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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1239383 |
審判番号 | 不服2009-24959 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-16 |
確定日 | 2011-06-28 |
事件の表示 | 特願2006-353721「色彩変化を有するパターン」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日出願公開、特開2008- 46586〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年12月28日(特許法第43条の2第1項に規定するパリ条約の例による優先権主張2006年8月15日、(TW)台湾)の出願であって、平成21年6月26日に手続補正がなされ、同年8月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 なお、請求人は、当審における平成22年7月27日付け審尋に対して、同年11月5日に回答書を提出している。 第2 平成21年12月16日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成21年12月16日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1 補正の内容 (1)平成21年12月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、特許請求の範囲について、本件補正前に、 「【請求項1】 パターンがキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる色彩変化を有するパターンであって、前記パターンユニットは キャリー表面に現れる、均一の面積である異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである色彩パターンと、 該色彩パターンを覆う球面透明粒であって、該球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じることを特徴とする色彩変化を有するパターン。 【請求項2】 キャリー表面に現れる色彩パターンは段階的な色彩からなるカラーリングであることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項3】 キャリー表面に現れる色彩パターンはキャリー表面に付いている色彩材料からなることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項4】 キャリー表面に現れる色彩パターンはキャリー表面に結合する基本材料に現れることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項5】 前記球面透明粒は頂端が弧状を描く半円球体またはシリンダー体から選ぶことができることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項6】 前記球面透明粒は透明高分子材料により形成することを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。」とあったものを、 「【請求項1】 パターンが服装材料または普段着用などの柔軟な織物上のキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる色彩変化を有するパターンであって、前記パターンユニットはキャリー表面に現れる色彩パターンと、 色彩パターンを覆う球面透明粒であって、球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じることを特徴とし、該球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適であることを特徴とする色彩変化を有するパターン。 【請求項2】 キャリー表面に現れる色彩パターンは異なる色のカラーブロックからなるカラーリングであることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項3】 前記カラーリング上のカラーブロックはどれも均一の面積であることを特徴とする請求項2に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項4】 キャリー表面に現れる色彩パターンは段階的な色彩からなるカラーリングであることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項5】 キャリー表面に現れる色彩パターンはキャリー表面に付いている色彩材料からなることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。 【請求項6】 キャリー表面に現れる色彩パターンはキャリー表面に結合する基本材料に現れることを特徴とする請求項1に記載する色彩変化を有するパターン。」に補正するものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (2)上記(1)の本件補正後の特許請求の範囲に係る補正は、次のアないしエの補正内容を含んでいる。 ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「色彩パターン」について、「均一の面積である異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである」との規定を削除する。 イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「キャリー表面」について、「服装材料または普段着用などの柔軟な織物上の」と限定する。 ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「球面透明粒」について、「それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置される」と限定し、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「色彩変化を有するパターン」について、「球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適である」と限定する。 エ 本件補正前の特許請求の範囲にない新たな請求項2及び3を追加し、それに伴って、本件補正前の請求項2ないし4をそれぞれ新たな請求項4ないし6とするとともに、本件補正前の請求項5及び6を削除する。 2 新規事項の追加について 本件補正により、本件補正後の請求項1に「球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適である」(上記1(2)ウ参照。)という事項が追加されたが、前記事項は本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されておらず、「球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置される」ことは、図2及び図3から自明であるとしても、それにより「該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適である」ことについては示唆もされておらず、織物のどの部分の柔軟度と酸素透過性が保持されるのかすらも把握することができない。 仮に、図2及び図3から見て取れるところの、独立に形成された球面透明粒124同士間の隙間において織物の柔軟度と酸素透過性が保持されることが意図されているとしても、図2及び図3に記載された例では、パターン10全体が輪郭線で囲まれていること(図2参照。)及び衣服20の球面透明粒124を含むパターンユニット12以外の部分にも色彩パターン122と面一の層が存在すること(図3参照。)が見て取れるから、パターン10全体にわたって衣服20を覆う層の存在が認められ、該層の特性も不明であるから、球面透明粒124同士間の隙間において織物の柔軟度と酸素透過性が保持されることも自明とはいえない。 してみると、本件補正後の請求項1に「球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適である」という事項を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反してなされたものである。 3 補正の目的について 上記2より、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるが、念のために、本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものと仮定して、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に規定する補正の目的に関する要件を満たしているかどうかについて以下に検討する。 上記1(2)アの本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項(色彩パターン)の規定を削除する補正及び上記1(2)エの本件補正前の特許請求の範囲にない新たな請求項を追加する補正は、補正前の特許請求の範囲に記載された発明を特定する事項を限定するものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に規定する要件をいずれも満たしていないものである。 4 独立特許要件について 上記3より、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に規定する要件をいずれも満たしていないことは明らかであるが、本件補正後の請求項1に係る発明に関する本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定する補正内容(上記1(2)イ及びウ参照。)を含んでいることから、さらに念のために、本件補正後の請求項1に係る発明に関する本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮定して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 上記1(2)に記載した、本件補正後の請求項1においては、「パターンユニット」の構成が明確でない記載となっているが、本願明細書の「前記パターンユニットは直接又は間接的にキャリー表面に現れる色彩パターンと、色彩パターンを覆う球面透明粒を含み(【0008】参照。)」との記載からみて、本願補正発明を次のとおり認定した。 「パターンが服装材料または普段着用などの柔軟な織物上のキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる色彩変化を有するパターンであって、 前記パターンユニットはキャリー表面に現れる色彩パターンと、色彩パターンを覆う球面透明粒とを含み、 球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じることを特徴とし、該球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適であることを特徴とする色彩変化を有するパターン。」 (2)刊行物の記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平1-260059号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「『産業上の利用分野』 この発明は、捺染模様地の上に合成樹脂材の粒状体を付着した布地およびその製法に関するものである。 『従来の技術』 合成樹脂液粒を織物あるいは編み物(以下布地という)に滴下させた後に、これを加熱して硬化を促進し、この布地に合成樹脂粒あるいはその図形状のものを付着させる技術は、本件出願人が特願昭61-184756号(特開昭63-42983号)、特願昭61-23707号として先の提案したところであるが これらは布地に直接、合成樹脂液を滴下させ、連続的に付着させるものであった。 『発明が解決しようとする課題』 この発明は前記出願をさらに改良して、布地面に施した捺染模様地上に、合成樹脂粒を付着させる技術に関するものである。 『課題を解決するための手段』 溶融した重合基あるいは縮合基をもった合成樹脂液に触媒および重縮合反応促進剤を加え、これらをよく攪拌して得た調合樹脂液を用意し、一方捺染する布地を任意の速度と長さで間欠的に進行させ(審決注:「せせ」は「させ」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。)、捺染した布地が停止した状態のときに、滴下ノズルから調合樹脂液をその捺染模様上に滴下させ、その後、加熱し重縮合反応を進行させ硬化させることによって、合成樹脂粒を布地の捺染模様上に付着させるものである。 『作用』 捺染した布地の捺染模様上に滴下した調合樹脂液は、粒状体を形成してレンズ効果を有する美麗な製品となり、また捺染工程に合わせて間欠的にこの粒状体が捺染模様上に配置されることによって、捺染模様の上に合成樹脂材の粒状体が付着した布地を容易に量産することができる。」(第1頁右下欄第6行?第2頁左上欄第19行)(審決注:上記アにおいては「」を『』と訂正して摘記している。) イ 「そして第2図に示すように、この第2図示の前工程より連続して自動スクリーン捺染機[図示せず]の捺染ベルト(V)に接着された前記布地(X)が矢印(a)方向に間欠移動している。すなわち前工程においてこの捺染ベルト(V)が停止している間に、予め調整された金属箔微少片(たとえばマイラー粉と称されるものなど)混入の捺染糊で、比較的小さい水玉模様(p)が捺染され、捺染ベルト(V)が一定距離規則的に移動した後、また停止し、その間に前記捺染がなされ、さらに移動するという間欠運動を繰り返しながら、水玉模様(p)(審決注:「P」は「p」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。)の捺染操作が連続的に行われる。 この第2図において、前述のような操作によって規則的に捺染された水玉模様(p)の一つ一つの上部から、第1図において述べた透明な合成樹脂液(Y)が、布地(X)の停止時、つまり捺染ベルト(V)の停止時に、捺染型枠の水玉模様(p)と対応し、合致するように設置されたドッティングバルブ(B_(1))?(B_(n))を経て滴下され、これによって水玉模様(p)の上に、あるいはそれを包むようにして透明な滴下粒(y)を形成させた後、布地(X)を第2図矢印(a)方向に移動させ、その間に加熱ゾーンを設けてその内部に生じさせた熱風により滴下粒(y)を加熱して硬化、付着させる。」(第2頁右下欄第6行?第3頁左上欄第9行) ウ 「第3図示のように、前述のような製法により得た水玉模様(p)を包み込んだ滴下粒(y)は、透明な合成樹脂粒のレンズ効果によって水玉模様(p)の彩色、光沢が増幅されて、より一層、視覚的効果が増すという特徴を発揮する。」(第3頁左上欄第17行?同頁右上欄第1行) エ 上記アないしウからみて、引用例1には、 「溶融した重合基あるいは縮合基をもった合成樹脂液に触媒および重縮合反応促進剤を加え、これらをよく攪拌して得た調合樹脂液を用意し、一方捺染する布地を任意の速度と長さで間欠的に進行させ、捺染した布地が停止した状態のときに、滴下ノズルから調合樹脂液をその捺染模様上に滴下させ、その後、加熱し重縮合反応を進行させ硬化させることによって、透明な合成樹脂の粒状体が捺染模様上に付着されかつ間欠的に配置された、捺染模様地の上に透明な合成樹脂材の粒状体を付着した布地であって、 前記捺染模様である水玉模様を予め調整された金属箔微少片混入の捺染糊で前記布地に規則的に捺染し、前記水玉模様の一つ一つの上に前記透明な合成樹脂の粒状体を設けて、透明な合成樹脂粒のレンズ効果によって水玉模様の彩色、光沢が増幅されて、より一層、視覚的効果が増すようにされた布地。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「透明な合成樹脂の粒状体」、「『捺染模様地』及び捺染模様地の上に付着した『透明な合成樹脂材の粒状体』」、「布地」及び「『捺染模様』である一つの『水玉模様』及び該一つの水玉模様の上に設けられた『透明な合成樹脂の粒状体』」は、それぞれ、本願補正発明の「球面透明粒」、「パターン」、「キャリー」及び「パターンユニット」に相当する。 イ 引用発明1の「キャリー(布地)」が柔軟性を有することは明らかであるから、引用発明1の「キャリー(布地)」と本願補正発明の「キャリー」とは「服装材料または普段着用などの柔軟な織物」である点で一致し、引用発明1の「『キャリー(布地)』の捺染する面」と本願補正発明の「キャリー表面」とは「服装材料または普段着用などの柔軟な織物上のキャリー表面」である点で一致する。 ウ 引用発明1の「『布地に規則的に捺染し』た『水玉模様』」と本願補正発明の「キャリー表面に現れる色彩パターン」とは、「キャリー表面に現れる模様」である点で一致する。 エ 引用発明1の「球面透明粒(透明な合成樹脂の粒状体)」は、捺染模様上に付着されかつ間欠的に配置されたものであり、捺染模様である水玉模様の一つ一つの上に設けられるものであるから、本願発明の「色彩パターンを覆う球面透明粒」と、「模様を覆う球面透明粒」である点及び「それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置される」点で一致する。 そして、引用発明1の「球面透明粒」が「それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置される」ことから、引用発明1の「パターン(『捺染模様地』及び捺染模様地の上に付着した『透明な合成樹脂材の粒状体』)」と本願補正発明の「パターン」とは「織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適である」点で一致するといえる。 オ 引用発明1の「キャリー(布地)」は、前記捺染模様である水玉模様を予め調整された金属箔微少片混入の捺染糊で前記布地に規則的に捺染し、前記水玉模様の一つ一つの上に前記透明な合成樹脂の粒状体を設けたものであるから、引用発明1の「パターンユニット(『捺染模様』である一つの『水玉模様』及び該一つの水玉模様の上に設けられた『透明な合成樹脂の粒状体』)」と本願補正発明の「パターンユニット」とは「キャリー表面に現れる模様と、模様を覆う球面透明粒とを含」む点で一致し、引用発明1の「パターン(『捺染模様地』及び捺染模様地の上に付着した『透明な合成樹脂材の粒状体』)」と本願補正発明の「パターン」とは「キャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる」点で一致する。 カ 引用発明1の「キャリー(布地)」は、透明な合成樹脂粒のレンズ効果によって水玉模様の彩色、光沢が増幅されて、より一層、視覚的効果が増すようにされたものである。 他方、本願補正発明の「パターン」は、「球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じる」ものであるところ、該「変化を生じる」ことは「視覚的効果が生じる」ことといえるから、本願補正発明の「パターン」は、「球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、視覚的効果を生じる」ものであるといえる。 したがって、引用発明1の「パターン(『捺染模様地』及び捺染模様地の上に付着した『透明な合成樹脂材の粒状体』)」と本願補正発明の「パターン」とは「球面透明粒を介して見える模様が、視覚的効果を生じる」点で一致する。 キ 上記アないしカからみて、本願補正発明と引用発明1とは、 「パターンが服装材料または普段着用などの柔軟な織物上のキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなるパターンであって、 前記パターンユニットはキャリー表面に現れる模様と、模様を覆う球面透明粒とを含み、 球面透明粒を介して見える模様が、視覚的効果を生じ、該球面透明粒が、それぞれ個別に該キャリー表面に独立に設置されることにより、該織物の良好な柔軟度と酸素透過性を保持できることから着用時に快適であるパターン。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 本願補正発明では前記「模様」が「色彩パターン」であり、前記「パターン」が、「色彩変化を有する」ものであり、かつ、「球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じる」のに対して、引用発明1では、前記「模様」が「捺染模様である水玉模様」であるものの、色彩パターンであるかどうか不明であり、したがって、前記「パターン」が、「色彩変化を有する」ものであるかどうか及び「球面透明粒を介して見える模様(色彩パターン)が、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じる」ものであるかどうかも不明である点。 (4)判断 上記相違点1について検討する。 ア 色別に着色された材料と複数のレンズ体とを一体としたものを用いて、視方向が異なるに従いそれぞれ異なる色彩を現出するようにした布は、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特公昭31-6848号公報(第1頁左欄第10行?同頁右欄第17行及び第1?6図参照。)、特公昭41-20789号公報(第1頁左欄「発明の詳細な説明」の項の第1?14行及び図面参照。「予め染料又は顔料…略…にて所望の図柄にプリントした布帛1」及び「透明体球3」が、それぞれ「色別に着色された材料」及び「レンズ体」に相当する。また、「所望の図柄を…略…あたかも浮き出しているかのごとく立体的に見せる」ことで、「視方向が異なるに従いそれぞれ異なる色彩を現出する」効果も同時に生じることは当業者に自明である。)、実公昭48-2375号公報(第1欄?第2欄の「考案の詳細な説明」の項全文及び第1?3図参照。「『長手方向の面状に2?数色…略…を1組とした縦縞を印刷して表し』た『台紙1』」、「同1組の縦縞に対応して片凸レンズ状の断面を有する凸条3’を2?数条並列状に形成した無色透明の合成樹脂膜3」及び「織物」が、それぞれ「色別に着色された材料」、「レンズ体」及び「布」に相当する。)。 イ 衣服等の装飾効果を意図した製品に通常用いられている布においては、消費者の様々な好みにこたえるために、それぞれ異なる種類の模様を有する、多様な種類のものを作製することは当業者に自明の課題と認められる。 ウ 引用発明1において、個々の捺染模様を色別に着色された模様とし、視方向が異なるに従いそれぞれ異なる色彩を現出するような種類の布地となすことで、金属箔微少片混入の捺染糊で捺染される水玉模様を用いたものと異なるような種類の布地となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。 エ 上記ウの「色別に着色された模様」は本願補正発明における「色彩パターン」に相当し、引用発明1において上記ウのようになすことは、引用発明1の「パターン(『捺染模様地』及び捺染模様地の上に付着した『透明な合成樹脂材の粒状体』)」を、「色彩変化を有する」ものとなすとともに、「球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じる」ようになすことに相当するから、引用発明1において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。 オ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測し得た程度のものである。 カ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 小括 本件補正は、上記2で検討したとおり、特許法17条の2第3項の規定に違反してなされたものであり、かつ、上記3で検討したとおり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に規定する要件をいずれも満たしていないものである。 さらに、上記4で検討したとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を、平成21年6月26日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載(請求項1については、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前のものとして記載した特許請求の範囲を参照。)からみて、上記「第2〔理由〕4(1)」と同様の理由により、次のとおり認定した。 「パターンがキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる色彩変化を有するパターンであって、 前記パターンユニットはキャリー表面に現れる、均一の面積である異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである色彩パターンと、該色彩パターンを覆う球面透明粒とを含み、 該球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じることを特徴とする色彩変化を有するパターン。」 2 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-169234号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。 (1)「【請求項1】 基板、該基板上に多様な色相の網点が部分的に重なって印刷された印刷層、及び、複数個の透明な樹脂材からなる略球面形状の突起部を備える印刷物において、 前記印刷層上に、所定厚さに形成された透明な樹脂材からなる透明層が設けられ、前記突起部は、前記透明層上において、前記印刷層の網点が重なった各位置に中心が配置されるように形成されることを特徴とする、見る角度により多様な色相を示す印刷物。」 (2)「【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る印刷物を添付した図面に基づき説明する。本発明に係る印刷物は、図1から図3に示したように、紙または合成樹脂よりなる不透明な基板1を含み、基板1上には三原色である赤色、青色及び黄色と黒色とからなる印刷層2が設けられている。 【0008】印刷層2を構成する各色相は、図3に示されているように、通常は微細な網点a,b,c,dが一定の配列に印刷されて色相を形成しており、各色相の網点は互いに異なる固有の角度を有している。三原色の網点a,b,cと黒色の網点dのうち、二つの色相が混じって出る中間色は、2以上の色相の網点が一部分でお互い重なって表現される。例えば、紫色に見える印刷層は、赤色及び青色の網点a,bが互いに重なった部分である。 【0009】印刷層2において、特に色相の演出効果を強調したい特定部分の上に、透明な樹脂で形成された透明層3が設けられている。透明層3には、透明なエポキシ樹脂や印刷層2の色相変質を防止できるUV樹脂を使用することが望ましい。透明層3は、例えば孔版印刷法の適用により、印刷層2の強調したい部分の任意の形状に合わせて透明層3を形成することができ、透明層3の厚さを均一にすることができる。」 (3)「【0012】このように構成された印刷物は、印刷層2を構成する種々の網点が重なった部分の各色相で反射した光が突起部4を透過する際に屈折するため、看者の見る角度によって多様な色相が示されると共に、印刷層2が立体的に示される。」 (4)上記(1)ないし(3)からみて、引用例2には、 「基板、該基板上に多様な色相の網点が部分的に重なって印刷された印刷層、及び、複数個の透明な樹脂材からなる略球面形状の突起部を備える印刷物において、 前記網点には三原色である赤色、青色及び黄色と黒色のものがあり、通常は微細な網点が一定の配列に印刷されて色相を形成しており、 前記印刷層の特に色相の演出効果を強調したい特定部分の上に、強調したい部分の任意の形状に合わせて、所定厚さに形成された透明な樹脂材からなる透明層が設けられ、前記突起部は、前記透明層上において、前記印刷層の網点が重なった各位置に中心が配置されるように形成される 印刷層を構成する種々の網点が重なった部分の各色相で反射した光が突起部を透過する際に屈折するため、看者の見る角度によって多様な色相を示す印刷物。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 3 対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 (1)引用発明2の「『印刷層』及び『突起部』」、「基板」、「網点」、「突起部」及び「看者」は、それぞれ、本願発明の「パターン」、「キャリー」、「カラーブロック」、「球面透明粒」及び「観察者」に相当する。 (2)引用発明2の「球面透明粒(突起部)」は、複数個の透明な樹脂材からなる略球面形状のものであり、「キャリー(基板)」上に多様な色相の「カラーブロック(網点)」が部分的に重なって印刷された印刷層の「カラーブロック」が重なった各位置に中心が配置されるように形成されるものであり、前記「カラーブロック」には三原色である赤色、青色及び黄色と黒色のものがあるから、引用発明2の「『突起部』が配置される『印刷層』の部分」は本願発明の「色彩パターン」に相当し、引用発明2の「『突起部』及び『突起部』が配置される『印刷層』の部分」は本願発明の「パターンユニット」に相当する。 そして、引用発明2の「色彩パターン(『突起部』が配置される『印刷層』の部分)」と本願発明の「色彩パターン」とは「異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである」点で一致し、引用発明2の「球面透明粒(突起部)」と本願発明の「球面透明粒」とは「色彩パターンを覆う」点で一致し、引用発明2の「パターンユニット(『突起部』及び『突起部』が配置される『印刷層』の部分)」と本願発明の「パターンユニット」とは「キャリー表面に付く複数個の」ものである点及び「キャリー表面に現れる、異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである色彩パターンと、該色彩パターンを覆う球面透明粒とを含」む点で一致し、引用発明2の「パターン(『印刷層』及び『突起部』)」と本願発明の「パターン」とは「キャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる」点で一致する。 (3)引用発明2の「キャリー(基板)」、該「キャリー」上に多様な色相の「カラーブロック(網点)」が部分的に重なって印刷された印刷層、及び、複数個の透明な樹脂材からなる略球面形状の「球面透明粒(突起部)」を備える印刷物は、印刷層を構成する種々の網点が重なった部分の各色相で反射した光が「球面透明粒」を透過する際に屈折するため、「観察者(看者)」の見る角度によって多様な色相を示すものであるから、上記(2)に照らせば、引用発明2の「パターン(『印刷層』及び『突起部』)」と本願発明の「パターン」とは「球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じる」点及び「色彩変化を有する」点で一致する。 (4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明2とは、 「パターンがキャリー表面に付く複数個のパターンユニットからなる色彩変化を有するパターンであって、 前記パターンユニットはキャリー表面に現れる、異なる色のカラーブロックからなるカラーリングである色彩パターンと、該色彩パターンを覆う球面透明粒とを含み、 該球面透明粒を介して見える色彩パターンが、観察者が自ら視線角度を変化させたりキャリーの角度を変化させたりすることによって、変化を生じることを特徴とする色彩変化を有するパターン。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点2: 前記「カラーブロック」が、本願発明では「均一の面積である」のに対して、引用発明2ではそのようなものであるかどうか不明である点。 4 判断 上記相違点2について検討する。 (1)引用発明2において、個々の網点をどのような大きさにするかは、印刷物にどのような色相を形成したいかに応じて、当業者が適宜決定すべき事項と認められるところ、引用発明2においては、印刷層の特に色相の演出効果を強調したい特定部分の上に、強調したい部分の任意の形状に合わせて、所定厚さに形成された透明な樹脂材からなる透明層が設けられ、前記突起部は、前記透明層上において、前記印刷層の網点が重なった各位置に中心が配置されるから、引用発明2において、例えば印刷層中に同じ大きさの網点を印刷した部分を設け、該部分を色相の演出効果を強調したい特定部分として透明層及び突起部を形成することは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 (2)上記(1)の「印刷層中に同じ大きさの網点を印刷した部分を設け、該部分を色相の演出効果を強調したい特定部分として透明層及び突起部を形成すること」は、「突起部を形成する部分において『カラーブロック(網点)』の個々の面積を均一となすこと」に相当するから、引用発明2において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)本願発明の奏する効果は、引用発明2の奏する効果から当業者が予測し得た程度のものである。 (4)以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-18 |
結審通知日 | 2011-01-25 |
審決日 | 2011-02-08 |
出願番号 | 特願2006-353721(P2006-353721) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G09F)
P 1 8・ 57- Z (G09F) P 1 8・ 121- Z (G09F) P 1 8・ 575- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 笹野 秀生 |
発明の名称 | 色彩変化を有するパターン |
代理人 | ▲吉▼川 俊雄 |