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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1234393
審判番号 不服2009-5140  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-09 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 特願2000-589110号「女性の尿失禁を軽減するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月29日国際公開、WO00/36996、平成14年10月 2日国内公表、特表2002-532190号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年12月21日(パリ条約による優先権主張 1998年12月21日 米国)を国際出願日とする国際出願であって、平成20年4月24日付け拒絶理由通知に対し、平成20年10月27日に意見書が提出されたが、平成20年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年3月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本件出願の各請求項に係る発明は、特許法第184条の8第2項により、同法第17条の2第1項の規定により補正がなされたものとみなされる、平成13年6月21日付けで提出された翻訳文による特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1には、つぎのとおり記載されている。

「【請求項1】 (a)初期断面積及び挿入端及び後部端を有し、繊維で製造した非吸収性材料、及び膨張すると尿失禁用用具の前記断面積を増大させることができる圧縮された弾性部材を含む非吸収性尿失禁用用具を調達する段階と、
(b)前記挿入端が最初に入るようにして、左右の側壁、前壁及び後壁で構成された内周を有する膣管を有する女性の膣に、前記壁の少なくとも2つに接触させて前記尿失禁用用具を挿入する段階と、
(c)前記挿入端が、女性の尿道管の一部である女性の尿道括約筋に隣接して位置合わせされるように、前記尿失禁用用具を前記膣管の長さの中央1/3に位置決めし、前記尿失禁用用具が女性の恥骨結合と協働して前記尿道管を間に挟む段階と、
(d)前記尿失禁用用具の少なくとも一部の断面積が増大し、前記膣管の4つ全ての内壁に接触して、前記尿道管に対する支持的バックドロップをもたらすように、前記弾性部材を前記膣管内で膨張させる段階と、
(e)前記尿道管が前記尿失禁用用具と前記恥骨結合の間でそれ自身を圧縮されることにより、尿の漏れを制限する段階と、
を含むことを特徴とする女性の尿失禁を軽減するための方法。」
(以下、この発明を「本願発明」という。)

3.判断
本願明細書には次のような記載がある。
「(技術分野)
本発明は、女性の尿失禁を軽減する方法に関する。詳細には、本発明は、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減する方法に関する。」(【0001】)
「本発明の一般的な目的は、女性の尿失禁を軽減するための方法を提供することである。詳細には、本発明は、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための方法に関する。
本発明の更に詳細な目的は、非吸収性用具が、女性の膣内に配置されて女性の尿道を支持し、腹圧性尿失禁に伴うことが多い不随意の尿の漏れを防ぐ、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための方法を提供することである。」(【0005】)

以上の記載及び前記請求項1の記載からみて、本願発明は女性の尿失禁を治療する方法に該当するものであるから、特許法第29条第1項柱書に規定されている「産業上利用することができる発明」には該当しない。

なお、請求人は、平成21年3月9日付けの審判請求書を補正する、平成21年4月3日付けの手続補正書により、「本件発明は、医師に介入されずに、すなわち、処方箋がなくても一般的に購入可能な尿失禁用用具を、購入者自身が購入後、使用に際してどのように取り扱うかについての使用方法に関するものです。」「本件発明は……医師により失禁用具が挿入されるものではなく、失禁用具を購入した者が、それを取り扱うための取扱い方法に関するものといえますから、審査基準において定義されている医師等による行為に相当するものではありません。」(2頁5?7行、2頁14?17行)と、主張しているが、前記請求項1の記載からみて、本願発明は医師等により当該方法を行うことを排除するものではないから、上記請求人の主張は採用できない。

また、仮に、請求人の主張どおり、本願発明が医師等が行うことを排除するものであったとしても、女性の尿失禁を治療する方法に該当するものであることは上記したとおりであるから、特許法第29条第1項柱書に規定されている「産業上利用することができる発明」には該当しないとの結論は変わらない。

なお、特許・実用新案審査基準は、「第II部第1章産業上利用することができる発明」の「2.1『産業上利用することのできる発明』」に該当しないものの類型」として、「2.1.1人間を手術、治療又は診断する方法」としており、その要件として方法発明の主体は規定していない。上記「2.1.1人間を手術、治療又は診断する方法」の説明の冒頭に、「人間を手術、治療又は診断する方法は、通常、医師(医師の指示を受けた者を含む。以下同じ。)が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法であって、いわゆる『医療行為』と言われているものである。」と記載しているが、ここでいう「医師(医師の指示を受けた者を含む。)」は、「通常」想定され得る主体を例示したに過ぎず、方法発明の主体が医師(医師の指示を受けた者を含む。)である発明だけが「人間を手術、治療又は診断する方法」であるということを意味しているものでない。

さらに、請求人は、同手続補正書により、「本件発明の尿失禁を軽減するための方法は、失禁そのものの原因、例えば内蔵(ママ)疾患などの病気を治療するものではなく、意識的ではない失禁が発生する場合であっても、失禁用具を適切な位置に挿入しておくことで、失禁による不快感を低減させるものですから、本発明は、失禁そのものの治療又は診断を実施する方法に該当するものではない」(2頁22?25行)と、主張している。
しかしながら、治療行為には、疾患そのものを治療する場合だけでなく、疾患による痛み、不快感を低減させる場合も含まれることは、医師による鎮痛剤の処方等の例を挙げるまでもなく、明らかであって、請求人の上記主張も採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないものであるので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-20 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-09 
出願番号 特願2000-589110(P2000-589110)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 内山 隆史
増沢 誠一
発明の名称 女性の尿失禁を軽減するための方法  
代理人 大島 陽一  

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