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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1240977
審判番号 不服2009-25085  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-18 
確定日 2011-08-12 
事件の表示 特願2008-267538「固定化させたオリゴヌクレオチドと三重らせんを形成させることによるDNA精製」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日出願公開、特開2009- 45070〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成7年11月8日(パリ条約による優先権主張1994年12月16日,フランス)を国際出願日とする特願平8-518319号の一部を,特許法第44条第1項の規定により平成20年10月16日に新たな特許出願としたものであって,平成21年8月7日付で拒絶査定され,同年12月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項30に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,願書に添付された明細書における特許請求の範囲の請求項30に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「他の構成成分と混ざっているプラスミドDNAを含む溶液を,前記DNAに存在する特定のホモプリン/ホモピリミジン配列とのハイブリダイゼーションにより三重らせんを形成することが可能なオリゴヌクレオチドが共有結合したクロマトグラフィー用支持体に通す少なくとも一つの段階を含み,前記オリゴヌクレオチドが10から30の間の長さを有することを特徴とする,プラスミドDNAの精製方法。」

3.引用例記載の発明について
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物であるAnalytical chemistry,1993,Vol.65, No.10, p.1323-1328(以下,「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。
(1)「三重らせんを介した親和性捕捉による二本鎖DNAの迅速精製」(第1323頁,表題)
(2)「DNAの調整は分子生物学における実質的に全ての研究において重要な部分を担う。・・・現在DNA精製のために使用されている実質的に全ての方法は,抽出及び遠心分離のような古典的な手法であり,むしろ労働力に依存する傾向にあり,簡単に自動化に役立たない。このことはヒトゲノム戦略のようなスケールの大きい計画にとって問題となる。スケールアップと自動化は計画の成功のために決定的な意味を持つからである。
この問題に立ち向かうための方法を考慮する際に,一つの魅力的なアプローチはアフィニティー手法である。原理的には,所望のDNAの部位に対するDNA-結合剤を標的にできるならば,複合体の混合物から直接,所望する分子を親和性-精製することが可能であろう。・・・このような手法は様々な応用のために広く使用されてきており,比較的自動化し易い。
近年,配列特異的DNAターゲティングのこの一般的な課題にかなりの関心がもたれている。この関心の推進力の多くは,二重鎖DNAターゲットの指定された切断(人工的な制限酵素)のためと,遺伝子治療及び薬学的応用のための一般的手法を開発する要望から始まっている。今までに実施された最も成功した2つのモチーフは,特定のDNA-結合タンパク質の利用と,三重らせんDNAの利用である。」(第1323頁左欄第18行?右欄第3行)
(3)「オリゴヌクレオチド 全てのオリゴヌクレオチドは,ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンターのアプライド バイオシステムズ 380B DNAシンセサイザー(FosterCity,CA)を用いて合成された。ビオチンホスホラミダイト(Glen Research, Sterling,VA)を使用する標準的な合成手法によって,5’末端にビオチンが組み入れられた。・・・次の三つのビオチニル化された,それぞれ20,25,及び37のヌクレオチド長からなるオリゴヌクレオチドが準備され,後述のpHJ19ベクターに組み入れられた標的配列と三重らせん複合体を形成するように設計された。・・・・上記オリゴヌクレオチド中の全てのシトシンは,フーグスティーン塩基対の三重らせん鎖の安定性を増加することが知られる,5-メチルシトシンであった。」(第1323頁右欄下から2行?第1324頁左欄17行)
(4)「磁気ビーズ ストレプトアビジンで被覆された磁性ビーズ(Dyna-beads M-280, Dynal.Inc., Great Neck, NY)が固体支持体として使用された。・・・
トリプレックスビーズ 磁気ビーズ(100μL,ビーズ1mg)をPBSで二度洗浄し,20pmolのビオチン化捕獲オリゴヌクレオチドを加え,混合物は室温に15分置かれた。・・・その結果,固定化された三重鎖オリゴヌクレオチドを含むビーズ(以後トリプレックスビーズという。)の準備されたものは,PBS中4℃で少なくとも2ヶ月間,観察可能な分解なしに安定であった。」(第1323頁左欄第25?41行)
(5)「pHJ19ベクター pUC19の派生物である,pHJ19(図1を見よ。)が,三重らせんを形成する部位をpUC19ベクターの唯一のNdeI部位に挿入して構築された。・・・2つのオリゴヌクレオチド(5’-TACTTAAGTCCTTCTTCTCCTTTCTCTTCTTTCCTTCTTTCTCTCTTC-3’及び5’-TAGAAGAGAGAAAGAAGGAAAGAAGAGAAAGGAGAAGAAGGACTTAAG-3’も図1に示される。)がアニールされ,限定されたベクターに連結された。連結産物は,非組換え体の形質転換体のバックグラウンドを減らすためにNdeIで再度消化され,Escherichia coliのDH5αF’株に導入され,標準的な手法で培養皿に蒔かれた。」(第1324頁左欄下から2行?右上欄第12行)
(6)「プラスミドDNAの三重らせんを介した親和性捕捉(TAC) ・・・細菌細胞のペレットは0.2M NaOH及び1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えて溶菌し,その後3M KOAc,pH5.0の溶液で中和する。トリプレックスビーズを添加し,溶液は15分間室温でインキュベートする。磁気スタンドを用いてビーズを分離し,続いてBB(binding buffer)及びWB(wash burffer)で洗浄する。DNAはEB(elution buffer)中で10分間インキュベートしてビーズから溶出する。」(第1324頁右欄下から11行?第1325頁下から6行)
(7)「精製DNAの特徴付け 従来法と三重らせん捕捉法の両方によって精製されたDNAのゲル電気泳動分析は図3に示される。レーン1及び2は,三重らせん形成配列を欠く二本鎖DNAの場合(レーン1)か,捕捉ヌクレオチドが省略された場合(レーン2)に,DNAが捕捉されないことを示す対照実験である。レーン3及び4は,ビーズ添加前に溶液中で三重らせん複合体が形成された場合(レーン3)か,代わりに,三重らせん形成に先立って捕捉オリゴヌクレオチドがビーズに固定化された場合(レーン4)に,DNAが得られたことを示す。どちらの場合も,質と収率は同程度であり,このことはストレプトアビジン被覆ビーズは,三重らせん構造の形成を妨害しないことを示す。二つの他の広く使用されるプラスミド精製法,フェノール-クロロホルム抽出後のエタノール沈殿及び,イオン交換カラム(Qiagen20)において得られた結果は,それぞれレーン5及び6に示される。レーン5は,ほとんどの場合RNase消化によって汚染RNAは除去されるが,それにも拘わらず大過剰の汚染RNAが明らかに過剰に負荷され,このやり方の特異性の欠如を立証する。多くの場合,そのような汚染物を除去するために,CsCl密度勾配遠心のような二次的な精製工程が必要である。Qiagenカラムを用いて得たDNA(レーン6)は,RNase消化が精製前に必要であり,この調整法では少量の高分子量の染色体DNAがしばしば観察されるが,概して良質である。対象的に,RNAや染色体DNAの痕跡は,三重らせん親和性捕捉によって精製された材料では観察されなかった(レーン3及び4)。レーン7及び8は,三重らせん精製されたDNAがAflIII及びHaeII酵素による消化に適合性であることを立証し,しばしば不純なDNAにおける制限切断を阻害することが知られる汚染種がないことを示す。同様の結果が他の様々な制限エンドヌクレアーゼで得られた。総合すると,これらのデータは,TAC精製法を特徴づける高度な配列特異性及び低い非特異的結合を立証する。溶菌溶液における高い塩濃度(?1.1M 酢酸カリウム)は磁気ビーズに対する非特異的結合を最小限にするのに役立つであろう。」(第1325頁右欄下から10行?第1326頁右欄第18行)
(8)「

図3 細胞溶解物から精製されたプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動」(第1325頁)

引用例の記載事項(1)?(8)によれば,引用例には,三重らせんを形成する部位を導入したプラスミドpHJ19で形質転換した大腸菌の溶菌液を,三重らせんを形成する20,25又は37の塩基長を有するビオチン化オリゴヌクレオチドを固定化したストレプトアビジン被覆磁気ビーズと混合して,プラスミドpHJ19を捕捉し,捕捉したDNAをビーズから溶出してプラスミドDNAを精製する方法が記載されている。

4.対比
引用例に記載されたpUCベクターに挿入された2つのオリゴヌクレオチドの配列は,それぞれ,主としてアデニン(A)及びグアニン(G)から成るホモプリン配列,並びに,主としてチミジン(T)及びシトシン(C)から成るホモピリミジン配列と認められるから,本願発明の「ホモプリン/ホモピリミジン配列」に相当する。
そこで,本願発明と引用例に記載された発明を対比すると,両者は,「他の構成成分と混ざっているプラスミドDNAを含む溶液を,前記DNAに存在する特定のホモプリン/ホモピリミジン配列とのハイブリダイゼーションにより三重らせんを形成することが可能なオリゴヌクレオチドが結合した支持体に接触する段階を含み,前記オリゴヌクレオチドが10から30の間の長さを有する,プラスミドDNAの精製方法」である点で一致し,以下の点で相違する。
相違点:本願発明は,オリゴヌクレオチドが結合した支持体が,オリゴヌクレオチドを共有結合させたクロマトグラフィー用支持体であり,該支持体にプラスミドDNAを含む溶液を通して接触させるのに対し,引用例に記載された発明は,オリゴヌクレオチドを結合した支持体が,オリゴヌクレオチドをビオチン-ストレプトアビジンの親和性結合により結合させた磁性ビーズであり,プラスミドDNAを含む溶液にビーズを混合して接触させる点。

5.判断
DNAの精製に際し,当該DNAとアフィニティ(親和性)を有するオリゴヌクレオチドを共有結合で固定化したクロマトグラフィー支持体にDNA溶液を通して,オリゴヌクレオチドと複合体を形成することによって試料中のDNAを捕捉することは,例えば本願優先日前に頒布された刊行物であるJournal of Chromatography, 1993, Vol.618, p315-339に記載されているように,本願優先日における周知の一方法である。当業者であれば,周知の各方法の特徴を考慮しつつ所望の方法を選択することは常套手段であるから,引用例記載の発明のビオチニル化オリゴヌクレオチドの結合したストレプトアビジン被覆磁性ビーズ体に替えて,上記周知のオリゴヌクレオチドを共有結合により固定したクロマトグラフィー支持体を用いることとし,プラスミドDNAを含む溶液を支持体に通して接触させることは,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そして,本願発明の奏する効果は,引用例及び周知技術から予測し得るものである。

6.請求人の主張について
請求人は審判請求書において,以下の点について主張している。
(1)引用例には,オリゴヌクレオチドの共有結合による固定化は記載も示唆もされていない。本願発明は,ビオチニル化オリゴヌクレオチドによる不純物の危険がないことから高い純度が得られる点,引用例に記載された発明のように,ストレプトアビジンとビオチン間,及びオリゴヌクレオチドとプラスミドDNA間の2つの相互作用ではなく,たった1つの相互作用によることからより単純で高い収率が得られる点で,引用例に記載された発明より顕著な効果を奏する。
(2)本願発明は,高い感度,高い選択性,製薬学的に許容できる純度の材料を製造する高い効率,医薬用途のための大量のDNAを製造するような潜在的な規模拡大性を目的とするものであるが,引用例にはこのような目的や医薬用途の材料の製造について,何ら記載も示唆もされておらず,引用例に記載された発明を改変して本願発明に想到することが例え可能であっても,そのような改変を行うことの動機付けは何ら存在しない。
(3)引用例には,得られた溶出物中の不純物蛋白質やエンドトキシンの濃度について何ら示されていない。引用例には,溶出されたDNAには染色体DNAの痕跡は含まれないことが記載されているに過ぎず,調整されたDNAの純度は配列決定に適合するものではあっても,必ずしも遺伝子治療に適しているものではない。
一方,本願発明は,0.5%未満の染色体DNAという非常に少量の不純物しか含まないプラスミドDNA組成物の調整を可能とするものであり,実施例4によれば,元の細胞ライセートに比べて,蛋白質濃度は100分の1以下に減少し,エンドトキシン濃度は10分の1以下であり,染色体DNAの最終濃度は0.1%以下であることが実証されている。

請求人の主張について以下に検討する。
主張(1)について
引用例には,共有結合を用いた固定化については記載されていないが,上述のとおり,共有結合によりDNAを担体に固定化する技術は周知技術である。そして,共有結合がストレプトアビジン-ビオチンの相互作用による結合よりも安定であることも技術常識である。
したがって,共有結合による固定化を採用すれば,アフィニティー精製における分子間の相互作用はDNA-DNA間の相互作用のみとなることは自明であり,溶出液中に固定化したオリゴヌクレオチドの不純物が混入するリスクを低減できることも,技術常識から当業者が予測し得るものである。

主張(2)について
引用例の記載事項(2)には,DNA精製のスケールアップのためにアフィニティー手法が広く使用されていることが記載され,また,精製されたDNAが遺伝子治療に使用されることも言及されている。そして,遺伝子治療のためのDNAは不純物なしでなければならないことや,大量の精製DNAが必要であることは,技術常識である(必要であれば,上述のJournal of Chromatography, 1993,Vol.618, 第335頁右欄第17?21行,第336頁左欄第21?25行を参照。)。
してみると,請求人の主張する本願発明の目的は,引用例にも示唆される周知の技術課題である。
したがって,引用例に記載された発明を,本願発明の方法へ改変する動機付けがないという請求人の主張は採用できない。

主張(3)について
引用例の記載では,取得された精製DNAが,遺伝子治療に使用できる純度のものであるか否かは不明である。
しかしながら,本願発明も引用例に記載された発明も,10?30塩基長のオリゴヌクレオチドと環状プラスミドとで三重らせんを形成するという,同じアフィニティーの原理を利用してDNAを精製している以上,本願発明が引用例記載の発明と比較して,予想を超えて顕著に高い感度と選択性を有しているとは考え難く,引用例記載の発明も本願発明と同様に医薬に使用できる程度の高純度の精製がなされている蓋然性が極めて高い。
そして,請求人は,引用例記載の発明と本願発明との比較実験データを提出する等して,本願発明の顕著な効果を立証していない。
さらに,本願明細書の実施例4のデータについても,「この試料中のゲノムDNAのレベルは0.1%である。(段落【0056】)」,「試料中の蛋白質濃度は,透明溶菌物中の125μg/mlから精製されたプラスミド(・・・)中1μg/mlを下回る濃度へと減少する。・・・エンドトキシン濃度は,出発透明溶菌物に比例し,精製されたプラスミドでは10を上回る因子で割り算される。(段落【0055】)」と説明されているだけで,本願発明の高い感度と選択性を裏付ける具体的な測定データは開示されていない。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。

7.付記
原審の拒絶査定備考欄でも指摘されているとおり,本願の請求項1?40に係る発明は,本願の分割のもとの出願である特願平8-518319号(以下,「原出願」という。)の請求項1?40に係る発明と同一である。
そして,原出願は,平成22年1月14日に拒絶をすべき旨の審決が確定しているが,取り下げられても,無効にされてもいないことから,平成8年改正前特許法第39条第5項の規定により初めからなかったものとみなされる特許出願には該当しない。
よって,本願の請求項1?40に係る発明は,特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであることを付言する。

8.むすび
したがって,本願の請求項30に係る発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-12 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-05-31 
出願番号 特願2008-267538(P2008-267538)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 晋治  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 吉田 佳代子
平田 和男
発明の名称 固定化させたオリゴヌクレオチドと三重らせんを形成させることによるDNA精製  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  
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