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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01P
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G01P
管理番号 1242788
審判番号 不服2009-22586  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-18 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2007- 59275「センサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日出願公開、特開2008-224254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年3月8日の出願であって、手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成19年 3月 8日 出願

平成21年 2月12日 拒絶理由通知(発送日:同年2月17日)

平成21年 4月20日 手続補正(以下、「補正1」という。)

平成21年 5月15日 拒絶理由通知(最後)(発送日:同年5月26日)

平成21年 7月27日 手続補正(以下、「補正2」という。)

平成21年 8月13日 補正の却下の決定、拒絶査定(送達日:同年8月18日)

平成21年11月18日 拒絶査定不服審判の請求

第2 補正の却下の決定の当否
平成21年5月15日付けの拒絶理由通知は、特許法第17条の2第1項第3号に規定する最後に受けた拒絶理由通知(以下、「最後の拒絶理由通知」という。)である。
これに対して、当該最後の拒絶理由通知に係る特許法第50条の規定により指定された期間内に、平成21年7月27日付けの手続補正(補正2)により特許請求の範囲及び明細書の補正がなされたが、当該補正2について、平成21年8月13日付けで補正の却下の決定(以下、「補正の却下の決定」という。)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
請求人は、平成21年11月18日付けの拒絶査定不服審判の請求において、拒絶査定不服審判を請求するとともに、補正の却下の決定に対して不服を申し立てている。
そこで、まず、補正の却下の決定の当否について検討する。

1 補正の却下の決定の理由の概要
補正の却下の決定の理由の概要は、次のとおりである。

平成21年7月27日付けの手続補正によって、請求項1には、第1の凹部、第2の凹部および第3の凹部が記載されることとなったものの、第1凹部、第2凹部の深さと枠部の幅の関係は特定されることはなく、結果として、第1凹部、第2凹部の深さは依然として、いくらでも構わないものとなっている。
しかし、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲には、その深さを、枠部の幅の3.3%以上とすることしか記載されていなかったのであって、また、第1の凹部または第2の凹部の深さを、いくらでも構わないとする広い思想が、記載されていたわけでもなく、またそのようなことが、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書および図面から自明であったということもできない。
・・・・・
してみれば、平成21年7月27日付けでした手続補正(補正2)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないというほかなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2 補正2の内容
補正2は、特許請求の範囲の請求項1について、次のとおりに補正することを含むものである。

「【請求項1】
錘部と、
前記錘部を囲って形成された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁膜の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、
前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第3凹部と、
を有することを特徴とするセンサ装置。」

3 当審の判断
補正2は、最後の拒絶理由通知に係る特許法第50条の規定により指定された期間内にするものであるから、特許法第17条の2第3項の規定により、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
そこで、補正2が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否か検討する。

(1)当初明細書等の記載
当初明細書等には、センサ装置に関して、次の記載aないしfが図面とともに記載されている。

a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘部と、前記錘部を囲うように配置された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁層を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁層を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁層の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、を有し、
前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上である、
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の5.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記枠部上面の前記錘部側の端部、及び前記錘部上面の端部に、前記枠部上面、及び前記錘部上面と40°?60°の面取り部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
第1基板上に、絶縁層、及び第2基板を設ける工程と、
前記第1基板の底面に溝を設け、枠部、及び錘部を形成する工程と、
前記枠部、及び錘部の間に前記絶縁層を露出させると同時に、前記錘部の底面を削る工程と
前記絶縁層の露出部をウエットエッチングにより除去する工程と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁層の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、を形成し、前記第1凹部の深さ、及び前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上5.0%以下となるように、ウエットエッチングする工程と、
を有することを特徴とするセンサ装置の製造方法。」

b 「【0001】
本発明は、センサ装置、及びセンサ装置の製造方法に関するものであり、詳細には、枠と梁、及び錘と梁との間に絶縁層を設けたセンサ装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、機械的要素と電気的要素とを組み合わせた機能部品である。そのMEMSの一例として、ピエゾ抵抗型加速度センサがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、従来のピエゾ抵抗型加速度センサの略断面図である。ピエゾ抵抗型加速度センサ1000の錘部501に加速度による力が加わると、支持部505、及び質量部50
6と接続されている梁部507が撓み、梁部507に組み込まれたピエゾ抵抗素子508の抵抗値が変化する。この抵抗値変化による電流あるいは電圧の変化を、ピエゾ抵抗に接続した電気配線(不図示)から、支持部505の上面に形成されたメタルパッド509を経由し、外部へ取り出す。この変化を検出することにより加速度の検出を可能としたものである。
また、枠部502上には、酸化膜からなる絶縁層503を介して支持部505が設けられており、錘部501上には、酸化膜からなる絶縁層504を介して質量部506が設けられている。
【特許文献1】特開2005-49130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成を有するピエゾ抵抗型加速度センサを製造する際、梁部507を形成するために梁部507の下部をエッチングする工程を有するものの、梁部507の端部に加わる応力集中を緩和するために支持部505、質量部506の底面端部をエッチングする思想はなく、最終的に製造されたものについて、偶発的に支持部505、及び質量部506の底面端部がわずかにエッチングされている。このわずかにエッチングされた部分である、支持部505の側面と絶縁層503の側面との間隔510が非常に狭く、梁部507を絶縁層503の上面端部の辺、及び絶縁層504の上面端部の辺で支えているのと同様であり、急激な衝撃が加わる場合、支持部505と梁部507との境界部や、質量部506と梁部507との境界部に応力が集中し、衝撃により梁部507が破損すやすい問題があった。(当審注:「破損しやすい」の誤記と認められる。)
【0005】
この問題を回避するため、従来は梁部の幅、板厚等を調整して耐衝撃性の向上を図っていた。
しかし、加速度センサの縮小化に伴った枠幅の縮小、それに伴う梁幅の縮小、若しくは感度向上を目的とした梁厚の薄膜化を行うことで、耐衝撃性が劣化することになり、小型化と耐衝撃性を両立させることが困難であった。
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、良好な耐衝撃性を有し、小型化が可能なセンサ装置、及びその製造方法を提供することにある。」

c 「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、下記のセンサ装置、及びその製造方法を用いることにより、上記問題を解決できることを見出し、上記目的を達成するに至った。
【0008】
即ち、請求項1に記載のセンサ装置は、錘部と、前記錘部を囲うように配置された枠部と、前記枠部上に第1絶縁層を介して設けられた支持部と、前記錘部上に第2絶縁層を介して設けられた質量部と、前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁層の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、を有し、前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上である、ことを特徴とする。
・・・・・
請求項1、及び請求項2に記載のセンサ装置によると、第1凹部の深さ、及び第2凹部の深さが前記の範囲にあると、梁部は、支持部の枠部上面と対向する面、及び前記質量部の前記錘部上面と対向する面で支える構造を有し、応力を面で受けることになるため、耐衝撃性を向上させることができる。また、第1空間部、及び第2空間部を設けることにより、梁部に加わる応力が緩和されるため、梁部の幅や厚さを縮小しても、耐衝撃性を向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載のセンサ装置は、前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有することを特徴とする。
請求項3に記載のセンサ装置によると、請求項1に記載の発明における効果に加え、前述した応力緩和作用を有する面の面積を、局所的に広くすることができるため、さらなる応力緩和作用を奏し、耐衝撃性を向上させることができる。また、応力を緩和する効果を奏しない箇所の絶縁層をエッチングしていないため、絶縁層と枠部、及び絶縁層と支持部、の接触面積が大きいことから、センサ装置自体の強度も確保することができる。」

d 「【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な耐衝撃性を有し、小型化が可能なセンサ装置、及びその製造方法を提供することができる。」

e 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図面には、この
発明が理解できる程度に各構成成分の形状、大きさ及び配置関係が概略的に示されている
にすぎず、これによりこの発明が特に限定されるものではない。以下の説明において、特定の材料、条件及び数値条件等を用いることがあるが、これは好適例の一つにすぎず、従って、何らこれらに限定されない。
・・・・・
【0015】
<センサ装置>
〔第1形態の構造〕
図1(A)は、本発明のセンサ装置における錘部に加重が加わる前後のセンサ構造100(第1形態)の部分断面図であり、図1(B)は、本発明のセンサ装置におけるセンサ構造100の支持部付近部分上面図である。
本発明におけるセンサ構造100は、枠部10、錘部12、第1絶縁層14、第2絶縁層18、支持部24、質量部26、梁部16、第1凹部30、第2凹部32により構成されている。
具体的には、図1(A)左図に示すように、錘部12と、錘部12を囲うように配置された枠部10と、枠部10上に第1絶縁層14を介して設けられた支持部24と、錘部12上に第2絶縁層18を介して設けられた質量部26と、支持部24と質量部26とを接続している梁部16と、支持部24の枠部10の上面と対向する面36、枠部10の支持部24の底面と対向する面38、及び第1絶縁層14の錘部12側の側面20、により区画された第1凹部30と、質量部26の錘部12の上面と対向する面40、錘部12の質量部26の底面と対向する面42、及び第2絶縁層18の枠部10側の側面22、により区画された第2凹部32と、により構成される。
本発明におけるセンサ構造100の錘部12に荷重が加わり、図1(A)右図のように梁部16が撓み、梁部16と支持部24との境界付近48、及び梁部16と質量部26との境界付近50、に応力が集中する。
【0016】
また、本発明におけるセンサ構造100は、図1(B)に示すように、支持部24、及び梁部16との境界付近48に応力が集中するが、第1絶縁層14の錘部12側の側面20が、支持部24の内周面58より外周面60側に位置しているため、支持部24の内周面58と第1絶縁層14の錘部12側の側面20とで区画された、支持部24の枠部10の上面と対向する面36により、応力が緩和され、耐衝撃性に優れた構造を有する
【0017】
本発明におけるセンサ構造100の第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。具体的には、枠部10の幅54が297μmである場合、第1凹部30の深さ34は、10μm以上であり、10μm以上15μm以下であることが好ましく、11.8μm以上15μm以下であることが特に好ましい。第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると、応力集中を緩和する作用を有する支持部24の枠部10の上面と対向する面36、及び質量部26の錘部12の上面と対向する面40の面積が小さく、十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する。また、第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の5.0%以上であると、耐衝撃性は維持するものの、センサ装置の温度特性(特に低温度側)が劣化し、また、第1絶縁層14の強度が劣化する。
また、本発明におけるセンサ構造100の第2凹部32の深さ35が、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。具体的には、枠部10の幅54が297μmである場合、第1凹部30の深さ34は、10μm以上であり、10μm以上15μm以下であることが好ましく、11.8μm以上15μm以下であることが特に好ましい。第2凹部32の深さ35が、枠部10の幅54の3.3%以下であると、耐衝撃性が劣化し、枠部10の幅54の5.0%以上であると、センサ装置の温度特性(特に低温度側)が劣化し、第2絶縁層18の強度が劣化する。
これらの中でも、特に好ましい態様としては、第1凹部30の深さ34、及び第2凹部32の深さ35が枠部10の幅54の3.3%以上5.0%以下であり、第1凹部30の深さ34、及び第2凹部32の深さ35が同一であることが挙げられる。この場合、加重の加わり方によらず、左右対称に応力を緩和することができ、耐衝撃性にすぐれた構造を有することになる。
【0018】
〔第2形態の構造〕
本発明におけるセンサ装置のより好ましい態様(第2形態)としては、図2に示すように、第1絶縁層14の錘部12側の側面20、又は第2絶縁層18の枠部10側の側面22に、梁部16に対応するような位置に第3凹部70を有する。
ここで、「梁部16に対応するような位置」とは、梁部16に応力が加わった際、最も応力が集中する箇所を表す。具体的には、梁部16の側面80、及び側面82を支持部24の外周面74の方向に引き出した場合に、側面20との接点76、及び接点78間を開口部とし、凹部の深さ84を梁部16の長手方向とするような凹部を有することを表す。
接点76、及び接点78間の距離は、梁部16に加わる応力を十分に緩和する観点から、梁部16の幅84以上であり、梁部16の幅88の2倍以下であることが好ましい。
凹部の深さ84については、支持部24と梁部16との境界面86から凹部70の底面までの深さが、前述した第1凹部30の深さ34と同様の範囲にあればとくに限定されることはない。
図2に記載の凹部70の形状は矩形であるが、とくにこれに限定されることはなく、例えば、三角形であってもよく、円弧であってもよい」

f 「【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本発明では、種々の用途のうち、加速度センサについて実施した。
図6は、本発明におけるセンサ構造を有する加速度センサ400の上面図である。図6に記載の加速度センサ400は、中央に、錘部上部に位置する質量部26、それを囲うように形成されている支持部24、支持部24と質量部26とに接続されている梁部16を有し、梁部16の端部付近には、ピエゾ抵抗素子203を備え、加速度センサ400の角部付近にはストッパー溝201が設けられている。
図7は、図5中の202領域のSIM写真である。支持部24と梁部16との境界付近に応力集中箇所204が存在する。
【0032】
(実施例1)
〔実施例1の加速度センサの製造〕
・・・・・
〔実施例1の加速度センサ〕
上記のようにして製造した加速度センサの部分断面図のSIM写真を図8に示す。枠部10、絶縁層14、及び支持部24により、第1凹部30が形成されている。実施例1で製造した加速度センサは、前述した第1形態のセンサ構造を有する。
【0033】
・・・・・
-破損加重-
従来のエアブラウン衝撃試験機を用いて衝撃加重を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
前述の製造工程のウエットエッチング時におけるレジストパターン110を矩形の凹部が形成されるような形状に変更した以外、実施例1と同様にして加速度センサを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2で製造した加速度センサは、前述した第2形態のセンサ構造を有する。
・・・・・
【0036】
(比較例)
従来技術と同様の製造方法、ずなわち実施例1の製造工程において、第1工程から第4
工程を行い、第5工程を行わない製造方法により、加速度センサを製造し、評価を行った
。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記のように、本発明の実施例は、比較例に対して、耐衝撃性に優れる結果が得られた。」

(2)当初明細書等に記載した事項
上記記載aないしf及び図面の記載から、当初明細書等には、センサ装置に関して次の事項が記載されていると認められる。

ア まず、当初明細書等の特許請求の範囲の記載(記載a)についてみると、センサ装置に係る発明が記載されている請求項は請求項1ないし4である。

(ア)請求項1
そこで、請求項1の記載をみると、センサ装置について、
「錘部と、前記錘部を囲うように配置された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁層を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁層を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁層の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、を有し」
とあるように、まずセンサ装置の基本構造が記載され、
この記載に続き、第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さについて、
「 前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であることを特徴とするセンサ装置。」と記載されている。
したがって、請求項1に係る発明は、センサ装置に係る発明であり、当該発明を特定するために必要な事項として、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という事項(以下、「第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項」ともいう。)が記載されている。

(イ)請求項2及び4
請求項2及び4は、いずれも、請求項1を引用して記載した請求項であるから、請求項2及び4に係る発明は、センサ装置に係る発明であり、請求項1に係る発明と同様に、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という事項によって発明が特定されている。

(ウ)請求項3
請求項3には、「前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。」と記載されている。
したがって、請求項3に係る発明は、センサ装置に係る発明であり、請求項1に係る発明と同様に、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という事項によって発明が特定され、それに加えて、「前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有すること」という事項(以下、「第3凹部に関する特定事項」ともいう。)によって発明が特定されている。

イ 次に、明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載(記載b?f)をみる。

(ア)【背景技術】、【発明が解決しようとする課題】の欄(記載b)において、図10に示す従来のセンサ装置は、支持部505の側面と絶縁層503の側面との間隔510が非常に狭く、急激な衝撃が加わる場合、支持部505と梁部507との境界部や、質量部506と梁部507との境界部に応力が集中し、衝撃により梁部507が破損しやすい問題があったこと、本発明は、当該問題点に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、良好な耐衝撃性を有し、小型化が可能なセンサ装置を提供することにあるということが記載されている。

(イ)続いて、【課題を解決する手段】の欄(記載c)において、「本発明者は鋭意検討した結果、下記のセンサ装置、及びその製造方法を用いることにより、上記問題を解決できることを見出し、上記目的を達成するに至った。」とした上で、「請求項1に記載のセンサ装置は、・・・・前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上である、ことを特徴とする」とあるように、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのセンサ装置が記載されるとともに、請求項1に記載のセンサ装置によると、「第1凹部の深さ、及び(当審注:「及び」は「又は」の誤記であると認められる。)第2凹部の深さが前記の範囲にあると、梁部は、支持部の枠部上面と対向する面、及び前記質量部の前記錘部上面と対向する面で支える構造を有し、応力を面で受けることになるため、耐衝撃性を向上させることができる」ということが記載されている。
ここで、「前記の範囲」とは、上記「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項が示す範囲であることは明らかである。
したがって、【課題を解決する手段】の欄には、課題を解決する手段として、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのセンサ装置、すなわち、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を要件として備えるセンサ装置が記載され、当該特定事項が示す範囲を満たすことにより、耐衝撃性を向上させることができるということが記載されている。

(ウ)同じく、【課題を解決する手段】の欄(記載c)において、「請求項3に記載のセンサ装置は、・・・・ことを特徴とする」とあるように、特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりのセンサ装置が記載されるとともに、当該請求項3に記載のセンサ装置によると、請求項1に記載の発明における効果に加え、前述した応力緩和作用を有する面の面積を、局所的に広くすることができるため、さらなる応力緩和作用を奏し、耐衝撃性を向上させることができるということが記載されている。
したがって、【課題を解決する手段】の欄には、課題を解決する手段として、特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりのセンサ装置、すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載されたセンサ装置において、さらに第3凹部に関する特定事項を要件として備えるセンサ装置が記載されており、そのために、請求項1に記載の発明における効果に加え、さらなる応力緩和作用を奏し、耐衝撃性を向上させることができるということが記載されている。

(エ)そして、【発明の効果】の欄(記載d)には、本発明によれば、良好な耐衝撃性を有し、小型化が可能なセンサ装置、及びその製造方法を提供することができるということが記載されている。

(オ)次に、【発明を実施するための最良の形態】の欄(記載e)において、「この発明の実施の形態につき説明する」と前置きした上で、センサ装置の第1形態の構造として、「本発明におけるセンサ構造100は、・・・・・及び第2絶縁層18の枠部10側の側面22、により区画された第2凹部32と、により構成される。」(段落【0015】)とあるように、特許請求の範囲の請求項1に記載されたセンサ装置と同一の基本構造を有することが記載され、第1凹部30の深さ、第2凹部32の深さについても、「本発明におけるセンサ構造100の第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり」(段落【0017】)、「本発明におけるセンサ構造100の第2凹部32の深さ35が、枠部10の幅54の3.3%以上であり」(段落【0017】)とあるように、第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項と同一の特定事項が記載されている。
そして、「本発明におけるセンサ構造100の第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。・・・・・第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると、応力集中を緩和する作用を有する支持部24の枠部10の上面と対向する面36、及び質量部26の錘部12の上面と対向する面40の面積が小さく、十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する。」(段落【0017】)、「本発明におけるセンサ構造100の第2凹部32の深さ35が、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。・・・・・第2凹部32の深さ35が、枠部10の幅54の3.3%以下であると、耐衝撃性が劣化し」(段落【0017】)との記載からみて、第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さが、枠部の幅の3.3%以上であることという特定事項は、センサ装置において耐衝撃性を良好なものとするために必要不可欠な要件であり、当該要件を満たさないものは耐衝撃性が劣化するということが記載されているといえる。
したがって、【発明を実施するための最良の形態】の欄には、特許請求の範囲の請求項1に記載されたセンサ装置に係る発明の実施の形態として第1形態が記載されており、当該第1形態は、第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項を要件として備えるものであり、当該要件はセンサ装置において耐衝撃性を良好なものとするために必要不可欠な要件であり、当該要件を満たさないものは耐衝撃性が劣化するということが記載されている。

(カ)同じく、【発明を実施するための最良の形態】の欄(記載e)には、センサ装置の第2形態の構造として、「本発明におけるセンサ装置のより好ましい態様(第2形態)としては、図2に示すように、第1絶縁層14の錘部12側の側面20、又は第2絶縁層18の枠部10側の側面22に、梁部16に対応するような位置に第3凹部70を有する。」(段落【0018】)とあるように、特許請求の範囲の請求項3に記載された第3凹部と同様の第3凹部を有するセンサ装置が記載されている。
そして、上記「本発明におけるセンサ装置のより好ましい態様(第2形態)」(下線は、強調のために当審において付した。)との記載、及び、図2が、「本発明のセンサ装置におけるセンサ構造(第2形態)の、支持部付近部分上面図である。」(【図面の簡単な説明】の欄)とあるように支持部付近のみを描いた部分図であることからみて、上記第2形態は、第1形態のセンサ構造において、さらに梁部16に対応するような位置に第3凹部70を設けたものであると認められる。
したがって、上記第2形態は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたセンサ装置に係る発明の実施の形態である第1形態において、さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載された第3凹部と同様の第3凹部を設けたものであるから、特許請求の範囲の請求項3に記載されたセンサ装置に係る発明の実施の形態である。
よって、【発明を実施するための最良の形態】の欄には、特許請求の範囲の請求項3に記載されたセンサ装置に係る発明の実施の形態として第2形態が記載されており、当該第2形態は、第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項及び第3凹部に関する特定事項を要件として備えるものである。

(キ)【実施例】の欄(記載f)には、「本発明では、種々の用途のうち、加速度センサについて実施した」、「実施例1で製造した加速度センサは、前述した第1形態のセンサ構造を有する。」とあるように、第1形態についての実施例1、すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載されたセンサ装置に係る発明の実施例である実施例1が記載されている。
さらに、「実施例2で製造した加速度センサは、前述した第2形態のセンサ構造を有する。」とあるように、第2形態についての実施例2、すなわち、特許請求の範囲の請求項3に記載されたセンサ装置に係る発明の実施例である実施例2が記載されている。

そして、表1(段落【0036】)には、実施例1、2及び従来技術の製造方法により製造した比較例のそれぞれについて、耐衝撃性に対する評価を行った結果が示されている。
当該表1には、各実施例及び比較例のそれぞれに対して、「枠部の幅に対する凹部の深さ(%)」、「破損加重」の2項目が示されており、このうち、「破損加重」は衝撃試験を行った結果を表す項目であるから、各実施例及び比較例のセンサ装置の構造を規定する項目は「枠部の幅に対する凹部の深さ(%)」のみである。
つまり、各実施例及び比較例において、「枠部の幅に対する凹部の深さ(%)」というセンサ装置の構造を規定する項目と、「破損加重」という衝撃試験を行った結果である耐衝撃性の程度を表す項目とを挙げて、それぞれ数値を示して対比させているのであるから、「枠部の幅に対する凹部の深さ(%)」が「破損加重」すなわち耐衝撃性の程度を決定づける重要なパラメータであることを示しているものといえる。

そこで、各項目に記載された具体的な数値をみると、
「枠部の幅に対する凹部の深さ(%)」について、実施例1は3.3%、実施例2は5.0%、比較例は1.6%である。
すなわち、実施例1、2は「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項を備えるのに対し、比較例は備えていない。
一方、「破損加重」については、実施例1が8000G、実施例2が9000Gであるのに対し、比較例は5000Gである。
そして、この表1の結果について、「本発明の実施例は、比較例に対して、耐衝撃性に優れる結果が得られた。」(段落【0038】)と記載されている。

以上の記載からみて、実施例1、2のセンサ装置は、それぞれ、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備えるものであり、そのことにより耐衝撃性に優れたものであるということが示されているといえる。
一方、従来技術の製造方法により製造した比較例は、上記特定事項を備えておらず、その結果、実施例1、2に比較して耐衝撃性に劣るということが示されているといえる。

ウ 以上のことからみて、
当初明細書等には、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載全体を通じて、本発明に係るセンサ装置は、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備えるものが首尾一貫して記載されており、良好な耐衝撃性を有するセンサ装置を提供するという本発明の目的を達成するためには当該特定事項を備えることが必要不可欠であり、そのことにより、耐衝撃性を向上させることができるという本発明の効果を奏するということが記載されている。

これに対して、当該特定事項を備えないセンサ装置は、耐衝撃性に劣るものであり、良好な耐衝撃性を有するセンサ装置を提供するという本発明の目的を達成し得ないものであり、耐衝撃性を向上させることができるという本発明の効果も奏し得ないものであるから、本発明に係るセンサ装置であるとはいえない。
また、本願の出願時の技術常識に照らしてみても、当該特定事項を備えないセンサ装置が実質的に開示されていたといえるような記載は当初明細書等には見当たらない。
したがって、当該特定事項を備えないセンサ装置は、本発明に係るセンサ装置として当初明細書等に記載されていたとはいえない。

なお、当初明細書等には、本発明に係るセンサ装置として、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備え、さらに、「前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有すること」という特定事項を備えるものも記載されている。

(3)補正2について
ア 補正2は、上記「2 補正2の内容」において示したように、特許請求の範囲の請求項1について、次のとおりに補正することを含むものである。

「【請求項1】
錘部と、
前記錘部を囲って形成された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁膜の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部と、
前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第3凹部と、
を有することを特徴とするセンサ装置。」

イ そこで、補正2による補正後の請求項1が、当初明細書等に記載された請求項のうちいずれの請求項に対応するのか、についてまず検討する。
補正2による補正後の請求項1は、発明を特定するために必要な事項として、「前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第3凹部」という特定事項を含むものである。
当該特定事項における「前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面」とは、「錘部と、前記錘部を囲って形成された枠部と、前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、前記支持部と前記質量部とを接続している梁部」という請求項1に記載したセンサ装置の構造からみて、支持部と質量部とを接続している梁部の接続方向上に位置する第1絶縁膜の錘部側の側面を意味している。
このような箇所に位置する第1絶縁膜の錘部側の側面に形成された第3凹部に相当するものは、当初明細書等の記載によると、請求項3に記載された第3凹部である。
このことは、補正2と同日付けで提出された平成21年7月27日付け意見書の「(2)補正の概要」の欄における出願人の「なお、補正前の第2凹部(実施形態では第3凹部に相当)を第3凹部とする補正も行いました。」との説明からも裏付けられる。(なお、下線は強調のために当審において付した。)
そして、当初明細書等に記載された請求項のうち、第3凹部に関する特定事項を備える請求項は請求項3のみである。
したがって、補正2による補正後の請求項1は、当初明細書等の請求項3に対応するものである。

ウ そこで、補正2による補正後の請求項1と、当初明細書等の請求項3とを対比すると、補正2による補正後の請求項1は、発明を特定するために必要な事項として、当初明細書等の請求項3に記載されていた「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項を備えないものとなっている。

エ しかしながら、上記「(2)」「ウ」において示したように、当初明細書等には、本発明に係るセンサ装置として、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備えるものが、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載全体を通じて首尾一貫して記載されていたのであり、当該特定事項を備えないセンサ装置は記載されてはいない。
そうすると、補正2による補正後の請求項1には、当該特定事項を備えないセンサ装置、すなわち、当初明細書等には記載されていないセンサ装置が記載されているのであるから、補正2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると言わざるを得ない。
したがって、補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって、補正2は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

オ そして、原審における補正の却下の決定の理由は、上記「1」において示したとおりであり、当審が「ア」ないし「エ」で説示した理由と同趣旨のものである。
したがって、原審における補正の却下の決定は妥当である。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成21年11月18日付け審判請求書において、原審における補正の却下の決定に対し、以下のような主張を行っている。

(i)原審において、当初明細書等には第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以上とすることしか記載されていなかったと認定した点について

確かに当初明細書等の段落0017に「第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると」「十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する」との記載がある。
しかしながら、これはあくまでも「第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である場合」には、同段落の好適例を指し示す記載である「第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以上であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下である場合」と比較して十分に応力を緩和することができない、という意味であって、当初明細書等の記載から直ちに、第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である場合には第1凹部を有していても一切耐衝撃性を向上させることができない、ということを記載したものではない。また、当初明細書等には、「第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である場合には第1凹部を有していても一切耐衝撃性を向上させることができない」との積極的な記載はしていない。
以上のことから、第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以上とすること「しか」記載されていなかったということはできない。

(ii)原審において、当初明細書等には第1凹部の深さをいくらでも構わないとする広い思想が記載されていたわけではないと認定した点について

第1凹部を有することで、センサ動作上、梁部が撓んだ際に梁部と支持部との境界付近に集中する応力を、第1凹部と支持部との接点だけでなく、支持部の、梁部の長手方向と垂直方向にも分散することができるという物理学上の特性から鑑みれば、本分野における出願当初の技術常識に照らして「第1凹部の深さをいくらでも構わないとする広い思想」が実質的に開示されていたものと解釈できることは明らかである。

そこで、請求人の上記主張(i)、(ii)について検討する。

主張(i)について
段落【0017】には、第1凹部30の深さ34に関して、次のように記載されている。

「本発明におけるセンサ構造100の第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。具体的には、枠部10の幅54が297μmである場合、第1凹部30の深さ34は、10μm以上であり、10μm以上15μm以下であることが好ましく、11.8μm以上15μm以下であることが特に好ましい。第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると、応力集中を緩和する作用を有する支持部24の枠部10の上面と対向する面36、及び質量部26の錘部12の上面と対向する面40の面積が小さく、十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する。また、第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の5.0%以上であると、耐衝撃性は維持するものの、センサ装置の温度特性(特に低温度側)が劣化し、また、第1絶縁層14の強度が劣化する。」

上記記載をみると、「第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり」とした上で、「3.3%以上5.0%以下であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下であることが特に好ましい。」とし、ここで句点により文章を切った上で、「第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると、応力集中を緩和する作用を有する支持部24の枠部10の上面と対向する面36、及び質量部26の錘部12の上面と対向する面40の面積が小さく、十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する。」と記載しているのであるから、このような記載の流れを踏まえれば、まず、第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であることが前提であって、その上で、3.3%以上5.0%以下、特に、4.0%以上5.0%以下であることが好ましく、逆に、上記前提に反する3.3%以下の場合には、耐衝撃性が劣化するということが記載されていると解することが上記記載の自然な解釈である。
したがって、上記記載が、請求人の主張するごとく、『「第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である場合」には、好適例を指し示す記載である「第1凹部30の深さ34は、枠部10の幅54の3.3%以上であり、3.3%以上5.0%以上であることが好ましく、4.0%以上5.0%以下である場合」と比較して十分に応力を緩和することができない』という意味であると解することは、上記自然な解釈に反することであり、到底是認できることではない。

また、上記記載において、「第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であると、応力集中を緩和する作用を有する支持部24の枠部10の上面と対向する面36、及び質量部26の錘部12の上面と対向する面40の面積が小さく、十分に応力を緩和することができず、耐衝撃性が劣化する。」と明記されているのであるから、第1凹部30の深さ34が枠部10の幅54の3.3%以下であるようなセンサ装置は、良好な耐衝撃性を有するセンサ装置を提供するという本発明の目的を達成し得ず、耐衝撃性を向上させることができるという本発明の効果も奏し得ないものである。
したがって、たとえ、「第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である場合には第1凹部を有していても一切耐衝撃性を向上させることができない」との積極的な記載がなくとも、このように「第1凹部の深さが枠部の幅の3.3%以下である」センサ装置が本発明に係るセンサ装置から除外されていることは明らかである。

よって、請求人の上記主張(i)を採用することはできない。

主張(ii)について
当初明細書等に記載されたセンサ装置の構造に考察を重ねることにより、第1凹部を有することで、センサ動作上、梁部が撓んだ際に梁部と支持部との境界付近に集中する応力を、第1凹部と支持部との接点だけでなく、支持部の、梁部の長手方向と垂直方向にも分散することができるという物理学上の特性が認められることがあり得るとしても、そのような物理学上の特性自体が、そもそも当初明細書等には何ら記載されていないのであり、まして、当該物理学上の特性を根拠として、第1凹部の深さをいくらでも構わないとする広い思想までもが当初明細書等に実質的に記載されていたとすることはできない。

むしろ、第1凹部の深さを枠部の幅の3.3%以上とすることは、当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1ないし5において、すなわち、すべての請求項において、各請求項ごとに特許出願人が発明を特定するために必要と認める事項として明記していたのであり、しかも、発明の詳細な説明及び図面においても、首尾一貫して、そのような特定事項を要件として備えたセンサ装置が記載されていたのであるから、第1凹部の深さをいくらでも構わないとする広い思想が当初明細書等に実質的に記載されていたと認めることはできない。

また、以下にその理由を示すように、当初明細書等において従来のセンサとして記載されていたものとの関連からみても、本発明に係るセンサにおいて、第1凹部の深さをいくらにしても構わないとする広い思想が当初明細書等に実質的に記載されていたとすることはできない。
すなわち、当初明細書等の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の欄(段落【0004】)には、図10に示された従来のセンサについて次のように記載されている。

「最終的に製造されたものについて、偶発的に支持部505、及び質量部506の底面端部がわずかにエッチングされている。このわずかにエッチングされた部分である、支持部505の側面と絶縁層503の側面との間隔510が非常に狭く、梁部507を絶縁層503の上面端部の辺、及び絶縁層504の上面端部の辺で支えているのと同様であり、急激な衝撃が加わる場合、支持部505と梁部507との境界部や、質量部506と梁部507との境界部に応力が集中し、衝撃により梁部507が破損すやすい問題があった。」

上記記載における「このわずかにエッチングされた部分である、支持部505の側面と絶縁層503の側面との間隔510」とは、図10の記載等からみて、本発明に係るセンサ装置の第1凹部の深さに相当するものであるから、上記記載は、従来のセンサにおいても、偶発的にわずかにエッチングされた部分ではあるものの、第1凹部に相当するものがあったということを示している。
そして、この第1凹部の深さに相当する間隔510については、上記のように「間隔510が非常に狭く、梁部507を絶縁層503の上面端部の辺、及び絶縁層504の上面端部の辺で支えているのと同様であり、急激な衝撃が加わる場合、支持部505と梁部507との境界部や、質量部506と梁部507との境界部に応力が集中し、衝撃により梁部507が破損すやすい問題があった。」として、間隔510が非常に狭いことにより衝撃による破損が生じやすいという問題点が指摘されている。
このような従来のセンサの問題点を踏まえた上で、【課題を解決する手段】の欄(段落【0008】)において、「請求項1に記載のセンサ装置は、・・・・・前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上である、ことを特徴とする。」とし、「第1凹部の深さ、及び第2凹部の深さが前記の範囲にあると、梁部は、支持部の枠部上面と対向する面、及び前記質量部の前記錘部上面と対向する面で支える構造を有し、応力を面で受けることになるため、耐衝撃性を向上させることができる。」と記載されている。

このような記載の流れからみて、第1凹部の深さについては、従来のセンサのように、偶発的にわずかにエッチングされて形成される程度では不十分であり、枠部の幅の3.3%以上であることが耐衝撃性を向上させるために必要であるということが記載されているものと認められる。
したがって、本発明に係るセンサにおいて、第1凹部の深さをいくらにしても構わないとする広い思想が当初明細書等に実質的に記載されていたとすることはできない。

以上のとおりであるから、請求人の主張(ii)を採用することはできない。

(5)小括
以上のとおり、原審における補正の却下の決定は妥当である。

第3 拒絶査定時の明細書、特許請求の範囲又は図面
上記「第2」のとおり、補正2を却下した原審の補正の却下の決定は維持すべきものであるから、最後の拒絶理由通知に係る特許法第50条の規定により指定された期間内には、補正2と同日付けの意見書のみが提出されたことになり、拒絶査定時の明細書、特許請求の範囲又は図面は、平成21年4月20付けの手続補正(補正1)により補正された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本願明細書等」という。)となる。

第4 原査定の理由
原査定の理由である最後の拒絶理由通知により通知された拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

平成21年4月20日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


・・・・・
補正後の本願請求項1発明は、質量部側に第2凹部を有するか否かを問わず、さらに、凹部の深さはいくらでも構わないものとなった。
・・・・・
そこで、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面をみると、
・・・・・
と記載されていた。
そうすると、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書には、第3凹部(補正後の第2凹部)については、第1凹部、第2凹部を有し、その深さを、枠部の幅の3.3%以上とすることを前提として、さらに、第3の凹部としてさらに深い部分を設けたことによって、さらなる応力の緩和作用が発生するものとして記載されていたということができる。

一方、補正後の本願請求項1は、質量部側に第2凹部を有さないものを明らかに含み、さらに、凹部の深さはいくらでも構わないものであるものの、第3凹部(補正後の第2凹部)について、第2凹部や凹部の深さとは無関係にそれを設ける思想が、もともと記載されていたということはできない。
また、願書に最初に添付した特許請求の範囲には、第3凹部は出願当初より、第1凹部、第2凹部を有し、その深さを、枠部の幅の3.3%以上とする請求項1を引用する形式で記載されていたのであって、第3凹部(補正後の第2凹部)について、第2の凹部や凹部の深さとは無関係にそれを設ける広い思想が、もともと記載されていたということもできない。
してみれば、上記手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものということができない。

第5 補正1の内容
補正1は、特許請求の範囲の請求項1について次のとおりに補正することを含むものである。

「【請求項1】
錘部と、
前記錘部を囲って形成された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第2凹部と、
を有することを特徴とするセンサ装置。」

第6 当審の判断
1 当初明細書等の記載
当初明細書等には、上記「第2」「3」「(1)当初明細書等の記載」に示したとおりの記載aないしfが図面とともに記載されている。

2 当初明細書等に記載した事項
上記記載aないしf及び図面の記載から、当初明細書等には、センサ装置に関して、上記「第2」「3」「(2)当初明細書等に記載した事項」の「ア」、「イ」に示したとおりの事項が記載されるとともに、これら「ア」、「イ」を踏まえると、同「ウ」に示したとおりの事項が記載されていると認められる。
以下に、上記「ウ」を再掲する。

ウ 以上のことからみて、
当初明細書等には、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載全体を通じて、本発明に係るセンサ装置は、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備えるものが首尾一貫して記載されており、良好な耐衝撃性を有するセンサ装置を提供するという本発明の目的を達成するためには当該特定事項を備えることが必要不可欠であり、そのことにより、耐衝撃性を向上させることができるという本発明の効果を奏するということが記載されている。

これに対して、当該特定事項を備えないセンサ装置は、耐衝撃性に劣るものであり、良好な耐衝撃性を有するセンサ装置を提供するという本発明の目的を達成し得ないものであり、耐衝撃性を向上させることができるという本発明の効果も奏し得ないものであるから、本発明に係るセンサ装置であるとはいえない。
また、本願の出願時の技術常識に照らしてみても、当該特定事項を備えないセンサ装置が実質的に開示されていたといえるような記載は当初明細書等には見当たらない。
したがって、当該特定事項を備えないセンサ装置は、本発明に係るセンサ装置として当初明細書等に記載されていたとはいえない。

なお、当初明細書等には、本発明に係るセンサ装置として、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という特定事項を備え、さらに、「前記第1絶縁層の前記錘部側の側面、又は前記第2絶縁層の前記枠部側の側面に、前記梁部に対応するような位置に第3凹部を有すること」という特定事項を備えるものも記載されている。

3 補正1について
(1)補正1は、上記「第5」において示したように、特許請求の範囲の請求項1について、次のとおりに補正することを含むものである。

「【請求項1】
錘部と、
前記錘部を囲って形成された枠部と、
前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、
前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、
前記支持部と前記質量部とを接続している梁部と、
前記支持部の前記枠部上面と対向する面、前記枠部の前記支持部底面と対向する面、及び前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面、により区画された第1凹部と、
前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第2凹部と、
を有することを特徴とするセンサ装置。」

(2)そこで、補正1による補正後の請求項1が、当初明細書等に記載された請求項のうちいずれの請求項に対応するのか、についてまず検討する。
補正1による補正後の請求項1は、発明を特定するために必要な事項として、「前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面に形成された第2凹部」という特定事項を含むものである。
当該特定事項における「前記梁部の前記支持部と前記質量部との接続方向上に位置する前記第1絶縁膜の前記錘部側の側面」とは、「錘部と、前記錘部を囲って形成された枠部と、前記枠部上に第1絶縁膜を介して設けられた支持部と、前記錘部上に第2絶縁膜を介して設けられた質量部と、前記支持部と前記質量部とを接続している梁部」というセンサ装置の構造からみて、支持部と質量部とを接続している梁部の接続方向上に位置する第1絶縁膜の錘部側の側面を意味している。
このような箇所に位置する第1絶縁膜の錘部側の側面に形成された第2凹部に相当するものは、当初明細書等の記載によると、請求項3に記載された第3凹部である。
このことは、補正1と同日付けで提出された平成21年4月20日付け意見書の「(2)補正の概要」の欄における出願人の「上記請求項1に係る発明の補正は、第2凹部が「梁部の支持部と質量部との接続方向に位置する第1絶縁膜の錘部側の側面に形成されたもの」であることを特定した補正であります。本補正は、本願段落0018の記載、及び図2の開示から、枠部と支持部との間に介在した第1絶縁膜の錘部側の側面に、第1凹部が形成されていると共に第2凹部(実施形態では第3凹部に相当します)が設けられていることを根拠としております。」との説明からも裏付けられる。(なお、下線は強調のために当審において付した。)
そして、当初明細書等に記載された請求項のうち、第3凹部に関する特定事項を備える請求項は請求項3のみである。
したがって、補正1による補正後の請求項1は、当初明細書等の請求項3に対応するものである。

(3)そこで、補正1による補正後の請求項1と、当初明細書等の請求項3とを対比すると、補正1による補正後の請求項1は、発明を特定するために必要な事項として、当初明細書等の請求項3に記載されていた「前記質量部の前記錘部上面と対向する面、前記錘部の前記質量部底面と対向する面、及び前記第2絶縁層の前記枠部側の側面、により区画された第2凹部」という特定事項(以下、「第2凹部に関する特定事項」という。)を備えておらず、さらに、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項も備えていない。

(4)この2つの特定事項を備えないセンサ装置が、当初明細書等に記載されていたか否かを検討する。
まず、第2凹部に関する特定事項に関して、当初明細書等の記載をみると、当初明細書等には、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載全体を通じて、本発明に係るセンサ装置として、第2凹部に関する特定事項を備えるものが首尾一貫して記載されており、当該特定事項を備えないセンサ装置が記載されていないことは明らかである。
次に、第1凹部の深さ、又は第2凹部の深さに関する特定事項に関して、当初明細書等の記載をみると、上記「2」において「第2」「3」「(2)当初明細書等に記載した事項」の「ウ」を再掲して示したように、当初明細書等には、本発明に係るセンサ装置として、「前記第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さが、前記枠部の幅の3.3%以上であること」という第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さに関する特定事項を備えたものが、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載全体を通じて首尾一貫して記載されていたのであり、当該特定事項を備えないセンサ装置は記載されてはいない。
そうすると、補正1による補正後の請求項1には、第2凹部に関する特定事項を備えておらず、さらに、第1凹部の深さ、又は前記第2凹部の深さに関する特定事項も備えていないセンサ装置、すなわち、当初明細書等には記載されていないセンサ装置が記載されているのであるから、補正1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると言わざるを得ない。
したがって、補正1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって、補正1は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(5)一方、原査定の理由は、上記「第4」において示したとおりであり、当審が(1)ないし(4)で説示した理由と同趣旨のものである。
したがって、原査定の理由は妥当である。

第7 むすび
以上のとおり、本願は、補正1が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。また、原査定の理由も妥当である
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-11 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2007-59275(P2007-59275)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01P)
P 1 8・ 55- Z (G01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 下中 義之
特許庁審判官 江塚 政弘
越川 康弘
発明の名称 センサ装置  
代理人 中島 淳  
代理人 中島 淳  

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