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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1244604 |
審判番号 | 不服2010-19854 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-09-02 |
確定日 | 2011-10-06 |
事件の表示 | 特願2001- 72312「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月20日出願公開、特開2002-270879〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成13年3月14日の出願であって、平成22年1月4日に明細書の補正がなされたが拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書の補正がなされたものである。(以下、平成22年9月2日にされた手続補正を「本件補正」という。) II.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の 「【請求項1】 半導体基板と、 前記半導体基板の主面上に、屈折率が2.1以上2.3以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下となるように形成された第1の窒化シリコン膜と、前記第1の窒化シリコン膜上に、屈折率が1.9以上2.1以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下であって、前記第1の窒化シリコン膜の屈折率よりも小さくなるように形成された第2の窒化シリコン膜とを備える半導体装置。」 を 「【請求項1】 半導体基板上に窒化シリコン膜とEVA(Ethylene Vinil Acetate)膜とガラスを積層した半導体装置において、前記半導体基板と、 前記ガラスと前記EVA膜を通過した太陽光に対して、前記半導体基板の主面上に、屈折率が2.1以上2.3以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下となるように形成された第1の窒化シリコン膜と、 前記第1の窒化シリコン膜上に、屈折率が1.9以上2.1以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下であって、前記第1の窒化シリコン膜の屈折率よりも小さくなるように形成された第2の窒化シリコン膜とを備え、前記第1の窒化シリコン膜と前記第2の窒化シリコン膜を合わせた膜の厚さが600オングストローム以上の1000オングストローム以下であることを特徴とする半導体装置。」 と補正することを含むものである。 2.本件補正の目的について 本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第1項ただし書第3号に掲げる場合においてする補正であるから、同法第17条の2第3項ないし第5項に規定する要件を満たしていない場合は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されることとなる。 そこで、本件補正が平成14年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものであるか、すなわち、本件補正が同法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであるかについて検討する。 本件補正の目的が平成14年改正前特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)に掲げる事項のいずれでもないことは明らかである。 次に、本件補正が平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるかについて検討する。 本件補正が平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるというためには、本件補正は、(本件補正前の)請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならないところ、本件補正前の請求項には、本件補正後の請求項に追加された「EVA(Ethylene Vinil Acetate)膜とガラス」の上位概念としての「発明を特定するために必要な事項」が存在しないから、本件補正は、本件補正前の請求項に記載された発明における「発明を特定するために必要な事項」を概念的により下位の「発明を特定するために必要な事項」としたものとはいえない。 したがって、本件補正は、(本件補正前の)請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえず、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4.独立特許要件について なお、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、以下の(1)?(4)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正を受け入れる余地はない。 (1)引用例 引用例、引用例に記載された事項及び引用発明は、下記III.2.に記載するとおりである。 (2)対比 下記III.3.における検討から、本願補正発明と引用発明は、下記III.3.において一致するとする点で一致し、下記III.3.に記載する相違点a及びbで相違するものと認められる。 さらに、両者は、次のc及びdの点で相違するものと認められる。 c.本願補正発明の半導体装置は、窒化シリコン膜上にEVA(Ethylene Vinil Acetate)膜とガラスを積層し、窒化シリコン膜が前記ガラスと前記EVA膜を通過した太陽光に対するものであるとされているのに対し、引用発明の太陽電池素子がこのようなものであるか不明な点。 d.本願補正発明は、前記第1の窒化シリコン膜と前記第2の窒化シリコン膜を合わせた膜の厚さが600オングストローム以上の1000オングストローム以下であるとされているのに対し、引用発明の一層目の反射防止膜と二層目の反射防止膜を合わせた膜の厚さがこのようなものであるか不明な点。 (3)相違点についての検討 相違点a及びbに係る事項は、下記III.4.のとおり、単に設計上の事項にすぎず、引用発明において、上記相違点a及びbに係る本願補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。 相違点cについて検討するに、引用発明の太陽電池素子はカバーガラスで被覆される旨引用例に記載されているところ、太陽電池素子とカバーガラスの間にEVA(Ethylene Vinil Acetate)膜を介在させることは、例えば、特開平11-307791号公報(段落【0023】、図1のEVA層2及びガラス板3参照。)に記載されているように周知の事項であるから、引用発明において、本願補正発明のごとく、窒化シリコン膜上にEVA膜とガラスを積層することは当業者が容易に採用し得る事項にすぎない。また、このとき、引用発明の反射防止膜が、ガラスとEVA膜を通過した太陽光に対することは、反射防止膜上にEVA膜とガラスが積層されることから明らかであって、引用発明において、上記相違点cに係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に採用し得る事項にすぎない。 相違点dについて検討するに、引用発明の一層目の反射防止膜と二層目の反射防止膜を合わせた膜の厚さをどの程度とするかは、適宜定められるべき設計的事項にすぎず、これらを合わせた膜の厚さとして600オングストローム以上の1000オングストローム以下のものを採用することに困難性は認められない。また、第1の窒化シリコン膜と第2の窒化シリコン膜を合わせた膜の厚さを本願補正発明が規定する範囲内としたことによる効果についても設計的事項の域を越える程の格別の技術的意義があるものとは認められない。 (4)むすび 以上のとおりであって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 III.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年1月4日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記II.1.に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平4-296063号公報(以下「引用例」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 【産業上に利用分野】本発明は太陽電池素子に関し、特に半導体基板の受光面側に反射防止膜を有する太陽電池素子に関する。 【0002】 【従来の技術およびその問題点】太陽電池素子の受光面側には、太陽電池素子の受光面部分での反射損失を低減させるために反射防止膜を形成するのが一般的である。 【0003】この反射防止膜としては、酸化シリコン膜、酸化チタン膜、酸化タンタル膜、あるいはフッ化マグネシウム膜などを単層にしたり、二層にしたりする。 この場合、反射防止膜の屈折率、太陽電池素子を被覆するカバーガラスの屈折率、空気の屈折率の順で徐々に小さくなるように反射防止膜の材料を選択すればよいが、反射防止膜としては、単層のものより二層のものが効果的である。反射防止膜を二層構造にする場合も、半導体基板に屈折率の大きい膜を被着して、この上に屈折率の比較的小さい膜を被着するように形成される(例えば特開昭57─126173号公報参照)。 【0004】このような反射防止膜は、真空蒸着法、スパッタリング法、あるいは回転塗布法などで形成されるが、半導体基板側から順次屈折率が小さくなるような反射防止膜を形成するには、一層目の反射防止膜の材料と二層目の反射防止膜の材料を変えなければならず、それぞれの膜を形成するために複数の装置が必要で、製造工程も煩雑であるという問題がある。 【0005】そこで、例えば窒化シリコン(SixNy)膜などのように、構成元素の比率を変えることによって屈折率を変えることができる材料で反射防止膜を形成すれば、同一材料で順次屈折率が小さくなるように形成でき、製造工程が簡略化できる。 【0006】ところが、窒化シリコン膜を一層目の屈折率が例えばn=2.1以上のものとなり、二層目がn=2.1以下のものとなるような二層構造に形成すると、反射率を低下させることはできるものの、太陽電池素子の出力特性はむしろ低下するという問題があった。すなわち、反射率は低下するが、太陽電池の短絡光電流は全く向上せず、開放電圧は逆に低下してしまう。このように、屈折率の高い窒化シリコン膜をシリコン基板上に形成した場合に短絡光電流が向上せずしかも開放電圧が低下する理由は明らかでないが、250?600℃程度の温度で窒化シリコン膜を形成して室温まで降下させる際の窒化シリコン膜のストレスでシリコン基板の表面に格子欠陥ができ、この欠陥部分でキャリアが再結合して、再結合損失による特性の低下を来すものと考えられる。 すなわち、より屈折率が大きくて密度の高い窒化シリコン膜には、パシベーション効果がないものと思われる。」 上記【0002】?【0004】には、半導体基板の受光面側に、反射損失を低減させるために二層の反射防止膜を形成した太陽電池素子において、半導体基板側に被着される一層目の反射防止膜の屈折率、その上に被着される二層目の反射防止膜の屈折率、太陽電池素子を被覆するカバーガラスの屈折率、空気の屈折率の順で徐々に小さくなるように反射防止膜の材料が選択されることが記載され、さらに、【0006】には、一層目の反射防止膜を屈折率がn=2.1以上の窒化シリコン膜とし、二層目の反射防止膜を屈折率がn=2.1以下の窒化シリコン膜とすることが記載されているから、引用例には、 「半導体基板の受光面側に、屈折率がn=2.1以上の窒化シリコン膜でなる一層目の反射防止膜を被着し、その上に、一層目の反射防止膜の屈折率より小さく、屈折率がn=2.1以下の窒化シリコン膜でなる二層目の反射防止膜を被着した太陽電池素子。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 なお、引用例の【0006】に「窒化シリコン膜を一層目の屈折率が例えばn=2.1以上のものとなり、二層目がn=2.1以下のものとなるような二層構造に形成すると、反射率を低下させることはできるものの、太陽電池素子の出力特性はむしろ低下するという問題があった」と記載されていることから、請求人は、引用例に上記引用発明が記載されていない旨の主張をしているが、引用例は、反射率の観点からは、窒化シリコン膜の一層目の屈折率をn=2.1以上とし、二層目の屈折率をn=2.1以下としたものが優れていることを記載しており、引用例に上記引用発明が記載されていることは明らかであって、請求人の主張は失当である。(シリコン基板表面における格子欠陥の問題が解決されれば、反射率の点からみて引用発明が優れたものであることは明らかである。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「半導体基板」、「屈折率がn=2.1以上の窒化シリコン膜でなる一層目の反射防止膜」、「一層目の反射防止膜の屈折率より小さく、屈折率がn=2.1以下の窒化シリコン膜でなる二層目の反射防止膜」及び「太陽電池素子」は、それぞれ、本願発明の「半導体基板」、「屈折率が2.1以上となるように形成された第1の窒化シリコン膜」、「前記第1の窒化シリコン膜上に、屈折率が2.1以下であって、前記第1の窒化シリコン膜の屈折率よりも小さくなるように形成された第2の窒化シリコン膜」及び「半導体装置」に相当するところである。 したがって、両者は、 「半導体基板と、 前記半導体基板の主面上に、屈折率が2.1以上となるように形成された第1の窒化シリコン膜と、前記第1の窒化シリコン膜上に、屈折率が2.1以下であって、前記第1の窒化シリコン膜の屈折率よりも小さくなるように形成された第2の窒化シリコン膜とを備える半導体装置。」の点で一致し、次の点で相違するものと認められる。 a.本願発明の第1の窒化シリコン膜は、屈折率が2.3以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下であるのに対し、引用発明の一層目の反射防止膜がこのようなものであるか不明な点。 b.本願発明の第2の窒化シリコン膜は、屈折率が1.9以上で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下であるのに対し、引用発明の二層目の反射防止膜がこのようなものであるか不明な点。 4.相違点についての検討 相違点aについて検討するに、引用発明の一層目の反射防止膜の屈折率の上限をどの程度にするか、また、その厚さをどの程度にするかは適宜定められるべき設計的事項にすぎず、一層目の反射防止膜として、屈折率が2.3以下で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下のものを採用することに困難性は認められない。また、屈折率及び厚さを本願発明で規定する範囲内のものとしたことによる効果についても設計的事項の域を越える程の格別の技術的意義があるものとは認められない。 相違点bについても同様であって、引用発明の一層目の反射防止膜の屈折率の下限をどの程度にするか、また、その厚さをどの程度にするかは適宜定められるべき設計的事項にすぎず、一層目の反射防止膜として、屈折率が1.9以上で厚さが200オングストローム以上800オングストローム以下のものを採用することに困難性は認められず、また、屈折率及び厚さを本願発明で規定する範囲内のものとしたことによる効果についても設計的事項の域を越える程の格別の技術的意義があるものとは認められない。 以上のとおりであって、上記相違点に係る事項は単に設計上の事項にすぎず、引用発明において上記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-27 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-19 |
出願番号 | 特願2001-72312(P2001-72312) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L) P 1 8・ 572- Z (H01L) P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 574- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 昌伸 |
特許庁審判長 |
稲積 義登 |
特許庁審判官 |
門田 かづよ 江成 克己 |
発明の名称 | 半導体装置 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 高橋 省吾 |