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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1235333 |
審判番号 | 不服2009-25486 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-24 |
確定日 | 2011-04-07 |
事件の表示 | 特願2005-221386「画像記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 8日出願公開、特開2007- 37043〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年7月29日の出願であって、平成21年7月8日付け拒絶理由通知に対して平成21年9月14日付けで意見書が提出されたが、平成21年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年12月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年12月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成21年12月24日付けの補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願特許請求の範囲 当該手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、次のとおりとするとともに、併せて関連する発明の詳細な説明の記載を補正するものである。 (請求項1のみ、補正箇所に下線付与。) 【請求項1】 原稿の画像を読み取る画像読取手段、原稿挿入口から前記画像読取手段を経由して原稿排出口に至る間に原稿を搬送する原稿搬送路、シート体に画像を形成する画像形成手段、及び、シート体挿入口から前記画像形成手段を経由してシート体排出口に前記シート体を搬送するシート体搬送路を内蔵する装置本体と、 前記装置本体を外装する外装部材と、 前記装置本体に対して所定の開放位置と所定の閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材と、 を備え、 前記原稿挿入口、シート体挿入口及び前記シート体排出口を、前記装置本体の上部において、搬送されるべき原稿、搬送されるべきシート体及び排出されたシート体の面方向に直交する方向に並設し、 前記装置本体の上部は、水平面に対して前記蓋部材側へ下り傾斜し、 前記蓋部材は、前記開放位置において、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を開放するとともに、前記原稿挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべき原稿、前記シート体挿入口から前記シート体搬送路に挿入されるべきシート体、及び、前記シート体排出口から排出されたシート体を支持する一方、前記閉鎖位置において、前記外装部材の一部を構成するとともに、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を覆うことを特徴とする画像記録装置。 【請求項2】 前記蓋部材は、前記開放位置において前記シート体搬送路に挿入されるべきシート体の搬送方向の上流側に伸長する伸長部材を有することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。 【請求項3】 前記蓋部材は、一端側を支点にして前記開放位置と前記閉鎖位置との間で揺動自在であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。 【請求項4】 前記シート体排出口は、前記原稿挿入口と前記シート体挿入口との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。 2.当該補正前の特許請求の範囲 これに対し、当該補正前の特許請求の範囲の記載は、出願当初の特許請求の範囲に記載されたとおりものであって、その請求項1から4は以下のとおりである。 【請求項1】 原稿の画像を読み取る画像読取手段、原稿挿入口から前記画像読取手段を経由して原稿排出口に至る間に原稿を搬送する原稿搬送路、シート体に画像を形成する画像形成手段、及び、シート体挿入口から前記画像形成手段を経由してシート体排出口に前記シート体を搬送するシート体搬送路を内蔵する装置本体と、 前記装置本体を外装する外装部材と、 前記装置本体に対して所定の開放位置と所定の閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材と、 を備え、 前記原稿挿入口、シート体挿入口及び前記シート体排出口を、前記装置本体の上部において、搬送されるべき原稿、搬送されるべきシート体及び排出されたシート体の面方向に直交する方向に並設し、 前記蓋部材は、前記開放位置において、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を開放するとともに、前記原稿挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべき原稿、前記シート体挿入口から前記シート体搬送路に挿入されるべきシート体、及び、前記シート体排出口から排出されたシート体を支持する一方、前記閉鎖位置において、前記外装部材の一部を構成するとともに、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を覆うことを特徴とする画像記録装置。 【請求項2】 前記蓋部材は、前記開放位置において前記シート体搬送路に挿入されるべきシート体の搬送方向の上流側に伸長する伸長部材を有することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。 【請求項3】 前記蓋部材は、一端側を支点にして前記開放位置と前記閉鎖位置との間で揺動自在であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。 【請求項4】 前記シート体排出口は、前記原稿挿入口と前記シート体挿入口との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。 3.当該補正の適否 当該特許請求の範囲についてする補正が特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項)各号の事項に適合するものであるかの検討をする。 (以下、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法を、単に平成18年改正前特許法と記す。) 審判請求人は、審判請求書において、当該補正の根拠及び本願発明の特徴について、次のように主張している。 「(3) 本願発明が特許されるべき理由 (中略) (B)補正の根拠の明示 請求項1の補正は、図4、図5、及び図7の記載に基づくものである。 (中略) (D)本願発明と引用発明との対比 請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、請求項1に係る発明は、装置本体の上部が水平面に対して蓋部材側へ下り傾斜している点で、このような構成を備えない引用文献1,2に記載された発明と相違している。 引用文献1に記載されているように、原稿挿入口、シート体挿入口、及びシート体排出口が装置本体の上部に設けられる場合、原稿挿入口近傍の原稿搬送路、シート体挿入口近傍のシート体搬送路、及びシート体排出口近傍のシート体搬送路はともに、鉛直方向に対して上部がトレイ(蓋部材)側へ近づく方向に傾斜するように設けられる。 しかし、引用文献1,2には、装置本体の上部が蓋部材側へ下り傾斜した構成について、何ら記載も示唆もされていない。引用文献1,2では、引用文献1の図1及び引用文献2の図1,5に示されるように、装置本体の上部は、水平、又はトレイ側(背面側)ほど高くなるように構成されている。このため、引用文献1,2に記載された発明では、原稿搬送路及びシート体搬送路に対する装置本体の上部の角度が鋭角となり、原稿挿入口、シート体挿入口、及びシート体排出口の開口面積が、装置本体の上部が水平面に対して蓋部材側へ下り傾斜している場合と比較して大きくなる。したがって、原稿搬送路及びシート体搬送路に塵埃が入りやすいと思料する。 これに対して、請求項1に係る発明では、装置本体の上部が水平面に対して蓋部材側へ下り傾斜していることで、原稿搬送路及びシート体搬送路に対する装置本体の上部の角度が垂直に近付き、装置本体の上部が水平である場合と比較して、原稿挿入口、シート体挿入口、及びシート体排出口の開口面積が小さくなる。したがって、請求項1に係る発明は、蓋部材が開放位置にある状態においても、原稿挿入口、シート体挿入口、及びシート体排出口への塵埃の侵入を抑え、原稿やシート体を搬送するローラへの塵埃の付着を抑制できるという効果を奏するものである。 以上のように、請求項1に係る発明は、引用文献1,2に記載された構成と異なる構成を備えており、引用文献1,2に記載された構成から予測できない顕著な効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明、並びにこれを引用する請求項2?4に係る発明は、引用文献1,2に記載された発明に対して十分な進歩性を備えたものであり、拒絶理由は解消したものであると思料する。」 当該請求項1についての補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れの要件をも目的とするものではないことは明らかである。 また、当該請求項1についての補正は、補正前の請求項1について、「前記装置本体の上部は、水平面に対して前記蓋部材側へ下り傾斜し」ていることを発明特定事項として加えるものであって、これは「装置本体の上部」の「構造」を特定するものである。 しかしながら、「装置本体の上部」に関しては、補正前の請求項1には「前記原稿挿入口、シート体挿入口及び前記シート体排出口を、前記装置本体の上部において、搬送されるべき原稿、搬送されるべきシート体及び排出されたシート体の面方向に直交する方向に並設し」と記載があるだけで、当該記載における「前記装置本体の上部」とは、「装置本体」に対する「向き」あるいは「位置」を指し示すものであって、「装置本体の上部」が何らかの「構造」を有することを表すものではない。 すなわち、当該請求項1についての補正は、補正前の請求項1の発明特定事項に含まれない、「装置本体の上部」の「構造」を特定することにより、新規の異なる概念の発明を創出したものであって、特許請求の範囲を限定的に減縮するものではない。 してみれば、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する次の、 一 第36条第5項に規定する請求項の削減 二 特許請求の範囲の減縮 (第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。) 三 誤記の訂正 四 明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。) の何れの要件をも目的とするものではない。 したがって、当該補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成21年12月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項4までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。 【請求項1】 原稿の画像を読み取る画像読取手段、原稿挿入口から前記画像読取手段を経由して原稿排出口に至る間に原稿を搬送する原稿搬送路、シート体に画像を形成する画像形成手段、及び、シート体挿入口から前記画像形成手段を経由してシート体排出口に前記シート体を搬送するシート体搬送路を内蔵する装置本体と、 前記装置本体を外装する外装部材と、 前記装置本体に対して所定の開放位置と所定の閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材と、 を備え、 前記原稿挿入口、シート体挿入口及び前記シート体排出口を、前記装置本体の上部において、搬送されるべき原稿、搬送されるべきシート体及び排出されたシート体の面方向に直交する方向に並設し、 前記蓋部材は、前記開放位置において、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を開放するとともに、前記原稿挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべき原稿、前記シート体挿入口から前記シート体搬送路に挿入されるべきシート体、及び、前記シート体排出口から排出されたシート体を支持する一方、前記閉鎖位置において、前記外装部材の一部を構成するとともに、前記原稿挿入口、前記シート体挿入口及び前記シート体排出口を覆うことを特徴とする画像記録装置。 (以下、「本願発明」とする。) 2.公知刊行物の記載 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開2005-1792号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。 (ア)「【0034】 【発明の実施の形態】 次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置としてのファクシミリ装置1の内部構造を表す中央断面図である。図1に示すように、ファクシミリ装置1は、内部に画像形成手段としてのヘッド3が配設される本体ケース2と、その本体ケース2の上方を開閉可能に閉塞する蓋体4とを備えている。 【0035】 蓋体4には、被記録媒体としての多数の記録紙5(図1には排出直後のものを図示した)を積層された状態で収納する被記録媒体収納部6と、その被記録媒体収納部6から記録紙5を取り出し、ヘッド3を経て、画像形成後の記録紙5を排出する蓋体4上の空間部である排出部7まで搬送する被記録媒体搬送部8が一体的に形成されている。 【0036】 この被記録媒体搬送部8は、被記録媒体収納部6に保持された記録紙5を1枚ずつ分離してヘッド3へ供給する供給ローラ11、本体ケース2側のヘッド3に対向する位置に設けられたプラテンローラ12及び、記録紙5を蓋体4上の排出部7に排出する排出ローラ13(駆動側の排出ローラに相当)を有し、これらのローラ11,12,13が搬送方向上流側からこの順に配設され、記録紙5の搬送経路はU字状に構成されている。また、被記録媒体搬送部8は、記録紙5の円滑な搬送のために、プラテンローラ12と排出ローラ13との間に配設されたU字形状のペーパーガイド14や、排出ローラ13に対応して設けられたピンチローラ15(従動側の排出ローラに相当)も備えている。なお、上記ローラ11,12,13は、具体的に図示していないが、LF用モータによってギヤ機構を介して回転駆動される。 【0037】 よって、被記録媒体収納部6に積層されている記録紙5は、被記録媒体収納部6から供給ローラ11により1枚ずつプラテンローラ12側へ送り出され、プラテンローラ12の部位でヘッド3により後述のインクリボン16aを介して文字、図形等の画像が形成される。画像形成後の記録紙5は、ペーパーガイド14によって案内され、ピンチローラ15と排出ローラ13との間を通過して、供給ローラ11の上側に位置する排出部7に排出される。」 (イ)「【0041】 また、ファクシミリ装置1の前部上側部分には、原稿51を一定の速度で送る原稿送り装置52と、その原稿送り装置52によって送られる原稿51に記録されている画像を読み取る画像読取手段としての原稿読取装置53とが配設され、表面に位置するパネルカバー54には、図2の斜視図に示すように、ファクシミリ送信等についての各種操作を行うための操作パネル80が設けられている。なお、操作パネル80は、液晶ディスプレイ81、キーボード82等を有する。 【0042】 図1に戻って、原稿送り装置52は、原稿51を取り込む送りローラ55と、送りローラ55に当接して送られる原稿51を1枚ずつに分離する分離片56と、1枚ずつ分離された原稿51を搬送する搬送ローラ58,59と、原稿読取装置53の正面を通過した原稿51をファクシミリ装置1の前方に排出する排紙ローラ61,62とを備えている。なお、原稿読取装置53は、CISによって原稿画像を読み取る周知のものである。そして、送信のための原稿51が、原稿トレイ63に載せられると、そのことが、図示しない原稿検出センサによって検出され、原稿51は、分離片56と送りローラ55とによって1枚ずつに確実に分離されて、原稿読取装置53の原稿読み取り位置に送られる。 【0043】 原稿トレイ63は、その表面に保持された原稿51を幅方向両側(左右方向ともいう)からガイドする一対の原稿ガイド64,64(図1には一方のみを図示)を備え、その裏面には、一対の原稿ガイド64,64を原稿トレイ63の左右方向中心に対して対称移動するように連動させる原稿ガイド連動機構65を備えている。なお、この原稿ガイド連動機構65は、ラックとピニオンを組み合わせてなる周知のものである。この原稿ガイド64,64と原稿ガイド連動機構65とにより、原稿51の幅方向中心の位置を固定して、種々のサイズの原稿51を原稿読取装置53に良好に供給することができる。 【0044】 また、原稿トレイ63の原稿搬送方向上流側端部(以下先端という)には、カバー部材66が揺動可能に設けられ、更に、原稿トレイ63自身も、操作パネル80の下面に設けられた揺動軸67を中心に揺動可能に取り付けられている。カバー部材66は、ポリスチレン等の半透明樹脂により断面円弧状に形成された蓋体で、原稿トレイ63の先端方向(被記録媒体収納部6側)に倒したときは図1に例示するように原稿トレイ63と協働して原稿51を保持し、原稿トレイ63の基端方向(パネルカバー54側)に倒すと、図2に示すように、原稿51の挿入口を覆う。このため、カバー部材66は、上記基端方向に倒したときは埃が入るのを防止して原稿読取装置53の性能を維持すると共に外観を向上させ、上記先端方向に倒したときは大きな原稿51の画像も読み取り可能とすることができる。また、カバー部材66の両端には、摘み66aが設けられ(図2には一方のみ図示)、この摘み66aを手で摘むことによって使用者はカバー部材66を上記のように容易に揺動させることができる。更に、図2に示すように、原稿トレイ63の先端中央には、手で摘んでその原稿トレイ63を揺動させるための摘み63aが設けられている。」 また、明文の記載はないものの、図1及び上記(ア)、(イ)の記載から、 (ウ)装置本体に、原稿の排出部及び被記録媒体の挿入口を備えると共に、原稿の挿入口、被記録媒体の挿入口及び被記録媒体の排出部を、装置本体の上部において、搬送される原稿、搬送される記録紙及び排出された記録紙の面方向に直交する方向に並設すること、 (エ)装置本体内部に原稿の挿入口から原稿読取装置を経て、原稿の排出部まで原稿を搬送する原稿搬送部を有すること が明らかである。 これら(ア)?(エ)の記載及び図面の内容を総合すると、引用刊行物1には、次の(オ)なる発明が記載されていると認められる。 以下、これを「引用発明1」と記す。 [引用発明1] (オ)原稿に記録されている画像を読み取る原稿読取装置、原稿の挿入口から原稿読取装置を経て原稿の排出部まで原稿を搬送する原稿搬送部、記録紙に画像を形成するヘッド、及び、被記録媒体の挿入口からヘッドを経て被記録媒体の排出部に記録紙を搬送する被記録媒体搬送部を内部に備えた装置本体と、 本体ケース、本体ケースを閉塞する蓋体及びパネルカバーと、 原稿トレイの先端方向に倒す又は原稿トレイの基端方向に倒すように揺動可能に設けられたカバー部材を設け、 原稿の挿入口、被記録媒体の挿入口及び被記録媒体の排出部を、装置本体において原稿や記録紙の面方向に直交する方向に並設し、 カバー部材は、原稿トレイの先端方向に倒すと原稿の挿入口を開放するとともに、原稿の挿入口から挿入される原稿を保持し、原稿トレイの基端方向に倒すと原稿の挿入口を覆うと共に外観を向上させる画像形成装置。 3.対比 本願発明と当該引用発明1とを対比する。 引用発明1の「画像形成装置」は、記録紙に画像を記録して画像形成を行うものであるので、本願発明の「画像記録装置」に相当する。 引用発明1における「原稿読取装置」、「原稿の挿入口」、「原稿の排出部」、「原稿搬送部」、「記録紙」、「ヘッド」、「被記録紙の排出部」、「被記録媒体搬送部」は、本願発明の「画像読取手段」、「原稿挿入口」、「原稿排出口」、「原稿搬送路」、「シート体」、「画像形成手段」、「シート体排出口」、「シート体搬送路」にそれぞれ相当する。 引用発明1の「本体ケース、本体ケースを閉塞する蓋体及びパネルカバー」は画像形成装置本体の外装を構成するものであるので、本願発明の「装置本体を外装する外装部材」に相当する。 引用発明1の「原稿トレイの先端方向に倒す又は原稿トレイの基端方向に倒すように揺動可能に設けられたカバー部材」について、 当該「カバー部材」は、「原稿トレイの先端方向に倒す」ことによって「原稿の挿入口」を開放状態にし、「原稿トレイの基端方向に倒す」ことによって「原稿挿入口」を閉鎖状態にするものであるので、引用発明1の「カバー部材」は本願発明の「蓋部材」に一致する。 そして、当該「カバー部材」を「原稿トレイの先端方向に倒す」こと、「原稿トレイの基端方向に倒す」ことは、当該「カバー部材」を本体装置に対して「所定の開放位置」、「所定の閉鎖位置」とすることと技術的に等価である。 よって、引用発明1の「原稿トレイの先端方向に倒す又は原稿トレイの基端方向に倒すように揺動可能に設けられたカバー部材」は、本願発明の「装置本体に対して所定の開放位置と閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材」に相当する。 引用発明1の「カバー部材は、原稿トレイの先端方向に倒すと原稿の挿入口を開放するとともに、原稿の挿入口から挿入されるべき原稿を保持し、原稿トレイの基端方向に倒すと原稿の挿入口を覆うと共に外観を向上させる」ことについて、上述したとおり、 (1)引用発明1の「カバー部材」は本願発明の「蓋部材」に一致し、 (2)引用発明1の「原稿トレイの先端方向に倒す」こと及び「原稿トレイの基端方向に倒す」ことは、それぞれ本願発明の「開放位置」及び「閉鎖位置」とすることと技術的に等価であって、 (3)引用発明1の「原稿の挿入口から挿入される原稿を保持」することは本願発明の「原稿挿入口から原稿搬送路に挿入されるべき原稿を支持」することに相当し、 (4)引用発明1の「カバー部材」を「原稿トレイの基端方向に倒す」ことによって「外観を向上させる」ことについて、これは当該「カバ-部材」が装置本体と一体になって外観を向上させることを表すことが当業者に明らかであること、すなわち、本願発明の「閉鎖位置において、外装部材の一部を構成する」ことに他ならないので、 引用発明1の「カバー部材は、原稿トレイの先端方向に倒すと原稿の挿入口を開放するとともに、原稿の挿入口から挿入されるべき原稿を保持し、原稿トレイの基端方向に倒すと原稿の挿入口を覆うと共に外観を向上させる」ことは、本願発明の「蓋部材は、開放位置において、原稿挿入口を開放するとともに、原稿挿入口から原稿搬送路に挿入されるべき原稿を支持する一方、閉鎖位置において、外装部材の一部を構成するとともに、原稿挿入口を覆う」ことに相当する。 したがって、引用発明1における構成要素を本願発明において用いられている用語に置き換えれば、本願発明と引用発明は以下の点で一致、あるいは相違する。 [一致点] (キ)原稿の画像を読み取る画像読取手段、原稿挿入口から前記画像読取手段を経由して原稿排出口に至る間に原稿を搬送する原稿搬送路、シート体に画像を形成する画像形成手段、及び、シート体挿入口から前記画像形成手段を経由してシート体排出口に前記シート体を搬送するシート体搬送路を内蔵する装置本体と、 前記装置本体を外装する外装部材と、 前記装置本体に対して所定の開放位置と所定の閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材と、 を備え、 前記原稿挿入口、シート体挿入口及び前記シート体排出口を、前記装置本体の上部において、搬送されるべき原稿、搬送されるべきシート体及び排出されたシート体の面方向に直交する方向に並設し、 前記蓋部材は、前記開放位置において、前記原稿挿入口を開放するとともに、前記原稿挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべき原稿を支持する一方、前記閉鎖位置において、前記外装部材の一部を構成するとともに、前記原稿挿入口を覆うことを特徴とする画像記録装置。 [相違点] (ク)蓋部材が開放若しくは覆う具体的な装置本体の部位構成及び支持す部材構成について、本願発明は「原稿挿入口」に加えて「シート体挿入口及びシート体排出口」を開放し、「原稿挿入口から原稿搬送路に挿入されるべき原稿」に加えて「シート体挿入口からシート体搬送路に挿入されるべきシート体、及び、シート体排出口から排出されたシート体」を支持し、「原稿挿入口」に加えて「シート体挿入口及びシート体排出口」覆うものであるのに対し、引用発明1では単に「原稿の挿入口」を開放し、「原稿」を支持し、「原稿の挿入口」を覆うものである点。 4.相違点の判断 相違点(ク)について検討する。 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物2(特開2001-97560号公報)には、記録紙挿入口や原稿挿入口からごみなどの異物が内部に侵入することを防止するために、装置本体に対して開閉可能に取り付けられた支持部材である原稿兼記録紙載置台を設け、当該原稿兼記録紙載置台が閉鎖位置にあるときに記録紙挿入口及び原稿挿入口を塞ぎ、当該原稿兼記録紙載置台が開放位置にあるときに原稿あるいは記録紙をセットする画像読取記録装置(段落【0020】?【0025】)が記載されている。 これを、本願発明で用いられている用語で表現すれば、刊行物2には、「装置本体に対して所定の開放位置と所定の閉鎖位置との間で変位自在な蓋部材を備え、前記蓋部材は、前記開放位置において原稿挿入口及びシート体挿入口を開放するとともに、前記原稿挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべき原稿及び前記シート体挿入口から前記原稿搬送路に挿入されるべきシート体を支持する一方、前記閉鎖位置において、前記原稿挿入口及び前記シート体挿入口を覆う画像記録装置」の発明が記載されている。 引用発明1に記載された発明における蓋部材を引用文献2に記載された発明における蓋部材に置換して、蓋部材の開放位置において装置本体の挿入口及び排出口を開放するとともに、原稿及びシート体を支持し、閉鎖位置において装置の挿入口及び排出口を覆う構成とすることに格別の困難性はない。 そして、上記相違点(ク)を判断しても、本願発明が格別顕著な構成であり、格別顕著な効果を奏するものであるということはできないから、本願発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 補足 仮に平成21年12月24日付けで補正された、「前記装置本体の上部は、水平面に対して前記蓋部材側へ下り傾斜し」に関して、当該補正が特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるとしても、次に示す理由により、本件補正は却下すべきものである。 補正後の請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると、上記一致点(キ)において両者は一致すると共に、上記相違点(ク)に加えて、以下の点で相違する。 [相違点] (ケ)補正後の請求項1に係る発明が「前記装置本体の上部は、水平面に対して前記蓋部材側へ下り傾斜し」た構造を有するのに対し、引用発明1はそのような構成について言及されていない点。 上記相違点(ケ)について検討する。 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物2の図1?3、5や、特開平10-190911号公報の図3に記載されているように、画像記録装置において、装置本体の上部を水平面に対して下り傾斜した構造とすることは周知であって、当該構成を引用発明1に採用して、「前記装置本体の上部は、水平面に対して前記蓋部材側へ下り傾斜し」た構造とすることに格別の困難性は見い出せない。 そして、上記相違点(ク)及び(ケ)を総合的に判断しても、補正後の請求項1に係る発明が格別顕著な構成であり、格別顕著な効果を奏するものであるということはできない。 それゆえ、補正前の請求項1に係る発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正が特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるとしても、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第4 まとめ 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2?4に係る発明について特に検討をするまでもなく本願は拒絶をすべきものである。 よって、原査定を取り消す、本願は特許すべきものであるとの審決を求めるという請求の趣旨は認められないから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-02 |
結審通知日 | 2011-02-08 |
審決日 | 2011-02-21 |
出願番号 | 特願2005-221386(P2005-221386) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國分 直樹 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
溝本 安展 吉村 博之 |
発明の名称 | 画像記録装置 |
代理人 | 特許業務法人 楓国際特許事務所 |