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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1240274
審判番号 不服2010-7878  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-14 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2004-165345「電動パワーステアリング用モータおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日出願公開、特開2005-348522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年6月3日の出願であって、平成22年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成22年4月14日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】

(中略)

【請求項4】
多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータであって、
フレームと、
該フレームに固定されたステータと、
該ステータに空隙を介して対向配置されたロータと
を有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
該ステータコアに組み込まれた多相のステータコイルと
を備えており、
前記ステータコアは、
分割された複数のコア片を結合することにより形成されたものであって、
環状のバックコア部と、
該バックコア部から径方向に突出する複数のティースコア部と
から構成されており、
前記ステータコアの隣接する前記ティースコア部間にはスロット部が形成されており、
前記ステータコイルは前記スロット部に収納されており、
前記ロータは、
ロータコアと、
該ロータコアの外周表面に固定された複数のマグネットと
を備えており、
前記ステータコアと前記ステータコイルは、前記ステータコアに前記ステータコイルが組み込まれた状態でモールド材によってモールド成形されており、
前記モールド成形によって得られた一体成形体の前記ロータとの対向面には切削加工が施されている
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

(中略)

【請求項6】
14V系或いは42V系の車載電源から得られた電力を多相の交流電力に変換して出力する電力変換装置から制御されて、操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータであって、
フレームと、
該フレームに固定されたステータと、
該ステータに空隙を介して対向配置されたロータと
を有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
該ステータコアに組み込まれた多相のステータコイルと
を備えており、
前記ステータコアは、
分割された複数のコア片を結合することにより形成されたものであって、
環状のバックコア部と、
該バックコア部から径方向に突出する複数のティースコア部と
から構成されており、
前記ステータコアの隣接する前記ティースコア部間にはスロット部が形成されており、
前記ステータコイルは、
複数の単位コイルから構成されたものであって、
前記スロット部に収納されており、
U相、V相、W相をデルタ結線されており、
前記複数の単位コイルは、
隣接する前記ティースコア間の周方向間隔のうち、互いに最も近接する部分間の周方向間隔よりも径が大きい線材によって構成されたものであって、
前記ロータは、
ロータコアと、
該ロータコアの外周表面に固定された複数のマグネットと
を備えており、
前記ステータコアと前記ステータコイルは、前記ステータコアに前記ステータコイルを組み込んだものが前記フレームに固定された状態でモールド材によってモールド成形されており、
前記マグネットの個数(極数)と前記スロット部の個数との間には、8極-9スロット或いは10極-9スロット若しくは10極-12スロットの関係がある
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

(中略)

【請求項9】
請求項6に記載の電動パワーステアリング用モータにおいて、
前記モールド成形によって得られた一体成形体の前記ロータと対向する部位には切削加工が施されている
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

(中略)

【請求項21】
多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータの製造方法であって、
ステータコアにステータコイルを組み込む第1の工程と、
この後、前記ステータコイルが組み込まれた前記ステータコアの周方向の複数箇所をフレームに圧入し、前記ステータコイルを組み込んだ前記ステータコアが前記フレームに固定された構造体を得る第2の工程と、
この後、前記ステータコアと、前記ステータコアの軸方向端部から軸方向に突出する前記ステータコイルのコイルエンド部を治具と前記フレームによって囲むように、前記治具を前記構造体に対して取り付ける第3の工程と、
この後、前記治具と前記フレームによって囲まれている中に流体状の熱硬化性樹脂を注入し、前記コイルエンド部、前記ステータコアの隙間、前記ステータコイルの隙間、前記ステータコアと前記ステータコイルとの間の隙間及び前記ステータコアと前記フレームとの間の隙間に前記熱硬化性樹脂を充填する第4の工程と、
この後、前記熱硬化性樹脂を固化させる第5の工程と、
この後、前記治具を取り外す第6の工程と、
この後、前記ステータコアのロータとの対向面を切削加工する第7の工程と
を経て、前記熱硬化性樹脂によってモールド成形された前記構造体を得る
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータの製造方法。
」から、

「 【請求項1】
多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータであって、
フレームと、
該フレームに固定されたステータと、
該ステータに空隙を介して対向配置されたロータと
を有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
該ステータコアに組み込まれた多相のステータコイルと
を備えており、
前記ステータコアは、
分割された複数のコア片を結合することにより形成されたものであって、
環状のバックコア部と、
該バックコア部から径方向に突出する複数のティースコア部と
から構成されており、
前記ステータコアの隣接する前記ティースコア部間にはスロット部が形成されており、
前記ステータコイルは前記スロット部に収納されており、
前記ロータは、
ロータコアと、
該ロータコアの外周表面に固定された複数のマグネットと
を備えており、
前記ステータコアと前記ステータコイルは、前記ステータコアに前記ステータコイルが組み込まれた状態でモールド材によってモールド成形されており、
前記モールド成形によって得られた一体成形体の前記ロータとの対向面には切削加工が施されている
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

【請求項2】
請求項1記載の電動パワーステアリング用モータにおいて、
前記モールド材は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

【請求項3】
請求項1記載の電動パワーステアリング用モータにおいて、
前記ステータコイルは、隣接する前記ティースコア間の周方向間隔のうち、互いに最も近接する部分間の周方向間隔よりも径が大きい線材によって構成されたものであって、前記スロット部に収納されていることを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

【請求項4】
請求項1記載の電動パワーステアリング用モータにおいて、
前記ステータコイルは、複数の単位コイルから構成されたものであって、U相、V相、W相をデルタ結線されていることを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。

【請求項5】
多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータの製造方法であって、
ステータコアにステータコイルを組み込む第1の工程と、
この後、前記ステータコイルが組み込まれた前記ステータコアの周方向の複数箇所をフレームに圧入し、前記ステータコイルを組み込んだ前記ステータコアが前記フレームに固定された構造体を得る第2の工程と、
この後、前記ステータコアと、前記ステータコアの軸方向端部から軸方向に突出する前記ステータコイルのコイルエンド部を治具と前記フレームによって囲むように、前記治具を前記構造体に対して取り付ける第3の工程と、
この後、前記治具と前記フレームによって囲まれている中に流体状の熱硬化性樹脂を注入し、前記コイルエンド部、前記ステータコアの隙間、前記ステータコイルの隙間、前記ステータコアと前記ステータコイルとの間の隙間及び前記ステータコアと前記フレームとの間の隙間に前記熱硬化性樹脂を充填する第4の工程と、
この後、前記熱硬化性樹脂を固化させる第5の工程と、
この後、前記治具を取り外す第6の工程と、
この後、前記ステータコアのロータとの対向面を切削加工する第7の工程と
を経て、前記熱硬化性樹脂によってモールド成形された前記構造体を得る
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータの製造方法。」
と補正したものであって、本件補正前の請求項(以下、「旧請求項」という。)1?3を削除し、旧請求項4を新たな請求項(以下、「新請求項」という。)1に繰り上げるとともに、新請求項1を直接引用して、新請求項1に記載された発明特定事項に限定を加える新請求項2?4を設ける補正事項を含むものである。

(2)補正事項の検討
新請求項1は旧請求項1?3の削除に伴い、旧請求項4の番号を繰り上げたものなので、新請求項1は旧請求項4に対応するものである。
また、新請求項1に従属する新請求項2?4は、新請求項1に記載の「モールド成形によって得られた一体成形体のロータとの対向面には切削加工が施されている」との発明特定事項を有するものである。
しかし、旧請求項4に従属する旧請求項は存在せず、旧請求項4以外に、物の発明である「電動パワーステアリング用モータ」について、上記「モールド成形によって得られた一体成形体のロータとの対向面には切削加工が施されている」との発明特定事項に対応する発明特定事項を有する旧請求項は、「モールド成形によって得られた一体成形体のロータと対向する部位には切削加工が施されている」との発明特定事項を有する旧請求項6を引用する旧請求項9のみであるから、仮に、旧請求項9が、新請求項2?4のいずれか一つの請求項に対応する請求項であるとしても、新請求項2?4の他の2つに対応する旧請求項が存在しないことになる。
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならないが、上述したように、少なくとも新請求項2?4のうちの二つに対応する旧請求項は存在しないので、新請求項2?4についての補正は「特許請求の範囲の減縮」には該当しない補正を含むものである。
そして、新請求項2?4は、補正前の多数項引用形式の請求項を補正によって独立形式とした場合でないことはいうまでもないし、補正前の請求項に択一的に記載された構成要件を限定して複数の請求項としたものでないことも明らかであるから、新請求項2?4についての補正は、実質的に新たな請求項を追加するものを含むことは明らかである。
また、上記のように旧請求項6を引用する旧請求項9を新請求項2?4のうちのいずれか一つの請求項に対応するものとした場合に、旧請求項9と新請求項2?4との関係をみると、新請求項2?4は、旧請求項9が有する一部の発明特定事項(例えば、「14V系或いは42V系の車載電源から得られた電力を多相の交流電力に変換して出力する電力変換装置」、「マグネットの個数(極数)とスロット部の個数との間には、8極-9スロット或いは10極-9スロット若しくは10極-12スロットの関係がある」など)を有しておらず、新請求項2?4は、旧請求項9に係る発明の発明特定事項の一部が削除されたものであるから、新請求項2?4のいずれも、旧請求項9を限定したものとはいえない(なお、新請求項3及び4については、旧請求項9は、実質的に新請求項3及び4のすべての発明特定事項を有するものでもあるから、この点からも新請求項2及び3は、旧請求項9を限定したものとはいえない。)。
したがって、新請求項2?4についての補正は「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
また、本件補正後の請求項2?4についての補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
よって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない補正を含むものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年4月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成21年10月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータであって、
フレームと、
該フレームに固定されたステータと、
該ステータに空隙を介して対向配置されたロータと
を有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
該ステータコアに組み込まれた多相のステータコイルと
を備えており、
前記ステータコアは、
分割された複数のコア片を結合することにより形成されたものであって、
環状のバックコア部と、
該バックコア部から径方向に突出する複数のティースコア部と
から構成されており、
前記ステータコアの隣接する前記ティースコア部間にはスロット部が形成されており、
前記ステータコイルは前記スロット部に収納されており、
前記ロータは、
ロータコアと、
該ロータコアの外周表面に固定された複数のマグネットとを
備えており、
前記ステータコアと前記ステータコイルは、前記ステータコアに前記ステータコイルが組み込まれた状態で熱硬化性樹脂によってモールド成形されている
ことを特徴とする電動パワーステアリング用モータ。」

4.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-78778号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0010】電気モータ50は、ボールスクリュー機構40を介して操舵軸30に軸方向の操舵助勢力を付与するものであり、操舵軸30に対して同軸的に組付けられていて、ハウジング10にボール軸受13、14を介して回転可能かつ軸方向へ移動不能に組付けた筒状の回転軸(出力軸)51と、ハウジング10の一部をも構成するステータ52を備えており、その回転出力を周知の操舵トルクセンサ(図示省略)や回転軸51の回転を検出するセンサS等からの信号に基づいて制御装置(図示省略)によって制御されるようになっている。
【0011】回転軸51は、図1及び図2に示したように、磁性材によって段付円筒状に形成した軸本体51aと、この軸本体51aの外周に等間隔にて配置されて固着された16個の永久磁石51bによって構成されている。各永久磁石51bは、軸方向に長い形状であって、内周側(一つ飛びにS極とされている)を内周に向けて凸となる弧形状に形成され、また外周側(一つ飛びにN極とされている)を回転軸51の回転中心を中心とする円弧形状に形成されており、周方向の両端部が中央部より薄肉とされている。
【0012】ステータ52は、電磁鋼板を軸方向にて積層してブロック状に構成した18個のティース部52aと、各ティース部52aに装着されたコイル52bと、これら各コイル52bとティース部52aを内部に収容するヨーク部52cを備えている。各ティース部52aは、図2及び図3に示したように、内周側に周方向に延びる磁極部52a1を有するとともに外周側に周方向に突出する突出部52a2(突出量は0.3?1.0mm程度)を有していて、磁極部52a1と突出部52a2間がコイル装着部位52a3とされており、突出部52a2にてヨーク部52cに設けたアリ溝52c1に嵌合されてヨーク部52cに組付けられるようになっている。また、コイル装着部位52a3の周側面には樹脂(電気絶縁性を有する周知の樹脂)の流通を許容する溝部52a4が長手方向に形成されている。ヨーク部52cは、磁路形成体として機能しかつハウジング等構造体として利用可能な磁性体によって構成されていて、その素材としては例えば電磁鋼板材或いは低炭素鋼材のS10CまたはS15Cの鋼管が採用されている。」

・「【0015】図8に示したコイル付ティース部52aのヨーク部52cへの嵌合工程では、各ティース部52aがその突出部52a2にてヨーク部52cの内周に形成したアリ溝52c1に嵌合されてヨーク部52cに組付けられる。なお、全てのティース部52aがヨーク部52cに嵌合されて組付けられることにより、この嵌合工程が完了する。
【0016】図9に示したモールド工程では、全てのコイル付ティース部52aを組付けて嵌合工程を完了したヨーク部52cに中子104を一体的に設けた底板105をボルト106を用いてセットした後に、上方開口から接着性と電気絶縁性を有する液状の樹脂モールド材107を流し込み、その後に樹脂モールド材107を加熱硬化させ、最後に底板105と中子104を取り外すことにより、全てのコイル付ティース部52aとヨーク部52cが電気絶縁性を有する樹脂にて固着一体化されてステータ52が製作される。なお、大量生産時には生産性のよい射出成形のモールド工程が採用される。
【0017】上記のように構成した本実施形態の電動式パワーステアリング装置においては、操舵力が入力軸20のピニオンから操舵軸30のラック歯31形成部位に直接伝達されるとともに、電気モータ50の出力が制御装置(図示省略)の制御下にてボールスクリュー機構40を介して操舵軸30のねじ軸41形成部位に伝達され、この電気モータ50の出力(操舵助勢力)によって操舵トルクが的確に助勢される。」

・「【0022】上記実施形態においては、電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50に本発明を実施したが、本発明はステータにてコイルとティース部を電気絶縁性を有する樹脂により一体的にモールドするようにした種々な電気モータに実施し得るものであり、上記実施形態に限定されるものではない。」

・また、図2には、ステータ52に空隙を介して対向配置された回転軸51が示されているとともに、環状のヨーク部52cから径方向に突出する複数のティース部52aが示されている。また、図3には、ティース部52a及びヨーク部52cの隣接するティース部52a間には隙間が形成されており、コイル52bは隙間に収納されている点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「操舵トルクを助勢する電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50であって、
ステータ52と、
ステータ52に空隙を介して対向配置された回転軸51を有し、
ステータ52は、
ティース部52a及びヨーク部52cと、
18個の各ティース部52aに装着され、ヨーク部52cの内部に収容されたコイル52bを備えており
ティース部52a及びヨーク部52cは、
各ティース部52aはヨーク部52cに組付けられたものであって、
環状のヨーク部52cと、
ヨーク部52cから径方向に突出する18個のティース部52aとから構成されており、
ティース部52a及びヨーク部52cの隣接するティース部52a間には隙間が形成されており、コイル52bは隙間に収納されており、
回転軸51は、
軸本体51aと、
この軸本体51aの外周に固着された16個の永久磁石51bによって構成されており、
ヨーク部52c及びティース部52aとコイル52bは、ヨーク部52cに全てのコイル付ティース部52aを組付けて嵌合工程を完了し、ヨーク部52cに樹脂モールド材107を流し込み、その後に樹脂モールド材107を加熱硬化させている
電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50。」

5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「操舵トルクを助勢する」態様が前者の「操舵用のトルクを出力する」態様に相当し、以下同様に、「電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50」が「電動パワーステアリング用モータ」に相当し、後者の電気モータ50は、軸本体51aの外周に等間隔にて配置されて固着された16個の永久磁石51b及びヨーク部52cの内部に収容されたコイル52bを有することから、交流電力により駆動されるといえるので、後者の「操舵トルクを助勢する電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50」と前者の「多相の交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータ」は、「交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータ」との概念で共通する。
また、後者の「ステータ52」が前者の「ステータ」に相当し、以下同様に、「回転軸51」が「ロータ」に相当する。
そして、後者の「ティース部52a及びヨーク部52c」が前者の「ステータコア」に相当するので、後者の「ティース部52a」と「ヨーク部52c」はそれぞれ「ステータコア」の一部を成すから、後者の「18個の各ティース部52aに装着され、ヨーク部52cの内部に収容された」態様は、前者の「ステータコアに組み込まれた」態様に相当し、以下同様に、「コイル52b」が「ステータコイル」に相当するので、結局、後者の「ステータ52は、ティース部52a及びヨーク部52cと、18個の各ティース部52aに装着され、ヨーク部52cの内部に収容されたコイル52bを備え」る態様と前者の「ステータは、ステータコアと、該ステータコアに組み込まれた多相のステータコイルとを備え」る態様は「ステータは、ステータコアと、該ステータコアに組み込まれたステータコイルとを備え」るとの概念で共通する。
さらに、後者の「ティース部52a」、「ヨーク部52c」が前者の「分割された複数のコア片」に相当し、以下同様に、「組付けられた」態様が「結合することにより形成された」態様に相当するので、後者の「ティース部52a及びヨーク部52cは、各ティース部52aはヨーク部52cに組付けられた」態様が、前者の「ステータコアは、分割された複数のコア片を結合することにより形成された」態様に相当し、「ヨーク部52c」が「バックコア部」に、「18個」が「複数」に、「ティース部52a」が「ティースコア部」に相当する。
また、後者の「隙間」が前者の「スロット部」に相当する。
そして、後者の「軸本体51a」が前者の「ロータコア」に相当し、以下同様に、「外周」が「外周表面」に、「固着された」態様が「固定された」態様に、「16個」が「複数」に、「永久磁石51b」が「マグネット」に、「構成され」る態様が「備え」る態様に相当する。
さらに、後者の「ヨーク部52cに全てのコイル付ティース部52aを組付けて嵌合工程を完了し」た態様が前者の「ステータコアにステータコイルが組み込まれた状態」に相当し、ここで、後者の「樹脂モールド材107」は加熱硬化させているので「熱硬化性樹脂」といえるので、後者の「ヨーク部52cに樹脂モールド材107を流し込み、その後に樹脂モールド材107を加熱硬化させている」態様が前者の「熱硬化性樹脂によってモールド成形されている」態様に相当する。

したがって、両者は、
「交流電力により駆動されて操舵用のトルクを出力する電動パワーステアリング用モータであって、
ステータと、
該ステータに空隙を介して対向配置されたロータとを
有し、
前記ステータは、
ステータコアと、
該ステータコアに組み込まれたステータコイルと
を備えており、
前記ステータコアは、
分割された複数のコア片を結合することにより形成されたものであって、
環状のバックコア部と、
該バックコア部から径方向に突出する複数のティースコア部と
から構成されており、
前記ステータコアの隣接する前記ティースコア部間にはスロット部が形成されており、
前記ステータコイルは前記スロット部に収納されており、
前記ロータは、
ロータコアと、
該ロータコアの外周表面に固定された複数のマグネットと
を備えており、
前記ステータコアと前記ステータコイルは、前記ステータコアに前記ステータコイルが組み込まれた状態で熱硬化性樹脂によってモールド成形されている
電動パワーステアリング用モータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
電動パワーステアリング用モータを駆動する「交流電力」に関し、本願発明においては、交流電力が「多相」であるのに対し、引用発明においては交流電力が「多相」なのか不明な点。
[相違点2]
電動パワーステアリング用モータの構成要素に関し、本願発明においては、「フレーム」を有しており、「フレーム」に「ステータ」を「固定」しているのに対して、引用発明においては「フレーム」を有しておらず、「フレーム」に「ステータ」を「固定」していない点。
[相違点3]
ステータコイルに関し、本願発明においては、「多相」であるのに対し、引用発明においては「多相」なのか不明な点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1、3について
電動パワーステアリング用モータを駆動する「交流電力」を「多相」の交流電力とし、ステータコイルを「多相」とすることは、電動パワーステアリング用モータの分野における周知慣用手段である。
そうすると、引用発明において、上記周知慣用手段を適用し、相違点1、3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

・相違点2について
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-299279号公報(段落【0012】の「この実施の形態は、本発明に係るブラシレスモータを車両用電動パワーステアリング装置に適用したものである。」及び段落【0022】の「電動モータ43は、上記モータケース71と、モータケース71の開口部71aを塞ぐリッド72と、モータケース71内に嵌合した筒状の第1アウタステータ73」なる記載参照)にも開示されているように、電動パワーステアリング用モータ(「車両用電動パワーステアリング装置に適用したブラシレスモータ」が相当)に、フレーム(「モータケース71」が相当)を設け、フレームにステータ(「第1アウタステータ73」が相当)を固定(「嵌合」が相当)することは、電動パワーステアリング用モータの分野における周知技術である。
そうすると、引用発明において上記周知技術を採用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明、上記周知慣用手段及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知慣用手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-16 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-05-31 
出願番号 特願2004-165345(P2004-165345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
P 1 8・ 574- Z (H02K)
P 1 8・ 573- Z (H02K)
P 1 8・ 572- Z (H02K)
P 1 8・ 571- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 勝也  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 堀川 一郎
神山 茂樹
発明の名称 電動パワーステアリング用モータおよびその製造方法  
代理人 春日 讓  

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