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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1248584
審判番号 不服2009-8590  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-21 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2006-339543「画像表示方法、画像表示装置および画像表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日出願公開、特開2007-129748〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続
本願は、平成15年12月10日に出願した特願2003-411848号の一部を平成18年12月18日に新たな特許出願としたものであり、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成19年 1月16日
拒絶理由通知 :平成20年12月 3日(起案日)
意見書 :平成21年 2月 6日
手続補正 :平成21年 2月 6日
拒絶査定 :平成21年 3月17日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成21年 4月21日
手続補正 :平成21年 5月20日
前置審査報告 :平成21年 7月28日(起案日)
審尋 :平成22年10月 5日(起案日)
回答書 :平成22年12月 7日

[2]査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の請求項1?8に係る各発明は、下記の引用文献1?3に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

そして、査定には、
意見書における請求人の主張
-引用文献1には、「本願の請求項1に係る発明の構成要素「画像を表示する際に重複領域には第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ重複領域に表示される第1の部分画像と第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップ」が開示及び示唆されていないとの請求人の主張-
について、
引用文献1は、重複領域であるT0部分について、A1とB1のいずれか一方のみの部分画像を用いて表示するように制御し、その際、T0部分の左端又は右端の2点のいずれかを分割位置としてそのタイミングが変化するように制御するものと認められ、
画像を強制的に無出力又は無表示とする場合に、マスクデータとの論理積を取ることは周知技術であるので、引用文献1に記載された発明から、画像を表示する際に重複領域には第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ重複領域に表示される第1の部分画像と第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成する構成とすることは、当業者にとって格別の困難性がない
旨、付記されている。

記(引用例)
引用文献1:特開2003-005737号公報
引用文献2:特開2000-330495号公報
引用文献3:特開平07-298079号公報

【第2】補正の却下の決定(本件補正の補正却下)

平成21年5月20日付けの手続補正(以下、本件補正という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成21年5月20日付けの手続補正(本件補正)を却下する。

《理由》

【第2-1】本件補正の内容

ア 特許請求の範囲の記載(補正前と補正後〉
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、本件補正前および本件補正後の特許請求の範囲は、下記のとおりである。(補正部分をアンダーラインで示す。)

記(補正前)
【請求項1】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、
前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。
【請求項2】
前記マスクデータ生成ステップの前に、前記第1又は第2の投射表示領域に基づいて画像を分割することにより前記重複領域の画像を含む前記第1及び第2の部分画像を生成する画像分割ステップを有することを特徴とする請求項1記載の画像表示方法。
【請求項3】
前記画像分割ステップは、前記第1及び第2の部分画像を、前記第1又は第2の画像投射手段が表示可能な最大表示領域に応じて生成することを特徴とする請求項2記載の画像表示制御方法。
【請求項4】
前記マスクデータ生成ステップの前に、前記第1及び第2の部分画像に対して画像補正を行う画像補正ステップを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像表示方法。
【請求項5】
前記マスクデータは、当該マスクデータによってマスキングされた画像が表示されたときに、前記マスキングされた画像の端辺のうちの少なくとも一辺が非直線形状をなすデータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像表示方法。
【請求項6】
前記マスクデータは、乱数パターンを形成するデータであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像表示方法。
【請求項7】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、
前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際に用いる画像表示装置であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成手段と、
前記マスクデータ生成手段で生成されたマスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理手段と、
前記データマスキング処理手段によって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する前記第1及び第2の画像投射手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、
前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際に用いる画像表示制御装置に実行させる画像表示プログラムであって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成手順と、
前記マスクデータ生成ステップで生成されたマスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理手順と、
前記データマスキング処理手順によって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示手順と、
を画像表示制御装置に実行させる画像表示プログラム。

記(補正後)
【請求項1】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。
【請求項2】
前記マスクデータ生成ステップの前に、前記第1又は第2の投射表示領域に基づいて画像を分割することにより前記重複領域の画像を含む前記第1及び第2の部分画像を生成する画像分割ステップを有することを特徴とする請求項1記載の画像表示方法。
【請求項3】
前記画像分割ステップは、前記第1及び第2の部分画像を、前記第1又は第2の画像投射手段が表示可能な最大表示領域に応じて生成することを特徴とする請求項2記載の画像表示制御方法。
【請求項4】
前記マスクデータは、当該マスクデータによってマスキングされた画像が表示されたときに、前記マスキングされた画像の端辺のうちの少なくとも一辺が非直線形状をなすデータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像表示方法。
【請求項5】
前記マスクデータは、乱数パターンを形成するデータであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像表示方法。
【請求項6】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際に用いる画像表示装置であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成手段と、
前記マスクデータ生成手段で生成されたマスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理手段と、
前記データマスキング処理手段によって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する前記第1及び第2の画像投射手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際に用いる画像表示制御装置に実行させる画像表示プログラムであって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成手順と、
前記マスクデータ生成ステップで生成されたマスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理手順と、
前記データマスキング処理手順によって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示手順と、
を画像表示制御装置に実行させる画像表示プログラム。

イ 新請求項1(本件補正後の請求項1)とする補正
本件補正は、新請求項1(補正後請求項1)とする補正を含むところ、
当該「新請求項1とする補正」は、
旧請求項1(補正前請求項1)記載の
「前記第1及び第2の部分画像のうち」を、「予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうち」とし、
「前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」を、「前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」として新請求項1とするものである。

【第2-2】本件補正の適合性1 補正の範囲(第17条の2第3項)
上記「新請求項1とする補正」は、請求人が審判請求書で説明するとおり、願書に最初に添付した明細書の、〔実施の形態2〕についての段落【0076】の記載を根拠とするものと認められ、
したがって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正であるといえ、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

【第2-3】本件補正の適合性2 補正の目的(第17条の2第4項)
上記「新請求項1とする補正」は、旧請求項1に記載のあった特定事項である「前記第1及び第2の部分画像」及び「前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」を限定するものであり、
補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

なお、新請求項1は、旧請求項4(旧請求項4は本件補正で削除されている。)で特定記載していた「前記マスクデータ生成ステップの前に、前記第1及び第2の部分画像に対して画像補正を行う画像補正ステップ」を含んでいないから、
上記「新請求項1とする補正」が、旧請求項1の削除に伴い、旧請求項1を引用する旧請求項4(の部分)を新請求項1と繰り上げた補正であるとすることはできない。

【第2-4】本件補正の適合性3 独立特許要件(第17条の2第5項)
上記の通り、上記「新請求項1とする補正」は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、独立特許要件を検討することを要するものである。
そこで、独立特許要件について検討するに、新請求項1(補正後請求項1)に記載される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、上記「新請求項1とする補正」を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

新請求項1に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。

《理由:独立特許要件に適合しない理由の詳細》

[1]補正後発明

本件補正後の請求項1(新請求項1)の記載は、【第2-1】アの記(補正後)の【請求項1】記載のとおりであるが、
その「変化するように、前記重複領の画像の少なくとも」における「重複領」なる記載は、誤記であって正しくは「重複領域」であると認められる(このことは、その前後に「重複領域」と記載されていること、発明の詳細な説明においても「重複領域」と記載されていることなどから、明らかである。)
従って、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正後発明」という。)は、
「第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。」
と認められる。

当該「補正後発明」は、下記のように、
前提および全体を特定する画像表示方法(A)、マスクデータ生成ステップ(B)、画像データマスキング処理ステップ(C)、画像表示ステップ(D)、とに分説することができる。

補正後発明(分説)
A:第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
B:前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
C:前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
D:前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
A:を有することを特徴とする画像表示方法。


[2]刊行物の記載

刊行物1:特開2003-005737号公報 (先の「引用文献1」に同じ。以下「刊行物1」という。)には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。

〈特許請求の範囲、請求項1・3〉
(K1)「【請求項1】 1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリアを形成し、各表示エリアに複数の入力映像データに基づく映像をそれぞれ表示する映像表示装置において、
前記各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データを取り込んで記憶する複数のメモリ手段と、
前記複数のメモリ手段から読み出された映像データを処理して該当する表示エリアの映像出力とする映像表示出力手段と、
前記複数のメモリ手段への前記映像データの書き込み及び記憶された前記映像データの読み出しを制御するメモリ制御手段と、
前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示するためのタイミング位相信号を生成する位相制御手段と、
前記メモリ制御手段による映像データの読み出しタイミングを前記タイミング位相信号に基づいて制御し、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御する表示タイミング制御手段と、
を具備したことを特徴とする映像表示装置。」
【請求項2】略
【請求項3】 前記表示タイミング制御手段は、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データをフィールド毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御することを特徴とする請求項1記載の映像表示装置。
【請求項4】略
【請求項5】 複数の映像データの前記重ね合わせ部分のライン毎またはフィールド毎の交互の反転位相の関係を、複数の映像データ間で位相的に逆転関係となるように切り替え可能としたことを特徴とする請求項3記載の映像表示装置。
【請求項6】 1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリアを形成し、各表示エリアに複数の入力映像データに基づく映像をそれぞれ表示出力する映像表示方法において、
前記各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データを取り込んで複数のメモリ手段に記憶し、前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示する際に、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で前記メモリ手段から読み出して表示出力することを特徴とする映像表示方法。」

〈発明の属する技術分野〉
(K2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数に分割された映像画面を1つの映像画面として表示を行う場合に、複数に分割された映像画面間をスムーズにつなぐために隣接する映像の映像信号間にオーバーラップ処理を行う映像表示装置及び映像表示方法に関する。」

〈従来の技術、図5・6のもの、図7?9のもの〉
(K3)「【0003】大型画面を有する映像表示装置には、複数の表示デバイスとして、例えばプロジェクタを複数台用いてなる投射型の表示装置や、CRTを複数台組み合わせて構成したもの等、種々さまざまな表示方式のものがある。
【0004】このような映像表示装置は、複数の画面で構成された1の大画面に1つの大型映像を表示することが可能であり、勿論複数の画面にそれぞれ異なる映像を表示することも可能である。
【0005】略
【0006】ところで、このような複数の表示デバイスを用いて1つの映像画面の表示を行う多画面表示システムにおいては、複数画面を1つの映像画面としてつないで表示を行う場合、各映像画面間に切れ目や各映像表示の輝度差などにより表示のつなぎ目が目立つ場合がある。
【0007】図5は複数の画面の表示エリアの内、2つの画面の表示エリアにそれぞれの入力映像信号に基づく映像表示を行った場合の画面表示の一例を示している。
【0008】図5(a)は左右の映像画面の境界部分が重ならないように、図示しない各メモリ手段からそれぞれの映像データが読み出された後、これら読み出された映像データを図示しない各映像表示出力部に出力し、プロジェクタ12,13から1つのスクリーン11上へと出力している。図5(b)は1つのスクリーン11上に順に並べて表示される2つの映像画面A,Bを示している。
【0009】図6は図5に示した複数画面構成時の映像信号を示している。図6(a),(b)は各々の画面に供給する映像信号で、図6(c)は図6(a),(b)を合成した場合の映像信号を示したものである。
【0010】この様に各々の映像画面を境界部分に重なりなく連続配置した場合では矢印Tで示す信号の切り替わり目部を、実際の映像を見た時に不連続な映像の境界線として視覚的に感じてしまうという問題があった。
【0011】次に、図7は複数の画面の表示エリアの内、2つの画面の表示エリアにそれぞれの入力映像信号に基づく映像表示を行った場合の画面表示のもう1つの例を示している。
【0012】図7(a)では前述の図5と同じ2画面の表示エリアで構成された表示画面の各々隣接する部分を重ね合わせた状態を示している。
【0013】図7(b)で示すように1つのスクリーン11上に各映像画面A,Bが隣接部分で重ね合わされている。
【0014】図8は図7に示した隣接部分の重ね合わせを行った場合の複数画面構成時の映像信号を示している。
【0015】図8(a),(b)は各々の画面に供給する映像信号で、図8(c)は図8(a),(b)を重ね合わせた場合の映像信号を示したものである。
【0016】ここで分かる様に画面隣接部の重ね合わせた部分(2つの矢印t1,t2の期間T0で示す部分)の映像信号は両者の信号が加算されて、この部分の輝度が2倍に上昇する。
【0017】図9(a),(b)は、前記の重ね合わせた部分の輝度の上昇を防止するために、各々の映像画面に供給する映像信号の重ね合わせ部分のレベルを1/2の輝度に変調したものを示している。図9(c)はこの両者の信号を重ね合わせた場合の映像信号を示している。2つの矢印t1,t2の期間T0で示す部分の映像信号は平坦となっている。
【0018】しかしながら、この様に1/2の輝度変調を行った場合においても矢印t1,t2で示す信号の切り替わり目部を、実際の映像を見た時に不連続な映像の境界線として視覚的に感じてしまうという問題があった。」

〈発明が解決しようとする課題、目的〉
(K4)「【0020】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来は、映像信号の画像表示を連続した複数の表示エリアにより構成された映像表示システムにおいて行う場合、隣接した表示画面の境界部分では映像の不連続により継ぎ目が目立つことがあった。
【0021】そこで、本発明では、上述の事情に鑑みてなされたもので、複数の表示デバイスを用いて1つの映像画面の表示を行う多画面表示において、複数の画面の隣接した部分をお互いに重ね合わせる際に、境界部分の映像表示が不連続になることなくスムーズに表示を行い、境界部分の継ぎ目が目立つことを軽減させ、表示性能の向上を図ることができ、しかも処理的にも簡単な映像表示装置及び映像表示方法を提供することを目的としている。」

〈課題を解決するための手段・特徴〉
(K5)「【0022】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリアを形成し、各表示エリアに複数の入力映像データに基づく映像をそれぞれ表示する映像表示装置において、前記各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データを取り込んで記憶する複数のメモリ手段と、前記複数のメモリ手段から読み出された映像データを処理して該当する表示エリアの映像出力とする映像表示出力手段と、前記複数のメモリ手段への前記映像データの書き込み及び記憶された前記映像データの読み出しを制御するメモリ制御手段と、前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示するためのタイミング位相信号を生成する位相制御手段と、前記メモリ制御手段による映像データの読み出しタイミングを前記タイミング位相信号に基づいて制御し、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御する表示タイミング制御手段と、を具備したものである。
【0023】前記表示タイミング制御手段は、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データをライン毎又はフィールド毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御する。
【0024】また、複数の映像データの前記重ね合わせ部分のライン毎またはフィールド毎の交互の反転位相の関係を、複数の映像データ間で位相的に逆転関係となるように切り替え可能としてもよい。
【0025】本発明の映像表示装置によれば、連続した複数の画面表示エリアの内、隣接する部分には映像が重ね合わさって表示されることになるが、重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期(ライン又はフィールド)毎に交互に反転した状態で出力するようにしたので、重ね合わされた部分の映像表示が、ライン毎またはフィールド毎に交互に表示出力が反転され、重ね合わせ部分の映像が一方のライン又はフィールドによる交互の表示となり違和感を軽減することができる。従って、映像の重なる部分と重ならない部分との輝度差を無くすことができ、隣接画面の境界部分の継ぎ目も目立つこともないので、映像表示性能を向上させることが可能となる。
【0026】請求項6の発明は、1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリアを形成し、各表示エリアに複数の入力映像データに基づく映像をそれぞれ表示出力する映像表示方法において、前記各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データを取り込んで複数のメモリ手段に記憶し、前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示する際に、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で前記メモリ手段から読み出して表示出力することを特徴とする。」

〈発明の実施の形態〉
(K6)《図1、スクリーン画面、プロジェクタ、画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2b》
「【0027】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の映像表示装置を示すブロック図である。
【0028】本発明の実施の形態では、1つのスクリーン画面の左右に連続して配置された2つの表示エリアにそれぞれ2つの映像データを表示する際に、2つの映像画面A,Bの互に隣接する部分を重ね合わせて表示(オーバーラップ表示)する例について説明する。
【0029】図1において、入力端子1a,1bには、図示しない2つの映像データ発生手段から画面A映像データと画面B映像データがそれぞれ入力されるようになっている。このA,B2つの映像データは1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって、隣接部分をオーバーラップさせて合成したときに1つの映像画面を形成できるように重なり部分は互に同じ絵柄となるように1つの映像画面を構成する映像データから切り出されている。
【0030】入力端子1aを介して入力された画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aに供給されて書き込まれ、入力端子1bを介して入力された画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2bに供給されて書き込まれる。このときの各映像記憶メモリ2a,2bへの書き込みは、画面A及び画面Bのメモリ制御部3a,3bによって制御されるようになっている。
【0031】多画面表示時には、前記の画面A映像記憶メモリ2a,画面B映像記憶メモリ2bから、本実施の形態の特徴となる制御手段による読み出し制御でそれぞれ画面A,画面Bの映像データが読み出された後、それぞれ画面A,画面Bの映像表示出力部6a,6bに供給されることによって、図示しない表示デバイス例えばプロジェクタのドライブ回路に与える画面A,画面Bの映像出力信号7a,7bが生成され、映像表示がなされるようになっている。」

(K7)《画面A表示タイミング制御部4a,画面B表示タイミング制御部4b、タイミング位相制御部5》
「【0032】このように読み出し制御を行う制御手段は、図1に示すように画面Aメモリ制御部3a,画面Bメモリ制御部3b,画面A表示タイミング制御部4a,画面B表示タイミング制御部4b及びタイミング位相制御部5を有して構成されている。
【0033】画面Aメモリ制御部3aは、後述する画面A表示タイミング制御部4aからの表示タイミング信号に基づいて前記画面A映像記憶メモリ2aからの画面A映像データの読み出しを制御する。同様に、前記画面Bメモリ制御部3bは、後述する画面B表示タイミング制御部4bからの表示タイミング信号に基づいて画面B映像記憶メモリ2bからの画面B映像データの読み出しを制御する。
【0034】画面A表示タイミング制御部4aは、タイミング位相制御部5からの位相タイミング信号に基づき、前記表示タイミング信号を生成し、該表示タイミング信号を画面Aメモリ制御部3aに与える。同様に、画面B表示タイミング制御部4bは、タイミング位相制御部5からの位相タイミング信号に基づき、前記表示タイミング信号を生成し、該表示タイミング信号を画面Bメモリ制御部3bに与える。
【0035】タイミング位相制御部5には、図示しないが、画面A映像データ及び画面B映像データから抽出されたそれぞれの同期信号が供給されており、これらの同期信号から例えば2画面表示するのに必要な位相タイミング信号を生成し、上記画面A及び画面Bの各表示タイミング制御部4a,4bに供給するようになっている。
【0036】本実施の形態の映像表示装置におけるオーバーラップ表示処理では、例えば2つの連続して配置される画面の表示エリアに映像表示を行う場合に、この隣接画面の境界部分の継ぎ目が目立つことを軽減させて映像表示をスムーズにするために、隣り合った画面映像をお互いに重ね合わせ、その重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎(例えばライン毎,フィールド毎)で交互に反転した状態(例えば表示と無表示とを交互に繰り返す状態)で出力するように、上記画面A表示タイミング制御部4a及び画面B表示タイミング制御部4bによって表示タイミング制御を行う。」

(K8)《フィールド毎の交互反転による表示処理方法の実施の形態》
「【0045】なお、上述した表示タイミング方法では、映像の重ね合わせる部分に相当する期間T0において、表示タイミング位相がライン毎に交互に反転するように説明したが、このライン毎の交互反転に代えて、表示タイミング位相がフィールド毎に交互に反転するようにタイミング制御を行っても良い。
【0046】図3は図2で示した重ね合わせ部におけるライン毎の交互反転の位相制御に代えて、フィールド毎の交互反転による表示処理方法を説明するためのタイミングチャートであり、図3(a)は画面A映像データ、(b)は画面B映像データをそれぞれ示している。これらの映像データを合成した場合の合成データは図2(c)と同様であるので省略している。なお、図3では1つのブロックがフィールド(面)を表している。
【0047】図3においては、画面A映像データと画面B映像データとの映像表示を行う場合の重ね合わせ部分に相当する期間をT0(t1?t2)としており、また画面A映像データを構成する複数のフィールドを簡単のためA1,A2,A3とし、画面B映像データを構成する複数のフィールドをB1,B2,B3として表している。画面A表示タイミング制御部4aは、タイミング位相制御部5からのタイミング位相信号に基づき、重ね合わせ部分の期間T0において、図2(a)に示す画面A信号におけるフィールドA1がT0の期間、輝度レベルが非反転状態(即ち表示状態)であるのに対し、続くフィールドA2がT0の期間、輝度レベルが反転状態(即ち無表示状態)となり、同様にして、フィールドA3では、T0の期間、輝度レベルが非反転状態(即ち表示状態)となるように、即ち期間T0内においてフィールド毎に表示と無表示を交互に繰り返すような表示タイミング信号を生成し、画面Aメモリ制御部3aに与える。
【0048】また、これに同期して、画面B表示タイミング制御部4bは、タイミング位相制御部5からのタイミング位相信号に基づき、重ね合わせ部分の期間T0において、図3(b)に示す画面B信号におけるフィールドB1がT0の期間、輝度レベルが反転状態(即ち無表示状態)であるのに対し、続くフィールドB2がT0の期間、輝度レベルが非反転状態(即ち表示状態)となり、同様にして、フィールドB3では、フィールドB3がT0の期間、輝度レベルが反転状態(即ち無表示状態)となるように、即ち期間T0内においてフィールド毎に無表示と表示を交互に繰り返すような表示タイミング信号を生成し、画面Bメモリ制御部3bに与える。
【0049】つまり、画面A及び画面Bの表示タイミング制御部4a,4bは、画面A映像データと画面B映像データとのそれぞれの表示映像が重なる部分(T0期間内)において、画面A映像データと画面B映像データとが互いにフィールド毎に表示と無表示とを交互に繰り返すような表示タイミング制御を行う。したがって、これら映像データの重ね合わせ部分に相当するT0期間の表示タイミング位相は、それぞれ反転したものとなる。
【0050】また、表示タイミング信号の反転位相のタイミング設定(例えば期間T0の設定)などの制御については、前記タイミング位相制御部5にて管理されるようになっており、反転位相タイミングを設定変更できる。
【0051】このように生成された表示タイミング信号は、それぞれ対応する画面Aメモリ制御部3a及び画面Bメモリ制御部3bに供給され、これに応答してこれら画面Aメモリ制御部3a及び画面Bメモリ制御部3bは、図3に示す表示タイミングで映像表示を行うために、供給された表示タイミング信号に基づきそれぞれの画面A映像記憶メモリ2a,画面B映像記憶メモリ2Bから各画面A映像データ,画面B映像データの読み出しを制御する。
【0052】このような表示タイミングに基づき読み出された各映像データは、画面A及び画面Bのそれぞれの映像表示出力部6a,6bによって、表示するための信号処理が施された後、出力端子7a,7bを介して対応するプロジェクタ等のドライブ回路へと供給されることで映像表示が行われる。この場合の映像表示する各映像信号は、重ね合わせた場合には、図2(c)と同様な合成信号として表すことができる。
【0053】これにより、フィールド毎の位相反転の場合にも、実際にこれらの映像信号の多画面表示時には、映像信号の重ね合わせた場合に生じる重ね合わせ部分の輝度が重なることもなく、画像の重ね合わせた部分とそれ以外の部分との輝度差が生じることなく一定した輝度で映像表示することができる。また、2つの映像データの重ね合わせ部分において各映像データ間でフィールド毎に交互に位相反転して表示しているので、従来の輝度変調処理した映像データ同士を重ね合せる方法に比べて、継ぎ目部分が目立ちにくい利点を有している。
【0054】なお、図3のフィールド毎のタイミング位相に代えて、図4に示すように重ね合わせる両者の映像信号の出力の反転切り替えの位相を映像データ間で逆転させたものに設定してもよい。このようなタイミング位相の切り替えは、タイミング位相制御部5からのフィールド毎のタイミング位相信号に基づき、画面A表示タイミング制御部4a,画面B表示タイミング制御部4bがそれぞれの表示タイミング信号を用いて画面Aメモリ制御部3a,画面Bメモリ制御部3bの読み出しを制御することによって行うことができる。(以下略)」

[3]刊行物記載発明(刊行物1に記載された発明、以下、「引用発明」という。)

(1)刊行物1概要、引用発明認定の基礎
刊行物1には、
前掲(K2)「複数に分割された映像画面を1つの映像画面として表示を行う場合に、複数に分割された映像画面間をスムーズにつなぐために隣接する映像の映像信号間にオーバーラップ処理を行う映像表示」の技術分野に関し、
前掲(K3)の従来技術を前提にその課題を解決し、前掲(K4)「複数の表示デバイスを用いて1つの映像画面の表示を行う多画面表示において、複数の画面の隣接した部分をお互いに重ね合わせる際に、境界部分の映像表示が不連続になることなくスムーズに表示を行い、境界部分の継ぎ目が目立つことを軽減させ、表示性能の向上を図ることができ」る「映像表示」を提供することを課題・目的とするものであって(→引用発明のP)、
概要、
課題を解決するための手段・特徴として、前掲(K5)(K1)のもの、特に、「重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データをフィールド毎に交互に反転した」とする請求項3(請求項1を引用する請求項3),さらにこれを引用する請求項5、請求項6記載のものが記載されており、
こららのもの、及びこれらに対応する図1、図3図4記載の〔実施の形態〕のもの、に注目する。

これらのものは、従来技術(図5?図9)、特に前掲(K3)の図7?9記載の従来技術を前提とするものであって、「画面隣接部の重ね合わせた部分(2つの矢印t1,t2の期間T0で示す部分)」について、従来技術のように「レベルを1/2の輝度に変調」(【0017】)するのではなくて、
「重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御する」(請求項1)、「重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で前記メモリ手段から読み出して表示出力する」(請求項6)ようにしたものであって、特に「映像表示周期」が「フィールド周期」であるものである。

(2)前提構成-複数のプロジェクタ、スクリーン、表示エリア、入力映像データの記憶、読み出し表示{(K1)(K5)(K3)(K6),図1}
「1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリアを形成し、各表示エリアに複数の入力映像データに基づく映像をそれぞれ表示する」{(K1)請求項1・6、(K5)}もので、
「各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データを取り込んで複数のメモリ手段に記憶し、前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示する」{(K1)請求項6、(K5)}ものである。
前掲(K3)(K6)図7?図9によれば、1つのスクリーン11上に、プロジェクタ12により投射される表示エリア(映像画面A(図7))と、プロジェクタ13により投射される表示エリア(映像画面B(図7))が、隣接部分で重ね合わせ部分T0が存在するように左右に配置される。
「各表示エリアに表示する前記複数の入力映像データ」である、画面A映像データと画面B映像データは、「1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって、隣接部分をオーバーラップさせて合成したときに1つの映像画面を形成できるように重なり部分は互に同じ絵柄となるように1つの映像画面を構成する映像データから切り出されている」(段落【0029】)もので、
それら、入力映像データは、画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bに取り込んで記憶される。(段落【0030】)。
すなわち、画面A映像記憶メモリ2aに記憶されている画面A映像データも、画面B映像記憶メモリ2bに記憶されている画面B映像データも、同じ重なり部分を有しているデータである。
そして、画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bから、それぞれ画面A映像データ,画面B映像データが読み出されて、画面A,画面Bの映像出力信号7a,7bが生成され、プロジェクタのドライブ回路に与えて映像表示がなされる(段落【0031】)。
以上、まとめれば、
1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリア-プロジェクタ12により投射される表示エリア(映像画面A(図7))とプロジェクタ13により投射される表示エリア(映像画面B(図7))が、隣接部分で重ね合わせ部分T0が存在するように左右に配置されるように形成し、
1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって、隣接部分をオーバーラップさせて合成したときに1つの映像画面を形成できるように重なり部分は互に同じ絵柄となるように1つの映像画面を構成する映像データから切り出されている入力映像データであって、同じ重なり部分を有している入力映像データである画面A映像データと画面B映像データを、それぞれ、画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bに取り込んで記憶し、
画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bから、それぞれ画面A映像データ,画面B映像データが読み出されて、画面A,画面Bの映像出力信号7a,7bが生成され、プロジェクタのドライブ回路に与えて映像表示がなされる表示方法、ということができる。 (→引用発明のQ)

(3)表示タイミング信号に基づく画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bからの画面A映像データ,画面B映像データの読み出し、同制御による画面A、画面Bの映像出力信号7a・7bによるスクリーン表示
{(K1)(K5)(K7)(K8),図3図4}

〈読み出し、表示タイミング制御〉
「複数のメモリ手段への前記映像データの書き込み及び記憶された前記映像データの読み出しを制御するメモリ制御手段と、
前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示するためのタイミング位相信号を生成する位相制御手段と、
前記メモリ制御手段による映像データの読み出しタイミングを前記タイミング位相信号に基づいて制御し、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御する表示タイミング制御手段」{請求項1、(K5)}
「前記表示タイミング制御手段は、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データをフィールド毎に交互に反転した状態で出力するように前記メモリ制御手段による読み出しを制御することを特徴とする請求項1記載の映像表示装置」{請求項3}、
「前記複数の表示エリアの互いに隣接する部分に映像を重ね合わせて表示する際に、前記各表示エリアに供給される映像データのうち、前記重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎に交互に反転した状態で前記メモリ手段から読み出して表示出力する」{請求項6、(K5)}とされており、
このことに関する、
前記(K7)段落【0033】「画面A表示タイミング制御部4aからの表示タイミング信号に基づいて前記画面A映像記憶メモリ2aからの画面A映像データの読み出しを制御する。同様に、前記画面Bメモリ制御部3bは、後述する画面B表示タイミング制御部4bからの表示タイミング信号に基づいて画面B映像記憶メモリ2bからの画面B映像データの読み出しを制御する。」}、
前掲(K7)段落【0034】「画面A表示タイミング制御部4aは、タイミング位相制御部5からの位相タイミング信号に基づき、前記表示タイミング信号を生成し、該表示タイミング信号を画面Aメモリ制御部3aに与える。同様に、画面B表示タイミング制御部4bは、タイミング位相制御部5からの位相タイミング信号に基づき、前記表示タイミング信号を生成し、該表示タイミング信号を画面Bメモリ制御部3bに与える。」、
前掲(K8)段落【0051】「このように生成された表示タイミング信号は、それぞれ対応する画面Aメモリ制御部3a及び画面Bメモリ制御部3bに供給され、これに応答してこれら画面Aメモリ制御部3a及び画面Bメモリ制御部3bは、図3に示す表示タイミングで映像表示を行うために、供給された表示タイミング信号に基づきそれぞれの画面A映像記憶メモリ2a,画面B映像記憶メモリ2Bから各画面A映像データ,画面B映像データの読み出しを制御する。」
前掲(K7)段落【0036】「この隣接画面の境界部分の継ぎ目が目立つことを軽減させて映像表示をスムーズにするために、隣り合った画面映像をお互いに重ね合わせ、その重ね合わせ部分に対応するそれぞれの映像データを映像表示周期毎(例えばライン毎,フィールド毎)で交互に反転した状態(例えば表示と無表示とを交互に繰り返す状態)で出力するように、上記画面A表示タイミング制御部4a及び画面B表示タイミング制御部4bによって表示タイミング制御を行う。」
によれば、
・(表示タイミング制御部4a,4bは、)画面A映像記憶メモリ2a用と画面B映像記憶メモリ2b用の表示タイミング信号を生成する。
・(メモリ制御部3a,3bは、)それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出す表示タイミング制御を行う。
・表示タイミング制御によって、「重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力(【0036】)し、
「画面A映像データと画面B映像データとのそれぞれの表示映像が重なる部分(T0期間内)において、画面A映像データと画面B映像データとが互いにフィールド毎に表示と無表示とを交互に繰り返す」(【0049】)ように表示出力される、
ものである。

まとめれば、
[1]画面A映像記憶メモリ2a用と画面B映像記憶メモリ2b用の表示タイミング信号を生成し、
[2]それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出す表示タイミング制御を行って、重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力し、
[3]画面A映像データと画面B映像データとのそれぞれの表示映像が重なる部分(T0期間内)において、画面A映像データと画面B映像データとが互いにフィールド毎に表示と無表示とを交互に繰り返すように表示出力される。 (→引用発明のR)

〈読み出し(表示タイミング制御)と、スクリーン表示の具体的態様{(K8)、図3}〉
そして上記[2]の読み出し・表示タイミング制御と、これによる上記[3]の画面A、画面Bのスクリーン表示の具体的態様について、前掲(K8)、特に段落【0047】?段落【0052】、図3に説明されていて、
これらによれば、
(i)最初の映像表示周期(フィールド)では、
画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
重ね合わせ部分T0を含む画面A(図3のA1ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含まない画面B(図3のB1ブロックで示される)がスクリーンに表示(投射)される。
このとき、(重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面A映像データが記憶されている)画面A映像記憶メモリ2aからは、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面A映像データを読み出して出力するが、
(同じく、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面B映像データが記憶されている)画面B映像記憶メモリ2bからは、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面B映像データのみを読み出すものと理解される。
すなわち、画面B映像記憶メモリ2bからは、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面B映像データのみを切り出して(抽出して)出力する{これは、段落【0029】「このA,B2つの映像データは1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって」の「切り出し」と同様である。}。

まとめれば、
最初の映像表示周期(フィールド)では、
(i-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
(重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面A映像データが記憶されている)画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面A映像データを読み出して出力すると共に、
(同じく、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面B映像データが記憶されている)画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面B映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力し、
(i-3)重ね合わせ部分T0を含む画面A(図3のA1ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含まない画面B(図3のB1ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)する。 (→引用発明のr)

(ii)次の映像表示周期(フィールド)では、上記(i)とは逆になる。
すなわち、
(ii-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
画面A映像データが記憶されている画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面A映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力すると共に、
画面B映像データが記憶されている画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面B映像データを読み出して出力し、
(ii-3)重ね合わせ部分T0を含まない画面A(図3のA2ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含む画面B(図3のB2ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)する。 (→引用発明のr)

そして上記(i)(ii)を繰り返すようにして映像を表示する。
(→引用発明のr)

(5)刊行物記載発明(引用発明)
以上によれば、引用発明として、下記の発明を認定することができる。

記(引用発明)
P:複数に分割された映像画面を1つの映像画面として表示を行う場合に、複数に分割された映像画面間をスムーズにつなぐために隣接する映像の映像信号間にオーバーラップ処理を行う映像表示装置及び映像表示に関し、
複数の表示デバイスを用いて1つの映像画面の表示を行う多画面表示において、複数の画面の隣接した部分をお互いに重ね合わせる際に、境界部分の映像表示が不連続になることなくスムーズに表示を行い、境界部分の継ぎ目が目立つことを軽減させ、表示性能の向上を図ることができる映像表示を提供することを課題・目的とするものであって、
Q:1つのスクリーン上に連続した複数の表示エリア-プロジェクタ12により投射される表示エリア(映像画面A(図7))とプロジェクタ13により投射される表示エリア(映像画面B(図7))が、隣接部分で重ね合わせ部分T0が存在するように左右に配置されるように形成し、
1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって、隣接部分をオーバーラップさせて合成したときに1つの映像画面を形成できるように重なり部分は互に同じ絵柄となるように1つの映像画面を構成する映像データから切り出されている入力映像データであって、同じ重なり部分を有している入力映像データである画面A映像データと画面B映像データを、それぞれ、画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bに取り込んで記憶し、
画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bから、それぞれ画面A映像データ,画面B映像データが読み出されて、画面A,画面Bの映像出力信号7a,7bが生成され、プロジェクタのドライブ回路に与えて映像表示がなされる表示方法であって、
R:(1)画面A映像記憶メモリ2a用と画面B映像記憶メモリ2b用の表示タイミング信号を生成し、
(2)それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出す表示タイミング制御を行って、重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力し、
(3)画面A映像データと画面B映像データとのそれぞれの表示映像が重なる部分(T0期間内)において、画面A映像データと画面B映像データとが互いにフィールド毎に表示と無表示とを交互に繰り返すように表示出力され、
r:R(2)(3)の具体的態様は、
r(i)最初の映像表示周期(フィールド)では、
r(i-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
(重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面A映像データが記憶されている)画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面A映像データを読み出して出力すると共に、
(同じく、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面B映像データが記憶されている)画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面B映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力し、
r(i-3)重ね合わせ部分T0を含む画面A(図3のA1ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含まない画面B(図3のB1ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)し、
r(ii)次の映像表示周期(フィールド)では、
r(ii-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
画面A映像データが記憶されている画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面A映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力すると共に、
画面B映像データが記憶されている画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面B映像データを読み出して出力し、
r(ii-3)重ね合わせ部分T0を含まない画面A(図3のA2ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含む画面B(図3のB2ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)し、
これらr(i)r(ii)を繰り返すようにして、
映像を表示する方法。

[4]補正後発明と引用発明との対比(対応関係)

(1)要件Aについて
A:「第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、」「を有することを特徴とする画像表示方法。」

ア 前半(「第1の画像投射手段にて・・・状態にあって、」)
引用発明のQの「「プロジェクタ12」、「プロジェクタ13」は、それぞれ、要件Aでいう「第1の画像投射手段」、「前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段」といい得るものであり、
引用発明のQの「プロジェクタ12により投射される表示エリア(映像画面A(図7))」、「プロジェクタ13により投射される表示エリア(映像画面B(図7))」は、それぞれ、要件Aでいう「第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域」、「第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域」といい得るものである。
引用発明のQの「1つのスクリーン11上に、プロジェクタ12により投射される表示エリア(映像画面A(図7)と、プロジェクタ13により投射される表示エリア(映像画面B(図7)が、隣接部分で重ね合わせ部分T0が存在するように左右に配置され、」における「重ね合わせ部分T0」は、
要件Aの「第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域」といい得るものである。
したがって、要件Aの前半「第1の画像投射手段にて・・・状態にあって」は、引用発明と相違しない。

イ 後半(「前記第1の画像投射手段によって・・・画像表示方法であって、」「を有することを特徴とする画像表示方法。」)
引用発明のQの「画面A映像データ」と「画面B映像データ」は、「1つの映像画面を構成する映像データからそれぞれ切り出された映像データであって、隣接部分をオーバーラップさせて合成したときに1つの映像画面を形成できるように重なり部分は互に同じ絵柄となるように1つの映像画面を構成する映像データから切り出されている入力映像データであって、同じ重なり部分を有している入力映像データ」であって、
その「「画面A映像データ」(の画像)、「画面B映像データ」(の画像)は、1つの映像信号像画面からそれぞれ切り出された映像データ(の画像)であるから、
それぞれ、「第1の部分画像」、「第2の部分画像」といい得るものである。
そして、Q「画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bから、それぞれ画面A映像データ,画面B映像データが読み出されて、画面A,画面Bの映像出力信号7a,7bが生成され、プロジェクタのドライブ回路に与えて映像表示がなされる」とされているのであるから、
「画面A映像記憶メモリ2a、画面B映像記憶メモリ2bから」それぞれ「読み出された画面A映像データ、画面B映像データ」(の画像)も、
・それぞれ、「第1の部分画像」、「第2の部分画像」ということができ、
・それぞれ、「プロジェクタ12」・「プロジェクタ13」によって、それぞれの表示エリア(映像画面A(図7))・(映像画面B(図7))に表示するものである。
したがって、引用発明も「前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、」「を有することを特徴とする画像表示方法。」(要件Aの後半)といい得るものである。

ウ 以上によれば、要件Aにおいて、補正後発明と引用発明は相違しない。

(2)要件B・Cについて
B:前記画像を表示する際に前記重複領域には予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
C:前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、

ア 要件Bで、「第1及び第2の部分画像」が「予め画像補正された」と特定しているが、ひとまずこの点を措いて検討する。

イ 要件Bの前半「前記画像を表示する際に前記重複領域には(予め画像補正された)前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように分割位置が所定のタイミングで変化するように、」

〈いずれかの部分画像のみが表示されるように〉
引用発明が「画像を表示する際」の処理等は、引用発明のR、rであり、 Rで、「(1)画面A映像記憶メモリ2a用と画面B映像記憶メモリ2b用の表示タイミング信号を生成し、
(2)それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出す表示タイミング制御を行って、重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力し、
(3)画面A映像データと画面B映像データとのそれぞれの表示映像が重なる部分(T0期間内)において、画面A映像データと画面B映像データとが互いにフィールド毎に表示と無表示とを交互に繰り返すように表示出力され、」る。
そして、そのR(2)(3)の具体的態様は、引用発明のr{r(i)、r(ii)}であり、補正後発明の「重複領域」といい得る「重ね合わせ部分T0」における処理、表示態様についてみるに、
「r(i)最初の映像表示周期(フィールド)では、
r(i-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
(重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面A映像データが記憶されている)画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面A映像データを読み出して出力すると共に、
(同じく、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を含んだ画面B映像データが記憶されている)画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面B映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力し、
r(i-3)重ね合わせ部分T0を含む画面A(図3のA1ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含まない画面B(図3のB1ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)し、
r(ii)次の映像表示周期(フィールド)では、
r(ii-2)画面A映像データは、画面A映像記憶メモリ2aからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を無表示状態(輝度レベルが反転状態)とし、
他方、画面B映像データは、画面B映像記憶メモリ2Bからの(表示タイミング信号に基づく)読み出しにより、重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分を表示状態(輝度レベルが非反転状態)とされ、それらの映像出力信号7a,7bがプロジェクタのドライブ回路に供給され、結果、
画面A映像データが記憶されている画面A映像記憶メモリ2aからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を読み出さず切り捨て、『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含まない画面A映像データのみを読み出し・切り出して(抽出して)出力すると共に、
画面B映像データが記憶されている画面B映像記憶メモリ2bからは、
『重ね合わせ部分T0に対応する画面データ部分』を含んだ画面B映像データを読み出して出力し、
r(ii-3)重ね合わせ部分T0を含まない画面A(図3のA2ブロックで示される)と重ね合わせ部分T0を含む画面B(図3のB2ブロックで示される)をスクリーンに表示(投射)し
これらr(i)r(ii)を繰り返すようにして、
映像を表示する」
のであるから、いずれの映像表示周期(フィールド)においても、「重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように」なっており、この点、補正後発明と相違はない{(予め画像補正された)を除く}。

〈所定のタイミングで変化するように〉
また、引用発明でも、「前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置」は、
r(i)最初の映像表示周期(フィールド)では、
重ね合わせ部分T0の右側(図3のA1とB1の境界)であり、
r(ii)次の映像表示周期(フィールド)では、
重ね合わせ部分T0の左側(図3のA2とB2の境界)であって、
映像周期(フィールド)毎に変化しているから、
「所定のタイミングで変化するように」なっており、この点においても、補正後発明と相違はない。

以上によれば、引用発明も、要件Bの前半「前記画像を表示する際に前記重複領域には」「前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように分割位置が所定のタイミングで変化するように、」なっていて、補正後発明と相違しない。{(予め画像補正された)を除く}。

ウ 要件Bの後半
「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、」と、
要件C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップ」

要件Cの「前記マスクデータ」とは、要件Bの後半の「マスクデータ生成ステップ」で生成した「マスクデータ」であること、
要件Bの「画像データマスキング処理ステップ」は、「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する」処理ステップとも言えること、
そして、BとCによって、〔要件Bの前半〕となるように「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成」している、といえること、
を考慮すれば、上記要件Bと要件Cは、合わせて、
『〔要件Bの前半〕となるように、第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』であって、
そのステップが、
「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップ」と
要件C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップ」であるもの、
といい得るものである。

引用発明についてみれば、
引用発明のR(2)における、「それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出」して「重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力」する処理、
これに対応する具体的処理である引用発明のr(i-2)r(ii-2)の処理、
すなわち、(i)最初の映像表示周期(フィールド)及び(ii)次の映像表示周期(フィールド)における、
「画面A映像記憶メモリ2aから」「画面A映像データ」を読み出して出力する」処理、「画面B映像記憶メモリ2bから」「画面B映像データ」を読み出して出力する処理は、
読み出して出力することによって、読み出した「画面A映像データ」の画像(補正後発明でいう「第1の部分画像」)、読み出した「画面B映像データ」の画像(補正後発明でいう「第2の部分画像」)を生成する処理ともみることができる処理である。
従って、引用発明も、『〔要件Bの前半〕となるように、第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』を有しているといううことができ、その点においては、補正後発明と相違しない。

もっとも、補正後発明では、
『〔要件Bの前半〕となるように、第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』が、
「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップ」と
要件C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップ」であるとするのに対して、
引用発明では、そのような処理ステップではなく、この点、相異が認められる。
引用発明では、『〔要件Bの前半〕となるように、第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』は、
R(1)「画面A映像記憶メモリ2a用と画面B映像記憶メモリ2b用の表示タイミング信号を生成」するステップと、
R(2)「それぞれ用の表示タイミング信号に基づいて、画面A映像記憶メモリ2aから画面A映像データを読み出すと共に、画面B映像記憶メモリ2bから画面B映像データを読み出す表示タイミング制御を行って、重ね合わせ部分に対応する画面A映像データと画面B映像データを映像表示周期毎(フィールド毎)で表示と無表示とを交互に繰り返す状態で出力」するようにして、
読み出した「画面A映像データ」の画像(「第1の部分画像」)、読み出した「画面B映像データ」の画像(「第2の部分画像」)を生成するステップであって、具体的には、r(i-2)r(ii-2)のようにするステップである。

エ 「予め画像補正された」(前記第1及び第2の部分画像)
引用発明では、画面A映像記憶メモリ2a、2bから読み出した画面A映像データ、画面B映像データ(補正後発明の「第1及び第2の部分画像」)は、いずれも「予め画像補正された」とはしておらず、この点補正後発明とは相違が認められる。

オ まとめ(B・C)
以上によれば、
補正後発明と引用発明とは、
B’:前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、
前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ を有するとする点では相違せず、

『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』が、
補正後発明では、
B〔後半〕:「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップ」と、
C:「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、」(前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を)「生成する画像データマスキング処理ステップ」
とするのに対して、
引用発明では、そのような処理ステップではなく、
上記のように、R(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)とする点で相違する。

また、「前記第1及び第2の部分画像」、「前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」が、
補正後発明では、
「予め画像補正された」(第1及び第2の部分画像)とするのに対して、
引用発明では、「予め画像補正された」(第1及び第2の部分画像)とはしていない点で相違する。

(4)要件D:「前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、」

引用発明もR、r{特にR(3),r(i-3)r(ii-3)}とするもので、「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップ」を備えているといい得ることは、これまでに検討したことから明らかであるが、
その生成は、上記のとおり、R(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)によるものであって、「前記データマスキング処理ステップ」によるものではない。
表示する「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像」が、
補正後発明では、「前記データマスキング処理ステップによって生成された」とするのに対して、
引用発明では、「前記データマスキング処理ステッによって生成された」ではなく、R(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)によって生成されたものである点で相違する。

[5]一致点、相違点

以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明とは、

[一致点]
A:第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
B’:前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、
前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップと、
D’:前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
A:を有することを特徴とする画像表示方法。

である点で一致し、

[相違点]

[相違点1]
B’の『前記画像を表示する際に・・・分割位置が所定のタイミングで変化するように、
前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』が、
補正後発明では、
B”「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、」
C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、」(前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を)「生成する画像データマスキング処理ステップ」
とするのに対して、
引用発明では、
そのような処理ステップではなく、R(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)とし、

D’の表示する「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像」が、
補正後発明では、
「前記データマスキング処理ステップによって生成された」とするのに対して、
引用発明では、
「前記データマスキング処理ステップによって生成された」ではなく、
R(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)によって生成されたものである点、

[相違点2]
B’の「前記第1及び第2の部分画像」、「前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」が、
補正後発明では、
「予め画像補正された」(第1及び第2の部分画像)とするのに対して、
引用発明では、「予め画像補正された」(第1及び第2の部分画像)とはしていない点、

で相違する。

[6]相違点等の判断(容易想到性の判断)

(1)相違点の克服

[相違点1の克服]
引用発明の『前記画像を表示する際に・・・分割位置が所定のタイミングで変化するように、
前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』であるR(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)を、
B”「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、」
C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、」「生成する画像データマスキング処理ステップ」(以下、これらを合わせて「相違点1に係る構成」という。)
とすれば、
これに伴い、D’の表示する「前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像」は、「前記データマスキング処理ステップによって生成された」となることも明らかであり、
上記[相違点1]は克服される。

[相違点2の克服]
B’の『前記第1及び第2の部分画像」、『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像』が、「予め画像補正された」とする(以下、「相違点2に係る構成」という。)
ことで、上記[相違点2]も克服され、
補正後発明に至る。

(2)相違点についての判断([相違点の克服]の容易想到性)

ア 相違点1についての判断([相違点1の克服]の容易想到性)
『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』で、引用発明のR(1)(2)、r(i-2)r(ii-2)が行っている処理は、
要せば、『重複部分(重複画像領域)を含む2つのメモリに記憶された入力画像(画面A映像データ、画面B映像データ)から、その重複領域部分を表示しないようにするためにする処理であって、非重複領域部分のみを交互に切り出す(抽出する)処理』といえ、
引用発明では、かかる画像の“切り出し(抽出)処理”をメモリから読み出す範囲を非重複部分に制限する「メモリの読み出し制御」処理で行っているものである。

〈周知技術〉
一般に、『画像の一部を表示しないようにするために、画像に対して表示しない当該一部を切り捨て(抽出せず)、表示する当該一部以外の部分だけを切り出す(抽出する)処理として、
対象画像に対して、画像の一部をマスキングするマスクデータによって当該一部をマスキングする処理』
は、技術常識ともいうべきごく一般的で周知の処理手法にすぎない{例えば、周知例1?5参照}。

〈容易想到性判断〉
上記周知技術に鑑みれば、引用発明に接した当業者が、
『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』で行う、引用発明の上記『重複部分(重複画像領域)を含む2つのメモリに記憶された入力画像(画面A映像データ、画面B映像データ)から、その重複領域部分を表示しないようにするためにする処理であって、非重複領域部分のみを交互に切り出す(抽出する)処理』を、
「メモリの読み出し制御」処理に代えて、上記周知技術である「マスキングする処理」を採用しようとすることは、ごく容易に想起し得ることということができる。
そして、そのように「マスキングする処理」で代替する際、
引用発明の、
・2つのメモリに記憶された入力画像(画面A映像データ、画面B映像データ)が上記周知技術の「対象画像」に、
・2つのメモリに記憶された入力画像それぞれにおける『重複部分(重複画像領域)』が上記周知技術の「画像の一部」に該当するから、
「マスキングする処理」では、
2つのメモリに記憶された入力画像(画面A映像データ、画面B映像データ、対象画像)に対して、『重複部分(重複画像領域)』(画像の一部)を交互にマスキングするマスクデータによって当該『重複部分(重複画像領域)』をマスキングすることになるから、
画面A映像データ用、及び画面B映像データ用に用意するマスクデータを、映像周期(フィールド)毎に変化させること{このこと自体にもごく普通のことである(例えば、先の参照)。}が必要であることは明らかであり、したがって、そのように変化させることとなる。
したがって、『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』で行う処理を、そのように「マスキングする処理」で代替すれば、
引用発明の、当該『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成するステップ』は、
「前記重複領域の画像(の少なくとも一部)をマスキングするマスクデータを」、映像周期毎に変化させる処理ステップと、
「前記マスクデータによって前記重複領域の画像(の少なくとも一部)をマスキングすることにより、」(前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を)生成する処理ステップとなる。
これらのステップは、つまり、上記「相違点1に係る構成」である、
B”「前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、」
C「前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、」(前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を)「生成する画像データマスキング処理ステップ」
といい得るステップである。

以上によれば、[相違点1の克服]は、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2についての判断([相違点2の克服]の容易想到性)
引用発明を出発し上記[相違点1の克服]をしたもの、すなわち、
A:第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
B’:前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、
B”:前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
(「前記重複領域の画像をマスキングするマスクデータを、映像周期毎に変化させる処理ステップ」と}
C:前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
D:前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
A:を有することを特徴とする画像表示方法。
としたものについて検討するに、

このものから、上記[相違点2の克服]をして、補正後発明に至ることも、以下にみるとおり、当業者が容易に想到し得ることである。

〈理由〉
イ-0 上記「相違点2に係る構成」についてみるに、
補正後発明が特定する「予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像」「予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」は、
「画像補正」の内容の具体を特定するものではないし、第1の部分画像と第2の部分画像が別々に画像補正されることを要求するものでもなく、
単に、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像が、共に「既に画像補正されたもの」でありさえすれば満たされるものである。

イ-1 そこで、(相違点1を克服した)引用発明について検討するに、
「入力映像データである画面A映像データと画面B映像データ」を「切り出」す前の「1つの映像画面を構成する映像データ」を取得する工程において、「画像補正」することは、以下にみるように当業者が容易に想到し得るといえ、したがって、これから切り出した「入力映像データ」である画面A映像データと画面B映像データ(補正後発明の「第1の部分画像及び第2の部分画像」)も、共に「既に画像補正されたもの」とすることは当業者の容易想到である。
なぜなら、上記取得工程としては、一般に、受信し又は再生(記録媒体から読出し再生)する工程、又は撮像する工程(撮像後の記録再生含む)が想定され、上記「1つの映像画面を構成する映像データ」は、それらの工程により取得されたものと言えるところ、
例えば、撮像処理においては、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、輪郭強調補正、ノイズ除去補正等の画像補正をするのは常であるし、
受信や再生(記録媒体から読出し再生)で想定される処理であるMPEG復号では、例えば、ブロック歪み補正やモスキート補正等の画像補正することも常であるからである。

以上のことから、引用発明を出発し上記[相違点1の克服]をしたものにおいて、「入力映像データである画面A映像データと画面B映像データ」が既に「画像補正されたもの」として上記[相違点2の克服]をすることは当業者が容易に想到し得ることである。

イ-2 一般に、投射による映像表示ではスクリーン上に投射表示される映像の形状が(映像信号本来の正規の長方形形状から)略台形状に歪むものであり、投射による映像表示を行う場合、この歪み補正するために、“あおり補正”等の幾何学的補正を施すのが常であることから、
投射による映像表示を行う(相違点1を克服した)引用発明においても、「画像補正」といい得る“あおり補正”等の幾何学的補正を導入することはごく普通のことであるといい得るところ、
当該“あおり補正”等の幾何学的補正を導入する際、上記B’B”Cの画像データのマスキングの前で補正するか、後で補正するかについて検討するに、
分割画像を隣接部分で連結して連続性が保たれた1枚の画像に形成するための連結処理{引用発明や補正後発明(B’B”C)のように重複部分をカットするマスキング処理や、重複部分を重ね合わせるための処理}は、
それら分割画像が正規の長方形状であることを前提に行う処理であることから、同幾何学的補正により正規の長方形状にした後に行うのが自然というべきであり、また、幾何学的補正後にそのような連結処理を行うことも普通である{例えば、下記周知例6?9参照}ことからすれば、
“あおり補正”等の幾何学的補正を、上記B’B”Cの画像データのマスキングの前で行うことは、当業者が容易に想到し得ることである、ということができる。
そして、そのように行うこととすれば、B’の『前記第1及び第2の部分画像」、『前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像』は、「予め画像補正された」となり、上記[相違点2]は克服され、補正後発明に至る。

イ-3 投射による映像表示において、投射すべき映像(画像)に対して、上記幾何学的補正以外にも、種々の画像補正を施すのが普通である(特に、(相違点1を克服した)引用発明のような、多数の投射デバイスを用いるものにおいては、それらのばらつきをなくすための画像補正も普通である。)ことから、
投射による映像表示を行う(相違点1を克服した)引用発明においても、投射すべき映像{画面A映像データ、画面B映像データに対応する映像}に、上記幾何学的補正以外の画像補正を施することもごく普通のことであるといい得るものである。
そして、かかる補正を、上記(B’B”C)の、画像データのマスキング処理の前でするか、後でするかについて検討するに、
マスキングの後ですることもあり得るものであるが、その前で(画面A映像データ、画面B映像データに対応する元映像に対して)することも普通に想定し得るものというべきである。
これについては、例えば、下記周知例10、周知例11等が参照され、周知例10では、図1に、ノイズ除去やエッジ強調するデコード部5の後に周囲に黒信号を生成するDSP8が示されている。周知例11では、図40(図20)において、ばらつきを除去する「色変換部12」の後に「マスク処理部11c」が示されている。
この点から見ても、上記[相違点2の克服]は、当業者が容易に想到し得ることというべきである。

記(周知例)
周知例1:特開平4-157992号公報
{特に、第4図?第6図,請求項2,8頁左上欄14行?同頁左下欄4行,10頁右上欄12行?11頁左下欄19行)}
周知例2:特開平5-11238号公報
{特に、図3,請求項2,段落【0006】?【0007】}
周知例3:特開平9-65235号公報
{特に、図6,段落【0036】,【0046】}
周知例4:特開平10-108108号公報
{特に、図6,図7,段落【0022】?【0031】}
周知例5:特開平5-328214号公報
{図1,図2,段落【0015】?【0020】}

周知例6:特開2001-177787号公報
{特に、図1,図3,段落【0046】?【0049】,【0074】。「補間フィルタ部21」で幾何学的補正が、「補間データ切換部22」で連結処理(マスキング処理)が行われる。}
周知例7:特開平10-13770号公報
{特に、図3?図4,段落【0010】?【0015】で幾何学的補正が、【0016】で連結処理(マスキング処理)が行われる。}
周知例8:特開2002-215114号公報
{特に、図6,段落【0038】?【0039】,【0052】。「補間フィルタ部41」で幾何学的補正が、「補間データ切換部43」で連結処理(マスキング処理)が行われる。}
周知例9:特開平9-326981号公報
{特に、図2?図6,段落【0022】,【0026】「・・予め図2(b)に示されるようにあおりを補正した画像を生成出力する・・・」,【0027】?【0029】,【0034】?【0036】、「補間部10」で幾何学的補正が、「係数設定部11」で連結処理が行われる。}

周知例10:特開平11-146307号公報
{特に、図1,図2,段落【0014】,【0016】?【0017】}
周知例11:特開2001-147486号公報
{特に、図40(第4変形例【0203】)(図20),図19,図29、請求項1「オーバーラップする領域において、映像の連続性を保つように・・・映像信号を電気的に補正する手段」,段落【0093】?【0095】,【0101】?【0102】色変換部12「ばらつきを除去」,【0134】「装置毎の各種補正データ」,【0155】?【0156】「マスク処理部11c」「シームレス処理」、【0203】}

〈請求人の主張について〉
相違点2につき、請求人は、
補正後発明は、「予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」という特徴によって処理負荷の大きい画像補正処理は必要最小限の回数のみで済み、各表示タイミングにおいては、単純な2値データであるマスクデータの作成と単純な論理積の処理のみが行なわれ、補正処理を少なくすることができるという技術的効果が得られるものであり、
かかる技術的効果(補正処理をすくなくすること)を目的として「マスクデータの生成に先立って画像補正を行なう」ということは困難である旨、
主張している。

しかしながら、上記請求人の主張は、補正後請求項1の記載に基づかない主張であって、採用できない。
すなわち、上記請求人の主張する効果は、動画像をそのフレームレートより大きいレートで表示を行う場合、つまり、入力される動画像1枚当たり2回以上表示する場合において奏する効果であるところ、
補正後請求項1は、そのように表示することを特定しておらず、したがって、補正後請求項1記載の発明は、動画像をそのフレームレートと同じレートで表示するもの(入力される動画像1枚当たり1回表示するもの)を含むものであるから、上記効果は、補正後請求項1記載の発明に特有の効果とはいえない。
このことは、本願明細書の段落【0081】には、「この実施形態2においては、処理負荷の大きい画像補正処理(画像補正手段7が行う画像補正処理)は必要最小限の回数(上述の例ではそれぞれの最大表示分割画像301max,302max,303max,304maxに対して1回)のみで済み、各表示タイミングにおいては、単純な2値データであるマスクデータの生成と、また、単純な論理積の処理のみが行われる。つまり、実施形態1の場合よりも補正処理を少なくすることができ、しかも、実施形態1と同等の効果を得ることができる。」に続いて、「ただし、この処理は、動画像をそのフレームレートで表示を行う場合においては、実施形態1と同等である。」と記載していることからも明らかである。
そして、「予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」とすることが当業者容易想到であること、及びその理由は、上記イで示した通りである。

(3)まとめ{相違点等の判断(容易想到性の判断)}
以上のとおりであるから、補正後発明は、上記刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[7]まとめ(理由:独立特許要件不適合)
以上によれば、補正後の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

【第3】査定の当否

[1]本願発明
平成21年5月20日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1?8に係る各発明は、本願明細書及び図面(平成19年 1月16日付けの手続補正書、平成21年2月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、
その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は下記の通りである。

記(本願発明(請求項1))
第1の画像投射手段にて表示が可能な第1の投射表示領域の一部と、前記第1の画像投射手段とは異なる第2の画像投射手段にて表示が可能な第2の投射表示領域の一部とにより重複する重複領域を有する状態にあって、
前記第1の画像投射手段によって前記第1の投射表示領域に第1の部分画像を表示し、前記第2の画像投射手段によって前記第2の投射表示領域に第2の部分画像を表示することにより画像を表示する際の画像表示方法であって、
前記画像を表示する際に前記重複領域には前記第1及び第2の部分画像のうちいずれかの部分画像のみが表示されるように、且つ前記重複領域に表示される前記第1の部分画像と前記第2の部分画像との境界である分割位置が所定のタイミングで変化するように、前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングするマスクデータを生成するマスクデータ生成ステップと、
前記マスクデータによって前記重複領域の画像の少なくとも一部をマスキングすることにより、前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を生成する画像データマスキング処理ステップと、
前記データマスキング処理ステップによって生成された前記第1の部分画像及び前記第2の部分画像を表示する画像表示ステップと、
を有することを特徴とする画像表示方法。

[2]引用刊行物の記載、引用発明、対比
原査定の拒絶の理由に、引用文献1として引用された刊行物である特開2003-005737号公報(刊行物1)には、前記「【第2-4】[3]」で認定したとおりの引用発明が認められ、
本願発明と引用発明との対応については、前記「【第2-4】[4]補正後発明と引用発明との対応」を援用する。

[3]一致点、相違点
本願発明は、前記補正後発明における「予め画像補正された前記第1及び第2の部分画像のうち」、「前記重複領域に表示される予め画像補正された前記第1の部分画像と前記第2の部分画像」から、下線部分「予め画像補正された」との特定事項を削除したものである。
したがって、本願発明と引用発明との一致点は、前記「【第2-4】[5]」で示した補正後発明と引用発明との一致点と同じであり、
本願発明と引用発明との相違点は、前記「【第2-4】[5]」で示した補正後発明と引用発明との相違点1と同じ相違点があるだけであり、前記「【第2-4】[5]」で示した補正後発明と引用発明との相違点2の相違は存在しない。

[4]相違点等の判断(容易想到性の判断)
前記【第2-4】[6]でした、補正後発明についての相違点についての判断(相違点2についての判断を除く)と同じである。

[5]まとめ(本願発明)
本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第4】むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-05 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-25 
出願番号 特願2006-339543(P2006-339543)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 益戸 宏菅 和幸  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 ▲徳▼田 賢二
藤内 光武
発明の名称 画像表示方法、画像表示装置および画像表示プログラム  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 内藤 照雄  
代理人 須澤 修  
代理人 上柳 雅誉  

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