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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1250090
審判番号 不服2009-2686  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-05 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2000-605434「移動通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月21日国際公開、WO00/56108〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、1999年3月16日を国際出願日とする出願であって、平成20年6月30日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年8月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年12月26日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し平成21年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月6日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成21年3月6日付けの手続補正についての却下の決定
[結論]
平成21年3月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正
平成21年3月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成20年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?22(以下それぞれ「補正前の請求項1」、「補正前の請求項2」などという。)を、平成21年3月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?16(以下それぞれ「補正後の請求項1」、「補正後の請求項2」などという。)に補正したものである。補正前の請求項1?22及び補正後の請求項1?16は、以下のとおりである。

補正前の請求項1?22
「 【請求項1】
無線接続されている加入者局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、上記伝送レートにしたがって上記データが含められる次フレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を当該加入者局に送信する基地局の変更要求手段と、上記基地局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局から次フレームの受信に使用するタイムスロットを変更する加入者局のタイムスロット変更手段とを備えた移動通信システム。
【請求項2】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を加入者局に送信すると、次フレームに含まれるデータから変更後のタイムスロットを使用して送信することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
基地局の変更要求手段は、加入者局に送信するデータの瞬時伝送量に応じて伝送レートを決定することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項4】
基地局の変更要求手段は、交換局から受信したデ-タのうち、加入者局に未送信のデータのデータ量からデータの瞬時伝送量を把握することを特徴とする請求項3記載の移動通信システム。
【請求項5】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を加入者局に送信する際、次フレームの伝送に使用するタイムスロットが予め仮想的に割り当てられた仮想チャネルメモリから当該タイムスロットの変更情報を取得して送信することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項6】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を加入者局に送信する際、タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を加入者局に送信することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項7】
加入者局のタイムスロット変更手段は、基地局から送信された予約情報に従ってタイムスロットの変更タイミングを決定することを特徴とする請求項6記載の移動通信システム。
【請求項8】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報及び予約情報を加入者局に送信後、加入者局のタイムスロット変更手段がタイムスロットを変更する前に、そのタイムスロットが使用不可になると、他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を加入者局に送信することを特徴とする請求項6記載の移動通信システム。
【請求項9】
加入者局のタイムスロット変更手段は、基地局の変更要求手段から他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局から受信するデ-タのタイムスロットを変更することを特徴とする請求項8記載の移動通信システム。
【請求項10】
基地局の変更要求手段は、データの伝送レートを上げる場合、基地局における送信機の送信可能電力を参照して伝送レート変更の良否を決定することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項11】
基地局の変更要求手段は、データの伝送レートを下げる場合、加入者局における受信機の受信感度と基地局における送信機の送信可能電力を参照して伝送レート変更の良否を決定することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項12】
無線接続されている基地局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、上記伝送レートにしたがって上記データが含められる次フレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を当該基地局に送信する加入者局の変更要求手段と、上記加入者局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記加入者局から次フレームの受信に使用するタイムスロットを変更する基地局のタイムスロット変更手段とを備えた移動通信システム。
【請求項13】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を基地局に送信すると、次フレ-ムに含まれるデ-タから変更後のタイムスロットを使用して送信することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。
【請求項14】
加入者局の変更要求手段は、基地局に送信するデータの瞬時伝送量に応じて伝送レートを決定することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。
【請求項15】
加入者局の変更要求手段は、マンマシンインタフェースから受信したデータのうち、基地局に未送信のデータのデータ量からデータの瞬時伝送量を把握することを特徴とする請求項14記載の移動通信システム。
【請求項16】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を基地局に送信する際、次フレームの伝送に使用するタイムスロットが予め仮想的に割り当てられた仮想チャネルメモリから当該タイムスロットの変更情報を取得して送信することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。
【請求項17】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を基地局に送信する際、タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を基地局に送信することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。
【請求項18】
基地局のタイムスロット変更手段は、加入者局から送信された予約情報に従ってタイムスロットの変更タイミングを決定することを特徴とする請求項17記載の移動通信システム。
【請求項19】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報及び予約情報を基地局に送信後、基地局のタイムスロット変更手段がタイムスロットを変更する前に、そのタイムスロットが使用不可になると、他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を基地局に送信することを特徴とする請求項17記載の移動通信システム。
【請求項20】
基地局のタイムスロット変更手段は、加入者局の変更要求手段から他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記加入者局から受信するデータのタイムスロットを変更することを特徴とする請求項19記載の移動通信システム。
【請求項21】
加入者局の変更要求手段は、データの伝送レートを上げる場合、加入者局における送信機の送信可能電力を参照して伝送レート変更の良否を決定することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。
【請求項22】
加入者局の変更要求手段は、データの伝送レートを下げる場合、基地局における受信機の受信感度と加入者局における送信機の送信可能電力を参照して伝送レート変更の良否を決定することを特徴とする請求項12記載の移動通信システム。」

補正後の請求項1?16
「 【請求項1】
無線接続されている加入者局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、タイムスロットの変更情報を当該加入者局に送信する基地局の変更要求手段と、上記基地局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局から受信するデータのタイムスロットを変更する加入者局のタイムスロット変更手段とを備え、
上記基地局の変更要求手段は、上記タイムスロットの変更情報を上記加入者局に送信する際、上記タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を上記加入者局に送信することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
基地局の変更要求手段は、加入者局に送信するデータの瞬時伝送量に応じて伝送レートを決定することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
基地局の変更要求手段は、交換局から受信したデ-タのうち、加入者局に未送信のデータのデータ量からデータの瞬時伝送量を把握することを特徴とする請求項2記載の移動通信システム。
【請求項4】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を加入者局に送信する際、次フレームの伝送に使用するタイムスロットが予め仮想的に割り当てられた仮想チャネルメモリから当該タイムスロットの変更情報を取得して送信することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項5】
加入者局のタイムスロット変更手段は、基地局から送信された予約情報に従ってタイムスロットの変更タイミングを決定することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項6】
基地局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報及び予約情報を加入者局に送信後、加入者局のタイムスロット変更手段がタイムスロットを変更する前に、そのタイムスロットが使用不可になると、他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を加入者局に送信することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項7】
加入者局のタイムスロット変更手段は、基地局の変更要求手段から他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局から受信するデ-タのタイムスロットを変更することを特徴とする請求項6記載の移動通信システム。
【請求項8】
無線接続されている基地局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、タイムスロットの変更情報を当該基地局に送信する加入者局の変更要求手段と、上記加入者局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記加入者局から受信するデータのタイムスロットを変更する基地局のタイムスロット変更手段とを備え、
上記加入者局の変更要求手段は、上記タイムスロットの変更情報を上記基地局に送信する際、上記タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を上記基地局に送信することを特徴とする移動通信システム。
【請求項9】
加入者局の変更要求手段は、基地局に送信するデータの瞬時伝送量に応じて伝送レートを決定することを特徴とする請求項8記載の移動通信システム。
【請求項10】
加入者局の変更要求手段は、マンマシンインタフェースから受信したデータのうち、基地局に未送信のデータのデータ量からデータの瞬時伝送量を把握することを特徴とする請求項9記載の移動通信システム。
【請求項11】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報を基地局に送信する際、次フレームの伝送に使用するタイムスロットが予め仮想的に割り当てられた仮想チャネルメモリから当該タイムスロットの変更情報を取得して送信することを特徴とする請求項8記載の移動通信システム。
【請求項12】
基地局のタイムスロット変更手段は、加入者局から送信された予約情報に従ってタイムスロットの変更タイミングを決定することを特徴とする請求項8記載の移動通信システム。
【請求項13】
加入者局の変更要求手段は、タイムスロットの変更情報及び予約情報を基地局に送信後、基地局のタイムスロット変更手段がタイムスロットを変更する前に、そのタイムスロットが使用不可になると、他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を基地局に送信することを特徴とする請求項8記載の移動通信システム。
【請求項14】
基地局のタイムスロット変更手段は、加入者局の変更要求手段から他のタイムスロットを指定するタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記加入者局から受信するデータのタイムスロットを変更することを特徴とする請求項13記載の移動通信システム。
【請求項15】
無線接続されている加入者局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、タイムスロットの変更情報を当該加入者局に送信する変更要求手段と、上記タイムスロットの変更情報を上記加入者局に送信する際、上記タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を上記加入者局に送信する予約要求手段とを備えた基地局。
【請求項16】
無線接続されている基地局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、タイムスロットの変更情報を当該基地局に送信する変更要求手段と、上記タイムスロットの変更情報を上記基地局に送信する際、上記タイムスロットの変更タイミングを指示する予約情報を上記基地局に送信する予約要求手段とを備えた加入者局。」

そこで、本件補正が、特許法17条の2第4項各号に規定する目的に該当するかについて以下に検討する。

(2)当審の判断
ア 補正前の請求項1と補正後の請求項1を比較すると、本件補正により、補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項である「上記伝送レートにしたがって上記データが含められる次フレームの送信に使用する」及び「次フレームの受信に使用する」が削除されている。したがって、この補正は、特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、この補正は、同項1号、3号及び4号に規定する請求項の削除、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

イ 補正前の請求項12と補正後の請求項8を比較すると、本件補正により、補正前の請求項12の発明を特定するために必要な事項である「上記伝送レートにしたがって上記データが含められる次フレームの送信に使用する」及び「次フレームの受信に使用する」が削除されている。したがって、この補正は、特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、この補正は、同項1号、3号及び4号に規定する請求項の削除、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

ウ 補正前の請求項1?22において、基地局及び加入者局を含む「移動通信システム」が特許請求されていたが、本件補正により、「基地局」又は「加入者局」のみを特許請求する補正後の請求項15及び16が新たに追加されている。この補正後の請求項15及び16を新たに追加する補正は、特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは明らかである。また、この補正は、同項1号、3号及び4号に規定する請求項の削除、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第4項の規定に違反する。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年法律24号改正附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
平成21年3月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正前の請求項1に記載された事項により特定される、前記2(1)に記載したとおりのものであると認める。

(1)引用例の記載
(a)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-153878号公報(平成9年6月10日出願公開。以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
【実施例】
実施例1.まず、必要な場合にデータスロットの数を減らし、その分、制御信号スロットの長さを長くして特殊データ領域を付加し、この領域を利用してデータ伝送を行う例を説明する。図1は、本発明の実施例1のデマンドアサイメント多元接続装置として、親局及びこの親局と無線回線で接続される複数の子局の内1つを示した図である。また、図2は実施例1のデマンドアサイメント多元接続装置の、親局と子局間で伝送される時分割フレームを示した図である。
【0020】まず、親局について説明する。図において、1はデータ回線に接続され、データの送受信を行うとともにデータ制御情報の送受信を行うデータ処理部である。2はスロット割り当て制御信号により指定されたデータスロットでデータを送受信するデータスロット部、3はスロット割り当て制御データ及びデータ処理部1からのデータを制御スロットを用いて送信し、送信要求スロットから子局の送信要求とデータを受信しデータの有無の制御情報を送信する制御スロット部である。4は切替信号に応じてデータ処理部1からのデータを、データとしてデータスロット部2に、または特殊データとして制御スロット部3に送り、また受信時は逆の伝送のために切替接続する回線スイッチ部(セレクタ)である。5はデマンドアサイン時分割多元接続を制御する付加制御部であり、データ処理部1または子局からの送信要求によりデータスロットの空きを制御し、制御スロット部3及びデータスロット部2にスロット割り当てデータを伝える。また、付加制御部5は上記のようにデータ処理部からのデータを、データか特殊データにするかで回線スイッチ部4の切替制御を行う。6は子局との無線回線を構築する送受信部である。
【0021】次に、子局について説明する。図において、101はデータ回線に接続され、データの送受信を行うと共にデータ制御情報の送受信を行うデータ処理部である。102はスロット割り当て制御信号により指定されたデータスロットでデータを送受信するデータスロット部、103は送信要求データ及びデータ処理部101からのデータを送信要求スロットを用いて送信し、制御スロットから親局からのスロット割り当て制御データとデータを受信しデータの有無の制御情報を送信する制御スロット部である。104は切替信号に応じてデータスロット部102からのデータ、または制御スロット部103からの特殊データをデータ処理部101に伝え、また送信時は逆に伝送するために切替接続する回線スイッチ部(セレクタ)である。105はデータ処理部101からの送信要求を制御スロット部103に送信し、制御スロット部103から受信したスロット割り当て制御信号を受信してデータスロット部102に使用データスロットを送信する付加制御部である。また、付加制御部105は上記のように受信したデータか、特殊データをデータ処理部に送るため、回線スイッチ部104の切替制御を行う。106は子局との無線回線を構築する送受信部である。
【0022】次に、図2について説明する。図においてRは親局から子局へ送信するスロット割り当て制御データ、Drは親局から子局へスロット割当制御データに付加して送信するデータで、R’は親局から複数の子局へR及びDrを送信するために専用に設けられた制御スロットである。Aは子局から親局へ送信する送信要求データ、Daは子局から親局へ送信要求データに付加して送信するデータで、A’は子局から親局へA及びDaを送信するために専用に設けられた送信要求スロットである。D1?Dnはデータ伝送用のデータスロットであり、親局により使用スロットは割り当てられる。
【0023】次に動作について説明する。通常動作は従来と変わらない。即ち、親局から子局へデータを送信する場合、データ処理部1が送信要求の制御情報を付加制御部5に伝え、送信要求を受けた付加制御部5は通常のデータ伝送であれば、回線スイッチ部4を切替制御してデータ処理部1をデータスロット部に接続させる。また、同時に付加制御部5はスロットの割当を処理し、制御スロット部3にスロット割当制御データを伝え、またデータスロット部2に使用スロットを伝える。制御スロット部3は、図2に示す制御スロットRを用いてスロット割当制御データを送信する。その後データスロット部2は制御部5よりデータスロットD1?Dnのうち割り当てられたスロットを用いて子局とデータの送受信が行われる。子局から親局へデータ送信も同様に行われる。」(段落【0019】?【0023】)

イ 「【0043】実施例6.ここでは状況が許す場合に優先したデータまたは多量のデータに対しては一度に複数のデータスロットを割り当てる例を説明する。図10は実施例6のデマンドアサイメント多元接続装置として、親局およびこの親局と無線回線で接続される複数の子局の内1つを示した図である。また図11は親局から子局への、また子局から親局への伝送フォーマットを示す図である。まず、親局について説明する。図において、5Cは通常の子局等からの送信要求でデータスロットを割り付ける制御の他に、本実施例ではトラフィック量または送信要求内容により割り付けるデータスロットの数も指定する機構を持つ。また、12はトラフィック量検出部11からのデータスロット使用情報を受け、データスロット制御部5Cからのデータスロット数を受信して割り当てるスロット数を設定するデータスロット数設定部である。その他の各要素は他の実施例と同様のものである。
【0044】子局の構成は実施例7と同様である。但し、105Cはスロット数制御部でデータ処理部101からの送信要求を制御スロット部103に送信するほか、本実施例では制御スロット部103で親局から受信したスロット割当制御信号を受けて、データスロット部102に使用データスロットを伝える。本実施例では一度に複数のデータスロットが指定される場合もある。
【0045】次に動作について説明する。親局からデータを送信する場合、例えば、図11に示すようにデータの前に要求スロット数を付加して送信要求制御データとしてデータ処理部1にデータを入力する。データ処理部1は送信要求制御データをスロット数制御部5Cに送り、スロット数制御部5Cはこの情報から要求するデータスロット数を検出し、トラフィック量検出部からのデータスロット使用状況も受信して、データスロット設定部12を制御する。また割り当てるスロットを決定し、子局に制御スロット部3を介して送信する。子局から親局にデータを送信する場合も、同様に図11に示すように、送信要求制御データに要求スロット数を付加してデータ処理部101にデータを入力する。データ処理部101から送信要求制御データがスロット数制御部105cに送られ、スロット数制御部105cは制御スロット部103を介して親局に送信する。これを親局は制御スロット部3経由でスロット数制御部5cにおいて受信し、子局の要求するデータスロット数を検出する。そして事情が許せば、即ち、トラフィック量検出部からのデータスロット使用状況を受けて、データスロット設定部12を制御する。また割り当てるスロットを決定し、データスロット部2と制御スロット部3を介して子局に送信する。
【0046】したがって、本実施例によれば割り当てるデータスロットをデータ量に応じて与えるので、多量のデータを伝送する子局に対してもデータ伝送時間が短縮でき、かつスロットの有効利用が可能となる。また、実施例6ではデータ処理1または101に入力するデータに要求スロット数を付加したが、データ処理部のデータ量を見て、スロット数制御部5cでスロット数を割り当てるようにしても同様の効果が得られる。」(段落【0043】?【0046】)

以上の記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「親局及びこの親局と無線回線で接続される複数の子局で構成されたデマンドアサイメント多元接続装置であって、
親局と子局間で伝送される時分割フレームは、親局から子局へ送信するスロット割当制御データなどを親局から複数の子局へ送信するために専用に設けられた制御スロットと、データ伝送用のデータスロットなどで構成され、
多量のデータに対して一度に複数のデータスロットを割り当て、親局から子局へ多量のデータを送信する場合、
親局において、データ処理部1のデータ量を見て、スロット数制御部5cで割り当てるデータスロット数を指定し、データスロット数設定部12を制御し、割り当てるデータスロットを決定し、制御スロット部3は、制御スロットを用いてスロット割当制御データを子局へ送信し、
子局において、制御スロット部103で親局から受信したスロット割当制御データを受けて、データスロット部102に使用データスロットを伝え、
割り当てられたデータスロットを用いて親局から子局へデータの送信が行われる、
デマンドアサイメント多元接続装置。」

(b)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開99/09680号(1999年2月25日国際公開。以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「技術分野
この発明は、時分割多重アクセス(Time Division Multiple Access;以下、TDMAという)方式、あるいは時分割・符号分割多重アクセス(以下、時分割CDMAという)方式を用いた、周波数チャネル共用あるいはタイムスロット共用を使用した移動通信システムに関し、特に上り回線(アップリンク;Up-Link)と下り回線(ダウンリンク;Down-Link)との通信容量が異なる1組の回線を1つの通信チャネル(以下、非対称通信チャネルという)とし得る機能を含んだ移動通信システムに関するものである。」(1頁3?11行)

イ 「実施の形態1.
第1図は、この発明によるタイムスロット共用・周波数チャネル共用システムが適用される移動通信システムの全体構成を示すシステム構成図である。図において、1、2および3は無線基地局であり、4および5はその無線基地局1あるいは2が構成する無線覆域(以下、セルという)である。なお、セル4はゾーン11、12および13を含み、セル5はゾーン21、22および23を含んでいる。
31、32、33および34は無線チャネルを介して無線基地局1、2と通信する、移動車載通信装置あるいは移動携帯通信装置等の、通常の音声通信を主とする従来タイプの移動通信装置による通常移動局(MS)であり、41および42は無線チャネルを介して無線基地局1、2と通信するWLL局(WS)である。また、51および52は中/高速TDMAチャネルを介して無線基地局1?3と通信する、移動局あるいは半固定局であるマルチメディア局(DS)であり、これらマルチメディア局51、52は、前述の中/高速TDMAチャネルの他に、時分割CDMAチャネル、低速TDMAデータチャネルを介して、音声あるいは低速データによる通信を行う機能を有している。なお、以下の説明では、これら通常移動局(MS)、WLL局(WS)およびマルチメディア局(DS)を総称して移動局と呼ぶことにする。
6は無線基地局1および3を制御する移動交換局(MSC;Mobile Switching Center)であり、7は無線基地局2を制御する移動交換局である。8はこの移動交換局6および7が有線接続されている、公衆用システム(PSTN;Public Switching Telephone Network)である。
この実施の形態1は、中/高速TDMAチャネルを介して無線基地局と通信する移動局を含んだ、TDMA/時分割CDMA移動通信システムに関するもので、以下にそのTDMA/時分割CDMA、高速TDMAデータ伝送、非対称通信チャネルを有する移動通信システムのフレーム構造について説明する。
なお、この発明による移動通信システムは、通常移動局31?34、WLL局41、42、およびマルチメディア局51、52などによる移動局と、無線基地局1、2および3との間では、周波数偏移変調(FSK;Frequency Shift Keying)、BPSK,QPSK,DQPSK,π/4-DQPSK等の位相偏移変調(PSK;Phase Shift Keying)、あるいはQAMSKやQGMSK等のミニマム位相偏移変調(MSK;Minimum Phase Shift Keying)などのディジタル変調方式による変調信号をやり取りして、FDMA/時分割双方向通信(Time Division Duplex;以下、TDDという)方式、マルチ・キャリアー時分割多重アクセス(Multi-carriers TDMA)方式、またはCDMA/TDD方式で、またTDMA/周波数分割双方向通信(Frequency Division Duplex;以下、FDDという)方式、TDMA/TDD方式、時分割CDMA/FDD方式、時分割CDMA/TDDにて無線接続されている。
また、この発明の実施の形態1による移動通信システムは、高速TDMA伝送機能を有する複数個のマルチメディア局と複数個の無線基地局とが高速TDMA伝送チャネルで無線接続され、周波数軸上でFDMA/TDMAディジタル信号とタイムスロット共用・周波数チャネル共用しているCDMA信号チャネル(以下、共用チャネルという)を有するタイムスロット共用・周波数チャネル共用移動通信システムであって、当該TDMA信号とタイムスロット共用・周波数チャネル共用(周波数チャネル共用でない場合も含む)時分割CDMA信号を有するタイムスロット共用・周波数チャネル共用のWLLおよび移動用通信システムである。
第2図はこの実施の形態1における時分割CDMAによるPCSおよびセルラー向けタイムスロット構成を示した説明図であり、TDDのダウンリンクについてのみ示している。図において、#61-0?#61-3はPCS用のタイムスロットであり、#67-0および#67-3はセルラー用のタイムスロットを示している。また、#64-0および#64-3は中速TDMAデータ通信のためのタイムスロットであり、#66-1および#66-2は高速TDMAデータ通信のためのタイムスロットを示している。なお、その他の*印を付した、#62-0?#62-3、#63-1と#63-2、#65-0?#65-3の各低速TDMA用のタイムスロットは、音声データあるいは低速データあるいは制御チャネルとして使用される例を示している。
なお、この実施の形態1においては、制御チャネルとして、少なくとも1つのTDMAバースト信号、あるいは少なくとも1つの時分割CDMAバースト信号のうちのいずれか一方、もしくは双方を有するものである。
また、第3図は上記第2図とは別の形態のタイムスロット構造を示す説明図であり、高速TDMAデータ伝送等の上り回線と下り回線の伝送容量が非対称な移動通信システムの、下り回線Tが増設された例を示している。図において、第2図と同じ符号を付したものは同じ機能であるのでその説明は省略する。#71-T0?#71-T3、および#71-T7A、#71-T7B、#71-T7Cは、無線基地局から移動局への下り回線に割り当てられた高速TDMAデータ通信用のタイムスロットであり、#71-R0?#71-R2の3つが移動局から無線基地局への上り回線に使用されるタイムスロットである。
また、第3図において、72は1フレーム長を示し、73および74は前記フレームにおける時分割CDMAチャネル、低速TDMAチャネルおよび中速TDMAデータチャネルのハーフレート長である。75は高速TDMAデータチャネルの、無線基地局から移動局への下りチャネル用のフレーム長(4+1タイムスロット長)であり、76は高速TDMAデータチャネルの、移動局から無線基地局への上りチャネル用のフレーム長(3タイムスロット長)である。77、78は無線基地局から移動局への下り回線と、移動局から無線基地局への上り回線との境界となる、フレーム時間-周波数軸中の線であるTDD線である。
なお、この場合の特徴は、移動局から無線基地局への上り回線(アップリンク)の伝送容量と、無線基地局から移動局への下り回線(ダウンリンク)の伝送容量とが等しい、通常の電話用タイムスロット割り当てとは違って、下り回線の伝送容量と上り回線の伝送容量とが互いに異なる上下回線の非対称が存在することである。第3図に示す非対称高速TDMAデータ伝送チャネル#71-T0?#71-T3、#71-T7A、#71-T7B、#71-T7C、および#71-R0?#71-R2は、前記のような要求を実現するタイムスロット構造の一例を示している。以下そのような状況が生ずることを説明する。
この実施の形態1による移動通信システムがマルチメディアを対象とするものであり、さらに、下り高速TDMAデータチャネルは画像情報あるいはデータバンク情報などの大情報量データのユーザへの伝送に使用できる場合について考える。そのような場合、ユーザが何らかのデータバンクあるいはホームページへアクセスした場合に、下り回線はそれらのデータ発生源からユーザへ送られる大情報量のデータの短時間での伝送に有用である。他方、ユーザはそのような大情報量のデータを受信したとしても、そのデータを解読・解釈して直ちに結論を出し、前記データ生源に対して大情報量のデータを送り返すことは少なく、特にユーザが個人である場合にはそのようなことは考えにくい。
すなわち、ユーザが下り回線で大情報量のデータを受信してからそれに応答する情報を送り返すには、かなりの時間遅れが生ずるのが普通であると考えられる。そこでは下り回線が大容量のデータ伝送チャネルを必要としても、上り回線には大情報量のデータ受信直後には、そのような大容量データ伝送チャネルを設定する必要が生じない。このようなことから、一時的には下り回線と上り回線との情報量に非対称が生じており、その状況に合わせたタイムスロットの構成が必要で、その一例を第4図に示す。
この第4図はTDDにおける、第3図に示した高速TDMAデータチャネルと時分割CDMAチャネルとから構成される非対称データ通信チャネルの一例を示した説明図である。この第4図に示す例によれば、1フレーム長は5msであり、それぞれ2.5msのハーフレート長の下り回線(ダウンリンク)と上り回線(アップリンク)が割り当てられている。なお、下り回線は高速TDMAデータチャネルであり、その情報伝送レートは1.024Mb/sである。また、上り回線は低速時分割CDMAデータチャネルであり、その情報伝送レートは32kb/sである。
なお、上記説明においては、当該移動通信システムにおける通信チャネルを、無線基地局から移動局への下り回線を高速TDMAデータチャネル、移動局から無線基地局への上り回線を低速時分割CDMAデータチャネルとするような非対称通信チャネルとしたものを示したが、無線基地局から移動局への下り回線を高速TDMAデータチャネル、移動局から無線基地局への上り回線を低速TDMAデータチャネルとするような非対称通信チャネルとしてもよい。
また、その他にも、当該移動通信システムの通信チャネルを、無線基地局から移動局への下り回線を低速TDMAデータチャネル、移動局から無線基地局への上り回線を高速TDMAデータチャネルとするような非対称通信チャネルとしてもよく、さらには、無線基地局から移動局への下り回線を低速時分割CDMAデータチャネル、移動局から無線基地局への上り回線を高速TDMAデータチャネルとするような非対称通信チャネルとしてもよい。
なお、上記説明による実施の形態1の移動通信システムでは、当該システムがTDD方式である場合、第3図に示すフレーム時間-周波数軸中の、無線基地局から移動局への下り回線と、移動局から無線基地局への上り回線との境界となるTDD線77あるいは78を、フレーム中の時間軸方向へ変化させることによって、無線基地局が送信する全ての下り回線の情報量と無線基地局が受信する全ての上り回線の情報量の比を変えるものである。
この非対称通信チャネルの管理は移動交換局6および7によって行われるものであり、上り回線と下り回線の情報量の比の変更は、この移動交換局6あるいは7より、少なくとも1つの無線基地局1、3または2へ指令される。
以上のように、この実施の形態1によれば、低速データ・音声通信共用低速TDMA方式、低速データ・音声通信共用時分割CDMA方式、および高速データ通信用高速TDMA方式を1つのシステムに含むことにより、ユーザが必要とする通信速度をフレーム長単位(第4図に示す例では5ms)で切り替えることができ、また下り回線と上り回線とで前記異なる方式を採用することにより、すなわち非対称通信チャネルを設定することにより、マルチメディア環境等に適した、通信容量の変動に柔軟に対応することが可能な移動通信システムを提供し得るという効果がある。」(14頁下から4行?20頁下から4行)

ウ 「実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5として、低速TDMA、時分割CDMA、および高速TDMAによるデータ伝送を含む、非対称通信チャネルを実現するための移動局と無線基地局の構造について説明する。
ここで、第10図はこの発明の実施の形態5によるそのような移動局の構成を示すブロック図である。図において、101はアンテナ、102はこのアンテナ101で受信された信号とアンテナ101より送信される信号の分配を行う送受信分配部であり、103はアンテナ101で受信された信号の増幅を行うRF(高周波;Radio Frequency)受信部、104はアンテナ101から送信される信号の増幅を行うRF送信部である。なお、このRF受信部103は、伝送すべき方式、すなわち、必要な情報量を伝送し得る通信方式をタイムスロットに同期して選択するためのスイッチを内蔵しており、通信方式に対応して出力先を切り替えている。
105は伝搬経路による遅延伝搬歪みを取り除く高速および低速の等化器を備えて、低速TDMAあるいは高速TDMAチャネルを利用する場合に、RF受信部103で選択・出力された信号を復調する復調器であり、106は拡散符号化信号を用いて拡散符号化された時分割CDMAチャネルを利用する場合に、RF受信部103で選択・出力された信号に自局に割り当てられた拡散符号を乗算し(逆符号化演算)、拡散符号化されていない元の信号を取り出し(相関受信)、復調器105に出力する相関受信/逆拡散符号化演算部である。107は復調器105によって復調された信号のフォーマットから必要な信号を取り出し(多重分離)、その信号の処理部門へ供給するチャネル受信/TDMA分離部(以下、CH受信/TDMA分離部という)である。
108はCH受信/TDMA復調部107から供給される情報の誤りを訂正して、その情報から高速データや音声信号を復号し、それを図示を省略したマン・マシンのインタフェースへ供給する、誤り訂正/復号部である。109はマン・マシンのインタフェースから供給された高速データや音声信号を符号化し、それに誤り訂正用の符号を付加する誤り訂正/音声符号化部である。110はCH受信/TDMA分離部107で分離された制御データの解読を行い、それに基づく種々の機能を当該移動局に対して指示するとともに、それに対する応答の制御データを生成する制御情報プロセッサーである。
111は誤り訂正符号化された高速データや音声信号と制御情報プロセッサー110からの制御データを多重化し、フレームフォーマット中の必要なタイムスロットにその多重化された情報を組み込んで出力するチャネル送信/TDMA多重化部(以下、CH送信/TDMA多重化部という)である。なお、このCH送信/TDMA多重化部111は、伝送すべき方式、すなわち、必要な情報量を伝送し得る通信方式をタイムスロットに同期して選択するためのスイッチを内蔵しており、通信方式に対応して出力先を切り替えている。112は低速TDMAあるいは高速TDMAチャネルを利用する場合に、CH送信/TDMA多重化部111より出力される情報を変調してRF送信部104に出力する変調器であり、113は時分割CDMAチャネルを利用する場合に、CH送信/TDMA多重化部111より出力される情報を自局に割り当てられた拡散符号を使用して周波数軸上で拡散させて符号化し、それを変調器112に入力する相関符号化/拡散符号化演算部である。
114は自局より発射する電波バーストの発射時間の制御、どのタイムスロットで電波を発射するかを設定するためのフレーム内時間設定、さらには電波バーストの送信タイミング設定のための時間計測などを行うバースト制御/フレーム内時間設定・時間計測部である。115はバースト制御/フレーム内時間設定・時間計測部114で時間計測に用いるチップレートや、自局に割り当てられた拡散符号を発生する拡散符号発生器・チップレート発生器である。
次に、このように構成された移動局の動作について説明する。
ここで、第10図に示す移動局は非対称通信チャネルを実現するものであり、ここでは、まず下り回線(ダウンリンク)に大情報量のデータを伝送するための高速TDMAデータチャネルを設定し、上り回線(アップリンク)に低速データを伝送するための時分割CDMAチャネルを設定した場合について考える。
無線基地局から発射された高速TDMAデータチャネルの電波はアンテナ101で受信され、送受信分配部102を経由してRF受信部103へ入力される。RF受信部103は受信した信号が高速TDMAデータチャネルを利用したものであるので、内蔵するスイッチの切り替えにより、それを直接、等化器を備えた復調器105に送る。復調器105ではこのRF受信部からの信号をディジタル信号に復調する。復調器105で復調されたディジタル信号はCH受信化/TDMA分離部107に入力されて、高速データ情報と制御データとに分離される。分離された制御データは制御情報プロセッサー110へ、高速データ情報は誤り訂正/復号部108に送られる。誤り訂正/復号部108ではその高速データ情報の誤り訂正を行った後、それを復号して、マン・マシンのインタフェースへ渡す。
一方、マン・マシンインタフェース部からの低速データは、誤り訂正/符号化部109でディジタル符号化され、誤り訂正符号が付加されてCH送信/TDMA多重化部111に送られる。CH送信/TDMA多重化部111はこの誤り訂正/符号化部109からの低速データ情報と制御情報プロセッサー110からの制御データを多重化し、所定のタイムスロットに組み込んで、バースト制御/フレーム内時間設定・時間計測部114の制御にしたがって出力する。ここで、低速データ情報が時分割CDMAチャネルを利用する場合、CH送信/TDMA多重化部111は内蔵するスイッチの切り替えによって、その多重化した信号を相関符号化/拡散符号化演算部113に出力する。相関符号化/拡散符号化演算部113ではこのCH送信/TDMA多重化部111からの多重化信号をCDMA符号化した後、変調器112へ送って変調する。この変調器112で変調された信号はRF送信部104、送受信分配部102を経由してアンテナ101に送られ、無線基地局へ送信される。
次に、下り回線に低速データを伝送するための時分割CDMAチャネルを設定し、上り回線に大情報量のデータを伝送するための高速TDMAデータチャネルを設定した場合について考える。
アンテナ101にて受信された時分割CDMAデータチャネルの電波は、送受信分配部102を経由してRF受信部103に送られ、RF受信部103に内蔵されたスイッチの選択により相関受信/逆拡散符号化演算部106へ入力されて相関受信される。この相関受信/逆拡散符号化演算部106の出力は等化器を備えた復調器105によってディジタル信号へ変換され、CH受信/TDMA分離部107によって低速データ情報と制御データとに分離される。制御データは制御情報プロセッサー110に、低速データ情報は誤り訂正/復号部108に送られる。誤り訂正/復号部108は受け取った低速データ情報の誤り訂正を行って復号し、それをマン・マシンのインタフェースに渡す。
一方、マン・マシンインタフェース部からの高速データは、誤り訂正/符号化部109で符号化されて誤り訂正符号が付加され、CH送信/TDMA多重化部111において制御情報プロセッサーからの制御データと多重化される。多重化された信号は、CH送信/TDMA多重化部111に内蔵されたスイッチの選択によって変調器112へ送られ、この変調器112で変調されて、RF送信部104、送受信分配部102を介してアンテナ101より無線基地局へ送信される。」(30頁3行?34頁6行)

エ 「実施の形態8.
次に、この発明の実施の形態8として、各移動局における通信チャネルの管理について説明する。
第19図は各移動局の通信チャネル管理表の一例を示した説明図であり、ここではその一例として、無線基地局(BS1)が管理している各移動局の通信チャネル管理表が示されている。なお、移動交換局とその制御下にある少なくとも1つの無線基地局は移動局管理メモリを備えており、第19図に示す通信チャネル管理表はその移動局管理メモリ内に格納されている。
この第19図に示す例によれば、移動局名DS51-727の移動局(マルチメディア局51)には、下り回線に高速TDMAデータチャネルが、上り回線に時分割CDMA低速データ(あるいは音声)チャネルがそれぞれ割り当てられている。なお、ここに示される例は、下り回線と上り回線とに異なる非対称通信チャネルが割り当てられている場合である。一方、移動局名WS42-727の移動局(WLL局WS42)には、上り回線、下り回線ともに間欠接続用制御情報チャネルが割り当てられており、このユーザは現在考慮中であると考えられる。
このように、上記2つの例が示すように、この移動通信システムは非対称通信チャネルとともに対称通信チャネルをも取り扱うことができるようになっている。
前述の伝送タイプの指定とともに、上記第19図に示すようにタイムスロットの指定をも行われる。例えば移動局名DS51-727のマルチメディア局51の上り回線「時分割CDMA音声/低速データチャネル」はタイムスロット名#61-R2-07のタイムスロットが指定されているが、このタイムスロット名は第3図に示されたタイムスロット番号と同等のものである。すなわち、このタイムスロット#61-R2は第3図の左端のタイムスロット列の上から2番目のタイムスロットであるが、それに続く記号-07は、このタイムスロットが複数個含む符号分割マルチプルアクセス(CDMA)の7番と名付けられた拡散符号を有するチャネルを指している。
また、移動局名WS42-727のWLL局42の上り回線「間欠接続用制御情報チャネル」はタイムスロット名#61-R3-05:36のタイムスロットが指定されているが、このタイムスロット名は第3図に示されたタイムスロット番号と同等のもので、このタイムスロット#61-R3は第3図の左端のタイムスロット列の最も上のタイムスロットである。なお、それに続く記号-05は、このタイムスロットが複数個含む符号分割マルチプルアクセス(CDMA)の5番と名付けられた拡散符号を有するチャネルを指し、さらにその後の記号:36は第7図の1マルチフレーム(40フレームから構成されている)の中の第36番目のフレームに含まれた情報であることを示している。
ここで、第19図の伝送タイプ欄およびタイムスロット名欄内において、下線が付された伝送タイプ、下線が付されたタイムスロット名のチャネルが、現時点で運用中のチャネルを示す。当然のことながら、この運用中の伝送タイプはユーザ要求とユーザへデータ通信中のデータベースのデータ内容によって時々刻々変更される。しかもその伝送タイプの変更が、この移動通信システムでは、上り回線と下り回線とが独立に設定され得ることに特徴がある。」(48頁3行?49頁下から3行)

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「子局」及び「親局」は、それぞれ本願発明の「加入者局」及び「基地局」に相当する。引用発明において、子局は、親局と無線回線で接続されているから、無線接続されているといえる。
引用発明の「データスロット」及び「時分割フレーム」は、それぞれ本願発明の「タイムスロット」及び「フレーム」に相当する。
引用発明において、親局から子局へ多量のデータを送信する場合、通常の送信と異なり、多量のデータに対して一度に複数のデータスロットを割り当てることから、伝送レートを変更する必要が生じていることは明らかである。したがって、引用発明の「親局から子局へ多量のデータを送信する場合」は、本願発明の「加入者局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると」に相当する。
引用発明の「スロット割当制御データ」及び「データ」は、それぞれ本願発明の「タイムスロットの変更情報」及び「データ」に相当する。そうすると、引用発明において、親局において、データ処理部1のデータ量を見て、スロット数制御部5cで割り当てるデータスロット数を指定し、データスロット数設定部12を制御し、割り当てるデータスロットを決定し、制御スロット部3は、制御スロットを用いてスロット割当制御データを子局へ送信することから、引用発明は、「上記データが含められるフレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を当該加入者局に送信する基地局の変更要求手段」に相当する構成を備えていることは明らかである。
引用発明において、子局において、制御スロット部103で親局から受信したスロット割当制御データを受けて、データスロット部102に使用データスロットを伝え、割り当てられたデータスロットを用いて親局から子局へデータの送信が行われることから、引用発明は、「上記基地局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局からフレームの受信に使用するタイムスロットを変更する加入者局のタイムスロット変更手段」に相当する構成を備えていることは明らかである。
引用発明の「デマンドアサイメント多元接続装置」は、移動通信に関するシステムであることは明らかであるから、本願発明の「移動通信システム」に相当する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「無線接続されている加入者局に送信するデータの伝送レートを変更する必要が生じると、上記データが含められるフレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を当該加入者局に送信する基地局の変更要求手段と、上記基地局の変更要求手段からタイムスロットの変更情報を受信すると、そのタイムスロットの変更情報に従って上記基地局からフレームの受信に使用するタイムスロットを変更する加入者局のタイムスロット変更手段とを備えた移動通信システム。」

一方、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では、データが含められるフレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を加入者局に送信する際、伝送レートにしたがっているのに対し、引用発明では、伝送レートにしたがっていることについては明確な記載がない点。
<相違点2>
本願発明では、次フレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報であり、また、次フレームの受信に使用するタイムスロットを変更するのに対し、引用発明では、同じフレーム内の送信に使用するタイムスロットの変更情報であること、及び同じフレーム内の受信に使用するタイムスロットを変更することについては記載があるが、次フレームについては記載がない点。

(3)当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1についての検討>
引用発明の親局において、データ処理部1のデータ量を見て、割り当てるタイムスロットを決定しているが、データ量から、直接、割り当てるタイムスロットを決定するか、又はデータ量から伝送レートを決定し、その伝送レートにしたがって割り当てるタイムスロットを決定するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得ることである。したがって、引用発明において、伝送レートにしたがってデータが含められるフレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報を加入者局に送信するように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

<相違点2についての検討>
引用例2には、「低速データ・音声通信共用低速TDMA方式、低速データ・音声通信共用時分割CDMA方式及び高速データ通信用高速TDMA方式を備えるシステムにおいて、ユーザが必要とする通信速度をフレーム長単位で切り替えることができ、伝送タイプの指定とともにタイムスロットの指定をも行われ、移動局において、無線基地局から受信し復調されたディジタル信号は、高速データ情報と制御データとに分離され、制御データは制御情報プロセッサー110へ、高速データ情報は誤り訂正/復号部108へ送られ、制御情報プロセッサー110は、制御データの解読を行い、それに基づく種々の機能を移動局に対して指示する」技術が記載されている。引用例2に記載された技術において、制御データによってタイムスロットの指定が行われること、及び1つのフレームにおいてデータ情報と制御データが実質的に同時に送信され、受信側では、データ情報から制御データを分離して、解読した後に、指示が行われることは明らかである。そうすると、引用例2に記載された技術において、タイムスロットの指定が次フレーム以降のタイムスロットに対する指定となるべきことは明らかであり、また、タイムスロットの変更はできるだけ早くすべき性質のものであるから、タイムスロットの指定を次フレームに対するものとするように構成することは当業者にとって自然である。
そして、引用発明及び引用例2に記載された技術の属する技術分野は、基地局と移動局との無線通信技術である点で共通する。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用して、次フレームの送信に使用するタイムスロットの変更情報とし、また、次フレームの受信に使用するタイムスロットを変更するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願発明の構成によって生じる効果も、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2000-605434(P2000-605434)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中元 淳二  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 稲葉 和生
中野 裕二
発明の名称 移動通信システム  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  

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