• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1234425
審判番号 不服2010-2315  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-03 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 特願2002-340924「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-173765〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月25日の出願であって、平成21年10月26日付け(11月4日発送) で拒絶査定され、これに対し、平成22年2月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成22年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
3.補正の内容
平成22年2月3日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
遊技制御を総括的に行うメイン制御装置と、
前記メイン制御装置から送信されたコマンドに応じて表示手段による表示態様を制御する表示制御装置とを有し、
前記メイン制御装置が、始動口への打球通過の検出を契機に当り外れの抽選を行い、前記当り外れの抽選結果に応じた変動パターンコマンドを前記表示制御装置に対して送信し、
前記変動パターンコマンドに対応する変動時間が経過した時に前記表示制御装置に対して確定コマンドを送信し、
前記表示制御装置が、前記変動パターンコマンドを受け取ると図柄の変動を開始し、前記確定コマンドを受け取ると前記表示手段において前記図柄の変動を停止して前記抽選結果を表示し、表示された前記抽選結果が当りを表す特定表示態様となると、前記メイン制御装置が特典を与える一方、前記表示された特定表示態様がそのうちの1つの特別表示態様であると、前記特典を与えると共に前記当り外れに関わる抽選確率を遊技者に有利となる確率に変更する遊技機において、

前記メイン制御装置は、前記当り外れの抽選を行う毎に、現在の遊技状態が前記当り外れに関わる抽選確率が遊技者に有利な高確率である確変中であるか否かを判別し、
前記確変中であると判別した場合は、前記確変中であることを表す確変中状態コマンドを前記表示制御装置に対して送信する一方、
前記確変中でないと判別した場合は、前記確変中でないことを表す非確変状態コマンドを前記表示制御装置に対して送信する構成とされ、

前記表示制御装置は、状態コマンドを受けると、前記状態コマンドが前記確変中状態コマンドである場合には、前記確変中である旨を前記表示手段に表示する一方、
前記状態コマンドが前記非確変状態コマンドである場合には、前記非確変である旨の表示を行わない構成とされた、ことを特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成21年4月3日付け手続補正による補正)の請求項1における「(メイン制御装置が表示制御装置に送信する)コマンド」が、「(図柄の変動を開始させる)変動パターンコマンド」と「(図柄の変動を停止して抽選結果を表示させる)確定コマンド」であること、
「(メイン制御装置が当り外れの抽選を行う毎に表示制御装置に送信する)状態コマンド」が、「確変中であることを表す確変中状態コマンド」と「確変中でないことを表す非確変状態コマンド」であること、
「状態コマンドが遊技者に有利となる確率状態である場合にその旨を表示手段に表示する」を「確変中状態コマンドである場合には、確変中である旨を前記表示手段に表示し、非確変状態コマンドである場合には、非確変である旨の表示を行わない」と、それぞれ、コマンドの種類及びコマンドの種類による表示態様という技術事項を加えたものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

4.引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開平9-225099号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【0022】次に、本実施形態の要部を構成する特別可変表示装置30の構成について説明する。特別可変表示装置30は、前記遊技盤1の表面に取り付けられる取付基板31を有し、該取付基板31には、長方形状の窓枠部32が形成されている。そして、この窓枠部32の後方には、左・中・右の各特別図柄を個々に可変表示し得る特別図柄表示部33a?33cを有するLCD表示器33が臨設されている。また、窓枠部32の上方には、普通図柄表示器34、普通図柄記憶表示LED35、特別図柄記憶表示LED36、及び飾りLED37が設けられ、窓枠部32の左右側方には、各飾りLED38・39が設けられている。一方、窓枠部32の下方には、各飾りLED40・41が設けられている。」

イ.「【0023】また、上記LCD表示器33の特別図柄表示部33a?33cに表示される左・中・右の各特別図柄は、図8に示すように、それぞれ「0?9・F・X・G・P・R」順の15種類から構成されており、これら左・中・右の各図柄には、WCRND_L・C・Rの各ランダム数が対応して設けられている。大当り図柄の組合せは、左・中・右の各図柄が同一図柄にて揃った組合せであり、この組合せはWCRND_Lの抽出値に基づいて決定される。なお、この大当り図柄のうち「3」「5」「7」のいずれか(以下、これを確変突入図柄という)で揃った大当り図柄は、前述した特定遊技状態の発生に加えて特別遊技状態としての確率変動(以下、これを確変ともいう)を発生し、「4」「6」「8」のいずれか(以下、これを確変終了図柄といい、この確変終了図柄及び確変突入図柄以外を通常図柄という)で揃った大当り図柄は、確変突入図柄での大当りによって発生した確率変動を終了制御するようになっている。
【0024】ところで、上記した確変突入図柄、確変終了図柄、及び通常図柄は、変動時及び停止時いずれの場合においても図柄色が「赤」「青」「白」と異なって設定されている。具体的には、図9(A)に例示すように、各特別図柄表示部33a?33cに導出される表示結果が「674」となる場合、左特別図柄表示部33aの通常図柄「6」が白色となり、中特別図柄表示部33bの確変突入図柄「7」が赤色(同図中には左下斜線で図示)となり、右特別図柄表示部33cの確変終了図柄「4」が青色(同図中には右下斜線で図示)となる。また、確変終了図柄からなる大当り図柄(「444」「666」「888」)は、確変時にのみ確変を終了制御し、それ以外の通常時には通常図柄からなる大当り図柄と同一の機能となる。このため、通常時における確変終了図柄は、通常図柄と同一の「白」に色調が変更されるものである。なお、本実施形態では、図柄色の異なった設定として図柄自体を「赤」「青」「白」に色分けしているが、色調及び構成はこれに限定するものではない。例えば、図柄の背景色を異ならせたり(図9(B)参照)、図柄の一部分の色を異ならせる(図9(C)参照)ことで図柄種類(確変突入図柄、確変終了図柄、通常図柄)毎の異なった色調設定を行ってもよい。また、確変終了図柄は、他の種類の図柄の色調と異ならせることを前提として確変時と通常時とで同一の色調に統一しても構わない。」

ウ.「【0025】以上、特別可変表示装置30を含むパチンコ遊技機の遊技盤1の構成について説明してきたが、それらの遊技装置は、図2及び図3に示す遊技制御回路によって制御される。図2及び図3は、遊技制御回路をブロック構成で示す回路図であり、MPU、ROM、RAM、入出力回路を含む基本回路42によって制御されている。しかして、基本回路42は、入力回路43を介して始動玉検出器8、特定玉検出器12、入賞玉検出器13、及び通過玉検出器19からの検出信号が入力され、アドレスデコード回路44から基本回路42にチップセレクト信号が与えられる。また、電源投入時に初期リセット回路45から基本回路42にリセット信号が与えられ、所定時間毎に定期リセット回路46から基本回路42に定期リセット信号が与えられる。
【0026】一方、基本回路42からは、以下の装置及び回路に制御信号が与えられる。即ち、LCD回路47を介してLCD表示器33(図2中には、LCD表示装置と記載)に表示制御信号が与えられ、LED回路48を介して普通図柄表示器34、特別図柄記憶表示LED36、普通図柄記憶表示LED35、特定玉入賞表示LED17、及び各飾りLED15・37?41に表示駆動信号が与えられ、ソレノイド回路49を介して各ソレノイド6・10に駆動信号が与えられ、ランプ回路50を介して風車ランプ21a、袖ランプ22a、及びサイドランプ23aに表示制御信号が与えられ、音声合成回路51及び音量増幅回路52を介してスピーカ26に音声信号が与えられる。なお、ランプ回路50からは各種のランプ制御データが出力されることで、上記した構成部材以外のランプを表示制御するようになっている。さらに、基本回路42は、情報出力回路53を介して外部(ホールコンピュータや呼び出しランプ等)に情報コモン、有効始動情報、大当り情報、及び時短変動情報を出力し、また、賞球個数信号出力回路54を介して外部に各種の賞球個数信号を出力している。なお、上記した装置や回路には、電源回路55から各種の電圧を有する電力が供給されている。
【0027】また、上記したLCD回路47とLCD表示器33との間には、図4に示すように、LCD制御回路60が設けられている。このLCD制御回路60は、LCD回路47側からの信号を入力し演算処理を行うCPU61と、該CPU61に接続されて制御の記憶を行う制御ROM62及び画像表示制御を行うVDP63と、該VDP63に接続された第1・第2の各ROM64・65(図4中には、それぞれROM1、ROM2と記載)及びVRAM66と、VDP63からの信号を入力してLCD表示器33側に信号を出力し液晶駆動制御を行うLCDドライバー67と、から構成されている。そして、LCD制御回路60は、VDP63がCPU61からの指令信号に応答して、各ROM64・65から圧縮データを読み出し、この読み出したデータをVRAM66に展開して表示データを作成し、VDP63を介してLCDドライバー67に制御信号を送るようになっている。
【0028】また、上記基本回路42からLCD回路47への表示制御信号(INT信号)は、図5(A)(B)に示すように、DATA1(1バイト目)のヘッダーコマンド、DATA2(2バイト目)のメインステータス、DATA3(3バイト目)の左停止図柄指定、DATA4(4バイト目)の右停止図柄指定、DATA5(5バイト目)の中停止図柄指定、DATA6(6バイト目)のリーチ周回数及びリーチ移動図柄数指定、DATA7(7バイト目)の遊技状態指定、DATA8(8バイト目)の図柄色指定、及びDATA9(9バイト目)のチェックサム、からなるコマンドブロックフォーマットが9バイトのデータである。なお、コマンドデータ1?9は、各々、8ビットにて構成され、その送信間隔は、2mSに設定されている。また、各コマンドデータ1?9の具体的な送信内容は、図6及び図7に示す通りである。このうち、コマンドデータ2(メインステータス)が2xHのときは、ゲーム表示のコマンドを行い、具体的には、20Hで全図柄変動停止、21Hでリール左停止、22Hでリール右停止、23Hでリール中停止、24Hでリーチ1でのリール中停止、25Hでリーチ2でのリール中停止、26Hで全図柄停止表示となっている。コマンドデータ7(遊技状態指定)については、0xHのときは通常時遊技状態表示のコマンドを行い、00Hで通常時(低確率時)、01Hで確変時(高確率時)となっている。また、1xHのときはリーチ時遊技状態表示のコマンドを行い、10Hで通常図柄リーチ時表示、11Hで確変突入図柄リーチ時表示、12Hで確変終了図柄リーチ時表示となっている。また、2xHのときは大当り時遊技状態表示のコマンドを行い、20Hで通常図柄大当り時表示、21Hで確変突入図柄大当り時表示、22Hで確変終了図柄大当り時表示となっている。コマンドデータ8(図柄色指定)については、0xHからExHまでが個々に図柄「0」?「R」に対応しており、それぞれx0Hのとき通常図柄の白色、x1Hのとき確変突入図柄の赤色、x2Hのとき確変終了図柄の青色と図柄の色調(表示態様)を指定するようになっている。なお、コマンドデータ1(コマンドヘッダー)は、データ(表示制御信号)送信の旨を送信先に報知するための固定データであり、コマンドデータ9(チェックサム)は、データ(表示制御信号)の送信完了をチェックするためのデータである。なお、従来では、図柄形状データの中に色調を指示するデータが含まれていて、図柄の色調を替えるには図柄形状データごと作り替えなければならなかった。これに対して、本実施形態では、前述したように通常時では「4」「6」「8」の特別図柄を「白」(0xH)の色調で指定していたものを確変時ではDATA8の色指定データを替えるだけで簡単に「青」(x2H)の色調に切り替えている。また、同様に、ゲーム仕様を変更する場合でも、DATA8の色指定を替えるだけなのでプログラム変更が簡単に行え、ひいては商品開発の自由度を増大するようになっている。」

エ.「【0030】そして、図10(B)に示すように、WCRND1から抽出された値が「3」であり大当りと判定されると、WCRND_L(0?14)のデータにより大当りとなる図柄が決定され、この大当り図柄が特別可変表示装置30の各特別図柄表示部33a?33cに表示される。一方、WCRND1で「3」以外の値が抽出されて外れと判定されると、WCRND_L・C・Rからの各抽出値に対応する図柄が外れ図柄として特別可変表示装置30の各特別図柄表示部33a?33cに表示される。なお、WCRND_L・C・Rからの各抽出値が偶然にも大当り図柄と一致した場合には、WCRND_Rのデータに「1」を加算して外れ図柄にして表示するものである。
【0031】特別図柄の変動は図13及び図14のタイムチャートに示すようになっている。なお、左・中・右の各図柄の変動は、図11(A)の一覧表図に示すパターンに基づいて行われる。変動パターンAは、一定の速度で変動(16.7msに1図柄変動)するパターンであり、変動パターンBは、除々に減速して停止(3図柄変動)するパターンであり、変動パターンCは、除々に減速するパターンであり、変動パターンDは、低速の一定速度で変動(333.3msに1図柄変動)するパターンであり、変動パターンEは、除々に減速して停止(1図柄変動)するパターンであり、変動パターンFは、リーチ該当図柄のうち確変突入図柄の前後1図柄を含む3図柄に対して超低速の一定速度で変動(500.0msに1図柄変動)するパターンである。また、図13及び図14の各タイムチャート中に記載の条件1?3、及び※1?3は、図11(B)及び図12の各一覧表図に示すものである。なお、※3の一覧表図は、ハズレ時及び大当り時毎にリーチ種類を決定するための各条件1?3とWCRND_ACTの抽出値との振り分け表図である。
【0032】先ず、図13において、普通可変入賞球装置5に打玉が入賞し始動玉検出器8が始動信号を導出すると、その始動信号の立ち上がり時に、WCRND1から数値を抽出してこれを格納する。その後、始動信号の立ち上がりより0.002秒後には、WCRND_L・C・Rから数値を抽出すると共に、格納したWCRND1の読み出し及び判定を行う。なお、このとき、リーチとなる場合は、WCRND_ACTから数値を抽出する。そして、始動信号の立ち上がりより0.004秒後に、左・中・右の全図柄を変動パターンAにて変動させる。その後、左図柄は、6.260秒間変動パターンAにて変動された後、0.420秒間変動パターンBにて変動されて停止表示される。また、右図柄は、6.680秒間変動パターンAにて変動された後、0.420秒間変動パターンBにて変動されて停止表示される。なお、このような左・右の各図柄の変動パターンAにおいて、※2のとき、即ち始動口入賞による記憶が3以上ある場合には、変動時間がそれぞれ4.760秒及び5.180秒に短縮される。」

オ.「【0035】次に、前記特別図柄の当り確率が確率変動する動作を図15(B)に基づいて説明する。図15(B)において、特別可変表示装置30(同図中には、条件装置と記載)の各特別図柄表示部33a?33cに「3」「5」「7」のいずれかの確変突入図柄で揃った大当り図柄が導出されると、これに基づいて確変制御が実行される。確率変動の具体的な制御は、確変突入図柄での大当りによる特定遊技状態(条件装置の作動)の終了を契機に当り確率を高確率に変動させ、その後、次の特定遊技状態が発生するとこれを契機に当り確率を通常確率に戻す。そして、このような特定遊技状態の終了及び発生を契機とした当り確率の変動を繰り返し行うことで確変制御が行われる。また、この確率変動の終了制御は、「4」「6」「8」のいずれかの確変終了図柄で大当りすることで行われる。即ち、確変中の大当りが確変突入図柄あるいは通常図柄のときはその大当り後に再度確変制御が繰り返し行われる一方、確変中の大当りが確変終了図柄のときはその大当りの発生と同時に確変制御が終了される。なお、このような確変制御は、特別図柄と同様に後で詳述する普通図柄に対しても行われるものである。」

5.引用例1記載の発明の認定
記載事項ア.によれば、引用例1が特別図柄を可変表示させるLCD表示器33からなる特別可変表示装置30を備えた遊技機(パチンコ遊技機)に関する文献であることが分かる。

記載事項イ.には、特別可変表示装置30に表示される特別図柄には、確変突入図柄、確変終了図柄、及び通常図柄の3種類が存在し、変動時及び停止時いずれの場合においても図柄色が「赤」「青」「白」とそれぞれ異なって設定されているが、確変終了図柄に関しては、確変時にのみ確変を終了制御し、それ以外の通常時には通常図柄からなる大当り図柄と同一の機能を有するため、通常時における確変終了図柄は、通常図柄と同一の「白」に色調が変更される点が記載されている。

記載事項ウ.には、遊技制御回路である基本回路42は、遊技機の各所から信号が与えられ、また遊技機の各所に制御信号を与えるものであって、特に表示制御に関しては該基本回路42からLCD回路47に対して表示制御信号を入力し、該表示制御信号をLCD制御回路60によって演算処理することで、LCD表示器33で行われる特別図柄可変表示を駆動制御し、該表示制御信号は具体的には、20Hで全図柄変動表示(引用例1の発明の詳細な説明には「20Hで全図柄変動停止」と記載されているが、図6及び当該箇所の前後の技術的なつながりからみて、上記のとおり「20Hで全図柄変動表示」の誤記と認める。)、26Hで全図柄停止表示のコマンドデータである点が記載されている。

記載事項エ.には、普通可変入賞球装置5に打玉が入賞し始動玉検出器8が始動信号を導出すると、その始動信号の立ち上がり時に、WCRND1から数値を抽出し、該WCRND1から抽出された値が「3」であり大当りと判定される点が記載されている。

記載事項オ.には、特別可変表示装置30に確変突入図柄が揃った大当り図柄が導出されると、確変制御が実行され、特定遊技状態の終了を契機に当り確率を高確率に変動させ、確変中の大当りが確変突入図柄あるいは通常図柄のときはその大当り後に再度確変制御が繰り返し行われる一方、確変中の大当りが確変終了図柄のときはその大当りの発生と同時に確変制御が終了される点が記載されている。

以上を整理すると、引用例1には、
「遊技制御を行う基本回路42と、
前記基本回路42から送信されたコマンドデータに応じて特別可変表示装置30のLCD表示器33において特別図柄可変表示を制御するLCD回路47及びLCD制御回路60とを有し、
前記基本回路42が、普通可変入賞球装置5に打玉が入賞したことの検出を契機として、WCRND1から乱数を抽出し、当たり外れを判定し、確変突入図柄、確変終了図柄、及び通常図柄からなる特別図柄の組み合わせを、該判定結果に応じて決定し、全図柄変動表示コマンドデータ20H及び全図柄停止表示コマンドデータ26HをLCD回路47及びLCD制御回路60に対して送信し、
前記LCD回路47及びLCD制御回路60は、前記全図柄変動表示コマンドデータ20Hが入力されると特別図柄の可変表示を開始し、前記全図柄停止表示コマンドデータ26Hが入力されると特別可変表示装置30において前記特別図柄の可変表示を停止して、前記特別図柄の組み合わせを表示し、表示された該判定結果に応じた特別図柄の組み合わせが、大当りを表す表示態様になると、特定遊技状態になる一方、前記大当りを表す表示態様が確変突入図柄が揃ったものであれば、当該特定遊技状態が終了後に当り確率を高確率に変動する遊技機において、
前記基本回路42は、当たり外れを判定し、該判定結果に応じた特別図柄の組み合わせを決定する際に、確変図柄は赤に、通常図柄は白で表示するように制御し、確変終了図柄に関しては、当り確率が高確率であれば青色で表示するためのコマンドデータを前記LCD回路47に送信する一方、当り確率が高確率でなければ、確変終了図柄を通常図柄と同じ白色で表示するためのコマンドデータを前記LCD回路47に送信する構成とされ、
前記LCD回路47及びLCD制御回路60は、確変終了図柄の表示色を指定するコマンドデータに応じた表示を行う遊技機。」なる発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

6.本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明における「基本回路42」は、本願補正発明における「メイン制御装置」に相当し、
以下同様に「コマンドデータ」は、「コマンド」に、
「特別可変表示装置30」は、「表示手段」に、
「LCD回路47及びLCD制御回路60」は「表示制御装置」に、
「普通可変入賞球装置5に打玉が入賞したことの検出」は「始動口への打球通過の検出」に、
「特別図柄」は「図柄」に、
「特定遊技状態」は、「特典」に
「当り確率」は、「当り外れに関わる抽選確率」に、それぞれ相当する。
ここで、引用発明における「全図柄変動表示コマンドデータ20H」及び「全図柄停止表示コマンドデータ26H」は、図柄の可変表示を開始させ、停止させるコマンドデータであるから、それぞれ本願補正発明の「変動パターンコマンド」及び「確定コマンド」に相当する。
引用発明における「WCRND1から乱数を抽出し、当たり外れを判定し」は、本願補正発明の「当り外れの抽選」が、1つずつ循環的に更新される大当り判定用カウンタから、所定のタイミングでカウンタ値を取得して、そのカウンタ値によって当り外れを決定しているものであるから、本願補正発明の「当り外れの抽選」に相当する。
引用発明における「(特別図柄の組み合わせが)大当りを表す表示態様」は、それが表示されることにより特定遊技状態となるから、本願補正発明の「特別表示態様」に相当する。
引用発明における「確変突入図柄」は、この確変突入図柄が揃って表示されることで特定遊技状態となり、該特定遊技状態終了後に当り確率を高確率に変動する機能を有しているから、本願補正発明の「特別表示態様」を構成する図柄といえ、この確変突入図柄が揃って表示される特別図柄の組み合わせは、本願補正発明の「特別表示態様」に相当する。

以上のことより、引用発明と本願補正発明とは、
<一致点>
「遊技制御を総括的に行うメイン制御装置と、
前記メイン制御装置から送信されたコマンドに応じて表示手段による表示態様を制御する表示制御装置とを有し、
前記メイン制御装置が、始動口への打球通過の検出を契機に当り外れの抽選を行い、前記当り外れの抽選結果に応じた変動パターンコマンドを前記表示制御装置に対して送信し、
前記変動パターンコマンドに対応する変動時間が経過した時に前記表示制御装置に対して確定コマンドを送信し、
前記表示制御装置が、前記変動パターンコマンドを受け取ると図柄の変動を開始し、前記確定コマンドを受け取ると前記表示手段において前記図柄の変動を停止して前記抽選結果を表示し、表示された前記抽選結果が当りを表す特定表示態様となると、前記メイン制御装置が特典を与える一方、前記表示された特定表示態様のうちの特別表示態様であると、前記特典を与えると共に前記当り外れに関わる抽選確率を遊技者に有利となる確率に変更する遊技機」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
特別表示態様に関して、本願補正発明では「特定表示態様がそのうちの1つの特別表示態様」であるのに対して、引用発明では複数種類ある大当りを表す表示態様の一部ではあるものの「特定表示態様のうちの1つ」ではない点。

<相違点2>
本願補正発明では、メイン制御装置は「前記当り外れの抽選を行う毎に、現在の遊技状態が前記当り外れに関わる抽選確率が遊技者に有利な高確率である確変中であるか否かを判別し、前記確変中であると判別した場合は、前記確変中であることを表す確変中状態コマンドを前記表示制御装置に対して送信する一方、前記確変中でないと判別した場合は、前記確変中でないことを表す非確変状態コマンドを前記表示制御装置に対して送信する」ものであるが、引用発明では、メイン制御装置が「当り外れの抽選を行う毎」に、現在の遊技状態が前記当り外れに関わる抽選確率が遊技者に有利な高確率である確変中であるか否かを判別」しているかが不明であって、さらに「確変中であるか否かに応じた状態コマンドを表示制御装置に対して送信しているかについても不明である点。

<相違点3>
本願補正発明では、表示制御装置は「状態コマンドを受けると、前記状態コマンドが前記確変中状態コマンドである場合には、前記確変中である旨を前記表示手段に表示する一方、前記状態コマンドが前記非確変状態コマンドである場合には、前記非確変である旨の表示を行わない」ように制御するのに対して、引用発明では、相違点2で述べたように「状態コマンド」の存在が不明であり、確変中である旨または非確変である旨の表示に関しても不明である点。

7.相違点の判断
<相違点1>について
遊技機の技術分野において、複数ある特定表示態様のうち、どれだけの数を当り外れに関わる抽選確率を遊技者に有利となる確率に変更する図柄の組み合わせである「特別表示態様」とするかは、当業者が適宜定める程度の設計的事項であって、本願補正発明において「1つ」と限定したことによって、何らの技術的な効果が生じていないことを考慮すると、相違点1に係る本願補正発明の構成については、引用発明から当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>及び<相違点3>について
相違点2及び相違点3は、いずれも「状態コマンド」に関する相違点であるため、併せて検討する。
引用発明において、確変終了図柄は当り確率が高確率中であれば青色で表示され、当り確率が高確率中でなければ、通常図柄と同じ白色で表示されるよう、基本回路42からのコマンドデータによってLCD回路47及びLCD制御回路60で表示の制御が行われるものである。
そして、確変終了図柄は「4」、「6」、「8」の3種類と定められており、その「4」、「6」、「8」の3種類の特別図柄を「青」または「白」のどの色で表示するかを、特別図柄の可変表示を開始するにあたり、LCD回路47に対してコマンドデータを送信するのであるから、普通可変入賞球装置5に打玉が入賞して、当り外れの抽選を行う毎に、現在の遊技状態が前記当り外れに関わる抽選確率が遊技者に有利な高確率である確変中であるか否かを判別していることは、自明である。
また、確変終了図柄を「青」または「白」のどの色で表示するかを指定する2つのコマンドデータは、当り外れに関わる抽選確率を直接的に表す状態コマンドではないが、前記抽選確率の高低に一対一に対応したコマンドデータであるから、青色を指定するコマンドデータは確変中状態コマンド、白色を指定するコマンドデータは非確変状態コマンドといえる。
次に、引用発明において、確変終了図柄の「4」、「6」、「8」は、当り確率が高確率であれば青色で表示され、当り確率が高確率でなければ白色で表示されるから、遊技者の視点で考えると、確変終了図柄の「4」、「6」、「8」が、青色であれば高確率状態であることが、白色であれば高確率状態でないことが認識できる。
ここで、本願補正発明の遊技機は、確変中である旨を表示手段に表示する一方、非確変である旨の表示を行わないとなっているが、本願の発明の詳細な説明(特に、段落【0064】?【0066】)を参酌すると、表示画面に「確変中」を表示することが、「確変中である旨を前記表示手段に表示する」ことに対応し、表示画面に抽選確率の状態が非表示となることが、「非確変である旨の表示を行わない」ことに対応しているところ、確変中である旨の表示の有無と、抽選確率の高低とは一対一に対応しているから、確変中である旨の表示がない場合に、遊技者が抽選確率の状態が認識できないというものではない。
つまり、本願補正発明は、「非確変である旨の表示を行わない構成」によって、実質的に非確変である旨を遊技者が認識できるように報知するものとなっている。
そして、引用発明は、本願補正発明の状態コマンドに相当する、確変終了図柄の表示色を指定するコマンドデータが存在し、該コマンドデータによって、遊技者が図柄変動中の抽選確率の状態が認識できるように表示制御がなされるものであるから、相違点2及び3に係る本願補正発明の構成についても、引用発明から当業者が容易に想到し得たものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

8.本願補正発明についてのまとめ
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

9.本願発明について
(1)本願発明及び引用文献に記載された発明
平成22年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年4月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技制御を総括的に行うメイン制御装置と、前記メイン制御装置から送信されたコマンドに応じて表示手段による表示態様を制御する表示制御装置とを有し、前記メイン制御装置が、始動口への打球通過の検出を契機に当り外れの抽選を行い、前記当り外れの抽選結果に応じたコマンドを前記表示制御装置に対して送信し、前記コマンドに応じて前記表示制御装置が表示手段に前記抽選結果を表示し、表示された前記抽選結果が当りを表す特定表示態様となると、前記メイン制御装置が特典を与える一方、前記表示された特定表示態様がそのうちの1つの特別表示態様であると、前記特典を与えると共に前記当り外れに関わる抽選確率を遊技者に有利となる確率に変更する遊技機において、
前記メイン制御装置は、前記当り外れの抽選を行う毎に、現在の遊技状態における前記抽選確率の設定状態を表す状態コマンドを前記表示制御装置に対して送信し、
前記表示制御装置は、前記状態コマンドを受けると、該状態コマンドが遊技者に有利となる確率状態である場合に、その旨を前記表示手段に表示する
ことを特徴とする遊技機。」
(この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-225099号公報(引用例1)に記載された発明は、前記したとおりである。

10.対比・判断
本願発明は 前記3.で検討した本願補正発明の
「(図柄の変動を開始させる)変動パターンコマンド」と「(図柄の変動を停止して抽選結果を表示させる)確定コマンド」から、それぞれコマンドの機能を限定する技術事項を除いて、「(メイン制御装置が表示制御装置に送信する)コマンド」とし、
「確変中であることを表す確変中状態コマンド」と「確変中でないことを表す非確変状態コマンド」から、抽選確率の高低を限定する技術事項を除いて、「(メイン制御装置が当り外れの抽選を行う毎に表示制御装置に送信する)状態コマンド」とし、
「確変中状態コマンドである場合には、確変中である旨を前記表示手段に表示し、非確変状態コマンドである場合には、非確変である旨の表示を行わない」から、コマンドの種類に応じた表示態様という技術事項を除いて、「状態コマンドが遊技者に有利となる確率状態である場合にその旨を表示手段に表示する」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記7.に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-20 
結審通知日 2011-01-25 
審決日 2011-02-08 
出願番号 特願2002-340924(P2002-340924)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 徹  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 あいわ特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ