• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1249339
審判番号 不服2010-13737  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2011-12-26 
事件の表示 特願2005-142255「有機電界発光素子及び有機電界発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-318837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年(2005年)5月16日の出願(特願2005-142255号)であって、平成21年12月2日付けで拒絶理由が通知され、平成22年2月18日付けで意見書が提出されるとともに、同時に手続補正がなされ、同年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成23年4月13日付けで前置報告書の内容について請求人の意見を求める審尋がなされ、同年8月2日付けで回答書が提出された。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年6月23日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「電極の間に挟まれた少なくとも1種類以上の薄膜層と、前記薄膜層の少なくとも1つは、前記電極を通じて薄膜層に正と負の電荷が注入され、輸送されて、前記正と負の電荷により生成された正孔と電子の再結合により光を発生する有機発光層、又は前記有機発光層からの光を受けて二次的に光を発生させる蛍光若しくは燐光層であって、前記電極の少なくとも1つは電荷が注入される金属酸化物からなる有機電界発光素子において、
前記金属酸化物からなる電極の表面から深層部までの元素組成比が一定化されていることを特徴とする有機電界発光素子。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-170666号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称する場合がある。)およびその製造方法に関し、特に、定電流駆動による電圧上昇が極めて小さいとともに、長寿命の有機EL素子およびその製造方法に関する。」

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平11-126689号公報に開示された製造方法では、基板表面の凹凸を問題としているものの、陽極層の表面組成については何ら考慮しておらず、陽極層と、有機物層との間の密着性の改善としてはいまだ不十分であった。また、通常のRFスパッタ装置を用いているため、基板と、ターゲットの間の距離が狭く、逆スパッタ処理の条件変更が困難であるという問題も見られた。したがって、特開平11-126689号公報に開示された製造方法によって得られる有機EL素子では、定電流駆動させた場合の駆動電圧の上昇を抑制することが困難であり、情報表示機器や車載表示機器における実用上の性能を満足できるものではなかった。この点、駆動電圧の上昇の理由として、陽極層の表面に電荷注入性を低下させる表面欠陥が存在し、駆動電圧の上昇が生じることが見出されている。すなわち、かかる表面欠陥部分は、陽極層の表層部に存在する10Å程度の薄層であって、陽極層内部(バルク)とは異なる組成を有している。この表面欠陥は、有機EL素子の製造過程で不可避的に形成されるものであり、例えば、陽極層表面の洗浄工程、あるいはパターニング工程のエッチング残さ等に起因し、または、陽極層表面への水分吸着や、陽極層のバルクに含まれる微量不純物原子、例えばSn原子の析出等により形成されるものと推定されている。
【0008】そこで、本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、陽極層そのものを改質して表面欠陥を減少させること、より具体的には、陽極層表面における表面欠陥を減少させて、陽極層内部と、陽極層表面との組成関係を関係付けることにより、有機物層との間の密着性を効果的に改良することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、定電流駆動時の電圧上昇が小さく、かつ長寿命の有機EL素子を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような長寿命の有機EL素子が効率よく得られる製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、陽極層と陰極層との両電極層間に、少なくとも発光層を含む有機層を挟持した有機EL素子において、陽極層の表面におけるX線光電子分光法(XPS)によって測定されるIn原子の3d_(5/2)軌道に由来するスペクトルピーク(以下、In3d_(5/2)スペクトルピークと称する場合がある。)の半値幅(以下、FWHM(Full Width at Half Maximum)と称する場合がある。)を〔In3d_(5/2)〕_(h)とし、陽極層の内部におけるIn3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅を〔In3d_(5/2)〕_(n)としたときに、当該半値幅の比率(〔In3d_(5/2)〕_(h)/〔In3d_(5/2)〕_(n))を0.9?1.2の範囲内の値とした有機EL素子が提供され、上述した問題を解決することができる。このように陽極層の表面と、陽極層の内部とのIn3d_(5/2)スペクトルピークにおける半値幅〔In3d_(5/2)〕の比率を所定範囲内の値に制限することにより、表面欠陥の存在割合を少なくすることができる。したがって、定電流駆動時の電圧上昇が小さく、かつ長寿命の有機EL素子を提供することができる。」

「【0011】また、本発明の有機EL素子を構成するにあたり、陽極層の表面に、逆スパッタ処理を施してあることが好ましい。このように構成することにより、陽極層の表面における表面欠陥を効果的に減少させることができる。
【0012】また、本発明の有機EL素子を構成するにあたり、逆スパッタ処理が、誘導結合型RFプラズマ支援マグネトロンスパッタ(ICMS)による逆スパッタ処理であることが好ましい。このように構成することにより、陽極層の表面における表面欠陥を効果的に減少させることができ、陽極層内部の組成と、陽極層表面との組成を実質的に同一とすることができる。」

「【0024】
【発明の実施の形態】[第1の実施形態]第1の実施形態は、陽極層と陰極層との両電極層間に、陽極層の表面におけるX線光電子分光法(XPS)によって測定されるIn3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅〔In3d_(5/2)〕_(h)と、陽極層の内部におけるIn3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅〔In3d_(5/2)〕_(n)との比率(〔In3d_(5/2)〕_(h)/〔In3d_(5/2)〕_(n))を0.9?1.2の範囲内の値とした有機EL素子である。以下、陽極層が透明電極であると想定し、図1および図2等を適宜参照しながら、第1の実施形態の有機EL素子を説明する。
【0025】(1)基板
図2に示す有機EL素子50における基板40としては、透明性があって、十分な剛直を有する材料であることが好ましい。このような基板を配置することにより、耐衝撃性等の機械的強度を高めるとともに、EL発光を外部に効果的に取り出すことができる。また、このような基板の構成材料としては、例えば、ガラス板、セラミック板、プラスチック板(ポリカーボネート、アクリル、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル樹脂等)等を挙げることができる。
【0026】(2)陽極層1
図2に示す有機EL素子50における陽極層38の構成材料としては、仕事関数が大きい材料(例えば、4eV以上)を使用することが好ましく、例えば、ITOやIZO等が挙げられる。また、その他のアモルファス性透明導電酸化物や、あるいはAg等の導電性が高い金属を薄膜で積層したものや、サンドイッチ型としたものも好ましい。また、陽極層から発光を外部に取り出す場合、陽極層の透過率を10%以上の値とすることが好ましく、50%以上の値とすることがより好ましい。また、駆動電圧を低下できることから、陽極層のシート抵抗を、1,000Ω/□以下の値とすることが好ましく、500Ω/□以下の値とすることがより好ましい。さらに、陽極層の膜厚は材料にもよるが、通常10nm?1μmの範囲内の値とすることが好ましく、10?200nmの範囲内の値とすることがより好ましい。なお、陽極層は、構成材料を蒸着法やスパッタリング法等の方法により、容易に形成することができる。
【0027】(3)陽極層2
図2に示す有機EL素子50における陽極層38は、例えばITOやIZOから構成されており、これらの陽極層38に表面欠陥が存在する場合、通常次のような特徴が認められる。
〔1〕(当審注:〔1〕は丸に囲まれた数字“1”を意味する、以下同様)Snの陽極層表面における析出、Znの陽極層表面での欠損により、相対的に陽極層内部ではSn濃度が低下したり、Zn濃度が増加したりしている。
〔2〕酸素空孔が陽極層表面で減少し、陽極層表面における酸素原子の量が、陽極層内部の酸素原子量に比べて大きい。
〔3〕表面に水分等の不純物が吸着している。
〔4〕バルク中に含まれる微量不純物が陽極層表面へ析出する。また例えば、窒素、フッ素、Na等の金属イオン等が存在している。
【0028】そこで、表面欠陥が存在すると、その欠陥の状況によりIn原子の(結合)価数が変化し、結果的にInの内殻電子のエネルギー状態が変化することを利用して、X線光電子分光法により、スペクトルピークの半値幅を測定して、特定することができる。すなわち、図3および図13に示すように、陽極層の表面および陽極層の内部におけるIn3d_(5/2)スペクトルピーク(横軸に結合エネルギー(eV)を採り、縦軸にピーク強度を採ったスペクトルピーク)をそれぞれ測定し、当該スペクトルピークから、陽極層の表面におけるIn3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅〔In3d_(5/2)〕_(h)と、陽極層内部におけるIn3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅〔In3d_(5/2)〕_(n)とを算出することができる。
【0029】次いで、これら半値幅の比率(〔In3d_(5/2)〕_(h)/〔In3d_(5/2)〕_(n))を算出し、その比率を0.9?1.2の範囲内の値に制御することにより、表面欠陥の問題を回避することができる。この理由は、かかる半値幅の比率が0.9未満の値となると、陽極層の表面および陽極層の内部における組成が異なることになり、逆に定電流駆動時の電圧上昇が大きくなる場合があるためであり、一方、かかる半値幅の比率が1.2を超えると、表面欠陥が多くなり、定電流駆動時の電圧上昇が大きくなる場合があるためである。したがって、かかる半値幅の比率を0.95?1.15の範囲内の値とすることがより好ましく、1?1.1の範囲内の値とすることがさらに好ましい。」

「【0036】この図6に示される、記号Aで示されるチャートを波形分離して得られるチャートをA1、A2として図7に示す。同様に、図6に示されるチャートBを波形分離して得られるチャートをB1、B2およびB3として図8に示す。これらの波形分離チャートから、大気圧下にカーボン付のITOを長時間放置した場合、ITO表面の組成が変化し、表面不良層が生成することがわかる。また、大気暴露10時間までは、酸素1sチャートは記号Aと比べて、顕著に変化しないことから、カーボン保護膜を成膜後しばらくは(5?10時間)、表面不良層が除去された状態を維持していることも理解される。一方、陽極層における表面欠陥の存在を推定するにあたり、X線光電子分光法(XPS)により、In3d_(5/2)スペクトルピークにおける半値幅や、酸素1sスペクトルピークを測定するかわりに、陽極層の表面における原子濃度比〔Sn/In〕_(h)と、陽極層の内部における原子濃度比〔Sn/In〕_(n)とを測定し、その比率(〔Sn/In〕_(h)/〔Sn/In〕_(n))を比較することも考えられる。しかしながら、XPSを用いたとしても、測定されるSnおよびInの濃度がばらつき、陽極層の表面および内部での原子濃度比〔Sn/In〕を正しく測定することができないことが判明している。」

「【0037】(5)陰極層
図2に示す有機EL素子50における陰極層32の構成材料としては、仕事関数が小さい材料(例えば、4eV未満)を使用することが好ましく、例えば、金属、合金、電気伝導性化合物等が挙げられる。このような構成材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム・カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属
などが挙げられる。
【0038】また、陰極層のシート抵抗についても、1,000Ω/□以下の値とすることが好ましく、500Ω/□以下の値とすることがより好ましい。 また、陰極層の膜厚については、10nm?1μmの範囲内の値とすることが好ましく、50?200nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。なお、陰極層についても、構成材料を蒸着法やスパッタリング法等の方法で、薄膜として形成させることができる。
【0039】(6)有機層
図2に示す有機EL素子50における有機層34としては、再結合領域および発光領域を有するものが用いられる。この再結合領域および発光領域は、通常発光層に存在するため、本発明においては、有機層として発光層のみを用いてもよいが、必要に応じて、発光層以外に、たとえば正孔注入層、電子注入層、有機半導体層、電子障壁層、付着改善層などを形成することも好ましい。」

「【0043】(7)表面保護層
図2に示す有機EL素子50のように、陽極層38の表面に、表面保護層36を設けることが好ましい。このような表面保護層を形成することによって、その後に表面欠陥が発生することを有効に防止することができる。また、このような表面保護層を設けることにより、陽極と有機物層との密着性をさらに高めることができ、しかも有機EL素子の耐熱性をより向上させることもできる。」

「【0071】その結果、In原子についての3d_(5/2)の半値幅は、SiO_(2)/ITOの構成をもつ表面における値(SiO_(2)を介して測定したIn3d_(5/2)の半値幅)は1.85eVであり、ITO内部(深さ50Å)では、1.71eVであった。すなわち、ITO組成に関して、表面と、深さ50Åの内部とでは、顕著な差がないことがわかった。」

「【図2】



2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)を総合勘案すれば、引用例1には、
「基板40上に、順に、陽極層38、表面保護層36、有機層34、陰極層32を積層した有機EL素子50であって、
有機層34として再結合領域および発光領域を有する発光層、並びに、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、有機半導体層、電子障壁層、及び、付着改善層などが設けられ、
陽極層38の表面に、誘導結合型RFプラズマ支援マグネトロンスパッタ(ICMS)による逆スパッタ処理が施され、このように構成することにより、陽極層38の表面における表面欠陥を効果的に減少させることができ、陽極層38内部の組成と、陽極層38表面との組成を実質的に同一とすることができ、
より具体的には、陽極層38はITOで構成され、ITO組成に関して、表面と、深さ50Åの内部とでは、顕著な差がない有機EL素子50。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第4 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 対比
ここで、本願発明と引用発明を対比する。

引用発明において、「基板40上に、順に、陽極層38、表面保護層36、有機層34、陰極層32を積層した」こと、及び、「有機層34」が「発光層、並びに、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、有機半導体層、電子障壁層、及び、付着改善層などが設けられ」た層であることから、引用発明の「有機層34」が、本願発明の「電極の間に挟まれた少なくとも1種類以上の薄膜層」に相当する。

「有機発光層からの光を受けて二次的に光を発生させる」物質(ドーパント)を挿入することが有機電界発光素子の技術分野において周知の技術であることを踏まえると、引用発明の「有機層34」における「発光層」が「再結合領域および発光領域を有する」ものであることが、本願発明の「前記薄膜層の少なくとも1つは、前記電極を通じて薄膜層に正と負の電荷が注入され、輸送されて、前記正と負の電荷により生成された正孔と電子の再結合により光を発生する有機発光層、又は前記有機発光層からの光を受けて二次的に光を発生させる蛍光若しくは燐光層であ」ることに相当する。

引用発明の「陽極層38はITOで構成され」ていることが、本願発明の「前記電極の少なくとも1つは電荷が注入される金属酸化物からなる」ことに相当する。

引用発明の「有機EL素子50」が、本願発明の「有機電界発光素子」に相当する。

引用発明の「陽極層38の表面に、誘導結合型RFプラズマ支援マグネトロンスパッタ(ICMS)による逆スパッタ処理が施され、このように構成することにより、陽極層38の表面における表面欠陥を効果的に減少させることができ、陽極層38内部の組成と、陽極層38表面との組成を実質的に同一とすることができ、より具体的には、陽極層38はITOで構成され、ITO組成に関して、表面と、深さ50Åの内部とでは、顕著な差がない」ことが、本願発明の「前記金属酸化物からなる電極の表面から深層部までの元素組成比が一定化されている」ことに相当する。

2 本願発明と引用発明の一致点及び相違点、並びに、当審の判断
したがって、本願発明と引用発明とは、
「電極の間に挟まれた少なくとも1種類以上の薄膜層と、前記薄膜層の少なくとも1つは、前記電極を通じて薄膜層に正と負の電荷が注入され、輸送されて、前記正と負の電荷により生成された正孔と電子の再結合により光を発生する有機発光層、又は前記有機発光層からの光を受けて二次的に光を発生させる蛍光若しくは燐光層であって、前記電極の少なくとも1つは電荷が注入される金属酸化物からなる有機電界発光素子において、
前記金属酸化物からなる電極の表面から深層部までの元素組成比が一定化されていることを特徴とする有機電界発光素子。」の発明である点で一致し、両者に相違するところがない。
したがって、本願発明は、引用発明である。よって、本願発明は、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。

3 補足
請求人は、審判請求書及び平成23年8月2日付けで提出された回答書において、引用例1に記載の発明においては、In3d_(5/2)スペクトルピークの半値幅〔In3d_(5/2)〕_(h)を用いて測定したものであることから、引用例1における有機EL素子の陽極(ITO)においては表面と内部において元素組成が同じか異なるかが明確でない旨の主張している。しかしながら、仮に、引用例1における有機EL素子の陽極(ITO)においては表面と内部において元素組成が同じか異なるかが明確でないとしても、引用例1には、陽極層表面における表面欠陥を減少させて、陽極層内部と、陽極層表面との組成を同一化させようとすることが記載されている(【0007】【0012】【0029】等の記載参照)ことから、本願発明は引用発明(及び引用例1の記載)に基いて容易に想到しえたものといえるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、上記の請求人の主張は、本願発明は特許を受けることができないという結論に影響を与えるものではない。
なお、測定法については、請求項に特定されている事項ではなく、本願発明と引用発明の測定法の違いが本願発明の新規性進歩性に影響を与えるものではないことは言うまでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明が引用発明であることが明確でないとしても、本願発明は、引用発明に基いて容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-07 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-18 
出願番号 特願2005-142255(P2005-142255)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 113- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱野 隆  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
橋本 直明
発明の名称 有機電界発光素子及び有機電界発光装置  
代理人 小野寺 洋二  
代理人 小野寺 洋二  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ