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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B65D |
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管理番号 | 1244975 |
審判番号 | 無効2010-800167 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-09-24 |
確定日 | 2011-09-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4332444号発明「染毛剤における二重構造エアゾール缶容器及びエアゾール缶容器に収納される内装パウチ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりの訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求及び答弁の趣旨 当事者双方の主張の全趣旨に照らすと、請求人は、本件特許の特許請求の範囲の全部の請求項に関し、それら請求項に係る発明の特許をいずれも無効とし、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めており、被請求人は、結論と同旨の審決を求めていると認める。 第2.手続の経緯 本件の主な手続を、整理して以下に示す。 1.特許出願:平成16年2月17日(特願2004-40616号) 2.設定登録:平成21年6月26日(特許第4332444号) 3.審判請求:平成22年9月22日(平成22年9月24日差出) 4.第一回訂正請求及び第一回答弁:平成22年12月13日 5.無効理由通知:平成23年1月14日(平成23年1月18日発送) 6.上申(請求人):平成23年2月16日(平成23年2月17日差出) 7.第二回訂正請求及び意見:平成23年2月17日 (第二回訂正請求がなされたので、第一回訂正請求は取り下げられた ものとみなす(特許法第134条の2第4項)。) 8.書面審理の申立(被請求人):平成23年3月23日 9.手続補正(第二回訂正請求):平成23年3月23日 10.第一回弁駁:平成23年3月28日 11.第二回答弁:平成23年5月2日 12.書面審理の申立(請求人):平成23年6月27日 13.第二回弁駁:平成23年6月27日 14.書面審理通知:平成23年7月6日(平成23年7月8日発送) 第3.当事者の主張 (1)請求人の主張の概要 審判請求書、平成23年3月28日付け審判事件弁駁書、及び平成23年6月20日付け審判事件弁駁書(第2回)等の記載を総合すると、請求人の主張は、第二回訂正請求による訂正後の本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明であるから、無効にすべきであるというものと認める。 なお、請求人は、第二回訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)が適法でないとの主張はしていない。 【証拠方法】 甲第1号証:国際公開第02/34636号 甲第2号証:特開平6-156555号公報 甲第3号証:特開平8-104357号公報 甲第4号証:特開平9-309177号公報 甲第5号証:再公表2003-91128号公報 甲第6号証:実願昭61-122261号(実開昭63-28684号) のマイクロフィルム (審判請求書19頁の「7.証拠方法」の欄には「実開昭63-2868 4号公報」と表記されているが、甲第6号証の写しとして添付された書 類からみて、「実願昭61-122261号(実開昭63-28684 号)のマイクロフィルム」が甲第6号証であると認める。) (以上無効審判請求書により提出) 甲第7号証:特許第4332444号公報(本件特許公報) 甲第8号証:特開2005-231644号公報(本件特許出願に係る 公開特許公報) (以上平成23年2月16日付けの上申書により提出。また、審判請求 書に添付された甲第5号証の写しは、正規の甲第5号証とは異なるも のであったので、正規の甲第5号証の写しが平成23年2月16日付 けの上申書に添付して提出された。) 甲第9号証:特開2001-179856号公報 甲第10号証:特開平1-213220号公報 (以上平成23年3月28日付けの審判事件弁駁書により提出) (2)被請求人の主張の概要 平成22年12月13日付け審判事件答弁書、平成23年2月17日付け意見書、平成23年5月2日付け審判事件答弁書(第2回)等の記載を総合すると、被請求人の主張は、概略、次のとおりと認める。 「本件訂正請求による訂正は適法であり、訂正後の本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、請求人が提出した証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。」 第4.本件訂正請求の適否についての判断 1.訂正の内容 被請求人が請求した本件訂正請求は、特許請求の範囲及び明細書を、平成23年2月17日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項は、以下のとおりと認める。 (1)特許請求の範囲について 《訂正事項1》 請求項1中の「染毛剤の第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の第二剤を充填した第二内装パウチ」を、「染毛剤が酸化染毛剤であって、染毛剤の強アルカリ性成分を含有する第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填した第二内装パウチ」と訂正する。 《訂正事項2》 請求項1中の「各々の内装パウチが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料」を、「第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料」と訂正する。 《訂正事項3》 請求項2を削除する。 《訂正事項4》 請求項3を削除する。 《訂正事項5》 請求項4を削除する。 《訂正事項6》 訂正前の請求項5を請求項2とし、訂正前の請求項5に相当する訂正後の請求項2中の「金属箔がアルミ箔からなり、酸変性熱可塑性接着樹脂層が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる」を、「前記酸変性熱可塑性接着樹脂が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる」と訂正する。 《訂正事項7》 訂正前の請求項5に相当する訂正後の請求項2中の「二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ」を、「染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ」と訂正する。 《訂正事項8》 訂正前の請求項5に相当する訂正後の請求項2中の「請求項2に記載された」を、「請求項1に記載された」と訂正する。 《訂正事項9》 訂正前の請求項6を請求項3とし、訂正前の請求項6に相当する訂正後の請求項3中の「過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填する第二内装パウチが、アルミ箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層をポリウレタン系接着剤にて積層した積層材料により形成される」を、「前記第二内装パウチを構成する積層材料が、アルミ箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層をポリウレタン系接着剤にて積層した積層材料により形成される」と訂正する。 《訂正事項10》 訂正前の請求項6に相当する訂正後の請求項3中の「請求項4に記載された」を、「請求項1に記載された」と訂正する。 《訂正事項11》 訂正前の請求項6に相当する訂正後の請求項3中の「二重構造エアゾール缶容器における第二内装パウチ」を、「染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ」と訂正する。 (2)発明の詳細な説明について 《訂正事項12》 本件特許明細書の段落番号[0016]中の 「内装パウチが金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂材料から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料から構成されることを特徴としている。そして、金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料が、金属箔層と酸変性熱可塑性接着樹脂層及びヒートシール性熱可塑性樹脂層から構成されてもよい。 また、金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料がポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂により積層接合され、積層接合が金属箔にポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂を押出して熱可塑性樹脂内面層を積層することにより行われ、あるいは積層接合が金属箔にポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂の粉末を付着させ当粉末を加熱溶融させて熱可塑性樹脂内面層を積層することにより行われることなどをも特徴とする。」を、 「第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴としている。」 と訂正する。 《訂正事項13》 本件特許明細書の段落番号[0017]中の「[1]及び[4]の発明を基本発明とし、」を、「[1]、[4]、[5]及び[7]の発明を基本発明とし、」と訂正する。 《訂正事項14》 本件特許明細書の段落番号[0018]中の 「[4][1]における二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチであって、各々の内装パウチが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料から構成されることを特徴とする、染毛剤においての二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 [5]金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料が、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層を介して積層接合されていることを特徴とする、[4]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 [6]積層接合が金属箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物を押出して熱可塑性樹脂内面層を積層接合することにより行われ、あるいは積層接合が金属箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物の粉末を付着させ」を、 「[4][1]における二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチであって、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴とする、染毛剤においての二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 [5]アルミ箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料が、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層を介して積層接合されていることを特徴とする、[4]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 [6]積層接合がアルミ箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物を押出して熱可塑性樹脂内面層を積層接合することにより行われ、あるいは積層接合がアルミ箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物の粉末を付着させ」 と訂正する。 《訂正事項15》 本件特許明細書の段落番号[0025]中の 「各々の内装パウチが金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂材料から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料から構成される」を、 「第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成される」 と訂正する。 《訂正事項16》 本件特許明細書の段落番号[0026]の記載全体を 「 酸化染毛剤の第一剤用内装パウチ及び第二剤用内装パウチそれぞれを同一エアゾール缶に収納する本発明においては、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されればよい。」 と訂正する。 《訂正事項17》 本件特許明細書の段落番号[0031]中の「金属箔」(3箇所)を、それぞれ「アルミ箔」と訂正する。 《訂正事項18》 本件特許明細書の段落番号[0032]中の「 本発明の新しいエアゾール缶方式の採用により、使用する内装パウチの構成材料のバリエーション(使用材料の組み合わせ)が広がり、従来の製品では使用できなかった、アルミ箔やバリア層を含まない単純な、いわゆるガス透過性の、透明構成も使用可能となる。」を削除する。 《訂正事項19》 本件特許明細書の段落番号[0036]中の 「下記の条件で、表2に示す内装パウチにて実施した。 *エアゾール缶タイプ:図2に図示のエアゾール缶1本タイプのもの」を、 「下記の条件で、表2に示す内装パウチにて実施した。 尚、実施例1?3は参考例である。 *エアゾール缶タイプ:図2に図示のエアゾール缶1本タイプのもの」 と訂正する。 2.本件訂正についての当審の判断 (1)訂正事項1、2について 訂正事項1、2は、共に請求項1の記載を訂正する事項である。 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲である、特許登録時における特許請求の範囲の請求項1に記載された「染毛剤」、「第一剤」及び「第二剤」を、それぞれ「染毛剤が酸化染毛剤であって」、「染毛剤の強アルカリ性成分を含有する第一剤」及び「染毛剤の過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤」と技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。これら技術的事項は、願書に最初添付した特許請求の範囲の請求項7などに記載されているから、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「原明細書等」という。)に記載された事項といえる。そして、これら技術的限定をすることは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、訂正事項1は適法である。 訂正事項2は、訂正前の請求項1においては、第一内装パウチ及び第二内装パウチが、いずれも「金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料」から構成されたものであったのを、 第一内装パウチについては、「第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料」から構成されるものであると技術的に限定し、 第二内装パウチについては、「第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料」から構成されるものであると技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。 これら技術的事項は、願書に最初添付した明細書の段落[0027]?[0029]及び[0036]などに記載されているから、原明細書等に記載された事項の範囲内のものである。そして、これら技術的限定をすることは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、訂正事項2は適法である。 (2)訂正事項3?5について 訂正事項3?5は、訂正前の請求項2ないし4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、適法である。 (3)訂正事項6?8について 訂正事項6?8は、訂正前の請求項5の記載を訂正する事項であり、訂正事項1?5の訂正に伴って、明瞭でない記載の釈明を行うものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、適法である。 (4)訂正事項9?11について 訂正事項9?11は、訂正前の請求項6の記載を訂正する事項であり、訂正事項1?5の訂正に伴って、明瞭でない記載の釈明を行うものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、適法である。 (5)訂正事項12?19について 訂正事項12?19は、発明の詳細な記載を訂正する事項であり、訂正事項1?11による特許請求の範囲の訂正に伴って、明瞭でない記載の釈明を行うものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、適法である。 第5.無効理由についての当審の判断 1.本件発明 上記のとおり、本件訂正請求は適法であるから、平成23年2月17日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりの訂正を認める。よって、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定される発明である。 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、以下のとおりに分説できると認める。 「A.染毛剤が酸化染毛剤であって、 B.染毛剤の強アルカリ性成分を含有する第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填した第二内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチであって、 C.第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、 D.第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴とする、 E.染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。」 2.無効理由通知に記載された無効理由について 平成23年1月14日付けで当審が通知した無効理由は、本件の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び同第2号に規定する要件を満たしていないというものである。当審が通知したこの無効理由は、本件訂正請求によって特許請求の範囲及び明細書の記載が訂正されたことにより、解消されたと認める。 3.甲第1、3、5、6及び9号証に記載された発明 (1)甲第1号証の4頁16行?5頁10行、5頁25?28行及び図1の記載などからみて、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認める。(以下、「甲1発明」という。請求項1の分説に合わせて分説して示す。) 「a.染毛剤であって、 b.染毛剤に用いられる二種類の粘性内容物をそれぞれ充填した袋(16)を一つのエアゾール容器(4)に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる収納・吐出システム(2)における袋(16)であって、 cd.袋(16)は、箔で強化されたポリエチレンである、 e.染毛剤におけるエアゾール容器(4)に収納される袋(16)。」 (2)甲第3号証の2頁左欄42?47行(段落0004)、2頁右欄41行?3頁左欄19行(段落0010)及び図1の記載などからみて、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認める。 「c’.外層から順に、熱可塑性樹脂層(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層10及び二軸延伸ナイロンフィルム層20)、アルミ箔(アルミニウム箔層30)、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層(酸変性線状低密度ポリエチレン層40)、熱可塑性樹脂内面層(多層フィルム層(シーラント層)50)を積層した積層材料から構成され、強アルカリ性の内容物に対応可能な包装体。」 (3)甲第5号証の発行日は平成17年10月27日であるが、甲第5号証と同じ内容が掲載されている国際公開第2003/091128号は、本件特許の出願日前である平成15年11月6日に国際公開されている。甲第5号証の2頁2?9行(請求項1。国際公開第2003/091128号の89頁2?8行に対応)、2頁39?41行(請求項11。同国際公開90頁4?5行に対応)、3頁1?4行(請求項15。同国際公開90頁13?15行に対応)、15頁28?45行(同国際公開32頁23行?33頁20行に対応)、24頁40?46行(同国際公開54頁2?10行に対応)、30頁1?39行(同国際公開66頁1行?67頁25行に対応)、図1、図20及び図40の記載などからみて、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)及び技術的事項が記載されていると認める。 「a’.染毛剤が2液反応型染毛剤であって、 b’.内袋の一方の収納部に充填される内容物がアルカリ性成分を含有する染毛第1剤であり、他方の収納部に充填される内容物が過酸化水素を含有する酸化剤を含む染毛第2剤であり、 c”.内袋は、外層から順に、アルミ蒸着層、耐酸性層であるポリエチレンテレフタレート層232、耐アルカリ性層であるポリアミド層231から構成され、 d’.内袋の一方の収納部と他方の収納部とで、耐酸性層と耐アルカリ性層の順序は逆でも良い、 e’.2液反応型染毛剤におけるエアゾール容器1に収納される内袋。」 「d”.内袋が、上収納部材85aと下収納部材85bとからなり、上下収納部材85a、85bが、それぞれ充填される内容物に対して安定な材質で形成される」 (4)甲第6号証の明細書及び図面の記載からみて、甲第6号証には、次の発明が記載されていると認める(以下、「甲6発明」という。)。 「a”.しらが染めであって、 b”.しらが染めに用いられる二種類の噴出物をそれぞれ充填したインナーバッグ3を、一つの外筒容器1に収納して、二種の噴出物を同時に噴出させうる二重エアゾール容器に収納されるインナーバッグ3であって、 (cd)’ インナーバッグ3は、ラミネート製のシートを相互に重ね合わせて、その上下、左右の縁部をヒートシール等の方法で接着されている、 e”.二重エアゾール容器に収納されるインナーバッグ3。」 (5)甲第9号証の4頁左欄34?42行の記載などからみて、甲第9号証には、次の発明が記載されていると認める。 「a”.ヘアカラー製品が酸化染毛剤であって、 b”.染毛剤のアルカリ性成分を含有する第1剤を充填した包装体と、染毛剤の過酸化水素を含有する第2剤を充填した包装体であって、 (cd)”.最外層から順番にPET/アルミニウム/PET/PEまたはPPの4層構造からなる包装体。」 4.本件発明1と甲号各発明との対比・判断 (1)甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。 《相違点》 本件発明1では、第一内装パウチ及び第二内装パウチが、構成要件B、C、Dの組合せを備えている、すなわち、 (B’C).染毛剤の強アルカリ性成分を含有する第一剤を充填した第一内装パウチは、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、かつ、 (B”D).染毛剤の過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填した第二内装パウチは、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成される、 のに対し、甲1発明の二種類の粘性内容物をそれぞれ充填した袋は、いずれも箔で強化されたポリエチレンである点。 (2)甲1発明との相違点の判断 上記相違点について検討すると、甲第1、3、5、6又は9号証のいずれにも、構成要件B、C、Dの組合せは記載されておらず、かつ、示唆されてもいない。そうすると、甲1発明に対して、甲第1、3、5、6又は9号証に記載された技術的事項、又はこれらに示唆された技術的事項を適用しても、本件発明1の構成要件B、C、Dを組合せた構成を得ることはできない。 (3)甲5発明、甲6発明との対比・判断 本件発明1と甲5発明、又は本件発明1と甲6発明とを対比すると、いずれの場合も、少なくとも、上記(2)の相違点と同様に、構成要件B、C、Dの組合せを備えていない点で相違する。そして、上記(2)で述べたとおり、この相違点は、甲第1、3、5、6又は9号証のいずれにも記載も示唆もされていない。したがって、甲5発明、又は甲6発明に対して、甲第1、3、5、6又は9号証に記載された技術的事項、又はこれらに示唆された技術的事項を適用しても、本件発明1の構成要件B、C、Dを組合せた構成を得ることはできない。 (4)その他の甲号証について 甲第3号証、甲第9号証には、二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ、又はそれに相当する事項が記載されていないから、本件発明1と対比すること自体に無理があるし、仮に、対比した場合でも、少なくとも、上記(2)の相違点と同様な点で相違する。そして、上記(2)で述べたとおり、この相違点は、甲第1、3、5、6又は9号証のいずれにも記載も示唆もされていないから、甲第1、3、5、6又は9号証に記載された発明に基づいて、本件発明1の構成要件B、C、Dを組合せた構成を得ることはできない。 さらに、甲第1、3、5、6及び9号証に記載された事項に加えて、請求人が提出した本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第4号証及び甲第10号証に記載された事項を合わせて検討しても、それらに基づいて本件発明1の構成要件B、C、Dを組合せた構成を得ることはできない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、甲第1、3、5、6及び9号証に記載された事項に基づいて、当業者が本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。また、本件の請求項2又は3に係る発明は、いずれも本件発明1の構成要件をすべて備える発明であるから、これら発明も、甲第1、3、5、6及び9号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 第6.むすび 以上のとおり、本件訂正請求は適法であり、当審が通知した無効理由は、本件訂正請求によって解消されており、かつ、本件訂正請求後の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲各号証に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、請求人が主張する無効理由は、いずれも理由がない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 染毛剤における二重構造エアゾール缶容器及びエアゾール缶容器に収納される内装パウチ 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器及び当エアゾール缶容器に収納される内装パウチに関し、具体的には、酸化染毛剤の第一剤を充填した第一内装パウチ及び第二剤を充填した第二内装パウチを一つの缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器及びその内装パウチに係わるものである。 【背景技術】 【0002】 染毛剤は、以前では中高年者の白髪染めに専ら使用されてきたが、最近では、社会生活におけるファッション性への強い志向から、毛染めが男女を問わずに若年者に広く普及して日々汎用される習慣となって、染毛剤が非常に重用されるようになり、その容器に対する需要と改良の要望も特に高くなっている。 【0003】 染毛剤としては、染毛性や染色の保持性などから酸化染毛剤が使用されているが、空気中の酸素を酸化剤として利用する一剤式のものは使用が簡便であっても酸化力が弱く染毛性が乏しい問題点がある。このため酸化染毛剤としては二剤式のものが主に使用され、この酸化染毛剤は、強アルカリ性成分を主剤とする染毛剤の第一剤と酸化性の酸性成分を主剤とする染毛剤の第二剤とからなり、染毛剤の第一剤の容器と染毛剤の第二剤の容器とを別々の容器として組み合わせて販売され、消費者が使用時に第一剤と第二剤とを混合して染毛する形態となっている(特許文献1を参照)。 【0004】 しかし、消費者が使用時に第一剤と第二剤とを別途用意したトレーなどにおいて混合し、クリーム状やゼリー状の染毛剤として染毛する形態とならざるをえないので、正確な量比の混合が困難で大まかな量比の混合比で使用されるため所定の染色力が得られ難く染色むらも生じやすく、染毛剤の混合時に染毛剤により手指や衣服を汚すこともあり、なにより消費者にとって第一剤と第二剤とを混合して使用することが煩わしい、などの多くの問題点を有している。 【0005】 このため、内容物を充填した容器をそれぞれ二本のエアゾール缶に収納して一体とし、第一剤と第二剤とを圧力ガスにより同時に吐出混合する染毛剤容器が開発され(特許文献2を参照)、製品化されて市販されており消費者の利便性から見て優れた製品であって、染毛剤により手指や衣服を汚す惧れや、消費者にとって第一剤と第二剤とを混合して使用する煩わしさが解消され、ファッション志向に合った手指によるワンタッチ染毛が可能となったが、二剤の両液が一定の量比に吐出しているとはいえず、また、エアゾール缶の二缶を使用しているため高コストにならざるをえないという欠点をなお有している。 【0006】 一方、二種の液体を充填した二種の袋やパウチなどの内装容器(以下、「内装パウチ」という。)を1本のエアゾール缶に収納して噴霧するエアゾール型容器は、以前から知られている(例えば、特許文献3を参照)。 【0007】 しかし、酸化染毛剤においては、第一剤は染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分からなり、第一剤の成分が保存中に空気中の酸素と接触すると、第一剤が化学的に変質し染毛機能も低下し、酸素との接触を続けると染毛不能となってしまうので、高度の酸素遮蔽性(バリア性)が要求され、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失を阻止する必要もあり、内装パウチ本体において高いガス遮蔽性機能を備えることが必須となる。また、染毛剤の強いアルカリ性成分による化学的な厳しい影響を耐える、内装パウチにおける層材料の腐食や層間剥離(デラミネーション:略称デラミ)の抵抗性も実用上重要であるが、かかる耐性を備えた内装パウチは知られていなかった。 第二剤は過酸化水素を主要成分とする酸化性の酸性成分からなり、酸化剤の過酸化水素の分解に由来して発生した酸素による内部膨張圧への抵抗性あるいは発生酸素揮散性が要求され、内容物の内装パウチ外への揮散による消失を阻止することも必須であり、中程度のガス透過性とガス遮蔽性の相反する性質を有する必要性も内在している。 【0008】 以上に記述したように、最近の日常のファッション志向により、非常に需要の高くなっている酸化染毛剤の容器においては、 1.酸化染毛剤の二剤式に由来する、一定比率量の吐出の困難性や、第一剤と第二剤とを混合して使用する煩わしさなどの問題点に対する簡易で安価な解決手法への要求などは、未だ実現されていない。 2.強アルカリ性成分からなる第一剤の内装パウチにおける、内装パウチ内へ侵入する酸素による染色機能の劣化を阻止するための高度の酸素遮蔽性と、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失を阻止するための高いガス遮蔽性機能を備えることが必須となり、また、染毛剤の強いアルカリ性成分による化学的な厳しい影響を耐える、内装パウチなどにおける層材料の腐食や層間剥離(デラミ)の抵抗性も重要である。さらに、酸化性の酸性成分からなる第二剤の内装パウチにおける、発生酸素による内部膨張圧への抵抗性あるいは発生酸素揮散性が要求され、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失を阻止することも必須であり、ガス透過性とガス遮蔽性の相反する性質を有する必要性も内在しているが、これらの要求や必要性などは充分には応えられてはいなかった。 【0009】 【特許文献1】特開2000-226036号公報(特許請求の範囲の請求項1,段落0001?0003) 【特許文献2】特開平10-85031号公報(要約,特許請求の範囲の請求項1及び2,図1) 【特許文献3】実開昭47-11809号公報(実用新案登録請求の範囲,第1図) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本願の発明は、1.従来の酸化染毛剤の二剤式に由来する、一定比率量での混合の困難性や第一剤と第二剤とを混合して使用する煩わしさなどの問題点に対する簡易で安価な解決手法への要求に応えること、2.二剤式の酸化染毛剤の容器において、第一剤の内装パウチ内へ侵入する酸素による第一剤の化学的な変質と染色機能の劣化を阻止するための高度の酸素遮蔽性と、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失を阻止するための高いガス遮蔽性機能及び染毛剤の強いアルカリ性成分による化学的な厳しい影響に耐える、層材料の腐食や層間剥離の抵抗性、さらには、3.第二剤の内装パウチにおける、発生酸素による内部膨張圧への抵抗性あるいは発生酸素のガス透過性、内容物成分の内装パウチ外への揮散阻止のためガス遮蔽性、などの要求や必要性に充分に応えることを、発明が解決すべき課題とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、二剤式の酸化染毛剤用容器においては、二剤を同時にワンタッチで吐出混合できるところの、エアゾール缶タイプの容器の優秀性と利便性からして、その採用が本発明の課題の解決に不可欠であることを認識して、エアゾール缶における染毛剤の二剤の収納態様が基本的に重要であることを踏まえて、二剤を充填した各々の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納して、併せて、多層材料の耐アルカリ性及び加圧下でのエアゾール缶内で発生する酸素移動の観点から、個々の内装パウチの材料を詳細に吟味して選択すれば、基本的に本願の発明の課題を解決できることを知見するに至り、後述する実施例と比較例におけるデータの検討を参酌して、本願の発明を創出することができた。 【0012】 本願の発明の構成における基本的な特徴は、酸化染毛剤の第一剤および第二剤それぞれを充填した、各々のパウチなどの二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納して、二重構造のエアゾール缶となし、二剤の一定の比率量の混合を行うことができ、かつ、簡易に安価にそのような酸化染毛剤エアゾール容器を製造できることである。 段落0005?0007に前述したように、二種の液体を充填した二種の内装パウチを2本のエアゾール缶にそれぞれ収納して一体化した酸化染毛剤容器は既に提案されているが、酸化染毛剤の二剤を充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納した酸化染毛剤容器は未だ実用化されていない。その最大の理由は、特に第一剤に対して耐性のある内装パウチが知られていないことにある。 【0013】 さらに、本願の発明のように、酸化染毛剤の第一剤および第二剤それぞれを充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納した場合には、酸化性の酸性成分からなる第二剤の内装パウチから発生する酸素がエアゾール缶内の加圧ガスに混じり、その酸素が同じエアゾール缶内の第一剤の内装パウチに侵入して第一剤の化学的な変質を生じ染色力も劣化させてしまうので、特に、第二剤における酸化剤の過酸化水素の分解に由来する発生酸素は化学活性の強い発生期の酸素を含みエアゾール缶の密閉系において第一剤中に侵入すると第一剤を強く変質してしまうので、第一剤又は第二剤の内装パウチに酸素遮蔽性の材料を使用する必要性が生じ、そのために金属箔などを使用した積層材料を採用すると、積層材料の腐食や層間剥離などの問題が生じてしまい、それ故に、酸化染毛剤の第一剤及び第二剤それぞれを充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納した商品の実用化が困難であったから、酸化染毛剤の二剤を充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納した酸化染毛剤容器は未だに実現できなかったと考えられる。 【0014】 段落0011に前述したように、酸化染毛剤の特殊な二種の成分を充填する二種の内装パウチを1本のエアゾール容器に収納する場合の、これらの内装パウチの開発によって、当エアゾール型酸化染毛剤容器の本発明が実現できたのである。また、本願の発明においては、後述するように二剤のための種々の内装パウチの組み合わせを提案し、従来のエアゾール型容器からは別異の卓越した機能性と実用性及び効果が奏されるものである。 本願の発明においては、酸化染毛剤の第一剤及び第二剤それぞれを充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納する場合に、酸化性の酸性成分からなる第二剤の内装パウチから揮散する酸素がエアゾール缶内の加圧ガスに混じり、その酸素が同じエアゾール缶内の第一剤の内装パウチに侵入して第一剤の化学的な変質を生じ染色力も劣化させてしまうことを防止するために、第一剤及び/又は第二剤の内装パウチに金属箔などを使用した積層材料からなる酸素遮蔽性の内装パウチを採用し、さらに、酸化染毛剤の強アルカリ性成分や酸化性成分による、その内装パウチを構成する積層材料の腐食や層間剥離などの問題を、段落0016などに記述する特定の手法により阻止しているのである。 【0015】 本願の発明は、酸化染毛剤の第一剤及び第二剤それぞれを充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納することを第一の基本的特徴とし、酸化染毛剤の強アルカリ性成分や酸化性成分による、その積層材料の腐食や層間剥離などの問題を特定の材料と積層構造による内装パウチの採用により阻止していることを、第二の基本的な特徴としている。本願の発明においては、上記の第一及び第二の基本的な特徴を併せて有し、また、第一剤および第二剤の内装パウチが1本のエアゾール缶に収納されているので、同一の加圧ガスにより加圧噴射されることにより、第一剤および第二剤の一定の比率量の混合を行うことができ、かつ、簡易に安価に酸化染毛剤エアゾール容器を製造できるという特徴も付加的に内在するのであるから、本願の発明の構成は本質的に従来の技術とは相違しそれから容易には予見し得ないものであって、二剤式の酸化染毛剤容器として顕著に際立つものである。 【0016】 本願の発明は、具体的には、酸化染毛剤の第一剤および第二剤を充填した各々の容器を内装パウチとなして、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴としている。 このような構成の採用により、酸化染毛剤の第一剤および第二剤を充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納する場合に、酸化性の酸性成分からなる第二剤の内装パウチから発生する酸素がエアゾール缶内の加圧ガスに混じり、その酸素が同じエアゾール缶内の第一剤の内装パウチに侵入して第一剤を化学的に変質したり染色力を劣化させてしまうことを防止することができ、併せて、第一剤又は第二剤の内装パウチに金属箔などを使用した積層材料からなる酸素遮蔽性の材料を採用して、酸化染毛剤の強アルカリ性成分や酸化性成分による、その積層材料の腐食や層間剥離などの問題が生じることを阻止しているのである。 【0017】 以上において、発明の課題を解決するための手段として、本願の発明の基本的な構成に沿って、本願の発明を概観的に記述した。 ここで、本願の発明全体を俯瞰すると、本願の発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]、[4]、[5]及び[7]の発明を基本発明とし、それ以外の発明は、基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、発明群全体をまとめて「本発明」という。) 【0018】 [1]染毛剤の第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の第二剤を充填した第二内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうることを特徴とする、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器。 [2]エアゾール缶の加圧ガスとして窒素ガス、二酸化炭素ガス、亜酸化チッソガス、アルゴンガスの一種または複数種のガスが封入され、二種の充填物を一定の比率量にて吐出させうることを特徴とする、[1]においての二重構造エアゾール缶容器。 [3]第一剤用の第一内装パウチをステムに設けた第一通路に接続可能とし、第二剤用の第二内装パウチをステムに設けた第二通路に接続可能とし、第一剤用の第一通路と第二剤用の第二通路とは接触しないように設けられて、ステムの先端まで第一剤と第二剤を混合することなく分離状態で吐出することができることを特徴とする、[1]又は[2]における二重構造エアゾール缶容器。 [4][1]における二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチであって、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴とする、染毛剤においての二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 [5]アルミ箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料が、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層を介して積層接合されていることを特徴とする、[4]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 [6]積層接合がアルミ箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物を押出して熱可塑性樹脂内面層を積層接合することにより行われ、あるいは積層接合がアルミ箔に酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する組成物の粉末を付着させ当粉末を加熱溶融させて熱可塑性樹脂内面層を積層結合することを特徴とする、[5]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチを形成するシート材料の製造方法。 [7]染毛剤が酸化染毛剤であって、第一内装パウチに強アルカリ性成分を含有する第一剤が収容され、第二内装パウチに過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤が収容されることを特徴とする、[4]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 [8]金属箔がアルミ箔からなり、酸変性熱可塑性接着樹脂層が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、[5]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 [9]過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填する第二内装パウチが、アルミ箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層をポリウレタン系接着剤にて積層した積層材料により形成されることを特徴とする、[7]においての二重構造エアゾール缶容器における第二内装パウチ。 [10]内装パウチが、オレフィンと環状オレフィンとの非晶質ないしは低結晶性共重合体からなる第一層と酸素遮蔽性熱可塑性樹脂からなる第二層を有す積層材料から形成されることを特徴とする、[1]においての二重構造エアゾール缶容器における内装パウチ。 【発明の効果】 【0019】 本発明においては、二剤式の酸化染毛剤の容器として、酸化染毛剤の第一剤及び第二剤それぞれを充填した各々の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納して、二重構造のエアゾール缶となしたので、二剤の一定の比率量の混合を手指のワンタッチ操作で簡便に行うことができ、そのため所定の染色力が得られ染色むらも生じなく、染毛剤の混合時に染毛剤により手指や衣服を汚す惧れもなく、なにより消費者にとって第一剤と第二剤とを混合して使用する煩わしさも解消され、かつ、簡易に安価にその様な酸化染毛剤エアゾール容器を製造できる、などの多くの効果を奏している。 併せて、染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分からなる第一剤においては、酸素との接触により第一剤が化学的に変質し染毛機能も低下することはなく、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失もなく、また、染毛剤の強いアルカリ性成分による化学的な厳しい影響による内装パウチなどにおける層材料の腐食や層間剥離の惧れもない。さらに、過酸化水素を主要成分とする酸化性の酸性成分からなる第二剤においては、酸化剤の過酸化水素の分解に由来する発生酸素による内部膨張圧や内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失も生じない。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 本発明については、本発明の課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成に沿って以上において詳述したが、以下においては、段落0018にまとめて記載した本発明群の発明についての実施の形態を、図面を参照しながら、具体的に詳しく説明する。 【0021】 1.二剤式酸化染毛剤収納エアゾール缶について (1)従来のエアゾール缶 段落0005において記述した、従来において実用化されている二剤式酸化染毛剤収納エアゾール缶は、図1に簡略図として例示されるところの、二剤を充填した内装容器をそれぞれ二本のエアゾール缶に収納して一体とし、第一剤と第二剤とをエアゾール式に窒素ガスなどの圧力ガスにより同時に吐出混合する染毛剤容器である。 【0022】 (2)本発明のエアゾール缶 本発明のエアゾール缶は、図2に簡略図として例示されるところの、染毛剤の第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の第二剤を充填した第二内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、窒素ガスなどの圧力ガスにより二種の充填物を同時に吐出させうる、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器である。二つの内装パウチは図示されているように、第一剤用の第一内装パウチをステムに設けた第一通路に接続可能とし、第二剤用の第二内装パウチをステムに設けた第二通路に接続可能とし、第一剤用の第一通路と第二剤用の第二通路とは接触しないように設けている。第一剤は第一通路を通して充填し、第二剤は第二通路を通して充填する。ステムの先端まで第一剤と第二剤を混合することなく分離状態で吐出することができる。 そして、消費者の指先のワンタッチ操作により、二剤が同時に、一定の比率量にて混合される。 【0023】 第一剤および第二剤の内装パウチが1本のエアゾール缶に収納されているので、同一の加圧ガスにより加圧噴射されて、一定の比率量にて、同時に吐出させうるものである。第一剤と第二剤を混合して酸化染毛剤とし、髪に塗布する際、第1剤と第二剤の使用量が異なることから、一定の比率量で安定して吐出できることが必要であるからである。 また、二剤の内装パウチが1本のエアゾール缶に収納されているので、二液混合アダプターも不要で、簡易に安価にエアゾール缶を製造できる。 エアゾール缶の加圧ガスとしては、通常の窒素ガス又は二酸化炭素ガスあるいは亜酸化チッソガスやアルゴンガスなどの一種または複数種のガスが封入される。 なお、エアゾール缶の吐出口に櫛やブラシ歯を一体的に取り付けて、吐出混合された染毛剤をそれらに塗りつけて頭髪を梳くようにして、染毛するようにしてもよい。 【0024】 2.第一及び第二の内装パウチについて (1)収納剤 二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチにおいては、第一の内装パウチに染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分からなる第一剤が収納され、第二の内装パウチに過酸化水素を主要成分とする酸化性の酸性成分からなる第二剤が収納される。 強アルカリ性成分からなる第一剤においては、アンモニア及びフェニレンジアミン類やアミノフェノール類などの酸化染料中間体、並びに4-ニトロ-o-フェニレンジアミンや1,4-ジアミノアントラキノンなどの直接染料が配合されており、第一剤の成分が保存中に空気中の酸素と接触すると、化学的な変質を生じ染毛機能も低下し、酸素との接触を続けると染毛不能となってしまう。 酸化性の酸性成分からなる第二剤においては、酸化剤の過酸化水素及びフェナンセチンやEDTAなどの安定剤やpH調整剤が配合されている。 【0025】 (2)内装パウチの形成材料 内装パウチの形成材料においては、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成される。少なくともいずれかに金属箔が使用されれば、第二剤からの酸素が第一剤中へ侵入することを阻止できる。 酸化染毛剤の二剤を充填した二種の内装パウチを1本のエアゾール缶に収納した場合には、酸化性の酸性成分からなる第二剤の内装パウチから発生する酸素がエアゾール缶内の加圧ガスに混じり、その酸素が同じエアゾール缶内の第一剤の内装パウチに侵入して第一剤の化学的な変質を生じ染色力も劣化させてしまうので、第一剤及び第二剤の内装パウチに酸素遮蔽性の材料を使用することが好ましく、そのために金属箔などを使用した積層材料を採用する(内装パウチの形成材料の使用態様として、「使用態様1」と称す。段落0034の表1を参照。)。 金属箔としては、アルミ箔や鉄箔などが使用されるが、加工性や耐腐食性および経済性などの観点からアルミ箔が最適であり、箔の厚さは5?100μm程度内で適宜に設定される。金属箔の表面に熱可塑性樹脂の外層保護材を積層するのが好ましい。また、金属箔の表面にエポキシなどのコート膜を設けてもよい。 なお、酸素遮蔽性の高いプラスチック材料を採用すれば、例えば、金属箔を使用しない金属蒸着プラスチックフィルムでもよい。 【0026】 酸化染毛剤の第一剤用内装パウチ及び第二剤用内装パウチそれぞれを同一エアゾール缶に収納する本発明においては、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されればよい。 【0027】 金属箔を用いる具体的な態様としては、金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料が使用され、金属箔層と酸変性熱可塑性接着樹脂層及びヒートシール性熱可塑性樹脂層から構成されることが好ましい。金属箔がアルミ箔からなり、ヒートシール性熱可塑性樹脂層がポリオレフィン系樹脂からなり、酸変性熱可塑性接着樹脂層が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂からなることが好適である。 内装パウチの構成の具体例としては、外層材(PET単層又はナイロン単層あるいはPETとナイロンの多層)/アルミ箔/接着性変性ポリオレフィン/内面ポリプロピレンである。 【0028】 酸化染毛剤における強アルカリ性成分などによるデラミを防止するには特定の接着剤層が必要で、本発明では、この問題への対応として特定の接着剤である酸変性熱可塑性樹脂接着剤、特に無水マレイン酸グラフトポリエチレン樹脂など、を採用して染毛剤の使用前の保存中におけるデラミを効率的に充分に阻止するものである。通常要求される40℃-6ケ月の保存においても、デラミやアルミ箔の腐食を生じず良好な耐内容品性を示す。 酸変性熱可塑性樹脂接着剤としては、遊離カルボン酸やカルボン酸エステルあるいはカルボン酸アミドやカルボン酸無水物などに基づくカルボオキシ基を有する熱可塑性樹脂、及びこの樹脂と他の熱可塑性樹脂との組成物(ブレンド)なども使用されうるが、マレイン酸やアクリル酸などのカルボン酸で化学変性したポリオレフィン、及び、無水マレイン酸や無水イタコン酸などのカルボン酸無水物によるカルボキシル基に由来する原子団を有すエチレン系不飽和単量体をグラフトしたポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂が好適に使用される。特に、接着機能の観点から、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)他)が好ましい。 【0029】 過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填した第二剤用内装パウチにおいては、第一剤の場合より収納剤による層間剥離作用(デラミ)が弱いので、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層を用いるとドライラミネーションでも使用でき、アルミ箔とPET層をポリウレタン系接着剤にて積層した積層材料により形成することもできる(使用態様4;表1を参照)。 【0030】 内装パウチが、金属箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料の代わりに、オレフィンと環状オレフィンとの非晶性ないしは低結晶性共重合体(いわゆるCOC)からなる第一層と酸素遮蔽性熱可塑性樹脂からなる第二層を有する積層材料から形成されることも可能である。 COCは通常の容器の層構成材料として既に知られているものであり、オレフィンと環状オレフィンとの非晶質ないしは低結晶性共重合体(COC)を共重合するための、オレフィンとしては、エチレンが好適であり、他にプロピレン,1-ブテン,1-ペンテン,1-ヘキセン,1-オクテン,3-メチル-1-ペンテン,1-デセンなどの炭素数3?20のα-オレフィンが、単独あるいはエチレンとの組み合わせで使用され、環状オレフィンとしては、基本的には、エチレン性不飽和結合とビシクロ環とを有する脂環族炭化水素化合物、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン骨格を有する炭化水素化合物が使用されるが、トリシクロ[4,3,0,1^(2,5)]-3-デセンおよびテトラシクロ誘導体やその他の誘導体、さらには置換基を有すこれらの化合物も適宜に使用できる。 COCは、10?50%の環状オレフィンと残余のオレフィンから形成され、ガラス転移点が5?200℃であることが成形性や接着性あるいは水分遮蔽性などの観点から好ましい。 【0031】 (3)内装パウチ形成材料の製法 内装パウチ形成材料の製法の好ましい例としては、アルミ箔と熱可塑性樹脂内面層からなる積層材料がポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂により積層接合され、(イ)積層接合がアルミ箔にポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂を押出して熱可塑性樹脂内面層を積層することにより行われ、あるいは(ロ)積層接合がアルミ箔にポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂の粉末を付着させ当粉末を加熱溶融させて熱可塑性樹脂内面層を積層することにより行われる。 (イ)の方法は押出コートラミネート法であり、ポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂を押出してから熱可塑性樹脂内面層を積層する、あるいはポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂と熱可塑性樹脂内面層を共押出しして積層する。 (ロ)の方法は粉末コートラミネート法であり、ポリオレフィン系熱可塑性接着樹脂の粉末を撒布や静電塗布により付着させ、当粉末を高周波加熱などにより加熱溶融させて熱可塑性樹脂内面層を積層する。 【0032】 第一剤の内装パウチ形成材料として、従来のポリウレタン樹脂のような接着剤によるドライラミネーションによる材料を使用すると、短期間で層間剥離(デラミ)が発生してしまい、エアゾール缶を実用化できない。この問題点は主として、ウレタン系の接着剤が染毛剤における第一剤の強アルカリ性成分などの滲出により接着機能が劣化されるために生じるものである。 【0033】 以上において詳述した内装パウチの形成材料の使用態様についてまとめると、表1のとおりとなる。 【0034】 【表1】 ![]() 【実施例】 【0035】 以下において、各実施例によって、各比較例を対照して図面を参照しながら、本発明を実例として具体的に示すが、以下の実施例は、本発明及びその範囲をより明瞭にするためのものである。 【0036】 [実施例-1?4] 酸化染毛剤の第一剤を充填した第一剤用内装パウチ及び染毛剤の第二剤を充填した第二剤用内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器を使用した。下記の条件で、表2に示す内装パウチにて実施した。 尚、実施例1?3は参考例である。 *エアゾール缶タイプ:図2に図示のエアゾール缶1本タイプのもの *エアゾール缶の加圧ガス:窒素ガス *第一剤:強アルカリ性成分 アンモニア及びフェニレンジアミン類やアミノフェノール類などの酸化染料中間体、並びに4-ニトロ-o-フェニレンジアミンや1,4-ジアミノアントラキノンなどの直接染料を配合 *第二剤:酸化性の酸性成分 酸化剤の過酸化水素及びフェナンセチンやEDTAなどの安定剤やpH調整剤を配合 *アルミ箔構成: 外層材-PET(12μm)/アルミ箔(9μm)/接着性変性ポリオレフィン(5μm)/内面材-ポリプロピレン(PP)(50μm) *透明構成: 外層材-ナイロン(15μm)/内面材-PP(50μm) *押出コートラミ法:段落0031に記載 *粉末コートラミ法:段落0031に記載 *PET中間層を使用するドライラミ構成: PET(12μm)/アルミ箔(9μm)/ウレタン系接着剤/PET(12μm)/PP(50μm) *保存条件:40℃-75%RHで6ヶ月間長期保存 【0037】 【表2】 ![]() 【0038】 [比較例-1] 下記の条件以外は、実施例-1と同様に行った。 *エアゾール缶:図1に図示の従来のエアゾール缶2本タイプのもの *第一剤用内装パウチ:PP(80μm) *第二剤用内装パウチ:PP(80μm) 【0039】 [比較例-2,3] 表3に記載のパウチ構成にて、実施例-1と同様に行った。 【0040】 【表3】 ![]() 【0041】 [評価項目および評価結果] 保存完了後に、各エアゾール缶の吐出状況と染毛性及び各エアゾール缶における内装パウチの腐食とデラミの有無を評価した。評価結果を表4に示す。 【0042】 【表4】 ![]() 【0043】 [実施例と比較例の結果の考察] 以上の各実施例及び各比較例を対照すると、本発明のエアゾール缶においては、6ケ月保存後も吐出状況は良好で、第一剤及び第二剤を一定の比率量にて吐出混合でき、エアゾール缶1本タイプでも染毛性は良好で、内装パウチの腐食・デラミは発生しなかった。 比較例-1のエアゾール缶二本タイプでは、6ケ月保存後は、染毛性は普通で、内装パウチの腐食・デラミは発生しなかったが、第一剤及び第二剤の吐出がやや不良で、吐出混合が一定比率量にて行えなかった。そのため、染毛性も充分とはいえない。 比較例-2では、実施例-1と同様に、二種の内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器を使用したが、第一剤用内装パウチとしてPET中間層を使用したドライラミのアルミ箔を用いたので、第一剤用内装パウチにデラミが発生して、そのために、吐出状況と染毛性がやや不良となり、比較例-3では、実施例-1と同様に、二種の内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器を使用したが、両内装パウチに透明構成を用いたので、第一剤内装パウチが第二剤内装パウチからの揮散する酸素によって、化学的に劣化変質してしまい、染毛性が不良となった。 各実施例と各比較例との対照により、本発明においては、各構成要素に顕著な有意性が有り、また、酸化染毛剤のエアゾール缶として実用的に優れていることが実証されている。 【図面の簡単な説明】 【0044】 【図1】従来の酸化染毛剤の二缶式エアゾール缶容器を示す簡略断面図である。 【図2】本発明における酸化染毛剤の一缶式エアゾール缶容器を示す簡略断面図である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 染毛剤が酸化染毛剤であって、染毛剤の強アルカリ性成分を含有する第一剤を充填した第一内装パウチ及び染毛剤の過酸化水素を含有する酸性成分からなる第二剤を充填した第二内装パウチを一つのエアゾール缶に収納して、二種の充填物を同時に吐出させうる二重構造エアゾール缶容器における第一及び第二の内装パウチであって、第一内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、酸変性熱可塑性接着樹脂を含有する層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成され、第二内装パウチが、外層から順に、熱可塑性樹脂層、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、熱可塑性樹脂内面層を積層した積層材料から構成されることを特徴とする、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 【請求項2】 前記酸変性熱可塑性接着樹脂が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載された染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 【請求項3】 前記第二内装パウチを構成する積層材料が、アルミ箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層をポリウレタン系接着剤にて積層した積層材料により形成されることを特徴とする、請求項1に記載された染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2011-07-06 |
結審通知日 | 2011-07-11 |
審決日 | 2011-07-22 |
出願番号 | 特願2004-40616(P2004-40616) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(B65D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 真 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 熊倉 強 |
登録日 | 2009-06-26 |
登録番号 | 特許第4332444号(P4332444) |
発明の名称 | 染毛剤における二重構造エアゾール缶容器及びエアゾール缶容器に収納される内装パウチ |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 秋山 重夫 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 鎌田 雅元 |