られたリール毎に排出手段で外部記憶手段の欠陥情報に基づいて欠陥部分の含まれるリールを取り除くようにするか、巻取り装置で所定の取り数分を全て巻回した後、排出手段で巻回を全て終了した複数のリールのうち欠陥部分の含まれるリールを外部記憶手段の欠陥情報に基づいて取り除く構成とするかは選択的事項にすぎないものである。

そして上記各相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用例1及び2から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定違反するので、同法159条第1項で読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成20年8月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年9月12日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1.」の補正前の「請求項1」として記載されたとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成7年4月21日に頒布された刊行物である特開平7-105660号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気テープカートリッジを生産する工程に利用して有用なテープ巻き取り方法に関するもので、特にテープの欠陥を検査する検査工程と、検査の終了したテープを空のカートリッジに巻取る巻き取り工程の両方を含むテープの巻き取り方法に関するものである。」

(2)「【0017】図3は、巻き取り工程で使用される巻き取り装置14を示したものである。巻き取り装置14は、磁気テープ1を、供給リールから、巻き取りリール15に向けて走行させる。巻き取りリール15は、図示しない空のカートリッジに内蔵されたリールである。16は、タコローラーである。17は、識別信号再生ヘッドである。18は、制御回路である。タコローラー17は、供給リール2から、巻き取りリール15に向けて走行する磁気テープ1の長さを測定する。識別信号再生ヘッド17は、磁気テープ1に記録された欠陥識別信号を再生する。制御回路18は、識別信号再生ヘッド17から、欠陥識別信号が再生されると、その識別信号に対応した検査区間に、磁気テープ1の欠陥があると判定する。制御回路18は、欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリール15を、不良のカートリッジとして、巻き取り中に、識別信号が検出されにかった他のカートリッジと区別して排出する。」

(3)「【0020】
【発明の効果】本発明を実施したテープ巻き取り方法によれば、本発明を実施する検査装置や巻き取り装置が、長尺の磁気テープの位置の管理をする必要がなく、簡単な装置で発明を実施することが可能となる。また、磁気テープの位置の管理が簡素化されるため、巻き取り装置の巻き取り速度を高速にすることが可能となり、磁気テープカートリッジの生産効率を上げることができる。」

上記摘示事項(1)?(3)及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「磁気テープを供給リールから巻き取りリールに向けて走行させる巻き取り装置であって、
磁気テープに記録された欠陥識別信号に対応した検査区間に磁気テープの欠陥があると判定されると、欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリールを排出する制御回路を有する巻き取り装置。」

また、拒絶査定時に引用された、本願の優先権主張の日前である平成7年2月7日に頒布された刊行物である特開平7-37362号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(4)「【0008】この発明によるテープ切出し装置は、第1のリールに巻回されたテープを巻き戻しながら第2のリールに予め定められた第1の所定長ずつ巻き取ることによりテープを切出す装置であり、第1のリールに巻回されたテープの不良部位の位置データを記憶した記憶手段、第1のリールから第2のリールに巻き取られるテープの行路に設けられた、テープを切断する切断手段、第1のリールから読み戻されるテープの長さを計測する計測手段、上記記憶手段に記憶された不良部位の位置データに基づいて第1のリールから第2のリールに巻き取るべき上記第1の所定長の範囲内に不良部位が存在するかどうかを判定する手段、上記判定手段によって不良部位が存在しないと判定されたときに、第2のリールを駆動して第1のリールのテープを第2のリールに巻き取らせ、上記測長手段によって計測された長さが上記第1の所定長になったときに、上記切断手段によってテープを切断するように制御する第1の制御手段、および上記判定手段によって不良部位が存在すると判定されたときに、第1のリールからテープを第2の所定長巻き戻したのち上記切断手段によって切断するように制御する第2の制御手段を備えている。」

(5)「【0030】制御用コンピュータ5は、磁気テープ・ワインダ4を制御するために、計測用コンピュータ2と通信することにより、または記憶装置3に直接アクセスすることにより、記憶装置3にある検査結果を読み取る。このとき、制御用コンピュータ5は、テープ・リール8の識別データに基づき、記憶装置3内の検査結果を特定する。識別データは、センサ(図示略)により検出され、コンピュータ5に入力されるか、またはオペレータによりコンピュータ5に入力される。」

3.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「供給リール」の「磁気テープ」は、本願発明の「磁気テープ原反」に相当する。
(2)引用発明の「欠陥識別信号」は、本願発明の「欠陥部分の情報」に相当する。
(3)引用発明の「欠陥識別信号」は、磁気テープに記録されていることから、磁気テープは欠陥識別信号を記憶する「記憶手段」ともいえるから、本願発明の「外部記憶手段」とは、「記憶手段」である点で共通する。
(4)引用発明の「巻き取り装置」は、「磁気テープを供給リールから巻き取りリールに向けて走行させ」て巻き取るものであるから、本願発明の「巻取り装置」に相当する。
(5)引用発明の「制御回路」は、「欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリールを排出する」ものであるから、本願発明の「前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く」「排出手段」に相当し、そして、引用発明と本願発明とは、「前記排出手段は、前記」「記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報に基づいて、前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く」点でも共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

「磁気テープ原反の欠陥部分の情報を記憶した記憶手段と、磁気テープを前記原反から繰り出してリールに巻回する巻取り装置と、前記記憶手段の欠陥情報に基づいて前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く排出手段と、
前記排出手段は、前記記憶手段に記憶された前記磁気テープ原反の欠陥情報に基づいて、前記巻回が終了したリールのうち前記欠陥部分が含まれるものを取り除く磁気テープ切出しシステム。」

そして、次の各点で相違する。

<相違点>
(a)「記憶手段」について、本願発明は、「外部記憶手段」であるのに対し、引用発明は、磁気テープ(磁気テープ原反)自体である点。

(b)本願発明は、「外部記憶手段」「巻取り装置」及び「排出手段」が「互いに通信可能にネットワーク接続され」ているのに対し、引用発明は、そのようなネットワーク接続がなされていない点。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。

相違点(a)について
磁気テープ切り出し装置に関して、引用発明及び本願発明と同一の技術分野に属する引用例2には、テープの不良部位の位置データを外部記憶手段に記憶する技術が記載されている。
そうすると、引用発明において、欠陥識別信号を記憶するものとして磁気テープ自体とすることに代えて、引用例2の上記技術を採用して、「外部記憶手段」とすることは当業者が容易に想到できたものである。

相違点(b)について
引用例1には、「制御回路18は、欠陥の含まれる検査区間が巻き取られた巻き取りリール15を、不良のカートリッジとして、巻き取り中に、識別信号が検出されにかった他のカートリッジと区別して排出する」と記載され、「排出手段」である「制御回路」は、欠陥の含まれる磁気テープが巻き取られたリールを排出するものであり、「テープ巻き取り」と「カートリッジ排出」とは独立した機能といえる。
また、引用例2には、外部記憶手段と磁気テープ・ワインダ(巻き取り装置)とが通信されることが記載されている。
そうすると、引用発明において、「外部記憶手段」「巻取り装置」及び「排出手段」が「互いに通信可能にネットワーク接続され」る構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例から当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2011-01-11 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-02-01 
出願番号 特願2002-98896(P2002-98896)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 園 充松尾 淳一  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 早川 学
井上 信一
発明の名称 磁気テープ切り出しシステム  
代理人 高松 猛  
代理人 矢澤 清純  

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