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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1248614
審判番号 不服2011-1514  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-21 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2004-330767「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-136639〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年11月15日の出願であって、平成22年10月18日付け(発送:10月26日)で拒絶査定がされ、これに対し平成23年1月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成23年5月17日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、同年7月15日付けで回答書が提出された。

2.平成23年1月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?4に記載された
「【請求項1】
遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行い、前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であり、当該抽選により当選した役を順次貯留する一方、所定の遊技回数の遊技が実行された場合に、順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする遊技機であって、
前記役の権利行使が開始された場合に、今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段と、
前記今回実行中の権利行使終了後、前記所定の遊技回数の遊技において、前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容での報知演出を実行する報知演出実行手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記報知演出実行手段は、前記遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知内容を異ならせることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記報知演出実行手段は、前記遊技回数が所定回数以下である場合には第1の報知内容での報知演出を実行すると共に、前記遊技回数が所定回数を越える場合には予め設定された選択確率で選択された前記第1の報知内容又は前記第1の報知内容とは異なる報知内容での報知演出を実行することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項4】
前記報知演出実行手段は、予め設定された複数の報知内容から、前記遊技回数に応じて予め設定された選択確率で選択された何れかの報知内容での報知演出を実行することを特徴とする請求項1記載の遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】
遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行い、前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であり、当該抽選により当選した役を順次貯留する一方、所定の遊技回数の遊技が実行された場合に、順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする遊技機であって、
前記役の権利行使が開始された場合に、今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段と、
前記今回実行中の権利行使終了後、かつ前記所定の遊技回数の遊技の開始時において、少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知内容を異ならせると共に、所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出での報知演出を実行する報知演出実行手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記報知演出実行手段は、前記遊技回数が所定回数以下である場合には第1の報知内容での報知演出を実行すると共に、前記遊技回数が所定回数を越える場合には予め設定された選択確率で選択された前記第1の報知内容又は前記第1の報知内容とは異なる報知内容での報知演出を実行することを特徴とする請求項1記載の遊技機。」
という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所である。)。

(2)補正の適否
本件補正により、補正前の請求項1の「前記今回実行中の権利行使終了後、前記所定の遊技回数の遊技において、」を「前記今回実行中の権利行使終了後、かつ前記所定の遊技回数の遊技の開始時において、」と補正し、報知演出を実行する時期を限定することとなり、補正前の請求項1の「前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容での報知演出を実行する」を「少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知内容を異ならせると共に、所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出での報知演出を実行する」と補正し、どのような時にどのような演出を実行するのかを限定することとなった。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献に記載された事項
前置審査で引用文献1として提示されたパチスロ必勝ガイドMAX2004年9月号、日本、株式会社白夜書房 末井 昭、2004年 9月 1日発行、p.4?11(以下、「引用例1」という。)は、パチスロ機「ボンバーパワフル」についての紹介記事であり、写真や図示とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)4頁左上段には「1G連以外のボーナス放出条件」として、「「ノーマル」「ハマリ」「連チャン」「即連」4種類のモードで出玉の波を演出(ボーナス入賞時にモード移行抽選)」と、4頁右下段には「各役払い出し表」として、各図柄毎の払い出し数及び「BIG BONUS」、「REG BONUS」、「REPLAY」等の図柄配列が、また、4頁左下段には「…全国で急増中のSANKYOのストックマシン「ボンバーパワフル」。…」と、4頁最下段には「ボーナス確率は全設定共通で、最大ストック個数はビッグ、REGともに99個。ストックは基本的に溜まっていく仕様だが、その抽選確率ゆえ、導入直後はストック切れの恐れも…。新装から間もない時期は、ストックの有無を気にした立ち回りが求められよう。」と記載されている。

(イ)5頁右下段には「ビッグ中はレバーON時に成立役が表示されるため、…」と記載されている。

(ウ)6頁右上段には「ボーナス放出システム」として「冒頭でも軽く触れたが、通常時のボーナス放出条件は「規定STゲーム数の消化」…の4種類。STゲーム数は設定や滞在しているモード(ノーマル・ハマリ・連チャン・即連の4種類)によって選択されるゲーム数が異なる仕組みだ(詳細は次頁)。」と記載されている。

(エ)10頁には「連チャン期待度を表示!ボーナス放出の前兆!目が離せない液晶演出」として「JACゲーム&ビッグ終了時に連チャン期待度を表示!!」及び「液晶のステージにも秘密あり!!」との表題で、次回STゲーム数が129G以上と128G以下の場合の1回目、2回目のJACゲームのキャラクタの選択率、ビッグのエンディング液晶画面の背景の選択率、ボーナス後の液晶のステージの選択率に関するテーブルが記載され、10頁右下段には「連チャン期待度が演出内容で変化!!」として「ここでは、ボーナス連チャン期待度を示す演出について解説しよう。
まず、JACゲーム中(ビッグ中は1&2回目)に登場するキャラ及びその選択率は上カコミのとおり。この内、次回STゲーム数によって選択率に顕著な差があるのは「夢夢+ナナ+UFO」&「夢夢+ナナ+ロボ+UFO」で、次回STゲーム数が129G以上の場合は約7%(合算値)に留まるが、128G以下の場合は約25%と3倍以上に跳ね上がることになる。
一方、ビッグのエンディング画面は街よりも宇宙の方が連チャン期待度は上。宇宙の選択率は次回STゲーム数が129G以上だと約22%なのに対し、128G以下だと2倍以上の約51%にも達する(ただし、ビッグがパンクした場合は選択率が変化する)。
ボーナス終了後はカフェステージから始まると連チャン期待度アップ。また、ステージは残りSTゲーム数が128G以下になると移行頻度が高くなるため、ステージ移行の頻度は前兆と思って差し支えないだろう。」と記載されている。

以上、上記(ア)乃至(エ)の記載、写真及び図示を総合すると、引用例1には、
「BIG BONUS、REG BONUS、REPLAY等の役を有し、ビッグ、REGともにストックが溜まっていき、規定STゲーム数を消化した場合に放出するパチスロ機であって、
ボーナス入賞時にモード移行抽選を行い、モードによって選択されるSTゲーム回数の選択率が異なり、
ボーナス終了後の液晶のステージを、次回STゲーム数が129G以上の場合に、街ステージを約75%で選択し、カフェステージを約25%で選択し、
次回STゲーム数が128G以下の場合に、街ステージを約50%で選択し、カフェステージを約50%で選択するパチスロ機。」
の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」という。)。

ここで、「BIG BONUS」は「ビッグ」と、「REG BONUS」は「REG」と、それぞれ同じ事象を示す言葉であることは明らかであるから、以下、「BIG BONUS」、「REG BONUS」はそれぞれ「ビッグ」、「REG」と記載することとする。

(4)対比
引用発明1の「ビッグ、REG」の「役」は、本願補正発明の「複数の役」に相当する。以下同様に、
「規定STゲーム数」は「所定の遊技回数」に、
「ストックが溜まっていき」は「順次貯留する」に、
「放出する」は「権利行使を可能とする」に、
「パチスロ機」は「遊技機」に、
「ボーナス終了後」は「前記今回実行中の権利行使終了後」に、それぞれ相当する。

引用例1は、上記(イ)で摘記したとおりビッグ中はレバーON時に成立役が表示されると記載され、レバーがゲームを開始するためのレバーであることは明らかであり、引用例1の4頁最下欄に記載のとおり、ボーナス内部確率としてビッグは1/240.941、REGは1/364.088が設定されているのであって、遊技者がゲーム開始のレバーを操作したことに基づいてパチスロ機が複数備えた役の抽選を行うことは技術常識であるから、引用発明1は「遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行」うものであるといえる。

また、引用例1は、上記(エ)で摘記したとおり1&2回目のJACゲームとビッグのエンディング液晶画面を有すること、10頁中段に「3回目のJACゲーム時のチャンスパターンは左頁で詳しく紹介!」との記載から3回目のJACゲームを有すること、がそれぞれ記載されており、ビッグが複数回のJACゲームからなることが記載されているといえ、ビッグが複数回のREGからなること、JACゲームとはREGのことであることは技術常識であることから、引用発明1では「前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であ」る構成を有するといえる。

また、引用例1は、上記(ア)で摘記したとおりボーナス入賞時にモード移行抽選を行っており、引用例1の4頁左上段に、ボーナス内部成立時(フラグ成立時)をボーナス入賞時(ボーナス図柄成立時)と区別する「ボーナス内部成立時」という記載があることからして、「ボーナス入賞時」とはボーナス図柄が表示されてBBまたはRBのゲームが開始する時であることは明らかであり、モードに応じてSTゲーム数選択率が異なることから、ボーナス入賞時以降にSTゲーム数を選択していることは明らかであるため、引用発明1は「前記役の権利行使が開始された場合に」STゲーム数を選択しているといえる。

また、引用例1は、上記(エ)で摘記したとおり次回STゲーム数が129G以上と128G以下の場合の1回目、2回目のJACゲームのキャラクタの選択率、ビッグのエンディング液晶画面の背景の選択率が異なることが記載されていることから、次回STゲーム数の設定はビッグのエンディング演出の前までに行っていることが明らかであって、次回STゲーム数を設定することから、その設定手段を備えていることは明らかであるため、引用発明1は「今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段」を備えているといえる。

また、引用例1は、上記(エ)で摘記したとおりボーナス終了後にカフェステージから始まるか街ステージで始まるかにより連チャン期待度が異なることが記載されているから、ボーナス終了後のSTゲーム(本願補正発明の「遊技の開始時」に相当)において、次回STゲーム数(本願補正発明の「所定の遊技回数」に相当)が、129G以上である場合(本願補正発明の「少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が」「所定回数を越える場合」に相当)と、128G以下の場合(本願補正発明の「少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合」)とで、選択するステージの選択率を異ならせており、また、液晶で演出を表示していることから、その手段を備えていることが明らかである。
さらに、引用例1は、上記(エ)で摘記したとおりボーナス終了後のステージにより連チャン期待度が異なるものであるから、その期待度が大きいカフェステージは「役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出」に相当する。
以上により引用発明1と本願補正発明とは「前記今回実行中の権利行使終了後、かつ前記所定の遊技回数の遊技の開始時において、少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知に関する条件を異ならせると共に、所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出での報知演出を所定の条件で実行する報知演出実行手段」を備えている点で共通する。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行い、前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であり、当該抽選により当選した役を順次貯留する一方、所定の遊技回数の遊技が実行された場合に、順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする遊技機であって、
前記役の権利行使が開始された場合に、今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段と、
前記今回実行中の権利行使終了後、かつ前記所定の遊技回数の遊技の開始時において、少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知に関する条件を異ならせると共に、所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出での報知演出を所定の条件で実行する報知演出実行手段と、
を備えた遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明では、少なくとも前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知内容を異ならせると共に、所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出での報知演出を実行しているのに対して、引用発明1では、次回STゲーム数が129G以上の場合と128G以下の場合とで、ステージの選択率を異ならせている点。

(5)判断
<相違点>について
遊技機の分野において、遊技者に内部抽選結果等の遊技状態を報知するにあたり、その状態を正確に報知すること、曖昧に報知すること、そしてそれら双方の報知手法を適宜選択し得ること、は例示するまでもなくそれぞれ周知技術であるため、引用発明1において、次回STゲーム数に応じてステージの選択率を異ならせることにより連チャン期待度を表示していたことに代えて、次回STゲーム数に応じて表示するステージを異ならせて正確に報知するようにし、本願補正発明の相違点に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は平成23年7月15日付け回答書の3頁4行?11行において「ここで、原審審査官が指摘しているのは、(a)「特別演出を含め複数の報知演出から抽選によって選択して、当該選択された報知演出を実行する」という内容であり、確かに現状の本願発明の請求項では、この(a)を含んでいます。しかしながら、本願発明は、(b)「遊技回数が所定回数以下である場合に役の権利行使実行時期を示唆する度合いである期待値の大きい特別演出を選択」することを含むものであり、この点、引用文献1には記載されていません。すなわち、本願発明は、上記(a)、(b)を複合的に実行するものであり、引用文献1から容易に想到し得るものではありません。」と主張しているものの、先に検討したとおり、引用発明1で次回STゲーム数に応じてステージの選択率を異ならせることにより連チャン期待度を表示していたことに代えて、次回STゲーム数に応じて表示するステージを異ならせて正確に報知するようにすることは当業者が容易になし得たことであるため請求人の主張を採用することはできない。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本願補正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年1月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1?4に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は、平成22年8月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】
遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行い、前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であり、当該抽選により当選した役を順次貯留する一方、所定の遊技回数の遊技が実行された場合に、順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする遊技機であって、
前記役の権利行使が開始された場合に、今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段と、
前記今回実行中の権利行使終了後、前記所定の遊技回数の遊技において、前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容での報知演出を実行する報知演出実行手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記報知演出実行手段は、前記遊技回数が所定回数以下である場合と所定回数を越える場合とで報知内容を異ならせることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記報知演出実行手段は、前記遊技回数が所定回数以下である場合には第1の報知内容での報知演出を実行すると共に、前記遊技回数が所定回数を越える場合には予め設定された選択確率で選択された前記第1の報知内容又は前記第1の報知内容とは異なる報知内容での報知演出を実行することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項4】
前記報知演出実行手段は、予め設定された複数の報知内容から、前記遊技回数に応じて予め設定された選択確率で選択された何れかの報知内容での報知演出を実行することを特徴とする請求項1記載の遊技機。」

(2)引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-267608号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(オ)「【0050】
また、本実施例では、最大賭数である「3」の賭数が設定された時点(後述するRBゲームでは「1」の賭数が設定された時点)でゲームが開始可能な状態となる構成とされているが、少なくとも「1」以上の賭数が設定された時点でゲームが開始可能な構成であれば良い。
【0051】
ゲームが開始可能な状態でスタートレバー38を押圧操作すれば、各リール51L、51C、51Rが回転し、透視窓14には複数種類の図柄が連続的に変化するように表示される。各リール51L、51C、51Rの回転が開始されてから所定時間が経過すれば各ストップボタン40L、40C、40Rの操作が有効になり、この状態で遊技者がいずれかのストップボタン40L、40C、40Rを押圧操作すれば、対応するリールの回転が停止され、透視窓14からは対応する可変表示部の上、中、下段に図柄が表示される。
【0052】
また、遊技者がストップボタン40L、40C、40Rを押圧操作しない場合には、一定時間が経過した時点で自動的に各リール51L、51C、51Rの回転が順次停止する。
【0053】
そして全てのリール51L、51C、51Rが停止された時点で、賭数に応じて有効化されたいずれかの入賞ラインL1、L2、L2’、L3、L3’上に予め定められた図柄の組合せが表示された場合は入賞となり、入賞内容に対応して予め定められた所定枚数のメダルが遊技者に対してクレジットとして払出される。また、クレジットが上限数に達した場合には、メダルが直接メダル払出穴9から払い出される。
【0054】
また、特に予め定められた特別図柄の組合せが表示されて大当たり入賞した場合にあっては、メダルの払出しが行なわれるとともに、通常遊技状態とは異なるとともに、遊技者にとって有利な、すなわち大量のメダルを獲得できるビッグボーナス(BB)やレギュラーボーナス(RB)が遊技者に対して遊技価値として付与されるようになっている。」

(カ)「【0083】
また、通常遊技状態において有効化されたいずれかの入賞ライン上に「BAR-BAR-BAR」の図柄の組合せが揃えば、特別入賞であるRB入賞が発生し、その対価として15枚のメダルが払い出されるとともに、遊技者にとって有利なレギュラーボーナス(RB)が発生し、レギュラーボーナスゲーム(RBゲーム)が遊技者に対して付与される。RBゲームにおいては、「リプレイ-リプレイ-リプレイ」の組合せが有効化された1本の入賞ライン上に揃って、15枚のメダルが払い出されるJac入賞が高確率で発生する。RBでは、RBゲームが最大で12回提供される。そしてRBは、RBゲームが12回実行されるか、あるいはRBゲームが12回に達する前にJac入賞が8回発生するか、のいずれかの条件が満たされた時点で終了する。したがって、遊技者は12回のRBゲーム中に最大8回のJac入賞の機会を得ることができる。また、RBゲームは、「リプレイ-リプレイ-リプレイ」の組合せのみ揃えることが許容されるゲーム、すなわち後述するように目押しを必要としない入賞の発生のみが許容されるゲームであり、これらRBゲームが複数ゲーム付与されるRBは、本発明の特殊遊技状態として機能する。
【0084】
また、通常遊技状態において有効化された入賞ライン上に、「黒7-黒7-黒7」または「白7-白7-白7」が揃えば、特別入賞であるBB入賞が発生し、その対価として15枚のメダルが払い出されるとともに、遊技者にとって有利な特別遊技状態としてのビッグボーナス(BB)が発生し、以下に説明するビッグボーナスゲーム(BBゲーム)と前述したRBが遊技者に対して付与される。
【0085】
BBゲームにおいては、「チェリー-any-any」、「スイカ-スイカ-スイカ」、「ベル-ベル-ベル」、または「リプレイ-リプレイ-リプレイ」の組合せが入賞の対象とされており、これらの入賞が通常遊技状態に比較して高確率で発生する。
【0086】
BBゲームにおいて「チェリー-any-any」の組合せが有効化された1本の入賞ライン上に揃った場合には、2枚のメダルが払い出されるチェリー入賞が発生する。また、「スイカ-スイカ-スイカ」の組合せが有効化された1本の入賞ライン上に揃った場合には、12枚のメダルが払い出されるスイカ入賞が発生する。また、「ベル-ベル-ベル」の組合せが有効化された1本の入賞ライン上に揃った場合には、8枚のメダルが払い出されるベル入賞が発生する。
【0087】
また、「リプレイ-リプレイ-リプレイ」の組合せが有効化された1本の入賞ライン上に揃った場合には、JacIn入賞が発生し、その対価として3枚のメダルが払い出されるとともに、前述したRBに移行し、レギュラーボーナスゲーム(RBゲーム)が遊技者に対して付与される。
【0088】
BBでは、BBゲームが最大で30ゲーム提供されるとともに、このBBゲームにおいてRBに移行可能な最大回数が規定されており、本実施例では最大で3回移行し得るように規定されている。そしてBBは、30回のBBゲームを実行した場合か、或いは30回のBBゲームを実行する前にRBへ3回移行し、3回目のRBが終了した場合のうち、少なくともいずれか1つの条件が満たされた時点で終了する。」

(キ)「【0100】
また、BB入賞を許容する旨を示すBBフラグまたはRB入賞を許容する旨を示すRBフラグは、当該BBフラグまたはRBフラグにより許容されるBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態で一度ストックされる。すなわちBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態で次ゲーム以降に持ち越される。
【0101】
また、既にBBフラグまたはRBフラグがストックされている状態でも、内部抽選処理によるBBフラグまたはRBフラグの抽選が行われるようになっており、この状態でBBフラグまたはRBフラグが当選した場合には、既に持ち越されているBBフラグまたはRBフラグとは別個に、当選したBBフラグまたはRBフラグも当該BBフラグまたはRBフラグにより許容されるBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態でストックされるようになっている。すなわち本実施例では、複数のBBフラグまたはRBフラグをBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態でストックする(持ち越す)ことができるようになっている。
【0102】
これらストックされているBBフラグまたはRBフラグは、前述したストックタイムが解除されることで1つ放出され、この放出されたBBフラグまたはRBフラグに応じてBB入賞またはRB入賞が発生可能な状態、すなわち放出状態となり、それ以降のゲームにおいてBB入賞またはRB入賞が発生することにより、放出されたBBフラグまたはRBフラグはクリアされる。
【0103】
図7は、本実施例のスロットマシン1におけるBBフラグ及びRBフラグのストック及び放出の流れを示すフローチャートである。
【0104】
図7に示すように、BBフラグまたはRBフラグが1つもストックされていない状態でBBフラグまたはRBフラグが当選すると、この当選したBBフラグまたはRBフラグを、次回放出される内部当選フラグとして設定するとともに(S1)、予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択し、選択した規定ゲーム数をストックタイムの継続ゲーム数として決定する(S2)。
【0105】
次いで、BB入賞またはRB入賞が発生不可能に制御されるストックタイムに移行する(S3、S4)。ストックタイム中のゲームにおいてBBフラグまたはRBフラグが当選した場合には、当選したBBフラグまたはRBフラグを、既にストックされているBBフラグやRBフラグとは別個にストックする。
【0106】
ストックタイムでは、移行してからのゲーム数をカウントし、規定ゲーム数に到達すること、すなわち規定ゲーム数が終了することでストックタイムが解除される。ストックタイムが解除されると次回放出する内部当選フラグとして設定されているBBフラグまたはRBフラグを放出とする(S5)。
【0107】
この際、放出したBBフラグまたはRBフラグとは別個に、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされているか否かを確認し(S6)、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされている場合には、次回放出する内部当選フラグの種類を決定するとともに(S7)、予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択し、選択した規定ゲーム数を次回移行するストックタイムの継続ゲーム数として決定する(S8)。
【0108】
放出状態では、放出されたBBフラグまたはRBフラグにより許容されるBB入賞またはRB入賞が発生可能に制御し、BB入賞またはRB入賞に伴うBBまたはRBの発生により、放出された内部当選フラグをクリアする(S9、S10)。
【0109】
BBまたはRBの終了後、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされている場合には、BBフラグまたはRBフラグの放出時に決定された種類の内部当選フラグを次回放出される内部当選フラグとして設定した後、再びストックタイムに移行し、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされていない場合には、S1に戻る。」

(ク)「【0115】
Sa3のステップにおける内部抽選処理では、スタートレバー38の押圧操作によるゲームスタートに伴いサンプリングされた乱数値に基づいて各入賞の当選を判定し、当選した場合には該当する入賞の発生を許容する旨を示す内部当選フラグを設定する処理を行う。すなわち内部抽選処理は、本発明の事前決定手段として機能する。」

(ケ)「【0174】
また、本実施例のスロットマシン1では、RB中の各RBゲームにおいて、ジャンケンゲームを行い、その結果に基づいて当該RBゲームが行われているBBまたはRBの終了後、少ないゲーム数にてストックタイムが解除される可能性、すなわち近いうちにBBフラグまたはRBフラグの放出状態となる可能性を報知する連荘予告演出が行われるようになっている。
【0175】
図14は、連荘予告演出によるジャンケンゲームの流れを示す図である。まず、RBゲームでは、スタート操作時に「グー」「チョキ」「パー」のいずれかの選択を促す選択画面(図14(a)参照)が液晶表示部15に表示される。
【0176】
この際、遊技者は、第1停止リール(最初に停止するリール)を、左、中、右から選択することにより、「グー」「チョキ」「パー」のうち1つを選択することができるようになっている。具体的には、左リールを第1停止とすることで「グー」を、中リールを第1停止とすることで「チョキ」を、右リールを第1停止とすることで「パー」を、各々選択することができる。
【0177】
第1リールの停止に伴い「グー」「チョキ」「パー」のいずれかが選択されると、その選択結果を示す決定画面(図14(b)参照)が液晶表示部15に表示される。
【0178】
そして、全リールの停止後、勝ち画面(図14(c)参照)、引き分け画面(図14(d)参照)、負け画面(図14(e)参照)のいずれかの画面が液晶表示部15に表示され、勝敗が報知される。
【0179】
この際、勝ち画面、引き分け画面、負け画面のどの画面が表示されるかは、後に詳述するが、当該RBゲームが行われているBBまたはRBの終了後移行するストックタイムの規定ゲーム数に応じて選択率が異なるように定められた勝敗パターンが内部的に選択され、その選択された勝敗パターンに基づいて該当する画面が表示されるようになっている。
【0180】
図15は、制御部230がRBゲームにおいて実行するRB中演出処理の詳細な制御内容を示すフローチャートである。このRB中演出処理では、前述した連荘予告演出(ジャンケンゲーム)を行うための処理である。すなわちRB中演出処理は、本発明における予告演出手段として機能する。(当審で、段落冒頭の「図12」は「図15」の誤記と認めた。)
【0181】
RB中演出処理では、まず、ゲームの開始待ちの状態で待機する(Sc1)。ゲームが開始したか否かは、スタートレバー38の操作に伴って送信される内部当選コマンドの受信に基づいて判定する。
【0182】
Sc1のステップにおいてゲームの開始を判定した場合には、Jacフラグが当選したかを確認する(Sc2)。Jacフラグが当選したか否か、は、Sc1のステップにおいて受信した内部当選コマンドに基づいて判定する。
【0183】
Sc2のステップにおいてJacフラグの当選が判定された場合には、前述した選択画面を液晶表示器135に表示させる(Sc3)。
【0184】
次いで、いずれか1つのリールが停止するまで待機する(Sc4)。リールが停止したか否かは、各リールの停止操作が行われたときに送信される停止コマンドの受信に基づいて判定する。
【0185】
Sc4のステップにおいてリールの停止を判定すると、停止したリール、すなわち第1停止リールに応じた決定画面を液晶表示器135に表示させる(Sc5)。具体的には、第1停止が左であれば「グー」の決定を示す決定画面を表示させ、第1停止が中であれば「チョキ」の決定を示す決定画面を表示させ、第1停止が右であれば「パー」の決定を示す決定画面を表示させる。
【0186】
次いで、全リールが停止するまで待機する(Sc6)。全リールが停止したか否かは、各リールの停止操作に伴って送信されるリール停止コマンドの受信に基づいて判定する。
【0187】
Sc6のステップにおいて全リールの停止を判定した後、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内か否かを確認する(Sc7)。次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内か否かは、BBフラグまたはRBフラグが放出された際に送信されるST規定ゲーム数コマンドに基づいて判定する。
【0188】
Sc7のステップにおいて次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内であると判定した場合、すなわち少ないゲーム数でストックタイムが解除される場合には、勝敗パターン選択テーブル(1)(図16参照)に定められた割合に基づいて勝敗パターンを選択する(Sc8)。また、Sc7のステップにおいて次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が51ゲーム以上であると判定した場合には、勝敗パターン選択テーブル(2)(図16参照)に定められた割合に基づいて勝敗パターンを選択する(Sc9)。
【0189】
次いで、Sc8またはSc9のステップにおいてどの勝敗パターンが選択されたかを確認し(Sc10、Sc11)、勝ちパターンが選択された場合には、勝ち画面を、負けパターンが選択された場合には、負け画面を、引き分けパターンが選択された場合には、引き分け画面を、各々液晶表示器135に表示させる(Sc12、Sc13、Sc14)。
【0189】
次いで、Sc8またはSc9のステップにおいてどの勝敗パターンが選択されたかを確認し(Sc10、Sc11)、勝ちパターンが選択された場合には、勝ち画面を、負けパターンが選択された場合には、負け画面を、引き分けパターンが選択された場合には、引き分け画面を、各々液晶表示器135に表示させる(Sc12、Sc13、Sc14)。
【0190】
図16は、RB中演出処理においてジャンケンゲームの勝敗パターンを選択する際に用いる勝敗パターン選択テーブル別の勝敗パターンの選択率を示す図である。
【0191】
図16に示すように、勝敗パターン選択テーブル(1)が適用される場合、すなわち次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内の場合、すなわち近いうちにBBフラグまたはRBフラグの放出状態に移行する場合には、勝ちパターンが70%の割合で選択され、負けパターンが20%の割合で選択され、引き分けパターンが10%の割合で選択される。また、勝敗パターン選択テーブル(2)が適用される場合、すなわち次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が51ゲーム以上の場合には、勝ちパターンが20%の割合で選択され、負けパターンが70%の割合で選択され、引き分けパターンが10%の割合で選択される。
【0192】
このように、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内の、すなわち少ないゲーム数で次回移行するストックタイムが解除される場合のジャンケンゲームの勝率が高く、51ゲーム以上の場合のジャンケンゲームの勝率が低くなるように勝敗パターンが選択されるので、ジャンケンゲームの勝率が高い場合には、少ないゲーム数で次回移行するストックタイムが解除される可能性が高い旨、すなわちBB入賞やRB入賞が連荘する可能性が高い旨が示されるようになっている。
【0193】
このように本実施例では、RBゲームにおいて連荘予告演出が行われ、それに伴うジャンケンゲームでの勝率に基づきBB入賞やRB入賞が連荘する可能性が報知されることとなるため、技術介入(目押し)を必要としないJac入賞のみが許容されるRB中のゲーム、すなわち技術介入を必要としない遊技状態中のゲームにおいても興趣を高めることができる。」

以上、(オ)乃至(ケ)の記載、及び図面を総合すると、引用例2には、
「スタートレバー38の押圧操作によるゲームスタートに伴いサンプリングされた乱数値に基づいて各入賞の当選を判定し、当選した場合には該当する入賞の発生を許容する旨を示す内部当選フラグを設定する処理を行い、通常遊技状態において有効化されたいずれかの入賞ライン上に「BAR-BAR-BAR」の図柄の組合せが揃えば、特別入賞であるRB入賞が発生し、通常遊技状態において有効化された入賞ライン上に、「黒7-黒7-黒7」または「白7-白7-白7」が揃えば、特別入賞であるBB入賞が発生し、BBゲームにおいてRBには最大3回移行し得るように規定されており、BB入賞を許容する旨を示すBBフラグまたはRB入賞を許容する旨を示すRBフラグは、当該BBフラグまたはRBフラグにより許容されるBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態で一度ストックされ、予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択し、選択した規定ゲーム数をストックタイムの継続ゲーム数として決定し、移行してからのゲーム数をカウントし、規定ゲーム数が終了することでストックタイムが解除され、ストックタイムが解除されると次回放出する内部当選フラグとして設定されているBBフラグまたはRBフラグを放出するスロットマシン1において、
放出したBBフラグまたはRBフラグとは別個に、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされているか否かを確認し、次回放出可能なBBフラグまたはRBフラグがストックされている場合には、次回放出する内部当選フラグの種類を決定するとともに、予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択し、選択した規定ゲーム数を次回移行するストックタイムの継続ゲーム数として決定し、
RB中演出処理において、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内であると判定した場合には、勝敗パターン選択テーブル(1)に定められた割合に基づいて勝敗パターンを選択し、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が51ゲーム以上であると判定した場合には、勝敗パターン選択テーブル(2)に定められた割合に基づいて勝敗パターンを選択し、勝ちパターンが選択された場合には、勝ち画面を、負けパターンが選択された場合には、負け画面を、引き分けパターンが選択された場合には、引き分け画面を、各々液晶表示器135に表示することによりBBまたはRBの終了後、少ないゲーム数にてストックタイムが解除される可能性、すなわち近いうちにBBフラグまたはRBフラグの放出状態となる可能性を報知する連荘予告演出を行うスロットマシン1。」
の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)対比
引用発明2と本願発明1とを対比する。
引用発明2の「スタートレバー38の押圧操作」は、本願発明1の「遊技者の始動開始操作」に相当する。以下同様に、
「サンプリングされた乱数値に基づいて各入賞の当選を判定し」は「複数の役の抽選を行い」に、
「特別入賞であるRB入賞」は「遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役」に、
「RBには最大3回移行し得るように規定され」た「特別入賞であるBB入賞」は「複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役」に、
「当該BBフラグまたはRBフラグにより許容されるBB入賞またはRB入賞が発生不可能な状態で一度ストックされ」は「当該抽選により当選した役を順次貯留する」に、
「規定ゲーム数が終了することで」は「所定の遊技回数の遊技が実行された場合に」に、
「ストックタイムが解除されると次回放出する内部当選フラグとして設定されているBBフラグまたはRBフラグを放出する」は「順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする」に、
「スロットマシン1」は「遊技機」に、
「選択した規定ゲーム数」は「次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数」に、
「予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択」は「予め設定された複数の回数から選択」に、それぞれ相当する。

引用発明2は、予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択しているのであるから「遊技回数設定手段」を備えているといえる。

また、引用発明2は、BBまたはRBの終了後、少ないゲーム数にてストックタイムが解除される可能性、すなわち近いうちにBBフラグまたはRBフラグの放出状態となる可能性を報知する連荘予告演出を行っており、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数に応じて勝敗パターンの選択率を変えることにより、ジャンケンゲームの勝率が高い場合には、少ないゲーム数で次回移行するストックタイムが解除される可能性が高い旨、すなわちBB入賞やRB入賞が連荘する可能性が高い旨が示され、逆に勝率が低い場合には、そうではない可能性が高い旨を示していることから、引用発明2は「前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容での報知演出を実行」しているといえ、また、報知演出を実行しているのであるから実行する手段を備えていることは明らかであるため「報知演出実行手段」を備えているといえる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「遊技者の始動開始操作に基づいて複数の役の抽選を行い、前記役が遊技者に有利な遊技状態で遊技を実行可能な第1の大役及び複数回の当該第1の大役の権利行使が可能な第2の大役であり、当該抽選により当選した役を順次貯留する一方、所定の遊技回数の遊技が実行された場合に、順次貯留された前記役に応じた権利行使を可能とする遊技機であって、
次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択して設定する遊技回数設定手段と、
前記遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容での報知演出を実行する報知演出実行手段と、
を備えた遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明1では前記役の権利行使が開始された場合に、今回実行中の権利行使が終了するまでに次回実行する権利行使を可能とするまでの前記遊技回数を予め設定された複数の回数から選択しているのに対して、引用発明2では、BBフラグまたはRBフラグを放出したときに予め定められた複数の異なる規定ゲーム数からいずれか1つの規定ゲーム数を選択し、選択した規定ゲーム数を次回移行するストックタイムの継続ゲーム数として決定している点。

<相違点2>
本願発明1では前記今回実行中の権利行使終了後、前記所定の遊技回数の遊技において報知演出を実行しているのに対して、引用発明2では、RB中に連荘予告演出を行っている点。

(3)判断
<相違点1>について
規定ゲーム数は、BBまたはRBが終了した後に必要となる値であり、BBフラグまたはRBフラグを放出する条件が成立することによってその値を決定することが必要となってからBBまたはRBが終了までのどのような時期にその値を決定するのかは、当業者が適宜決定し得る設計事項に過ぎず、引用発明2において、BBフラグまたはRBフラグが放出された時に決定することに代えてBBまたはRBの入賞が発生してから決定することとし、本願発明1の相違点1に係る発明の構成とすることに格別の困難性はない。

<相違点2>について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-230023号公報(以下「引用例3」という。)には、RT中に残りRTゲーム数に応じた演出パターンの選択率で演出パターンを決定し演出を実行するスロットマシンが記載されている(特に、段落【0214】?【0229】を参照)。そして、引用発明2及び引用例3に記載の技術は、ともにスロットマシンの残りRTゲーム数に応じた演出に関する技術である点で共通しているため引用発明2において、RB中に連荘予告演出を行うことに代え引用例3に記載の技術のようにRT中に演出を実行することとし、本願発明1の相違点2に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明1の効果は、引用発明2及び引用例3に記載の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願発明1は、引用発明2及び引用例3に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成22年8月17日付け意見書において「しかしながら、引用文献2の演出目的は、基本的に、BB入賞やRB入賞を発生させられないときにボーナス告知演出が行われてしまうことを防止するものです。
また、ゲーム進行において、残りゲーム数が少なくなると(例えば、4ゲーム以下)、BBフラグ、RBフラグの放出の可能性を報知することも行っています。
すなわち、言い換えれば、引用文献2は、RT中の進行に応じてでしか、なし得ない演出制御であり、大役権利行使との関連性は全くありません。
従って、この引用文献2の技術を、引用文献1(おそらく、審査官殿の言うところの、権利行使終了後の報知)に組み合わせることはできません。」と主張しているものの、上述のとおり、引用発明2及び引用例3に記載の技術は、ともにスロットマシンの残りRTゲーム数に応じた演出に関する技術である点で共通しているため両者を組み合わせる動機付けがあるといえ請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は同意見書において「なお、念のため、引用文献1の上記(d)は、BB終了後、ストック数が少ないとき、次の当選が近いことを報知しており、本願発明の一部に相当します。
しかしながら、上記(d)に記載の連荘予告は、少ないゲーム数になったときだけ報知するものであり、比較する報知形態が存在しないため(報知するか否かであり、報知の種類を選択するものではないため)、本願発明で言う「・・・遊技回数設定手段により設定された遊技回数に応じた報知内容・・・」という概念はありません。」と主張しているものの、請求人が指摘する段落【0174】の連荘予告演出は段落【0175】?【0193】に記載されているとおり請求人が「(e) RB中において、次回移行するストックタイムの規定ゲーム数が50ゲーム以内のときと、51ゲーム以上のときとで、ゲーム勝敗選択テーブルを変えること(0188)」と主張しているものであるため、上記主張は妥当ではなく採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明2及び引用例3に記載の技術から、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-05 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-24 
出願番号 特願2004-330767(P2004-330767)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 澤田 真治
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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