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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1249074
審判番号 不服2010-15387  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-09 
確定日 2011-12-21 
事件の表示 特願2002-235409「光学システム及び光学素子の調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月23日出願公開、特開2003-121795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年8月13日(パリ条約による優先権主張2001年8月20日、米国)の特許出願であって、平成20年4月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月24日に手続補正がなされたが、平成22年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項に係る発明は、平成20年10月24日に補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「第1の偏光を備えた第1の周波数成分と第2の偏光を備えた第2の周波数成分とを有するヘテロダインビームを発生するレーザ系と、表面の垂線に対して非零の入射角度で入力ビームを受信するように向きづけられており、前記ヘテロダインビームを前記第1、第2の周波数を備えた第1、第2のビームにそれぞれ分離し、前記第1、第2のビームから測定ビームと基準ビームとを発生する、コーティングされた偏光ビームスプリッタと、を具備する干渉光学系。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開平7-208912号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。

A 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のビーム成分を有する放射ビームを発生する放射源ユニットであって、コヒーレントな放射ビームを発生する放射源と、ビームスプリッタと、このビームスプリッタにより形成した2個のサブビーム間に周波数差を発生させる音響光学変調装置と、この変調装置から出射した2本のサブビームを1本のビームに結合するビーム結合素子とを具える放射源ユニットに関するものである。さらに、本発明はこのような放射源ユニットを具える干渉計並びに2個の物体の相対位置を検出する装置に関するものである。…」

B 「【0045】本発明の別の概念によれば、波長安定化されたレーザの成分の周波数差をほとんど放射損失が生ずることなく相当減少させることができる。この目的を実現する実施例を図8に示す。波長安定化したレーザ90から周波数差が例えば640MHzの2個の相互に直交する方向に偏光したビーム成分を放出する。ウォルストンプリズム4によりビーム91を2本のサブビーム92及び93に分離する。これらレーザビームは互いに直交する偏光方向を有し音響光学変調器40を互いに異なる方向に伝搬する。この変調器は、周波数が例えば310MHzの信号S(fs )により駆動する。この結果、一方のサブビームの光周波数は310MHzだけ減少し、他方のサブビームの周波数は310MHz増大し、変調器を出射するサブビーム間の周波数差すなわち出射ビーム30のビーム成分間の周波数差は20MHzとなる。この周波数差は、音響周波数fs を適切に選択することにより任意の値に調整することができるので、波長安定化されたレーザを有する放射源ユニットを一層広い用途に対して用いることができる。
【0046】同様に、干渉計装置に用いられる例えば500KHzの比較的小さい周波数差を有する2本のビーム成分を発生するゼーマンレーザの使用範囲を拡大することができる。この放射源ユニットは図8に示す実施例の波長安定化されたレーザ90をゼーマンレーザで置き換えることにより得ることができる。
【0047】図1,2,3,4,5又は6に示す実施例に用いる放射源は波長安定化されたレーザ又はゼーマンレーザとすることもできる。」

C 「【0050】本発明による放射源ユニットの全ての実施例は音響光学変調器を用いているが、ビームスプリッタ及びビーム結合素子として種々の型式の素子を用いることができ、放射源ユニット用のビームスプリッタ及びビーム結合素子は常に同一の型式ものとする。これらの素子は以下の素子で構成することができる。
・複屈折性のプレート及び楔
・ノマールスキー(Nomarski), ギラード(Girard)又はフランコン(Francon) によるウォルストンプリズムのような種々の型式のウォルストンプリズム
・フレネルプリズム、コイスタプリズム及びロッションプリズム
・偏光感知分離プリズム
・位相格子のような回折格子」

D 「【0058】上述したように、本発明による放射源ユニットは例えば物体の線形変位量を測定する干渉計に好適に用いることができる。この干渉性を図14に示す。この干渉計の構成及び動作は1969年に発行されたフィリップス テクニカル レビューのNo.6,7、第160頁?第165頁に記載されている文献“ディスプレイスメント メジャメント ウイズ ア レーザ インタフェロメータ(Displacement Measurement with a laser interferometer)に記載されている。この既知の干渉計は放射源ユニットとしてゼーマンレーザを用いているが、新しい干渉計では以後の図面に基づいて説明する構成の放射源ユニットを用いることができる。図14に示すように、放射源ユニット150から出射したビームbは異なる周波数fa 及びfb を有する2個の互いに直交する偏光成分を有し、このビームbをニュートラルビームスプリッタ151により測定ビームbm と基準ビームbr とに分割する。測定ビームbm は反射器152によりビームスプリッタ151の方向に反射する。」

上記Aに記載される放射源ユニットの放射源は、上記Bに記載される実施例においては、互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のビーム成分を有するレーザであることが理解される。また、このとき、上記Aに記載される放射源ユニットの音響光学変調装置は、2個のサブビーム間の周波数差を増減させるものであることが理解される。
また、上記Dの記載を参照すると、上記Aに記載される干渉計が干渉光学系を有することは明らかであり、その干渉光学系は、上記Aに記載される放射源ユニットから測定ビームと基準ビームを発生するものであることが理解される。

したがって、引用例には、
「互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のビーム成分を有する放射ビームを発生する放射源ユニットを具える干渉計の干渉光学系であって、コヒーレントな互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のビーム成分を有する放射ビームを発生するレーザでなる放射源と、この放射ビームを互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のサブビームに分離するビームスプリッタと、このビームスプリッタにより形成した2個のサブビーム間の周波数差を増減させる音響光学変調装置と、この変調装置から出射した2本のサブビームを1本のビームに結合するビーム結合素子とを具え、この結合されたビームから測定ビームと基準ビームを発生する干渉光学系。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「放射源」は、「レーザ」でなり、「互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のビーム成分を有する放射ビームを発生する」ものであるから、本願発明の「第1の偏光を備えた第1の周波数成分と第2の偏光を備えた第2の周波数成分とを有するヘテロダインビームを発生するレーザ系」であるといえる。
また、引用発明の「ビームスプリッタ」は、放射源からのビームを互いに直交する方向に偏光し互いに異なる周波数の2個のサブビームに分離するものであり、また、引用発明において、「測定ビーム」と「基準ビーム」は、このビームスプリッタにより分離された2本のサブビームから発生されるから、引用発明の「ビームスプリッタ」と本願発明の「ビームスプリッタ」はともに、「前記ヘテロダインビームを前記第1、第2の周波数を備えた第1、第2のビームにそれぞれ分離し、前記第1、第2のビームから測定ビームと基準ビームとを発生する、偏光ビームスプリッタ」であるといえる。

以上のことから、両者は、
「第1の偏光を備えた第1の周波数成分と第2の偏光を備えた第2の周波数成分とを有するヘテロダインビームを発生するレーザ系と、前記ヘテロダインビームを前記第1、第2の周波数を備えた第1、第2のビームにそれぞれ分離し、前記第1、第2のビームから測定ビームと基準ビームとを発生する、偏光ビームスプリッタと、を具備する干渉光学系。」の点で一致する。
一方、両者は、次の点で相違する。
本願発明は、「偏光ビームスプリッタ」が『「表面の垂線に対して非零の入射角度で入力ビームを受信するように向きづけられており、」「コーティングされた」「偏光ビームスプリッタ」』であるのに対し、引用発明のビームスプリッタがこのようなものであるか不明な点。

なお、本願明細書には、『「第1の偏光を備えた第1の周波数成分と第2の偏光を備えた第2の周波数成分とを有するヘテロダインビーム」を「前記第1、第2の周波数を備えた第1、第2のビームにそれぞれ分離」する「偏光ビームスプリッタ」』の機能を果たす偏光ビームスプリッタとして、本願図面の図2において符号220で示される蒸着偏光ビームスプリッタ220と符号292で示される偏光ビームスプリッタ292が記載されており、これらは、引用例の記載でいえば、それぞれ「ウォルストンプリズム4」と「ニュートラルビームスプリッタ151」に対応するものであると認められるところ、偏光ビームスプリッタ292について「表面の垂線に対して非零の入射角度で入力ビームを受信するように向きづけられているコーティングされた偏光ビームスプリッタ」である旨の記載は本願明細書になく、「表面の垂線に対して非零の入射角度で入力ビームを受信するように向きづけられているコーティングされた偏光ビームスプリッタ」として記載されているのは蒸着偏光ビームスプリッタ220のみであることから、本願発明の「コーティングされた偏光ビームスプリッタ」は、本願明細書に記載される偏光ビームスプリッタ292ではなく、蒸着偏光ビームスプリッタ220であるとして、上記一致点及び相違点の認定を行った。

4.相違点についての検討
引用例には、上記2.Cのように、ビームスプリッタとして種々の型式の素子を用いることができる旨記載されているところ、表面の垂線に対して非零の入射角度で入力ビームを受信するように向きづけられているコーティングされた偏光ビームスプリッタは、例えば、原査定の拒絶理由において引用された特開昭63-249122号公報(第3図において偏光分離膜41が形成された第1偏光分離プリズム4の入射面42に対して光線101が垂直に入射していない点、また、第1図において偏光分離膜11が形成された第1偏光分離プリズム1への入射角がα_(1)である点。)、その他、特開昭59-129950号公報(第2図において光ビーム30aは多層膜形成面23を有する偏光ビーム・スプリッタ19aの一境界面24に入射角δ_(1)で入射している点。)、特開昭61-140802号公報(第1?3図においてビームスプリッタ入射面は入射光3に対して傾いている点、なお、第3頁左下欄第2?6行に「本発明第5?8図においては、ビームスプリッタ入射面は入射光3に対して傾いているので該入射面における反射光は光源の方には戻らず、レーザ等のコヒーレント光源の出力を不安定にするという問題は生じない。」と記載されているが、発明の詳細な説明の記載からみて「第5?8図」は「第1?4図」のことであると認められる。)、特開平3-96930号公報(第5図及び第6図において2つのガラスプリズムPr1及びPr2並びに誘電性多重層VSからなる偏光ビームスプリッターPBSを傾斜している点。)、特開平4-321001号公報(図2のように2つのプリズムを偏光分離膜を介して密着配置した偏光分離素子において、入射光9をプリズムの入射面に対して斜めに入射している点。)、特開平5-173020号公報(図3において偏光膜41を有する偏光ビームスプリッタ40の入射面42に対して傾いた入射角で光が入射している点。)にみられるように周知であるから、引用発明におけるビームスプリッタとしてこのような周知の偏光ビームスプリッタの構成を採用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-21 
結審通知日 2011-07-27 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2002-235409(P2002-235409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 正  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 吉野 公夫
北川 創
発明の名称 光学システム及び光学素子の調整方法  
代理人 加藤 公久  

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