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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1249053 |
審判番号 | 不服2009-7441 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-06 |
確定日 | 2011-12-21 |
事件の表示 | 特願2005-321420「上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末識別子を使用する上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月25日出願公開、特開2006-135992〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成17年11月4日(パリ条約による優先権主張2004年11月5日、大韓民国、2004年11月9日、大韓民国、2004年11月15日、大韓民国)の出願であって、平成20年12月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月1日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年5月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年5月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、平成20年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末の上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法であって、 基地局から上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の絶対値を示す絶対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報があらかじめ割り当てられた第1または第2の端末識別子を有するか否かを判断するステップと、 前記絶対送信率情報が前記第1の端末識別子を有する場合に、前記基地局から前記上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の変化を示す相対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報が前記第2の端末識別子を有する場合に、前記基地局から伝送される相対送信率情報を無視するステップと 前記絶対送信率情報と前記相対送信率情報のうちの少なくともいずれか1つを使用して決定された最大の許容送信率内で、上りリンクデータを伝送するステップと を具備することを特徴とする方法。」(下線は補正箇所を示す。) 2.補正の目的 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である端末の上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法において、「絶対送信率情報が前記第2の端末識別子を有する場合に、前記基地局から伝送される相対送信率情報を無視するステップ」を追加するもので、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「Ericsson,E-DCH scheduling -UE grant procedures,3GPP TSG-RAN WG1 #38bis,2004年9月24日,R1-041185,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_38bis/Docs/R1-041185.zip」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 a)「1.Introduction At the joint RAN1/RAN2 session in Prague, August 2004, a framework for the downlink signaling with respect to E-DCH scheduling was agreed upon: ・Absolute scheduling grants, received on a shared channel. These are multi-bit grants, containing (at least) the identity of the UE (or group of UEs) for which the grant is intended and an upper limit on the amount of uplink resources the UE(s) may use. ・Relative scheduling grants, received on a dedicated resource and consisting of (at least) one bit.」(第1頁 「1.Introduction」の項、下線は当審で付与、以下同様) (当審訳;1.イントロダクション 2004年8月、プラハのジョイントRAN1/RAN2セッションでは、E-DCHスケジューリングに関してのダウンリンク・シグナリング用のフレームワークにおいて、次の点で一致しました: ・共有チャンネル上で受信された、絶対スケジューリング許容情報。これらは、マルチビットの情報であり、その情報を使用するUE(又は特定のグループに所属するUEs)のIDと、そのUE(s)が用いるアップリンクリソース量の上限を少なくとも含んでいる。 ・提供されたリソースで受信され、(少なくとも)1ビットからなる、相対スケジューリング許容情報。) b)「2.Scheduling Grants 2.1.Absolute GrantsAbsolute grants should contain the identity of the UE(s) for which the grant is intended and an upper limitation on the amount of resources the UE(s) may use. This was already agreed upon at the joint RAN1/RAN2 session in Prague. To reduce scheduling delays, it is beneficial to define an additional identity, NON_BUSY, in which case UEs can start transmitting without a previous request phase [4][5]. A BUSY identity can also be defined to allow for cell wide rate adjustments as described in [4]. Note that the inclusion of BUSY and NON_BUSY does not mandate the Node B to utilize them, but provides with additional freedom in the design of the scheduling algorithm. Proposal: The ID field on the shared grant channel can, in addition to the identity of any UE, also take the values BUSY and NON_BUSY. 2.2.Relative GrantsRelative grants should consist of a single, three-valued bit taking the either of the values UP, HOLD, or DOWN. Multi-bit signaling of relative grants requires additional resources in terms of downlink power and does not provide any benefits as an absolute grant can be used for large changes of the resource limitation in a UE. Proposal: A relative grant is a single bit taking one of the values UP, HOLD, or DOWN.」(第1頁、「2.1.Absolute Grants」、「2.2.Relative Grants」の項) (当審訳;2.スケジューリング許容情報 2.1.絶対許容情報(以下、当審では、「AG」という。) AGは、その情報を使用するUE(s)のIDと、そのUE(s)が用いるアップリンクリソース量の上限を含んでいる。これは、プラハの共同のRAN1/RAN2セッションで既に合意されていました。スケジューリング遅れを減ずるために、追加ID(NON_BUSY)を定義することは有益です。その場合には、UEは、前のリクエストフェーズ(参照[4]、[5])なしで送信し始めることができます。 ID(BUSY)も、参照[4]で示されているように、セルのワイドレート調整を許可するために定義されます。注: BUSYとNON_BUSYを含むものは、それらを利用するように、ノードBへ要求しないが、スケジューリング・アルゴリズムの設計において、自由に追加的に規定を設けます。 提案:共有許容情報チャンネルのIDフィールドは、あるUEのIDに加えて、BUSYおよびNON_BUSYの値をとることができます。 2.2.相対許容情報(以下、当審では「RG」という。) RGは単一の3つの値をもつビットから成るべきです、それは、UP、HOLDあるいはDOWNのいずれかの値を持っています。RGのマルチ・ビット・シグナリングはダウンリンク・パワーの期間に追加の資源を要求し、AGがUEのリソース制限の大きく変化するに使用することができるような、利点を備えていません。 提案:RGは、UP、HOLDあるいはDOWNの値の一つをとるシングル・ビットです。) c)「2.4.Precedence of Grants The absolute grants are used to rapidly change the resource utilization of a UE, but a certain UE may not be addressed in every TTI. The relative grants are transmitted frequently (once per TTI) but allow only a small adjustment for each transmission. If the relative grants have priority over the absolute grants, the purpose and advantages of an absolute grant disappear. Thus, the basic principle should be that absolute grants have priority over relative grants. 」(第2頁、「2.4.Precedence of Grants」の項) (当審訳;2.4.許容情報の優先権 AGは、UEのリソース利用を素早く変更するために使用されます。しかし、あるUEはすべてのTTIにアドレスされるとは限らないかもしれません。RGは、頻繁に(一回のTTI毎に)送信されるが、各送信当たり小さな調整だけを許可します。RGにAGに対する優先権がある場合、AGの目的および利点は消えます。したがって、基本原理は、AGにRGに対する優先権があるということです。) d)「3.UE Behavior In the following, the proposed UE behavior with respect to scheduling grants is summarized. For each TTI, the UE shall: ・Set the overload indicator to “red” if at least one non-serving cell indicates “red”. Otherwise, set the overload indicator to “green”. ・If the overload indicator is set to “red” *Reduce the upper limit on E-DCH resources the UE may use in this TTI. The relative reduction shall be larger the larger the current resource utilization is. Higher layer signaling can be used to control the amount of reduction. ・If the overload indicator is set to “green” *decode the fields in the SGCH *if the ID field equals the identity of the UE ・set the upper limit on E-DCH resources to the value indicated on the SGCH *if the ID field equals the BUSY value and the UE has a valid grant ・set the upper limit on E-DCH resources to the minimum of the value indicated on the SGCH and the amount of resources used in the previous TTI *if the ID field equals NOT_BUSY ・if UE did not transmit E-DCH data in the previous TTI and has E-DCH data to transmit ・set the upper limit on E-DCH resources to the value indicated on the SGCH *if the ID does not equal the identity of the UE, BUSY or NON_BUSY ・update the upper limit on E-DCH resources according to the relative grant received from the serving cell. ・Perform TFC selection of DCH and E-DCH, obeying the upper limit on E-DCH resources utilization. ・If the E-DCH transport format selected does not utilize all granted resources (and this condition has been present for x consecutive TTIs) *Set the upper limit on the E-DCH resources to match the selected transport format.」(第3?4頁、「3.UE Behavior」の項、なお、原文では「*」の箇所は「白丸」であるが、起案で使用できないので「*」で代用している。) (当審訳;3.UEの動作 下記では、スケジューリング許容に関しての提案されたUE動作が要約されています。 各TTIにおいて、UEは以下のことをするものとします: ・少なくとも一つのノンサービングセルが「赤」を示す場合、「赤」に過負荷指標をセットします。もしそうでなければ、「緑」に過負荷指標をセットしてください。 ・過負荷指標が「赤」にセットされた場合、 *UEがこのTTIの中で使用する可能性のある、E-DCHリソースにおける上限を減少させます。現在の資源利用が大きければ大きいほど、相対的な縮小はより大きいとします。より高い層シグナリングは減少量をコントロールするために使用することができる。 ・過負荷指標が「緑」にセットされた場合、 *SGCHの中のフィールドを解読する *IDフィールドがそのUEのIDと等しい場合 ・E-DCHリソースにおける上限値を、SGCHの上で示された値にセットする *IDフィールドがBUSYと等しく、そのUEには有効な許容がある場合 ・E-DCHリソースにおける上限値を、SGCHの上で示された値及び前のTTIの中で使用されるリソース量との最小量に、上限をセットする *IDフィールドがNOT_BUSYと等しい場合 ・UEが前のTTIでE-DCHデータを送信せず、送信するべきE-DCHデータがある場合 ・E-DCHリソースにおける上限値を、SGCH上で示された値にセットする *そのIDがUEのID、BUSYあるいはNON_BUSYと等しくない場合 ・E-DCHリソースにおける上限値をサービスセルからのRGに従って更新する。 ・E-DCHリソース利用における上限値に従って、DCHおよびE-DCHのTFC選択を行なう。 ・選択されたE-DCH伝送フォーマットがすべての許容資源(そして、この状況はxの連続するTTIには存在している)を利用しない場合 *E-DCHリソースにおける上限値を選択された伝送フォーマットに一致させて、セットする。) これらの記載によれば、引用例1には、 「E-DCHスケジューリングに関して、 .絶対許容情報(AG)は、その情報を使用するUE(s)のIDと、そのUE(s)が用いるアップリンクリソース量の上限を含んでおり、 相対許容情報(RG)は、単一の3つの値をもつビットから成り、それは、UP、HOLDあるいはDOWNのいずれかの値を持っており、 UEにおいて、 SGCHの中のフィールドを解読し、 IDフィールドがそのUEのIDと等しい場合には、E-DCHリソースにおける上限値を、SGCHの上で示された値にセットし、 そのIDがUEのID、BUSYあるいはNON_BUSYと等しくない場合には、 E-DCHリソースにおける上限値をサービスセルからのRGに従って更新し、 E-DCHリソース利用における上限値に従って、DCHおよびE-DCHのTFC選択を行なう」との発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「AG」は、本願補正発明の「絶対送信率情報」に相当し、以下同様に、「RG」は「相対送信率情報」に、また、「UE」は、「移動通信システムにおける端末」に相当する。そして、引用例1記載の発明の「AG」、「RG」は、基地局から送られてきていることは明らかである。 また、引用例1記載の「UEのID」は、本願補正発明の「第2の識別子」に相当し、引用例1記載の「UEのID、BUSYあるいはNON_BUSYと等しくない」IDは、本願補正発明の「第1の識別子」に相当する。 そして、引用例1記載の発明は、上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末の上りリンクデータの伝送をスケジューリングするものであることは、明らかである。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末の上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法であって、 基地局から上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の絶対値を示す絶対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報があらかじめ割り当てられた第1または第2の端末識別子を有するか否かを判断するステップと、 前記絶対送信率情報が前記第1の端末識別子を有する場合に、前記基地局から前記上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の変化を示す相対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報と前記相対送信率情報のうちの少なくともいずれか1つを使用して決定された最大の許容送信率内で、上りリンクデータを伝送するステップと を具備することを特徴とする方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明は、絶対送信率情報が前記第2の端末識別子を有する場合に、前記基地局から伝送される相対送信率情報を無視するステップを有するのに対し、引用例1記載の発明は、無視するステップを有すかどうか明らかではない点。 5.相違点の判断 <相違点1について> 引用例1の上記摘記したc)には、「基本原理は、AGにRGに対する優先権がある」と記載されており、当該記載を参酌すれば、絶対送信率情報が前記第2の端末識別子を有する場合には、絶対送信率情報を優先するため、引用例1記載の発明において、相違点1に係る構成を採用することに何らの困難性はない。 そして、本願補正発明が奏する作用、効果についてみても、引用例1記載の発明から当業者が予想できる程度のものである。 よって、本願補正発明は、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成21年5月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年11月4日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末の上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法であって、 基地局から上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の絶対値を示す絶対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報があらかじめ割り当てられた第1または第2の端末識別子を有するか否かを判断するステップと、 前記絶対送信率情報が前記第1の端末識別子を有する場合に、前記基地局から上りリンクデータの伝送のための最大の許容送信率の変化を示す相対送信率情報を受信するステップと、 前記絶対送信率情報と前記相対送信率情報のうちのいずれか1つを使用して決定された最大の許容送信率内で、上りリンクデータを伝送するステップと を具備することを特徴とする方法。」 第4 引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2の3.引用例」に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「絶対送信率情報が前記第2の端末識別子を有する場合に、前記基地局から伝送される相対送信率情報を無視するステップ」を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の5.相違点の判断」に記載したとおり、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-22 |
結審通知日 | 2011-07-26 |
審決日 | 2011-08-11 |
出願番号 | 特願2005-321420(P2005-321420) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中元 淳二 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
江口 能弘 大野 克人 |
発明の名称 | 上りリンクパケットデータサービスを支援する移動通信システムにおける端末識別子を使用する上りリンクデータの伝送をスケジューリングする方法及び装置 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |