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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1251141
審判番号 不服2008-20217  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2012-01-25 
事件の表示 特願2000-525998「データ・セグメントを供給し、取り出す方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 1日国際公開、WO99/33209、平成13年12月25日国内公表、特表2001-527322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、1998年(平成10年)11月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年12月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年 8月17日(起案日)
手続補正 :平成19年11月28日
拒絶理由通知(最後) :平成19年12月17日(起案日)
手続補正 :平成20年 4月 8日
補正却下の決定 :平成20年 4月28日(起案日)
拒絶査定 :平成20年 4月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成20年 8月 7日
手続補正 :平成20年 8月 7日
前置審査報告 :平成20年11月27日
審尋 :平成22年 4月 8日(起案日)
回答書 :平成22年 8月18日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。
本願の各請求項に係る発明(平成19年11月28日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平9-135222号公報
刊行物2:特表平5-501942号公報
刊行物3:欧州特許出願公開第800290号明細書
刊行物4:特開平8-95915号公報

第2 補正却下の決定
平成20年8月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成20年8月7日付けの手続補正を却下する。

《理由》
1.本件補正の内容
平成20年8月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前、平成19年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、補正前の請求項1ないし5を、補正後の請求項1ないし5とするものである。

特許請求の範囲(補正前)
【請求項1】 データ配信装置によって実行されるデータ・セグメントを配信する方法であって、
(a)データ・セグメントを、該データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を含む3つまたはそれ以上の部分に分割するステップと、
(b)2本またはそれ以上のチャンネルを介してデータ・セグメントを配信するステップであって、前記2本またはそれ以上のチャンネルの第1のチャンネルは前記データ・セグメントの第1の部分のみを繰り返し搬送し、前記2本またはそれ以上のチャンネルの残りのチャンネルは前記データ・セグメントの該第1の部分に続く2つまたはそれ以上の部分を繰り返し搬送するステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項2】 データ配信装置によって実行されるデータ・セグメントを供給する方法であって、
(a)データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を間隔Tで繰り返し配信するため、該第1の部分を第1のチャンネル上に供給するステップと、
(b)前記データ・セグメントの第1の部分に続く第2の部分を「間隔T×乗数X(Xは整数)」で繰り返し配信するため、該第2の部分を第2のチャンネル上に供給するステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項3】 データ配信装置によって実行されるデータ・セグメントを供給する方法であって、
(a)データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項4】 データ受信装置によって実行されるデータ・セグメントにアクセスする方法であって、
(a)2本またはそれ以上のチャンネル上でデータ・セグメントを受信するステップであって、前記2本またはそれ以上のチャンネルの第1のチャンネルは前記データ・セグメントの最初の部分である第1の部分のみを繰り返し搬送し、前記2本またはそれ以上のチャンネルの残りのチャンネルは前記データ・セグメントの該第1の部分に続く部分を繰り返し搬送するステップと、
(b)前記2本またはそれ以上のチャンネルからデータ・セグメントの部分を取り出すことにより前記データ・セグメントの全体を出力に供給するステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項5】 データ受信装置によって実行されるデータ・セグメントにアクセスする方法であって、
(a)Nを1よりも大きい整数、Mを0よりも大きい整数としたときに、N本のチャンネルの第1のチャンネルで前記データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を受信し、前記N本のチャンネルの前記第1チャンネルを除いたそれぞれのチャンネルで前記データ・セグメントの第1の部分に続く少なくとも1つの部分を受信するステップであって
、前記N本のチャンネルのそれぞれが「一定時間間隔×乗数M」の間隔でそれぞれの部分を繰り返し配信しているステップと、
(b)前記受信したそれぞれの部分を出力に供給するステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。

特許請求の範囲(補正後)
【請求項1】 データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを配信する方法であって、
(a)前記映画データ・セグメントを、該映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を含む3つまたはそれ以上の部分に分割するステップと、
(b)2本またはそれ以上のチャンネルを介して前記映画データ・セグメントを配信するステップであって、前記2本またはそれ以上のチャンネルの第1のチャンネルは前記映画データ・セグメントの第1の部分のみを繰り返し搬送し、前記2本またはそれ以上のチャンネルの残りのチャンネルは前記映画データ・セグメントの該第1の部分に続く2つまたはそれ以上の部分を繰り返し搬送するステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項2】 データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であって、
(a)前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を間隔Tで繰り返し配信するため、該第1の部分を第1のチャンネル上に供給するステップと、
(b)前記映画データ・セグメントの第1の部分に続く第2の部分を「間隔T×乗数X(Xは整数)」で繰り返し配信するため、該第2の部分を第2のチャンネル上に供給するステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項3】 データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であって、
(a)前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)前記映画データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)前記映画データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項4】 データ受信装置によって実行される映画データ・セグメントにアクセスする方法であって、
(a)2本またはそれ以上のチャンネル上で前記映画データ・セグメントを受信するステップであって、前記2本またはそれ以上のチャンネルの第1のチャンネルは前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分のみを繰り返し搬送し、前記2本またはそれ以上のチャンネルの残りのチャンネルは前記映画データ・セグメントの該第1の部分に続く部分を繰り返し搬送するステップと、
(b)前記2本またはそれ以上のチャンネルから前記映画データ・セグメントの部分を取り出すことにより前記映画データ・セグメントの全体を出力に供給するステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。
【請求項5】 データ受信装置によって実行される映画データ・セグメントにアクセスする方法であって、
(a)Nを1よりも大きい整数、Mを0よりも大きい整数としたときに、N本のチャンネルの第1のチャンネルで前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を受信し、前記N本のチャンネルの前記第1チャンネルを除いたそれぞれのチャンネルで前記映画データ・セグメントの第1の部分に続く少なくとも1つの部分を受信するステップであって、前記N本のチャンネルのそれぞれが「一定時間間隔×乗数M」の間隔でそれぞれの部分を繰り返し配信しているステップと、
(b)前記受信したそれぞれの部分を出力に供給するステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。

上記補正は、まとめると
a)補正前の請求項1ないし5の「データ・セグメント」を「映画データ・セグメント」とする補正、
b)補正前の請求項1ないし5の「データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていない」を「(映画)データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていない」とする補正、
である。

2.補正の適合性
(1)補正の範囲(第17条の2第3項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的(第17条の2第4項第1号?第4号)
本件補正a)は、格別の限定がない「データ・セグメント」を「映画データ・セグメント」に限定する補正である。
本件補正b)はデータセグメントの第1の部分以外について、格別規定されていなかったものが「第1の部分以外は暗号化されている」との限定事項を加える補正である。
以上のことから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項に規定された、特許請求の範囲の減縮に該当する補正事項であると認められる。

(3)独立特許要件(第17条の2第5項)
本件補正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的として含むものである。そこで検討する。

ア.補正後の本願発明

本件補正後の請求項3に記載される発明(以下「本件補正発明」という)は、以下のとおりのものである。

【請求項3】 データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であって、
(a)前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)前記映画データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)前記映画データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含み、
前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていないことを特徴とする方法。

イ.刊行物1の記載

原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-135222号公報(以下「刊行物1」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオ・オン・デマンド・システム及びニア・ビデオ・オン・デマンド・システム用放送のサポートに関係する。
【0002】
【従来の技術】従来のビデオ・オン・デマンド(VOD)システムは、ユーザが見たい映画、及び映画を見たい時間の双方について選択できる柔軟性をユーザに与えている。このようなシステムは、クライアントが1組のユーザからなり、一方でビデオ・サーバが、複数の映像が保管される多くのディスクを含む、クライアント・サーバ・アーキテクチャを用いてモデル化できる。クライアントから映像の要求が出されたときはいつでも、中央に存在するVODサーバがディスクからその映像のブロックをフェッチし、等時的にクライアントに送る。
【0003】映像がディスク上に存在しないときは、映像は普通には第3の記憶装置からフェッチされる。したがってクライアントからの個々の要求に対して、入出力ストリームはスケジュール化される必要がある。入出力ストリームの個々のスケジューリングに対し、一般にかなり大きなネットワーク帯域幅が必要になる。その結果、クライアント数の増加に伴って、この帯域幅が重大な制約事項になる可能性がある。この問題の1つの解決策には、ユーザ間で帯域幅を共有することがある。このタイプの解決策は、ユーザ中心の方法と呼ばれる。
【0004】クライアント数が増加したとき、ビデオ・オン・デマンド・システムでの代替の方法は、周期的放送の方法である。この放送の方法においては、帯域幅はユーザに対してではなく、個々の映像オブジェクトに対して専有にされる。今ここでN本の映画(例えば、今年のN本の新しい映画)があるとし、それらが周期的に放送されるものとする。この場合には、帯域幅がN本の別々の映画によって共有される。その結果、この方法による帯域幅の利用は、クライアントの数に依存しない。この方法は、帯域幅が個別の映像オブジェクト間で分割されるので、データ中心の方法である。
【0005】従来の放送の方法では、N本の映画のそれぞれに対するアクセス・タイムは、放送の頻度によって決まる。映画に対するアクセス・タイム(待ち時間、又はクライアント待ち時間とも呼ばれる)は、単に最初のセグメントをアクセスするために必要な時間に等しい。したがって映画に対するアクセス・タイムは、帯域幅に応じて直線的に減少する。帯域幅の要求を緩和させる代替の方法は、「ピラミッド」構成である。この方法では各映像は多数のセグメントに分割され、初めのいくつかのセグメントは比較的短く、より頻度が高く伝達される。このピラミッド構成は、S.Vishwanathan及びT.Imelinkiによる論文、「Metropolitan Area Video On DemandService Using Pyramid Broadcasting」、SPIE Vol.2417、ページ66?77(1995年2月発行)に記述されている。引き続いてこの構成をVI構成として言及する。
【0006】VI方法においては、映画のアクセス・タイムは、帯域幅に従って指数関数的に改善されることが分っている。しかしながらVI方法は、クライアントの側でかなり大きなバッファ量を必要とし、このバッファ量は帯域幅に伴って大きく変らない。VI方法は、一般に各クライアントにおいて実質的に映画の長さの50%以上の記憶容量を必要とする。この範囲の記憶容量に対してバッファリングを行うために、ディスクを用いることが必要になるであろう。更に伝達速度も非常に高いので、クライアントは映画を受信すると同じ速さでディスクに書き込むために、大きなディスクの帯域幅を必要とする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ピラミッド形の構成を用いるシステムにおいて、クライアントの記憶装置必要量を減少させることである。本発明の更に別の目的は、ピラミッド形の構成を用いるシステムにおいて、バッファリング用にクライアントの記憶装置にデータを書き込む際に必要とする速度を減少させることである。

【0017】図1は、従来のVI構成におけるセグメント分割を示している。この図は2本の映画の場合を示している。(この方法はいかなる数の映画に対しても一般化できる。)各映画は4つのセグメントに分割され、(i+1)番目のセグメントはi番目のセグメントの2倍の大きさになっている。このようにして、図に示されているように映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントに分割され、一方で映画2はA2、B2、C2及びD2の4つのセグメントに分割される。
【0018】第1のチャネル上では、最小サイズのセグメントのみが伝達される。したがって、第1のチャネル上にはセグメントA1及びA2のみが伝達される。第2のチャネル上では、次に大きいセグメントB1及びB2が伝達され、その次に大きいセグメントC1及びC2は第3のチャネル上を伝達され、最大のセグメントD1及びD2は第4のチャネル上を伝達される。
【0019】伝達される(例えば)映画1の受信を開始するために、クライアントはこの映画の最初のセグメント(A1)をつかまえる。各チャネルの伝達速度は表示速度よりも速い。したがって、特定のセグメント(A1)が伝達されるにつれ、クライアント側で映像データが積み上がる(バッファされる)。A1の伝達が終了後、このバッファされたデータは、ユーザ側で中断のない伝達を継続するために用いられ、一方でクライアントは、次のセグメントB1をつかまえることを試みる。このプロセスは映画全体がアクセスされ終わるまで、それぞれ後に続くセグメントに対して継続される。伝達と受信のパラメータは、伝達がいかなる中断もなく連続して行われるように選択される。

そして、図1の一番上の列には、映画1(120分)の模式図があり、最も短い部分がA1、次に短い部分がB1、・・・最も長い部分がD1である棒グラフが、
同様に二番目の列には、映画2(120分)の模式図が、最も短い部分がA2、次に短い部分がB2、・・・最も長い部分がD2である棒グラフが、
さらに、四角に囲まれた中には、
最初の列に、A1とA2が交互に繰り返し配置され、
二番目の列に、B1とB2が交互に繰り返し配置され、
三番目の列に、C1とC2が交互に繰り返し配置され、
四番目の列に、D1とD2が交互に繰り返し配置され
た図が記載されている。

ウ.刊行物1に記載された発明
(ア)ビデオ・オン・デマンド・システムでの代替の方法について
【0004】、【0005】の記載によれば「クライアント数が増加したとき、ビデオ・オン・デマンド・システムでの代替の方法は、周期的放送の方法である。・・・今ここでN本の映画(例えば、今年のN本の新しい映画)があるとし、それらが周期的に放送されるものとする。・・・従来の放送の方法では、N本の映画のそれぞれに対するアクセス・タイムは、放送の頻度によって決まる。映画に対するアクセス・タイム(待ち時間、又はクライアント待ち時間とも呼ばれる)は、単に最初のセグメントをアクセスするために必要な時間に等しい。・・・帯域幅の要求を緩和させる代替の方法は、「ピラミッド」構成である。この方法では各映像は多数のセグメントに分割され、初めのいくつかのセグメントは比較的短く、より頻度が高く伝達される。・・・引き続いてこの構成をVI構成として言及する。」とあることからみて、
「ビデオ・オン・デマンド・システムでの代替の方法として、周期的放送の方法がある、
従来の放送の方法の、帯域幅の要求を緩和させる代替の方法は、「ピラミッド」構成である、
「ピラミッド」構成の方法では各映像は多数のセグメントに分割され、初めのいくつかのセグメントは比較的短く、より頻度が高く伝達され、
この構成をVI構成として言及する」ことが理解できる。
すなわち、ビデオ・オン・デマンド・システムでの代替の方法である周期的放送の帯域幅の要求を緩和させる代替の方法として、「ピラミッド」構成であるVI構成がある。
上記VI構成(「ピラミッド」構成)の概略として、
a)各映像は多数のセグメントに分割されること
b)初めのいくつかのセグメントは比較的短く、より頻度が高く伝達されること
の二つの構成を有することがその記載から認めることができる。
以上のことから、引用発明の概要として、以下の発明を認定することができる。
「ピラミッド」構成(VI構成)は、
周期的放送の方法の帯域の幅の要求を緩和させるために、
a)各映像は多数のセグメントに分割される
b)初めのいくつかのセグメントは比較的短く、より頻度が高く伝達される
方法。

(イ)「ピラミッド」構成(VI構成)
段落【0017】-【0019】、および図1の記載によれば「図1は、従来のVI構成におけるセグメント分割を示している。この図は2本の映画の場合を示している。(この方法はいかなる数の映画に対しても一般化できる。)各映画は4つのセグメントに分割され、(i+1)番目のセグメントはi番目のセグメントの2倍の大きさになっている。このようにして、図に示されているように映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントに分割され、一方で映画2はA2、B2、C2及びD2の4つのセグメントに分割される。・・・第1のチャネル上では、最小サイズのセグメントのみが伝達される。したがって、第1のチャネル上にはセグメントA1及びA2のみが伝達される。第2のチャネル上では、次に大きいセグメントB1及びB2が伝達され、その次に大きいセグメントC1及びC2は第3のチャネル上を伝達され、最大のセグメントD1及びD2は第4のチャネル上を伝達される。・・・伝達される(例えば)映画1の受信を開始するために、クライアントはこの映画の最初のセグメント(A1)をつかまえる。各チャネルの伝達速度は表示速度よりも速い。したがって、特定のセグメント(A1)が伝達されるにつれ、クライアント側で映像データが積み上がる(バッファされる)。A1の伝達が終了後、このバッファされたデータは、ユーザ側で中断のない伝達を継続するために用いられ、」とある。
このことから、上記(ア)で検討した「ピラミッド」構成(VI構成)の具体的な構成として、以下の構成を認めることができる。
(イ-1)分割
映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントの映像データに分割される。
(イ-2)順序
図1の最も上の列を参酌すると、セグメントA1に続いてセグメントB1、セグメントB1に続いてセグメントC1、セグメントC1に続いてセグメントD1と配置されるように分割されていることが理解できる。
すなわち、最初のセグメントがA1、続いてB1、以下C1、D1と続くように分割されている。
(イ-3)チャンネル
第1のチャネル上では、最初のセグメントであって、最小サイズのセグメントA1が伝達され、
第2のチャネル上では、A1に続くセグメントであって、A1の次に大きいセグメントB1が伝達され、
第3のチャネル上では、B1に続くセグメントであって、B1の次に大きいセグメントC1が伝達され、
第4のチャネル上では、C1に続くセグメントであって、A1の次に大きいセグメントD1が伝達される。
(イ-4)頻度
図1(四角に囲まれた中の一番上の列)をみると、A1の区間とA2の区間のみが繰り返し現れており、【0018】の「第1のチャネル上では、最小サイズのセグメントのみが伝達される。したがって、第1のチャネル上にはセグメントA1及びA2のみが伝達される。」の記載と併せてみれば、上記一番上の列は、第1チャンネルの模式図であって、セグメントA1が、セグメントA2の間隔をあけて、繰り返し伝達されていることが理解できる。
すなわち、第1のチャンネル上では、最小サイズのセグメントA1が(A1+A2)の時間間隔をあけた頻度(この頻度を「ある頻度」という。)で、繰り返し伝達されている。
同様に、第2のチャンネル上では、A1に続くセグメントであって、A1の次に大きいセグメントB1が、(B1+B2)の時間間隔をあけた頻度で、繰り返し伝達され、
第3のチャンネル上では、B1に続くセグメントであって、B1の次に大きいセグメントC1が、(C1+C2)の時間間隔をあけた頻度で、繰り返し伝達され
第4のチャンネル上では、C1に続くセグメントであって、C1の次に大きいセグメントD1が、(D1+D2)の時間間隔をあけた頻度で、繰り返し伝達され
ていることが理解できる。
そして、A1ないしD4の長さ、およびB1ないしB4の長さは、それぞれ、A1からD1、およびB1からD1になるにしたがって、順に長くなっているから、(A1+B1)の頻度(ある頻度)、(B1+B2)の頻度、(C1+C2)の頻度、(D1+D2)の頻度、となるに従い、順に頻度が低くなっていることは明らかである。
(イ-5)まとめ
以上の(イ-1)ないし(イ-4)の記載をまとめると、
「映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントの映像データに分割され、
映画1を分割した最初のセグメントの映像データであるセグメントA1は、第1のチャンネル上で、ある頻度で、繰り返し伝達され、
映画1を分割した映像データであって、セグメントA1に続くセグメントであるセグメントB1は、第2のチャンネル上で、セグメントA1の頻度より低い頻度で繰り返し伝達され、
映画1を分割した映像データであって、セグメントB1に続くセグメントであるセグメントC1は、第3のチャンネル上で、セグメントB1よりも低い頻度で、繰り返し伝達され、」ているということができる。

(ウ)まとめ
上記(ア)および(イ)によれば、刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)として、以下のとおりのものを認定することができる。

周期的放送の方法であって、
映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントの映像データに分割され、
映画1を分割した最初のセグメントの映像データであるセグメントA1は、第1のチャンネル上で、ある頻度で、繰り返し伝達され、
映画1を分割した映像データであって、セグメントA1に続くセグメントであるセグメントB1は、第2のチャンネル上で、セグメントA1の頻度より低い頻度で繰り返し伝達され、
映画1を分割した映像データであって、セグメントB1に続くセグメントであるセグメントC1は、第3のチャンネル上で、セグメントB1よりも低い頻度で、繰り返し伝達され、
る方法。

エ.対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)「データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であって」について
(ア-1)データ配信装置
本件補正発明の「データ配信装置」は、願書に最初に添付した明細書に同じ表現はないが、発明の詳細な説明を参酌すると「本発明には数多くの用途が考えられる。たとえば、ケーブルで提供される、あるいは直接放送衛星(DBS)または高品位テレビ(ATV)として放送されるニア・オンデマンド映画に使用することができる。」(【0044】)の記載があり、放送を使用して映画を提供する装置も含むものである。
一方、引用発明は、「周期的放送の方法」に関する発明であるから、放送を送信する側が存在することは明らかであり、当該放送を送信する側は、放送を使用してユーザに映画を「提供(配信)」しているのであるから、この点で、本件補正発明の「データ配信装置」を有しているということができる。

(ア-2)映画データ・セグメント
本件補正発明の「(映画)データ・セグメント」は発明の詳細な説明を参酌すると、
「データ・セグメントは、ここでは、有限の長さのシーケンシャル・データ・ストリームと定義される。データ・セグメントには、オーディオ・データやビデオ・データの任意の組み合わせが入るが、これらに限られるわけではない。」(【0002】)、
「ニア・オンデマンド・システムを使用してデータ・セグメントを供給する一方法として、データ・セグメント全体を複数のチャンネルに供給し、それぞれのチャンネルに一定時間の間隔によるオフセットを与えるという方法がある。たとえば、データ・セグメントが2時間分の長さだとすると、チャンネルは4本あれば(0、30、60、および90分のオフセット)、各30分の先頭からのデータ・セグメントに適切にアクセスできる。」(【0005】)
「データ・セグメントを3つまたはそれ以上の部分に分割し、2本またはそれ以上のチャンネルで供給する。チャンネルの各々はデータ・セグメントの一部を搬送するが、各チャンネルで伝送されるデータ・セグメントの部分の長さは、データ・セグメント全体の長さよりも短い。」(【0006】)
「データ・セグメントの第1の部分を高頻度で繰り返される第1のチャンネルに供給する。」(【0010】)
等の記載からみて、「(映画)データ・セグメント」とは、(映画)データを(3つまたはそれ以上の部分に)分割する前の、データ全体のことをいい、「セグメントの部分」がデータ全体を分割した、それぞれの部分のことを指すものであると理解できる。
一方、引用発明は、「映画1はA1、B1、C1及びD1の4つのセグメントの映像データに分割され」ているのであるから、映画を分割した、それぞれの部分をセグメント(A1ないしD1)と呼んでいることからみて、引用発明のセグメント(A1ないしA4)それぞれが、本件補正発明のセグメントの部分に対応し、これらの部分をまとめた全体が、引用発明では「映画」、本件補正発明では「データ・セグメント」と呼んで対応していることは明らかである。
さらに、引用発明の「放送する(方法)」とは、放送を受信する者に、上記放送することにより、所望の映画(データ・セグメント)を供給することであるから、「データ・セグメントを供給する方法」といえる。
以上のことからみて、引用発明は「データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であ」る点で、本件補正発明と一致する。

(イ)「前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップ」について
引用発明の「映画1」が「映画データ・セグメント」に対応することは、上記(ア)にて検討したとおりであり、引用発明のセグメントA1は、映画1を分割した最初のセグメントであるから、映画1の「最初の部分である第1の部分」ということができる。
そして、引用発明のセグメントA1は、第1のチャンネル上で、ある頻度で、繰り返し伝達されているというものであり、上記「ある頻度」は「第1の頻度」と呼ぶことができる。
また、引用発明の「伝達する」とは、「映画のセグメントを周期的に放送する」ことにより、クライアントに映画(1)のセグメントを「供給する」ことであるということができ、そのような供給を実現しているのであるから、「供給する」ステップを有しているということができる。
以上のことから、引用発明は「映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するためのステップ」を有しているということができる。

(ウ)「前記映画データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップ」について

引用発明のセグメントB1は、上記(イ)で検討した、「映画データ・セグメントの第1の部分」ということができる「セグメントA1」に続くセグメントであり、第2のチャンネル上で、セグメントA1の頻度より低い頻度で繰り返し伝達されている。
このセグメントA1の頻度より低い頻度は、第1の頻度とは異なるから、第2の頻度と呼んでもよいことは明らかである。
また、引用発明の「伝達」が本件補正発明の「供給」に対応すること、また「供給」しているということは、「供給するステップ」を有しているといえることは、上記(イ)にて検討したとおりである。
以上のことからみて、引用発明は「前記映画データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップ」を有しているといえる。

(エ)「前記映画データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含み」について

引用発明のセグメントC1は、上記(ウ)で検討した、「映画データ・セグメントの第2の部分」ということができる「セグメントB1」に続くセグメントであり、第3のチャンネル上で、セグメントB1よりも低い頻度で、繰り返し伝達されている。
上記「セグメントB1よりも低い頻度」は、前述の「第1の頻度」、「第2の頻度」とは異なるものであるから、「第3の頻度」と呼んでもよいことは明らかである。
また、引用発明の「伝達」が本件補正発明の「供給」に対応すること、また「供給」しているということは、「供給するステップ」を有しているといえることは、上記(イ)にて検討したとおりである。
以上のことからみて、引用発明は「前記映画データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップと」を含んでいるといえる。

(オ)「前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていない」について

引用発明は暗号化に係る構成を有していないから、「前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていない」の構成を有していない。

オ.一致点、相違点

以上の対比によれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

《一致点》
データ配信装置によって実行される映画データ・セグメントを供給する方法であって、
(a)前記映画データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)前記映画データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)前記映画データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含、
む方法。

《相違点》
本件補正発明は、「前記映画データ・セグメントの第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていない」構成を有しているのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

カ.判断
上記相違点について検討する。
番組(映画)を供給するとき、(番組の最初の部分等の)一部を暗号化せず、その他の部分を暗号化することは、下記の周知文献(1ないし3)等にみられるように本願出願前周知の技術事項である。
引用発明も上記周知技術と同様、番組(映画)の供給の方法に係る発明である以上、上記周知技術を引用発明に適用する動機付けがあるということができ、その適用に際し、当業者であれば、引用発明の、映画1の最初の部分であるA1を暗号化しない部分とし、他の部分を暗号化する部分とすることは普通に思い至るというべきである。
したがって、引用発明の、映画1の最初の部分であるA1を暗号化しない部分とし、他の部分を暗号化する部分とすることによって、上記相違点を克服して本願発明にいたることは、引用発明および周知技術に基づき当業者が容易になし得たことである。

記(周知文献)

周知文献1:特開平8-95915号公報
段落【0031】には「データの所定の部分の部分的に品質低下させたバージョンを生成するため」、「データの1つ以上の部分を暗号化し、残りの部分を暗号化せずに認識可能とすること」、「データの短いプレビューを提供すること」が開示されており、上記データに映画が含まれることは、周知文献1全体の記載から明らかである。

周知文献2:特開平5-95296号公報
段落【0011】には、「ペーパビュー・パー・タイム番組の最初の所定時間を」、「スクランブル無しの無料視聴時間」とすることが記載されている。

周知文献3:特表平5-506136号公報(10頁右上欄10行?左下欄8行等参照)
上記参照箇所には「視聴毎払いプログラムは、視聴毎払いプログラムの始まりの後所定の区間(好ましくは10分程度)スクランブル解除のままにとどまる。この区間は「催促」区間と呼ばれる。催促区間の間・・・視聴毎払いプログラムの始めを視聴できる。しかし、催促区間の終了後、視聴毎払いプログラムは再びスクランブルされる」ことが記載されている。

キ.効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。。

ク.まとめ(独立特許要件)
以上によれば、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

平成20年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成19年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成19年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項3】 データ配信装置によって実行されるデータ・セグメントを供給する方法であって、
(a)データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含み、
前記データ・セグメントの第1の部分が暗号化されていないことを特徴とする方法。

第4 査定の検討
1.刊行物に記載された発明
刊行物1には、上記第2の2.(3)イ.の事項が記載されており、刊行物1に記載された発明として、上記第2の2.(3)ウ.(ウ)の「引用発明」を認定することができる。

2.対比
本願発明は、本件補正発明の
I.「映画データ・セグメント」の「映画」の構成、および
II.「第1の部分以外は暗号化されているが、前記第1の部分は暗号化されていない」の、「第1の部分以外は暗号化されている」の構成
をそれぞれ削除したものといえる。
そして、本願発明の「データ・セグメント」は、本件補正発明の「映画データ・セグメント」の概念も含むものであるから、本件補正発明においてした、「映画データ・セグメント」の対比を援用することができる。
また、本願発明の「第1の部分が暗号化されていない」の構成は、本件補正発明の「第1の部分は暗号化されていない」においてした対比を援用することができる。

3.一致点・相違点
以上の対比によれば、本願発明と引用発明とは以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

《一致点》
データ配信装置によって実行されるデータ・セグメントを供給する方法であって、
(a)データ・セグメントの最初の部分である第1の部分を第1のチャンネル上に第1の頻度で繰り返して供給するステップと、
(b)データ・セグメントの前記第1の部分に続く第2の部分を第2のチャンネル上に第2の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第2の頻度が前記第1の頻度よりも低いステップと、
(c)データ・セグメントの前記第2の部分に続く第3の部分を第3のチャンネル上に第3の頻度で繰り返して供給するステップであって、該第3の頻度が前記第2の頻度よりも低いステップとを含
む方法。

《相違点》
本願発明は、「第1の部分が暗号化されていない」構成を有しているのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点についての判断は、前記第2の2.カ.と同様である。

5.効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

6.まとめ(査定の検討)
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、残る請求項1、2、4、5に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-17 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2000-525998(P2000-525998)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 梅本 達雄
乾 雅浩
発明の名称 データ・セグメントを供給し、取り出す方法  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  
代理人 山川 茂樹  

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