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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1236997
審判番号 不服2008-27985  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-31 
確定日 2011-05-11 
事件の表示 特願2004-535625「入れ子式ワンドアセンブリ保持手段を備えた清掃機器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日国際公開、WO2004/023963、平成17年12月15日国内公表、特表2005-537880〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成15年8月21日(優先権主張2002年9月14日、イギリス国)を国際出願日とする出願であって、同19年12月28日付けで拒絶の理由が通知され、同20年7月31日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年10月31日に本件審判の請求がなされ、当審において同22年6月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月18日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

2.拒絶理由の概要
当審で通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

本件出願の請求項1ないし18に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.実願昭48-2446号(実開昭49-103765号)のマイクロフイルム
2.実願昭61-158305号(実開昭63-64344号)のマイクロフイルム
3.実願昭51-141260号(実開昭53-59566号)のマイクロフイルム
4.特開2002-233483号公報
5.特開2000-197596号公報
6.実願昭47-72413号(実開昭49-32459号)のマイクロフイルム

請求項1発明について
刊行物1には、請求項1発明に照らし、以下の発明が記載されている。
「本体10と、ホース15及びワンドアセンブリ17,19と、を備えたシリンダタイプの清掃機器であって、
前記ホース及びワンドアセンブリが、引っ込められた位置と延長された位置との間で移動可能な入れ子式ワンド19a、19bと、前記本体に接続された第1の端部16と前記ワンドに接続された第2の端部17と有する可撓ホース15と、を備え、
前記ワンドと前記本体とは、前記ワンドが引っ込められた状態であるときに前記ワンドを前記本体の上面に解放可能に取り付けるための保持手段14aを含む清掃機器。」

請求項1発明と刊行物1発明とは、以下を除き一致する。
相違点1:請求項1発明は、「本体の上面が前記ワンドを受け入れるための通路を備え」ているが、刊行物1発明はそのようなものではない点。
相違点2:請求項1発明は、「ワンドによって持ち運ぶことができる」ものであるが、刊行物1発明はそのようなものではない点。

相違点1について検討する。
ワンド収納のため、本体に通路を設けるものは、刊行物1の第6図、刊行物2の第4図、第5図にみられるごとく周知である。
相違点2について検討する。
ワンドによって持ち運ぶものは、刊行物3?6にみられるごとく周知である。
(略)

請求項5?6で限定した点については、刊行物4?6に記載されている。
(略)

例えば、請求項1に、請求項4,5,11で限定した事項を付加し、有利な効果を主張することで、特許性を主張しうると思われる。

3.本願発明
本願の請求項1に係る発明(補正前の「請求項5に係る発明」に相当し、以下「本願発明」という。)は、平成22年11月18日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「本体(100,510)と、ホース(150,520)及びワンドアセンブリ(160,522)と、を備えたシリンダタイプの清掃機器であって、
前記ホース及びワンドアセンブリが、引っ込められた位置と延長された位置との間で移動可能な入れ子式ワンド(160,522)と、前記本体に接続された第1の端部と前記ワンドに接続された第2の端部と有する可撓ホース(150,520)と、を備え、
前記本体の上面が前記ワンドを受け入れるための通路(300)を備え、
前記ワンドと前記本体とは、前記ワンドが引っ込められた状態であるときに前記ワンドを前記本体の前記上面に解放可能に取り付けるための保持手段(130,135,220,222,225)を含み、よって前記清掃機器が前記ワンドによって持ち運ぶことができ、
前記ワンドは、該ワンドが前記本体に取り付けられたときにユーザーが前記本体を持ち上げることができるようにするハンドルを有していることを特徴とする清掃機器。」

ここで、「ワンドアセンブリ(160,522)」と「ワンド(160,522)」とは、図面参照符号が「160,522」で同一である。また、発明の詳細な説明の段落0018、0021に「ワンドアセンブリ160」とあり、段落0021に「ワンド160」とあるごとく、発明の詳細な説明でも同一に扱われている。
よって、両者は実質的に同じであると認める。

4.刊行物記載の発明
これに対し、本願優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された実願昭48-2446号(実開昭49-103765号)のマイクロフイルム(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.第3ページ第3?6行
「第1図?第5図はこの考案の一実施例を示すものである。図において10は掃除機本体で、いわゆるシリンダ型掃除機と同様に水平方向に長い本体形状をしている。」

イ.第3ページ第9?16行
「14はハンドルで、本体10の上面中央に長手方向に沿って突設されている。ハンドルの後端と本体との間には、後記フレキシブルホースを引掛けるための切欠部14aが設けられている。
15はフレキシブルホースで、一端に接続パイプ16が連結され、ホース接続口11に着脱可能に接続されている。そのホース15の他端には直線状の端パイプ17が接続されている。」

ウ.第4ページ第1?5行
「19は延長管で、外管19aと、その外管内に伸縮調節可能に挿嵌された内管19bと、両管を任意の伸縮位置で固定する締付リング19cとから成る。外管19aは端パイプ17内に摺動可能に挿嵌されている。」

エ.第1図
「延長管19が引っ込められた状態であるときにフレキシブルホース15を本体10の上面に解放可能に引掛ける切欠部14a」が看取できる。

上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「本体10と、ホース15及び端パイプ17,延長管19と、を備えたシリンダ型の掃除機であって、
前記ホース15及び延長管19が、伸縮調節可能に挿嵌された外管19a、内管19bからなる延長管19と、前記本体10の前面に開口するホース接続口11に接続された一端と前記端パイプ17に接続された他端と有するフレキシブルホース15と、を備え、
前記端パイプ17,延長管19と前記本体10とは、前記延長管19が引っ込められた状態であるときに前記フレキシブルホース15を前記本体10の上面に解放可能に引掛けるための切欠部14aを含み、
前記切欠部14aが設けられ、本体10の上面中央に長手方向に沿って突設されたハンドル14を含む掃除機。」

5.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明における「端パイプ17」、「延長管19」の両者は本願発明における「ワンドアセンブリ」又は「ワンド」に相当し、同様に、「シリンダ型」は「シリンダタイプ」に、「掃除機」は「清掃機器」に、「伸縮調節可能に挿嵌された外管19a、内管19bからなる」は「引っ込められた位置と延長された位置との間で移動可能な入れ子式」に、「一端」は「第1の端部」に、「他端」は「第2の端部」に、「フレキシブルホース15」は「可撓ホース」に、「切欠部14a」は「保持手段」に、相当する。
刊行物1発明における「フレキシブルホース15を前記本体10の上面に解放可能に引掛ける」と、本願発明における「ワンドを前記本体の前記上面に解放可能に取り付ける」とは、「吸引管を前記本体の前記上面に解放可能に取り付ける」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「本体と、ホース及びワンドアセンブリと、を備えたシリンダタイプの清掃機器であって、
前記ホース及びワンドアセンブリが、引っ込められた位置と延長された位置との間で移動可能な入れ子式ワンドと、前記本体に接続された第1の端部と前記ワンドに接続された第2の端部と有する可撓ホースと、を備え、
前記ワンドと前記本体とは、前記ワンドが引っ込められた状態であるときに吸引管を前記本体の前記上面に解放可能に取り付けるための保持手段を含む清掃機器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明は、本体の上面が「ワンドを受け入れるための通路を備え」ているが、刊行物1発明はそのようなものではない点。
相違点2:本願発明は、本体に解放可能に取り付けるものが「ワンド」であり、「ワンドによって持ち運ぶことができ」、「ワンドは、該ワンドが前記本体に取り付けられたときにユーザーが前記本体を持ち上げることができるようにするハンドルを有している」ものであるが、刊行物1発明は、本体に解放可能に取り付けるものが「フレキシブルホース」であり、「本体の上面中央に長手方向に沿って突設されたハンドル」を有するものである点。

相違点1について検討する。
ワンド収納のため、本体に通路を設けるものは、上記刊行物1の第6図、上記2.の刊行物2の第4図、第5図にみられるごとく周知である。
本体の通路により、ワンドの確実な保持が期待されることから、刊行物1発明にかかる周知技術を適用することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。

相違点2について検討する。
刊行物1発明において、持ち運びのための部材としては「本体の上面中央に長手方向に沿って突設されたハンドル」である必然性はない。
ハンドルを有するワンドによって持ち運ぶものは、上記2.の刊行物4の要約、同じく刊行物5の要約にみられるごとく周知である。
刊行物1発明は、ワンドが本体上面、すなわち持ち運びに便利な位置にあることから、かかる周知技術を踏まえ、ハンドルを有するワンドによって持ち運ぶものとすることは設計的事項にすぎない。
この場合、ワンドは本体に安定的に保持される必要があるので、刊行物1発明の「フレキシブルホース」を利用した保持に代え、「ワンド」を利用した保持とすることに困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義が存するとは認められない。

請求人は、意見書で、刊行物1記載の発明との相違点を主張している。
請求人が言う「刊行物1記載の発明」は、刊行物1の「他の実施例」である第6?8図のものである。
上記2.の拒絶理由では、刊行物1発明の認定において、「ワンドを前記本体の上面に解放可能に取り付けるための保持手段14a」とされ、相違点の認定において、「本体の上面が前記ワンドを受け入れるための通路を備え」る点を相違点1としているごとく、第1?5図の「実施例」をもとに「刊行物1発明」を認定していることは明らかである。
よって、請求人の主張は根拠がない。

6.むすび
本願発明は、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-09 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-27 
出願番号 特願2004-535625(P2004-535625)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 所村 美和
千葉 成就
発明の名称 入れ子式ワンドアセンブリ保持手段を備えた清掃機器  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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