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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1245117
審判番号 不服2010-29327  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-27 
確定日 2011-10-11 
事件の表示 平成10年特許願第275261号「アライメント・マーク・コントラストの強調方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 9日出願公開、特開平11-186162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年9月29日(パリ条約による優先権主張 平成9年9月29日 米国)の出願(特願平10-275261号)であって、平成20年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28同日付けで手続補正がなされ、平成21年3月27日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月1日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成22年8月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項15に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年10月1日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「2つの隣接する材料を含む上側表面を有する半導体ウエハ・ワークピースの上にアライメント・マークを形成する方法であって、
(a)前記2つの隣接する材料を含む前記半導体ウエハ・ワークピースの前記上側表面を平坦化するステップと、
(b)前記半導体ウエハ・ワークピースの前記平坦化された上側表面において選択的なエッチング動作を実行し、前記2つの隣接する材料の第1の材料の高さを前記2つの隣接する材料の第2の材料の高さよりも低くなるまで減少させるステップと、
(c)前記エッチングされた表面の上に層を積層するステップと、
を含み、前記層は、前記2つの隣接する材料の接合部に不均衡な高さを有するアライメント・マークを形成することを特徴とする方法。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-271979号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「3.発明の詳細な説明
〔概要〕
カドミウム・テルル(CdTe)の基板に所定パターンの水銀・カドミウム・テルル(Hg_(1-X)Cd_(X) Te)よりなる島状のウェル領域を形成し、該ウェル領域内にP-N接合を形成してホトダイオードを形成し、前記島状領域を基板のCdTe結晶で絶縁分離した構造の赤外線検知素子アレイの製造方法であって、前記島状のウェル領域を形成後、CdTeの選択エッチング液を用いて基板のCdTe結晶を選択エッチングして島状のHg_(1-X)Cd_(X) Te結晶のウェル領域を基板より浮き上がらせ、基板のCdTe結晶とウェル領域の境界位置に段差を形成して、その後の工程でウェル領域にイオン注入する際に用いるホトレジスト膜のマスク合わせ工程を確実に行い得るようにする。」(第1ページ左下欄下から第2行目?右下欄第14行)

「〔発明が解決しようとする問題点〕
ところでこのホトレジスト膜4を所定のパターンに形成しようとする場合、ウェル領域3は基板1の表面と同一平面に形成されているため、この基板上にホトレジスト膜4を所定のパターンに露光するためのホトマスクの位置合わせをするための基準が無く、そのためホトマスクを基板の所定の位置に位置合わせするための位置合わせマークを基板に別個に形成する必要があり、作業が煩雑となる問題がある。
本発明は上記した問題点を除去し、ホトレジスト膜に露光用マスクを位置合わせする際、露光用マスクの基準位置の位置合わせ箇所が基板上に形成できるような半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的を達成するための本発明の半導体装置の製造方法は、CdTe基板に所定パターンのHg_(1-X)Cd_(X) Te層を用いてウェル領域を形成後、前記基板をCdTeの選択エッチング液を用いて予め選択的にエッチングして前記ウェル領域を突出させ、基板とウェル領域の境界に段差を形成する工程を有する。
〔作用〕
CdTe結晶のみ選択的にエッチングし、Hg_(1-X)Cd_(X) Te結晶はエッチングしないようなエッチング選択比を有するエッチング液、即ち特願昭57-191058号に於いて本出願人が出願したエッチング液にてP-N接合を形成したHg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域を有するCdTe基板をエッチングすると、CdTe結晶のみが選択的にエッチングされるので、ウェル領域が基板より突出した状態となる。そのため基板表面に対してウェル領域の境界に段差が形成されてウェル領域の位置が鮮明になり、その段差の部分でホトレジスト膜が突出するようになるので、この突出した部分と突出しない部分の境界の位置を位置合わせマークとして用いる。
〔実施例〕
以下、図面を用いながら本発明の一実施例につき詳細に説明する。
先ず第1図に示すようにCdTeの基板11上に所定パターンのホトレジスト12を形成し、該ホトレジスト膜12をマスクとして用いてブロム(Br_(2))とメチルアルコール(CH_(3)OH)の混合液よりなるエッチング液を用いて所定のパターンの溝13を形成する。
次いで第2図に示すように該基板11上にP型のHg_(1-X)Cd_(X) Teよりなる結晶層14を液相エピタキシャル成長方法を用いて形成する。
更に第3図に示すようにHg_(1-X)Cd_(X) Teの結晶層14を研磨して基板11の表面を平坦にし、CdTeの基板11に島状のHg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15を所定のパターンに形成する。
次いで第4図に示すように、該基板11を弗化水素酸(HF)と硝酸(HNO_(3))と酢酸(CH_(3)COOH)と水(H_(2)O)とが重量比で(2?5):(3?5):6:6の混合比になるように混合したエッチング液、即ち本出願人が、特願昭57-191058号に於いて出願したエッチング液を用いてエッチングする。するとこのエッチング液はCdTeを選択的にエッチングし、Hg_(1-X)Cd_(X) Teの結晶はエッチングしなので第4図に示すようにHg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15が島状に突出して形成され、このウェル領域15と基板11との境界位置で段差が形成される。
更に第5図に示すようにこの基板上にホトレジスト膜16を形成した後、該ホトレジスト膜16を所定のパターンに形成する。このホトレジスト膜16のパターン形成する際、この段差の位置で露光用マスクの基準位置を位置合わせすると正確にかつ容易にマスク合わせができる。
次いで第6図に示すように該ホトレジスト膜16をマスクとしてB原子をイオン注入してN型層17を形成する。
このようにすれば、マスクの位置合わせマークが基板上に形成されているので位置合わせ作業が容易となり、また精度良く半導体素子形成用パターンが得られる。」(第2ページ右上欄第12行?第3ページ右上欄第11行)















2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)を総合勘案すれば、引用例1には、
「Hg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15を島状の所定のパターンの溝13に配置したCdTeの基板11上にマスクの位置合わせマークを形成する方法であって、
表面に所定のパターンの溝13が形成されたCdTeの基板11上に、Hg_(1-X)Cd_(X) Teよりなる結晶層14を液相エピタキシャル成長方法を用いて形成した後、Hg_(1-X)Cd_(X) Teの結晶層14を研磨して基板11の表面を平坦にし、
CdTeを選択的にエッチングしてHg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15を島状に突出させて、このウェル領域15と基板11との境界位置で段差を形成し、
上記基板11上にホトレジスト膜16を形成したとき、その段差の部分でホトレジスト膜16が突出するようになるので、この突出した部分と突出しない部分の境界の位置を位置合わせマークとして用いることにより、上記基板11上の上記の段差の位置に該ホトレジスト膜16を所定のパターンに形成するためのマスクの位置合わせマークが形成される方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第4 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 対比
(1)ここで、本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「CdTe」は基板11の材料であり、「Hg_(1-X)Cd_(X) Te」は基板11の所定パターンの溝13に配置したウェル領域15の材料であるから、引用発明の「CdTe」と「Hg_(1-X)Cd_(X) Te」が、本願発明の「2つの隣接する材料」に相当し、引用発明の「Hg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15を島状の所定のパターンの溝13に配置したCdTeの基板11」が、本願発明の「2つの隣接する材料を含む上側表面を有する半導体ウエハ・ワークピース」に相当する。また、引用発明の「マスクの位置合わせマーク」が、本願発明の「アライメント・マーク」に相当する。

引用発明の「表面に所定のパターンの溝13が形成されたCdTeの基板11上に、Hg_(1-X)Cd_(X) Teよりなる結晶層14を液相エピタキシャル成長方法を用いて形成した後、Hg_(1-X)Cd_(X) Teの結晶層14を研磨して基板11の表面を平坦に」することが、本願発明の「前記2つの隣接する材料を含む前記半導体ウエハ・ワークピースの前記上側表面を平坦化するステップ」を含むことに相当する。

引用発明の「CdTeを選択的にエッチングしてHg_(1-X)Cd_(X) Teのウェル領域15を島状に突出させて、このウェル領域15と基板11との境界位置で段差を形成」することが、本願発明の「前記半導体ウエハ・ワークピースの前記平坦化された上側表面において選択的なエッチング動作を実行し、前記2つの隣接する材料の第1の材料の高さを前記2つの隣接する材料の第2の材料の高さよりも低くなるまで減少させるステップ」を含むことに相当する。

引用発明の「上記基板11上にホトレジスト膜16を形成」することが、本願発明の「前記エッチングされた表面の上に層を積層するステップ」を含むことに相当する。

引用発明の「その段差の部分でホトレジスト膜16が突出するようになるので、この突出した部分と突出しない部分の境界の位置を位置合わせマークとして用いることにより、上記基板11上の上記の段差の位置に該ホトレジスト膜16を所定のパターンに形成するためのマスクの位置合わせマークが形成される」ことが、本願発明の「前記層は、前記2つの隣接する材料の接合部に不均衡な高さを有するアライメント・マークを形成する」ことに相当する。

2 本願発明と引用発明の一致点及び相違点、並びに、当審の判断
したがって、本願発明と引用発明とは、
「2つの隣接する材料を含む上側表面を有する半導体ウエハ・ワークピースの上にアライメント・マークを形成する方法であって、
(a)前記2つの隣接する材料を含む前記半導体ウエハ・ワークピースの前記上側表面を平坦化するステップと、
(b)前記半導体ウエハ・ワークピースの前記平坦化された上側表面において選択的なエッチング動作を実行し、前記2つの隣接する材料の第1の材料の高さを前記2つの隣接する材料の第2の材料の高さよりも低くなるまで減少させるステップと、
(c)前記エッチングされた表面の上に層を積層するステップと、
を含み、前記層は、前記2つの隣接する材料の接合部に不均衡な高さを有するアライメント・マークを形成する方法。」の発明である点で一致し、両者に相違するところがない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項15に係る発明)は、引用発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであったが、本願発明が引用発明に基いて容易に発明をすることができたか否かを検討する際には、両者を対比して一致点及び相違点について検討がなされ、それらが同じであるか否かについても当然検討がされるものであり、請求人もそれを踏まえた上で意見を述べているものと考えられるから、当審において改めて拒絶理由を通知することなく上記のとおり審決した。
 
審理終結日 2011-05-12 
結審通知日 2011-05-13 
審決日 2011-05-31 
出願番号 特願平10-275261
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉浦 淳  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 吉川 陽吾
森林 克郎
発明の名称 アライメント・マーク・コントラストの強調方法  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 大塚 住江  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  

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