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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A21B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A21B
管理番号 1242168
審判番号 不服2009-657  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-08 
確定日 2011-08-19 
事件の表示 特願2004-510595号「高速調理装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月18日国際公開、WO03/103465号、平成17年11月4日国内公表、特表2005-532798号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、2003年6月5日(パリ条約による優先権主張2002年6月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年10月6日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月10日)、これに対し、平成21年1月8日に審判請求がなされ、同年2日9日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成21年2月9日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年2月9日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成21年2月9日付け手続補正は、特許法第17条の2第1項第4号に規定する期間内になされたものであって、装置発明について、本件補正前の請求項38?53を新たに請求項1?16とし、新たに、請求項23、24、27を追加すると共に、方法発明について、本件補正前の請求項54?59を新たに請求項17?22とし、新たに請求項25、26、28を追加する補正を行うものである。
上記補正において、装置発明についての新たな請求項23、24、27は、いずれも新たな請求項1を引用するものである。
ここで、装置発明についての本件補正前の請求項1?4、5?7、8?15、16、17?18、19?23及び24?28は、いずれも「熱エネルギを1つ以上の食料製品の上面及び下面に提供する加熱アセンブリが設けられ」ていること及び「下面に供給される熱エネルギが上面に供給される熱エネルギよりも大きくなって」いることなる発明特定事項を具備するものであるが、新たな請求項1は当該発明特定事項を具備するものでないことから、新たな請求項23、24、27は、いずれも、本件補正前の請求項1?4、5?7、8?15、16、17?18、19?23及び24?28を限定するものとはいえない。
また、装置発明についての本件補正前の請求項60?63は、「コンベヤの上方に配置された上部空気インピンジメントアセンブリが設けられ」ていること、及び、「コンベヤの下方に配置された下部空気インピンジメントアセンブリが設けられ」ていることなる発明特定事項を具備するものであるが、新たな請求項1は当該発明特定事項を具備するものでないことから、新たな請求項23、24、27は、いずれも、本件補正前の請求項60?63を限定するものとはいえない。
結局、新たな請求項23、24、27は、本件補正前の請求項38を限定するものではあるが、上記したように、本件補正前の請求項38?53が新たな請求項1?16に1対1に対応するものであることから、上記補正は、新たな請求項23、24、27を追加する補正、即ち、増項補正を含むものといえる。
そして、上記増項補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当しないことは明らかであり、同条第3項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しない。
同様に、上記補正において、方法発明についての新たな請求項25、26、28は、いずれも新たな請求項17を引用するものである。
ここで、方法発明についての本件補正前の請求項(29?34)、(35?37)は、いずれも、加熱空気のコラムとしての「空気の流れ」を「食料製品の上面に提供」すること、「食料製品の下面」に「熱」を提供すること、及び、下面に提供され(加えられ)る「熱エネルギ」が上面に提供され(加えられ)る「熱エネルギ」よりも大きくなっていること」なる発明特定事項を具備するものであるが、新たな請求項17は当該発明特定事項を具備するものでないことから、新たな請求項25、26、28は、いずれも、本件補正前の請求項(29?34)、(35?37)を限定するものとはいえない。
結局、新たな請求項25、26、28は、本件補正前の請求項54を限定するものではあるが、上記したように、本件補正前の請求項54?59が新たな請求項17?22に1対1に対応するものであることから、上記補正は、新たな請求項25、26、28を追加する補正、即ち、増項補正を含むものといえる。
そして、装置発明についての場合と同様に、上記増項補正は、改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当しないことは明らかであり、同条第3項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しない。

以上のとおりであるから、平成21年2月9日付けの補正は、改正前特許法第17条の2第4項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年2月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年1月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「調理装置において、熱エネルギを1つ以上の食料製品の上面及び下面に提供する加熱アセンブリが設けられており、前記下面に供給される前記熱エネルギが前記上面に供給される前記熱エネルギよりも大きくなっており、前記加熱アセンブリが、前記上面に空気の上部コラムを提供する第1の空気インピンジメントアセンブリと、前記下面に空気の下部コラムを提供する第2の空気インピンジメントアセンブリと、前記下面に直接に赤外線熱を提供する赤外線ヒータとを含んでおり、前記赤外線ヒータが前記第2の空気インピンジメントアセンブリと前記下面との間に配置されていることを特徴とする、調理装置。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由において提示された、本願の優先権主張の基礎となる出願前に頒布された刊行物である国際公開第1/10275号パンフレット(以下「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a)「WHAT IS CLAIMED IS:
1.A cooking device which comprises:
an air impingement assembly which is capable of contacting a food product with heated air from above; and
a heater assembly, which is located below said food product and which is capable of imparting a desired amount of crunchiness to said food product.
・・・
20.The cooking device of claim 19, wherein said air impingement assembly includes a surface with a plurality of apertures though which said columns of air are delivered, and wherein said heater element does not overlie any of said apertures.
(【請求項1】 食品を上からの加熱された空気に接触させることができる空気衝撃アセンブリと、前記食品の下に位置して、前記食品に望ましい量の歯ごたえを与えることができるヒータ・アセンブリとを含む調理装置。
・・・
【請求項20】空気衝撃アセンブリが、柱状の空気が送達される複数の開口を有する表面を含み、ヒータ・エレメントは前記開口のいずれの上にも重ならない、請求項19に記載の調理装置。)」(第14ページ第1?第17ページ第8行、訳文は、国際公開パンフレットの日本国公表公報である特表2003-526066号公報(以下「日本国公表公報」という。)の【特許請求の範囲】)
b)「1. Field of the Invention
This invention relates to a cooking appliance , and, in particular, to a cooking appliance that is capable of rapidly tasting bread products, such as muffins, bagels and the like. The cooking appliance is also capable of heating other food products, such as, meats, vegetables and/or garnishes.
(【発明の背景】
1.発明の分野
本発明は調理装置に関し、特にマフィンやベーグルなどのパン製品を急速に焼くことのできる調理装置に関する。この調理装置はまた肉、野菜、および/または付け合わせなどの他の食品を加熱することもできる。)」(第1ページ第4行?同第8行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0001】)
c)「Thus, there is a need for a toaster that can achieve high quality and faster toasting without burning and still provide the crunchiness of a toasted bread product.
The present invention provides a cooking appliance that meets the aforementioned need for faster toasting/cooking without burning and still providing crunchiness.
The present invention provides a cooking appliance that heats food products and garnishes.
(したがって、焦がすことなく高い品質とより速い焼きを達成することができ、さらにまた焼かれたパン製品の歯ごたえを提供することができるトースタが必要である。
本発明は、焦がすことなくより速い焼き/調理に関する上述の必要性を満たす調理装置を提供する。
本発明は、食品および付け合わせを加熱する調理装置を提供する。」(第2ページ第17行?同第26行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0005】)
d)「An important feature of the present invention is the use of air impingement heating to rapidly heat food products 12, such as bread, to a toasted temperature that corresponds to a desired temperature specified by the user of the cooking appliance 11 , while browning an upper surface of food products 12. For toasting bread products, the temperature of the impingement air is in the range of about 500°F. to 700°F. Most preferably, the temperature of the impingement air is about 600°F. to achieve a toasting time of less than 60 seconds.
To give a crunchiness to food product 12, electrical heaters 19A and 19B are operated at a temperature that produces infrared radiation to be incident on the lower surface and side surface of food product 12. It has been observed that for the environment created by the above noted air impingement temperatures, crunchiness is achieved by the end of the toasting time with infrared heating temperatures in the range of 1,000°F. to 1,800°F.
(本発明の重要な特質は、パンなどの食品12を、調理装置11の使用者によって指定された所望の熱に対応する焼き温度に急速に加熱して、同時に食品12の上表面を褐色に焼くための空気衝撃加熱の使用である。パン製品を焼くためには、衝撃空気の温度は約500°F?700°F(約260℃?370℃)の範囲にある。60秒間以下で焼き時間を達成するためには、衝撃空気の温度は約600°F(約315℃)であることが最も好ましい。
食品12の歯ごたえを与えるためには、電気ヒータ19A、19Bを、食品12の下表面と側表面に入射すべき赤外線を発生させる温度で作動させる。上述の空気衝撃温度によって作り出される環境のためには、1000°F?1800°F(537℃?982℃)の範囲にある赤外線加熱温度によって焼き時間の終りまでに達成されることが観察された。」(第6ページ第11行?同第26行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0015】?【0016】)
e)「Referring to FIGS. 6 and 7, each of the jet fingers 80 in an alternate embodiment has a generally flat bottom surface 182 with a plurality of side wall tabs 183 for attachment to a jet finger 80. A plurality of generally circular apertures 188 is formed in bottom surface 182 to direct air 156 as impingement air toward food products 12 (not shown in FIGS. 6 and 7). Apertures 188 are arranged in an array that includes diagonal rows of apertures 188 .
Referring to FIG. 8, bottom surface 182 has formed therein a plurality of multiple point shaped apertures l98 that have three or more points according to another alternate embodiment of the invention. Preferably, apertures 198 have four points or a cruciform shape as shown in FIG. 8. Preferably, apertures 198 are formed, as by a punch operation, such that the cruciform points extend generally downward from bottom surface 182 toward food products 12. This configuration has been found to give improved air impingement flow.
(図6、7を参照すると、一つの別の実施形態におけるジェット・フィンガ80のそれぞれは、ジェット・フィンガ80に取り付けるための複数の側壁タブ183を有する一般に平坦な底表面182を有する。複数の一般に円形の開口188が底表面182に形成され、空気を衝撃空気156として食品12(図6,7には図示せず)に向ける。開口188は、開口188の対角列を含む配列として配置されている。
図8を参照すると、底表面182は、その中に複数の多突端形状の開口198を形成しており、これらの開口は本発明の他の代替実施形態によれば3個以上の突端を有する。開口198は、十字形の突端が底表面182から食品12に向かって一般に下向きに延びるような穴あけ作業によって形成される。この構成は改善された空気衝撃流をもたらすことがわかっている。」(第8ページ第2行?同第17行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0021】?【0022】)
f)「Referring to FIGS. 3 through 9, supply fan 106 draws air 156 (FIG. 9) from within housing 14 into opening 114 across heating element 116 . Heated air entering fan 106 is forced upwardly into base duct portion 78 and through jet fingers 80 and 80a and then exits via air slots 88 downwardly toward passageway 30. The rectangularly cross-sectioned jets of hot air impinge upon conveyor belt loop 136 and upon food products 12 in passageway 30 to thereby heat food product 12 and brown its upper surface. After impinging on food product 12 , the air continues in a recirculating path to fan opening 114 via heating element 116 .
Electrical heater 19B is shown in FIG. 4 as an electrical heating coil that has a serpentine coil pattern, although any shape or type of infrared heating element capable of imparting the desired crunchiness to the food product is also contemplated by the present invention. Electrical heaters 19A and 19B may be separate coils with separate temperature regulators or may be a combined coil that extends across both toasting/cooking areas 31A and 31B with one temperature regulator. As previously mentioned, electrical heaters 19A and 19B are heated to a temperature that produces infrared radiation. The infrared radiation acts in the heated environment produced by hot air impingement assembly 17 to toast the bottom and side surfaces of food product 12 to the desired crunchiness.
(図3から9までを参照すると、供給ファン106が、加熱エレメント116を横断してハンジング14内部から開口部114の中へ空気156(図9)を引き込む。加熱空気を入れるファン106はベース・ダクト部分78の中へジェット・フィンガ80、80aを通って上向きに強制され、次いで空気スロット88を経て下向きに通路30に向かって出る。矩形断面の熱空気ジェットはコンベヤ・ベルト・ループ136および通路30中の食品の上に衝突し、これによって食品12を加熱して、その表面を褐色に焼く。食品12の上に衝突した後に、空気は循環経路の中で加熱エレメント116を経てファン開口部114へ続く。
電気ヒータ19Bは、図4には蛇行状コイル・パターンを有する電気加熱コイルとして図示されているが、他の形式または食品に所望の歯ごたえを付与することのできる赤外線加熱エレメント形式も、本発明によって企画される。電気ヒータ19A、19Bは、個別の温度調整器を有する個別のコイルにすることもでき、または1つの温度調整器を有する両焼き/調理区域31A、31Bにわたって延びる組合せコイルにすることもできる。前述のように、電気ヒータ19A、19Bは赤外線を発生させる温度にまで加熱される。赤外線は熱空気衝撃アセンブリ17によって生じた加熱された環境で作用し、食品12の底面と側面とを焼いて所望の歯ごたえを与える。)」(第9ページ第28行?第10ページ第15行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0028】?【0029】)
g)「Referring to FIGS. 11 and 12, an alternate embodiment of the present invention is shown as a high speed cooking appliance 200. High speed cooking appliance 200 includes a housing 202, a conveyor assembly 204, an air impingement assembly 206 and an electrical heater assembly 208. Housing 202 defines a toasting/cooking passageway 203 located above conveyor assembly 204 . Conveyor assembly 204 rotates to convey food products (not shown) on one or more conveyor belts (not shown) along toasting/cooking path 203. Air impingement assembly 206 includes an upper air plenum 220 , a lower air plenum 226, a fan 214, air heaters 216 and an air plenum 218 . Upper air plenum 220 has a distribution ramp 222, a bottom surface 223 and a plurality of apertures 224 formed in bottom surface 223. Lower air plenum 226 that has a distribution ramp 228, a top surface 229 and a plurality of apertures 230 formed in top surface 229.
When fan 214 rotates, an airflow is generated in air plenum 218 that is heated by air heaters 216 . The heated air flows from air plenum 218 via a slot 232 into upper air plenum 220 and a slot 234 into lower air plenum 226 as indicated by arrows 236 and 238 , respectively. The heated airflow in upper air plenum 218 is deflected by ramp 222 to flow downwardly through apertures 224 as indicated by arrows 240 toward the top of conveyor assembly 204 and into toasting/cooking passageway 203 . The heated airflow in lower air plenum 226 is deflected upwardly by ramp 228 through apertures 230 as indicated by arrows 242 toward the bottom of and through conveyor assembly 204 into toasting/cooking passageway 203 .
Upper air plenum 218 may suitably be a single jet finger that has a length substantially along toasting/cooking passageway 203 . Alternatively, upper air plenum 218 may be a plurality of jet fingers. Preferably, apertures 224 have a cruciform shape.
Referring to FIG. 12 , lower air plenum 226 has a jet finger 244 located at one end of toasting/cooking passageway 203 and another jet finger 246 located at the other end of toasting/cooking passageway 203 . Apertures 230 are disposed in the tops of jet fingers 244 and 246 and preferably have a cruciform shape.
Electrical heater 208 includes a heater element 248 disposed above jet finger 244 , a heater element 250 disposed above jet finger 246 and a heater element 252 disposed above a space 254 located between jet fingers 244 and 246 . Heater elements 248 , 250 and 252 are infrared heaters that are each formed in a serpentine pattern. The serpentine patterns of heater elements 248 and 250 are arranged to wind about apertures 230 , but to avoid overlying apertures 230 . This arrangement permits infrared energy emitted by heater elements 248 and 250 and convection energy of air impingement columns flowing upwardly from apertures 230 to have minimal interference with one another. That is, the heater elements do not impede the air flow and the air flow does not reduce the infrared emissions by cooling the heating elements.
Cooking device 200 provides a cooking environment that is extremely hot from above and below toasting/cooking passageway 203 , while gaining the benefit of added crunchiness afforded by infrared heating assembly 208 . By using three different heater elements 248 , 250 and 252 and spaced lower jet fingers 244 and 246 , three distinct cooking zones are defined that can be controlled for heating temperatures and food product resident times within each zone. This affords great flexibility in the toasting/cooking process.
The present invention having been thus described with particular reference to the preferred forms thereof, it will be obvious that various changes and modifications may be made therein without departing from the spirit and scope of the present invention as defined in the appended claims.
(図11、12を参照すると、本発明の一つの別の実施形態が高速調理装置200として示されている。高速調理装置200は、ハウジング202、コンベヤ・アセンブリ204、空気衝撃アセンブリ206、および電気ヒータ・アセンブリ208を含む。ハウジング202は、コンベヤ・アセンブリ204の上にある焼き/調理通路203を画定する。コンベヤ・アセンブリ204は回転して、1つまたは複数のコンベヤ・ベルト(図示せず)上の食品(図示せず)を調理通路203に沿って搬送する。衝撃アセンブリ206は、上部空気プレナム220、下部空気プレナム226、ファン214、空気ヒータ216、および空気プレナム218を含む。上部空気プレナム220は、分配ランプ222、底表面223、および底表面223に形成された複数の開口224を有する。下部空気プレナム226は、分配ランプ228、頂表面229、および頂表面229に形成された複数の開口230を有する。
ファン214が回転すると、空気ヒータ216によって加熱された空気プレナム218の中に空気流が発生する。加熱された空気は空気プレナム218から、スロット232を経て上部空気プレナム220の中へ、スロット234を経て下部空気プレナム226の中へ、それぞれ矢印236と238で示されているように流れる。上部空気プレナム218における加熱された空気流は、ランプ222によって偏向され、矢印240で示すように開口224を通って下向きに流れてコンベヤ・アセンブリ204の頂部に向い、焼き/調理通路203に入る。下部空気プレナム226における加熱された空気流は、ランプ228によって偏向され、矢印242で示すように開口230を通って下向きに流れてコンベヤ・アセンブリ204の底部に向い、焼き/調理通路203に入る。
上部空気プレナム218は適当に、ほぼ焼き/調理通路203に沿った長さを有する単一ジェット・フィンガにすることもできる。別法として、上部空気プレナム218を複数のジェット・フィンガにすることもできる。開口224は十字形状を有することが好ましい。
図12を参照すると、下部空気プレナム226は、焼き/調理通路203の一端に位置するジェット・フィンガ244と、焼き/調理通路203の他端に位置する別のジェット・フィンガ246とを有する。ジェット・フィンガ244、246の頂部に配置されており、開口230は十字形状を有することが好ましい。
電気ヒータ208は、ジェット・フィンガ244の上に配置されたヒータ・エレメント248、ジェット・フィンガ246の上に配置されたヒータ・エレメント250、およびジェット・フィンガ244、246の間に位置する空間254の上に配置されたヒータ・エレメント252を含む。ヒータ・エレメント248、250、252は、それぞれが蛇行状パターンの形を呈する赤外線ヒータである。ヒータ・エレメント248、250の蛇行状パターンは、開口230の周りを曲がりくねるが開口230の上に重ならないように配置されている。この配置によって、ヒータ・エレメント248、250によって放射される赤外線エネルギーと開口230から上向きに流れる空気衝撃カラムの対流エネルギーとの相互干渉を最小限にすることができる。すなわち、ヒータ・エレメントは空気流を妨げず、空気流はヒーティング・エレメントを冷却することによる赤外線の放射を低下させない。
調理装置200は、焼き/調理通路203の上と下から極めて熱い調理環境を提供すると共に、赤外線加熱アセンブリ208によって与えられる歯ごたえを増すという利益をもたらす。3つの異なるヒータ・エレメント248、250、252と離隔した下部ジェット・フィンガ244、246を使用することによって、各区域における加熱温度と食品在留時間を制御することができる、3つの区分された調理区域が画定されている。これは焼き/調理過程における大きな柔軟性を提供する。
こうして本発明を特にその好ましい形態を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲に定義するような本発明の意図と範囲を逸脱することなく、様々な偏向および改訂ができることは明らかになろう。)」(第11ページ第15行?第13ページ第11行、訳文は、上記日本国公表公報の段落【0033】?【0039】)
h)上記gの摘記事項及び図面の図示内容から、焼き/調理通路203の上と下から極めて熱い調理環境を提供する加熱手段が設けられること、及び、加熱手段が、空気衝撃アセンブリ206及び電気ヒータ・アセンブリ208とから構成されていることが示され、上記d、gの摘記事項及び図面の図示内容から、空気衝撃アセンブリ206からの熱空気ジェットの温度を約260?370℃の範囲とするとともに、食品の下に位置する電気ヒータ・アセンブリ208から放射される赤外線の温度を537?982℃の範囲としたことが示されている。

上記a?gの記載事項、上記hの認定事項及び図面の図示内容からみて、刊行物には、次の発明が記載されている。
「焦がすことなく高い品質とより速い焼きを達成することができ、さらにまた焼かれたパン製品の歯ごたえを提供することができる調理装置を提供することを目的として、
高速調理装置200において、
焼き/調理通路203の上と下から極めて熱い調理環境を提供する加熱手段が設けられ、
加熱手段が、上部空気プレナム220と下部空気プレナム226とを含む、矩形断面で柱状の熱空気ジェットを送達する空気衝撃アセンブリ206及び食品の下に位置して、歯ごたえを増すという利益をもたらす、赤外線エネルギーを放射する赤外線ヒータであるヒータ・エレメント248、250、252を含む電気ヒータ・アセンブリ208とから構成され、
空気衝撃アセンブリ206からの熱空気ジェットの温度を約260?370℃の範囲とするとともに、電気ヒータ・アセンブリ208から放射される赤外線の温度を537?982℃の範囲とし、
ヒータ・エレメント248、250の蛇行状パターンは、下部空気プレナム226の頂表面229に形成された複数の開口230の上に重ならないように配置されている、
高速調理装置200。」

3.対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「高速調理装置200」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「調理装置」に相当し、以下同様に、
「焼き/調理通路203の上と下から極めて熱い調理環境を提供する加熱手段が設けられ」ることは、加熱手段が、食料製品を加熱するための熱エネルギーを放出するものであることは明らかであるから、「熱エネルギを1つ以上の食料製品の上面及び下面に提供する加熱アセンブリが設けられ」ることに、
「上部空気プレナム220」は、焼き/調理通路203の上から、矩形断面で柱状の熱空気ジェットを送達するものであることから、「上面に空気の上部コラムを提供する第1の空気インピンジメントアセンブリ」に、
「下部空気プレナム226」は、焼き/調理通路203の下から、矩形断面で柱状の熱空気ジェットを送達するものであることから、「下面に空気の下部コラムを提供する第2の空気インピンジメントアセンブリ」に、
「食品の下に位置して、歯ごたえを増すという利益をもたらす、赤外線エネルギーを放射する赤外線ヒータであるヒータ・エレメント248、250、252を含む電気ヒータ・アセンブリ208」は、ヒータ・エレメント248、250の蛇行状パターンは、下部空気プレナム226の頂表面229に形成された複数の開口230の上に重ならないように配置されていることから、「下面に直接に赤外線熱を提供する赤外線ヒータ」に、
「ヒータ・エレメント248、250の蛇行状パターンは、下部空気プレナム226の頂表面229に形成された複数の開口230の上に」「配置されている」ことは、ヒータ・エレメント248、250、252が食品の下に位置するものであることから、「赤外線ヒータが第2の空気インピンジメントアセンブリと下面との間に配置されている」に、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「調理装置において、熱エネルギを1つ以上の食料製品の上面及び下面に提供する加熱アセンブリが設けられており、前記加熱アセンブリが、前記上面に空気の上部コラムを提供する第1の空気インピンジメントアセンブリと、前記下面に空気の下部コラムを提供する第2の空気インピンジメントアセンブリと、前記下面に直接に赤外線熱を提供する赤外線ヒータとを含んでおり、前記赤外線ヒータが前記第2の空気インピンジメントアセンブリと前記下面との間に配置されていることを特徴とする、調理装置。」

[相違点]
本願発明では、下面に供給される熱エネルギが上面に供給される熱エネルギよりも大きくなっているのに対して、刊行物に記載された発明では、空気衝撃アセンブリ206からの熱空気ジェットの温度を約260?370℃の範囲とするとともに、電気ヒータ・アセンブリ208から放射される赤外線の温度を537?982℃の範囲とする点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
本願明細書では、「熱エネルギ」に関して、「調理装置11及び200のように、調理装置260は食料製品の上面及び下面に熱を提供し、この場合、食料製品をより迅速に調理するために下面に提供される熱は熱エネルギがより大きい(より高温である)。」(段落【0064】)と記載されている。
したがって、本願発明の「熱エネルギ」が大きいことには、「高温」であるとの概念が含まれている。
一方、刊行物に記載された発明は、食品の上に上部空気プレナム220を位置させ、食品の下に下部空気プレナム226を位置させるとともに、赤外線ヒータを位置配置するものである。
また、刊行物に記載された発明は、熱空気ジェットの温度を約260?370℃の範囲とするとともに、赤外線の温度を537?982℃の範囲とすることから、食品の下からの加熱温度が食品の上からの加熱温度より高温となることは明らかである。
そのうえ、刊行物に記載された発明は、食品に歯ごたえを増すという利益をもたらすために、食品の下に、下部空気プレナム226を位置させるのみならず、ヒータ・エレメント248、250、252を配置し、赤外線温度を537?982℃の範囲の高温とするものである。
さらに、食品を加熱調理する調理装置の技術分野において、食品の上下面の目標とする焼き上がり状態に応じて、熱エネルギーを上下面に調整して分配することは、通常行われている技術事項である。
したがって、食品の歯ごたえを増すために、食品の下からの加熱温度を食品の上からの加熱温度より高温とするに際して、食品の下から与えられる熱エネルギー量を食品の上から与えられる熱エネルギー量に対して大きくなるように各加熱手段のエネルギー量を調整して、上下の加熱手段間に割り振ることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。
また、本願発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明により奏される効果の範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-14 
結審通知日 2011-03-16 
審決日 2011-04-07 
出願番号 特願2004-510595(P2004-510595)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A21B)
P 1 8・ 121- Z (A21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 豊博  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 良憲
発明の名称 高速調理装置及び方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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