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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F |
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管理番号 | 1244405 |
審判番号 | 不服2010-9234 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-30 |
確定日 | 2011-10-11 |
事件の表示 | 特願2008-275488「印刷機の印刷方法及び印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月17日出願公開、特開2009-208463〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年10月27日の出願(優先権主張平成20年2月6日)であって、平成21年12月28日付けで手続補正がなされ、平成22年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年4月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 なお、当審において同年10月21日に請求人代理人と面接を行い、同年11月8日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成23年1月7日付けで回答書を提出した。 第2 本件補正の却下の決定 〔結論〕 本件補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容・目的 (1)補正内容 ア 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前(平成21年12月28日の手続補正後のもの)に 「【請求項1】 搬送されてくる枚葉紙に紫外線硬化型塗料を用いて画像を印刷し、印刷されて搬送されてくる枚葉紙上の紫外線硬化型塗料に、枚葉紙の幅方向に亘って適宜の間隔をおいて配置された複数の発光ダイオードから紫外線を照射して該塗料を硬化させる印刷機の印刷方法であって、 枚葉紙が通過する通過領域を幅方向において複数の領域に分割し、それら分割された各領域に画像が存在しているか否かを版を作成する工程で作成されたプリプレスデータに基づいて判別し、画像が存在している場合には、その領域に対応した発光ダイオードをONにし、画像が存在していない場合には、その領域に対応した発光ダイオードをOFFにすることを特徴とする印刷機の印刷方法。」 とあったものを、 「【請求項1】 搬送されてくる枚葉紙に紫外線硬化型塗料を用いて画像を印刷し、印刷されて搬送されてくる枚葉紙上の紫外線硬化型塗料に、枚葉紙の幅方向に亘って適宜の間隔をおいて配置された複数の発光ダイオードから紫外線を照射して該塗料を硬化させる印刷機の印刷方法であって、 枚葉紙が通過する通過領域を枚葉紙の幅方向において複数の領域に分割し、該分割された各領域に対応する基板であって、それぞれが複数の発光ダイオードを備えた基板を、前記分割された複数の領域に対応するように枚葉紙の幅方向に複数備え、前記分割された各領域に画像が存在しているか否かを版を作成する工程で作成されたプリプレスデータに基づいて判別し、画像が存在している場合には、その領域に対応した基板の発光ダイオードをONにし、画像が存在していない場合には、その領域に対応した基板の発光ダイオードをOFFにすることを特徴とする印刷機の印刷方法。」 と補正するものである。 イ 本件補正後の請求項1に係る補正は、以下の補正内容からなる。 (ア)本件補正前の請求項1に記載される「複数の領域に分割」される「「幅方向」が、枚葉紙のものであることを明確にする。 (イ)本件補正前の請求項1に記載される「印刷機」が「分割された各領域に対応する基板であって、それぞれが複数の発光ダイオードを備えた基板を、前記分割された複数の領域に対応するように枚葉紙の幅方向に複数備え」るものであることを限定する。 (ウ)本件補正前の請求項1に記載される「分割された各領域に画像が存在している場合には、」「ONに」され、「分割された各領域に画像が存在していない場合には、」「OFFに」される「その領域に対応した発光ダイオード」が、「その領域に対応した基板の発光ダイオード」であることを限定する。 (2)補正目的 上記(1)イ(ア)ないし(ウ)からして、本件補正後の請求項1に係る補正は、全体として、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 よって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 刊行物に記載の事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-167748号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。また、「充填」は、摘記に際して旧字を新字に置き換えたものである。)。 (1)「2.特許請求の範囲 1.放射エネルギーを発生する放射装置からなり、その場合、放射エネルギーが印刷物の表面に伝達され、印刷物を移動させる移送装置が定められた軌道に沿って設けられた、印刷機のおける印刷物の乾燥装置において、 放射装置(13)が印刷機の外部に設けられ、 放射装置(13)から生じた放射エネルギーを印刷物(19)の表面に伝達する伝達手段が設けられ、 放射エネルギーが、印刷物(19)の表面に広がりにわたって同時に発生する、ことを特徴とする、印刷機における印刷物の乾燥装置。 2.伝達手段として、光ファイバケーブル(16,17)が設けられ、該ケーブルに放射装置(13)から放射エネルギーが供給される、請求項1記載の装置。 ・・・(略)・・・ 6.放射線が、紫外線領域に相当する波長を有するレーザ光線である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。 ・・・(略)・・・ 9.インキ付着層の状態を記憶する電子記憶装置が設けられ、さらに記憶値が供給される制御装置が設けられ、該制御装置が、記憶されたインキ付着層の状態に相応して放射強度を制御する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。 10、放射線発生装置(13)が、異なる波長の放射線を発生し、乾燥すべきインキに相応して放射線を選ぶことが可能である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。」(1頁左下欄4行?2頁左上欄12行) (2)「[発明を解決しようとする課題] したがって、本発明の基本的な目的は、放射装置の損失熱によって生じる印刷機への悪影響を回避し、放射エネルギーの最適な利用によって、インキを可及的に速やかに乾燥させることである。」(2頁左下欄13?17行) (3)「[作用] 特許請求の範囲第1項に記載の対策の主要な利点は、印刷機における不必要な加熱が、放射装置を印刷機の外部に配置することによって回避されるようにされていることである。そのような放射装置は、例えばレーザ光線源とすることができる。その場合、レーザ光線の伝達は、損失エネルギーの僅少な適応した伝達手段によって行われる。さらに、放射エネルギーを印刷製品の表面の全体の幅または一部分に同時に当てることができる利点を有している。したがって、印刷製品に放射エネルギーが点状ではなく線状に当てられ、一層良好な乾燥効果および一層高い乾燥速度が得られる。 本発明の実施態様は、伝達手段として光ファイバケーブルを使用するようにされている。光ファイバによって、放射装置と放射エネルギーを利用する個所との間の長い工程を橋絡することができる。この光ファイバケーブルは多数の個々のファイバからなり、その場合、その端部が線状の扇形に広げられ、換言すれば、個々の光ファイバが、印刷物の表面上に終結する一列または数列に分離されている。その場合、そのような列の幅は、乾燥すべき表面の幅に相応する。 別の実施態様によれば、放射エネルギーの伝達手段として、光ファイバケーブルの代りにガスが充填された管が設けられる。充填ガスとして窒素が合目的に使用される。このような管によって、同様に極めて長い伝導路を実施することができる。線状の放射エネルギーを形成するため、管の端部に光学的な放射線分割装置が設けられる。 最近、オフセット印刷において使用される紫外線インキは、紫外線の作用で硬化する。このインキは、溶剤を含有するインキと異なり、印刷物を不必要に加熱せずに乾燥を行うことができるという利点を有している。したがって、紫外線領域にある波長を有する放射線を発生することが有効であり、本発明の実施態様に示されている。 伝達手段としてガスが充填された管を形成する場合、この管が紫外線を反射する内部被覆層を備えるようにされている。そのような内部被覆層によって、管を光ファイバと同様に任意に敷設することができる。その場合、方向変換鏡および真すぐな管の案内は不必要である。 供給すべき放射エネルギーを制御する制御回路に、全体の装置を接続することができる。印刷物は極めて稀な場合には全面に印刷されるが、むしろ大抵の場合は像のない個所を有するため、像のない個所においては、印刷製品または印刷枚葉紙に放射エネルギーが当たらないようにすることが有利である。これは、乾燥すべきインキの存在によって必要な場所だけ、放射エネルギーが印刷枚葉紙に供給される必要があることを意味している。その場合、放射エネルギーの制御は、制御装置によって行われる。印刷製品にインキの付着する面またはインキの付着しない面に関する情報が、センサによって前記制御装置に供給される。センサは、例えば放射エネルギーの投射と同様に印刷枚葉紙に向けられ、この枚葉紙上のインクの塗着を検出する。センサによって形成された信号が制御装置に供給され、その場合、制御装置が、この信号によって放射エネルギーの強度を切り替える。 本発明の実施態様において、そのようなセンサ装置の代りに電子記憶装置が設けられ、この記憶装置に、印刷製品の状態、すなわちインキを付着する面とインキを付着しない面との分布が記憶される。制御装置による記憶内容の周期的な読出しによって、同様に放射エネルギーの放射強度または切替えが制御される。 実施態様として、放射装置は、異なる波長を形成する放射源を備えることができる。これは、異なる紫外線領域で硬化するインキを乾燥させることができるという利点を有している。使用されるインキに応じて相応する紫外線領域が選択され、相応する波長を有する放射装置が作動される。」(2頁右下欄1行?3頁左下欄16行) (4)「[実施例] 次に、本発明を実施例によって一層詳細に説明する。 図および説明において示されたすべての新らたな特徴は、特許請求の範囲に含まれていなくても本発明の枠内にある。 第1図に示す印刷機lの概略図は、給紙装置2と4つの印刷ユニット3,4,5,6と排紙装置7とを備えた枚葉紙オフセット印刷機を示している。 ・・・(略)・・・ 光ファイバケーブル16の端部の構造が、第2図に一層詳細に示されている。渡し胴12の上に印刷枚葉紙19がある。この印刷枚葉紙19は、その前端部が、くわえづめ20によって固定され、移送路21に沿って移送される。光ファイバケーブル16の端部が、渡し胴12の上に横げた22に取付けられている。図から判るように、光ファイバケーブル16が分割され、換言すればケーブル16の個々のファイバが枚葉紙の移送方向と直角に延びるラインを形成するように配置されている。光ファイバケーブル16の端部に生じるレーザ光線が、枚葉紙表面にほとんど垂直に発生する。」(3頁左下欄17行?4頁右上欄9行) (5)上記(1)ないし(4)から引用例には次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。 「印刷機の外部の放射装置と、該放射装置から生じた紫外線領域にある波長を有する放射エネルギーを印刷物の表面に伝達する伝達手段としての光ファイバケーブルが設けられ、該ケーブルに放射装置から放射エネルギーが供給される乾燥装置を有する枚葉紙オフセット印刷機において、溶剤を含有するインキと異なり印刷物を不必要に加熱せずに乾燥を行うことができるという利点を有している、紫外線の作用で硬化する紫外線インキを用いて行うオフセット印刷であって、 前記光ファイバケーブルは分割され、その端部が渡し胴の上の横げたに取付けられており、ケーブルの個々のファイバが枚葉紙の移送方向と直角に延びるラインを形成するように配置されており、 前記乾燥装置は、放射装置の損失熱によって生じる印刷機への悪影響を回避し、放射エネルギーの最適な利用によって、インキを可及的に速やかに乾燥させることを目的として、放射装置を印刷機の外部に配置することによって印刷機における不必要な加熱が回避される利点と、放射エネルギーを印刷製品の表面の全体の幅または一部分に同時に当てることができる利点とを有し、印刷製品に放射エネルギーを線状に当て、一層良好な乾燥効果および一層高い乾燥速度が得られるものであり、 前記乾燥装置には、印刷製品の状態、すなわちインキを付着する面とインキを付着しない面との分布を記憶する電子記憶装置及びここから記憶内容を周期的に読み出し、放射エネルギーの放射強度または切替えを制御する制御装置が設けられており、 印刷物は大抵の場合、像のない個所を有するため、像のない個所においては、印刷製品または印刷枚葉紙に放射エネルギーが当たらないようにすることが有利であり、乾燥すべきインキの存在によって必要な場所だけ、放射エネルギーが印刷枚葉紙に供給される必要がある場合、放射エネルギーの制御を前記制御装置によって行うオフセット印刷。」 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「枚葉紙」、「紫外線インキ」及び「『枚葉紙オフセット印刷機において』『行うオフセット印刷』」は、それぞれ、本願補正発明の「枚葉紙」、「紫外線硬化型塗料」及び「印刷機の印刷方法」に相当する。 (2)枚葉紙オフセット印刷機において、搬送されてくる枚葉紙に画像を印刷することは技術常識であるから、引用発明の印刷方法が、搬送されてくる枚葉紙に画像を印刷する点で本願補正発明の印刷方法と一致することは、当業者に明らかである。 (3)引用発明の印刷方法は、紫外線の作用で硬化する紫外線インキを用いて行うものであり、紫外線領域にある波長を有する放射エネルギーを印刷物の表面に伝達するものであるから、本願補正発明の印刷方法の「『紫外線硬化型塗料を用いて画像を印刷し、印刷されて搬送されてくる枚葉紙上の紫外線硬化型塗料に』、『紫外線を照射して該塗料を硬化させる』」点を備えている。 (4)引用発明の光ファイバーは、「該放射装置から生じた紫外線領域にある波長を有する放射エネルギーを印刷物の表面に伝達する伝達手段として」設けられ、分割された「端部が渡し胴の上の横げたに取付けられており、ケーブルの個々のファイバが枚葉紙の移送方向と直角に延びるラインを形成するように配置され」、「放射エネルギーを印刷製品の表面の全体の幅または一部分に同時に当てる」ものであるから、「枚葉紙の幅方向に亘って」配置され、「紫外線を照射」する要素である点で、本願補正発明の発光ダイオードと一致する。 (5)引用発明の乾燥装置には、「印刷製品の状態、すなわちインキを付着する面とインキを付着しない面との分布を記憶する電子記憶装置及びここから記憶内容を周期的に読み出し、放射エネルギーの放射強度または切替えを制御する制御装置が設けられており」、かつ、引用発明の印刷方法は、「印刷物は大抵の場合、像のない個所を有するため、像のない個所においては、印刷製品または印刷枚葉紙に放射エネルギーが当たらないようにすることが有利であり、乾燥すべきインキの存在によって必要な場所だけ、放射エネルギーが印刷枚葉紙に供給される必要がある場合、放射エネルギーの制御を前記制御装置によって行う」ものである。 また、本願補正発明の「版を作成する工程で作成されたプリプレスデータ」は、「『印刷製品の状態、すなわちインキを付着する面とインキを付着しない面との分布』のデータ」といえるものであり、本願補正発明の印刷機は、画像が存在している領域には、紫外線を照射し、画像が存在していない領域には、紫外線を照射しないものである。 してみると、引用発明の印刷方法は、本願補正発明の印刷方法と「『画像が存在しているか否かを』インキを付着する面とインキを付着しない面との分布の『データに基づいて判別し』、『画像が存在している』箇所(領域、個所)には紫外線を照射し、『画像が存在していない』箇所(領域、個所)には紫外線を照射しない」点で一致する。 (6)上記(1)ないし(5)から、本願補正発明と引用発明とは、 「搬送されてくる枚葉紙に紫外線硬化型塗料を用いて画像を印刷し、印刷されて搬送されてくる枚葉紙上の紫外線硬化型塗料に、枚葉紙の幅方向に亘って配置された複数の紫外線を照射する要素から紫外線を照射して該塗料を硬化させる印刷機の印刷方法であって、 画像が存在しているか否かをインキを付着する面とインキを付着しない面との分布のデータに基づいて判別し、画像が存在している箇所には紫外線を照射し、画像が存在していない箇所には紫外線を照射しない印刷機の印刷方法。」である点で一致し、次の点で相違している。 相違点1 画像が存在しているか否かを判別する際に用いるインキを付着する面とインキを付着しない面との分布のデータが、本願補正発明では、「版を作成する工程で作成されたプリプレスデータ」であるのに対して、引用発明ではそのように特定されていない点。 相違点2 本願補正発明では、枚葉紙の幅方向に亘って配置された紫外線を照射する要素が、発光ダイオードであって、該発光ダイオードが、枚葉紙が通過する通過領域を枚葉紙の幅方向において複数の領域に分割した各領域に対応する基板であって、それぞれが複数の発光ダイオードを備えた基板に適宜の間隔をおいて複数備えられているのに対して、引用発明では、枚葉紙の幅方向に亘って配置された紫外線を照射する要素が、分割された光ファイバケーブルの端部であり、そのような基板に備えられたものでない点。 相違点3 本願補正発明では、画像が存在しているか否かの判断を、枚葉紙が通過する通過領域を枚葉紙の幅方向において複数に分割した領域毎に行い、紫外線を照射するかしないかの切り替えが、上記分割した領域に対応した基板の発光ダイオードをON、OFFにすることにより行われるのに対して、引用発明では、画像が存在しているか否かの判断及び照射するかしないかの切り替えについて、そのように限定されていない点。 4 判断 上記相違点1ないし3について検討する。 (1)相違点2及び3について ア 本願の優先日前、紫外線を放射するLEDを用いてモジュール化したLEDアレイを印刷物の幅方向に複数並べ、モジュール化したLEDアレイ単位で制御を行う印刷物の乾燥装置(以下「周知技術1」という。例.特表2005-524989号公報(特に【0004】、【0021】ないし【0023】及び図4ないし図6を参照。)、特開2004-284307号公報(特に【0019】、【0027】、【0033】及び図2参照。)。)は周知である。 イ 「紫外線の作用で硬化する紫外線インキを用いて行うオフセット印刷」である引用発明の印刷方法において、乾燥装置として、「紫外線を放射するLEDを用いてモジュール化したLEDアレイを印刷物の幅方向に複数並べ、モジュール化したLEDアレイ単位で制御を行う印刷物の乾燥装置」を採用することは、周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。 ウ 引用発明において「像のない個所においては、印刷製品または印刷枚葉紙に放射エネルギーが当たらないようにすることが有利であり、乾燥すべきインキの存在によって必要な場所だけ、放射エネルギーが印刷枚葉紙に供給される必要がある」ことに鑑みれば、紫外線を放射するLEDを用いてモジュール化したLEDアレイを印刷物の幅方向に複数並べ、モジュール化したLEDアレイ単位で制御を行う印刷物の乾燥装置を採用した引用発明(上記イ参照。)においては、像のない個所において放射エネルギーが当たらないように、乾燥すべきインキの存在によって必要な場所(像のある箇所)だけ放射エネルギーが当たるように、モジュール化したLEDアレイ単位で点灯制御することは当業者が容易になし得ることであり、この点灯制御のための、像があるか否かの判断も、該モジュール化したLEDアレイ単位で、すなわち、モジュール化したLEDアレイの照射領域単位で行わなければならないことが当業者に自明である。 エ LEDアレイのモジュールとして、基板上に適宜の間隔をおいてLEDを複数配置したものは技術常識である。 オ 上記イの印刷物の幅方向に複数並べられたモジュール化したLEDアレイのそれぞれは、枚葉紙が通過する通過領域を枚葉紙の幅方向において複数に分割した各領域に対応するものであるところ、LEDアレイのモジュールが基板上に適宜の間隔をおいてLEDを配置したものであることは技術常識であるのだから(上記エ参照。)、枚葉紙が通過する通過領域を枚葉紙の幅方向において複数に分割した各領域に対応するものは、モジュール化したLEDアレイの「複数の発光ダイオードを備えた基板」であるともいえ、また、モジュール化したLEDアレイの点灯制御(上記ウ参照。)、すなわち、紫外線を照射するかしないかの切り替えは、基板毎に行われるものともいえることが当業者に自明である。 カ してみると、引用発明において、上記相違点2及び3に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 (2)相違点1について ア 本願の優先日前、製版に用いるプリプレスデータを印刷工程の制御にも利用することは周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2001-239649号公報(特に、請求項1、【0001】ないし【0002】参照。)、特開2003-231242号公報(特に、【0009】、【0022】、【0023】、図1及び図3参照。)。)。 イ 画像が存在しているか否かの判別に、製版に用いるプリプレスデータを利用することは、周知技術2に基づいて当業者が適宜なし得たことである。 よって、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、周知技術2に基づいて当業者が容易になし得たことである。 (3)効果 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1及び2のそれぞれの奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。 (4)以上のとおり、本願補正発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)小括 以上のとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条1項で読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年12月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項に記載された事項によって特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)ア」で本件補正前の請求項1として記載したとおりである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」で述べたとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものであるから、本願補正発明は、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-19 |
結審通知日 | 2011-01-21 |
審決日 | 2011-02-01 |
出願番号 | 特願2008-275488(P2008-275488) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41F)
P 1 8・ 575- Z (B41F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 真介 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
藏田 敦之 鈴木 秀幹 |
発明の名称 | 印刷機の印刷方法及び印刷機 |
代理人 | 薬丸 誠一 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 藤本 昇 |