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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A63F
審判 全部無効 特39条先願  A63F
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1246651
審判番号 無効2009-800075  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-03-31 
確定日 2011-10-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4058055号「スロットマシン」の特許無効審判事件についてされた平成22年6月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成22年(行ケ)第10255号、平成22年10月21日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第4058055号に係る発明についての手続の経緯の概略は以下のとおりである。
1.平成 5年 5月28日:もとの特許出願1
(特願平5-127525号)
2.平成12年 5月29日:もとの特許出願2
(特願2000-159107号、もとの特許出願1の分割出願)
3.平成12年 6月28日:もとの特許出願3
(特願2000-194080号、もとの特許出願2の分割出願)
4.平成12年 7月28日:もとの特許出願4
(特願2000-229524号、もとの特許出願3の分割出願)
5.平成12年 8月28日:もとの特許出願5
(特願2000-258231号、もとの特許出願4の分割出願)
6.平成17年 3月 7日:もとの特許出願6
(特願2005- 62751号、もとの特許出願5の分割出願)
7.平成17年 4月 5日:本件特許出願
(特願2005-109071号、もとの特許出願6の分割出願)
8.平成19年12月21日:特許権の設定登録
9.平成21年 3月31日:無効審判請求(請求人)
10.平成21年 6月26日:答弁書及び訂正請求(被請求人)
11.平成21年 8月 5日:弁駁書(請求人)
12.平成21年 8月12日:審尋
13.平成21年 8月24日:回答書・手続補正書(請求人)
14.平成22年 2月12日:補正許否の決定(許可する)
15.平成22年 3月17日:答弁書及び訂正請求(被請求人)
16.平成22年 4月 9日:口頭審理陳述要領書(請求人)
17.平成22年 4月 9日:口頭審理
18.平成22年 4月27日:上申書(請求人)
19.平成22年 4月27日:上申書(被請求人)
20.平成22年 6月30日:審決(訂正を認め、特許無効)
21.平成22年 8月 6日:被請求人による審決取消訴訟の提起
(平成22年(行ケ)10255号)
22.平成22年10月 8日:訂正審判請求
(訂正2010-390104号)
23.平成22年10月21日:特許法181条2項の規定に基づく決定
(審決取消の決定)
24.平成22年11月15日:特許法134条の3第2項の規定に基づく
通知書
25.平成22年11月29日:特許法134条の3第5項の規定に基づく
みなしによる訂正請求
26.平成23年 1月 6日:請求人より弁駁書提出

第二.平成22年11月29日の訂正請求について
1.はじめに
この審決においては、「平成22年11月29日の特許法134条の3第5項の規定に基づくみなしによる訂正請求」のことを、「本件訂正」といい、以下同様に、
「本件訂正に係る明細書及び図面」のことを「訂正後の明細書等」、
「本件訂正に係る明細書に記載された特許請求の範囲の請求項1」のことを「訂正後の請求項」、
「訂正後の請求項に係る発明」のことを「本件訂正発明」、
「設定登録時の願書に添付した明細書及び図面」のことを「訂正前の明細書等」、
「設定登録時の願書に添付した明細書に記載された特許請求の範囲の請求項1」のことを「訂正前の請求項」、
「訂正前の請求項に係る発明」のことを「訂正前発明」、
「平成21年6月26日付けの答弁書」のことを「答弁書1」、
「平成21年8月5日付けの弁駁書」のことを「弁駁書1」、
「平成22年3月17日付けの答弁書」のことを「答弁書2」、
「平成23年1月6日付けの弁駁書」のことを「弁駁書2」、
「甲第1号証」を「甲1」(「甲第2号証」等についても同様)、
「スロットマシンの分野における通常の知識を有する者」のことを「当業者」ということとする。
なお、平成22年11月29日の特許法134条の3第5項の規定に基づくみなしによる訂正請求の内容は、同年10月8日付けの訂正審判請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおりである。

2.本件訂正の内容
本件訂正は、訂正前の明細書等を、訂正後の明細書等のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。(下線部は訂正により追加又は変更された箇所を示す。)

・訂正事項1
請求項1の「前記可動表示部材の回転の基準となる基準位置を検出する基準位置検出手段」を次のとおり訂正する。
「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段」

・訂正事項2
請求項1の「前記可動表示部材を停止操作するための停止操作手段」を次のとおり訂正する。
「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段」

・訂正事項3
請求項1の「前記可動表示部材が回転開始した後、前記基準位置検出手段が前記基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」を次のとおり訂正する。
「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」

・訂正事項4
請求項1の「次回のゲームに持越し、前記可変表示制御手段は、」を次のとおり訂正する。
「次回のゲームに持越し、前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、前記可変表示制御手段は、」

・訂正事項5
請求項1の「前記可変表示制御手段は、前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて」を次のとおり訂正する。
「前記可変表示制御手段は、再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて」

・訂正事項6
請求項1の「前記セット手段が再ゲーム当選フラグをセットすることにより」を次のとおり訂正する。
「前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより」

・訂正事項7
明細書の【0005】の「前記可動表示部材の回転の基準となる基準位置を検出する基準位置検出手段」を次のとおり訂正する。
「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段」

・訂正事項8
明細書の【0005】の「前記可動表示部材を停止操作するための停止操作手段」を次のとおり訂正する。
「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段」

・訂正事項9
明細書の【0005】の「前記可動表示部材が回転開始した後、前記基準位置検出手段が前記基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」を次のとおり訂正する。
「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」

・訂正事項10
明細書の【0005】の「次回のゲームに持越し、前記可変表示制御手段は、」を次のとおり訂正する。
「次回のゲームに持越し、前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、前記可変表示制御手段は、」

・訂正事項11
明細書の【0005】の「前記可変表示制御手段は、前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて」を次のとおり訂正する。
「前記可変表示制御手段は、再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて」

・訂正事項12
明細書の【0005】の「前記セット手段が再ゲーム当選フラグをセットすることにより」を次のとおり訂正する。
「前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより」

3.本件訂正に関する被請求人の主張
平成22年10月8日付けの訂正審判請求書における、本件訂正についての被請求人の主張は次のとおりである(5?11頁、6(4))。
(1)訂正事項1は、訂正前の明細書等の段落【0026】の記載に基づき、「基準位置検出手段」について「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段」という限定をする訂正であるから、特許法126条1項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(2)訂正事項2は、訂正前の明細書等の段落【0013】の記載に基づき、「停止操作手段」について「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段」という限定をする訂正であるから、特許法126条1項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(3)訂正事項3は、訂正前の明細書等の段落【0055】、【0071】、【0072】及び図9、図12の記載に基づき、「停止操作有効化手段」について「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」という限定をする訂正であるから、特許法126条1項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(4)訂正事項4は、訂正前の明細書等の段落【0071】、【0072】及び図12の記載に基づき、「前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず」という限定と、
訂正前の明細書等の段落【0057】、【0059】、【0060】、【0090】、【0093】及び図9、図10、図16の記載に基づき、「前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており」及び「前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし」という限定と、
訂正前の明細書等の段落【0022】、【0023】、【0075】及び図3の記載に基づき、「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており」という限定をする訂正であるから、特許法126条1項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(5)訂正事項5は、訂正前の明細書等の段落【0023】、【0075】の記載に基づき、「再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」という限定事項を付加する訂正であるから、特許法134条の2第1項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(6)訂正事項6は、訂正事項5において「再ゲーム当選フラグ」を記載したことに基づく訂正であるから、特許法126条1項3号に規定する「明りょうでない記載の釈明」に該当する。

(7)訂正事項7?12は、訂正事項1?6との整合を採るための訂正であるから、特許法126条1項3号に規定する「明りょうでない記載の釈明」に該当する。

(8)訂正事項7?12は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、訂正前の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(9)訂正前の明細書等の【0004】には、訂正前発明の目的(ビッグボーナスによる遊技の面白みを提供できながらも射倖性が高まり過ぎてしまうことを極力防止可能、簡単な構成にて可変表示装置の可変表示開始時よりも適切な時間だけ遅らせて停止操作手段の停止操作を有効化)が記載されており、訂正事項7?12により付加、限定された構成により達成される内容は、その目的に含まれるものである。
それゆえ、訂正事項7?12に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4.本件訂正に関する請求人の主張
弁駁書2における、本件訂正についての請求人の主張は次のとおりである(2?3頁、7(1))。
(1)訂正事項4
訂正事項4において、「当選判定率」なる用語を用いているが、該用語は技術用語ではなく、訂正前の明細書等において説明されておらず、定義もなされていないので、意味を特定することができない。
よって、訂正事項4は訂正前の明細書等にはない新規な事項を追加したものであり、特許法134条の2第5項に違反する。

(2)訂正事項5
訂正の基準となる特許明細書(平成22年3月17日付け訂正請求による訂正明細書)の請求項1には、訂正事項5の請求対象に該当する事項の記載がないので、訂正事項5は特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらず、特許法134条の2第1項に違反する。

(3)訂正事項10、11
訂正事項4及び5が訂正違反であるため、これらに関連する訂正事項10、11も違法である。

(4)その他の訂正事項
訂正事項4,5,10,11を除くその他の訂正事項の訂正は認める。

5.本件訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の明細書等の段落【0026】の記載に基づき、「基準位置検出手段」について、その機能(可動表示部材の回転基準位置を検出)と構成(回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた)を限定する訂正であるから、平成6年法律116号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)134条2項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の明細書等の段落【0013】の記載に基づき、「停止操作手段」について、その構成(各可動表示部材に対応して設けられた)を限定する訂正であるから、改正前特許法134条2項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の明細書等の段落【0055】【0071】【0072】及び図9、図12の記載に基づき、「停止操作有効化手段」について、その動作条件(所定時間が経過するまでに全ての基準位置検出手段が回転基準位置を検出したこと)を限定する訂正であるから、改正前特許法134条2項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の明細書等の段落【0071】【0072】及び図12の記載に基づき、「前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず」という限定と、
訂正前の明細書等の段落【0057】【0059】【0060】【0090】【0093】及び図9、図10、図16の記載に基づき、「前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており」及び「前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし」という限定と、
訂正前の明細書等の段落【0022】【0023】【0075】及び図3の記載に基づき、「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており」という限定をする訂正であるから、改正前特許法134条2項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
なお、請求人は、「当選判定率」なる用語は技術用語ではなく、訂正前の明細書等に説明も定義もないから、訂正事項4は新規な事項を追加したものである旨主張しているが、「当選判定率」なる用語は技術用語ではないとしても、一般的に「当選と判定される率」を意味するものと捉えられ、そのように捉えた場合に、訂正事項4の技術内容と、訂正前の明細書等の段落【0057】【0059】【0060】【0090】【0093】及び図9、図10、図16の記載から把握される内容に矛盾は生じないから、請求人の上記主張は採用できない。
次に、訂正事項4が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものか否かについて検討すると、訂正事項4のうち「停止操作有効化手段」についての訂正が、そのようなものでないことは明らかである。
また、訂正事項4のうち「定義データ格納手段」及び「判定手段」についての限定は、遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には、小役の当選判定率のみを通常時よりも向上させた高確率時の定義データを用い、逆に高い場合には通常時の定義データを用いて小役の当選判定をするものであって、価値付与状況の低い遊技者に小役を当選し易くし、価値付与状況の高い遊技者に小役を当選しにくくするものであるから、訂正前の明細書等の段落【0003】記載の「射倖性が高まり過ぎてしまうことを極力防止可能」という目的から外れておらず、発明が解決しようとする課題を追加又は変更しようとするものではない。
さらに、「複数の可変表示部の識別情報の配列」についての限定は、該限定によって、再ゲーム当選フラグがセットされているとき必ず再ゲームが当選することとなり、価値付与状況が変化することなくゲームを続けられることが多くなるのであるから、上記した段落【0003】記載の目的から外れておらず、発明が解決しようとする課題を追加又は変更しようとするものではない。
よって、訂正事項4は、改正前特許法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合している。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の明細書等の段落【0023】【0075】の記載に基づき、「再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」という限定事項を付加する訂正であるから、改正前特許法134条2項1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。
なお、請求人は「訂正の基準となる特許明細書(平成22年3月17日付訂正請求による訂正明細書)における請求項1には、訂正事項5の請求対象に該当する事項の記載がなく、訂正事項5は特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらず、特許法134条の2第1項に違反する」と主張しているが、平成22年3月17日付け訂正請求や平成21年6月26日付け訂正請求は確定していないので、訂正の基準となる特許明細書は、未だ訂正前の明細書等、すなわち、設定登録時の願書に添付した明細書及び図面であって、訂正前の請求項には訂正事項5の請求対象に該当する事項の記載があるから、請求人の上記主張は採用できない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項5において「再ゲーム当選フラグ」を記載したことに基づく訂正であるから、改正前特許法134条2項3号に規定する「明りようでない記載の釈明」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。

(7)訂正事項7?12について
訂正事項7?12は、訂正事項1?6との整合を採るための訂正であるから、改正前特許法134条2項3号に規定する「明りようでない記載の釈明」に該当し、また、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合することも明らかである。

(8)むすび
以上のとおり、訂正事項1?12は、いずれも改正前特許法134条2項及び同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第三.本件訂正発明
本件訂正発明は、訂正後の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。(下線部は訂正により追加又は変更された箇所を示す。また、記号a?e、f’?h’、i?o、α?γ、p、q及びzは、弁駁書2の4?7頁において付された記号に準じて付した。)
「a. 遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、
b. 前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え、前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ、
c. 前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、
d-1. 通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、
d-2. 通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ、
d-3. 通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と、
e. 1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段と、
f’ 各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段と、
g’ 前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段と、
h’ 全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段と、
i. 該停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段と、
j. 前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、
k. 前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段と、
l. 前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段と、
m. 該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と、
n. 前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを備え、
o. 前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し、
α. 前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、
β. 前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、
γ. 前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、
p. 前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、
q. 前記可変表示制御手段は、
q-1. 再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、q-2. 前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-3. 前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させることを特徴とする、
z.スロットマシン。」

第四.請求人の主張(本件訂正に関するものを除く)
1.請求人が提出した書証
請求人「日本電動式遊技機特許株式会社」は、平成21年3月31日付け審判請求書において、訂正前発明は特許法123条1項2号の規定により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲1?甲9を提出している(51頁、8)。
そして、請求人は、弁駁書1において、「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成」が従来周知の事項であることを示すため、参考例1?4を追加提出している。
次に、請求人は、平成21年8月24日付け手続補正書において、平成21年6月26日付け訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1にかかる発明は特許法123条1項2号の規定により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲10?甲24を追加提出している(32頁、8)。
また、請求人は、平成22年4月9日付け口頭審理陳述要領書において、平成22年3月17日付け訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1にかかる発明も同じく特許法123条1項2号の規定により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲25を追加提出している(35頁、第5<相違点10>)。
さらに、請求人は、弁駁書2において、本件訂正発明は特許法123条1項2号により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲26?甲35を追加提出している(39?40頁、8)。

【平成21年3月31日付け審判請求書に添付】
甲1:特開平2-232084号公報
甲2:特開平4-327877号公報
甲3:特開昭63-5778号公報
甲4:特公平3-10347号公報
甲5:パチンコファン 株式会社日本文芸社
1991年2月15日発行 79頁
甲6:パチンコファン 株式会社日本文芸社
1992年5月15日発行 12頁
甲7:パチスロ攻略マガジン 株式会社双葉社
1993年5月22日発行 113頁
甲8:特開平1-198584号公報
甲9:特許第4058055号公報

【弁駁書1に添付】
参考例1:ウィキペディア(Wikipedia)の「パチスロ」に関する記事
参考例2:パチスロ完全攻略事典の「ベガスガール」の項
株式会社日本文芸社(1993年5月21日、国会図書館受入)
参考例3:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房
1993年6月1日発行 6,7,122頁
参考例4:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房
1993年7月1日発行 4-9頁

【平成21年8月24日付け手続補正書に添付】
甲10:特許第4058083号公報
甲11:特許第4058089号公報
甲12:平成21年6月26日付け訂正請求書により訂正された請求項1
に係る発明と甲10、甲11の請求項1に係る発明との比較表
甲13:特開昭59-186580号公報
甲14:特開昭56-70779号公報
甲15:特開平1-238888号公報
甲16:パチスロ大図鑑 株式会社白夜書房
2007年5月21日発行 51,85,98頁
甲17:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房
1993年4月1日発行 11頁
甲18:パチンコファン 株式会社日本文芸社
1992年5月15日発行 10頁
甲19:パチンコファン 株式会社日本文芸社
1991年2月15日発行 82頁
甲20:特公平3-80038号公報
甲21:特開平2-279183号公報
甲22:特開平2-279184号公報
甲23:実公平5-7008号公報
甲24:特開昭62-127086号公報

【平成22年4月9日付け口頭審理陳述要領書に添付】
甲25:特開平4-307086号公報

【弁駁書2に添付】
甲26:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房1990年2月15日発行
12?17,22?23,28?31,36?39,42?43,96?97頁
甲27:改正 風俗営業等に関する法令集 大阪府遊技業協同組合
昭和60年2月発行 101,116?121,199,203?205,259?267頁
甲28:型式試験結果書(アメリカーナX2)財団法人保安電子通信技術協会
昭和63年5月26日 別紙1、別紙1(D)?別紙10(D)
甲29:技術上の規格に関する解釈基準(回胴式遊技機)
日本電動式遊技機工業協同組合 平成2年11月21日 1?10頁
甲30:平成18年度標準技術集 遊技機及びその関連技術 特許庁 20頁
甲31:パチスロ大図鑑1964?2000 株式会社白夜書房
2007年5月21日発行 32?33,35,38?39,100?101頁
甲32:パチスロ必勝ガイド 株式会社白夜書房 1993年8月1日発行
11,13頁
甲33:パチスロ完全攻略事典VOL.4 株式会社日本文芸社
1996年12月30日発行
90?91,100?101,114?115,138?139,152?153,160?161頁
甲34:ニューパルサー必勝ガイド 株式会社白夜書房
1995年6月5日発行 「差枚数カウンターの仕組み」の欄
甲35:特開平4-40976号公報

2.特許法39条2項違反(弁駁書2の7?26頁、7(2)(ii)?(iv))
(1)相違点(弁駁書2の9?11頁、7(2)(ii))
平成22年6月30日付け審決では、平成22年3月17日付け訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1にかかる発明と甲11の請求項1にかかる発明(以下「甲11発明」という。)との相違点(旧相違点1?11)は実質的な相違点ではなく、両発明は実質的に同一と判断された。
かかる審決の判断等を踏まえると、本件訂正発明と甲11発明との相違点は、以下の相違点(新相違点12?17)となる。
(新相違点12)
本件訂正発明は構成f’(基準位置検出手段)を具備するのに対し、甲11発明はこのような構成を備えていない点。
(新相違点13)
甲11発明の「停止操作手段」は構成g’’のように「前記可変表示部を停止操作する」のに対し、本件訂正発明の「停止操作手段」は構成g’のように「各可動表示部材に対応して設けられ」て「前記可変表示部を停止操作する」点。
(新相違点14)
本件訂正発明は構成h’(停止操作有効化手段)を具備するのに対し、甲11発明はこのような構成を備えていない点。
(新相違点15)
本件訂正発明は構成α(停止操作有効化手段の動作条件)を具備するのに対し、甲11発明はこのような構成を備えていない点。
(新相違点16)
本件訂正発明は構成β(定義データ格納手段に格納される高確率時及び通常時の定義データ)を具備するのに対し、甲11発明はこのような構成を備えていない点。
(新相違点17)
本件訂正発明は構成γ(高確率時又は通常時の定義データを用いる小役の当選判定)を具備するのに対し、甲11発明はこのような構成を備えていない点。

(2)相違点の検討(弁駁書2の11?26頁、7(2)(iii))
<新相違点12について>
基準位置検出手段を設ける位置として、各回転表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側とした点については、甲4(2頁3欄26?31行及び1?3図)、甲21(4頁左下欄4?7行及び1図)及び甲22(5頁右下欄2?5行及び1図)に記載されるように、従来周知慣用技術に過ぎない。

<新相違点13について>
複数のリールそれぞれを停止操作するための停止操作手段を各リールに対応して設ける点については、甲1(3頁右上欄1?2行)、甲2(3頁3欄11?15行)、甲13(3頁左上欄11?13行)、甲14(4頁右上欄1?3行)及び甲15(2頁左下欄10?13行)に記載されるように、従来周知慣用技術に過ぎない。

<新相違点14について>
新相違点14にかかる構成h’は、換言すれば、可動表示部材が回転しない或いは基準位置検出手段の故障などに起因して回転基準位置を検出できないため「必要条件」が成立しないときには停止操作手段の停止操作を有効化しない、というエラー発生時の処理を規定しており、次項の新相違点15と同じことを意味しているに過ぎない。
このようなエラー処理は、甲20(3頁6欄28?34行)及び甲21(4頁右下欄15行?5頁左上欄7行)に記載されるように、従来周知慣用技術に過ぎない。

<新相違点15について>
新相違点14で述べたように、「必要条件」が成立しないときには停止操作手段の停止操作を有効化しない、というエラー発生時の処理は、従来周知慣用技術に過ぎない。

<新相違点16および新相違点17について>
a.遊技機に対する当時の規制(弁駁書2の15?18頁)
ア 射幸性の規制
本件特許出願当時の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風適法」という。)4条3項は、政令で定めるぱちんこ屋等について「公安委員会は、当該営業に係る営業所に設置される遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準に該当するものであるときは、当該営業を許可しないことができる。」と定めていた。
そして、風適法施行規則7条において、著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準を定め、同基準の「回胴式遊技機」の欄には以下の基準が定められていた(甲27の120頁)。
「三 役物の作動により獲得することができる遊技メダルの数が、役物の作動によらないで獲得することができる遊技メダルの数に比して著しく多いこととなる性能を有する遊技機であること。」
ここで、「役物の作動により」は、いわゆるビッグボーナス状態・レギュラーボーナス状態などがこれにあたる。したがって、「役物の作動によらないで獲得することができる遊技メダルの数」とは、通常遊技状態において獲得することができる遊技メダルの数を意味する。
イ 技術上の規格
風適法20条3項は、政令で定める種類の遊技機の型式に関し、公安委員会規則で必要な技術上の規格を定めることができると定めており、遊技機の「技術上の規格」には、以下の定めがあった(甲27)。(当審注:甲第28号証とあるが誤記と認める。)
・回胴の回転に係る遊技機の性能(259?260頁)
-遊技の結果を1回得るため遊技機に投入する必要がある遊技メダルの枚数(以下「規定枚数」という。)は3枚を超えるものでないこと。(イ)
・遊技メダルの獲得に係る遊技機の性能(261?262頁)
-1回の入賞により獲得することができる遊技メダルの枚数は、15枚を超えるものでないこと。(イ)
-規定枚数ごとに、回胴の上の図柄の組合せで入賞に係るものと当該入賞に係る組合せに対応して獲得することができる遊技メダルの枚数があらかじめ定められているものであること。(ロ)
-役物が作動しない場合において、遊技メダル1枚につき獲得することができる遊技メダルの枚数の期待値は、0.35枚超0.90枚未満であること。(ト)
ウ 型式試験
風適法20条2項は、公安委員会による遊技機の認定について定め、同条4項は、遊技機の型式の検定について定め、同条5項は、遊技機の認定又は型式の検定に必要な試験の実施に関する事務を指定試験機関の財団法人保安電子通信技術協会(略称「保通協」)に行わせることができる旨を定めている。
保通協における型式試験の際には、上記(ト)について「設計書等審査」と「遊技機の試験」の両面から試験され、規格(ト)に定められた範囲内であることが必要であった。(甲28)
エ 日電協の内規
回胴式遊技機の製造業者の組合である日本電動式遊技機工業協同組合(略称「日電協」)が平成2年11月21日に制定した「技術上の規格に関する解釈基準」(以下「日電協内規」という。)は、上記(ト)の解釈基準として、以下のとおり定めていた。(甲29の4頁)
・期待値は次により計算されるものをいう
-獲得メダル数×抽選確率×コマ制御確率÷規定枚数
・期待値は遊技中に変動してもよいが、遊技の結果によらずに変動してはならない。

b.各役の発生確率の変動について(弁駁書2の18?20頁)
上記日電協の内規及び規格(ト)が定められ、各投入メダル数ごと、各役ごとに期待値の計算を行い、投入メダル数が何枚の場合であっても、各役ごとの期待値の合計が0.35枚超0.90枚未満であることが型式試験において求められていた。
そして、各役の発生確率は抽選確率×コマ制御確率であり、獲得メダル数は上記規格(ロ)により遊技中に変動させることは許されないから、各役への入賞により獲得できる遊技メダルの数の期待値を変動させる方法は、抽選確率かコマ制御確率を変動させる方法しかない。
このうち、コマ制御確率は、引き込み制御の優先劣後関係などによって影響され、遊技中に変動させることは容易ではないので、抽選確率を変えることによって、各役の発生確率を変動させることは、当業者であれば誰でも設計プロセスにおいて適宜考える方法である。

c.3号機以前の「フルーツの集中」(弁駁書2の20?22頁)
上記のとおり、通常遊技状態において獲得できる遊技メダルの枚数は、型式試験において実際に遊技を行う回数の範囲内で、定められた範囲に保たれていることが必要であった。
そのような規制の下において、小役の抽選確率を変動させて、価値付与状況を所定の範囲に保つことが3号機以前から一般に行われていた。
その技術の一つが「フルーツの集中」と言われるものであり、一定のゲーム数もしくは特定条件を定め、その特定条件を満たすまで小役(リプレイを除く)の内部抽選確率を飛躍的に高めるものとして、2号機ないし3号機において、多数の機種に採用されていたものである。(甲30の20頁、甲31の33、35、39頁、甲26の13頁3段目、23頁3段目、30頁表4、31頁2段目、37頁3段目、38頁表1)

d.「ニューパルサー」(4号機)(弁駁書2の22?24頁)
4号機においては、「フルーツの集中」と異なり、抽選ではなく、小役の当選確率のみを変動させて、高確率状態と低確率状態を設けることが行われている。
「ニューパルサー」は、本件特許出願前である平成5年5月19日に「三宮ワンダーランド」という神戸のぱちんこ店に導入され、一般客の遊技に供されて、公然実施された機種である。(甲32の13頁)
「ニューパルサー」は、甲33の114頁、甲31の101頁、甲34の「差枚数カウンターの仕組み」欄によれば、賭数入力手段により入力された入力数と価値付与手段により付与された有価価値の付与数とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて、複数種類の小役入賞の当選確率のみを高確率の抽選テーブルまたは低確率の抽選テーブルに格納されているデータに基づいて変動させ、通常遊技状態において、小役高確率状態と小役低確率状態とを有する遊技機であり、この切替によって、通常遊技状態における価値付与状況を所定範囲内に保つ遊技機であったことが明らかである。

e.その他の4号機(弁駁書2の24?25頁)
本件特許出願以後に認可され、公然実施された機種であるが、「クランキーコンドル」(甲33の90頁)、「ピンクパンサー」(甲33の100頁)、「ジョーカー」(甲33の138頁)、「ダイバーズXX」(甲33の152頁)及び「キングオブカリブ」(甲33の160頁)も、「ニューパルサー」と同様である。

f.まとめ(弁駁書2の25?26頁)
以上のとおり、本件特許出願当時、回胴式遊技機は風適法による規制に基づいて射幸性の基準により、通常遊技状態における期待値をその基準の範囲内にするための技術は、すべての回胴式遊技機に採用されていた。
また、通常遊技状態における小役の当選確率について、それぞれ抽選テーブルに格納されたデータに基づき、高確率状態と低確率状態とに切り替え制御する技術は、2号機時代から多くの機種に用いられていた周知慣用技術である。
しかも、平成22年6月30日付け審決において相違点7?9に関し、「本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合には、スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段とを備え、前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、複数種類の役別に、当選しているか否かを判定することは、例えば、甲2(特開平4-327877号公報、特に段落【0009】?【0011】)や甲25(特開平4-307086号公報、特に段落【0008】、【0009】)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術5」という。)である」と判断されていることから、新相違点16のような高確率の定義データ、通常時の定義データを定義データ格納手段に格納することは周知技術であり、新相違点17のようにこれらの定義データを用いて小役の当選判定を行うことも周知技術である。
してみれば、新相違点16、17はスロットマシンの分野において周知の技術であって、新相違点16,17それぞれにかかる構成β,γに関して、本件訂正発明と甲11発明とは実質的に同一である。

(3)小結(弁駁書2の26頁、7(2)(iv))
以上のとおり、旧相違点1?11並びに新相違点12?17にかかる構成に関して、本件訂正発明と甲11発明は実質的に同一であり、その他の構成についても差異はないので、本件訂正発明と甲11発明とは実質的に同一の発明であり、本件訂正発明は特許法39条2項の規定によって、特許を受けることができないものである。
よって、本件訂正発明についての特許は、同法123条1項2号に該当するから無効とすべきものである。
以下、この無効理由を「無効理由A」という。

3.特許法29条2項違反(弁駁書2の26?39頁、7(3))
(1)甲1に記載の発明(弁駁書2の26?28頁、7(3)(i))
甲1に記載の発明(以下「引用発明」という。)は、平成21年3月31日付け審判請求書の41?42頁において説明したとおりのスロットマシン(構成a?p及びzに分説)であるが、被請求人は、構成oに関して「一旦、発生したヒットリクエストは、そのヒットリクエストに対応する入賞が得られるまで次回以降のゲームに持ち越すことによりペイアウト率を一定に維持する」ものであると主張したので(答弁書2の7頁18?20行)、その主張を採用して説明することとする。

(2)相違点(弁駁書2の28?32頁、7(3)(ii))
引用発明と本件訂正発明とを比較すると、以下の点で相違する。
<相違点A>
本件訂正発明が「通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段」(構成d-3)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点B>
本件訂正発明の「基準位置検出手段」が「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた」(構成f’)ものであるのに対し、引用発明の「基準位置検出手段」は「前記可動表示部材の回転の基準となる基準位置を検出する」ものであるに過ぎない点。
<相違点C>
本件訂正発明の「停止操作手段」が「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた」(構成g’)ものであるのに対し、引用発明の「停止操作手段」は「前記可動表示部材を停止操作するための」ものであって、各可動表示部材に対応して設けられたものかどうか不明である点。
<相違点D>
本件訂正発明が「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」(構成h’)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点E>
本件訂正発明が「前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越」す(構成o)のに対し、引用発明は「一旦、発生したヒットリクエストは、そのヒットリクエストに対応する入賞が得られるまで次回以降のゲームに持越す」ものである点。
<相違点F>
本件訂正発明が「前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、」という構成(構成α)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点G>
本件訂正発明が「前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、」という構成(構成β)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点H>
本件訂正発明が「前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、」という構成(構成γ)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点I>
本件訂正発明が「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、」という構成(構成p)を備えるのに対し、引用発明はこれを備えない点。
<相違点J>
本件訂正発明の「可変表示制御手段」が「再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」る(構成q-1)のに対し、引用発明はこのような構成の「可変表示制御手段」を備えない点。
<相違点K>
本件訂正発明の「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」る(構成q-2)のに対し、引用発明はこのような構成の「可変表示制御手段」を備えない点。
<相違点L>
本件訂正発明の「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる」(構成q-3)のに対し、引用発明はこのような構成の「可変表示制御手段」を備えない点。

(3)相違点の検討(弁駁書2の32?39頁、7(3)(iii))
<相違点Aについて>(弁駁書2の32頁)
甲2および甲3に「リプレイ」を備えたスロットマシンが記載されているので、相違点Aにかかる構成d-3は、当業者が容易になし得た事項に過ぎない。

<相違点Bについて>(弁駁書2の32?33頁)
相違点Bは、上記新相違点12と同じ内容であり、上記<新相違点12について>の項で述べたとおり、基準位置検出手段を設ける位置として、各回転表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側とした点について、甲4(2頁3欄26?31行及び1?3図)、甲21(4頁左下欄4?7行及び1図)及び甲22(5頁右下欄2?5行及び1図)に記載されている。
仮にこれらに基準位置検出手段を設ける位置として、各回転表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側とする点が記載されていないとしても、甲35(3頁左下欄17?20行、1図及び6図)には、フォトスイッチ20が原点表示体30aよりも回転軸方向内側に配置されていることが記載されている。
してみれば、相違点Bにかかる構成f’は、当業者が容易になし得たものに過ぎない。

<相違点Cについて>(弁駁書2の33頁)
相違点Cは、上記新相違点13と同じ内容であり、上記<新相違点13について>の項で述べたとおり、複数のリールそれぞれを停止操作するための停止操作手段を各リールに対応して設ける点については、甲1(3頁右上欄1?2行)、甲2(3頁3欄11?15行)、甲13(3頁左上欄11?13行)、甲14(4頁右上欄1?3行)及び甲15(2頁左下欄10?13行)に記載されている。
してみれば、相違点Cにかかる構成g’は、当業者が容易になし得たものに過ぎない。

<相違点Dについて>(弁駁書2の33?34頁)
相違点Dは、上記新相違点14と同じ内容であり、上記<新相違点14について>の項で述べたとおり、構成h’は「必要条件」が成立しないときに停止操作手段の停止操作を有効化しない、というエラー発生時の処理を規定しているに過ぎず、このようなエラー処理は、甲20(3頁6欄28?34行)及び甲21(4頁右下欄15行?5頁左上欄7行)に記載されている。
してみれば、相違点Dにかかる構成h’は、当業者が容易になし得たものである。

<相違点Eについて>(弁駁書2の34?35頁)
甲5および甲6に「当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越」す構成が記載され、スロットマシンにおいて全ての入賞フラグを持ち越しとするか、一部のみを持ち越し一部を消去とするかは遊技性の設計の問題に過ぎない。
してみれば、相違点Eにかかる構成oは、当業者が容易になし得た事項に過ぎない。

<相違点Fについて>(弁駁書2の35頁)
相違点Fは、上記新相違点15と同じ内容であり、上記<新相違点15について>の項で述べたとおり、甲20(3頁6欄28?34行)及び甲21(4頁右下欄15行?5頁左上欄7行)に、必要条件成立時には停止操作手段の停止操作を有効化し、必要条件不成立時には停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化しないことが記載されている。
してみれば、相違点Fにかかる構成αは、当業者が容易になし得たものである。

<相違点G,Hについて>(弁駁書2の35頁)
相違点G,Hは、上記新相違点16,17と同じ内容であり、上記<新相違点16および新相違点17について>の項で述べたとおり、甲2及び甲25?34には、高確率の定義データ、通常時の定義データを定義データ格納手段に格納すること、これら高確率の定義データ、通常時の定義データを用いて小役の当選判定を行うことが記載されている。
してみれば、相違点G,Hにかかる構成β,γは、当業者が容易になし得たものである。

<相違点Iについて>(弁駁書2の35?36頁)
「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成」は、弁駁書1に添付した参考例2?4に記載されている周知技術に過ぎず、弁駁書1に添付の参考例1に記載されているように、4号機のパチスロから再遊技(リプレイ)が搭載されたという事実が間違いでないことは明らかである。
よって、相違点Iにかかる構成pは、当業者が容易になし得たものである。

<相違点Jについて>(弁駁書2の36?37頁)
甲1の6頁左下欄11行?右下欄2行の記載は、当選役に対応する図柄(シンボル)が、ストップボタンが押された時点での(有効な当りライン上の)リールの位置からそれに続く4コマまでの範囲内にあればその当選役に対応する図柄を引き込むといういわゆる引込制御に関する記載である。
そうすると、参考例2?4のように各リールにおいて「再遊技(リプレイ)」図柄を5コマ以内、つまり現在の図柄位置から4図柄以内に「再遊技(リプレイ)」図柄を配列し、甲1のような引込制御を行えば、「再遊技(リプレイ)」図柄を有効ライン上に必ず停止させることができ、本件特許明細書の段落【0075】?【0081】などに記載されているのと全く同様の停止制御を実現することができる。
してみれば、相違点Jにかかる構成q-1は、引用発明に参考例2?4に記載の周知技術を組み合わせることにより、当業者であれば容易に想到可能である。

<相違点Kについて>(弁駁書2の37?38頁)
本件の場合、解決課題が「射倖性が高まりすぎてしまうことを極力防止可能」とすることであるので、ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグとが重複して成立しているときに、再ゲーム当選フラグを優先しているが、仮に、解決課題が射幸性を煽るというのであれば、ビッグボーナス当選フラグを優先するのは当然のことである。
すなわち、その優先順位には何の技術的意味もないことは明らかである。
また、本件のスロットマシンも、上記した風適法4条3項(甲27)を遵守する必要があったことから、再ゲーム当選フラグを優先したにすぎない。
してみれば、相違点Kにかかる構成q-2のように、再ゲーム当選フラグを優先すると定めることに技術的な効果はなく、単なる設計事項である。

<相違点Lについて>(弁駁書2の38?39頁)
甲7の113頁2列14?26行には、ボーナスと小役が重複した場合はボーナスを優先する旨の記載がある。
そうすると、上記甲7に記載の技術は、本件訂正発明の構成q-3と同一であると言わざるを得ない。(当審注:「構成q-2」とあるが誤記と認める。)
してみれば、相違点Lにかかる構成q-3は、甲7に基づき、当業者であれば容易になし得た事項に過ぎない。

(4)小結(弁駁書2の39頁、7(3)(iv))
以上のとおり、相違点A?Lにかかる構成に関して、引用発明および周知慣用技術に基づき、当業者が容易になし得たものであり、本件訂正発明は特許法29条2項の規定によって、特許を受けることができないものである。
よって、本件訂正発明についての特許は、同法123条1項2号に該当するから無効とすべきものである。
以下、この無効理由を「無効理由B」という。

第五.被請求人の主張(本件訂正に関するものを除く)
1.無効理由Aに対して
平成22年10月8日付け訂正審判請求書では、本件訂正発明と甲11発明が同一の発明ではないことについて格別主張していない。

2.無効理由Bに対して
(1)はじめに
上記訂正審判請求書では、本件訂正発明が引用発明等に基づいて容易に発明をすることができたものではないことについて格別主張していないが、訂正前発明、平成21年6月26日付け訂正請求書の請求項1に係る発明及び平成22年3月17日付け訂正請求書の請求項1に係る発明について、引用発明等に基づいて容易に発明をすることができたものではない旨主張している。
そして、訂正前発明は上記構成a?e、i?o、q、q-2、q-3、z及び構成f?h(それぞれ上記構成f’?h’の訂正前の構成)よりなり、
平成21年6月26日付け訂正請求書の請求項1に係る発明は、上記構成a?e、i?q、q-1?q-3、z及び構成f?h(それぞれ上記構成f’?h’の訂正前の構成)よりなり、
平成22年3月17日付け訂正請求書の請求項1に係る発明は、上記構成a?e、i?r、q-1?q-3、z及び構成f?h(それぞれ上記構成f’?h’の訂正前の構成)よりなり、
本件訂正発明は、上記構成a?e、f’?h’、i?q、q-1?q-3、z及び構成α?γよりなっているから、
本件訂正発明は構成α?γが付加されている点を除けば、平成21年6月26日付け訂正請求書の請求項1に係る発明(以下「旧訂正発明」という。)と構成が最も類似している。
そこで、答弁書1における、被請求人の引用発明等に基づいて容易に発明をすることができたものではない旨の主張についてその概要を記載する。

(2)旧訂正発明と引用発明との相違点(答弁書1の8?9頁(2.2))
旧訂正発明と引用発明とは少なくとも以下の点で相違する。(当審注:「旧訂正発明」は答弁書1における「本件訂正発明」であり、相違点の記号には請求人の挙げた相違点と対照できるように請求人が付した記号を用い、答弁書1に記載の相違点記号は括弧書きで示した。)
<相違点E>(答弁書1では相違点1)
旧訂正発明が「前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越」す(構成o.)のに対し、引用発明は「一旦、発生したヒットリクエストは、そのヒットリクエストに対応する入賞が得られるまで次回以降のゲームに持ち越す」ものである点。
<相違点I>(答弁書1では相違点2)
旧訂正発明が「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成」となっている(構成p.)のに対し、引用発明は具体的な配列構成が不明である。
<相違点J>(答弁書1では相違点3)
旧訂正発明の「可変表示制御手段」が「再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」る(構成q-1.)のに対し、引用発明は構成q-1.を具備しない。
<相違点K>(答弁書1では相違点4)
旧訂正発明の「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が<前記>再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ」る(構成q-2.)のに対し、引用発明は構成q-2.を具備しない。
<相違点L>(答弁書1では相違点5)
旧訂正発明の「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる」(構成q-3.)のに対し、引用発明は構成q-3.を具備しない。

(2-3)相違点に関する想到困難性(答弁書1の9?15頁(2.3))
<相違点Eの想到困難性>(答弁書1の9?10頁)
請求人は、構成o.について、甲5、甲6に記載されているとし、「本件特許発明も甲5、甲6に記載されている発明も、同一技術分野であり、部分的に構成を組み合わせることに困難性がない」と主張しているが(審判請求書47頁)、部分的に構成を組み合わせることに困難性がないか否かを検討すべきは、本件特許発明ではなく引用発明であるから、上記請求人の主張は失当である。
そこで、引用発明に対して甲5、甲6に記載されている発明を組み合わせることの想到困難性を検討すると、それらを組み合せることには、阻害要因が存在することが明白である。
なぜなら、引用発明は、「一旦、発生したヒットリクエストは、そのヒットリクエストに対応する入賞が得られるまで次回以降のゲームに持ち越すことによりペイアウト率を一定に維持することを目的とする発明」であるから、引用発明に「小役のフラグに関しては、揃わなければ消えてしまう」構成を適用すれば、「ペイアウト率を一定に維持すること」を図った引用発明の目的に反する方向に引用発明を変更することになるからである。
それゆえ、引用発明と甲5および甲6に記載の発明とが共にスロットマシンである点で共通することを考慮しても、甲5および甲6に記載の発明を引用発明に適用して相違点Eに係る旧訂正発明の構成o.に想到することは有り得ない。

<相違点Iおよび相違点Jの想到困難性>(答弁書1の10?12頁)
甲2?甲8には相違点IおよびJに係る旧訂正発明の構成p.q-1.のいずれもが記載されていない。
旧訂正発明は、構成n.の停止制御を実行することによって、停止操作タイミングに応じて識別情報を停止する遊技性を担保している。
その上で、旧訂正発明は、構成p.q-1.を具備することで、「射倖性を抑える観点から再ゲームを発生させるべきタイミングにおいては、必ず再ゲームを発生させる」ことを可能にしている。
一方、引用発明は、旧訂正発明とは異なる「入賞の発生に利用されなかったヒットリクエストを次回以降のゲームに持越す」という構成を採用することにより、「ヒットリクエストによって予定された入賞を遊技者が発生させることができなかった場合でも、ペイアウト率に変動をきたさないようにする」という発明の目的を達成している。
このことから、仮に、引用発明に入賞態様として「再ゲーム」を加えたとしても、引用発明は予定された再ゲームを遊技者が発生させることができなかった場合でも、ペイアウト率に変動をきたさないから、引用発明において、わざわざ再ゲーム当選フラグのみがセットされたゲームにおいて必ず再ゲームを発生させる必要性がない。

<相違点Kおよび相違点Lの想到困難性>(答弁書1の12?15頁)
請求人は、相違点Lに係る旧訂正発明の構成q-3.と同一の技術が甲7に記載されている旨主張する(審判請求書50頁7?17行)。一方、相違点Kに係る旧訂正発明の構成q-2.は、甲2?甲8のいずれにも記載されていない。
旧訂正発明は、構成q-2.と構成p.の双方を具備することで、ビッグボーナス当選フラグより再ゲーム当選フラグを優先させ、必ず再ゲームを発生させることができ、ビッグボーナス発生タイミングを遅らせ、かつ、遊技者の単位時間当りの投資額を確実に抑えることができるので、遊技者の投資額及び遊技者への払出額の双方から射倖性を適度に抑えることが可能になるという特有の効果を奏する。
請求人は、いずれを優先させるのかに技術的な意味はなく、停止制御に関するルールを定めただけであり、当業者が行う単なる選択的な設計事項に過ぎない旨主張しているが(審判請求書50頁2?5行)、種類の異なる当選フラグが2つセットされているゲームにおいて、いずれを優先すれば射倖性と遊技性との両立を可能にするかという技術的思想のない引用発明について、相違点Kに係る旧訂正発明の構成を付加することが単に選択的に行う設計事項に過ぎないなどということはできない。
また、そうであるから、相違点Lに係る旧訂正発明の構成q-3.が甲7に記載されているとしても、ビッグボーナス当選フラグと小役当選フラグとがセットされた状態において、いずれの当選フラグを優先して停止制御に用いるかという相違点Lに係る旧訂正発明の技術思想が引用発明に入り込む余地もまた、存在しない。
請求人は、甲8には、複数のフラグが立っているときには、優先順位が必要であることが記載されていると共に、その優先順位に意味がないことが記載されているとした上で、順序をいずれにするかについては、甲8に記載されているように当業者が単に選択的に行う設計事項に過ぎないとも主張するが、優先順位に意味がないことが甲8に記載されているのであれば、これに接した当業者は、優先順位に意味のある旧訂正発明にますます想到することはないといわざるを得ない。
さらに、請求人は2つのフラグが立っているときにフラグの優先順位を決定しておくことが停止制御に必須であるかのような主張も試みているが(審判請求書49頁15?23行)、そのようなときにフラグの優先順位を決定しておくことは、停止制御において必須とはいえない。
このように、相違点K及びLに係る旧訂正発明の構成が、単に選択的に行う設計事項に過ぎないとの請求人の主張はいずれも理由がない。

第六.無効理由Aについての当審の判断
1.はじめに
請求人は、平成21年8月24日付け手続補正書においては、特許法39条2項違反の証拠として、甲10(特許第4058083号公報)の請求項1にかかる発明(以下「甲10発明」という。)を挙げているが、平成22年4月9日付け口頭審理陳述要領書に記載されるように、平成22年3月17日付け訂正請求書により訂正された請求項1にかかる発明と甲10発明との相違点は10(相違点☆1?☆10)、上記訂正された請求項1にかかる発明と甲11(特許第4058089号公報)の請求項1にかかる発明(以下「甲11発明」という。)との相違点は9(相違点★1?★9)であって、かつ、前者は後者の相違点を全て含んでいる。
そして、その関係は本件訂正発明と甲10発明及び甲11発明との対比においても同様である。
すなわち、本件訂正発明と甲11発明が同一の発明であれば、甲10発明について検討するまでもなく本件特許は無効となり、本件訂正発明と甲11発明が同一の発明でなければ、甲10発明も本件訂正発明とは同一の発明でないこととなるから、無効理由Aの検討に当たっては甲11発明を選択する。

2.甲11発明
甲11発明は、次のとおりである。
(記号a、c、d-1?d-3、g”、l’、m?q-2、q-3’、v及びzは、弁駁書2の7?9頁において付された記号に準じて付した。)
「a. 遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、
c. 前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、
d-1. 通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、
d-2.通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ、
d-3.通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と、
l’. 前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役別に、当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段と、
m. 該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と、
g”. 前記可変表示部を停止操作するための停止操作手段と、
n. 該停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを含み、
o. 前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し、
v. 前記判定手段は、既に前記ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには、前記ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定せず、
p. 前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、
q. 前記可変表示制御手段は、
q-1. 再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-2. 前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-3’. 前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる制御を行なうことを特徴とする、
z.スロットマシン。」

3.本件訂正発明と甲11発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲11発明を比較すると次のことがいえる。
(1)「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、」(構成a)の点で両者は一致している。

(2)「前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え、前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ、」(構成b)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成bを備えているか明らかでない(以下「相違点1」という。)。

(3)「前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、」(構成c)の点で両者は一致している。

(4)「通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段」(構成d-1?d-3)の点で両者は一致している。

(5)「1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段」(構成e)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成eを備えているか明らかでない(以下「相違点2」という。)。

(6)「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段」(構成f’)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成f’を備えているか明らかでない(以下「相違点3」という。)。

(7)本件訂正発明の「停止操作手段」(構成g’)は「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた」ものであるのに対し、甲11発明の「停止操作手段」(構成g”)は「前記可変表示部を停止操作するための」ものであって、各可変表示部に対応して設けられたものであるか明らかでない(以下「相違点4」という。)。

(8)本件訂正発明は「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段」(構成h’)を備えているとともに、該「停止操作有効化手段」は「前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず」(構成α)というものであるのに対し、甲11発明は構成h’及び構成αを備えているか明らかでない(以下「相違点5」という。)。

(9)「該停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段」(構成i)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成iを備えているか明らかでない(以下「相違点6」という。)。

(10)「前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段」(構成j)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成jを備えているか明らかでない(以下「相違点7」という。)。

(11)「前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段」(構成k)を本件訂正発明が備えているのに対し、甲11発明は構成kを備えているか明らかでない(以下「相違点8」という。)。

(12)本件訂正発明の「判定手段」(構成l)は「前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する」ものであるのに対し、甲11発明の「判定手段」(構成l’)は「前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役別に、当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する」ものである(以下「相違点9」という。)。

(13)「該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段」(構成m)を備える点で両者は一致している。

(14)「停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段」(構成n)を備える点で両者は一致している。

(15)「前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し、」(構成o)の点で両者は一致している。

(16)本件訂正発明の「定義データ格納手段」(構成k)には「前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されて」いる(構成β)のに対し、甲11発明は構成βを備えているか明らかでない(以下「相違点10」という。)。

(17)本件訂正発明の「判定手段」(構成l)は「前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、」(構成γ)というものであるのに対し、甲11発明の「判定手段」(構成l’)は、そのようなものであるか明らかでない点(以下「相違点11」という。)。

(18)甲11発明の「判定手段」(構成l’)は「既に前記ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには、前記ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定せず、」(構成v)というものであるのに対し、本件訂正発明の「判定手段」(構成l)は、そのようなものであるか明らかでない(以下「相違点12」という。)。

(19)「前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、」(構成p)の点で両者は一致している。

(20)本件訂正発明の「q. 前記可変表示制御手段は、
q-1. 再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-2. 前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-3. <前記セット手段によりセットされた>前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させることを特徴とする、」と、
甲11発明の「q. 前記可変表示制御手段は、
q-1. 再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-2. 前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
q-3’. 前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる<制御を行なう>ことを特徴とする、」について検討する(下線部は両者が一致していない箇所を示す。)。
まず、構成q-3の下線部についてみると、甲11発明の「前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲーム」における「前記ビッグボーナス当選フラグ」が「前記セット手段によりセットされた」ものであることは構成q-2から明らかである。
次に、構成q-3’の下線部についてみると、本件訂正発明の「可変表示制御手段」が停止に関する制御を行なうことは当然である。
よって、本件訂正発明の「可変表示制御手段」と甲11発明の「可変表示制御手段」は、実質的に一致している。

(21)「スロットマシン」(構成z)である点で両者は一致している。

4.相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1、3及び4について]
相違点1、3及び4は密接に関連しているので合わせて検討する。
構成aからみて、本件訂正発明と甲11発明は「複数の可変表示部が可変開始した後停止する」点では一致しているから、本件訂正発明が備える構成bは、その複数の可変表示部を限定するために「複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材」を追加するとともに、「前記複数の可動表示部材を回転開始させ」及び「前記複数の可動表示部材の回転を停止する」という点を追加するものである。
また、構成f’(基準位置検出手段)や構成g’(停止操作手段)も、追加された可動表示部材に付随して追加された構成ということができる。
したがって、相違点1、3及び4に係る構成b、f’及びg’についてみれば、本件訂正発明と甲11発明との関係は、「複数の可変表示部」に関して本件訂正発明が「複数の可動表示部材」やそれに付随する構成を限定した下位概念の発明、甲11発明がそのような限定のない上位概念の発明であるといえる。
(1)そうしてみると、本件訂正発明を先願発明、甲11発明を後願発明とした場合には、後願発明において下位概念である先願発明の発明特定事項(複数の可動表示部材等)を上位概念(複数の可変表示部)として表現したことによる差異にすぎないものとなるから、相違点1、3及び4の構成に関してみると、両者は実質的に同一である。
(2)また、本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合には、複数の可動表示部材及び各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段は、例えば、甲1(特開平2-232084号公報、特に1頁右欄〔従来の技術〕の項)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、各可動表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段も、例えば、甲14(特開昭56-70779号公報、特に3頁左下欄13?18行、3図及び8図)や甲21(特開平2-279183号公報、特に4頁左下欄4?14行及び1図)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるから、後願発明の発明特定事項(複数の可動表示部材)は、先願発明の発明特定事項(複数の可変表示部)に対して周知技術1及び2を付加したものに相当し、かつ、それによって新たな効果が奏せられるものでもないから、相違点1、3及び4に係る構成に関してみると、両者は実質的に同一である。

[相違点2、5及び6について]
相違点2、5及び6は密接に関連しているので合わせて検討する。
構成a及びg’によれば、甲11発明も「複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシン」であり、「可変表示部を停止操作するための停止操作手段」を備えているから、何らかの条件で複数の可変表示部を可変開始、すなわち1ゲームをスタートさせるとともに、何らかの条件で停止操作を有効化させていることは明らかである。
そうしてみると、本件訂正発明と甲11発明は、何らかの条件で1ゲームをスタートさせ、何らかの条件で停止操作を有効化させる点では一致しているから、本件訂正発明が備える構成eは、1ゲームをスタートさせるための何らかの条件を「スタート操作手段」の操作に限定するものであり、同じく構成h’(停止操作有効化手段)は、停止操作を有効化させるための何らかの条件(必要条件)を「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したこと」に限定し、構成αは、さらに「前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず」と限定するものである。
また、構成i(有効化報知手段)も、停止操作の有効化に関連して追加された構成ということができる。
したがって、相違点2、5及び6に係る構成e、h’、α及びiについてみれば、本件訂正発明と甲11発明との関係は、何らかの条件で1ゲームをスタートさせ、何らかの条件で停止操作を有効化させる点に関して、本件訂正発明が、前者の条件をスタート操作手段の操作に限定し、後者の条件を前記可動表示部材が回転開始した後、前記基準位置検出手段が前記基準位置を検出したことに限定するとともに、停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段を追加限定した下位概念の発明、甲11発明がそのような限定のない上位概念の発明であるといえる。
(1)そうしてみると、本件訂正発明を先願発明、甲11発明を後願発明とした場合には、後願発明において下位概念である先願発明の発明特定事項(スタート操作手段の操作等)を上位概念として表現したことによる差異にすぎないものとなるから、両者は実質的に同一である。
(2)また、本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合には、スタート操作手段の操作により1ゲームをスタートさせることは、例えば、甲1(特開平2-232084号公報、特に1頁右欄〔従来の技術〕の項)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)であり、全ての可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての基準位置検出手段が基準位置を検出したことを必要条件として停止操作手段の停止操作を有効化する点、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化しない点及び停止操作が有効化されたことを報知する点についても、例えば、甲20(特公平3-80038号公報、特に6欄25?36行)や甲21(特開平2-279183号公報、特に4頁右下欄10行?5頁左上欄7行)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)であるから、後願発明の発明特定事項(スタート操作手段の操作等)は、先願発明の発明特定事項に対して周知技術3及び4を付加したものに相当し、かつ、それによって新たな効果が奏せられるものでもないから、相違点2、5及び6に係る構成に関してみると、両者は実質的に同一である。

[相違点7?9について]
相違点7?9は密接に関連しているので合わせて検討する。
甲11発明は構成l’(複数種類の役別に、当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する判定手段)を備えている。
そうしてみると、本件訂正発明と甲11発明は、複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段を備えている点では一致しているから、本件訂正発明が備える構成j(数値情報を抽出する抽出手段)、構成k(定義データ格納手段)及び構成l(複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定)は、上記判定手段について、「前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段」を備えるものに限定するとともに、「前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する」点を限定するものである。
したがって、相違点7?9に係る構成j、k及びlについてみれば、本件訂正発明と甲11発明との関係は、上記判定手段に関して、本件訂正発明が、上記の限定を施した下位概念の発明、甲11発明が「複数種類の役別に、当選しているか否かを前記複数種類の役別に予め定めた当選確率に基づいて判定する」ものであるという上位概念の発明であるといえる。
(1)そうしてみると、本件訂正発明を先願発明、甲11発明を後願発明とした場合には、後願発明において下位概念である先願発明の発明特定事項(数値情報を抽出する抽出手段等)を上位概念として表現したことによる差異にすぎないものとなるから、両者は実質的に同一である。
(2)また、本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合には、スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段とを備え、前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、複数種類の役別に、当選しているか否かを判定することは、例えば、甲2(特開平4-327877号公報、特に段落【0009】?【0011】)や甲25(特開平4-307086号公報、特に段落【0008】、【0009】)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術5」という。)であるから、後願発明の発明特定事項(数値情報を抽出する抽出手段等)は、先願発明の発明特定事項に対して周知技術5を付加したものに相当し、かつ、それによって新たな効果が奏せられるものでもないから、相違点7?9に係る構成に関してみると、両者は実質的に同一である。

[相違点10及び相違点11について]
相違点10及び11は密接に関連しているので合わせて検討する。
相違点10についての、本件訂正発明と甲11発明との関係は、本件訂正発明が、構成β「定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、」及び構成γ「判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、」と限定した下位概念の発明、甲11発明が、定義データ格納手段及び判定手段に関して、そのような限定のない上位概念の発明であるといえる。
(1)そうしてみると、本件訂正発明を先願発明、甲11発明を後願発明とした場合には、後願発明において下位概念である先願発明の発明特定事項(定義データ格納手段及び判定手段)を上位概念として表現したことによる差異にすぎないものとなるから、両者は実質的に同一である。
(2)しかし、本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合には、本件訂正発明の定義データ格納手段及び判定手段に関する上記構成β及びγが従来周知の技術ではないので、両者を実質的に同一であるということはできない。
請求人は、上記第四.2.(2)<新相違点16および新相違点17について>の項に記載したように、
a.遊技機に対する当時の規制により各役ごとの期待値の合計が0.35枚超0.90枚未満であることが求められていたこと、
b.抽選確率を変えることによって各役の発生確率を変動させることは、当業者であれば誰でも設計プロセスにおいて適宜考える方法であること、
c.小役の抽選確率を変動させて価値付与状況を所定の範囲に保つための「フルーツの集中」(特定条件を満たすまで小役の内部抽選確率を飛躍的に高めるもの)と言われる技術が、2号機ないし3号機において多数の機種に採用されていたこと、
d.本件特許出願前に公然実施された「ニューパルサー」(4号機)が、通常遊技状態において価値付与状況を標準値と比較し、その結果に基づいて小役高確率状態と小役低確率状態とを切り替える遊技機であること、
e.その他の4号機も「ニューパルサー」と同様であること、
f.数値情報を抽出する抽出手段と定義データ格納手段とを備え、前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義されたいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって役に当選しているか否かを判定することが、従来周知の技術であること、
を根拠に、定義データ格納手段に高確率の定義データ、通常時の定義データを格納すること及びこれらの定義データを用いて小役の当選判定を行うことも従来周知の技術であると主張している。
しかし、上記a.b.c.f.の事項からは、価値付与状況を考慮して「フルーツの集中」を実行又は解除する遊技機が従来周知のものであったとすることはできない。
また、上記d.の事項について検討すると、「ニューパルサー」が本件特許の出願の基準日(以下「本件基準日」という。)より前に公然実施されたことのみをもって、通常遊技状態において価値付与状況を標準値と比較し、その結果に基づいて小役高確率状態と小役低確率状態とを切り替える遊技機が、本件基準日において公知又は公然実施された状態になっていたということはできない。
なぜなら、通常遊技状態において価値付与状況を標準値と比較し、その結果に基づいて小役高確率状態と小役低確率状態とを切り替えているか否かは、「ニューパルサー」を用いて遊技しただけで分かることではなく、「ニューパルサー」を分解し遊技プログラムを解析するか、開発メーカーが公表して初めて分かることであるとともに、そのような公表や解析が本件基準日である平成5年5月28日以前に行われ、公知の状態になったことを示す証拠もないからである。
そして、「ニューパルサー」が通常遊技状態において価値付与状況を標準値と比較し、その結果に基づいて小役高確率状態と小役低確率状態とを切り替える遊技機であることを解説した甲34(「差枚数カウンターの仕組み」欄)は平成7年、甲33(114頁3段目)は平成8年に、それぞれ発行されたものであり、平成5年8月1日発行(同年6月22日発売)の甲32(12?13頁)にも5月19日に閉店まで遊技した結果のデータが示されてはいるものの、小役の当選確率に関する記載はない。
さらに、上記e.の事項について検討すると、「ニューパルサー」以外の4号機は、弁駁書2の25頁1?5行で請求人も認めているように、遊技機自体の公然実施さえも本件基準日以降であるから、「ニューパルサー」と同様の機能を有していたとしても、本件訂正発明と甲11発明との同一性を左右できるものではない。

[相違点12について]
相違点12についての、本件訂正発明と甲11発明との関係は、複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段に関して、甲11発明が「既に前記ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには、前記ビッグボーナス役が当選しているか否かを判定せず」(構成v)と限定した下位概念の発明、本件訂正発明が、そのような限定のない上位概念の発明であるといえる。
(1)そうしてみると、甲11発明を先願発明、本件訂正発明を後願発明とした場合には、後願発明において下位概念である先願発明の発明特定事項を上位概念として表現したことによる差異にすぎないものとなるから、両者は実質的に同一である。
(2)次に、甲11発明を後願発明、本件訂正発明を先願発明とした場合について検討する。
複数種類の役別に当選しているか否かを判定する際に、既にボーナスフラグが成立しているときには、ボーナス役の抽選を行わないようにすることは、例えば、甲17(パチスロ必勝ガイド1993年4月)11頁左上の「ビッグ・集中・小役の判定の流れ」についての図や甲18(パチンコファン1992年5月)10頁左上の「役判定の仕組み」についての図及び同頁上から2列目10行?同3列目5行の「乱数計算が終わると、ボーナスフラグがONになっているかどうか判定する。つまり、ボーナステンパイ中なら、再度ボーナスになるかどうかの判定をする必要がないので、そのまま小役判定へ向かい、ボーナステンパイ、つまりボーナスのフラグが立っていなければボーナス判定へ行く。」という記載から分かるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術6」という。)である。
よって、後願発明の発明特定事項(構成v)は、先願発明の発明特定事項に対して周知技術6を付加したものに相当し、かつ、それによって新たな効果が奏せられるものでもないから、相違点12に係る構成に関してみると、両者は実質的に同一である。

5.まとめ
以上のとおりであるから、相違点1?9及び12に係る構成に関して両者は実質的に同一であるが、相違点10及び11に係る構成に関しては、本件訂正発明を後願発明、甲11発明を先願発明とした場合、本件訂正発明の定義データ格納手段及び判定手段に関する上記構成β及びγが従来周知の技術ではないので、両者を同一の発明であるということはできない。
そして、上記構成β及びγによって、訂正後の明細書等の段落【0093】に記載されている「通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御される」という効果を奏するものと認められる。
よって、本件訂正発明と甲11発明を同一の発明とすることはできず、また、上記1.で述べたとおり、本件訂正発明と甲11発明が同一の発明でなければ、甲10発明も本件訂正発明とは同一の発明でないこととなるから、本件特許が特許法39条2項の規定に違反してされたものということはできない。

第七.無効理由Bについての当審の判断
1.証拠方法
請求人が証拠方法として提出した甲1?8、参考例1?4、甲13?15、甲20?22及び甲25?35は、上記第四.1.に記載したとおりであるが、略記して再掲する。
【平成21年3月31日付け審判請求書に添付】
甲1:特開平2-232084号公報
甲2:特開平4-327877号公報
甲3:特開昭63-5778号公報
甲4:特公平3-10347号公報
甲5:パチンコファン (株)日本文芸社(1991.2.15)79頁
甲6:パチンコファン (株)日本文芸社(1992.5.15)12頁
甲7:パチスロ攻略マガジン (株)双葉社(1993.5.22)113頁
甲8:特開平1-198584号公報
【弁駁書1に添付】
参考例1:ウィキペディアの「パチスロ」に関する記事
参考例2:パチスロ完全攻略事典の「ベガスガール」の項
(株)日本文芸社(1993年5月21日、国会図書館受入)
参考例3:パチスロ必勝ガイド (株)白夜書房(1993.6.1)6,7,122頁
参考例4:パチスロ必勝ガイド (株)白夜書房(1993.7.1)4-9頁
【平成21年8月24日付け手続補正書に添付】
甲13:特開昭59-186580号公報
甲14:特開昭56-70779号公報
甲15:特開平1-238888号公報
甲20:特公平3-80038号公報
甲21:特開平2-279183号公報
甲22:特開平2-279184号公報
【平成22年4月9日付け口頭審理陳述要領書に添付】
甲25:特開平4-307086号公報
【弁駁書2に添付】
甲26:パチスロ必勝ガイド (株)白夜書房(1990.2.15)
12?17,22?23,28?31,36?39,42?43,96?97頁
甲27:改正 風俗営業等に関する法令集 大阪府遊技業協同組合
(昭和60年2月)101,116?121,199,203?205,259?267頁
甲28:型式試験結果書(アメリカーナX2) (財)保安電子通信技術協会
(昭和63年5月26日)別紙1、別紙1(D)?別紙10(D)
甲29:技術上の規格に関する解釈基準(回胴式遊技機)
日本電動式遊技機工業協同組合 (平成2年11月21日)1?10頁
甲30:平成18年度標準技術集 遊技機及びその関連技術 特許庁 20頁
甲31:パチスロ大図鑑1964?2000 (株)白夜書房(2007.5.21)100?101頁
甲32:パチスロ必勝ガイド (株)白夜書房(1993.8.1)11,13頁
甲33:パチスロ完全攻略事典VOL.4 (株)日本文芸社(1996.12.30)
90?91,100?101,114?115,138?139,152?153,160?161頁
甲34:ニューパルサー必勝ガイド (株)白夜書房(1995.6.5)
「差枚数カウンターの仕組み」の欄
甲35:特開平4-40976号公報

2.甲1(特開平2-232084号公報)に記載されている発明
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「〔実施例〕
本発明を用いたスロットマシンを示す第1図において、本体10の前面には、保守,点検時に開かれるドアパネル20がヒンジ12により開閉自在に取り付けられている。ドアパネル20には3個の窓21が設けられており、この窓21を通して本体10内で回転される3個のリールを各々観察することができる。符号23は、ゲームの開始に先立ち遊技者がメダルを投入するためのメダル投入口である。遊技者が1?3個のメダルを投入してスタートレバー26を操作すると、本体10内で3個のリールが一斉に回転し、一定時間が経過してストップ操作が有効化されると、ストップランプ27が点灯してストップボタン25の操作が有効化されたことを表示する。
ストップランプ27の点灯後、リールごとに設けられたストップボタン25を押すと、対応するリールが停止される。そして、全てのリールを停止させた結果、窓21から観察されるシンボルマークの組み合わせが入賞に該当しているときには、その入賞に応じて予め決められたメダルの配当枚数が表示部22にデジタル表示され、その枚数のメダルがメダル払出し口30から受皿31に排出される。
リールを観察するための窓21の部分を詳細に示した第2図において、各窓21A?21Cからは、各リールのシンボルマークSが各々3個ずつ観察されるようになっている。これらの窓21A?21Cの周囲には、5本の入賞判定ライン1,2A,2B,3A,3Bが設けられている。そして、ゲーム開始に先立って投入されるメダルが1枚のときには入賞判定ライン1だけが有効化され、2枚の場合にはさらに入賞判定ライン2A,2Bが追加され、また3枚のときには入賞判定ライン3A,3Bも追加される。なお、符号Lはランプを示し、どの入賞判定ラインが有効化されているかを表示する。」(3頁左上欄6行?左下欄2行)
「 第4図は入賞判定ライン決定後の基本的なゲーム処理の流れを表したフローチャートである。スタートレバー26の操作により3個のリールが回転され、所定時間が経過した後に後述するヒットリクエストの設定処理を待ってストップランプ27が点灯される。同図における判断プロセスP1,P2,P3は、回転中の3個のリールについてストップボタン25が押されたか否かを判断する処理を示す。なお、ストップボタン25の操作順は任意で、判断プロセスP4によって全てのリールが停止したことが確認されると、第5図に示した入賞判定処理,配当メダルの払出し処理が行われる。」(3頁左下欄11行?右下欄3行)
「そして、入賞している場合にはリクエスト減算処理を行ったうえで、ホッパーモータを駆動して配当メダルの払出し処理を行う。配当メダルは、例えばその払出し経路内に設けられたメダルカウンタで計数され、その計数値が予定枚数に達したときに払出しが終了して1ゲームが完了する。」(3頁右下欄16行?4頁左上欄2行)
「 破線部Bはリール駆動監視ブロックを示している。このスロットマシンは各リールR1,R2,R3は各々パルスモータM1,M2,M3によって駆動される。モータ駆動部60は、パルスモータM1,M2,M3に駆動パルスを供給する。各リールR1?R3の所定位置にはリセット信号部があり、1回転ごとにその通過が光電検出され、各リールごとのリセットパルスが位置検出入力ポート61からメインCPU50に入力される。したがって、リセットパルスが得られた後、パルスモータが停止するまでの間に何個の駆動パルスが供給されたかによって各リールのシンボルマークを特定することができる。」(4頁右上欄11行?左下欄3行)
「 次に本発明の特徴であるヒットリクエストの発生に関して詳述する。ヒットリクエストは、ゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果発生される。」(4頁右下欄1?5行)
「前述したヒットリクエストが発生すると、各ヒットリクエストをカウントするリクエストカウンタが「+1」され、RAM上にストアされる。」(5頁右下欄2?5行)
「 これまでに述べてきた大,中,小の各ヒットの例としては、大ヒットが15枚のメダル配当の後、ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒットが10?15枚の配当メダル払出し、小ヒットが2?5枚程度の配当メダルの払出し等のようにする。」(5頁右下欄12?17行)
「すなわち、パルスモー夕によれば、送り込まれる1個の駆動パルスごとに所定角度ずつリールが回転するので、例えば1個の駆動パルスによって1.8゜ずつ回転するパルスモー夕を使用し(200パルスで1回転する)、1リールに21個のシンボルマークを設ければ、200/21=9.523・・、すなわち9?10個の駆動パルスによりシンボルマーク1個分の回転をすることになる。そして前述したように、リールの周縁の1個所に光電検出できるリセット信号部を設け、このリセット位置におけるシンボルマークからリールの回転方向への配列にしたがって順に0?20の付番によるコードナンバーと、シンボルマークに対応するシンボルナンバーをROMにメモリしておけば、メインコントロール部によりリセットパルスが得られた後にモータに送られる駆動パルスの数を計数してコードナンバーを算出し、前述のコードナンバー及びシンボルナンバーがメモリされたROMを参照すれば、窓に現れているシンボルマークの種類が識別できることになる。」(6頁左上欄8行?右上欄7行)
「また、P14のストップコントロール処理では、すでに得られたヒットリクエストに対応した入賞を得るためのシンボルマークがストップボタンの操作時に、前述した4個のシンボルマークの範囲内に存在するか否かを、コードナンバーに基づいて判断し、存在する場合にはさらに何個の駆動パルスをモータに送り出せばよいかを算出する。そして、P15の処理により、算出された分の駆動パルスを計数してからモータをストップさせ、P16の処理でコードナンバーとシンボルナンバーとの参照を行うことになる。」(7頁左上欄4?14行)
「第3リールの停止により、窓に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、これで第14図に示した各RAMエリアが全てのデータをもつことになる。そして、この時点で再度第22図の入賞判定処理が実行される。この判定処理の結果、入賞の場合にはそのゲーム開始時に得られていたヒットリクエストを減算し、メダル支払いのためのホッパーモータがONされる。」(9頁左下欄4?11行)
「また、リールの処理は4コマずれを想定して説明してきたが、このためヒットリクエストに対応したシンボルが4コマずれの範囲内に存在しないこともあり得る。(特に大ヒットシンボルは少ないため、充分あり得る。)このような場合にはヒットリクエストを満足しない結果となってしまい、設定された入賞確率が低下することになり、特に大ヒットでその影響が大きくなる。これを適正化するために、ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には、そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越され、再びこのヒットリクエストを用いてリールの停止制御が実行されるから、ペイアウト率が変わることはない。」(9頁右下欄3?16行)

摘記した上記の記載及び図面の記載等によれば、甲1には、
「 ゲームの開始に先立ち遊技者がメダルを投入し、3個の窓21から回転される3個のリールを各々観察することができ、全てのリールが停止したことが確認されると、入賞判定処理,配当メダルの払出し処理が行われて1ゲームが完了するスロットマシンであって、
前記3個のリールには、それぞれ21個のシンボルマークを設け、それらが一斉に回転し、ストップボタン25を押すと、対応するリールが停止され、
前記3個の窓21は窓21A?21Cから成り、それらの周囲には5本の入賞判定ライン1,2A,2B,3A,3Bが設けられ、投入されるメダルが1枚のときには入賞判定ライン1だけが有効化され、2枚の場合にはさらに入賞判定ライン2A,2Bが追加され、また3枚のときには入賞判定ライン3A,3Bも追加され、
前記3個の窓21に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、大ヒットの場合に、15枚のメダル配当の後、ボーナスゲームができるようになり、
中ヒットの場合に、10?15枚の配当メダルを払出し、小ヒットの場合に、2?5枚程度の配当メダルを払出し、
その操作により前記3個のリールが回転されるスタートレバー26と、
各リールR1?R3の所定位置に1回転ごとにその通過が光電検出されるリセット信号部があり、
前記ストップボタン25はリールごとに設けられ、
前記3個のリールが一斉に回転し、一定時間が経過してストップ操作が有効化されると、ストップランプ27が点灯して前記ストップボタン25の操作が有効化されたことを表示し、
ゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果、ヒットリクエストが発生され、各ヒットリクエストをカウントするリクエストカウンタが+1され、
すでに得られたヒットリクエストに対応した入賞を得るためのシンボルマークが、前記ストップボタン25の操作時に範囲内に存在するか否かを判断し、存在する場合にはさらに何個の駆動パルスをモータに送り出せばよいかを算出し、算出された分の駆動パルスを計数してからモータをストップさせるストップコントロール処理を行い、
前記ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には、そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越されるスロットマシン。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.本件訂正発明と甲1発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲1発明とを比較すると、甲1発明の「3個の窓21」は、本件訂正発明の「複数の可変表示部」に相当し、以下同様に、
「完了する」は「終了する」に、
「3個のリール」は「複数の可動表示部材」に、
「シンボルマーク」は「識別情報」に、
「それらが一斉に回転し」は「前記複数の可動表示部材を回転開始させて」に、
「入賞判定ライン1,2A,2B,3A,3B」は「当りライン」に、
「大ヒットの場合」は「前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったとき」に、
「ボーナスゲームができるようになり」は「ビッグボーナスに移行させ」に、
「各リールR1?R3の所定位置」は「各可動表示部材の所定箇所」に、
「前記3個のリールが一斉に回転」は「全ての前記可動表示部材が回転開始」に、
「乱数値」は「数値情報」に、
「ROM」は「定義データ格納手段」に、
「入賞テーブル」は「定義データ」に、
「ヒットリクエスト」は「判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグ」に、
「リクエストカウンタ」は「当選フラグをセットするセット手段」に、
「前記ストップボタン25の操作時」は「前記停止操作手段が操作されたとき」に、
「ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合」は「前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないとき」に、それぞれ相当する。

また、甲1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.甲1発明のスロットマシンは「ゲームの開始に先立ち遊技者がメダルを投入」しており、その「メダル」が「遊技者所有の有価価値」であることはいうまでもないことであるから、本件訂正発明の「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能」となるスロットマシンに相当する。
また、甲1発明のスロットマシンには、15枚のメダル配当の後、ボーナスゲームができる大ヒット入賞や2?5枚程度の配当メダルが払出される小ヒット入賞があり、その「ボーナスゲーム」は本件訂正発明の「ビッグボーナス」といえるので、甲1発明は本件訂正発明の「ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置」を含むものということができる。
そうしてみると、甲1発明の「スロットマシン」は、本件訂正発明の「遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシン」に相当している。

b.甲1発明の「3個のリール」のそれぞれに設けられた「21個のシンボルマーク」は、第12図からも分かるように複数種類(A?G)あるから、甲1発明は、本件訂正発明の「前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え」に相当する構成を備えているといえる。
また、甲1発明において、3個のリールが回転することにより、シンボルマークが3個の窓21に対し移動するとともに、3個のリールが停止することにより、シンボルマークが3個の窓21に停止することも明らかであるから、甲1発明は、本件訂正発明の「前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ」に相当する機能を有するものといえる。

c.甲1発明の「窓21A?21C」は、それぞれ左・中・右に配置されていることが第2図から明らかであるから、本件訂正発明の「左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部」に相当するとともに、甲1発明において「投入されるメダルが1枚のときには入賞判定ライン1だけが有効化され、2枚の場合にはさらに入賞判定ライン2A,2Bが追加され、また3枚のときには入賞判定ライン3A,3Bも追加され」ることは、本件訂正発明において「賭数の入力によって有効な当りラインが設定される」ことに相当している。

d.甲1発明において「前記3個の窓21に現れている全てのリールのシンボルマークが確定」することは、本件訂正発明において「通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果」が定まることに相当する。
また、甲1発明において「中ヒットの場合」及び「小ヒットの場合」は、本件訂正発明において「前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったとき」に相当し、それらの場合配当メダルを払い出すのみでボーナスゲームができるようにはならないから、本件訂正発明の「前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ」に相当する状態になるといえる。
そうすると、甲1発明は、本件訂正発明の「通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生」させる遊技制御手段に相当する手段を有するものといえる。

e.甲1発明において「3個のリールが回転される」ことは1ゲームをスタートさせることにほかならないから、甲1発明の「その操作により前記3個のリールが回転されるスタートレバー26」は、本件訂正発明の「1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段」に相当する。

f.甲1発明の「リセット信号部」は、各リールR1?R3の所定位置にあるから、本件訂正発明の「各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置」に相当する。
また、甲1発明は「リセット信号部」の通過を1回転ごとに光電検出しているから、「リセット信号部」を検出するための手段(本件訂正発明の「基準位置検出手段」に相当)が、各リールに設けられていることは明らかである。
よって、甲1発明と本件訂正発明は、“各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材に各々設けられた基準位置検出手段”を備える点で共通している。

g.甲1発明の「ストップボタン25」はリールごとに設けられているから、本件訂正発明の「前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段」に相当する。

h.甲1発明の「ストップ操作」は、本件訂正発明の「前記停止操作手段の停止操作」に相当し、甲1発明がストップ操作を有効化するための手段(本件訂正発明の「停止操作有効化手段」に相当)を備えていることも自明であるから、甲1発明と本件訂正発明は、“全ての前記可動表示部材が回転開始した後、前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段”を備える点で共通している。

i.甲1発明において「ストップボタン25の操作が有効化されたことを表示」することは、本件訂正発明において「停止操作が有効化されたことを報知する」ことに相当するから、甲1発明の「ストップランプ27」は、本件訂正発明の「停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段」に相当する。

j.甲1発明は、ゲーム開始時に「乱数値」をサンプリングするものであるから、本件訂正発明の「前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段」に相当する構成を備えているといえる。

k.甲1発明は、「乱数値と、ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果」、本件訂正発明の「当選フラグ」に相当する「ヒットリクエスト」を発生するものであり、「ヒットリクエスト」に「大ヒット」(本件訂正発明の「ビッグボーナス役」に相当)と「中ヒット」及び「小ヒット」(本件訂正発明の「小役」に相当)が含まれるから、甲1発明と本件訂正発明は“前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段と、前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段”を備える点で共通している。

l.甲1発明の「すでに得られたヒットリクエスト」が、本件訂正発明の「前記セット手段によりセットされている当選フラグ」に相当しているとともに、甲1発明はそのヒットリクエストに基づいて所定の停止可能範囲内に位置する該ヒットリクエストに対応した入賞を得るためのシンボルマークを所定位置に停止させる制御を行っているから、甲1発明の「ストップコントロール処理」を行う手段は、本件訂正発明の「前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段」に相当するものといえる。

m.甲1発明において「ヒットリクエストが次回のゲームに持ち越される」ということは、本件訂正発明において「当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し」とすることに相当するから、甲1発明と本件訂正発明とは、“前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、その当選フラグを次回のゲームに持越し可能”な遊技制御手段を備えている点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、
前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え、前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ、
前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させる遊技制御手段と、
1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段と、
各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材に各々設けられた基準位置検出手段と、
前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段と、
全ての前記可動表示部材が回転開始した後、前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段と、
該停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段と、
前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、
前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段と、
前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と、
前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを備え、
前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、その当選フラグを次回のゲームに持越し可能である、スロットマシン。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点A]本件訂正発明が「通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段」を有するのに対して、甲1発明はそのような再ゲームを発生させる手段を有していない点。

[相違点B]本件訂正発明の「基準位置検出手段」は、「各可動表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側」に設けられているのに対して、甲1発明の「リセット信号部」を検出するための手段は設置位置が不明な点。

[相違点C]本件訂正発明は「全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する」のに対して、甲1発明は「前記3個のリールが一斉に回転し、一定時間が経過」するとストップ操作が有効化される点。

[相違点D]本件訂正発明は「複数種類の役」が「前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む」のに対して、甲1発明は「再ゲーム役」に相当する役を含まない点。

[相違点E]本件訂正発明は「前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し」とするのに対して、甲1発明はヒットリクエストが何であるかによらず、ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には、そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越される点。

[相違点F]本件訂正発明の「停止操作有効化手段」が、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化しないのに対して、甲1発明においては、一定時間が経過するとストップ操作が有効化される点。

[相違点G]本件訂正発明の「定義データ格納手段」には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されているのに対して、甲1発明の「入賞テーブル」にはどのようなデータが格納されているか明らかでない点。

[相違点H]本件訂正発明の「判定手段」は「前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定を」しているのに対し、甲1発明はどのような入賞テーブルを用いてヒットリクエストが発生されるか明らかでない点。

[相違点I]本件訂正発明は「複数の可変表示部の識別情報の配列」が「停止可能範囲内に必ず再ゲーム識別情報が存在する配列構成」となっているのに対して、甲1発明には再ゲームを発生させるためのシンボルマークがない点。

[相違点J]本件訂正発明は、「可変表示制御手段」が「再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止」させるのに対して、甲1発明には再ゲーム当選フラグに相当するヒットリクエストがない点。

[相違点K]本件訂正発明は、「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止」させるのに対して、甲1発明はそのようなストップコントロール処理を行っていない点。

[相違点L]本件訂正発明は、「可変表示制御手段」が「前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させる」のに対して、甲1発明はヒットリクエストが次回のゲームに持ち越されたときにどのようなストップコントロール処理を行っているか明らかでない点。

4.本件訂正発明と甲1発明の相違点についての判断
[相違点A及びDについて]
相違点A及びDは密接に関連しているので合わせて検討する。
通常ゲーム終了時の複数の可変表示部の有効な当りライン上の停止結果が再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させるようにすることは、例えば、甲2(特開平4-327877号公報、特に、段落【0008】)や甲3(特開昭63-5778号公報、特に、3頁左下欄13行?右下欄3行)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術A」という。)であるから、甲1発明の3個のリールに再ゲーム用シンボルマークを付加するとともに、大ヒット、中ヒット、小ヒットの外に再ゲームを加え、3個のリールが停止され、3個の窓21に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、入賞判定ライン上の再ゲーム用シンボルマークによって再ゲームとなった場合に、メダルを投入することなくゲームが可能となるようにして、上記相違点A及びDに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、その構成により得られる効果も、甲1発明及び周知技術Aから当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

[相違点Bについて]
基準位置検出手段を各可動表示部材の回転基準位置よりも回転軸方向内側に設けることは、例えば、甲14(特開昭56-70779号公報、特に3頁左下欄13?18行、3図及び8図)や甲21(特開平2-279183号公報、特に4頁左下欄4?14行及び1図)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術B」という。)であるから、甲1発明の「リセット信号部」を検出するための手段をリセット信号部よりも回転軸方向内側に設け、上記相違点Bに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、その構成により得られる効果も、甲1発明及び周知技術Bから当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

[相違点C及びFについて]
相違点C及びFは密接に関連しているので合わせて検討する。
全ての可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての基準位置検出手段が基準位置を検出したことを必要条件として停止操作手段の停止操作を有効化する点、及び前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化しない点は、例えば、甲20(特公平3-80038号公報、特に6欄25?36行)や甲21(特開平2-279183号公報、特に4頁右下欄10行?5頁左上欄7行)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術C」という。)であるから、甲1発明において、3個のリールが一斉に回転し、一定時間が経過するとストップ操作が有効化されるのに代えて、3個のリールが一斉に回転し、所定時間が経過するまでに全てのリセット信号部が検出されると、前記所定時間経過後にストップ操作が有効化され、そうでない場合にはストップ操作を有効化しないようにして、上記相違点C及びFに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、その構成により得られる効果も、甲1発明及び周知技術Cから当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

[相違点Eについて]
複数の可変表示部の有効な当りライン上の停止結果がセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、ビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越すことは、例えば、甲5(パチンコファン平成3年2月号、特にパチスロの専門用語の最終段)や甲6(パチンコファン平成4年5月号、特に12頁下段の「フラグというけれど…」の項)に記載されるように、スロットマシンの分野において従来周知の技術(以下「周知技術D」という。)であるから、甲1発明において、ヒットリクエストが何であるかによらず、ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合には、そのヒットリクエストが次回のゲームに持ち越されるようにするのに代えて、大ヒット(本件訂正発明の「ビッグボーナス役」に相当)のヒットリクエストは持ち越し、他のヒットリクエストは消去するようにして、上記相違点Eに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、その構成により得られる効果も、甲1発明及び周知技術Bから当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。
被請求人は、第五.2.(3)<相違点Eの想到困難性>の項に記載したように、甲1発明に甲5、甲6に記載されている発明を組み合せることには、阻害要因が存在する旨主張している。
しかし、甲1の9頁右下欄9?11行には、「設定された入賞確率が低下することになり、特に大ヒットでその影響が大きくなる。」と記載されており、裏を返せば中ヒット、小ヒットはそれほど影響が大きくないと認識しているから、甲1発明において周知技術Dを採用することに阻害要因が存在するとまではいえない。

[相違点G及びHについて]
相違点G及びHは密接に関連しているので合わせて検討する。
スロットマシンの遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合に、通常ゲームにおいて小役の当選判定率のみを向上させるための高確率時の定義データを用い、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合に通常ゲームにおいて小役の当選判定率のみを低下させるための通常時の定義データを用いる点は、本件基準日より前に公知のもの、公然実施されたもの及び頒布された刊行物に記載されたものということはできず、まして、周知の技術であったということもできない。
そうすると、相違点G及びHに係る本件訂正発明のような構成とすることを、どのような入賞テーブルを用いてヒットリクエストが発生されるか明らかでない甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たということはできない。
そして、上記構成β及びγによって、訂正後の明細書等の段落【0093】に記載されている「通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御される」という効果を奏するものと認められる。
請求人は、上記第四.3.(3)<相違点G,Hについて>の項に記載したように、甲2及び甲25?34に、高確率の定義データ、通常時の定義データを定義データ格納手段に格納すること、これら高確率の定義データ、通常時の定義データを用いて小役の当選判定を行うことが記載されていることから、相違点G,Hにかかる構成β,γは、当業者が容易になし得たものである旨主張している(弁駁書2の35頁)。
しかし、上記第六.4.[相違点10及び相違点11について]の項で述べたとおり、「ニューパルサー」が本件基準日より前に公然実施されたことのみをもって、通常遊技状態において価値付与状況を標準値と比較し、その結果に基づいて小役高確率状態と小役低確率状態とを切り替える遊技機が、本件基準日において公知又は公然実施された状態になっていたとはいうことはできず、「ニューパルサー」がそのような遊技機であることを解説した甲33は平成8年、甲34は平成7年に、それぞれ発行されたものであり、平成5年8月1日発行(同年6月22日発売)の甲32(12?13頁)には小役の当選確率に関する記載もない。
さらに、「ニューパルサー」以外の4号機は、弁駁書2の25頁1?5行で請求人も認めているように、遊技機自体の公然実施さえも本件基準日以降である。

[相違点I及びJについて]
相違点I及びJは密接に関連しているので合わせて検討する。
上記[相違点A及びDについて]の項で述べたとおり、甲1発明の3個のリールに再ゲーム用シンボルマークを付加するとともに、大ヒット、中ヒット、小ヒットの外に再ゲームを加え、3個のリールが停止され、3個の窓21に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、入賞判定ライン上の再ゲーム用シンボルマークによって再ゲームとなった場合に、メダルを投入することなくゲームが可能となるようにして、上記相違点A及びDに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
しかし、甲1発明の3個のリールに付加した再ゲーム用シンボルマークを、再ゲームのヒットリクエストが発生した時に、必ず有効な当りライン上に停止できるように配列することまでもが、当業者にとって容易になし得る事項であるということはできない。
なぜなら、甲1発明は、従来のスロットマシンにおけるヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合にペイアウト率が低下するという課題を解決するために、ヒットリクエストを持ち越すという手法を採用しているところ、上記[相違点Eについて]の項で述べたように、周知技術D及び甲1に大ヒットの入賞取りこぼしはペイアウト率低下の影響が大きくなる旨の記載があることを考慮して大ヒットのヒットリクエストは持ち越し、他のヒットリクエストは持ち越さないとすることまでは当業者にとって容易といい得るものの、さらに追加した再ゲームについてはヒットリクエストが発生されたら必ず有効な当りライン上に停止できるように再ゲーム用シンボルマークを配列するという手法は、甲1発明が採用している上記の手法とは異質のものであり、かつ、それら異質な手法を組み合わせてペイアウト率の低下を防止することが公知又は周知の技術であったということもできないからである。
請求人は、上記第四.3.(3)<相違点Iについて>及び同<相違点Jについて>の項に記載したように、本件訂正発明のような再ゲーム識別情報の配列構成は弁駁書1に添付した参考例2?4に記載されている周知技術に過ぎないから、相違点I及びJに係る構成p及びq-1は、当業者が容易になし得たものである旨主張している(弁駁書2の35?37頁)。
しかし、参考例2?4に記載の「ベガスガール」に関する記事には、リール配列図が示されるとともに、参考例2(パチスロ完全攻略事典の「ベガスガール」の項)には「ガール図柄(リプレイ)は、ほぼ100%の引き込み率を持っているようだ。」、参考例3(パチスロ必勝ガイド1993年6月号)には「再ゲームは押し順を変えてもおそらく揃うように設定されている。」と記載されている程度であり、リプレイフラグが立つとガール図柄が必ず揃うと記載されているわけではない。
さらに、リプレイフラグが立った時ガール図柄が必ず揃うものであったとしても、参考例2?4にはボーナス役の持ち越しとガール図柄の配列とを組み合わせて、ペイアウト率の低下を防止するという目的は記載されておらず、自明なものであるということもできない。

[相違点K及びLについて]
相違点K及びLは密接に関連しているので合わせて検討する。
上記[相違点A及びDについて]及び[相違点Eについて]の項で述べたとおり、甲1発明の3個のリールに再ゲーム用シンボルマークを付加するとともに、大ヒット、中ヒット、小ヒットの外に再ゲームを加えること、大ヒットのヒットリクエストは持ち越し、他のヒットリクエストは持ち越さないようにして、上記相違点A、D及びEに係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
しかし、甲1発明において、大ヒットのヒットリクエストは持ち越し、他のヒットリクエストは持ち越さないとした上で、大ヒットのヒットリクエストが持ち越されたゲームにおいて、再ゲームのヒットリクエストが発生した時には再ゲーム用シンボルマークが有効な当りライン上に停止するようにストップコントロール処理を行い、中ヒット又は小ヒットのヒットリクエストが発生した時には大ヒット用シンボルマークが有効な当りライン上に停止するようにストップコントロール処理を行うことまでもが、当業者にとって容易になし得る事項であるということはできない。
なぜなら、甲1発明のように、全てのヒットリクエストを持ち越す遊技機であれば、いずれのヒットリクエストを優先してストップコントロール処理を行っても、ペイアウト率に影響はなく単に入賞順が決定されるのみであるから、その優先順位には何の技術的意味もないといえるが、大ヒットのヒットリクエストは持ち越し、他のヒットリクエストは持ち越さないとした場合には事情が異なるからである。
すなわち、大ヒットのヒットリクエストを優先した場合には、他のヒットリクエストは消去される確率が高くなるからペイアウト率は低下し、逆に他のヒットリクエストを優先し、かつ他のヒット入賞を得やすくした場合には、他のヒットリクエストの消去される確率は低くなるからペイアウト率は設定値に近づくこととなる。
そして、このような状況の下においては、本件訂正発明のように、ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて、再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったときには再ゲーム識別情報を所定位置に停止させ、小役当選フラグがセットされた状態となったときには停止操作手段が操作され所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中にビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を所定位置に停止させることによって、格別の効果が奏せられるものといえる。
請求人は、上記第四.3.(3)<相違点Lについて>の項に記載したように、甲7(パチスロ攻略マガジン1993年5月号)の113頁2列14?26行に、ボーナスと小役が重複した場合はボーナスを優先する旨の記載があるので、上記甲7に記載の技術は、本件訂正発明の構成q-3と同一であるといわざるを得ないと主張するが(弁駁書2の38?39頁)、本件訂正発明は、ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグの優先順及びビッグボーナス当選フラグと小役当選フラグの優先順の両方を規定するとともに、停止可能範囲内に必ず再ゲーム識別情報が存在する配列構成とすることで、訂正前の明細書等の段落【0009】に記載されている、遊技者の単位時間当りの投資額を抑えることができるのみならずビッグボーナス発生のタイミングを遅らせることができる、及び小役当選フラグがセットされていてもビッグボーナスを狙って停止操作すればビッグボーナスを発生させることが可能といった格別の効果を奏するから、甲1発明及び甲7の記載の技術等に基づいて、上記相違点K及びLに係る本件訂正発明のような構成とすることが当業者にとって容易ということはできない。

5.まとめ
よって、本件訂正発明は、甲1発明並びに甲2?8、参考例1?4、甲13?15、甲20?22及び甲25?35記載の技術等に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではなく、本件特許が特許法29条2項の規定に違反してされたものということはできない。

第八.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スロットマシン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンに関し、詳しくは、遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスロットマシンにおいて、従来から一般的に知られているものに、たとえば、遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の従来のスロットマシンにおいては、ビッグボーナスが発生すれば多量の有価価値を遊技者が手にする機会が与えられる一方、概してビッグボーナスが発生するまでは多額の投資が必要であるために、射倖性が高くなり過ぎてしまうおそれがあるという問題があった。また、小役の当選フラグが設定され、かつ、ビッグボーナスの当選フラグも設定されているときに、遊技者がビッグボーナスを狙って停止操作しても、小役を揃えようとする制御がなされた場合には、遊技者が狙ったビッグボーナスはおろか、小役を狙っていないタイミングで停止操作したがゆえに小役も揃わないおそれがある。この場合、遊技者の不満が募る。さらに、このような遊技機においてリールが駆動される場合、リールは、その駆動開始時にリールの慣性の影響によって徐々に回転を開始する。このため、リールの駆動開始直後からリールを停止させる停止操作手段の操作を有効化してしまうと、駆動開始当初にはリールの速度が遅いために可変表示装置に可変表示された識別情報を遊技者が簡単に認識できるので、遊技者が簡単に目的の識別情報を狙って停止させることが可能になってしまうという不都合があった。
そこで、リールがある程度回転したことを条件にして停止操作を有効化し、かつ、その有効化されたタイミングを遊技者に報知することが考えられるが、簡単な構成で、可変表示装置の可変表示開始時よりも適切な時間だけ遅らせて停止操作手段の停止操作を有効化できることが望ましい。
【0004】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、ビッグボーナスによる遊技の面白みを提供できながらも射倖性が高まり過ぎてしまうことを極力防止可能であり、かつ、簡単な構成にて、可変表示装置の可変表示開始時よりも適切な時間だけ遅らせて停止操作手段の停止操作を有効化してその有効化されたタイミングを報知することが可能なスロットマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、
前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え、前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ、
前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ、通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と、
1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段と、
各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段と、
前記可動表示部材の回転の基準となる基準位置を検出する基準位置検出手段と、
前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段と、
全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段と、
該停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段と、
前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、
前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段と、
前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と、
前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを備え、
前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し、
前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、
前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、
前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、
前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、
前記可変表示制御手段は、
再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、基準位置検出手段によって可動表示部材の回転の基準となる位置が検出されたことを必要条件として停止操作手段の停止操作が有効化されるために、可動表示部材がある程度回転した後に前記停止操作が有効になる。その結果、可変表示装置の可変表示開始時よりも遅らせて停止操作手段による停止操作が有効化できる。このような停止操作の有効化の制御は、従来からこの種のスロットマシンに用いられている基準位置検出手段の検出情報を利用して行なうことができるので、このような制御を行なう場合の装置の構成を簡単化することが可能となる。このような停止操作の有効化のタイミングは有効化報知手段により報知されるので各遊技者は無駄な操作を行なうことが少なくなる。また、ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグとの双方がセットされているときに、ビッグボーナスの発生よりも再ゲームの発生が優先されることになり、セットされているビッグボーナス当選フラグによるビッグボーナスの発生は、次回のゲーム以降に持ち越される。その結果、再ゲームの発生よりもビッグボーナスの発生を優先させる場合よりも、遊技者がゲームを開始してからビッグボーナスの発生による利益を得るまでの時間を長くすることができるために、単位時間あたりの遊技者の利益額を抑えることができる。したがって、再ゲームの発生により、賭数の観点から遊技者の単位時間当りの投資額(いわゆるIN)を抑えることができるのみならず、ビッグボーナス当選フラグと再ゲーム当選フラグとの双方セット状態において、再ゲームの発生を優先させることで、ビッグボーナスの発生により遊技者に与えられる多額の利益(いわゆるOUT)の発生のタイミングを遅らせることができ、賭数の観点からの比較的小額のINのみならず、ビッグボーナス利益の観点からの比較的多額のOUTをも抑えることが可能になり、射倖性を適度に抑えることが、IN・OUTの双方から可能になる。一方、ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいてビッグボーナス当選フラグに加えて小役当選フラグがセットされたときには、ビッグボーナスの停止結果を表示させるための制御が小役の停止結果を表示させるための制御よりも優先的に行なわれるために、小役当選フラグがセットされていてもビッグボーナスを狙って停止操作すればビッグボーナスを発生させることが可能となり、ビッグボーナスを狙ったがために、ビッグボーナスも、当選フラグがセットされていた小役も揃わないということを極力防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るスロットマシンの一例を示す全体正面図である。スロットマシン1の機枠1Aにはカバー部材の一例の前面枠1Bが開閉自在に設けられており、その前面枠の上方部分の前面側の所定箇所には表示窓が設けられている。この表示窓には、可変表示装置90(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための可変表示部5L、5C,5Rが設けられている。この左可変表示部5L,中可変表示部5C,右可変表示部5Rは、それぞれに上下3段に識別情報を可変表示可能な大きさに構成されている。前面枠1Bは、通常時は閉成状態で施錠されており、遊技場の係員が所定の鍵をドア開閉用鍵穴3aに挿入して操作することにより解錠されて前面枠1Bが開成可能となる。そして、前面枠1Bの開閉状態がドアスイッチ44により検出される。
【0013】
スロットマシンの向かって左側にはカード処理装置76が設置されている。このカード処理装置76は、共通カードに記録されている記録情報により特定される遊技者所有の有価価値を使用してスロットマシン1によるゲームを可能にするためのものである。なお、共通カードとは、共通カードシステムに加盟している全国の遊技場において使用可能な第三者発行型のプリペイドカードのことである。遊技者がゲームを行なう場合には、まず共通カード販売機等により共通カードを購入し、使用可表示器77が点灯または点滅しているときに、その購入した共通カードを共通カード挿入・排出口79に挿入する。すると、挿入された共通カードの記録情報がカードリーダライタ78により読取られる。このカード処理装置76には、CPU,ROM,RAM等を内蔵するマイクロコンピュータ等からなるカード処理装置制御部80が設けられており、このカード処理装置制御部80によりカードリーダが制御される。そして、遊技者が貸出ボタン71を押圧操作すれば、その操作が貸出スイッチ72により検出され、その検出出力に基づいて所定枚数のコインがコイン払出口29からコイン貯留皿30内に払出される。その払出されたコインに相当する有価価値が、カード挿入・排出口79に挿入されている共通カードの記録情報によって特定される有価価値から減額される。そして、投入指示ランプ19が点灯または点滅しているときに、遊技者がそのコインをコイン投入口18から投入する。この投入指示ランプ19は、コインが3枚投入された時点(後述するボーナスゲームの中においては1枚投入された時点)で消灯する。遊技者がコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示装置90が可変開始されて各可変表示部5L?5Rにより複数種類の識別情報が可変表示される。次に、遊技者が各ストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すれば、それに対応する各可変表示部5L,5C,5Rの可変表示が停止されるように構成されている。なお、遊技者がいずれのストップボタン9L?9Rをも押圧操作しなければ、所定の時間の経過により可変表示装置70が自動的に停止制御される。この可変表示装置90が可変開始されてから停止する1回の可変停止により1ゲームが終了し、可変停止時の表示結果が後述するように特定の識別情報になれば所定の遊技価値が付与可能となる。
【0014】
後述するクレジットゲームではない通常のゲーム(コインゲーム)の場合において、遊技者が1枚のコインをコイン投入口18から投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける中段の横1列の有効ライン(当りライン)が有効となる。可変表示装置90の停止時に表示される識別情報が、この中段の横1列の有効ライン上において予め定められた特定の識別情報の組合せが成立した場合に、後述するビッグボーナスゲームやボーナスゲームの開始あるいは所定枚数のコインの払出し等の所定の遊技価値の付与が可能な状態となる。一方、遊技者がコインを2枚コイン投入口18に投入した状態でスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける横3列の有効ラインが有効となり、可変表示装置90の停止時の表示結果がこの横3列の有効ラインのいずれかのライン上において特定の識別情報の組合せが成立した場合に、所定の遊技価値が付与可能な状態となる。さらに、遊技者が3枚のコインをコイン投入口18に投入した状態でスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示部5L?5Rにおける横3列と斜め対角線上に2列の合計5本の有効ラインが有効となり、この5本の有効ラインにおけるいずれかのライン上において特定の識別情報の組合せが成立すれば、所定の遊技価値が付与可能な状態となる。すなわち、遊技者が1枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる1枚賭のゲームとなり、1本の有効ラインが有効となり、2枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる2枚賭のゲームとなり、3本の有効ラインが有効となり、3枚のコインを投入してスタートボタン12を押圧操作すれば、いわゆる3枚賭のゲームとなり5本の有効ラインすべてが有効となる。
【0015】
本実施例におけるスロットマシン1は、いわゆるクレジットゲームもできるように構成されている。クレジットゲームとは、予め大量のコインを投入して有価価値として蓄積しておき、あるいは賞品として付与されるコインを有価価値として蓄積しておき、いちいちコインを投入することなくその予め蓄積されている有価価値を使用して遊技を行なうゲームである。遊技者はゲーム切替ボタン16を1回押圧操作することにより通常のゲームからクレジットゲームに切換えることができ、さらにこのゲーム切替ボタン16を再度押圧操作すればクレジットゲームから通常のゲームに切換えることができる。クレジットゲームの場合には、合計コイン50枚分の価値を予め記憶させておくことができ、クレジット操作ボタン14を1回押圧操作することにより前述した1枚賭のゲームとなり、クレジット操作ボタン14を2回押圧することにより前述した2枚賭のゲームとなり、クレジット操作ボタンを3回押圧操作することにより前述した3枚賭のゲームとなる。なお、それぞれの賭数に対応してクレジット操作ボタンを設け、1枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより1枚賭のゲームとなり、2枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより2枚賭のゲームとなり、3枚賭用クレジット操作ボタンを押圧することにより3枚賭のゲームができるように構成してもよい。コイン投入口18またはクレジット操作ボタン14とにより、前記1ゲームのゲーム結果に賭ける遊技者所有の有価価値の大きさに対応する数である賭数を入力するための賭数入力手段が構成されている。
【0016】
図中21?23は有効ライン表示ランプであり、前述した賭数に応じて有効となる有効ラインに対応する有効ライン表示ランプのみが点灯または点滅し、どの有効ラインが有効になっているかを遊技者が認識できるように構成されている。11L,11C,11Rはそれぞれに左操作有効ランプ,中操作有効ランプ,右操作有効ランプであり、それぞれに対応するストップボタン9L,9C,9Rの押圧操作を有効に受付ける状態になった旨を点灯または点滅表示するためのものである。なお、この操作有効の報知は、ランプ表示等に加えてあるいはそれに代えて、音により報知するようにしてもよい。また、ランプ等を点滅状態から点灯状態に切換えたり、あるいは色を変えることで報知してもよい。図中25はゲーム回数・可変表示器であり、後述するビッグボーナスゲームカウンタやボーナスゲーム(レギュラーボーナスゲーム)カウンタの値を表示し、現在実行しているビッグボーナスゲームやボーナスゲームの回数を切換え表示し得るように構成されている。また、このゲーム回数・可変表示器25は、後述するようにビッグボーナスゲームの発生確率等可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる確率を変動させるか否かを抽選表示するための可変表示を行なうものとしても利用される。たとえば、このゲーム回数・可変表示器25は、「00」?「99」の10通りの可変表示が可能であり、「77」で2回確率変動制御を行ない、「33」で1回確率変動を行ない、その他の表示では確率変動を行なわないように制御する。また、図中70は貸出可表示器であり、カード挿入・排出口79に挿入された共通カードによって特定される遊技者所有の有価価値を使用してコインを貸出すことができるか否かを点灯または点滅表示するためのものである。75は残額表示器であり、カード挿入・排出口79により挿入された共通カードの記録情報に基づいて特定される遊技者所有の有価価値(残額)を表示するためのものである。73は返却ボタンであり、遊技者がこの返却ボタン73を押圧操作することによりその操作が返却スイッチ74より検出され、その検出信号に基づいてカード挿入・排出口79に挿入されている共通カードが遊技者側に排出されて返却される。26はクレジット表示器であり、クレジットゲーム時における記憶されている有価価値としてのコインの枚数を表示するためのものである。27は払出数表示器であり、入賞が成立した場合に付与されるコイン枚数を表示するためのものである。なお、クレジットゲームではない通常のゲームの場合には入賞が成立した場合には所定枚数(たとえば15枚)のコインがコイン払出口29から、コイン貯留皿30に払出され、クレジットゲームの場合には記憶上限(50枚)を越えない範囲内で付与されるコイン枚数が記憶される。なお、その記憶の上限(50枚)を越える場合にはその越えるコインがコイン貯留皿30内に払出される。
【0017】
スロットマシン1の前面側における表示窓71の下方には前面パネル2が設けられている。また、後述するビッグボーナスゲームが終了してゲームオーバーとなった場合でかつ後述するゲームオーバー有りのモードになっている場合には、リセット操作を行なわない限り再びゲームの続行可能な状態にはならないのであり、そのリセット操作はリセット用鍵穴3bに所定のキーを挿入して反時計回り方向へ操作することにより行なわれる。このリセット用鍵穴3bの時計回り方向への操作がリセットスイッチ4により検出され、その検出出力に基づいてスロットマシン1がリセットされて再びゲームが可能となる。また、図中28はスピーカであり、入賞時やビッグボーナスゲーム時、ボーナスゲーム時における効果音の発生や異常時における警報音の発生等が行なわれる。また、スロットマシン1の前面側における表示窓71の上方には、遊技効果ランプ24が複数設けられており、ビッグボーナスゲームやボーナスゲームの発生時に点灯または点滅表示される。また、図中20はゲームオーバランプであり、スロットマシンが打止(ゲームオーバ)になったときに点灯または点滅表示される。前述したように、スタートレバー12の押圧操作以前に何枚コインがコイン投入口18から投入されたかあるいはクレジットゲームにおいてはクレジット操作ボタン14が何回押圧操作されたかによってスロットマシン1の1ゲームにおけるゲーム結果に対する賭数が決定されるのである。図中64は再ゲーム表示ランプであり、後述するように再ゲームが可能となった場合に点灯表示される。
【0018】
図2は、スロットマシンの一部内部構造を示す全体背面図である。可変表示装置70は、複数(図面では3個)のリール6L,6C,6Rを有し、それぞれのリール6L,6C,6Rにはステッピングモータからなるリール駆動モータ7L,7C,7Rが設けられており、それぞれのリール駆動モータ7L?7Rによりそれぞれのリール6L?6Rが回転,停止するように構成されている。この各リール6L?6Rの外周には、図3に示すような複数種類の図柄からなる識別情報が描かれている。そして、このリール外周に描かれていた識別情報が前記可変表示部5L?5Rにより可変表示されるように構成されている。図中8L,8C,8Rはリール位置検出センサであり、各リールの基準位置を検出するものであり、各リール6L?6Rが1回転するたびに基準位置がこのリール位置検出センサ8L?8Rにより検出されて検出出力が導出される。遊技者がストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すればその操作がストップスイッチ10L,10C,10Rにより検出される。遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作すればその操作がゲーム切替スイッチ17により検出される。遊技者がスタートレバー12を押圧操作すればその操作がスタートスイッチ13により検出される。遊技者がクレジット操作ボタン14を押圧操作すればその操作がクレジットスイッチ15により検出される。遊技場の管理者等が所持する特定のキーを使用して確率設定用のキー操作が行なわれればキースイッチ43によりそれが検出され、その状態でドアスイッチ44(たとえばマイクロスイッチで構成されている)が能動化され、遊技場の管理者等がその能動化されたドアスイッチ44を操作することにより入賞確率を変更設定することが可能となるように構成されている。図中24は遊技効果ランプであり、25はゲーム回数表示器であり、26はクレジット表示器であり、27は払出数表示器であり、21?23は有効ライン表示ランプである。なお、払出数表示器27は、後述するようにエラーが発生したときのエラー原因を特定するエラーコードも表示する。
【0019】
コイン投入口18から投入されたコインはコイン径路31を通ってコインセレクタ32に誘導される。コインセレクタ32では、投入されたコインが有効なコインかまたは偽コイン等の不適正なコインかを判別し、不適正なコインである場合には流路切換ソレノイド33を励磁して流路を切換え、その不適正コインを返却径路34を通してコイン払出口29(図1参照)から返却する。一方、投入コインが適正なコインである場合にはその適正コインをコイン取込径路35側に誘導してそのコインをコイン貯留タンク37に取込んで貯留する。コイン取込径路35には賭数入力検出手段の一例の投入コインセンサ36が設けられており、このコイン取込径路35を通過するコインがこの投入コインセンサ36により検出される。一方、クレジットゲームではない通常ゲーム時において3枚を越えるコインが投入された場合またクレジットゲーム時においてクレジット数が50に達している場合には流路切換ソレノイド33が励磁されて流路が切換わりその4枚目以降の投入コインが返却径路34を通って返却される。
【0020】
コインホッパー37が満タンとなり、それ以上コインを貯留できなくなった余剰コインは、余剰コイン誘導径路40を通って余剰コイン貯留タンク41に貯留される。この余剰コイン貯留タンク41には満タンセンサ42がが設けられており、この余剰コイン貯留タンク41が満タンになればそれが満タンセンサ42により検出されてその検出出力に基づいて満タンになった旨の報知等が行なわれるエラー処理が行なわれる。遊技場の係員はその満タンになった旨の報知に基づいて満タンになったスロットマシン1の余剰コイン貯留タンク41内のコインを回収する。
【0021】
コインホッパー37の下方部分には、コイン払出モータ38が設けられており、このコイン払出モータ38が回転することによりコインホッパー37内のコインがコイン払出口29から1枚宛コイン貯留皿30内に排出される。その排出されるコインが払出コインセンサ39により検出され、所定枚数(たとえば15枚)の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ38が停止制御される。なお、クレジットゲームの場合において、クレジット得点として記憶されているコイン枚数がその記憶の上限枚数(たとえば50枚)を越える場合には、その越えるコインがコイン払出モータ38によりコイン貯留皿30内に払出される。図中45はスロットマシンを制御する制御部であり、マイクロコンピュータ等を含む。なお、図中65は電源スイッチであり、これによりスロットマシン1の電源のON,OFFが可能となる。また、電源スイッチ65,キースイッチ43は、前面枠1Bを開成することにより前面側から操作可能に構成されている。図中、75は残額表示器、77は使用可表示器、78はカードリーダライタ、79はカード挿入・排出口、80はカード処理装置制御部である。
【0022】
図3は、左,中,右の各リールの外周に描かれた識別情報としての図柄(シンボルマーク)を示す展開図である。図3の左側に示した数字は図柄番号であり、0?20の21個の図柄(シンボルマーク)が各リールの外周に付されている。図3の(a)は左リール6L(図2参照)の外周に描かれた図柄を示したものであり、(b)は中リール6Cの外周に描かれた図柄を示した図であり、(c)は右リール6Rの外周に描かれた図柄を示した図である。可変表示装置70の停止時の表示結果が賭数に応じた有効ライン(当りライン)上において「AAA」となればビッグボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。一方、有効な有効ライン上において「BBB」となればボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。さらに有効ライン上において「CCC」または「DDD」となれば小役の図柄の組合せが成立してコインが15枚払出される。有効ライン上において「EEE」となれば小役が成立してコインが8枚払出される。有効ライン上において左図柄と中図柄とが共に「F」となれば小役が成立して6枚のコインが払出される。また、有効ライン上において左図柄のみ「F」となれば小役が成立して3枚のコインが払出される。
【0023】
さらに、ビッグボーナスゲーム中あるいはボーナスゲーム中ではない通常ゲーム中に、当りライン上に「G」すなわち「JAC」が3つ揃えば、再ゲームが成立して後述するようにコイン投入等を行なうことなくスタート操作を行なうのみで再度可変表示装置70が可変開始される。また、ビッグボーナスゲーム中にこの「G」が有効ライン上に3つ揃えばボーナスゲームの開始が行なわれる。また、ボーナスゲーム中にこの「G」が当りライン上に3つ揃えばボーナスゲーム中の入賞となりコインが15枚払出される。なお、ボーナスゲーム中に入賞が発生する有効な当りラインは可変表示部における中段の横一列のみである。また、賭数に応じた有効ラインが複数本存在する場合において前述したコインが払出される図柄の組合せが複数本の有効ライン上において同時に成立した場合には、各有効ライン上の図柄の組合せによって付与されるコイン枚数の合計枚数に相当するコインが付与されるのが原則である。しかし、1ゲームにおいて付与されるコインの上限が15枚と定められているために、15枚を超える場合にはその16枚目以降のコインが無効となる。
【0024】
図4は、各リール6L,6C,6Rの側面図である。各リール6L,6C,6Rの外周は、各リール6L,6C,6Rの回転中心(リール駆動モータ7L,7C,7Rの駆動軸の軸心に相当する)を中心とした円周方向が所定中心角ごとに21の領域に分けられ、その各領域には、各領域を1つの図柄の範囲として図3に示される各図柄が描かれている。
【0025】
図4に示される0?20の数字は、図3に示される各図柄の図柄番号0?20に相当するものであり、各図柄は、図4の破線にて示される位置をそのセンター位置として描かれている。図4の左側に示される円弧は、各可変表示部5L,5C,5Rの表示領域であり、図4から明らかなように、各可変表示部5L,5C,5Rには、縦方向に3つの図柄が表示される。
【0026】
各リール6L,6C,6Rの円周方向の所定位置には、切欠きや突起等よりなるリール基準位置6La,6Ca,6Raが各々形成されており、そのリール基準位置よりも内周側には各リール基準位置6La,6Ca,6Raを検出するための各リール位置センサ8L,8C,8Rが設けられている。各リール位置センサ8L,8C,8Rはリール6L,6C,6Rが回転した場合、各リール基準位置6La,6Ca,6Raが通過するごとにそれらを検出する。
【0027】
図5は、本発明のスロットマシンに用いられている制御回路を示すブロック図である。
【0028】
制御回路は、制御中枢としての制御部(マイクロコンピュータを含む)45を含む。制御部45は、以下に述べるようなスロットマシン1の動作を制御する機能を有する。制御部45は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には、制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU46とCPU46の動作プログラムを格納するROM47と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM48とが含まれている。さらに、CPU46と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート49と、電源投入時等にCPU46にリセットパルスを与える初期リセット回路51と、CPU46にクロック信号を与えるクロック発生回路52と、クロック発生回路52からのクロック信号を分周して割込パルスを定期的にCPU46に与えるパルス分周回路(割込パルス発生回路)53と、CPU46からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路54とを含む。
【0029】
CPU46はパルス分周回路53から定期的に与えられる割込パルスに従って、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路54はCPU46からのアドレスデータをデコードし、ROM47,RAM48,I/Oポート49,サウンドジェネレータ50にそれぞれチップセレクト信号を与える。
【0030】
この実施例では、ROM47は、その内容の書換え、すなわち、必要が生じた場合にはその中に格納されたCPU46のためのプログラムを変更することができるように、プログラマブルROM47が用いられている。そして、CPU46は、ROM47内に格納されたプログラムに従って、かつ、以下に述べる各制御信号の入力に応答して、前述したリール駆動モータや各種表示ランプ等に対し制御信号を与える。
【0031】
まず、遊技場の管理者等によってドアスイッチ44が操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に与えられる。所定のキーによりキースイッチ43がキー操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。このキースイッチにより、ゲームモードと確率設定モードの切換えが行なわれ、確率設定モードになっている場合には、ドアスイッチ44の検出出力に基づいて後述するように当りの確率が入力設定される。リセットスイッチ4が所定のキーにより操作された場合にはその操作信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。ゲーム切換ボタン16の押圧操作がゲーム切替スイッチ17により検出され、その検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。クレジット操作ボタン14の操作がクレジットスイッチ15により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。スタートレバー12の押圧操作がスタートスイッチ13により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。左ストップボタン9L,中ストップボタン9C,右ストップボタン9Rのそれぞれの検出信号が左ストップスイッチ10L,中ストップスイッチ10C,右ストップスイッチ10Rにより検出され、それぞれの検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。コイン投入口18から投入されたコインが投入コインセンサ36により検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。コイン払出モータ38(図2参照)によりコインが払出された場合にはその払出コインが払出しコインセンサ39により検出されて、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。余剰コイン貯留タンク41が貯留コインにより満タンになれば満タンセンサ42によりその旨検出され、その検出出力がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。左リール6L,中リール6C,右リール6Rが回転してそれぞれのリールの基準位値(切欠き等が形成されている)が左リール位置センサ8L,中リール位置センサ8C,右リール位置センサ8Rより検出されれば、それぞれの検出信号がスイッチ・センサ回路55を介してI/Oポート49に入力される。
【0032】
制御部45は次の各種機器に対し制御信号を出力する。まず、モータ回路56を介して、左リール駆動モータ7L,中リール駆動モータ7C,右リール駆動モータ7Rにそれぞれリール駆動用制御信号(ステッピングモータ用のステップ信号)を出力する。モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力する。ソレノイド回路58を介して流路切換ソレノイド33にソレノイド励磁用制御信号を出力する。LED回路59を介してゲーム回数表示器25,クレジット表示器26,払出数表示器27にそれぞれ表示用制御信号を出力する。ランプ回路60を介して遊技効果ランプ24,投入指示ランプ19,有効ライン表示ランプ21,22,23,左操作有効ランプ11L,中操作有効ランプ11C,右操作有効ランプ11R,ゲームオーバランプ20,再ゲーム表示ランプ64にそれぞれランプ制御用信号を出力する。サウンドジェネレータ50,アンプ61を介してスピーカ28に音発生用制御信号を出力する。
【0033】
制御部45には、カード処理装置76に設けられているカード処理装置制御部80が電気的に接続されている。I/Oポート49から情報出力回路67を介してカード処理装置制御部80にコインの貸出が可能な状態になっているか否かを指定するためのコイン貸出モード信号が出力される。カード処理装置制御部80では、その信号を受けて、貸出可能なモードである場合には貸出可表示器70を点灯または点滅表示させる。遊技者が貸出ボタン71を押圧操作すれば、その操作信号が貸出スイッチ72からカード処理装置制御部80に入力され、カード処理装置制御部80からはコイン貸出指令信号が情報入力回路66を介してI/Oポート49に入力される。制御部45では、その信号を受けて、所定枚数のコインを払出すための制御信号をコイン払出モータ38に出力して所定枚数のコインを貸出す制御を行なう。所定枚数のコインが貸出されれば、I/Oポート49から情報出力回路67を介してカード処理装置制御部80に対し所定枚数のコインを貸出した旨のコイン貸出信号を出力する。共通カードが共通カード挿入・排出口79に挿入されてカードリーダライタ78により読取られれば、その読取データに基づいて特定される遊技者所有の有価価値(残額)を表示するための制御信号がカード処理装置制御部80から残額表示器75に出力される。さらに、カード処理装置制御部80と制御部45とが電気的に接続されていることを条件として、カード処理装置制御部80からカード処理装置接続信号が情報入力回路66を介してI/Oポート49に入力される。制御部45では、このカード処理装置接続信号の入力があることを条件としてゲームが能動化される。すなわち、このカード処理装置接続信号が入力されない場合には、各リール駆動モータ7L,7C,7Rを駆動制御しないようにしたり、貸出ボタン71が押圧操作されたとしてもコインを貸出さないようにしたりする等してゲームを不能動化する。なお、前述した各種機器や制御回路には電源回路62から所定の直流電流が供給される。また、RAM48にはバックアップ電源63から記憶保持のための電流が供給されるように構成されており、停電等により電源回路62からの電流の供給が行なわれなくなっても、確率設定値や遊技状態を所定期間記憶しておくことができるように構成されている。
【0034】
図6ないし図9,図12ないし図17は、図5に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図6(a)は電源投入時に行なわれる処理プログラムである。スロットマシンの電源投入は、遊技場の営業開始時に行なわれる場合と、遊技場の営業中にたとえば停電等により一旦電源が立下がり再び停電が復旧した場合等のように営業中に行なわれる場合とが考えられる。図6において、まずステップS(以下単にSという)1において、リセットスイッチがONか否かの判断が行なわれる。このリセットスイッチ4はゲームオーバー(打止め)を機能するようにセットするか機能しないようにセットするかの選択設定に用いられるものであり、リセットスイッチ4がONになっていればS3よりゲームオーバー無のモードに設定されてゲームオーバー(打止め)が機能しないように設定される。一方、リセットスイッチ4がOFFになっておればS2によりゲームオーバー有のモードにセットされてゲームオーバー(打止め)が機能するように設定される。なお、打止有無の選択を専用のスイッチで設定するようにしてもよい。次にS4に進み、キースイッチがONになっているか否かの判断が行なわれる。キースイッチ43がONの場合には確率設定モードでありキースイッチ43がOFFの場合にはゲームモードに設定されている状態であり、キースイッチがOFFの場合にはS5にすすみ、RAMが正常であるか否かの判断が行なわれ、正常である場合にはスロットマシンが電源遮断時の遊技状態に復帰する。つまり、図4に示したRAM48は、停電時等においてはバックアップ電源63によりバックアップされているために、後述するS33ないしS200のステップのうち、停電発生時点等の電源立下がり時点に実行していたプログラムのステップをこのRAM48が記憶しており、S5によりYESの判断がなされた場合にはその記憶している電源遮断時のステップにプログラム制御が復帰するのである。
【0036】
一方、プログラムの暴走時等においては、S5によりNOの判断がなされてS6に進み、RAMが初期化されるとともに、入賞確率の設定値が初期化される。このS6による入賞確率の初期化は、たとえば設定値「3」となるように初期化される。設定値は、後述するように、一番低い確率である「1」から一番高い確率である「6」までの6段階用意されており、このS6による初期化により、ほぼ平均的な確率である「3」に初期化される。その結果、スロットマシンがプログラム暴走等により初期化された場合にはほぼ平均的な確率に設定されるために、プログラム暴走等を原因とした初期化を境にして入賞確率が極端に高い設定値に切替わったりまたは極端に低い設定値に切替わったりする極端な変化を防止できる利点がある。
【0037】
一方、キースイッチ43がONすなわち確率設定モードに操作されている場合にはS7に進み、投入コイン流路を返却側に切替えて投入コインが返却されるように制御される。次にS8に進み、スタート操作があったか否かの判断が行なわれ、ない場合にはS10に進む。S10では、ドアスイッチ操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS13により現時点での確率の設定値をたとえば払出数表示器27で表示してS8に戻る。なお、専用の設定値表示器を設けてもよい。
【0038】
このS8ないしS13の巡回途中で、遊技場の経営者や係員がドアスイッチ44(図1参照)を1回操作すれば、S10によりYESの判断がなされてS11に進み、確率の設定値が「1」歩進される。次にS12Aに進み、現時点での設定値が「7」であるか否かの判断がなされる。この確率の設定値の上限は「6」と定められているために、設定値が「7」になった場合にはS12Bに進み、設定値を再度「1」にする処理が行なわれS13に進む。一方、設定値が「7」になっていない場合には直接S13に進み、現時点での設定値の表示が行なわれる。遊技場の係員は、S13による確率の設定値の表示を見ながら所望の設定値になるようにドアスイッチ44を操作する。そして所望の設定値になれば、キースイッチ43をOFFに切替えてゲームモードに切替え、次にスタートレバー12(図1参照)を操作してスタートスイッチ13をONにすることによりS8によりYESの判断がなされる。その結果、既にキースイッチ43がOFFに切替えられているためにS14に進み、RAMの初期化,確率の設定値の確定,設定表示のクリアの処理がなされる。次に、S14Aにより、初期値としてコインの累積投入数と累積払出数とがそれぞれ「100」と「50」とに設定される。これにより、通常ゲーム時における小役の標準払出率が50/100×100%=50%となる。次にゲームスタート処理に移行する。
【0039】
図6(b)はランダムカウンタ更新処理の割込プログラムを示すフローチャートである。この図6(b)に示す割込プログラムは前述したパルス分周回路53から定期的に入力されるパルス信号に基づいて行なわれるものであり、たとえば4msec毎に1回ずつ実行される。まずS15により、ランダムカウンタの値Rを所定の数N加算更新する処理が行なわれる。次にS16に進み、ランダムカウンタの値Rが予め定められた最大値以上になったか否かの判断が行なわれ、未だに最大値以上になっていない場合にはS18に進み、1ゲームが終了したか否かの判断が行なわれる。この1ゲームは可変表示装置の停止時の表示結果コインが何ら払出されない場合にはその可変表示装置の停止時点で終了するがコインが払出される場合にはコインの払出しが終了した段階で1ゲームが終了する。1ゲームが終了していない場合にはそのまま割込プログラムが終了し、次回の割込待ちとなる。
【0040】
一方、ランダムカウンタの値Rが最大値以上となっている場合にはS17に進み、ランダムカウンタの値Rをその最大値だけ減算更新する処理が行なわれた後にS18に進む。次に今回の割込プログラムが1ゲームが終了するタイミングで行なわれる場合にはS18によりYESの判断がなされてS19に進み、ランダムカウンタの値Rに基づきS15にて加算更新する値Nを変更する処理が行なわれる。この加算数Nは、予め設定されている複数種類の素数でかつ前記最大値をその素数で除した場合の商が整数にならないような素数の中から1つ選択されてS19により変更される。加算数Nはこのように設定することにより、ランダムカウンタの値Rが万遍なくあらゆる数値を取り得る状態となる。また、1ゲームが終了するごとにS19により加算数Nは他の素数に変更するために、ランダムカウンタの値Rがランダムの値となり、このランダムカウンタの値に基づいて後述する入賞か否かの決定を行なう場合にランダムな決定を行なうことができる利点がある。
【0041】
図7(a)はエラーチェック処理を示す割込みプログラムのフローチャートである。まずS20Aによりカード処理装置76が接続されているか否かの判断がなされ、カード処理機接続信号が入力されていなければS20Bに進み、その旨のエラーを表わすエラーコード「CC」が払出表示器27に表示される。カード処理装置76が接続されていればS20Cに進み、払出すべきコインが欠乏したコイン切れ状態であるか否かの判断がなされる。コイン切れ状態でないと判断された場合にはS21に進み、投入コインが詰まったか否かの判断が行なわれる。投入コインが詰まっていない場合にはS22に進み、投入コインが余剰コイン貯留タンク41(図2参照)内で満タンとなったか否かの判断がなされ、満タンになっていない場合にはS23に進み、コインホッパー37(図2参照)から払出されるコインが詰まったか否かの判断がなされ、詰まっていない場合にはS24に進みエラー中であるか否かの判断がなされてエラー中でない場合には割込プログラムが終了する。
【0042】
そして、払出したコインの枚数である払出数が1ゲームの終了の結果払出すべきコインの枚数である払出予定数に達しておらず、かつ、コイン払出モータ38が回転中にもかかわらず一定時間内にコインの払出が検出されない場合には、コイン切れと判定されてS20CによりYESの判断がなされ、S25により、エラーコード「HE」が払出数表示器27(図1参照)により表示される。一方、投入されたコインがコイン取込径路35内で詰まり、投入コインセンサ36(図2参照)が一定時間以上連続的にコインを検出している状態となった場合には、S22によりYESの判断がなされてS26によりエラーコード「CE」が表示される。また、余剰コイン貯留タンク41内に投入コインが満タンとなり満タンセンサ42(図2参照)が満タン検出すれば、S22によりYESの判断がなされてS27に進み、エラーコード「CO」が払出数表示器27により表示される。コインホッパー37から払出されるコインが詰まり払出コインセンサ39(図2参照)が一定時間以上連続的にコインを検出した状態となった場合には、S23によりYESの判断がなされてS28に進み、エラーコード「HJ」が払出数表示器27により表示される。後述するS85Hの判断の結果モータエラーが生じた場合にはS23AによりYESの判断がなされてS28Aに進み、エラーコード「EE」が払出数表示器27により表示される。さらに、前記S20ないしS23によりエラーである旨の判定がなされた後、後述するS32によりそのエラーコードがクリアされるまでの期間中、S24によりYESの判断がなされてS29に進み、前記S25ないしS28Aのいずれかにより表示されているエラーコードの表示が引続き続行される。つまり、S29によるエラーコードの表示は、遊技場の係員によりエラー原因が取除かれた後においても、開成状態にある前面枠1Bが閉成されて後述するS32によりエラーコードがクリアされるまでは引続きエラーコードの表示が続行されるのである。
【0043】
S25,S26,S27,S28,S28AあるいはS29の処理がなされた後に、S30に進み、スロットマシンのゲームを中断させ、エラー音をスピーカ28から発生させる処理が行なわれる。
【0044】
スピーカ28からエラー音が発せられていることを遊技場の係員が聞きつければ、その遊技場の係員はスロットマシンのエラー原因を取除くべく、前面枠1Bを開成させ、さらに、払出数表示器27により表示されているエラーコードから発生しているエラー原因の種類を識別し、エラー原因の種類に応じた作業を行なって発生しているエラー原因を取除く。そして、その作業が終了した後に遊技場の係員は前面枠1Bを閉じる。すると、ドアスイッチ44が、前面枠1Bの閉じられたことを検出し、それに応じてS31によりYESの判断がなされる。その結果、制御はS32に進み、払出数表示器27により表示されるエラーコードがクリアされ、エラー音が停止され、中断発生時のゲーム状態からゲームが再開される。なお、前面材1Bを実際に閉成するのではなくドアスッチ44を指等で押圧操作することによりドアスイッチ44から検出出力を導出させてS31によりYESの判断を行なわせてもよい。
【0045】
図7(b)および図8はゲームスタート処理を示すフローチャートである。S33により、流路切換ソレノイド33(図2参照)を制御して投入コインの流路を取込側に切換える処理が行なわれ、S34に進み、ゲーム切換操作があったか否かの判断が行なわれる。ゲーム切換操作がない場合にはS40に進むが、遊技者がゲーム切替ボタン16を押圧操作した場合にはS35に進み、今現在クレジットゲームモードになっているか否かの判断が行なわれ、なっていない場合にはS36によりクレジットゲームモードとする処理が行なわれる。一方、既にクレジットゲームモードになっている場合にはS37に進み、コインゲームモードにする処理が行なわれ、S38に進み、クレジットカウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれる。このクレジットカウンタとは、クレジットゲーム時において賞品として付与されるコインの枚数や遊技者が投入したコイン枚数を計数して記憶しておくためのものであり、後述するS60,S179により「1」ずつ加算更新されるとともに、後述のS39,S56により「1」ずつ減算更新される。このクレジットカウンタが「0」の場合にはS40に進むが、「1」以上の場合にはS39に進み、コインを1枚払出すとともにクレジットカウンタを「1」減算更新する処理がなされてS38に戻る。このS39の処理をクレジットカウンタが「0」になるまで繰返して行ないクレジットカウンタのカウント値に相当する枚数だけのコインが払出し制御される。つまり、クレジットゲームモードとなっている状態で遊技者が切換え操作してコインゲームモードにした場合には、そのクレジットゲーム時において加算記憶されているクレジットカウンタの値に相当する枚数のコインを遊技者側に払出す必要があるため、このS39により払出し制御を行なうのである。一方、現時点でコインゲームモードになっている状態で遊技者がゲーム切替ボタンを押圧操作すればS36に進み、クレジットゲームモードに設定される。
【0046】
次にS40に進み、スタート操作があったか否かの判断がなされ、未だにスタートレバー12(図1参照)が押圧操作されていない場合にはS41Aに進む。S41Aでは、コイン貸出指令信号があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS41Hに進む。一方、遊技者が貸出ボタン71を押圧操作すれば、貸出スイッチ72からその操作信号がカード処理装置制御部80に入力されてカード処理装置制御部80からスロットマシン1の制御部45にコイン貸出指令信号が入力される。すると、制御はS41Bに進み、コイン貸出信号を制御部45からカード処理装置制御部80に出力するとともに、貸出数を「50」にセットする。一方、カード処理装置制御部80では、このコイン貸出信号を受けて、挿入されている共通カードの記録情報によって特定される遊技者所有の有価価値(残額)から1000円減額する。なお、本実施例では、コインの貸出単位を1000円としたが、貸出単位を100円とし、5枚払出す毎に100円ずつ減額するようにし、この処理を10回行なうことによって1000円ぶんのコインを貸出すようにしてもよい。このようにすれば、共通カードの残額に1000円未満の端数があっても、残額ぶん全部を貸出すことができるようになる。
【0047】
次に、S41Cに進み、クレジットゲームモードになっているか否かの判断がなされ、クレジットゲームモードになっていない場合にはS41Fにより、コイン1枚を払出す制御を行なうとともに貸出数から「1」を減算する処理が行なわれてS41Gに進む。一方、遊技者がクレジット操作ボタン14を押圧操作してスロットマシン1を前述したクレジットゲーム状態に切換えておれば、S41CによりYESの判断がなされてS41Dに進み、クレジットカウンタが「50」になっているか否かの判断がなされる。クレジットカウンタとは、クレジットゲームを行なうために予め蓄えられている遊技者所有の有価価値(コイン枚数等)を計数するためのものであり、後述するS41D,S60により「1」ずつ加算され、S56により「1」ずつ減算される。そして、クレジットカウンタがその上限値である「50」になっている場合にはそれ以上クレジットカウンタに遊技者所有の有価価値を蓄えることができないために、S41Fに進み、コイン1枚払出制御が行なわれる。一方、クレジットカウンタがその上限値である「50」になっていない場合にはS41Eに進み、クレジットカウンタに「1」を加算するとともに貸出数を「1」減算処理する。
【0048】
S41Gでは、貸出数が「0」であるか否かの判断がなされ、「0」になっていない場合にはS41Cに戻り、再びコインの払出かまたはクレジットカウンタへの加算処理を行なう。この処理を繰返すことによって、貸出数が「0」になればS41Hに進む。
【0049】
次にS41Hでは、投入数カウンタが「3」であるか否かの判断が行なわれる。この投入数カウンタとは、1ゲームを行なうに際し遊技者がコイン投入口18から投入したコインの枚数あるいはクレジットゲーム中におけるクレジット操作ボタン14を遊技者が押圧操作した操作回数を計数して1ゲームにおけるゲーム結果に賭ける賭数を設定するためのものであり、後述するS57により「1」ずつ加算更新され、図示しないが、次のゲーム開始時にS33に関連してクリアされる。この投入数カウンタのカウント値に応じて賭数が入力設定され、その賭数すなわち投入数カウンタのカウント値が「1」の場合には有効となる有効ライン(当りライン)が1本に設定され、カウント値が「2」の場合には3本に設定され、カウント値が「3」の場合には5本に設定される。この投入数カウンタのカウント値の上限は「3]に設定されている。S41により投入数カウンタのカウント値がその上限である「3」になっていない場合にはS42に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。このボーナスゲームフラグとは、可変表示装置の停止時の表示結果に基づいてボーナスゲーム(レギュラーボーナスゲーム)が実際に開始される状態となった時にS162,S169によりセットされ、そのボーナスゲームが終了した場合にS188によりクリアされるものである。そして、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS47に進むが、セットされている場合にはS43に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」の場合にはS47に進み、「1」以上の場合にはS44に進む。つまり、ボーナスゲームの場合には、前述したように可変表示装置の組合せの有効ラインが1本のみ有効となるために、1枚賭のゲームしか認められず、そのために、投入数カウンタが「1」を越える値にならないように制御するのである。S44では、クレジットゲームモードになっているか否かの判断が行なわれ、クレジットゲームモードになっていない場合にはS46に進み、投入コイン流路を返却側に切換えてその後投入されたコインを返却する処理が行なわれた後にS40に進む。一方、クレジットゲームモードになっている場合にはS45に進み、クレジットカウンタが既にその上限値である「50」になっているか否かの判断が行なわれ、「50」になっている場合にはそれ以上クレジットカウンタの加算更新が行なえないためにS46に進み、投入されたコインを返却する処理が行なわれる。
【0050】
S47では、コイン投入があったか否かの判断が行なわれ、あった場合にはS48に進み、投入数カウンタが既にその上限である「3」になっているか否かの判断が行なわれ、既に「3」になっている場合にはS60に進み、クレジットカウンタに「1」加算する処理が行なわれてS40に戻る。一方、投入数カウンタが「3」になっていない場合にはS49に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS57に進み、投入数カウンタのカウント値にまだ余裕があるためにそのカウント値に「1」を加算する処理が行なわれる。ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS50に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれる。ボーナスゲームの場合には前述したように投入数カウンタの上限値が「1」となるために、投入数カウンタが「1」である場合にはS60に進み、クレジットカウンタに投入されたコインの枚数である「1」を加算する処理が行なわれるのである。次にS58に進み、前述したランダムカウンタ更新処理に従って加算更新されているランダムカウンタの値Rを呼出して格納する処理が行なわれる。このランダム値Rの格納は、前記S40によりスタート操作が行なわれた旨の判定がなされたときに行なうようにしてもよい。次にS59Aに進み、払出予定数と払出数を「0」にする処理が行なわれてS59Bに進む。払出予定数とは、可変表示装置の停止時の表示結果に基づいて入賞が決定された場合に、その入賞の種類に応じて遊技者に払出すコインの枚数のことであり、払出数とは、入賞に基づいて実際に払出されたコインの枚数のことである。
【0051】
S59Bでは、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」の場合にはS59Cに進み、前回の1ゲームを行なう際に投入されたコイン枚数に応じた有効ラインが点灯されてS40に戻る。一方、今回の1ゲームを行なうに際してコインが投入されておれば、投入数カウンタが「0」でないためにS59Dに進み、投入数カウンタに応じた有効ラインの表示が行なわれてS40に戻る。この有効ラインの表示は、投入数カウンタの値が「1」である場合には中央の横1列を表示する有効ライン表示ランプ21のみが点灯され、投入数カウンタが「2」の場合には横3列の有効ラインが表示する有効ライン表示ランプ21,22が点灯され、投入数カウンタが「3」の場合には横3列および斜め対角線上に2列の5本の有効ラインを表示する有効ライン表示ランプ21?23のすべてが点灯表示される。
【0052】
次に、S47によりコインの投入がないと判断された場合にはS51に進み、クレジットカウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、「0」でない場合にはS52に進み、クレジット操作があったか否かの判断が行なわれ、クレジット操作がない場合にはS59Bに進む。一方、クレジットカウンタが「0」の場合にはS52による判断を行なうことなく直接S59Bに進む。これは、クレジットカウンタが「0」の場合にはいくら遊技者がクレジット操作ボタン14を押圧操作してクレジット操作を行なったとしても、そのクレジットカウンタのカウント値を使用してのゲームを行なうことができないために、クレジット操作があったか否かという判断を行うこと自体無駄となるためである。次にクレジット操作があった場合にはS53に進み、投入数カウンタが「3」になっているか否かの判断が行なわれ、既にその上限値である「3」になっている場合にはクレジット操作を無視してS59Bに進む。一方、「3」になっていない場合にはS54に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS55に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断が行なわれ、投入数カウンタがボーナスゲーム時における上限値である「1」になっている場合にはクレジット操作を無視してS59Bに進む。一方、投入数カウンタが「0」の場合またはボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS56に進み、クレジットカウンタを「1」減算更新した後にS57に進み、投入数カウンタに「1」を加算する処理が行なわれる。
【0053】
以上説明したように、1ゲームにおけるゲーム結果に賭ける賭数を入力設定するべく遊技者がコインをコイン投入口18から投入するごとにS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出される。そして、遊技者がコインを1枚だけコイン投入口18に投入して1ゲームをスタートさせた場合には、その1枚の投入コインに基づいて読出されたランダム値Rが格納されてそのランダム値Rを利用して可変表示装置の可変停止時の価値付与内容が事前決定される。一方、遊技者がコイン投入口18から2枚コインを投入すれば、1枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rが消去されて2枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その更新されたランダム値Rが格納される。そして遊技者がスタート操作すれば、その格納されたランダム値Rを利用して可変表示装置の可変停止時の価値付与内容が事前決定される。さらに、遊技者がコイン投入口18から3枚のコインを投入すれば、1枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rが2枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その更新されたランダム値Rがさらに3枚目のコインの投入に基づいて読出されたランダム値Rに更新され、その最終的に更新されたランダム値Rが格納されて可変表示装置の可変停止時の価値付与内容の事前決定に利用される。なお、ランダム値Rの抽出をスタート操作により行なうようにしてもよい。一方、クレジットゲーム時において遊技者が賭数を設定入力するべくクレジット操作ボタン14を押圧操作するごとに3回を限度としてS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出されて格納される。このランダム値Rの格納も、前述と同様に、ランダム値Rが2回読出されれば、1回目に読出されたランダム値Rが2回目に読出されたランダム値Rに更新されて格納され、ランダム値Rが3回読出されれば、2回目に読出されたランダム値Rがその3回目に読出されたランダム値Rに更新されて最後のランダム値Rが格納されることになる。
【0054】
次に、遊技者がスタートレバー12を押圧操作すればS40によりYESの判断がなされてS61に進み、投入数カウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS41に進むが、「1」以上の場合にはS62に進み、流路切換ソレノイド33を制御して投入コイン流路を返却側に切換え、以降のリール回転制御に移行する。このS62の処理の結果、それ以降投入されたコインはコイン貯留皿30内に返却されることになる。
【0055】
図9および図12は、リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS63より1ゲームタイマが終了しているか否かの判断が行なわれる。この1ゲームタイマとは、1ゲームが開始されてから終了するまで最低限経過しておかなければならない時間(たとえば4.1秒)を計時するためのものであり、S65によりセットされる。なお、1ゲームタイマにセットする時間を賭数に応じて変化させ、賭数が1枚賭、2枚賭の場合には、3枚賭の場合よりも短い時間をセットするようにしてもよい。1ゲームタイマが終了していない場合にはS64に進み、タイマ終了待ち音がスピーカ28から発生されて1ゲームタイマが終了していない旨を遊技者に報知する。一方、1ゲームタイマが終了すれば、S65に進み、1ゲームタイマが新たにセットされ、操作無効タイマがセットされ、全リールの回転が開始される。この操作無効タイマとは、前述したように、ストップボタン9L,9C,9Rを操作してもその操作を無効とする時間を計時するためのタイマである。
【0056】
次にS66に進み、格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行なう処理がなされる。その所定の演算とは、ランダム値Rに対し所定の値を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいはランダム値Rを二乗または三乗したり、あるいは所定の関数にランダム値Rを代入して答えを算出したりする演算である。次にS67に進み、その演算結果を、投入数・設定値・確率変動カウンタ・小役判定モードに応じた当選許容値と比較する処理が行なわれる。
【0057】
この当選許容値は、たとえば図10(c),(d)や図11に示されているように、ビッグボーナスゲーム(BB)当選許容値,レギュラーボーナスゲーム(RB)当選許容値,再ゲーム当選許容値,小役当選許容値の4種類から構成されている。この各当選許容値は、テーブルの形でROM47に記憶されている。図10(c)に示された当選許容値は、3枚賭で小役判定モードが「通常時」で確率変動カウンタが「0」で確率設定値が「4」の場合を示している。この小役判定モードは、スロットマシン1による遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値と比較して、その標準値よりも高い場合は「通常時」に設定され、標準値よりも低い場合は「高確率時」に設定されるものであり、標準値に従って小役発生確率をフィードバック制御するために用いられるものである。また、「ビッグボーナス時」には、高確率で小役が発生するように制御される。確率変動カウンタとは、ビッグボーナスゲームの発生確率を何回向上させるかを記憶しておくためのものであり、後述するS195Nにより「2」となり、S195Pにより「1」となる。そして、確率を向上させない場合には「0」が記憶された状態となっている。「確率設定値」とは、前述したキースイッチの操作に従って設定された値のことである(S9?S13参照)。
【0058】
図10(c)に示すように、S66による演算値が、ビッグボーナス当選許容値b_(0)未満の場合にはビッグボーナスゲーム当選に該当し、b_(0)以上でレギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)未満の場合にはレギュラーボーナスゲームに該当し、b_(1)以上で再ゲーム当選許容値b_(2)未満の場合には再ゲーム当選に該当し、b_(2)以上で15枚小役当選許容値b_(3)未満の場合にはコインを15枚払出す小役当選に該当し、b_(3)以上で8枚小役当選許容値b_(4)未満の場合にはコインを8枚払出す小役当選に該当し、b_(4)以上で6枚小役当選許容値b_(5)未満の場合にはコインを6枚払出す小役当選に該当し、b_(5)以上で3枚小役当選許容値b_(6)未満の場合にはコインを3枚払出す小役当選に該当し、b_(6)以上の場合にははずれに該当する。なお、図10(c)に示す、A_(34),B_(34),C_(31),D_(31),E_(31),F_(31),G_(11)は、図10(a),(b)に示された値である。また、R_(MAX)は、ランダム値Rを用いた演算結果がとり得る上限値である。
【0059】
図10(a)の一番左の列に示された数字1?6は、確率設定値を示し、一番上の行に示された1,2,3の数字は、コインの投入枚数すなわち賭数を示し、BBはビッグボーナスゲーム、RBはレギュラーボーナスゲームを示す。また、「通常時」はビッグボーナスゲームの発生確率が通常状態のときを示し、「変動時」は、ビッグボーナスゲームの発生確率が向上した場合を示している。図10(b)の一番上の行に示された1,2,3はコインの投入枚数すなわち賭数を示し、その下の行に示された「通常」,「高確率」,「BB」は、小役判定モードが通常時か高確率かビッグボーナス時かを示している。
【0060】
図10(c)の場合は、3枚賭で、小役判定モードが通常時で、確率変動カウンタの値が「0」で、確率設定が「4」である場合であるために、図10(a)の設定「4」で投入数が「3」でビッグボーナスゲームの発生確率が「通常時」に該当する欄に記載された数値、すなわち、ビッグボーナスゲーム当選許容値としてA_(34)が、レギュラーボーナスゲーム当選許容値としてB_(34)が用いられる。また、図10(b)において、投入数が「3」で小役判定モードが通常時の欄に記載された数値、すなわち、15枚のコインを払出す小役当選許容値としてC_(31)、8枚のコインを払出す小役当選許容値としてD_(31)、6枚のコインを払出す小役当選許容値としてE_(31)、3枚のコインを払出す小役当選許容値としてF_(31)、再ゲーム当選許容値としてG_(11)が用いられる。なお、この図10(a),(b)に示されたデータは、テーブルの形でROM47に記憶されている。
【0061】
図10(d)は、3枚賭で、小役判定モードが「高確率時」で、確率変動カウンタの値が「0」で、確率設定値が「4」の場合を示している。この場合には、図10(a),(b)に従えば、ビッグボーナスゲーム当選許容値b_(0)=A_(34)、レギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)=b_(0)+B_(34)、再ゲーム当選許容値b_(2)=b_(1)+G_(11)、コイン15枚を払出す小役当選許容値b_(3)=b_(2)+C_(32)、コイン8枚を払出す小役当選許容値b_(4)=b_(3)+D_(32)、コイン6枚を払出す小役当選許容値b_(5)=b_(4)+E_(32)、コイン3枚を払出す小役当選許容値b_(6)=b_(5)+F_(32)となる。
【0062】
図11(a)は、3枚賭、小役判定モードが「通常時」、確率変動カウンタの値が「0」以外の場合で、確率設定値が「4」の場合を示している。この場合には、図10(a),(b)に従えば、ビッグボーナスゲーム当選許容値b_(0)=A_(44)、レギュラーボーナスゲーム当選許容値b_(1)=b_(0)+B_(34)、再ゲーム当選許容値b_(2)=b_(1)+G_(11)、コイン15枚を払出す小役当選許容値b_(3)=b_(2)+C_(31)、コイン8枚を払出す小役当選許容値b_(4)=b_(3)+D_(31)、コイン6枚を払出す小役当選許容値b_(5)=b_(4)+E_(31)、コイン3枚を払出す小役当選許容値b_(6)=b_(5)+F_(31)となる。
【0063】
図11(b)は、3枚賭で、小役判定モードが「高確率時」で、確率変動カウンタの値が「0」以外の場合で、確率設定値が「4」の場合が示されており、図10(a),(b)の表に従って、図11(b)に示すように、各当選許容値が定められている。図11(c)は、3枚賭で、小役判定モードが「高確率時」で、ビッグボーナスゲーム当選フラグセット中あるいはレギュラーボーナスゲーム当選フラグセット中の場合が示されている。この場合には、ビッグボーナスゲーム当選許容値とレギュラーボーナス当選許容値とが存在しない。図11(d)は、3枚賭で、小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合が示されている。この場合はビッグボーナス当選許容値と再ゲーム当選許容値とが存在しない。また、この場合のボーナスゲーム当選許容値は、図10(b)の一番下の行の数値が用いられる。
【0064】
以上のように構成することにより、小役判定モードが「通常時」よりも「高確率時」の方が、小役発生確率が高くなり、さらに、小役判定モードが「ビッグボーナス時」の場合にはさらに小役発生確率が高くなるとともにボーナスゲーム発生確率も高くなる。また、1枚賭よりも2枚賭、2枚賭よりも3枚賭の方がビッグボーナスゲーム発生確率,ボーナスゲーム発生確率,小役発生確率,再ゲーム発生確率が高くなる。また、確率変動カウンタの値が「0」のときよりも「0」以外のときの方が、ビッグボーナスゲームの発生確率が高くなる。なお、図10(a)にも示されているように、この実施例では、確率変動カウンタの値が「0」でなくビッグボーナスゲーム発生確率が向上する場合は、コイン投入数が3枚すなわち3枚賭の場合に限定される。この図10(a),(b)に示したデータを適当な値に設定することにより、小役払出率すなわち(各小役当選確率×コイン払出枚数)/コイン投入数×100%を適当な値にすることができる。たとえば、小役判定モードが「通常時」のときには50%、「高確率時」のときには100%、「ビッグボーナス時」のときには150%、等のように設定する。
【0065】
次にS68に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS71に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS74に進む。S74では、リール回転音をスピーカ28から発生させ、次にS75に進み、ビッグボーナス当選フラグあるいはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、既にセットされている場合にはS81に進むが、セットされていない場合にはS76に進む。
【0066】
S76では、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値に含まれているか否かすなわち0≦演算結果<b_(0)であるか否かの判断がなされ、含まれている場合にはS77に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。一方、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値ではないがボーナス当選許容値に含まれている場合(b_(0)≦演算結果<b_(1))には、S78によりYESの判断がなされてS79に進み、ボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。S80では、遊技効果ランプ24(図1参照)を点灯開始させる処理がなされ、次にS85に進む。S80の処理により、ビッグボーナスあるいはボーナス当選した旨の報知が行なわれる。なお、S80による遊技効果ランプ24の点灯に代えて、専用の表示器を設けてビッグボーナス当選あるいはボーナス当選が生じた旨を報知するようにしてもよく、また、スピーカ28から所定の音を発生させて報知するようにしてもよい。このS80の処理の結果、遊技者がビッグボーナス当選あるいはボーナス当選したことを認識する状態となるが、後述するように、可変表示状態の停止制御中にリーチ状態となったとしてもビッグボーナス当選あるいはボーナス当選していない限りリーチ音の発生が行なわれないために(S108?S110)、ビッグボーナスゲームあるいはボーナスゲームとなる可能性がないにもかかわらずリーチ状態の報知が行なわれることによる遊技者の不快感を防止得る。
【0067】
S78によりNOの判断がなされた場合にS81に進み、S67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が再ゲーム当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはS83に進むが、含まれている場合(b_(1)≦演算結果<b_(2))にはS82に進み、再ゲーム当選フラグがセットされてS85に進む。このS82による再ゲーム当選フラグのセットにより、後述するように、コインを投入することなくスタート操作により自動的に可変表示装置が可変開始されて再ゲームできるように制御される。S83では、S67の比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果が各小役当選許容値に含まれているか否かの判断がなされ、含まれていない場合にはそのままS85に進むが、含まれている場合(b_(2)≦演算結果<b_(3),b_(4),b_(5),b_(6))にはS84に進み、含まれている小役の種類に相当する当選フラグがセットされてS85に進む。
【0068】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS68によりYESの判断がなされてS69に進み、S67の比較結果、ランダム値Rの演算結果がJAC入賞許容値に含まれているか否かの判断がなされる。つまり、S68によりYESの判断がなされるということはスロットマシンのゲーム状態がボーナスゲーム中であるということであり、ボーナスゲーム中の可変表示装置の可変停止時の表示結果が「JAC」の停止図柄となった場合には前述したように、ボーナスゲーム中における入賞が発生してコインが15枚払出可能となるのであり、S69により、ボーナスゲーム中における入賞を発生させるか否かを判定しているのである。そして、S69によりNOの判断がなされた場合にはそのままS85に進むが、YESの判断がなされた場合にはS70に進み、JAC入賞フラグがセットされる。その結果、後述するように、ボーナスゲーム中における入賞を発生させる制御がなされる。
【0069】
一方、ボーナスゲームフラグではなくビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS71によりYESの判断がなされてS72に進み、S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がボーナスゲーム許容値に含まれているか否かの判断がなされる。スロットマシンのゲーム状態がビッグボーナス中において、可変表示装置の可変停止時の表示結果が「JAC」の停止図柄の組合せになった場合には、前述したようにビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームが開始されるのであり、そのために、S72により、ビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームを発生させるか否かの判定が行なわれるのである。そして、S72によりNOの判断がなされた場合にはS83に進むが、YESの判断がなされた場合にはS73に進み、JAC入賞フラグがセットされてS85に進む。
【0070】
次にS85では、操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされ、終了するまで待機する。なお、この操作無効タイマにセットされる時間はS68?S84の処理を行なうのに必要な時間以上の長さの時間(たとえば1秒)である。そして操作無効タイマが終了すればS86に進み、リール停止タイマをセットし、操作有効ランプ11L,11C,11R(図1参照)を点灯する制御が行なわれる。
【0071】
次に、S85Aでは、左リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Cに進み、中リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Eに進み、右リール基準位置が検出されたか否かの判断がなされ、検出されない場合にはS85Gに進み、左,中,右基準位置検出フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS85Hに進み、操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされ、終了していない場合にはS85Aに戻る。このS85AないしS85Hのループの巡回途中で、左リール基準位置6Laが左リール位置センサ8Lにより検出されれば、S85Bに進み、左基準位置検出フラグがセットされる。また、中リール基準位置6Caが中リール位置センサ8Cにより検出されれば、S85Dに進み、中基準位置検出フラグがセットされる。また、右リール基準位置6Raが右リール位置センサ8Rにより検出されれば、S85Fに進み、右基準位置検出フラグがセットされる。そして、左,中,右のすべての基準位置検出フラグがセットされれば、S85GによりYESの判断がなされてS85Iに進む。一方、左,中,右のリール基準位置が検出されることなく前記S65によりセットされた操作無効タイマが終了した場合には、リールが回転されていないかまたはリール位置センサが故障していることが想定されるために、モータエラーとなりエラー発生時の動作に移行する。
【0072】
S85Iでは、操作無効タイマが終了するまで待機し、終了した段階でS86に進み、リールのストップ操作が有効化される。このように、各リールの基準位置が検出された後操作無効タイマが終了してからストップ操作が有効化される。また、S85Iの代わりに、S85Jのように、リールを回転するステッピングモータの送りステップ数が所定値になったか否かを判断し、なるまで待機し、なった段階でS86に進むようにしてもよい。S86では、リール停止タイマがセットされ、操作有効ランプ11L,11C,11R(図1参照)を点灯する制御が行なわれる。リール停止タイマとは、遊技者がストップボタン9L?9Rをまったく操作しなかった場合に所定時間を計時してリールを自動的に停止させるためのタイマである。次にS87に進み、全リールが停止したか否かの判断がなされ、未だに停止していない場合にはS88に進み、リール停止タイマが終了したか否かの判断がなされる。リール停止タイマが終了したと判断されればS95に進み、左,中,右リールの停止フラグがセットされてS96に進む。一方、リール停止タイマが終了していない場合にはS89に進み、左リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS91により中リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS93により右リール停止操作があったか否かの判断がなされ、ない場合にはS96に進む。一方、遊技者が左停止ボタン9Lを押圧操作すればS89によりYESの判断がなされてS90に進み、左リール停止フラグがセットされて左リールが停止制御される。次に遊技者が中停止ボタン9Cを押圧操作すればS91によりYESの判断がなされてS92に進み、中リール停止フラグがセットされて中リールが停止制御される。遊技者が右停止ボタン9Rを押圧操作すればS93によりYESの判断がなされてS94に進み、右リール停止フラグがセットされて右リールが停止制御される。次に、遊技者が各停止ボタン9L,9C,9Rの2つ以上を同時に押圧操作した場合を説明する。たとえば、遊技者が左停止ボタン9Lと中停止ボタン9Cとを同時に押圧操作した場合には、まずS89によりYESの判断がなされてS90に進み左停止フラグがセットされて後述するように左リールが停止制御されるとともにS91によりYESの判断がなされてS92に進み、中リール停止フラグがセットされて後述するように中リールが停止制御される。このように遊技者が複数の停止ボタンを同時に押圧操作したとしても、その押圧操作された停止ボタンに相当するリールが停止制御されるのであり、いずれか一方のボタンの停止操作が無効にされてしまう不都合がない。これは、停止ボタン9L、9C、9Lの3つを同時に押圧操作した場合も同様である。
【0073】
次にS96により左リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS100により中リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS104により右リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS108に進む。左リール停止フラグがセットされている場合にはS97に進み、左リールが回転中であるか否かの判断がなされ、回転中である場合にはS98によりリール停止制御が行なわれた後にS99に進み、左リール停止フラグがクリアされる。一方既に左リールが停止している場合にはS97によりNOの判断がなされて直接S99に進む。中リールおよび右リールについても左リールで説明したS96ないしS99と同様の処理が行なわれるために、ここでは説明の繰返しを省略する。次に、すべてのリールが停止した段階でS87によりYESの判断がなされて図16に示す入賞判定の処理に移行する。
【0074】
一方、S104によりNOの判断がなされた場合にはS108に進み、停止しているいずれか2つのリールにより表示されている図柄がリーチ状態の図柄になっているか否かの判断がなされる。リーチ状態とは、複数の可変表示部5L,5C,5Rのうちのいずれか1つがまだ可変表示している段階で、既に停止している可変表示部の表示結果が、「AAA」,「BBB」等の特定の識別情報の組合せとなる条件を満たす所定表示状態となっている場合を意味する。そして、S108によりリーチ状態でないと判断された場合にはS87に進むが、リーチ状態であると判断された場合にはS109に進み、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、いずれもセットされていない場合にはS87に進むが、いずれかがセットされている場合にはS110に進み、リーチ音をスピーカ28から発生させた後にS87に進む。このリーチ音が発せられることにより、遊技者が現在可変表示している可変表示部の停止時の表示結果次第で前記特定の識別情報の組合せが成立するかもしれないという遊技者の期待感を効果的に盛り上げることができる。なお、スピーカ28からリーチ音を発生させることに加えてあるいはそれに代えてリーチ状態が発生した旨の表示を行なうようにしてもよい。また、ビッグボーナス当選フラグセット時にのみリーチ時の報知を行なうようにしてもよいし、どちらかの当選フラグがセットされている方のリーチ時にのみ報知を行なうようにしてもよい。
【0075】
図13ないし図15は、S98、S102、S106により定義されたリール停止制御の具体的内容を示すフローチャートである。まずS111により、現在の図柄番号を確認する処理が行なわれる。この図柄番号は前述したように0?20(図3参照)の21個あり、リール駆動モータ(ステッピングモータ)7L、7C、7Rの送りステップ数とリール位置センサ8L、8C、8Rの基準位置検出信号とに基づいて確認される。次にS112によりボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされる。ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS113に進み、他の2つのリールが停止しているか否かの判断が行なわれる。他の2つのリールとは、現時点で停止制御を行なわんとしているリール以外のリールを意味する。そして、他の2つのリールがまだ停止していない段階ではS120に進み、S111により確認した現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれ、S152に進む。スロットマシンの場合には、停止制御の仕方が不自然にならないようにするために遊技者がストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作してから0.2秒程度のある限られた非常に短い所定時間内に対応するリールを停止させなければならず、その非常に短い所定時間内にリールが回転できる回転角度が4図柄分程度となっている。ゆえに、ストップボタンが押圧操作されてから4図柄以上先にあるJAC図柄を有効な有効ライン上に停止制御させることは不可能であるために、S120により、4図柄先以内にJAC図柄がある場合にJAC図柄を有効ライン上に停止制御させるのである。なお、図3に示すように、現在の図柄番号がJAC図柄でない場合において、その現在の図柄番号から4図柄先の範囲内に必ずJAC図柄が存在するように図柄配列が構成されている。このように現在停止せんとするリールが最後のリールでない場合にはJAC入賞フラグがセットされているか否かにかかわらず有効となっている有効ライン上にJAC図柄を停止させるように制御されるのであり、これにより遊技者は期待を持って以降のリールの停止を注視するようになる。次にS152に進み、操作有効ランプ11L,11C,11Rのうち停止されたリールに対応する操作有効ランプを消灯するとともにリール停止音をスピーカ28から発する制御が行なわれ、S99,S103あるいはS107のいずれかにリターンする。
【0076】
ボーナスゲームフラグがセットされかつ他の2つのリールが停止しいる場合には、S104に進み、JAC入賞フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合にのみS120に進み、セットされていない場合にはS115に進む。S115では、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を有効となっている有効ライン上から外して停止し、その後S152に進む。つまり、JAC入賞フラグがセットされていないために、有効となっている有効ライン上にJAC図柄の組合せを成立させる訳にはいかず、ゆえにJAC図柄を有効となっている有効ラインから強制的にずらして停止させるのである。
【0077】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS116に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS117に進み、JAC入賞フラグがセットされているか否かの判断がなされ、JAC入賞フラグがセットされている場合にはS118に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされる。そして他のリールが停止していない段階では前記S120に進み、前述と同様にJAC図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれる。一方、他のリールが既に停止している場合にはS119に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を停止しているリールのJAC図柄の有効ライン上に停止させ、有効となっている有効ライン上にJAC図柄の組合せが成立するように停止制御し、その後S152に進む。
【0078】
一方、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合にはS121に進み、再ゲーム当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。再ゲーム当選フラグがセットされている場合にはS122に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、他のリールがまだ停止していない場合にはS123に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にあるJAC図柄を停止しているJAC図柄の有効ライン上に揃えて停止させる制御がなされてS152に進む。一方、他のリールが停止している場合にS124に進み、現在の図柄番号から4図柄先内にあるJAC図柄を停止しているJAC図柄の有効ライン上に揃えて停止させる制御がなされてS152に進む。
【0079】
一方、再ゲーム当選フラグがセットされていない場合にはS125に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合にはS126に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、他のリールがまだ停止していない場合にはS127に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄(本実施例ではA)があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS128によりビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止させた後S152に進む。一方、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合にはその回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めてS139に進む。なお、S127によりNOの判断がなされた場合においても、ビッグボーナス当選フラグは引続きセットされたままの状態であるために次回のゲームにおいて再度ビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止させんとする制御が試みられ、実際にビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰返し実行される。
【0080】
次に、S126により他のリールが停止していると判断された場合にはS129に進み、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS130に進み、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ある場合にS131に進み、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御が行なわれる。一方、S130により、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、前述と同様にその回のビッグボーナスゲームの開始を諦めてS139に進み、次回のゲームにおいて再度ビッグボーナスゲームの開始が行なわれるような可変表示装置の停止制御が試みられる。
【0081】
ビッグボーナス当選フラグがセットされていない場合にはS132に進み、ボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナス当選フラグがセットされている場合にはS133に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされる。他のリールが停止していない段階ではS134に進み、現在の図柄番号から4図柄先以内にボーナス図柄(本実施例ではB)があるか否かの判断がなされ、ある場合にはS135に進みボーナス図柄を有効となっている有効ライン上に停止させる制御が行なわれ、S152に進む。一方、S134によりボーナス図柄がないと判断された場合にはS152に進む。次に、S133により他のリールが既に停止していると判断された場合にはS136に進み、有効ライン上にボーナス図柄があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS139に進む。一方、有効ライン上にボーナス図柄がある場合にはS137に進み、停止しているボーナス図柄の有効ライン上に停止できるボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS139に進むがある場合にはS138に進み、ボーナス図柄を停止しているリールのボーナス図柄の有効ライン上に停止する制御がなされてS152に進む。
【0082】
一方、S132によりボーナス当選フラグがセットされていないと判断された場合にはS139に進み、小役当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、小役当選フラグがセットされていると判断された場合にはS140に進み、他のリールが停止しているか否かの判断がなされ、まだ他のリールが停止していない段階ではS144に進む。S144では、セットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS146に進みただちにリールを停止させてS152に進む。一方、S144により小役図柄があると判断された場合にはS145に進み、その小役図柄を有効ライン上に停止させる制御が行なわれてS152に進む。次に、他のリールが停止している段階ではS140によりYESの判断がなされS141に進み、有効ライン上に小役図柄があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS147に進むがある場合にはS142に進み、停止している小役図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否かの判断がなされ、ない場合にはS147に進むがある場合にはS143に進み、その小役図柄を停止しているリールの小役図柄の有効ライン上に停止する制御が行なわれた後S152に進む。
【0083】
S139により小役当選フラグがセットされていないと判断された場合にはS147に進む。S147では、他の2つのリールが停止しているか否かの判断がなされ、まだ停止していない段階ではS149に進み、現在停止させようとしているリールが左リールか否かの判断がなされ、左リールでない場合にはS150によりただちに停止制御した後S152に進むが、左リールであった場合にはS151に進み、単図柄Fが有効ライン上に停止しないように停止制御した後にS152に進む。つまりS139により小役当選フラグがセットされていないと判断されたにもかかわらず有効ライン上に単図柄Fが停止したのでは小役入賞が成立してしまうために、S151により、単図柄Fを有効ライン上に停止しないように強制的にずらして停止させるのである。また、他の2つのリールが既に停止している段階でS147によりYESの判断がなされてS148に進み、いずれの図柄も有効ライン上に揃わないように停止制御した後にS152に進む。このように、いずれの当選もなかった場合には、1番目,2番目に停止されるリールは、遊技者の停止操作が検出されることにより(S89,S91,S93)ほとんど瞬時に停止されるため、タイミングを図りながらストップボタン9L,9C,9Rを操作する技術に優れた遊技者の場合には、1番目,2番目に停止されるリールを頻繁にリーチ状態に停止させることが可能になる。そして、そのたびにリーチ音を発生させたのでは、騒々しく耳障りとなるが、本実施例では、S109に示したように、ビッグボーナス,ボーナス当選フラグがセットされているときのみリーチ音を発生させているために耳障りとなる不都合もない。小役当選フラグがセットされている場合には1ゲームの終了時点でその小役当選フラグをクリアする処理が行なわれる(S200参照)。ゆえに、小役当選フラグがセットされているにもかかわらずその回のゲームにおいてリールの図柄配列の関係上その小役当選フラグの種類に応じた小役図柄を有効ライン上に揃えることができなかった場合には、その小役当選フラグがクリアされて小役当選が無効となるのであり、次回のゲームにその小役当選フラグを引継いで次回のゲームにおいて小役図柄を有効ライン上に揃えるという制御は行なわないのである。
【0084】
前記S63ないしS152により、前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段が構成されている。
【0085】
図16は、入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS153により、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS159に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされてセットされていない場合にS163に進み、有効ライン上に入賞があったか否かの判断がなされる。有効ライン上に入賞がなかった場合にはS164に進み、払出予定数を「0」にセットした後に、図16に示すコイン払出制御に移行する。一方、S163により有効ライン上に入賞があったと判断された場合にはS165に進み、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させる。なお複数の有効ライン上に入賞が生じたときには、その入賞の生じた有効ラインを点滅させる。次にS166に進み、その入賞がビッグボーナス入賞であるか否かの判断がなされる。ビッグボーナス入賞でないと判断された場合にはS168に進み、その入賞がボーナス入賞であるか否かの判断がなされ、ボーナス入賞でないと判断された場合にはS170により再ゲーム入賞であるか否かの判断がなされる。S170により再ゲーム入賞でないと判断された場合にはその入賞は小役入賞であるため、S175に進み、払出予定数を小役に対応する値にセットした後図17に示すコイン払出処理に移行する。
【0086】
S166によりビッグボーナス入賞であると判断された場合にはS167に進み、各小役当選判定値をビッグボーナス時の値にし、ビッグボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセットし、ビッグボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ビッグボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。この各小役当選判定値をビッグボーナス時の値にセットして各小役当選判定値の個数を大幅に増やす制御がなされるために、各小役当選の確率が大幅に向上し、ビッグボーナスゲーム時においては高確率で小役図柄が揃うように制御される。なお、ビッグボーナスゲーム中においては特に小役当選の判定を行なうことなく、複数種類の小役当選フラグのうち所定のものを毎ゲームセットするようにしてもよい。一方、S168によりボーナス入賞であると判断された場合にはS169に進み、ボーナスゲームカウンタを「12」にセットし、JAC入賞カウンタを「8」にセットし、ボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第2態様で点滅させ、ボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。
【0087】
次に、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS153によりYESの判断がなされてS154に進み、ボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S155に進み、有効ライン上にJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合には払出し予定数を「0」にセットしてコイン払出し制御に移行する。一方、有効ライン上にJAC入賞がある場合にはS156に進み、払出し予定数を「15」にセットし、JAC入賞カウンタを「1」減算し、S157により、入賞した有効ラインに相当する有効ライン表示ランプを点滅させた後コイン払出し制御に移行する。
【0088】
次に、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS159によりYESの判断がなされてS160に進み、ビッグボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S161により有効ラインにJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS163に進むが、ある場合にはS162に進む。S162では、ボーナスゲームカウンタを「12」にセットし、JAC入賞カウンタを「8」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットし、払出し予定数を「8」にセットし、遊技効果ランプを第2態様で点滅させ、ボーナス音をスピーカから発生させる。このように、前記S169はビッグボーナスゲームでない通常ゲーム時においてボーナスゲームが開始された時に行なわれる処理であり、S162の方は、ビッグボーナスゲームが開始されている段階でボーナスゲームが成立したときに行なわれる処理である。
【0089】
一方、S170により再ゲーム入賞であると判断された場合にはS171に進み、ランダムカウンタのランダム値R(図6参照)を格納する処理がなされ、S172により、再ゲーム表示ランプ64を点灯または点滅させて再ゲーム表示を行なうとともに再ゲーム音をスピーカ28から発生させる処理がなされる。次にS173に進み、スタート操作があったか否かの判断がなされ、あるまで待機する。そして、遊技者がスタートレバー12を操作することにより制御がS174に進み、再ゲーム当選フラグがクリアされた後図9に示すリール回転処理に移行する。その結果、図7と図8に示したプログラムが実行されることなくリールの回転制御が行なわれるために、賭数の追加入力が受け付けられることなく前回既に入力されている賭数が持ち越されて再ゲームが行なわれる。
【0090】
S175Aにより、払出予定数が小役対応値(図11の15,8,6または3)にセットされた後、S175Bに進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合には図17に示すコイン払出処理に移行する。一方、セットされていない場合にはS175Cに進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされている場合にはS17に示すコイン払出制御に移行する。そして、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS175Eに進む。なお、S175Dは、後述する別実施例の場合に挿入されるステップである。S175Eでは、投入数カウンタの値が累積投入数に加算され、払出予定数の値が累積払出数に加算される処理が行なわれる。次にS175Fに進み、累積払出数/累積投入数を算出する処理が行なわれ、スロットマシン1による価値付与状況を算出する処理が行なわれる。
【0091】
次に、S175Gに進み、小役判定モードが「高確率時」になっているか否かの判断がなされ、なっていない場合にはS175Hに進み、S175Fにより算出した算出値が0.4(通常時における下限値)未満であるか否かの判断がなされ、0.4未満の場合にはS175Iにより、小役判定モードを「高確率時」にセットした後S175Lに進む。一方、算出値が0.4以上であった場合には、そのままS175Lに進む。S175Gの判定結果、小役判定モードが「高確率時」になっている場合にはS175Jに進み、S175Fにより算出した算出値が0.5(高確率時における上限値)以上であるか否かの判断がなされる。そして、0.5以上の場合にはS175Kに進み、小役判定モードを「通常時」にセットした後S175Lに進む。一方、S175Jにより、算出値が0.5未満であると判断された場合にはそのままS175Lに進む。このように、小役判定モードが通常時の場合において小役の払出率が40%を割った場合に小役判定モードが「高確率時」に更新される。また、小役判定モードが「高確率時」の場合において小役の払出率が50%に達すれば、小役判定モードを「通常時」に復帰させる制御が行なわれる。
【0092】
次にS175Lでは、累積投入数が「300」以上であるか否かの判断がなされ、以上でない場合にはそのまま図17に示すコイン払出制御に移行するが、以上の場合にはS175Mに進み、累積投入数,累積払出数をそれぞれ1/2の値に修正(小数点以下切上げ)する処理がなされた後にコイン払出制御に移行する。このS175L,S175Mの処理は、ゲーム数が多くなったときに累積投入数と累積払出数とがあまりにも大きな値になり過ぎるのを防止するための処理である。
【0093】
コインの払出状況すなわち価値付与状況の算出方法は、S175Fに示した実施例に限定されるものではない。たとえば、(累積投入数-累積払出数)/ゲーム数 を算出するようにしてもよい。また、コインの累積払出数の代わりに累積払出回数を用いてもよく、あるいは、累積払出数と累積払出回数との両方を用いて算出してもよい。さらには、コインの投入数に応じて加算しコインの払出数に応じて減算する加減算カウンタを設け、その加減算カウンタの値を算出値とするようにしてもよい。本実施例では、小役発生確率についてのみ標準値との比較によって制御するようにしたので、通常ゲームにおける払出率を所定範囲内に保ちながら、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの発生についてはランダム値Rの抽出タイミングと設定値によって制御されることとなり、高設定でもボーナス発生回数が多いとは限らず、また低設定でも少ないとは限らなくなって遊技者に対しゲームの興趣を持続させることのできる遊技機とすることができる。
【0094】
図16に示した実施例では、S175Fによる払出率の算出を行なうに際し、ビッグボーナスゲーム,レギュラーボーナスゲームを除く通常のゲーム時におけるコイン投入数,コイン払出数に基づいて算出するようにしたが、それに代えて、ビッグボーナスゲーム,レギュラーボーナスゲームにおけるコイン投入数,コイン払出数をも含めて算出するようにしてもよい。また、S175Fの算出,S175H,S175Jの判定を、コインの累積投入数が所定値に達した場合にのみ行なうようにしてもよい。
【0095】
次に、S175Dのステップが挿入された別実施例を説明する。この別実施例は、通常ゲーム時において、3枚賭を行なった場合にのみ小役の確率制御を行なうものであり、S175Dにより、投入数カウンタが「3」の場合にのみS175Eに進んで小役の確率制御を行ない、投入数カウンタが「3」でない場合にはそのままコイン払出制御に移行する。この別実施例の場合には、図10(b)におけるコイン投入数「1」と「2」の場合の「高確率」の欄の各小役当選許容値C_(12),D_(12),E_(12),F_(12),C_(22),D_(22),E_(22),F_(22)が不要となる。前記S175EないしS175Mにより、賭数入力手段により入力された入力数の累積値と価値付与手段により付与された有価価値の累積値および有価価値の付与回数の累積値のうち少なくとも一方とによって算出される価値付与状況を予め定められた標準値と比較し、該比較結果に基づいて前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる確率を制御する確率制御手段が構成されている。
【0096】
図17は、コイン払出制御のプログラムを示すフローチャートである。まずS176により、払出数が払出予定数に達したか否かの判断がなされ、達していない場合にはS177に進み、クレジットゲームモードであるか否かの判断がなされ、クレジットゲームモードでない場合にはS180に進み、コインを1枚払出しそれに応じて払出数を「1」歩進した後S176に戻る。一方、クレジットゲームモードになっている場合にはS178に進み、クレジットカウンタがその上限値である「50」になっているか否かの判断がなされ、なっている場合にはS180に進みコインの払出を行なうが、なっていない場合すなわちまだクレジットカウンタの記憶に余裕がある場合にはS179に進み、クレジットカウンタを「1」歩進するとともに、それに応じて払出数を「1」歩進した後S176に戻る。このS177ないしS180の処理を、払出数=払出予定数になるまで繰返し実行してそのたびにコインの払出あるいはクレジットカウンタへの加算処理が行なわれ、払出数が払出予定数に達した段階でS181に進む。
【0097】
S181では、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS182に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS200に進み、JAC入賞フラグをクリアし、小役当選フラグをクリアし、前回投入数を投入数カウンタの値に更新し、投入数カウンタをクリアして図7(b)に示すゲームスタート処理に戻る。一方、ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS185に進み、JAC入賞カウンタが「0」になったか否かの判断がなされ、なっている場合にはS186によりボーナスゲームカウンタがクリアされた後、S188により、JAC入賞カウンタがクリアされ、ボーナスゲームフラグがクリアされる。一方、JAC入賞カウンタが「0」でない場合にはS187に進み、ボーナスゲームカウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS188に進むが、「0」でない場合にはS200に進み、JAC入賞フラグがクリアされ、小役当選フラグがクリアされて図7(b)に示すゲームスタート処理に戻る。このように、ボーナスゲームカウンタが「0」になった段階またはJAC入賞カウンタが「0」になった段階でボーナスゲームフラグがクリアされてボーナスゲームが終了する。
【0098】
次に、S189では、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS190により遊技効果ランプ24を消灯する処理がなされてS200に進む。一方、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS191に進み、ボーナス回数カウンタを「1」ディクリメントする処理がなされ、S192により、ボーナス回数カウンタが「0」になったか否かの判断がなされる。ボーナス回数カウンタが「0」になっていない場合にS193に進み、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカ28から発生させる処理がなされてS200に進む。一方、ボーナス回数カウンタが「0」になっている場合にはS194に進み、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアした後S195に進む。
【0099】
一方、ボーナスゲームフラグがセットされておらずかつビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合には、S183に進み、ビッグボーナスゲームカウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」でない場合にはS200に進むが、「0」である場合にはS184に進み、ボーナス回数カウンタをクリアする処理がなされてS195Aに進む。S195Aでは、ビッグボーナスゲームフラグをクリアしてビッグボーナスゲームを終了させるとともに、小役判定モードを「通常時」にし、累積投入数を「100」にし、累積払出数を「50」にし、遊技効果ランプを消灯する処理が行なわれる。つまりビッグボーナスゲームカウンタが「0」になった段階あるいはボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了するのであり、それ以降通常のゲームとなるために、小役当選判定モードを「通常時」に復帰させるとともに、累積投入数と累積払出数とを初期値(S14A参照)に戻す制御が行なわれるのである。
【0100】
次にS195Bに進み、現時点におけるランダム値Rを格納する処理がなされ、S195Cにより、その格納した値を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。この所定の演算とは、たとえば、格納したランダム値Rに対し、所定の数値を減算したり加算したり乗じたり除したり、あるいはランダム値Rを二乗したり三乗したり、さらには、ランダム値Rを所定の関数に代入して答えを算出する等の演算である。次にS195Dに進み、その演算結果を確率変動当選許容値と比較する処理がなされる。この確率変動当選許容値とは、ビッグボーナスゲーム発生確率を向上させることができる許容値のことである。この確率変動当選許容値は、確率変動状態を2回発生させる確率変動2回当選許容値と、確率変動状態を1回だけ発生させる確率変動1回当選許容値との2種類が定められている。S195Eにより、演算結果が、確率変動2回当選許容値の範囲内であれば、S195Fに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄を「77」にセットする処理が行なわれてS195Jに進む。一方、演算結果が確率変動1回当選許容値の範囲内である場合には、S195EによりNOの判断がなされてS195GによりYESの判断がなされてS195Hに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄を「33」にセットする処理がなされてS195Jに進む。一方、演算結果が確率変動2回当選許容値の範囲内ではなくかつ確率変動1回当選許容値の範囲内でもなかった場合にはS195Iに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄をはずれ停止図柄にセットする処理がなされる。
【0101】
次に、S195Jでは、ゲーム回数・可変表示器25を可変表示させるためのタイマがセットされて、可変表示が開始制御される。次にS195Kに進み、そのセットされたタイマが終了したか否かの判断がなされ、終了するまで待機し、ゲーム回数・可変表示器25を可変表示させ続ける。そして、タイマが終了した段階でS195Lに進み、ゲーム回数・可変表示器25を、前記S195F,195Hあるいは195Iによりセットされた停止図柄になるように停止制御する。次にS195Mに進み、停止図柄が「77」となる特別の遊技状態が発生しているか否かの判断がなされ、「77」である場合にはS195Nに進み、確率変動カウンタを「2」にセットする処理がなされてS195Qに進む。一方、停止図柄が「33」となる特別の遊技状態が発生している場合には、S195OによりYESの判断がなされてS195Pに進み、確率変動カウンタを「1」にセットする処理がなされてS195Qに進む。停止図柄がはずれ図柄であった場合には、S195N,S195Pの処理が行なわれない。次にS195Qに進み、確率変動カウンタの値が「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS196に進むが、「0」でない場合にはS195Rに進み、遊技効果ランプを第3の態様で点滅させ、ビッグボーナスゲーム発生確率が向上した確率変動状態であることを遊技者に表示した後S196に進む。なお、このS195Rの後にS195Sのステップを挿入してもよい。このS195Sは、小役判定モードを「高確率時」にセットする処理である。その結果、確率変動カウンタが「0」でない場合には小役判定モードが「高確率時」にセットされることになる。前記S175,S195Sの処理を行なうことにより、確率変動時になれば、ビッグボーナス当選確率が向上するとともに「高確率時」の小役払出率が100%(いわゆる等倍返し)となるため、ビッグボーナスに当選するまでの間コインを減らさずにゲームを行なうことができる。この実施例では、確率変動状態にするか否かを抽選表示する可変表示器を、ゲーム回数を表示するゲーム回数・可変表示器25により兼用構成したが、抽選専用の可変表示器を設けてもよい。また、リール6L,6C,6Rを用いて抽選表示を行なうようにしてもよい。さらに、確率変動回数は2種類に限定されることなく、1種類または3種類以上の回数であってもよい。また、確率変動回数を異ならせるのに代えてあるいはそれに加えて、確率変動時の当選確率を異ならせるようにしてもよい。また、前記S195N,S195Pでは、確率変動カウンタを「2」,「1」にセットする処理が行なわれているが、その代わりに、これらのステップが実行されるごとに+2,+1するようにしてもよい。また、確率変動カウンタが「0」でない場合には、当選を無効とするようにしてもよいし、抽選を行なわないようにしてもよい。
【0102】
さらに、確率変動を行なうか否かの抽選時期は実施例に限定されるものではない。たとえば、ビッグボーナス当選時,ビッグボーナス発生時,ビッグボーナスゲーム終了時の次のゲーム,特定の小役発生時,再ゲーム時,ボーナス当選時,ボーナス発生時,ボーナスゲーム終了後の次のゲーム等の時期であってもよい。前記S176ないしS200と、コインホッパー37,コイン払出モータ38,払出コインセンサ39により、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段が構成されている。また、前記S195BないしS195P,S77A,S77B,S67,図10(a),(b),図11(a),(b)に示したテーブルデータにより、前記遊技機の遊技状態が予め定められた特別の遊技状態になった場合に、前記可変表示装置の表示結果が前記特定の表示態様となる確率を変動させる確率変動制御手段が構成されている。
【0103】
次にS196に進み、ゲームオーバー有にセットされているか否かの判断が行なわれる。電源投入時にリセットスイッチ4がONに操作されている場合には前述したようにゲームオーバー無にセットされ(S3参照)、リセットスイッチ4がOFFに操作された場合には前述したようにゲームオーバー有にセットされるのであり(S2参照)、このS196により、ゲームオーバーの有無を判定し、ゲームオーバー無の場合にはS200に進み、以降図7(b)に示すゲームスタートに戻り、ゲームスタート処理が開始される。一方、ゲームオーバー有と判断された場合にはS197に進み、コード「OF」を払出数表示器27により表示するとともにゲームオーバー音をスピーカ28から発生させる処理が行なわれる。これにより、スロットマシンがゲームオーバー(打止め状態)となる。そして、S198に進み、リセット操作があるか否かの判断がなされ、あるまでS197の処理が続行される。そして、遊技場の係員がリセット用鍵孔3bに所定の鍵を挿入してリセットスイッチ4を操作すれば、S198によりYESの判断がなされてS199に進み、「OF」のコード表示がクリアされ、ゲームオーバー音が停止された後S200に進む。このように構成することにより、遊技場の営業形態に応じて、スロットマシンが打止状態に達した段階でそのたびに景品交換を行なわせる遊技場においては打止選択手段により打止手段を機能させるように選択しておけばよく、一方、スロットマシンが打止め状態に達しても景品交換させることなく引続きゲームを続行させるいわゆる無定量方式を採用している遊技場においては、打止選択手段により打止手段が機能しないように選択すればよい。
【0104】
このような遊技場の営業形態に合わせてスロットマシンの打止めに関する制御を行なう他の方法としては、次のようなものがある。
【0105】
図17に示したS195の処理の次に、たとえば自動リセット用タイマをセットし、次にコード「OF」の表示とゲームオーバー音を発生する処理を行ない、次にゲームオーバーの有無を判定するステップを用意する。そして、ゲームオーバー無と判断された場合には、自動リセット用タイマが終了したか否かの判断を行なうステップに進み、タイマが終了していない場合には再び前記コード「OF」を表示しかつゲームオーバー音を発生するステップに戻る。そして、自動リセット用タイマが終了した段階でコード表示のクリア,ゲームオーバー音の停止を行なう処理を実行し、次に図17に示すS200に戻る。一方、ゲームオーバーの有無を判定するステップにおいて、ゲームオーバー有と判断された場合には、リセット操作の有無を判定するステップに移行する。そしてリセット操作がないと判断された場合には前記コード「OF」を表示しかつゲームオーバー音を発生する処理に戻る。そして、リセット操作有と判断された場合には前記コード表示クリア,ゲームオーバー音を停止する処理に進み、その後図16のS200に進む。
【0106】
つまり、前記S1ないしS3により、ゲームオーバー無に設定されている場合には、自動リセット用タイマが終了するまで待って、終了した段階で自動的にゲームオーバーを表わす旨のコード表示をクリアしてゲームオーバー音を停止させてゲームスタート処理に戻るようにし、ゲームオーバー有が設定されている場合には、リセットスイッチ4の操作があるまでゲームオーバーを表わすコード表示を行ないゲームオーバー音をスピーカから発生させる打止め状態を持続させるようにする。また、前記リセット操作があるか否かの判定を行なうステップとコード表示をクリアしかつゲームオーバー音を停止させる処理ステップとにより、手動操作により打止解除を行なう手動打止解除手段が構成されている。また、前記S1ないしS3により、前記自動打止解除手段による打止解除と前記手動打止解除手段による打止解除とのうちいずれか一方を選択する打止解除態様選択手段が構成されている。この別実施例によれば、ゲームオーバ無のモードになっている場合に、ビッグボーナスゲームが終了すれば一旦ゲームオーバ(打止状態)となり、所定時間が経過することにより自動的にゲームオーバが解除されるため、ゲームオーバとなっている所定時間だけゲームが行なわれない状態となる。その結果、ホール用管理コンピュータにより投入コイン等の利益情報や景品コイン等の不利益情報を集計する際にゲームが行なわれないゲームオーバ状態を区切りにしてゲームオーバ解除から次のゲームオーバまであるいはビッグボーナスゲーム開始からゲームオーバまでを一単位にして情報の集計を行なうことも可能となる。
【0107】
なお、リールの回転開始からコインの払出終了までの間はコインの貸出しを行なわないようにしたが、常時貸出し可能にしてもよい。また、本発明は、コインの代わりにパチンコ玉を使用してゲームを行なうタイプのスロットマシンでもよい。その場合には、賭数入力手段は、遊技者が投入したパチンコ玉の個数を賭数として検出するものとなる。また、カード等の記録媒体を挿入し、その記録媒体の記録情報によって特定される遊技者所有の有価価値を使用してゲームが行なわれるスロットマシンでもよい。この場合には、前記遊技者所有の有価価値の一部を賭数として使用するための遊技者の操作を検出する操作検出手段が賭数入力手段となる。さらに、ストップボタンをなくして所定時間の経過により可変表示装置が自動停止するものあるいは、スタートレバーをなくして、賭数の入力により可変表示装置が可変開始するものでもよい。前記S176ないしS200と、コインホッパー37,コイン払出モータ38,払出コインセンサ39により、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を付与する価値付与手段が構成されている。この価値付与手段は、コインを賞品として払出すものに代えて、たとえば、パチンコ玉を払出したり、得点を加算してゲーム終了時にその得点を記録した記録媒体を払出したりするものでもよい。なお、可変表示装置は、回転リール式に代えて、CRT,液晶,LED,エレクトロルミネセンス等からなる電気的表示装置により図柄を可変表示するものや、図柄が描かれた複数枚の円板が回転して可変表示するもの、図柄が描かれたベルトが移動するもの、あるいは、いわゆるリーフ式のもの等、可変表示装置の種類はどのようなものでもよい。また、可変表示部の数は3個に限定されるものではない。
【0108】
コインおよびクレジット数が、遊技用価値の一例である。共通カードに代表されるプリペイドカードが記録媒体の一例である。処理装置制御部80、貸出ボタン71、および貸出スイッチ72によって記録媒体の記録情報に基づいて特定される前記遊技者所有の有価価値と引換に所定量の遊技用価値を貸出すことを指示するための貸出指示手段が構成される。
【0109】
図3に示される図柄が、複数種類の識別情報を構成する。「A」および「B」という図柄が所定の特別遊技状態用識別情報を構成する。さらに、ビッグボーナスゲーム、ボーナスゲームに加えて、小役を発生させる表示結果が、該可変表示装置の表示結果の予め定められた特定の表示態様を構成する。
【0110】
払出モータ38により、前記貸出指示手段の操作に応答して、前記所定量の遊技用価値を貸出すための貸出手段が構成される。
【0111】
図8のS41Aにおいてコイン貸出信号が有ると判定された場合、S41Bで貸出数に50が設定され、S41C?S41Gまでの処理が貸出数=0となるまで繰返し行なわれ、この間は他の処理ができないことにより、前記貸出手段による前記所定量の遊技用価値の貸出が開始した後は、前記所定量の遊技用価値の貸出が終了するまで、後続する処理を禁止することが開示されている。
【0112】
図8のS41Bにおいて貸出数を一旦記憶すること、およびS41EおよびS41Fにおいて、それぞれ貸出数を-1することにより、前記貸出指示手段の操作に応答して、前記貸出手段から貸出する予定の遊技媒体数を記憶し、前記貸出手段により前記遊技媒体が一個払い出されるごとに、前記貸出する予定の遊技媒体数を対応して更新することが開示されている。
【0113】
次に、本発明の別実施例を説明する。
【0114】
(1)確率変動開始条件が成立する特別の遊技状態としては、前記S66の演算結果が、たとえば、ビッグボーナス当選許容値の範囲内の一部または全部の値となったとき、レギュラーボーナス当選許容値の範囲内の一部または全部の値となったとき、各小役当選許容値の範囲内の一部または全部の値となったとき、再ゲーム当選許容値の範囲内の一部または全部の値となったとき、はずれの範囲内の一部の値となったときに発生するようにしてもよい。
【0115】
(2)ビッグボーナスゲーム,レギュラーボーナスゲームが特定のパターンで終了した場合に前記特別の遊技状態が発生するようにしてもよい。たとえば、ビッグボーナスゲーム中の特定のゲーム数目においてボーナスゲームが発生した場合、あるいは、ボーナスゲーム中の特定のゲーム数目においてJAC入賞が発生した場合等が考えられる。また、前記ボーナスゲーム発生時のゲーム数と前記JAC入賞の発生時のゲーム数との組合せが特定のパターンとなった場合に特別の遊技状態が発生するようにしてもよい。
【0116】
(3)リール6L,6C,6Rからなる可変表示装置が確率変動を開始するように定められた表示結果になった場合に特別の遊技状態を発生するようにしてもよい。たとえば、リールの図柄配列の中に専用の図柄を設け、その図柄が有効ライン(当りライン)上に停止した場合や、はずれとなる図柄組合せの一部(たとえば「AAB」)を確率変動開始となる表示結果と定め、その図柄の組合せが有効ライン(当りライン)上に停止した場合等に特別の遊技状態となるようにすることが考えられる。
【0117】
(4)所定期間(所定ゲーム数またはコインの所定累積投入数)ビッグボーナスゲームが発生しなかった場合に特別の遊技状態となるようにしてもよい。たとえば、所定期間ビッグボーナスゲームもレギュラーボーナスゲームも発生しない場合、所定期間ビッグボーナスゲームが発生しない場合、所定期間ビッグボーナスゲームが発生しないままレギュラーボーナスゲームが所定回数発生した場合等に特別の遊技状態となるようにしてもよい。
【0118】
(5)遊技機の差数や払出率が所定値となった場合に特別の遊技状態となるようにしてもよい。この場合に、差数や払出率は、遊技場の開店時からまたは前回のビッグボーナスゲーム終了時からまたは確率の設定変更時から計数することが考えられる。
【0119】
(6)確率変動制御を行なうに際し、ビッグボーナスゲームが発生する可変表示装置の図柄の組合せ数を増加させるようにしてもよい。このようにすれば、実際の発生確率が向上した場合には、可変表示装置の表示用の発生確率も向上するようになる。
【0120】
(7)確率変動状態となったときには、(i)ビッグボーナスゲーム発生確率のみ、(ii)レギュラーボーナスゲーム発生確率のみ、(iii)各小役発生確率のみ、(iv)再ゲーム発生確率のみ、を変動制御するようにしてもよい。あるいは、前記(i)ないし(iv)のうち、2つ以上のものを選びだして確率変動制御を行なってもよい。この2つ以上のものを選び出して確率変動を行なう場合には、確率変動の契機はそれぞれの確率変動対象物で同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0121】
(8)確率変動状態を終了する条件として、前記(1)の開始条件と同じ条件が成立した場合に終了させるようにしてもよい。この場合に、S66の演算結果が比較される特定の値は、前記(1)の開始条件と同じ値であってもよくまた異なった値であってもよい。
【0122】
(9)前記(2)に示した確率変動開始条件と同じ条件が成立した場合に確率変動を終了させてもよい。その場合に、前記(2)に示したゲーム数や特定のパターンは、確率変動開始条件と同じであってもよくまた異なっていてもよい。また、ビッグボーナスゲーム中の特定のゲーム数目においてボーナスゲームが発生しなかった場合やボーナスゲーム中の特定のゲーム数目においてJAC入賞が発生しなかった場合に確率変動状態を終了させてもよい。さらに、前記ボーナスゲームが発生したゲーム数と前記JAC入賞が発生したゲーム数との組合せが特定のパターンにならなかった場合に確率変動状態を終了させてもよい。
【0123】
(10)リール6L,6C,6Rからの可変表示装置が確率変動を終了するように定められた表示結果となった場合に確率変動状態を終了させてもよい。具体的には、リールの図柄配列の中に専用の図柄を設け、その図柄が有効ライン上に停止した場合や、はずれの図柄となる組合せの一部を確率変動終了となる表示結果と定め、その図柄の組合せが有効ライン上に停止した場合等が考えられる。これらの場合には、専用の図柄や組合せの一部が、前記(3)の開始条件で定められた図柄や組合せと同一のものであってもよいし異なっていてもよい。さらに、レギュラーボーナスが発生する表示結果になった場合あるいは特定の小役が発生する表示結果となった場合に、確率変動状態が終了するようにしてもよい。
【0124】
(11)確率変動が開始された後所定期間が経過した場合に、確率変動状態を終了させてもよい。たとえば、(i)確率変動状態が開始した後、所定ゲーム数に達した場合やコインが所定累積投入数に達した場合に、終了させてもよい。あるいは、(ii)前記(7)に示した確率変動制御の対象となっている役が所定回数発生した場合に確率変動状態を終了させてもよい。さらには、前記(i)または(ii)のうちのいずれか早い方の条件が成立したときに確率変動状態を終了させてもよい。
【0125】
(12)遊技機の差数,払出率が所定値に達した場合に確率変動状態を終了させてもよい。この差数や払出率は、遊技場の開店時から、確率の設定変更時から、あるいは確率変動開始時から計数することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】遊技機の一例のスロットマシンおよびカード処理装置を示す全体正面図である。
【図2】スロットマシンおよびカード処理装置の全体背面図である。
【図3】リールの外周に描かれた識別情報としての図柄を示す展開図である。
【図4】各リールの側面図である。
【図5】スロットマシンに用いられる制御回路を示すブロック図である。
【図6】電源投入時に行なわれる処理プログラムおよびランダムカウンタ更新処理の割込プログラムを示すフローチャートである。
【図7】エラーチェック処理の割込プログラムおよびゲームスタート処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図8】ゲームスタート処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図9】リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図10】ROMに記憶されている各種当選許容値のテーブルデータおよび各種当選許容値の領域を示す図である。
【図11】各種当選許容値の領域を示す図である。
【図12】リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図13】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図14】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図15】リール停止処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図16】入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図17】コイン払出処理のプログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0127】
1 遊技機の一例のスロットマシン、90 可変表示装置、6L,6C,6R リール、5L,5C,5R 可変表示部、18 賭数入力手段の一部を構成するコイン投入口、12 賭数入力手段の一部を構成するスタートレバー、14 賭数入力手段の一部を構成するクレジット操作ボタン、36 投入コインセンサ、13 スタートスイッチ、45 制御部、8L,8C,8R リール位置センサ、76 カード処理装置、78 カードリーダライタ、80 カード処理装置制御部、25 ゲーム回数・可変表示器、71 貸出ボタン、72 貸出スイッチ。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者所有の有価価値を賭数として使用して遊技が可能となり、ビッグボーナス識別情報を含む複数種類の識別情報を可変表示可能な複数の可変表示部を備えた可変表示装置を含み、該複数の可変表示部が可変開始した後停止することにより1ゲームが終了するスロットマシンであって、
前記可変表示装置は、複数種類の識別情報が描かれた複数の可動表示部材を備え、前記複数の可動表示部材を回転開始させて前記複数種類の識別情報を前記複数の可変表示部に対し移動させることにより前記複数の可変表示部を可変開始し、前記複数の可動表示部材の回転を停止することによって前記複数の可変表示部を停止させ、
前記複数の可変表示部は、賭数の入力によって有効な当りラインが設定される、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とから成り、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記ビッグボーナス識別情報によりビッグボーナス役の表示態様となったときに、ビッグボーナスに移行させ、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの小役識別情報により小役の表示態様となったときに、前記ビッグボーナスには移行させない小役入賞を発生させ、
通常ゲーム終了時の前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記複数種類の識別情報のうちの再ゲーム識別情報により再ゲーム役の表示態様となったときに、前記遊技者所有の有価価値を賭数として使用することなくゲームが可能となる再ゲームを発生させる遊技制御手段と、
1ゲームをスタートさせる操作を行なうためのスタート操作手段と、
各可動表示部材の所定箇所に定めた可動表示部材の回転基準位置を検出するために、各可動表示部材の前記回転基準位置よりも回転軸方向内側に各々設けられた基準位置検出手段と、
前記可動表示部材を停止操作するために各可動表示部材に対応して設けられた停止操作手段と、
全ての前記可動表示部材が回転開始した後、所定時間が経過するまでに全ての前記基準位置検出手段が前記回転基準位置を検出したことを必要条件として前記停止操作手段の停止操作を有効化する停止操作有効化手段と、
該停止操作有効化手段により停止操作が有効化されたことを報知する有効化報知手段と、
前記スタート操作手段の操作が行なわれたときに、所定の数値範囲の複数の数値情報の中から数値情報を抽出する抽出手段と、
前記所定の数値範囲の複数の数値情報と、前記ビッグボーナス役と前記小役と前記再ゲーム役とを含む複数種類の役の各々との対応関係を定義した定義データを格納している定義データ格納手段と、
前記抽出手段が抽出した数値情報が前記定義データに定義された前記複数種類の役のいずれの役に対応する数値情報であるかを判定することによって、前記複数種類の役別に、当選しているか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により当選と判定された役に対応する当選フラグをセットするセット手段と、
前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした所定の停止可能範囲内に位置する識別情報のうちのいずれかの識別情報を、前記セット手段によりセットされている当選フラグに基づいて前記所定位置に停止させる制御を行なう可変表示制御手段とを備え、
前記遊技制御手段は、前記複数の可変表示部の前記有効な当りライン上の停止結果が前記セット手段によりセットされている当選フラグに対応した役の表示態様ではないときに、前記セット手段により小役当選フラグがセットされているときには当該小役当選フラグを消去し、当該セット手段によりビッグボーナス当選フラグがセットされているときには当該ビッグボーナス当選フラグを消去せずに次回のゲームに持越し、
前記停止操作有効化手段は、前記必要条件成立時には全ての前記停止操作手段の停止操作を前記所定時間経過後に有効化する一方、前記必要条件不成立時には前記停止操作手段のいずれの停止操作をも有効化せず、
前記定義データ格納手段には、前記スロットマシンによる遊技者への価値付与状況が予め定められた標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを向上させるための前記小役用の高確率時の定義データと、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記小役の当選判定率のみを低下させるための前記小役用の通常時の定義データとが格納されており、
前記判定手段は、前記価値付与状況が前記標準値よりも低い場合には前記通常ゲームにおいて前記高確率時の定義データを用いて前記小役の当選判定をする一方、前記価値付与状況が前記標準値よりも高い場合には前記通常ゲームにおいて前記通常時の定義データを用いて前記小役の当選判定をし、
前記複数の可変表示部の識別情報の配列は、前記停止可能範囲内に必ず前記再ゲーム識別情報が存在する配列構成となっており、
前記可変表示制御手段は、
再ゲーム当選フラグのみがセットされているとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記再ゲーム当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記再ゲーム当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する前記再ゲーム識別情報を前記所定位置に停止させ、
前記セット手段によりセットされた前記ビッグボーナス当選フラグが消去されずに進行した次回のゲームにおいて前記セット手段が前記小役当選フラグをセットすることにより前記ビッグボーナス当選フラグに加えて前記小役当選フラグがセットされた状態となったとき、当該ゲームでは、前記停止操作手段が操作されたときに前記可変表示部の前記有効な当りライン上の所定位置に表示されている識別情報を基準とした前記所定の停止可能範囲内に位置する識別情報の中に前記ビッグボーナス識別情報が存在するときには当該ビッグボーナス識別情報を前記所定位置に停止させることを特徴とする、スロットマシン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-06-16 
結審通知日 2010-06-18 
審決日 2010-06-30 
出願番号 特願2005-109071(P2005-109071)
審決分類 P 1 113・ 4- YA (A63F)
P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 841- YA (A63F)
P 1 113・ 854- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
登録日 2007-12-21 
登録番号 特許第4058055号(P4058055)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 中田 雅彦  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 川下 清  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 深見 久郎  
代理人 振角 正一  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 中田 雅彦  

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