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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1244362
審判番号 無効2009-800143  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-07-01 
確定日 2011-10-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4058084号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許の経緯概要は以下のとおりである。

平成 5年 5月28日 親特許出願(特願平5-127525号)
平成12年 5月29日 第1分割出願(特願2000-159107号)
平成12年 6月28日 第2分割出願(特願2000-194080号)
平成12年 7月28日 第3分割出願(特願2000-229524号)
平成12年 8月28日 第4分割出願(特願2000-258231号)
平成17年 3月 7日 第5分割出願(特願2005-062751号)
平成17年 4月 5日 第6分割出願(特願2005-109068号)
平成18年 9月15日 本件分割特許出願(特願2006-251280号)
同 上 審査請求
平成19年11月29日 特許査定
平成19年12月21日 設定登録(特許第4058084号)
平成21年 7月 1日 無効審判請求
平成21年10月 9日 答弁書(被請求人)
平成21年11月24日 弁駁書(請求人)
平成22年 4月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同 上 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 上 口頭審理
平成22年 5月12日 上申書(被請求人)
平成22年 5月24日 審判上申書(請求人)

請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。

1.請求人の主張

請求人は,平成21年7月1日付けの審判請求書において,「特許第4058084号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」(審判請求の趣旨)とし,そして,以下の理由により,特許第4058084号に基づく請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)は,特許を受けることができないものであるから,特許法123条1項2号の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?17号証を提出した。

【無効理由1】
本件特許発明は,甲第1号証乃至甲第15号証に記載された発明,あるいは周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により無効とされるべきものである。

甲第 1号証:特開平2-232084号公報
甲第 2号証:特開平4-327877号公報
甲第 3号証:特開昭63-5778号公報
甲第 4号証:パチンコファン 株式会社日本文芸社 平成3年2月15日発行
甲第 5号証:パチンコファン 株式会社日本文芸社 平成4年5月15日発行
甲第 6号証:パチスロ攻略マガジン 株式会社双葉社 1993年5月22日発行
甲第 7号証:特開平1-198584号公報
甲第 8号証:実公平5-7008号公報
甲第 9号証:特開昭62-127086号公報
甲第10号証:パチスロ大図鑑 株式会社白夜書房 2007年5月21日発行
甲第11号証:特開平4-73077号公報
甲第12号証:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房 1993年4月1日発行
甲第13号証:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房 1993年6月1日発行
甲第14号証:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房 1993年7月1日発行
甲第15号証:パチスロ完全攻略事典 週刊漫画ゴラク 1993年5月21日,国立国会図書館受け入れ

【無効理由2】
本件特許発明は,同一出願人によって同日に出願された特許第4060340号と同一の発明であるので,特許法39条2項に該当し,無効とされるべきものである。

そして,請求人は平成21年11月24日付け弁駁書において,被請求人の平成21年10月9日付け答弁書における主張によっても無効理由1は解消しておらず,また,被請求人による平成21年10月9日付け特許第4060340号に係る訂正請求は認めるものの,審判請求書で申し立てた無効理由2は解消していない旨主張している。
更に,平成22年5月24日付け審判上申書において,甲第18号証乃至甲第21号証を提出して,本件特許発明と特許第4060340号に係る発明との相違点は周知技術にすぎないから,両者は同一であると主張している。
なお,請求人は,特許第4060340号に係る平成22年5月24日付け審判上申書においては,上記訂正が適法であるとの平成21年11月24日付け弁駁書における主張を撤回し,該訂正は訂正要件違反であり認められない旨の主張を行っている。

甲第18号証:特開平3-73180号公報
甲第19号証:特開平3-75078号公報
甲第20号証:特開平3-195579号公報
甲第21号証:特開平5-3943号公報

2.被請求人の主張

被請求人は,平成21年10月9日付けで答弁書を提出し,「本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め」(答弁の趣旨),本件特許発明は,甲第1号証乃至甲第15号証に記載された発明,あるいは周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない旨,ならびに,本件特許発明は,同一出願人によって同日に出願された特許第4060340号に係る発明(訂正後)と同一の発明ではない旨,主張している。

第2.本件特許発明

本件特許発明は,本件明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み,該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって,
前記複数の可変表示部は,賭数の入力によって有効な当りラインが設定される,左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り,
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに,ビッグボーナスに移行させ,通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに,前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ,通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに,前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と,
前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役別に,当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段と,
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と,
前記可変表示部を停止操作するための停止操作手段と,
該停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を,前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを含み,
前記遊技制御手段は,前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに,前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し,当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し,
前記判定手段は,既に前記ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには,前記ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定せず,また,前記通常ゲームにおいては前記再ゲーム役が当選しているか否かを判定し,前記ビッグボーナス中においては前記再ゲーム役が当選しているか否かを判定せず,
前記複数の可変表示部の識別情報の配列は,前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており,
前記可変表示制御手段は,
再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ,前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ,
前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる制御を行なうことを特徴とする,スロットマシン。」

第3.本件特許発明にかかる検討

1.無効理由1について(特許法29条2項)

請求人は,本件特許発明は,甲第1号証に記載された発明に甲第2号証乃至甲第15号証に記載された発明,あるいは周知技術を組み合わせることで,当業者が容易に成し得たものであり,特許法29条2項により無効とされるべきものである,と主張するので,検討する。
ここで,甲号各証の記載事項を認定するにあたり,まず甲第10号証について検討する。
請求人は,平成22年5月24日付け審判上申書において,
「甲第10号証は,甲第12号証におけるチェリーバー,甲第13?15号証におけるベガスガール,甲第5号証におけるバニーXO,甲第4号証におけるリバティベルIIIが,本件出願前に存在していたことを証明するものである。
よって,弁駁書第4?6頁における甲第10号証が公然実施を証明する証拠であるとの主張は撤回するが,甲第10号証自体は撤回しない。」と,主張している。
また,審判請求書において,請求人は,甲第10号証には本件特許発明に係るスロットマシンの技術分野の周知技術が記載されている,もしくは,甲第10号証の記載から当業者であればスロットマシンの技術分野の技術常識がうかがえる旨主張している。
しかしながら,甲第10号証は2007年5月21日に発行されたものであるから,そもそも本件特許発明に対する公知文献ではなく,上記の各遊技機が本件出願前に存在していたことは,公知文献である甲第12号証,甲第13?15号証,甲第5号証,甲第4号証の記載から明らかであって,甲第10号証の存在を必要とせずとも,請求人のいう周知技術ならびに技術常識は,当業者であれば理解できるものであるから,無効理由1を検討するにあたって,甲第10号証は採用しないこととする。

(1)甲第1号証の記載事項
・「本発明を用いたスロットマシンを示す第1図において,本体10の前面には,保守,点検時に開かれるドアパネル20がヒンジ12により開閉自在に取り付けられている。ドアパネル20には3個の窓21が設けられており,この窓2lを通して本体10内で回転される3個のリールを各々観察することができる。符号23は,ゲームの開始に先立ち遊技者がメダルを投入するためのメダル投入口である。遊技者が1?3個のメダルを投入してスタートレバー26を操作すると,本体10内で3個のリールが一斉に回転し,一定時間が経過してストップ操作が有効化されると,ストップランプ27が点灯してストップボタン25の操作が有効化されたことを表示する。」(3頁左上欄7-20行)

・「ストップランプ27の点灯後,リールごとに設けられたストップボタン25を押すと,対応するリールが停止される。そして,全てのリールを停止させた結果,窓21から観察されるシンボルマークの組み合わせが入賞に該当しているときには,その入賞に応じて予め決められたメダルの配当枚数が表示部22にデジタル表示され,その枚数のメダルがメダル払出し口30から受皿31に排出される。」(3頁右上欄1-9行)

・「リールを観察するための窓2lの部分を詳細に示した第2図において,各窓21A?21Cからは,各リールのシンボルマークSが各々3個ずつ観察されるようになっている。これらの窓21A?2ICの周囲には,5本の入賞判定ライン1,2A,2B,3A,3Bが設けられている。そして,ゲーム開始に先立って投入されるメダルが1枚のときには入賞判定ライン1だけが有効化され,2枚の場合にはさらに入賞判定ライン2A,2Bが追加され,また3枚のときには入賞判定ライン3A,3Bも追加される。なお,符号Lはランプを示し,どの入賞判定ラインが有効化されているかを表示する。」(3頁右上欄10-左下欄2行)

・「第4図は入賞判定ライン決定後の基本的なゲーム処理の流れを表したフローチャートである。スタートレバー26の操作により3個のリールが回転され,所定時間が経過した後に後述するヒットリクエストの設定処理を待ってストップランプ27が点灯される。同図における判断プロセスP1,P2,P3は,回転中の3個のリールについてストップボタン25が押されたか否かを判断する処理を示す。なお,ストップポタン25の操作順は任意で,判断プロセスP4によって全てのリールが停止したことが確認されると,第5図に示した入賞判定処理。配当メダルの払出し処理が行われる。」(3頁左下欄11-右下欄3行)

・「入賞判定に際してリールのシンボルマークを電気信号として検出するには,リールに各シンボルマークごとの信号部を設けて,この信号部をフォトセンサで読み取ったり,あるいはパルスモータでリールを駆動するものでは,リールが一回転するごとにリセットパルスが得られるようにリールの1個所に信号部を設けておき,リセットパルスが得られた後,パルスモータが停止するまでに供給された駆動パルスの個数によって判別することができる。また入賞判定は,各リールのシンボルマークを前述のような電気的なコード信号として検出し,これらのシンボルマークの組み合わせを後述のROMと照合する。そして,入賞している場合にはリクエスト減算処理を行ったうえで,ホッパーモータを駆動して配当メダルの払出し処理を行う。配当メダルは,例えばその払出し経路内に設けられたメダルカウンタで計数され,その計数値が予定枚数に達したときに払出しが終了して1ゲームが完了する。」(3頁右下欄4-4頁左上欄2行)

・「破線部Bはリール駆動監視ブロックを示している。このスロットマシンは各リールRl,R2,R3は各々パルスモータMl,M2,M3によって駆動される。モータ駆動部60は,パルスモータMl,M2,M3に駆動パルスを供給する。各リールR1?R3の所定位置にはリセット信号部があり,1回転ごとにその通過が光電検出され,各リールごとのリセットパルスが位置検出入力ボート61からメインCPU50に入力される。したがって,リセットパルスが得られた後,パルスモー夕が停止するまでの間に何個の駆動パルスが供給されたかによって各リールのシンボルマークを特定することができる。」(4頁右上欄11-左下欄3行)

・「第9図は発生,更新される乱数値のサンプリング及びヒットリクエストチェックの処理を表したフローチャートである。このフローチャートは,第4図に示したフローチャートにおける「ヒットリクエスト」処理に該当するもので,ゲーム開始後,例えばスタートレバー操作後の所定のタイミング信号(この発生時点で各リールが定常回転に達しているのが望ましい)により,その時点で乱数値RAM80に設定された乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は,第9図のフローチャートに従い,後述する入賞確率テーブルと照合され,大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生,中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように,小ヒットまでの判断処理がなされ,いずれのヒットリクエスト信号が発生されたか,あるいはヒットリクエストなしかがチェックされる。なお,「入賞テーブル選択」の処理は,ゲーム開始に先立って投入されるメダルが何枚であるかによって入賞判定ラインの本数が変化するので,これに対応した入賞テーブルが選択されることを意味している。」(5頁左上欄14-右上欄15行)

・「第10図は入賞確率テーブルの概念図である。テーブル中のBl?B3,M1?M3,S1?S3は,それぞれ事前に設定された数値で,第8図に示したような2バイトのメモリ領域,但しROM上に格納されている。そして,投入メダルの枚数によっていずれかのラインが選択される(第9図のフローチャートにおける「入賞テーブル選沢」に対応)。なお,前記数値は通常ではB<M<Sに設定され,例えば第7図に示した処理により発生される乱数が「0?N」であると,投入メダル数「1」の場合の大ヒットの確率は「B1/N」,中ヒットの確率は「M1/N」,小ヒットの確率は「S1/N」となる。したがって,B1,M1,S1それぞれの値が「B1=100」,「M1=500」,「S1=1000」であるときには,サンプリングされた乱数値が100未満であれば大ヒット,100以上600未満であれば中ヒット,600以上1600未満であれば小ヒットの各リクエストが発生され,1600以上ではヒットリクエストなしとなる。これにより,入賞確率テーブルは各ランクの入賞発生の確率を決定する機能を有する。こうして乱数値がサンプリングされ,前述の入賞確率テーブルと照合されてその値が入賞に該当するものであるとヒットリクエストが得られるが,ペイアウト率を一定に保つために,リクエストカウンタが利用される。すなわち,前述したヒットリクエストが発生すると,各ヒットリクエストをカウントするリクエストカウンタが「+1」され,RAM上にストアされる。そして,ヒットした際にそのリクエストカウンタは「-1」の減算処理が行われる。また,ヒットしない場合にはそのまま保存され,最終的にリクエストカウンタが「0」になるまでヒットリクエストが発生し,このためペイアウト率は一定に保たれる。これは,第11図に示したフローチャートにより処理される。」(5頁右上欄16-右下欄11行)

・「これまでに述べてきた大,中,小の各ヒットの例としては,大ヒットが15枚のメダル配当の後,ボーナスゲームができるようになるもの,中ヒットが10?15枚の配当メダル払出し,小ヒットが2?5枚程度の配当メダルの払出し等のようにする。ボーナスゲームとしては,例えばメダル1枚の投入ごとに1個のリールのみでゲームを実行し,その1個のリールについて,ある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚の配当メダルが払い出され,このような手順で数回のゲームができるようにすることがある。」(5頁右下欄12-6頁左上欄2行)

・「まず,ストップボタンの操作後,シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにする。そして,ストップボタンが押された時点でのリールの位置から,これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチェックする。このようにシンボルマークをチェックし,すでにセットアップされているヒットリクエストを満足するシンボルマークの組み合わせを得るために必要なシンボルマークがその範囲内にあれば,そこでリールを停止させる。なお,このような処理は各リールについて行われるのはもちろんである。」(6頁左下欄11-右下2行)

・「第12図は前述したコードナンバー及びシンボルコードのテーブル例を概念的に示しており,また第13図はリール停止処理を示している。第12図におけるシンボルマークそのものは,実際には簡略化されたデザイン図形で,このような図形の種類ごとにシンボルナンバーを対応させている。また,各リールの「0?20」のコードナンバー1?8のシンボルナンバーは実際には2進数としてROMに格納されており,コードナンバーに対しては5ビット,シンボルナンバーに対しては3ビット用意すればよい。」(6頁右下欄3-13行)

・「第15図はこうした入賞シンボルテーブルの一例を概念的に示している。なお,投入されたメダルの枚数が1枚であれば,入賞判定ライン1だけの照合で済むのはもちろんである。メダルが3枚投入されたとし,入賞判定ライン3B上でのシンボルコードの組み合わせ「5(E)-5(E)-5(E)」が,10枚の配当メダルが得られる中ヒットであると,図示のようにこれがRAM4にセットされる。なお,RAM4中のエリア4aには,ボーナスゲームが発生したか否かを表すフラグがセットされ,エリア4bには配当メダル枚数がセットされる。さらにRAM5には,大ヒットエリア5a,中ヒットエリア5b,小ヒットエリア5c,ヒットなしのエリア5dが用意されており,ヒットリクエストに応じてこれらのいずれかのエリアにフラグがセットされる。」(7頁右上欄16-左下欄11行)

・「まず大ヒットリクエストが発生されている場合には,第16図のフローチャートにしたがい,ストップボタンが操作された時点でのRAM1のエリアR1のデータ(第14図)に基づき,シンボルマーク4コマ分の範囲でシンボルマークのチェックが行われる。この範囲に大ヒットを構成するシンボルマークがあるときには,それが窓に現れるようにモータに供給する駆動パルスの数を決める。なお,このフローチャートにおいて「3シンボル中」。「窓位置シンボルナンバー」の意味は,窓に現れる3個のシンボルマーク。シンボルナンバーのことで,これは投入メダル枚数が3枚で,入賞判定ラインの全てが有効化されていることに対応する。また,窓位置にある3個のシンボルナンバーは,第14図のRAM1のR1エリア,すなわち入賞判定ライン1上のシンボルナンバーから求められることになる。」(7頁左下欄16-右下欄12行)

・「以上,第1リールから順にストップされる例をもとにリールの停止処理について述べてきたが,その他の場合でも若干の処理手順の変更で同様に対処することができる。また,リールの処理は4コマずれを想定して説明してきたが,このためヒットリクエストに対応したシンボルが4コマずれの範囲内に存在しないこともあり得る。(特に大ヒットシンボルは少ないため,充分あり得る=)このような場合にはヒットリクエストを満足しない結果となってしまい,設定された入賞確率が低下することになり,特に大ヒットでその影響が大きくなる。これを適正化するために,ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には,そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越され,再びこのヒットリクエストを用いてリールの停止制御が実行されるから,ペイアウト率が変わることはない。なお,4コマずれをさらに増やして例えば10コマずれまでのチェック,停止制御ができるようにすれば,ヒットリクエストの達成確率が向上されることは言うまでもない。さらに,特に第3リールのシンボル配列について,4コマずれの範囲内に必ずヒットなしのシンボルを配しておけばペイアウト率は入賞確率テーブルの値に従い,安定したものとなる。」(9頁左下欄20-10頁左上欄3行)

(2)甲1発明について
甲第1号証の上記記載事項を参酌すれば,甲第1号証には以下の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「遊技者が1?3個のメダルを投入して,スタートレバー26を操作すると本体10内で3個のリールが一斉に回転し,リールごとに設けられたストップボタン25を押すと,対応するリールが停止されるスロットマシンであって,
全てのリールを停止させた結果,窓21から観察されるシンボルマークSの組み合わせには,15枚のメダル配当後にボーナスゲームができる大ヒットと,2?5枚のメダル配当が行われる小ヒットとを少なくとも含み,
前記3個のリールは,投入されたメダルの枚数によって有効化される入賞判定ライン1,2A,2B,3A,3Bが設定され,
1ゲーム終了時の前記3個のリールの前記入賞判定ライン上の停止結果が前記大ヒットの表示態様となったときに,メダル配当後にボーナスに移行させ,1ゲーム終了時の前記3個のリールの前記入賞判定ライン上の停止結果が小ヒットの表示態様となったときに,小役入賞を発生させ,
前記大ヒットと前記小ヒットとを含む複数種類のヒット別に,入賞しているか否かを前記複数種類のヒット別に予め定めた入賞発生の確率を決定する入賞確率テーブルを有し,スタートレバー操作後の所定のタイミング信号により,その時点で乱数値RAM80に設定された乱数値をそのゲームの乱数値として決定し,該決定された乱数値は前記入賞確率テーブルと照合され,前記決定された乱数値が入賞に該当するものであると,入賞の種類に応じたヒットリクエストが発生し,
ヒットリクエストが発生すると,種類別にヒットリクエストをカウントするリクエストカウンタが「+1」され,RAM上にストアされ,
前記ストップボタン25が押されると,前記ストップボタン25が操作された時点での前記入賞判定ライン1上のシンボルナンバーに基づき,シンボルマーク4コマ分の範囲でシンボルマークのチェックを行い,この範囲内にヒットを構成するシンボルマークがあるときには,それが窓に現れるようにモータに供給する駆動パルスの数を決めてリールを停止させる制御を各リールごとに行い,
ヒットリクエストが発生されたにもかかわらず入賞なしとなった場合には,そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越され,再びこのヒットリクエストを用いてリールの停止制御が実行されるスロットマシン。」

(3)対比
甲1発明について,以下のことがいえる。
ア.甲1発明の「メダル」は,本件特許発明の「有価価値」に相当する。
イ.甲1発明の「遊技者が投入したメダルの枚数」は,本件特許発明の「賭数」に相当する。
ウ.甲1発明の「大ヒット」はメダル配当後にボーナスゲームを行うことが可能となる入賞態様であるから,本件特許発明の「ビッグボーナス」に相当する。
エ.甲1発明の「小ヒット」は,本件特許発明の「小役」に相当し,さらに甲1発明の「小ヒット」は,明記はないものの,スロットマシンの技術常識を考慮すると,メダル配当後にボーナスゲームを行わないことは自明である。
オ.甲1発明の「シンボルマークSの組み合わせ」のうち「シンボルマークS」は,本件特許発明の「識別情報」に相当するから,「シンボルマークSの組み合わせ」は,全体として「表示態様」に相当する。
カ.甲1発明の「3個のリール」は,本件特許発明の「複数の可変表示部」に相当し,さらに第1図および第2図を参酌すると「3個のリール」が横方向に独立して並置されているので,本件特許発明の「左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部」にも相当する。
キ.甲1発明の「3個のリールと窓21」は,本件特許発明の「可変表示装置」に相当する。
ク.甲1発明の「入賞判定ライン」は,本件特許発明の「当りライン」に相当する。
ケ.甲1発明の「1ゲーム」は,遊技者がメダルを投入して,スタートレバーを操作することでリールが回転し,リールごとに設けられたストップボタンを押して,対応するリールが停止するものであるから,本件特許発明の「1ゲーム」に相当し,甲1発明において「大ヒットは,メダル配当後にボーナスゲームができる」旨の記載があるから,該「1ゲーム」のうち,ボーナスゲーム以外のゲームは,本件特許発明の「通常ゲーム」に相当すると認められる。
また,甲1発明においてリールが回転すると,可変表示されることとなるのは自明である。
コ.甲1発明において,1ゲーム終了時の3個のリールの前記入賞判定ライン上の停止結果が前記大ヒットの表示態様となったときに,メダル配当後にボーナスに移行させ,1ゲーム終了時の前記3個のリールの前記入賞判定ライン上の停止結果が小ヒットの表示態様となったときに,小役入賞を発生させているから,甲1発明は本件特許発明の「遊技制御手段」に相当する構成を備えていることは自明である。
サ.甲1発明において,複数種類のヒット別に,入賞しているか否かを前記複数種類のヒット別に予め定めた入賞発生の確率を決定する入賞確率テーブルを有し,所定のタイミング信号が発せられた時点で取得された乱数値を前記入賞確率テーブルと照合され,前記決定された乱数値が入賞に該当するものであると,入賞の種類に応じたヒットリクエストが発生するものであるから,甲1発明は本件特許発明の「判定手段」に相当する構成を備えていることは自明である。
シ.甲1発明において,ヒットリクエストが発生すると,種類別にヒットリクエストをカウントするリクエストカウンタが「+1」され,RAM上にストアされることから,「ヒットリクエスト」は,本件特許発明の「当選フラグ」に相当し,さらに本件特許発明の「セット手段」は「当選フラグ」をセットするものであるから,甲1発明は本件特許発明の「セット手段」に相当する構成を備えていることは自明である。
ス.甲1発明の「ストップボタン25」は,本件特許発明の「停止操作手段」に相当する。
セ.甲1発明において,ヒットリクエストが発生している際にストップボタン25が操作された時点での入賞判定ライン1上のシンボルナンバーに基づき,シンボルマーク4コマ分の範囲でシンボルマークのチェックを行い,この範囲内にヒットを構成するシンボルマークがあるときには,それが窓に現れるようにモータに供給する駆動パルスの数を決めてリールを停止させる制御を各リールごとに行っているから,甲1発明は本件特許発明の「可変表示制御手段」に相当する構成を備えていることは自明である。

よって,本件特許発明と甲1発明とは
「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み,該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって,
前記複数の可変表示部は,賭数の入力によって有効な当りラインが設定される,左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り,
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに,ビッグボーナスに移行させ,通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに,前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させる遊技制御手段と,
前記ビッグボーナス役と前記小役とを含む複数種類の役別に,当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段と,
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と,
前記可変表示部を停止操作するための停止操作手段と,
該停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を,前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段と,を有するスロットマシン。」の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
本件特許発明においては,遊技制御手段が通常ゲーム終了時の複数の可変表示部の当りライン上の停止結果が複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させるのに対して,甲1発明では,そのような構成でない点。

[相違点2]
複数種類の役別に当選しているか否かを複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段に関して,本件特許発明においては,その複数種類の役に再ゲーム役を含むものであるが,甲1発明においては,複数種類の役別に当選しているか否かを複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段を有するものの,再ゲーム役が存在しないため,複数種類の役に再ゲーム役が含まれていない点。

[相違点3]
「再ゲーム」に関して,判定手段は,本件特許発明においては,通常ゲームにおいては再ゲーム役が当選しているか否かを判定し,ビッグボーナス中においては再ゲーム役が当選しているか否かを判定しないのに対して,甲1発明には,再ゲーム役が存在せず,上記のような判定を行わない点。

[相違点4]
「再ゲーム」に関して,本件特許発明においては,停止可能範囲内に必ず再ゲーム識別情報が存在するように複数の可変表示部の識別情報の配列が構成されているのに対して,甲1発明には,再ゲーム役が存在しないため,上記のような識別情報の配列となっていない点。

[相違点5]
「再ゲーム」に関して,本件特許発明においては,再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき,当該ゲームでは,停止操作手段が操作されたときに可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ,セット手段によりセットされたビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させる制御を行っているのに対して,甲1発明には,再ゲーム役が存在しないため,上記の制御を行なっていない点。

[相違点6]
本件特許発明においては,遊技制御手段は,複数の可変表示部の有効な当りライン上の停止結果がセット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに,前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し,当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越すように,当選フラグの種類に応じた持ち越し制御を行っているのに対して,甲1発明では,ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には,そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越されることは記載されているものの,例えば本件特許発明のビッグボーナス当選フラグに相当する大ヒットリクエストは「持越す」が,本件特許発明の小役当選フラグに相当する小ヒットリクエストは「持越さない」というような,ヒットリクエストの種類に応じた持ち越し制御を行っていない点。

[相違点7]
本件特許発明において,判定手段は既にビッグボーナス当選フラグがセットされているときには,ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定しない,つまりビッグボーナスを重複して当選することのないように制御しているのに対して,甲1発明には,上記のようなビッグボーナスを重複して当選することのないように制御しているか不明な点。

[相違点8]
本件特許発明においては,ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいてセット手段が小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる制御を行なうのに対して,甲1発明には,上記のような停止制御を行っていない点。

(4)相違点についての検討
[相違点1],[相違点2]について
相違点1,相違点2については,いずれも「再ゲーム役」を構成として含んだ相違点であるので,まとめて検討することとする。
まず,スロットマシンの技術分野において,「再ゲーム役」は,きわめて普通に知られている周知の役である。
例えば,請求人の挙げた甲第2号証には「図5において,第1リール5は「☆」シンボルを表示窓4に出した状態で停止している。このように,ゲームが終了した時点でいずれかのリールにより「☆」シンボルが表示窓4に表示されたときにはサービス入賞となる。サービス入賞が得られると,各入賞ラインの両端に設けられた14が一斉に点滅してサービス入賞発生の表示が行われ,次回にはコインを投入しなくても,全ての入賞ラインを有効化させた状態(3枚のコインを投入したのと等価な状態)で1回のゲームを行うことが可能となる。(【0008】)」,
同じく甲第3号証には「また判定の結果,メダルの払い出しを行なうような組み合わせでない場合は,次に回転を停止した回転リール12の絵柄13中に,引き分けとなるような特定絵柄があるか否かが,判定装置によって判定される(ステップ45)。
その結果,特定絵柄がない場合には,1ゲームが終了することとなる。
また特定絵柄がある場合には,メダル投入後の状態,即ちステップ45の前に戻って,新たなメダルの投入なしに再ゲームが行なえることとなる。(3頁左下欄13行?右下欄3行)」と,周知技術として,本件特許発明の「再ゲーム役」に相当する役が記載されており,この周知技術を甲1発明に適用して,相違点1に係る本件特許発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。
さらに,周知の「再ゲーム役」を当選判定の対象役として採用した場合,「再ゲーム役」を採用した段階で,複数種類の役別に当選しているか否かを複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段が,該複数種類の役の一として再ゲーム役も含めて当該判定の対象とすることは自明であり,相違点2に係る本件特許発明の構成を備えるように想到することも,当業者が容易になし得たものといえる。

[相違点3]について
請求人の挙げた甲第12号証には,「リプレイ図柄として知られる「CHANCE」には,他にも2つの役割がある。一つはビッグボーナス時に小役ゲームからボーナスゲームに移行するときに揃う役割。もう一つは,ボーナスゲーム中のJACマークとしての役割だ。(7頁3列囲み記事)」,「表では抽選の種類がいくつもあるように見えるけど,実際にはビッグチャンス(この時はCHANCEで再ゲームの代わりにボーナスゲームの抽選をする)と平常時の区別しかない。(11頁5列10?19行)」と,記載されている。
ここで,甲第12号証において,リプレイ図柄である「CHANCE」図柄は,本件特許発明における「再ゲーム識別情報」に相当し,以下同様に,「平常時」は「通常ゲーム」に,「ボーナスゲーム中」は「ビッグボーナス中」に,それぞれ相当する。
つまり,甲第12号証には,「通常ゲーム」においては「再ゲーム識別情報」による再ゲーム役が当選しているか否かを判定し,「ビッグボーナス中」には「再ゲーム識別情報」が揃ったとしても再ゲーム役の当選とはしないということは記載されているが,「ビッグボーナス中」に再ゲーム役が当選しているか否かを判定しないとは記載されていない。
また,甲12号証の他の記載及び他の甲号各証から,それが示唆されているものでもない。
よって,甲12号証及び他の甲号各証には,相違点3に係る本件特許発明の構成が記載されておらず,当業者が相違点3に係る本件特許発明の構成に至ることはできない。

[相違点4]について
請求人の挙げた甲第13?15号証に記載されるスロットマシンである「ベガスガール」は,そのリール上の図柄の配列を見るに,再ゲーム役の図柄である「ガール絵柄」は,3つのリールのいずれにおいても,ガール絵柄同士の間隔は5コマ未満となっているが,いずれの甲号各証にも,停止可能範囲(引き込みコマ数)とガール絵柄同士の間隔コマ数の関連についての記載はない。
請求人は平成22年5月24日付け審判上申書において,「回動式遊技機に関わる技術上の規格(第6条関係)」の性能に関する規格に基づき,回動式遊技機であれば4コマの範囲で引き込み制御を行うことが周知であったと主張している。
「ベガスガール」が,ホールに設置される回動式遊技機である以上,上記の規格を満たしていることは当然のことであり,甲第14号証8ページ最上段の「待望の保通協認可下りる!!」という記載から,上記の規格を満たした回動式遊技機であることは,当業者であれば理解できることである。
次に,甲第15号証には「3本のリールともガール絵柄(リプレイ)は,ほぼ100%の引き込み率を持っているようだ。(5頁「攻略することは可能なのか?」欄上列3?6行)」と,リプレイ役を構成するガール絵柄を引き込み制御を有する機種であることが記載されており,上記の摘記の中の「ほぼ100%の引き込み率」について検討する。
これに関して,請求人が上記審判上申書において主張しているように,甲第13?15号証の記載を総合すると,「ベガスガール」は以下の構成を備えていると認められる。
・「ベガスガール」は,チェリー図柄が1つでも当たりライン上に停止表示されると3枚コインの払出があるチェリー役を有していること。
・「ベガスガール」のリールの図柄配列から,リプレイ役を構成するガール絵柄を,リプレイ役の当選フラグがセットされたことに応じて引き込み制御を行った場合,チェリー役の当選フラグがセットされていないにもかかわらず,チェリー図柄が停止表示される可能性があること。
そして,スロットマシンの技術分野において,リールの停止制御はセットされた当選フラグに基づいて行われること,セットされた当選フラグに対応しない役を構成する図柄が停止することを防止するため,該図柄が停止表示されないように,いわゆる蹴飛ばし制御が行われることは,本件の出願時点での周知技術である。
したがって,「ベガスガール」において,リプレイ役の当選フラグのみがセットされたゲームにおいて,遊技者の停止操作によってリプレイ図柄であるガール絵柄を所定の当たりラインに引き込んで停止させようとした際に,遊技者の停止操作のタイミングによる引き込み可能な範囲にあるガール絵柄を停止させると,本来停止することが許可されないチェリー図柄が,同時に別の当たりラインにおいて停止してしまう場合,それを避けるために,リプレイ役の成立よりもチェリー図柄の蹴飛ばし制御を優先することは,当業者であれば,容易に考えられ得ることであり,そのような状況を踏まえて甲第15号証には「ほぼ100%の引き込み率」と記載されているであろうことも,当業者であれば十分理解できることである。
とすれば,「ベガスガール」なるスロットマシンを例として,「リール上の再ゲーム役の識別情報の配列を停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在するようにしたことで,再ゲーム当選フラグがセットされた場合に確実に再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させることが可能となる」ということが,本願出願前周知技術と認められるから,甲1発明に該周知技術を適用して,本件特許発明の相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

[相違点5]について
相違点5にかかる本件特許発明の構成を,再ゲーム当選フラグのみがセットされている場合と,ビッグボーナス当選フラグが持ち越し中で,さらに 再ゲーム当選フラグがセットされ,ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグがセットされた場合の2つの場合に分けて検討する。
前者の場合については,再ゲーム当選フラグがセットされた場合に停止操作手段が操作されると,再ゲーム役の図柄が必ず揃うように構成することは,[相違点4]についてで検討したとおり,当業者が容易になし得たものである。
次に,後者の場合について検討する。
請求人の挙げた甲第6号証には「バニーガールシリーズはフラグの成立した絵柄を上下段に揃えるという制御があるからなんだ(ボーナスと小役が重複した場合は,ボーナスを優先する)。(113頁2段目25?26行)」と記載されている。これは,スロットマシンの技術常識を踏まえて解釈すると,「ボーナス当選フラグが持ち越し中で,さらに 小役当選フラグがセットされ,ボーナス当選フラグと小役当選フラグがセットされた場合は,ボーナスを優先して引き込み制御を行う」ということであり,ボーナス当選フラグと再ゲーム役当選フラグが同時にセットされた場合の記載ではない。
そして,請求人は複数の当選フラグが重複してセットされた状態において,いずれか一の当選フラグを定めなければ,引き込み停止制御を行えないと主張しているが,そもそもボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグが重複してセットされた場合に言及しない甲第6号証に記載された引き込み制御を適用しても,本件特許発明における相違点5に係る構成とはなり得ない。
仮に甲6号証に記載された引き込み制御をボーナス当選フラグと再ゲーム役当選フラグが同時にセットされたものとして,これを適用したとしても,どちらの当選フラグを優先するかを当業者が容易に選択しうる設計的事項であると認めることはできるのは,どちらの当選フラグを優先したとしても,効果に顕著な相違がない場合である。。
しかしながら,本件特許発明においては,ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグがセットされた場合,再ゲーム当選フラグを優先することによって,ビッグボーナス発生前のゲームに再ゲームが割り込むことでビッグボーナス発生前の消化ゲームが追加されることで単位時間当たりの払出しを少なくでき,遊技者の投資額も少なくでき,射倖性の適正化が図れる等の顕著な効果が認められる。
また,請求人の挙げた甲第7号証を含め他の甲号各証にも,相違点5について,これを示唆する記載は見当たらない。
よって,上記甲号各証に記載された発明から,相違点5に係る本件特許発明の構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはできない。

[相違点6]について
請求人の挙げた甲第4号証には「小役の場合,フラグが立っても,だいたいがその場限りで揃わなければフラグは消えてしまうが,ビッグ・レギュラーボーナスでは消えずに,揃うまで残る。(79頁4列8?11行)」,同じく甲第5号証には「普通,チェリーやプラムなどの小役の時は,フラグは毎ゲーム終了時に消され,ゲームを始める度に新しく設定される。ところが,ビッグやレギュラーは役がそろうまでフラグは消えないのが普通である。(「フラグというけれど…」の項,上列10?16行)」と記載されており,いずれにも「複数の可変表示部の有効な当りライン上の停止結果がセット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに,前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し,当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越すよう制御されている」に相当する構成が開示されている。
よって,甲1発明に甲第4号証または甲第5号証に記載された当選フラグの消去・持越しの技術を適用して,相違点7に係る本件特許発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

[相違点7]について
請求人の挙げた甲第4号証には「ボーナスのフラグが立って,そのゲームでボーナス絵柄を揃えられなかった場合,次のゲーム以降は左ページの表2の確率でフラグが立つ。これは設定変更時にどの数値でスタートした台であっても同じ値を取る。ボーナスのフラグが立っていると,ボーナスフラグの立つ確率は0%になる。ボーナスフラグが2つ以上同時に立つことはないのである。(82頁上列18行?下列1行)」,同じく甲第5号証には「ビッグチャンス中でなかったら役判定用の乱数計算を行う。この結果によって役がかかるかどうかが決まるのである。乱数計算が終わるとボーナスフラグがONになっているかどうか判定する。つまり,ボーナステンパイ中なら,再度ボーナスになるどうかの判定をする必要がないので,そのまま小役判定に向かい,ボーナステンパイ,つまりボーナスのフラグが立っていなければボーナス判定へ行く。(10ページ2列5行?3列5行)」と記載されており,甲4号証および甲5号証のいずれにも「ビッグボーナス当選フラグがセットされているときにはビッグボーナス役が当選しているか否かを判定しない」という,相違点8に係る本件特許発明の構成が記載されている。
よって,甲1発明に甲第4号証または甲第5号証に記載されたビッグボーナス当選フラグが重複してセットされることを禁止する技術を適用して,相違点8に係る本件特許発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

[相違点8]について
請求人の挙げた甲第6号証には「バニーガールシリーズはフラグの成立した絵柄を上下段に揃えるという制御があるからなんだ(ボーナスと小役が重複した場合は,ボーナスを優先する)。(113頁2段目25?26行)」と記載されている。これは,スロットマシンの技術常識を踏まえて解釈すると,「ボーナス当選フラグが持ち越し中で,さらに 小役当選フラグがセットされ,ボーナス当選フラグと小役当選フラグがセットされた場合は,ボーナスを優先する」という引き込み制御を行っている点が記載されていると認められる。
そして,甲6号証に記載された技術事項を甲1発明に組み合わせることになんら技術的困難性はないから,甲1発明に甲第6号証に記載された技術的事項を適用し,相違点9に係る本件特許発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。

(5)小括
以上によれば,本件特許発明は,本件特許発明に係る相違点3及び5の構成により,甲1発明,甲第2号証?甲第9号証,甲第11号証?甲第15号証に記載された技術事項,甲第20号証?第21号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできず,本件特許発明の本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものでない。

2.無効理由2について(特許法39条2項)
請求人は,本件特許発明は,同一出願人によって同日に出願された特許第4060340号と同一の発明であるので,特許法39条2項に該当し,無効とされるべきものであると主張している。
さらに,平成22年5月24日付け審判上申書において,甲第18号証乃至甲第21号証を提出して,本件特許発明と訂正が請求された特許第4060340号に係る発明との相違点は遊技機の技術分野における周知技術にすぎないから,両者は同一であると主張している。

(1)特許第4060340号に係る発明について
被請求人による平成21年10月9日付け特許第4060340号に係る訂正請求については,別途,無効2009-800144号の審決において,訂正が認められた。
よって,特許第4060340号に係る発明は,上記訂正により訂正された明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下,「特許第4060340号発明」という。)である。

「【請求項1】
遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり,ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み,該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって,
前記複数の可変表示部は,賭数の入力によって有効な当りラインが設定される,左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り,
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに,ビッグボーナスに移行させ,通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに,前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ,通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに,前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と,
前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役別に,当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段と,
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と,
前記可変表示部を停止操作するための停止操作手段と,
該停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を,前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを含み,
前記遊技制御手段は,前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに,前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し,当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し,
前記判定手段は,既に前記ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには,前記ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定せず,また,前記通常ゲームにおいては前記再ゲーム役が当選しているか否かを判定し,前記ビッグボーナス中においては前記再ゲーム役が当選しているか否かを判定せず,
前記複数の可変表示部の識別情報の配列は,前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており,
前記可変表示制御手段は,
再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ,前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ,
前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき,当該ゲームでは,前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる制御を行なうことを特徴とする,スロットマシン。」

(2)対比
本件特許発明と特許第4060340号発明とを比較すると,
「セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときに,前記ビッグボーナス役が当選していることを報知する報知手段とを含み,該報知手段は,前記ビッグボーナス役が当選していることを表示する表示手段と,前記ビッグボーナス役が当選していることを音で報知する音報知手段」なる構成が,特許第4060340号発明には限定されているが,本件特許発明には限定されていない点で相違している。

(3)相違点についての検討
請求人は,審判請求書において,上記相違点に係る構成は,本件の出願時点での周知技術であると主張し,さらに,請求人は審判上申書において,上記相違点に係る構成は甲第9号証,甲第18号証?21号証に記載されている旨主張している。
ここで,上記相違点に係る構成はゲーム毎に設定される当選フラグ役に対応した図柄を停止させるために遊技者が停止操作によって変動中の図柄を停止させるという技術介入性を持つスロットマシンにおいて,当選フラグ役が決定した時点で遊技者がそれを知ることにより,停止操作の一助となる顕著な効果を有することから,当審においては,技術分野を特定しない一般的な周知技術としてではなく,スロットマシンという遊技機の技術分野における,本件特許の出願時点での周知技術であるかどうかを検討することとする。
甲第18号証,甲第19号証,甲第20号証は,弾球遊技機つまりパチンコ遊技機に係る発明であって,可変表示装置における図柄が停止して当たりもしくは,はずれに確定する前に,確定すべき当たりもしくは,はずれを事前に決定し,図柄が停止する以前に遊技者に対して当たりもしくは,はずれを報知する点で,スロットマシンに係る本件特許発明及び特許第4060340号発明とは共通する。
しかしながら,パチンコ遊技機ではパチンコ遊技機自体が所定時間後に自動的に事前に決定された当選フラグ役に対応した図柄で停止させるのに対して,スロットマシンでは,上述したように図柄の停止に際して遊技者の技術介入性を必要とする,つまり遊技者は報知があるとビッグボーナス識別情報を揃えるべく努力をするから,当該報知を行うことによる効果には大きな相違が認められる。
したがって,甲第18号証,甲第19号証,甲第20号証がパチンコ遊技機において当たりを表示と音で報知することが周知であることを示すとしても,甲第18号証,甲第19号証,甲第20号証に記載されたパチンコ遊技機における周知技術が,スロットマシンの技術分野における周知技術になり得るとは認められない。
さらに,甲第9号証及び甲第21号証は,スロットマシンにおける内部当たり時に音と光で報知する点が記載された公知文献であるが,両者とも同じ出願人による公開公報であって,他に周知であることを示す例は存在しないから,上記相違点がスロットマシンの技術分野における本件特許の出願時点での周知技術であったとすることはできない。
またその上で,本件特許発明と特許第4060340号発明の,前者を先願発明,後者を後願発明とした場合,また,前者を後願発明,後者を先願発明とした場合のいずれの場合であっても,両者が同一の発明に該当するものではない。
以上のことより,本件特許発明と特許第4060340号発明に係る発明とを比較した場合,相違点が存在し,その相違点に係る構成が本件特許の出願時点での周知技術であったとは認められないから,両者は実質的に同一ではない。

(4)小括
本件特許発明と特許第4060340号発明とは,同一の発明ではないから,本件特許発明の本件特許は,特許法39条2項の規定に違反してされたものではなく,無効理由2には理由がない。

第4.むすび
以上のとおりであるから,本件特許は,無効理由1,2には理由がないから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-07 
結審通知日 2010-10-12 
審決日 2010-10-29 
出願番号 特願2006-251280(P2006-251280)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
井上 昌宏
登録日 2007-12-21 
登録番号 特許第4058084号(P4058084)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 塚本 豊  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 中田 雅彦  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 振角 正一  
代理人 川下 清  

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