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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1236362
審判番号 不服2010-5046  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-08 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2005- 99358「給電システム及び電池パック」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-280173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年3月30日の出願であって、平成21年12月1日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成21年12月8日)、これに対し、平成22年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出されたものである。


2.平成22年3月8日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年3月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正前の平成20年12月3日付手続補正書に記載された特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第一コイルと、
当該第一コイルの内部に配置される第一コアと、
を有する第一ユニット体
及び
前記第一コイル及び前記第一コアが共に挿入される開口部と、
前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイルと、
前記開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、
を備える第二ユニット体
を備え、
前記第一ユニット体は電池パックであり、前記第二ユニット体は外部電源に接続可能な電子機器であり、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記第一ユニット体と前記第二ユニッ卜体のいずれか一方から他方に対し給電を行うことを特徴とする給電システム。
【請求項2】
第一コイルと、
当該第一コイルの内部に配置されると共に、一部が前記第一コイルから突出した突出部を有する第一コアと、
を備える第一ユニット体
及び
前記第一コイル及び前記第一コアが共に挿入される第一開口部と、
前記第一開口部の底部に設けられると共に前記突出部が挿入される第二開口部と、
前記第一コイルの外側を囲うよう前記第一開口部を囲んで巻線された第二コイルと、
前記第一開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、
を備える第二ユニット体
を備え、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記第一ユニット体と前記第二ユニット体のいずれか一方から他方に対し給電を行うことを特徴とする給電システム。
【請求項3】
前記第一ユニット体は電池パックであり、前記第二ユニット体は外部電源に接続可能な電子機器であることを特徴とする請求項2に記載の給電システム。
【請求項4】
誘導起電力により動作する携帯電子機器に装着され、前記携帯電子機器に給電を行う電池パックであって、
前記電池パックは、
電池セルと、
前記電池セルに接続される回路部と、
前記回路部に接続されて前記誘導起電力発生のための磁力を発生させるコイルと、
前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを外部に露出させず一体に成型したケース部材とを備え、
前記ケース部材は、前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により、前記回路部を破壊しないよう低温低圧にて少なくとも前記電池セルと前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型されることを特徴とする電池パック。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
第一コイルと、
当該第一コイルの内部に配置される第一コアと、
電池セルと、
前記第一コイルを前記電池セルに接続する回路部と、
を有する電池パック、
及び
前記電池パックが挿入される収納スペースが設けられた筐体と、
前記第一コイルの外側を囲うよう前記収納スペースを囲んで巻線された第二コイルと、
前記収納スペースを軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、
を有し、外部電源に接続可能な電子機器
を備え、
前記電池パックは、前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により少なくとも前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型され、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記電池パックと前記電子機器のいずれか一方から他方に対し給電を行うことを特徴とする給電システム。
【請求項2】
第一コイルと、
当該第一コイルの内部に配置されると共に、一部が前記第一コイルから突出した突出部を有する第一コアと、
前記第一コイルが接続される回路部と、
を有する第一ユニット体
及び
前記第一ユニット体が挿入される収納スペースが設けられた筐体と、
前記収納スペースの底部に設けられると共に前記突出部が挿入される開口部と、
前記第一コイルの外側を囲うよう前記収納スペースを囲んで巻線された第二コイルと、
前記収納スペースを軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、
を有する第二ユニット体
を備え、
前記第一ユニット体は、前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により少なくとも前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型され、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記第一ユニット体と前記第二ユニット体のいずれか一方から他方に対し給電を行うことを特徴とする給電システム。
【請求項3】
前記第一ユニット体は電池パックであり、前記第二ユニット体は外部電源に接続可能な電子機器であることを特徴とする請求項2に記載の給電システム。
【請求項4】
誘導起電力により動作する携帯電子機器に装着され、前記携帯電子機器に給電を行う電池パックであって、
前記電池パックは、
電池セルと、
前記電池セルに接続される回路部と、
前記回路部に接続されて前記誘導起電力発生のための磁力を発生させるコイルと、
前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを外部に露出させず一体に成型したケース部材とを備え、
前記ケース部材は、前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により、前記回路部を破壊しないよう低温低圧にて少なくとも前記電池セルと前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型されることを特徴とする電池パック。」


(2-1)新規事項について
(ア)本件補正後の請求項1には、「前記電池パックが挿入される収納スペースが設けられた筐体と、前記第一コイルの外側を囲うよう前記収納スペースを囲んで巻線された第二コイル」と記載されているから、本件補正後の請求項1に係る給電装置は、第二コイルが電池パックが挿入される収納スペースを囲んで巻線されていることとなる。
そこで、当該記載が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、「前記開口部に前記凸部が挿入された際に前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイルを内包する第二ユニット体」(【請求項1】)、「開口部25の周囲を囲むよう開口部25の深さ方向を軸として巻線された第二コイル27」(【0025】)を示した図1、図2が示されているにすぎず、電池パック11の凸部12が挿入される凹状の開口部25の手前側の電池パック(第一ユニット体)11を収納し得る形状の収納スペース24を囲むように第二コイルを巻線することは、図4、図5を参照しても記載も示唆もない。
したがって、第一コイルの外側を囲うよう収納スペースを囲んで巻線された第二コイルを設けることが、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

(イ)本件補正後の請求項1には、「前記電池パックは、前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により少なくとも前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型され」と記載されているから、電池パックの構成要件のうち、回路部とコイルの表面のみを樹脂で被覆してもよいことととなる。
そこで、当該記載が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、「樹脂により、前記回路部を破壊しないよう低温低圧にて少なくとも前記電池セルと前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型される」(【請求項6】)、
「先端に凸部12を形成した低温低圧成型樹脂等のケース部材13と、ケース部材13の内部で反凸部側に配置される電池セル14と、ケース部材13の内部で電池セル14の端子側(図1、図2では上方)に設置されるプリント配線板(回路部)15と、ケース部材13の内部でプリント配線板15の反電池セル側(図1、図2では上方)に配置されるフェライト等のコア16とを備えている。」(【0020】)、
「ケース部材13は、第一接点部材20、プリント配線板15、第二接点部材21、コア16、第一コイル19を表面に露出させないよう覆って形成されている。ここで、低温低圧成型樹脂等のケース部材13は、樹脂にてプリント配線板(回路部)15の回路を破壊しないよう低温低圧にて電池セル14とプリント配線板(回路部)15と第一コイル19の表面を被覆し、樹脂が凝固されて形成されている。」(【0022】)、
「ケース部材13は、電池セル14とプリント配線板(回路部)15と第一コイル19とを接続した状態にて、樹脂により、プリント配線板(回路部)15を破壊しないよう低温低圧にて少なくとも電池セル14とプリント配線板(回路部)15と第一コイル19の表面を被覆した後に凝固されて成型される」(【0038】)、
と記載されているにすぎず、少なくとも電池セルと回路部とコイルの表面を樹脂で被覆はしているが、回路部とコイルの表面のみを樹脂で被覆することは、図1、図2を参照しても記載も示唆もない。
したがって、「前記電池パックは、前記電池セルと前記回路部と前記コイルとを接続した状態にて、樹脂により少なくとも前記回路部と前記コイルの表面を被覆した後に凝固されて成型され」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。


(2-2)目的要件について
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。

(ア)平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
第二コイルに関し、本件補正前の請求項1に記載された給電システムでは、第一コイルの外側を囲うよう開口部を囲んで巻線されていたものが、本件補正後の請求項1に記載された給電システムはで、第一コイルの外側を囲うよう収納スペースを囲んで巻線されている。そして、当初明細書等には、「収納スペース24の奥側には、電池パック11の凸部12が挿入される凹状の開口部25を有する」(【0024】)とあり、開口部と収納スペースは別部材である。
したがって、本件補正後の請求項1の記載により特定される給電システムの発明は、本件補正前の請求項1の記載により特定される給電システムの発明よりも限定されたものとはなっていないので、同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。

(イ)本件補正後の請求項1に記載された給電システムは、電池パックは、電池セルと回路部とコイルとを接続した状態にて、樹脂により少なくとも回路部とコイルの表面を被覆した後に凝固されて成型されて、防水防塵性を向上させているがいるが、本件補正前の請求項1に記載された給電システムは、第一ユニット体は電池パックと特定するのみであり、樹脂に関する記載はなく、したがって防水防塵の対策に関する構成は何等記載されていない。
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。防水防塵性を向上させるための樹脂に関する記載が、本件補正前の請求項1に記載された給電システムには何等記載がないから、防水防塵性を向上させる本件補正後の請求項1に記載された給電システムが解決しようとする課題は、本件補正前の請求項1には存在しない。
したがって、本件補正は、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一であるとは認められず、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明
本件補正は、上記「2.」のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成20年12月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第一コイルと、
当該第一コイルの内部に配置される第一コアと、
を有する第一ユニット体
及び
前記第一コイル及び前記第一コアが共に挿入される開口部と、
前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイルと、
前記開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、
を備える第二ユニット体
を備え、
前記第一ユニット体は電池パックであり、前記第二ユニット体は外部電源に接続可能な電子機器であり、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記第一ユニット体と前記第二ユニッ卜体のいずれか一方から他方に対し給電を行うことを特徴とする給電システム。」


(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-274857号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a「従来より、充放電を繰り返し行うことができる2次電池を利用した充電式電気機器が種々提案されている。そして、上記のような充電式電気機器としては、たとえば、携帯電話や電気かみそりなどがあるが、携帯電話や電気かみそりなどは様々な場所で利用され、水分や埃の多い環境で使用されたり、直接水がかかったりするおそれがある。
一方、上記のような充電式電気機器においては、充電式電気機器とは別個に設けられた外部電源から電力が供給され、その電力が充電式電気機器の電源部の2次電池に充電されるため、外部電源と電源部とが接続されている必要がある。また、電源部の2次電池に充電された電力は、充電式電気機器の作動部に供給されるため、作動部と電源部との間が接続されている必要がある。」(【0002】-【0003】)

b「本発明は、上記のような事情に鑑み、2次電池を備えた電源装置において、上記のような充電式機器の防水性を向上させ、その使用環境性を向上させる電源装置を提供することを目的とするものである。
本発明の電源装置は、2次電池を備えた電源装置において、外部電源に設けられた放電用巻線において形成された交流磁界により交流電圧が誘起される第1の巻線と、その第1の巻線において誘起された交流電圧に応じた電力を2次電池に充電する充電回路部と、2次電池において発生した電圧に応じた交流電圧を発生する放電回路部と、その放電回路部において発生した交流電圧に応じた交流磁界を発生し、その交流磁界により外部装置に設けられた充電用巻線に交流電圧を誘起する第2の巻線とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、上記「外部電源」とは、上記電源装置とは別個に設けられた電源であり、上記「外部装置」とは、上記電源装置とは別個に設けられたものであって、上記電源装置から電力の供給を受けて動作するものである。」(【0007】-【0009】)

c「図3に、上記のようにして構成された電源装置1を外部装置2に設置した際の概略構成図を示す。
外部装置2は、図3に示すように、電源装置1のリードスイッチ50をONさせる磁石60、コイル20において発生した磁界により交流電圧が誘起される充電用コイル61および該充電用コイル61が巻かれた磁性体62を備えている。そして、電源装置1におけるコイル20と外部装置2における充電用コイル61とは互いに近接して設置されるように構成されている。なお、電源装置1における充電回路部21、放電回路部30およびスイッチ回路部40は、電源装置1に設けられた基板63に積載されている。また、電源装置1におけるリードスイッチ50は、外部装置2の磁石60に近接して設置されるように基板63に設けられている。」(【0025】-【0026】)

d「また、上記実施形態におけるコイル20を磁性体に巻くようにしてもよい。」(【0036】)

上記記載及び図面を参照すると、充電用コイル61の内部に磁性体62が配置され、また、充電用コイル61及び磁性体62が共に電源装置の開口部に挿入され、また、充電用コイル61の外側を囲うよう電源装置の開口部を囲んで巻線されたコイル20が示されている。
上記記載及び図面を参照すると、電源装置と充電式電気機器で、電力供給システムが形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、コイル20が巻かれる磁性体は、コイル20が電源装置の開口部を囲んだ中空円筒状であるから、磁性体も中空円筒状となり、当該中空円筒状の磁性体はコイル20の内周に配置されるか、外周に配置されるかの何れかであるから、コイル20が巻かれる磁性体は、少なくとも開口部を外側から取り囲むようにして形成される磁性体といえる。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「充電用コイル61及び磁性体62が共に挿入される開口部と、
前記充電用コイル61の外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線されたコイル20と、
少なくとも前記開口部を外側から取り囲むようにして形成される磁性体と、
を有する電源装置1
及び
前記充電用コイル61と、
当該充電用コイル61の内部に配置される磁性体62と、
を備える充電式電気機器
を備え、
前記電源装置1は2次電池を備えており、前記充電式電気機器は携帯電話であり、
前記コイル20及び充電用コイル61の交流磁界による交流電圧の誘起により、前記電源装置1と前記充電式電気機器のいずれか一方から他方に対し電力を供給する電力供給システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、その機能・作用からみて、引用発明の「コイル20」、「磁性体」、「電源装置1」、「充電用コイル61」、「磁性体62」、「充電式電気機器」、「携帯電話」、「交流磁界による交流電圧の誘起」、「電力を供給する」、「電力供給システム」は、本願発明の「第一コイル」、「第一コア」、「第一ユニット体」、「巻線された第二コイル」、「第二コア」、「第二ユニット体」、「電子機器」、「電磁誘導」、「給電を行う」、「給電システム」に、それぞれ相当している。

その機能をも考慮すると、引用発明の「電源装置は2次電池を備えており」は、本願発明の「第一ユニット体は電池パックであり」に、相当している。

したがって、両者は、
「第一コイルと、
第一コアと、
を有する第一ユニット体
及び
巻線された第二コイルと、
第二コアと、
を備える第二ユニット体
を備え、
前記第一ユニット体は電池パックであり、前記第二ユニット体は電子機器であり、
前記第一コイル及び第二コイルの電磁誘導により、前記第一ユニット体と前記第二ユニッ卜体のいずれか一方から他方に対し給電を行う給電システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
第一ユニット体と第二ユニット体の、開口部が設けられるユニット体が逆であるので、凹凸関係が逆であり、
本願発明は、第二ユニット体に開口部が設けられ、第一ユニット体は、第一コイルと、当該第一コイルの内部に配置される第一コアを有し、第二ユニット体は、第一コイル及び第一コアが共に挿入される開口部と、前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイルと、前記開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアを備えているのに対し、
引用発明は、第一ユニット体(「電源装置」が相当)に開口部が設けられ、第一ユニット体は、第二コイル及び第二コアが共に挿入される開口部と、前記第二コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第一コイルと、少なくとも前記開口部を外側から取り囲むようにして形成される第一コアを有し、第二ユニット体は、第二コイルと、当該第二コイルの内部に配置される第二コアを備えている点。
〔相違点2〕
電子機器に関し、本願発明は、外部電源に接続可能であるのに対し、引用発明は、かかる特定がなされていない点。


(3)判断
相違点1について
二部材の凹凸による結合は、どちらに凹部を設け、どちらに突部を設けるかは、二者択一の選択事項であるから、引用発明のように、第一ユニット体に開口部を設けるのに代えて、第二ユニット体に開口部を設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることと認められる。
また、先に示した特開2000-260642号公報(特に、【0002】、図6、図7参照)にもみられるように、「第一コイル(「一次コイル」が相当)と、当該第一コイルの内部に配置される第一コア(「一次コア」が相当)と、を有する第一ユニット体(「一次側コネクタ」が相当)、及び、前記第一コイル及び前記第一コアが共に挿入される開口部(「受容部」が相当)と、前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイル(「二次コイル」が相当)と、前記開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コア(「有底円筒状の二次コア」が相当)と、を備える第二ユニット体(「二次側コネクタ」が相当)」は、給電分野において周知の事項である。
さらに、引用発明において、少なくとも開口部を外側から取り囲むようにして形成される第一コアを、上記特開2000-260642号公報のように開口部を軸方向側からも取り囲むようにすれば、第一ユニット体と第二ユニット体の磁気的結合が、より強固になることは自明の事項である。
したがって、引用発明においても、上記周知の事項及び自明の事項も考慮して、第一ユニット体に代えて第二ユニット体に開口部を設け、第一ユニット体と第二ユニット体を、第一コイルと、当該第一コイルの内部に配置される第一コアと、を有する第一ユニット体、及び、前記第一コイル及び前記第一コアが共に挿入される開口部と、前記第一コイルの外側を囲うよう前記開口部を囲んで巻線された第二コイルと、前記開口部を軸方向側及び外側から取り囲むようにして形成される第二コアと、を備える第二ユニット体とすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

相違点2について
引用発明の電子機器は携帯電話であり、携帯電話が外部電源に接続可能であることは慣用手段であるから、引用発明おいて、電子機器を外部電源に接続可能とすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の事項、自明の事項及び慣用手段から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項、自明の事項及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項、自明の事項及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2005-99358(P2005-99358)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H02J)
P 1 8・ 561- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 晃  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 田良島 潔
冨江 耕太郎
発明の名称 給電システム及び電池パック  
代理人 特許業務法人山田特許事務所  

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