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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1234784
審判番号 不服2009-4308  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-26 
確定日 2011-03-28 
事件の表示 特願2007-214035「スペクトラム拡散通信システムにおける送信電力制御および加入者局ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日出願公開、特開2008- 5539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成8年6月27日(パリ条約に基づく優先権主張 1995年6月30日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願平9-505231号の一部を平成15年10月15日に特願2003-355227号として新たな特許出願とし、さらに、その一部を平成18年8月14日に特願2006-221204号として新たな特許出願とし、さらに、その一部を平成19年8月20日に特願2007-2140354号として新たな特許出願としたものであって、平成20年11月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年2月26日に拒絶査定不服審判が請求され、平成22年3月23日付けで当審から拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されたのに対して、平成22年8月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。


第2.出願日の認定

1.当審拒絶理由における出願日の認定
当審拒絶理由においては、以下のように出願日を認定した。

「明細書、特許請求の範囲又は図面」を、以下「明細書等」という。
「願書に最初に添付した明細書等」を、以下「当初明細書等」という。

[本願の出願日の認定]

(1)本願の請求項2の「前記加入者局ユニットによって、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルを送信するステップであって、前記少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットによって調整されること、を備えること」及び請求項8の「前記利得デバイスは、前記受信した電力制御ビットに応答して、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルを調整するように構成されていること」は、特願2006-221204号の当初明細書等に記載されているが、特願平9-505231号及び特願2003-355227号の当初明細書等には記載されていない。

(2)本願の請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、特願平9-505231号、特願2003-355227号及び特願2006-221204号の当初明細書等には記載されていない。

(3)(省略)

(4)以上のことから、本願の出願日は遡及せず、現実の出願日である平成19年8月20日であると認める。


2.出願日の認定についての平成22年8月24日付け意見書の反論
出願日の認定について、平成22年8月24日付け意見書では、以下のように反論している。

(1)
「(3-1) 請求項2、8について
補正後の請求項2の「少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルを送信するステップであって、前記少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットに応答して調整されるステップ」の記載は、明細書の発明の詳細の段落番号[0061]の下の記載に対応します。
「順方向APCビットストリーム信号を拡散回路548に加えて、逆方向スペクトラム拡散ずみAPC信号を生ずる。逆方向OW信号および逆方向トラフィック信号も拡散回路549、550に入力して、逆方向OW信号および逆方向トラフィックメッセージ信号1、2、・・・Nを生ずる。また、逆方向パイロットを逆方向パイロット発生器551により発生する。逆方向APCメッセージ信号、逆方向OWメッセージ信号、逆方向パイロット、および逆方向トラフィックメッセージ信号の電力レベルを増幅器552、553、554および555でそれぞれ調整して信号をそれぞれ生じ、これら信号を加算器556で合成して逆方向APCVGA4 544に入力する。逆方向リンクRFチャネル信号を生ずるのはこのVGA4 544である。」
上記記載の各逆方向チャネルに対する電力制御の基本的構成に加えて、段落番号[0049]の表2には複数の異なるサービスの種類のTRCHが明示的に記載されています。
新請求項2の「少なくとも1つの追加のトラフィックチャンネル」は、段落番号[0049]の異なる種類のTRCH、トラフィックチャネルに対応します。すなわち、図5における拡散回路550、増幅器555の経路によって生成されるトラフィックチャネルとして、表2に示すような、複数の異なるサービスの種類のトラフィックチャネルを送信することが可能な構成となっています。したがって、「少なくとも1つの追加のトラフィックチャネル」の送信電力レベルを調整するよう構成された回路が備えられています」

(2)
「(2-1) 請求項5、11について
請求項5における、「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性に基づいて設定される」の記載については、下に示した発明の詳細な説明の段落番号[0046]の記載に対応しています。
「いずれかの特定のSUのための割当てチャネルTRCH、APCおよびOWならびに逆方向割当てパイロット信号の所要SIRを、互いに比例させて固定する。これらのチャネルはほとんど同一のフェーディングの影響を受け、したがって同時並行的に電力制御される」
上述の段落番号[0046]の記載にあるように、本願発明の送信電力の制御方法(CAMA加入者ユニット)においては、特定のSU(加入者ユニット)に対して割当てられたトラフィックチャネル(TRCH)、APC信号、OW信号、逆方向割当てパイロット信号の各所要SIRが、互いに比例して固定されます。例えば、仮想的な例として、TRCHおよびOW信号についてはSIR=20dB、APC信号についてはSIR=14dB、パイロット信号についてはSIR=26dBのように、それぞれのチャネルまたは信号に対して対応する所要SIRが設定され、かつ各所要SIR相互の関係は比例した関係に固定されています。
請求項5における特性は、発明の詳細な説明における「SIR」に対応することになります。トラフィックチャネルと、逆方向制御チャネルの送信電力は、それぞれの所要SIR値であるSIR1(上記例なら20dB)とSIR2(上記例なら14dB)に対応した値に制御されます。トラフィックチャネルの送信電力と逆方向制御チャネルの送信電力とは、SIR1とSIR2との相対関係(20dBと14dBとの差異から、相対的には6dBの関係)によって定まるので、「前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性に基づいて設定される」ことになります。尚、後述しますが、本願発明において、逆方向制御チャネルは逆方向OWに対応します。
したがって、上述のように請求項5の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性に基づいて設定される」の記載は、明細書の発明の詳細な説明の段落番号[0046]などに明確に記載されているものと考えます。請求項11についても同様です。」


3.出願日の認定についての当審の判断
(1)請求項2及び請求項8に関して
段落番号【0049】の表2には、種々のサービスが記載されており、それらのサービスがトラフィックチャネルを通じて行われることは理解できる。しかし、表2のサービスを行うトラフィックチャネルが「追加」されることは、特願平9-505231号及び特願2003-355227号の当初明細書等のどこにも記載のない事項である。
請求項2及び請求項8の「追加トラフィックチャネル」とは、意見書の中で審判請求人も述べているように、「追加のトラフィックチャンネル」の意味であると解される。「追加のトラフィックチャンネル」ということは、「すでにトラフィックチャンネルが存在している状態において、追加のトラフィックチャンネルを追加する」ということであると解されるから、都合、二以上のトラヒックチャネルが存在することになる。しかし、「二以上のトラフィックチャネルを送信し、二以上のトラフィックチャネルの送信電力レベルを、受信された電力制御ビットに応答して調整される」ことは、特願平9-505231号及び特願2003-355227号の当初明細書等のどこにも記載のない事項である。
したがって、請求項2の「前記加入者局ユニットによって、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルを送信するステップであって、前記少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットに応答して調整されるステップを備えること」及び請求項8の「前記利得デバイスは、前記受信した電力制御ビットに応答して、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルを調整するように構成されていること」は、特願2006-221204号の当初明細書等に記載されているが、特願平9-505231号及び特願2003-355227号の当初明細書等には記載されていない。

(2)請求項5及び請求項11に関して
意見書の説明をまとめれば、請求項5及び請求項11の「前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性」とは、明細書における「トラフィックチャンネルの所要SIR1(上記例なら20dB)と逆方向制御チャンネルの所要SIR2(上記例なら14dB)の差(上記例なら6dB)」であるということになる。
しかしながら、トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、トラフィックチャンネルのSIRが20dBとなるように制御されるのであって、6dBという値は、トラフィックチャンネルの送信電力レベルの設定には何の関係もない。また、逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、逆方向制御チャンネルのSIRが14dBとなるように制御されるのであって、6dBという値は、逆方向制御チャンネルの送信電力レベルの設定には何の関係もない。
したがって、仮に、請求項5及び請求項11の「前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性」が、明細書における「トラフィックチャンネルの所要SIR1(上記例なら20dB)と逆方向制御チャンネルの所要SIR2(上記例なら14dB)の差(上記例なら6dB)」であるとしても、トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルが、前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性、すなわち「トラフィックチャンネルの所要SIR1(上記例なら20dB)と逆方向制御チャンネルの所要SIR2(上記例なら14dB)の差(上記例なら6dB)」に基づいて設定されているわけではない。

次に、「トラフィックチャンネルの所要SIR1(上記例なら20dB)と逆方向制御チャンネルの所要SIR2(上記例なら14dB)の差(上記例なら6dB)」が、「前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性」であると言えるのかという問題について検討する。
所要SIRとは、受信した時のSIRが所要SIR以上なければ受信機が正常に動作しないということに基づき、システムがチャネルに割り当てた値であって、チャネルにおけるSIRが所要SIRとなるように信号波の電力を制御するという意味である。したがって、干渉波の大きなトラフィックチャンネルであっても、干渉波の小さなトラフィックチャンネルであっても、如何なるトラフィックチャンネルであっても、上記例なら、トラフィックチャンネルの所要SIR1は20dBである。このように如何なるトラフィックチャンネルであっても変わらない量が、「チャネルが特別に有している性質」すなわち「チャネルの特性」とは言えないことは明らかである。
また、SIRがチャネルの特性であるのならば、同一のチャネルは、同一のSIRを有するはずである。しかし、同一のチャネルであっても、信号波の電力を変えれば、SIRは任意に変更される。信号波の電力という、チャネルにとっての外部要因によって値が色々に変化する量であるSIRが、「チャネルが特別に有している性質」すなわち「チャネルの特性」とは言えないことは明らかである。
したがって、 請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、特願平9-505231号、特願2003-355227号及び特願2006-221204号の当初明細書等には記載されていない。

(3)以上のことから、本願の出願日は遡及せず、現実の出願日である平成19年8月20日であると認める。


第3.新規事項の問題(理由A)

1.新規事項に関する当審拒絶理由
当審拒絶理由においては、以下のように、新規事項に関する拒絶理由を通知した。

A. 平成20年9月1日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、本願の当初明細書等には記載されておらず、また本願の当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、請求項5及び請求項11の上記記載は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。

(2)(省略)


2.新規事項についての平成22年8月24日付け意見書の反論
新規事項について、平成22年8月24日付け意見書では、前記「第2.2.(2)」のように反論している。


3.新規事項の認定についての当審の判断
前記「第2.3.(2)」と同趣旨であり、請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。
なお、当審拒絶理由では、本来「特許法第17条の2第3項」と記すべき所を、「特許法第17条第2項」と誤記しているが、意見書において「尚、通知では本理由について特許法第17条第2項違反と記載されていましたが、特許法第17条の2第3項違反であるものとして説明します。」と条文を正しく認識しているので、改めて拒絶理由を通知することなく審決する。


第4.サポート要件の問題(理由B)

1.サポート要件に関する当審拒絶理由
当審拒絶理由においては、以下のように、サポート要件に関する拒絶理由を通知した。

B. この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項2の「前記加入者局ユニットによって、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルを送信するステップであって、前記少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットによって調整されること、を備えること」及び請求項8の「前記利得デバイスは、前記受信した電力制御ビットに応答して、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルを調整するように構成されていること」は、発明の詳細な説明のどこのどういう記載に相当するのか不明である。

(2)請求項5及び請求項11の「前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性」は、発明の詳細な説明の何に相当するのか不明である。

(3)請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、発明の詳細な説明のどこのどういう記載に相当するのか不明である。

(4)(省略)

(5)(省略)

(6)請求項3及び請求項9の「トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネル」は、実施例の何に相当するのか、不明確である。


2.サポート要件についての平成22年8月24日付け意見書の反論
サポート要件について、平成22年8月24日付け意見書では、以下のように反論している。

(3-1) 請求項2、8について
(前記「第2.2.(1)(3-1)請求項2、8について」と同じ文章。)

(3-2) 請求項5、11の「特性」について
請求項5、11の「特性」は、明細書における「所要SIR」に対応します。すなわち、信号電力対干渉雑音電力比(SIR)に相当し、本発明における根幹動作として、「順方向および逆方向割当てずみチャネルおよび逆方向グローバルチャネルの送信電力レベルは、これらのチャネル上の信号電力対干渉雑音電力比(SIR)を十分な値に維持するとともにシステム出力電力を安定化させ最小にするようにAPCアルゴリズムによって制御する」動作が行なわれます(段落番号[0026]の記載)。

(3-3) 請求項5、11の「・・特性に基づいて設定されること」について
請求項5の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性に基づいて設定される」の記載については、理由Aについて説明したように、下に示した発明の詳細な説明の段落番号[0046]の記載に対応しています。
「いずれかの特定のSUのための割当てチャネルTRCH、APCおよびOWならびに逆方向割当てパイロット信号の所要SIRを、互いに比例させて固定する。これらのチャネルはほとんど同一のフェーディングの影響を受け、したがって同時並行的に電力制御される」
上述の段落番号[0046]の記載にあるように、本発明の送信電力の制御方法(CAMA加入者ユニット)においては、特定のSU(加入者ユニット)に対して割当てられたトラフィックチャネル(TRCH)、APC信号、OW信号、逆方向割当てパイロット信号の各所要SIRが、互いに比例して固定されます。例えば、仮想的な例として、TRCHおよびOW信号についてはSIR=20dB、APC信号についてはSIR=14dB、パイロット信号についてはSIR=26dBというように、それぞれのチャネルまたは信号に対して対応する所要SIRが設定されて、かつ各所要SIR相互の関係は比例した関係に固定されています。
請求項5における特性は、発明の詳細な説明における「SIR」に対応することになります。トラフィックチャネルと、逆方向制御チャネルの送信電力は、それぞれの所要SIR値であるSIR1(上記例なら20dB)とSIR2(上記例なら14dB)に対応した値に制御されます。トラフィックチャネルの送信電力と逆方向制御チャネルの送信電力とは、SIR1とSIR2との相対関係(20dBと14dBとの差異から、相対的には6dBの関係)によって定まるので、「前記逆方向制御チャンネルに対する前記トラフィックチャンネルの特性に基づいて設定される」ことになります。尚、後述しますが、本願発明において、逆方向制御チャネルはOW信号に対応します。

(3-4)(省略)

(3-5)(省略)

(3-6)「トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない・・」について
上の(3-5)で説明したように、請求項3、9の「トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネル」は、逆方向パイロット信号に対応します。


3.サポート要件についての当審の判断

(1)請求項2及び請求項8については、前記「第2.3.(1)」と同趣旨であり、請求項2の「前記加入者局ユニットによって、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルを送信するステップであって、前記少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットによって調整されること、を備えること」及び請求項8の「前記利得デバイスは、前記受信した電力制御ビットに応答して、少なくとも1つの追加トラフィックチャンネルの送信電力レベルを調整するように構成されていること」は、発明の詳細な説明のどこのどういう記載に相当するのか不明である。

(2)請求項5及び請求項11については、前記「第2.3.(2)」と同趣旨であり、請求項5及び請求項11の「前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性」は、発明の詳細な説明の何に相当するのか不明である。また、請求項5及び請求項11の「前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルは、前記逆方向制御チャンネルに対するトラフィックチャンネルの特性に基づいて設定されること」は、発明の詳細な説明のどこのどういう記載に相当するのか不明である。

(3)明細書に開示されているのは、逆方向パイロット信号について送信電力レベルを電力制御ビットに応答して調整するということであって、トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネル全般の信号について、送信電力レベルを電力制御ビットに応答して調整するという技術的思想は開示されていない。
したがって、明細書の「逆方向パイロット信号」を請求項3及び請求項9の「前記トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネル」にまで一般化することができるとは言えない。


第5.技術上の意義の問題(理由C)

1.技術上の意義に関する当審拒絶理由
当審拒絶理由においては、以下のように、技術上の意義に関する拒絶理由を通知した。

C. この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)発明の詳細な説明は、請求項3の「前記加入者局ユニットによって、トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルを送信する」ことの技術上の意義を理解できるように記載されていない。

(2)発明の詳細な説明は、請求項3の「前記トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットによって調整されること」の技術上の意義を理解できるように記載されていない。

(3)発明の詳細な説明は、請求項9の「前記利得デバイスは、前記受信した電力制御ビットに応答して、トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルを調整するように構成されていること」の技術上の意義を理解できるように記載されていない。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項3及び請求項9に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。


2.技術上の意義についての平成22年8月24日付け意見書の反論
技術上の意義について、平成22年8月24日付け意見書では、以下のように反論している。

(4) 理由C(特許法第36条第4項第1号違反)について
審判官殿は、請求項3、9に係る発明について、本願明細書の発明の詳細な説明が、技術上の意義を理解できるように記載されていないとされました。
しかしながら、理由Bに対する意見の(3-6)において述べたように、「トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネル」は、逆方向パイロット信号に対応します。図5のSU502の回路構成から明らかなように、逆拡散デマルチプレクサ542から得られた逆方向APCビット(請求項3の「受信された電力制御ビット」)に応答して(段落番号[0058]の記載)、逆方向APCVGA 544により、逆方向送信電力レベルが一括して調整されます(段落番号[0061]の記載)。
従って、「前記加入者局ユニットによって、トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルを送信するステップであって、前記トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルは、前記受信された電力制御ビットに応答して調整される」ことは、段落番号[0058]、[0061]、図5などの記載によって、その技術上の意義を明確に理解できるものです。


3.技術上の意義についての当審の判断
意見書の反論は、「逆方向パイロット信号の電力レベルを、電力制御ビットに応答して調整する」という内容が、どこに記載されているかを説明するものであって、「トラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルを、受信された電力制御ビットによって調整されること」の技術上の意義、すなわち、何のためにトラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルを、電力制御ビットによって調整するのかについては全く答えていない。また、意見書は、明細書のどこに、「何のためにトラフィックチャンネルでも制御チャンネルでもない逆方向チャンネルの送信電力レベルを、電力制御ビットによって調整するのか」という目的が記載されているのかについても全く答えていない。
したがって、当審拒絶理由の理由Cの(1)?(3)が、依然として解消していない。


第6.新規性及び進歩性の問題(理由D)

1.新規性及び進歩性に関する当審拒絶理由
当審拒絶理由においては、以下のように、新規性及び進歩性に関する拒絶理由を通知した。

D. この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるか、又は該発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,3,4,6,7,9,10,12-16
・引用文献1
・備考
引用文献1は、本願の原出願である特願平9-505231号の公表公報である。


2.新規性及び進歩性についての平成22年8月24日付け意見書の反論
新規性及び進歩性について、平成22年8月24日付け意見書では、以下のように反論している。

(5) 理由D(特許法第29条第1項第3号、同条第2項違反)について
理由A、理由Bに対する意見で説明したように、請求項2、5、8、11、17、18に係る各発明は、本願当初明細書に記載された事項であって、本願の出願日は、本願(分割出願)の(3世代遡って)先の出願となる特願平9-505231号の出願日が認定されるべきと考えます。従って、引用文献1(特願平9-505231号の公表公報)は、本願に関して、特許法第29条第1項第3号、同条第2項の規定における刊行物として不適であって、本理由は解消されたと考えます。


3.新規性及び進歩性についての当審の判断
前記「第2.3.」で認定したように、本願の出願日は、遡及せず、現実の出願日である平成19年8月20日であるから、当審拒絶理由の理由Dは依然として解消していない。


第7.進歩性の問題(理由E)

1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年8月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりものである。

「 【請求項1】
符号分割多元接続(CDMA)加入者局ユニットの送信電力レベルを制御する方法であって、
前記加入者局ユニットによって、ダウンリンク制御チャンネル上で送信電力レベルの増加または減少を表示している電力制御ビットを受信するステップと、
前記加入者局ユニットによって、トラフィックチャンネルおよび逆方向制御チャンネルを含む複数のチャンネルを送信するステップと、
前記受信した電力制御ビットに応答して、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの両方の送信電力レベルを調整するステップと、
前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルを、別々に調整するステップと、
それぞれの前記調整された送信電力レベルで、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルを送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」


2.刊行物及び引用発明
当審における拒絶の理由に引用された刊行物1(特表平4-502841号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第6頁右下欄第2-3行
「CDMAセルラ移動電話システムの伝送パワーを制御する方法及び装置」

(b)第9頁右下欄第11-20行
「先に述べたように、移動ユニットトランスミッタのパワーもセルサイトからの信号により制御される。各セルサイトのレシーバは通信相手である各移動ユニットからの信号の受信強度を測定する。測定された信号強度はその特定の移動ユニットにとっての所望の信号強度レベルと比較される。パワー調節コマンドが発生されて、その移動ユニットに宛てられたアウトバウンドのリンクデータ又は音声チャンネルにより移動ユニットに送信される。セルサイトパワー調節コマンドに応じて、移動ユニットは移動ユニットトランスミッタパワーを通常は1dBである所定量になるまで加減する。」

(c)第10頁右下欄第7-17行
「以上の目的を達成するために、好ましい実施態様は、信号対干渉測定能力を移動ユニットレシーバ内に備えている。この測定は望ましい信号のパワーと全干渉及びノイズパワーとを比較することにより実施される。測定した比が所定の値よりも小さい場合には、移動ユニットはセルサイトの伝送パワーを増加する要求をセルユニットに伝送する。測定した比が所定の値を越えている場合には、移動ユニットはパワーの減少要求を伝送する。
セルサイトは各移動ユニットからパワー調節要求を受信して、対応するセルサイト伝送信号に割り当てられているパワーを所定量だけ調節する。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「CDMAセルラ移動電話システムの移動ユニットトランスミッタのパワーをセルサイトからの信号により制御する方法であって、
パワー調節コマンドが発生されて、その移動ユニットに宛てられたアウトバウンドのリンクデータ又は音声チャンネルにより移動ユニットに送信され、
測定した比が所定の値よりも小さい場合には、移動ユニットはセルサイトの伝送パワーを増加する要求をセルユニットに伝送し、測定した比が所定の値を越えている場合には、移動ユニットはパワーの減少要求を伝送し、
移動ユニットが、セルサイトパワー調節コマンドに応じて、移動ユニットトランスミッタパワーを所定量になるまで加減する方法。」


3.本願発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明の「移動ユニット」が、本願発明の「加入者局ユニット」に相当する。
引用発明の「セルサイトの伝送パワーを増加する要求」及び「パワーの減少要求」は、制御信号であるから、これらの要求を通信するチャネルは、本願発明の「逆方向制御チャネル」に相当する。
引用発明の「その移動ユニットに宛てられたアウトバウンドのリンクデータ又は音声チャンネルにより移動ユニットに送信されるセルサイトパワー調節コマンド」が、本願発明の「ダウンリンク制御チャンネル上で送信電力レベルの増加または減少を表示している電力制御ビット」に相当する。
引用発明の「セルサイトパワー調節コマンドに応じて、移動ユニットトランスミッタパワーを所定量になるまで加減する」が、本願発明の「前記受信した電力制御ビットに応答して、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの両方の送信電力レベルを調整する」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「符号分割多元接続(CDMA)通信システム用加入者局ユニットの送信電力レベルを制御する方法であって、
前記加入者局ユニットによって、ダウンリンク制御チャンネル上で送信電力レベルの増加または減少を表示している電力制御ビットを受信するステップと、
前記加入者局ユニットによって、トラフィックチャンネルおよび逆方向制御チャンネルを含む複数のチャンネルを送信するステップと、
前記受信した電力制御ビットに応答して、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの両方の送信電力レベルを調整するステップと、
それぞれの前記調整された送信電力レベルで、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルを送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」

[相違点]
本願発明では、前記トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルを、別々に調整するのに対して、引用発明では、トラフィックチャンネルおよび前記逆方向制御チャンネルの送信電力レベルを、別々に調整するか、それとも一緒に調整するか不明である点。


4.相違点の検討
当審における拒絶の理由に引用された刊行物2(特開平7-87011号公報)の段落番号【0348】に「図74、図75、図76、図77にそれぞれ示すように、CDMA方式においてチャネル間での受信電力の差は逆拡散後の信号の強度差につながる。従って、制御チャネル等の重要なチャネルgは信号電力が大きくなるように重み付けすることで、安定度の高い無線通信システムを提供できる。なお、信号電力の重み付けはプロセスゲインを変化(図77参照)させることによっても可能である。」と記載されている。「制御チャネル等の重要なチャネルgは信号電力が大きくなるように重み付けする」とは、「制御チャネル等の重要なチャネルgは、音声チャネルのような重要度の低いチャネルに比べて、信号電力が大きくなるように重み付けする」という意味であると解される。
してみると、制御チャネルと音声チャネル(すなわちトラフィックチャネル)とは、重み付けが異なるのであるから、引用発明において、トラフィックチャネルと制御チャネルについて、別々の増幅器で、別々に送信電力レベルを調整することは、刊行物2から容易に想到できたことである。

また、当審における拒絶の理由に引用された刊行物3(Alfred Baier et.al.、Design Study for a CDMA-Based Third-Generation Mobile Radio System、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、米国、1994.05.発行、Vol.12,No.4、p.733-743)の第739頁の図6には、物理データチャネル(PDCH)のパワーが物理制御チャネル(PCCH)のパワーより大きく記載されている。また、刊行物3の第742頁左欄第26-28行には「For variable-rate speech channels, the PCCH requires on average approximately 15% of the PDCH symbol energy ES. (当審訳:可変レートのスピーチチャネルのために、PCCHは、PDCHのシンボルネルギーESの平均、約15%を要求する。)」と記載されている。したがって、刊行物3には、PDCHのパワーとPCCHのパワーを異ならせることが開示されている。
物理データチャネル(PDCH)は、引用発明のトラフィックチャネルに相当するから、刊行物3に開示されている「PDCHのパワーとPCCHのパワーを異ならせること」は、「トラフィックチャネルと制御チャネルのパワーを異ならせる」ということを意味している。
したがって、刊行物3ではトラフィックチャネルと制御チャネルのパワーを異ならせるのであるから、引用発明において、トラフィックチャネルと制御チャネルについて、別々の増幅器で、別々に送信電力レベルを調整することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び刊行物2、3に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項にかかる発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。


第8.まとめ
以上のとおり、本願の出願日は平成19年8月20日であると認められ、本願の平成20年9月1日付けでした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の請求項1,3,4,6,7,9,10,12-16に係る発明が、本願の原出願である特願平9-505231号の公表公報によって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、且つ特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、刊行物1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-28 
結審通知日 2010-10-29 
審決日 2010-11-10 
出願番号 特願2007-214035(P2007-214035)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04B)
P 1 8・ 113- WZ (H04B)
P 1 8・ 121- WZ (H04B)
P 1 8・ 55- WZ (H04B)
P 1 8・ 537- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 青木 健
清水 稔
発明の名称 スペクトラム拡散通信システムにおける送信電力制御および加入者局ユニット  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 中西 英一  
復代理人 濱中 淳宏  
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