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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1251395 |
審判番号 | 不服2009-10635 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-04 |
確定日 | 2012-01-31 |
事件の表示 | 特願2001-553579「構成部品を接続する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月26日国際公開、WO01/54189、平成15年 7月 2日国内公表、特表2003-520447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2001年1月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年1月17日、スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、平成20年7月1日付けの拒絶理由通知に対して、平成21年1月6日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、同年3月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月4日に審判請求がされるとともに、同年6月17日付けで手続補正書が提出されたものである。 そして、平成22年12月3日付けの審尋に対して、平成23年4月1日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成21年6月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、以下のとおりである。 〈補正事項a〉 ・本件補正前の請求項1の「第二の非犠牲基層の上に設けられた構成部品」を本件補正後の請求項1の「第二の非犠牲基層の上に設けられたエレクトロニクス装置」と補正し、本件補正前の請求項1の「第一の複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び第二の複数の構成部品を保持する前記非犠牲基層」を本件補正後の請求項1の「複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び複数の前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層」と補正し、本件補正前の請求項1の「非犠牲基層上の構成部品」を本件補正後の請求項1の「非犠牲基層上のエレクトロニクス装置」と補正する。 〈補正事項b〉 ・本件補正前の請求項3の「前記非犠牲基層上の構成部品」を、本件補正後の請求項3の「前記非犠牲基層上のエレクトロニクス装置」と補正する。 〈補正事項c〉 ・本件補正前の請求項4の「前記基層には前記電気的相互接続のための接点パッドが設けられる」を、本件補正後の請求項4の「前記基層には電気的相互接続のための接点パッドが設けられる」と補正する。 〈補正事項d〉 ・本件補正前の請求項5の「前記非犠牲基層上の構成部品」を、本件補正後の請求項5の「前記非犠牲基層上のエレクトロニクス装置」と補正する。 2.補正目的の適否 (1)補正事項aについて 補正事項aにおいて、本件補正前の請求項1の一方の「構成部品」を、本件補正後の請求項1の「エレクトロニクス装置」と補正することは、前記一方の「構成部品」を「エレクトロニクス装置」に限定したものである。 なお、本件補正前の請求項1の「第一の」及び「第二の」を、本件補正後の請求項1で削除したことは、本件補正前の請求項1の前記一方の「構成部品」が、上記の通り、「エレクトロニクス装置」という名称となったため、「構成部品」を「第一の」及び「第二の」で区別する必要がなくなったことによるものである。 したがって、補正事項aは、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものである。 (2)補正事項bについて 補正事項bは、補正前の請求項3の「構成部品」を、補正後の請求項3の「エレクトロニクス装置」と補正したものであるから、補正事項bは、前記補正事項aと同じく、前記の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 (3)補正事項cについて 補正事項cは、先行詞がないにもかかわらず用いられた用語「前記」を削除する補正であり、誤記の訂正を目的とする補正に該当する。 (4)補正事項dについて 補正事項dは、補正前の請求項5の「構成部品」を、補正後の請求項5の「エレクトロニクス装置」と補正したものであるから、補正事項dは、前記補正事項aと同じく、前記の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 したがって、特許請求の範囲についての本件補正は、平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号及び3号に規定する要件を満たす。 そこで、以下、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかを、請求項1に係る発明について検討する。 3.独立特許要件を満たすかどうかの検討 (1)本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。 【請求項1】 「第一の犠牲基層の上に設けられた構成部品及び第二の非犠牲基層の上に設けられたエレクトロニクス装置を組み合わせて集積化した装置を形成する方法において、 複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び複数の前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層をそれぞれ中間の接合材料により接合するステップと、 前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化するステップと、 犠牲基層の構成部品を非犠牲基層上のエレクトロニクス装置と相互に接続するステップとを備える方法。」 (2)引用例の表示 引用例1:特開平9-210769号公報 (3)引用例1の記載と引用発明 (3-1)引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平9-210769号公報(以下「引用例1」という。)には、「浮遊式微細構造を製造するための方法および浮遊式微細構造処理アセンブリ」(発明の名称)に関して、図1?図7、図13?図17とともに、次の記載がある。(下線は、参考のため、当審において付したものである。) ア.発明の背景等 ・【0001】 【発明の背景】この発明は、微細構造であって、両立しにくい処理工程を用いて準備されなければならないが、最終的な微細構造の最終生産物に物理的に近接した関係で一体化されなければならない、複数の下部構造からなるものの製造に関する。 【0002】浮遊式微細構造(Suspended microstructure)はさまざまな用途、主に、動作するために熱的または機械的分離を必要とする用途のために開発されてきた。熱的分離のカテゴリにおいては恐らくマイクロボロメータが最もよい例だろう。マイクロボロメータは、従来の表面微細加工技術を用いて多重化集積回路の上に浮遊された、小さな熱センサのアレイを用いる。 【0003】機械的分離のために浮遊されたデバイスのカテゴリは多くの精密機械の用途を含む。表面加工技術およびバルク加工技術の両方を用いて、加速度計、ジャイロスコープ、マイクロフォン、圧力センサおよび移動式ミラーディスプレイといった多くのディスクリートなデバイスが作られたきた。 【0004】赤外線ボロメータアレイに関する先行技術はハネウェル処理によって最もよく表わされ、このハネウェル処理は、シリコン集積回路の上部上にさまざまな材料を堆積、エッチングおよびパターン処理することを伴う。集積回路は高温度、イオン衝撃または化学的環境といった状況に対し感度が高いため、これらの付加的な処理工程は厳しく制限される。処理、材料の選択および結果として生じるデバイスの品質には妥協が必要である。」 イ.発明の概要 ・「【0005】 【発明の概要】この発明は浮遊式微細構造を製造するための方法にかかわり、この方法は一時的な基板に第1の面を設けるステップと、第1の面上に第1の微細構造を製造して第1の微細構造アセンブリを形成するステップと、最終基板に第2の面を設けるステップと、第2の面上に第2の微細構造を製造して第2の微細構造アセンブリを形成するステップと、少なくとも1つの接続エレメントを形成して、第1の微細構造アセンブリと第2の微細構造アセンブリとを、第1の面と第2の面とが予め定められたように分離されかつ整列されて向かい合うように結合するステップと、第1の微細構造と第2の微細構造との間に取り除き可能な接合媒体を導入して2つの微細構造アセンブリを一時的に固定するステップと、一時的な基板を取り除くステップと、接合媒体を取り除き、それにより第1の微細構造と第2の微細構造との間の分離および整列関係を保ったまま、第1の微細構造が最終基板に固定された状態にするステップとを含む。 ……(中略)…… 【0010】この発明によって製造される浮遊式微細構造処理アセンブリは第1の微細構造アセンブリであって、第1の面と、第1の面上に製造される他第1の微細構造とを有する一時的な基板を備えるものと、第2の微細構造アセンブリであって、第2の面と、第2の面上に製造される第2の微細構造とを有する最終基板を含むものと、第1の微細構造アセンブリと第2の微細構造アセンブリとを予め定められたように分離されかつ整列関係に配置されるように結合するための接続エレメントと、一時的な基板が取り除かれるまで第1の微細構造アセンブリを第2の微細構造アセンブリに一時的に固定する取り除き可能な接合とを含む。」 ウ.発明の実施形態 ・「【0012】 【詳細な説明】この発明は、半導体集積回路上の浮遊式薄膜微細構造エレメントまたはエレメントのアレイの製造に関する。製造は、一時的な基板上に微細構造を形成し、その後この中間アセンブリをシリコンウェハ上に移動させ、一時的な基板を取り除くことによって達成される。この発明は1つの好ましい実現例のうちのいくつかの例を述べることによって例示でき、この1つの好ましい実施例は、抵抗器、半導体ダイオード、焦電気キャパシタまたは熱電接合といった温度に対する感度の強いデバイスから作られる微細構造を備えた、熱赤外線焦点面アレイ(IR FPAs)に関わる。浮遊式微細構造は薄膜によって作られるため、熱容量が非常に小さく、かつ基板から熱的に十分に分離されるよう設計されるが、これらはいずれも熱検出器にとって重要な特性である。熱アレイ微細構造を製造するために2つの試みが考えられる。これらの試みのうちいずれにおいても、構造およびシリコン集積回路の間の電気相互接続はまた浮遊式薄膜構造に機械的な支持を提供する。第1の機構において、検出器アレイウェハおよびマルチプレクサウェハ上に別個に形成され、その後1対1で結合される、対になったインジウムまたは半田バンプによって相互接続が達成される。第2の機構において、相互接続は金属の薄膜によって作られ、この薄膜は、一時的な基板を取り除いた後に堆積されて微細構造をシリコン集積回路に結合する。これらの2つの試みは、VO_(2) 薄膜抵抗器の例として以下により詳細に説明される。はじめの2つの機構を、浮遊式構造の1つのレベルよりも高く延ばす第3の機構も説明される。」 エ.実施例1 ・「【0013】実施例1 第1の機構において、図1の断面図に描かれるように、多くの販売業者から容易に入手できるような(半導体回路の処理に適する)良質の結晶の一時的なシリコンウェハ基板102を入手することによって処理が始まる。100?200ナノメータの厚さのSiO_(2) の層104が処理表面上に堆積される。これは、いくつかの技術のうちのいずれであってもよいが、酸化物を生成するために典型的には熱処理が用いられる。この酸化物層はその後の堆積のために接着表面を提供するが、その上に形成される後の構造に不適当な応力をもたらさないよう十分に薄い。 【0014】第1のSi_(3) N_(4) 層106がSiO_(2) 層上に堆積されるが、ここでもまたこの堆積は、当業者には容易に明らかであるいくつかの技術のうちいかなるものによってなされてもよい。この実施例には応力のない膜は不可欠ではないが、この層においては応力が低いことが強く所望される。これは、低い応力は最終的な自立構造における曲率を最小にし、それによりデバイスの構成における選択の自由を最大にするからである。 【0015】その後、熱的および電気的特性を最良にするよう選択された温度(典型的には約550℃)において、VO_(2) の層108がSi_(3) N_(4) 層上に堆積される。このステップはこの発明の最も重要な局面のうち1つを例示することに注目したい。すなわちこの局面とは、第1の微細構造(この場合においては熱検出器アレイ)の製造に、最適な処理(この場合においては高堆積温度)を、たとえその処理が、上に浮遊式微細構造が事実上装着される第2の微細構造(この場合においてはシリコンベースのマルチプレクサ集積回路読出装置)に適用できなくても選択可能にすることである。 【0016】図2に示されるように、VO_(2) 層108は標準的なフォトリソグラフィ技術、典型的にはドライエッチング処理を用いる技術によって、(いくつかの形式が当業者には公知である)検出器にパターニングされる。コンタクトが作られることとなる領域には、コンタクト金属層(典型的にはTiおよびNi)が堆積され、かつフォトリソグラフィでパターニングされ、コンタクト層110のようなコンタクト層を残す。パターニングされた検出器およびコンタクト金属はSi_(3) N_(4)の第2の層112で被覆される。 【0017】図3に描かれるように、被覆されたウェハはその後、コンタクトホールパターンを含むマスクを用いてフォトリソグラフィでパターニングされ、ビアホールは反応性イオンエッチング(RIE)によって被覆窒化物の中にエッチングされ、コンタクト金属面で止まる。自立構造の構造は、ここで詳細に述べられるように、Siベースのマルチプレクサに装着される前にここで形どられるか、または実施例2に述べられるようにデバイスの製造の後の段階で形どられる。いずれの工程もこの出願に述べられるすべての実施例に適用できる。一般的に場所116に示されるような、自立構造の検出器構造のためのパターンを含む別のフォトリソグラフィマスクが与えられ、かつここでもまた窒化物膜およびSiO_(2) 膜を通して反応性イオンエッチングをすることによって、パターンが形どられる。その後、フォトリソグラフィにより形どることを用いて、パッド118といった金属コンタクトパッドおよびバンプ120といったインジウムバンプが堆積される。 【0018】この時点で、処理されたシリコン基板122は、「混成」処理により第2の組の微細構造を含む第2のシリコンウェハに装着できる状態の微細構造を含み、この混成処理は技術に精通する者には周知である。図4に示されるように、マルチプレクサウェハ124であって、(典型的には意図される特定の熱検出器の応用に適するよう設計される)回路の、対応する微細構造アレイを含み、かつ混成のため同様に準備されたものが得られる。熱検出器の微小回路アレイを備えるウェハ122は、微小回路マルチプレクサアレイを備えるウェハ124に混成される。典型的にはこれは、微小位置付け用の整列試験具を用いることによって行なわれ、この整列試験具は力と熱とを与えてマルチプレクサウェハ上にあるコラム120およびインジウムコラム126といった、対応するInコラムの間に圧縮溶接を形成し、この圧縮溶接はウェハの間の接続エレメントとして機能する。溶接された、Inバンプの最終的な高さは2つのウェハの間の間隔を本質的に決定し、この間隔は最終的には浮遊式微細構造とマルチプレクサとの間の間隙を確立する。混成構造はエポキシ128で満たされ、これは典型的にはウェハの間およびインジウムバンプの周りの空間に真空注入をすることによって行なわれる。特定のエポキシの要件に応じて、典型的にはいくらか加熱することによってエポキシは硬化される。 【0019】図5に示されるように、検出器構造の下の基板を(2?5ミル)の薄い量だけ残してすべて取り除くために機械的ラッピングまたは研削が用いられる。このシリコンウェハの除去を仕上げるために、(シリコン処理技術に精通する者には周知である)適切なガスの種類による反応性イオンエッチングが用いられる。エッチ液はSiをエッチングすることに十分選択的であるため、下にあるSiO_(2) 膜を、無視できる程度に分解することによってSiを一時的な基板から取り除くために(KOH溶液などの)ウェットケミカルエッチングを交互に用いることができる。マルチプレクサウェハの背面を酸化物または窒化物の膜で被覆する保護が必要とされるだろう。 【0020】このとき混成微細構造アレイは、それらを個々のデバイスに分けるよう分割されてもよい。形どられた検出器の周りに、シリコンの除去によって露出していたエポキシ層を取り除くためにここで酸素プラズマが用いられる。このドライエッチング処理は十分な全方向性を有するので、検出器の下のエポキシの部分さえ取り除き、検出器に自立構造であって、かつInバンプコンタクトによって浮遊された形態をもたらし、この、Inバンプコンタクトはさらに検出器に電気コンタクトを提供する。検出器の浮遊された位置は図6によってさらに示され、これは図5の検出器側の平面図である。図7は、2次元の検出器アレイ130を形成するために個々の検出器がいかに組み合わされるかを示す。 【0021】エポキシの埋め戻しおよびドライエッチングを用いることには、先行技術に対する大きな改善が見られる。これは、プロセッサが、自立構造を得るために先行技術に用いられる他の処理に固有な汚染および表面張力による影響に耐える必要がないからである。もし所望されるならば、さらに取扱いを容易にするために、デバイスがシステムまたはフォルダの中にパッケージ化された後に、この最終のエポキシ除去ステップが行なわれてもよい。仕上げられたデバイスはこれで使用できる状態である。」 オ.実施例2 ・「【0028】実施例2 図13から図17までに示されるボロメータアレイの製造は、実施例1の処理に類似して行なわれ、これは図13におけるようにSiO_(2) 層504、Si_(3) N_(4) 層506およびVO_(2) 層508をシリコンウェハ基板502上に堆積し、その後コンタクトパッド510といったコンタクト金属パッドを堆積することを含む。しかしこの実施例においては、パッドは以下に説明される理由で中実の長方形ではなく環状の形状に作られる。このあと実施例1におけるように窒化物被覆512が堆積される。 【0029】図14に進むと、ポスト532といったスペーサポストがマルチプレクサウェハ524上に堆積される。このポストはSiO_(2) 、ガラスまたはアルミニウムといった金属から作ることができる。絶縁ポストの場合には、Alといった適切な金属膜533が堆積され、かつ、ポストの上面にキャップを形成し、さらにSi集積回路の入力リードに電気的に接続するよう形どられる。 【0030】浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522は、エポキシ接着剤528を用いてマルチプレクサウェハ524に接合される。接合は、実施例1に用いられる混成固定物に類似する固定物において達成される。検出器のコンタクト金属パッドおよびマルチプレクサセルが整列するよう2つのウェハが位置づけられる。接合装置はウェハに垂直に均一の圧力を与え、それにより検出器またはマルチプレクサウェハのうち一方の上にあるポストの上部が他方のウェハと密接に接触する。装置は位置合わせされた態様で2つのウェハをともに保持し、一方層の間にエポキシが注入され、かつ接着を固定するよう硬化される。その後機械的に薄くすることと反応性イオンエッチングとの組み合わせによって、実施例1に示されるように検出器からシリコン基板が取り除かれる。図15に示されるように、微細構造パターンはドライエッチング方法を用いてリソグラフィで規定され、かつ形どられる。その後、コンタクトホール534といったビアが、移動した薄膜構造の中に酸化物層および第1の窒化物層を通って開かれ、このビアは環状コンタクトパッド内の穴にある第2の窒化物膜512を通って進み、検出器コンタクト金属518上で止まる。その後、ボロメータとマルチプレクサコンタクトパッドとの間のビアにあり得る薄いエポキシ層をすべて取り除くために酸素プラズマ中でドライエッチングが行なわれる。 【0031】次に図16に示されるように、AlまたはInといった可鍛金属を用いて比較的厚い(1?1.5ミクロンの)膜536を堆積し、相互接続区域を規定するリソグラフィックマスクを適用し、かつ適切なエッチ液によって相互接続区域の外の金属をエッチングすることによって相互接続が形成される。このように堆積された金属は検出器およびマルチプレクサ金属パッドの両方を結合する。これらの相互接続は実施例1のインジウムバンプ溶接と同じ目的を果たす。すなわちこの目的とは、マルチプレクサセルと検出器との間の電気コンタクトを作り、かつエポキシが取り除かれれば浮遊式検出器構造に機械的接続を提供することである。ウェハはその後個々のデバイスに分割され、実施例1に用いられるような酸素プラズマを用いてエポキシが取り除かれ、図17に示されるような完全な検出器となる。インジウムバンプの圧縮溶接に必要な大きな力を用いることを避けるのがこの処理の利点である。」 カ.図面の記載 ・図14には、マルチプレクサウェハ524に形成されたポスト532の表面に堆積された金属膜533と、浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522のコンタクト金属パッド510とが、前記コンタクト金属パッド510の表面に堆積された窒化物被覆512を介して接触していることが、示されている。 ・図15には、マルチプレクサウェハ524に接合され、シリコンウェハ基板502が取り除かれた検出器ウェハ522に、コンタクトホール534が、SiO_(2) 層504、Si_(3) N_(4) 層506及びVO_(2) 層508を通ってコンタクトパッド510の下面に達し、さらに、当該コンタクトパッド510及び窒化被膜層512を通って、前記マルチプレクサウェハ524に形成されたポスト532上の検出器コンタクト金属518上で止まるように形成されていることが、示されている。 (3-2)引用発明 キ.ウの「第2の機構において、相互接続は金属の薄膜によって作られ、この薄膜は、一時的な基板を取り除いた後に堆積されて微細構造をシリコン集積回路に結合する。これらの2つの試みは、VO_(2) 薄膜抵抗器の例として以下により詳細に説明される。」、エの「VO_(2) 層108は標準的なフォトリソグラフィ技術、典型的にはドライエッチング処理を用いる技術によって、(いくつかの形式が当業者には公知である)検出器にパターニングされる。」、オの「図13から図17までに示されるボロメータアレイの製造は、実施例1の処理に類似して行なわれ」、「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522は、エポキシ接着剤528を用いてマルチプレクサウェハ524に接合される。接合は、実施例1に用いられる混成固定物に類似する固定物において達成される。検出器のコンタクト金属パッドおよびマルチプレクサセルが整列するよう2つのウェハが位置づけられ」及び「マルチプレクサセルと検出器との間の電気コンタクトを作り、かつエポキシが取り除かれれば浮遊式検出器構造に機械的接続を提供する」の各記載において、「検出器」が「ボロメータアレイ」における「ボロメータ」となること、「マルチプレクサウェハ524」には「マルチプレクサセル」が設けられていること、及び、当該「マルチプレクサセル」は「シリコン集積回路」で形成されることは、いずれも、明らかである。 したがって、前記各記載から、引用例1には、 浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522に設けられたボロメータとなる検出器と、マルチプレクサウェハ524に設けられたシリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセルとを相互接続したボロメータアレイの製造方法、 が記載されている。 ク.オの「図13から図17までに示されるボロメータアレイの製造は、実施例1の処理に類似して行なわれ、これは図13におけるようにSiO_(2) 層504、Si_(3) N_(4) 層506およびVO_(2) 層508をシリコンウェハ基板502上に堆積し、その後コンタクトパッド510といったコンタクト金属パッドを堆積することを含む。しかしこの実施例においては、パッドは以下に説明される理由で中実の長方形ではなく環状の形状に作られる。このあと実施例1におけるように窒化物被覆512が堆積される。」及びエの「VO_(2) 層108は標準的なフォトリソグラフィ技術、典型的にはドライエッチング処理を用いる技術によって、(いくつかの形式が当業者には公知である)検出器にパターニングされる。」、オの「ポスト532といったスペーサポストがマルチプレクサウェハ524上に堆積される。このポストはSiO_(2) 、ガラスまたはアルミニウムといった金属から作ることができる。絶縁ポストの場合には、Alといった適切な金属膜533が堆積され、かつ、ポストの上面にキャップを形成し、さらにSi集積回路の入力リードに電気的に接続する」、オの「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522は、エポキシ接着剤528を用いてマルチプレクサウェハ524に接合される。」、前記カから、引用例1には、検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502からなる浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522と、マルチプレクサセルを有し、ポスト532と前記ポスト532に堆積した金属膜533を有するマルチプレクサウェハ524とを、エポキシ接着剤528を用いて接合するステップ、が記載されている。 ここで、前記カで述べたとおり、引用例1の「実施例2」を説明したオには、シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセルがマルチプレクサウェハ524に設けられたことは記載されているものの、当該マルチプレクサセルがマルチプレクサウェハ524のどの部分に設けられたかの明示の記載はない。しかし、イの「この発明は浮遊式微細構造を製造するための方法にかかわり、この方法は一時的な基板に第1の面を設けるステップと、第1の面上に第1の微細構造を製造して第1の微細構造アセンブリを形成するステップと、最終基板に第2の面を設けるステップと」及び「この発明によって製造される浮遊式微細構造処理アセンブリは第1の微細構造アセンブリであって、第1の面と、第1の面上に製造される他第1の微細構造とを有する一時的な基板を備えるものと、第2の微細構造アセンブリであって、第2の面と、第2の面上に製造される第2の微細構造とを有する最終基板を含む」の記載から、前記カで述べた「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」は、マルチプレクサウェハ524の面上に設けられることは明らかである。 以上から、引用例1には、 検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502からなる浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522と、その面上にシリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセルを有し、ポスト532と前記ポスト532に堆積した金属膜533を有するマルチプレクサウェハ524とを、エポキシ接着剤528を用いて接合するステップ、 が記載されている。 ケ.オの「その後機械的に薄くすることと反応性イオンエッチングとの組み合わせによって、実施例1に示されるように検出器からシリコン基板が取り除かれる。」から、引用例1には、 浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522からシリコンウェハ基板502が取り除かれるステップ、 が記載されている。 コ.オには、「その後、コンタクトホール534といったビアが、移動した薄膜構造の中に酸化物層および第1の窒化物層を通って開かれ、このビアは環状コンタクトパッド内の穴にある第2の窒化物膜512を通って進み、検出器コンタクト金属518上で止まる。」と記載されている。ここで、前記「検出器コンタクト金属」の記載は、引用例1には、他に存在せず、カで示したように、図15で「518」の符号が用いられているだけである。しかし、図14と図15を対比すれば、同一の部材に対して、図14では「533」の符号が用い、図15では「518」の符号が用いている。したがって、前記「検出器コンタクト金属518」と、オの「金属膜533」とは同一のものを指すことは明らかである。 してみれば、オの上記記載、オの「AlまたはInといった可鍛金属を用いて比較的厚い(1?1.5ミクロンの)膜536を堆積し、相互接続区域を規定するリソグラフィックマスクを適用し、かつ適切なエッチ液によって相互接続区域の外の金属をエッチングすることによって相互接続が形成される。このように堆積された金属は検出器およびマルチプレクサ金属パッドの両方を結合する。」、及び、カから、引用例1には、 コンタクト金属パッド510を通り金属膜533上で止まるコンタクトホール534を形成し、前記コンタクトホール534に可鍛金属を用いた比較的厚い膜536を堆積し、相互接続区域を規定するリソグラフィックマスクを適用し、かつ前記相互接続区域の外の金属をエッチングすることによって、検出器とマルチプレクサセルとの間の相互接続が形成されるステップ、 が記載されている。 上記キ?コによれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522に設けられたボロメータとなる検出器と、マルチプレクサウェハ524に設けられたシリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセルとを相互接続したボロメータアレイの製造方法において、 前記検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502からなる前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522と、その面上に前記マルチプレクサセルを有し、ポスト532と前記ポスト532に堆積した金属膜533を有する前記マルチプレクサウェハ524とを、エポキシ接着剤528を用いて接合するステップと、 前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522から前記シリコンウェハ基板502が取り除かれるステップと、 前記コンタクト金属パッド510を通り前記金属膜533上で止まるコンタクトホール534を形成し、前記コンタクトホール534に可鍛金属を用いた比較的厚い膜536を堆積し、相互接続区域を規定するリソグラフィックマスクを適用し、かつ前記相互接続区域の外の金属をエッチングすることによって、前記検出器と前記マルチプレクサセルとの間の相互接続が形成されるステップとを備える方法。」 (4)対比 (4-1)次に、本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明において、「ボロメータとなる検出器」は「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522」に設けられる。ここで、前記「検出器ウェハ522」は「前記検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502からなる」ものであるから、当該「検出器ウェハ522」において、前記「ボロメータとなる検出器」にパターニングされた「VO_(2) 層508」は「シリコンウェハ基板502」の上に設けられる。よって、引用発明において、「ボロメータとなる検出器」は「シリコンウェハ基板502」の上に設けられる。 そして、前記「シリコンウェハ基板502」は、「前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522から前記シリコンウェハ基板502が取り除かれるステップ」において、「検出器ウェハ522」から「取り除かれる」ものである。 してみれば、引用発明の「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522」における「シリコンウェハ基板502」及び前記「シリコンウェハ基板502」の上に設けられる「ボロメータとなる検出器」は、それぞれ、本願補正発明の「第一の犠牲基層」及び「構成部品」に相当する。 引用発明の「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」は電子回路で構成されることは自明であるから、本願補正発明の「エレクトロニクス装置」に相当する。 そして、前記「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」が「その面上に」設けられた「マルチプレクサウェハ524」は、本願補正発明の前記「エレクトロニクス装置」がその「上」に設けられた「第二の非犠牲基層」に相当する。 また、引用発明の「相互接続した」ことは、本願補正発明の「組み合わせ」たことに相当する。 引用発明の「ボロメータアレイ」は、「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」をその構成要素として含む。ここで、引用例1においては、前記「(3-1)引用例1の記載」に列挙した「エ」に「処理されたシリコン基板122は、「混成」処理により第2の組の微細構造を含む第2のシリコンウェハに装着できる状態の微細構造を含み、この混成処理は技術に精通する者には周知である。図4に示されるように、マルチプレクサウェハ124であって、(典型的には意図される特定の熱検出器の応用に適するよう設計される)回路の、対応する微細構造アレイを含み、かつ混成のため同様に準備されたものが得られる。熱検出器の微小回路アレイを備えるウェハ122は、微小回路マルチプレクサアレイを備えるウェハ124に混成される。」と記載されるとおり、「ボロメータとなる検出器」が設けられた「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522」と、「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」が設けられた「マルチプレクサウェハ524」とを一体化することを「混成処理」と称している。 してみれば、前記「ボロメータとなる検出器」が設けられた「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522」と前記「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」が設けられた「マルチプレクサウェハ524」とが一体化された「ボロメータアレイ」は「混成」集積回路(ハイブリッド集積回路)をなすものである。したがって、引用発明の「ボロメータアレイ」は、本願補正発明の「集積化した装置」に相当する。 以上から、引用発明の「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522に設けられたボロメータとなる検出器と、マルチプレクサウェハ524に設けられたシリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセルとを相互接続したボロメータアレイの製造方法」は、本願補正発明の「第一の犠牲基層の上に設けられた構成部品及び第二の非犠牲基層の上に設けられたエレクトロニクス装置を組み合わせて集積化した装置を形成する方法」に相当する。 イ.引用発明の「前記検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502」は、引用発明が「ボロメータ」の「アレイ」の「製造方法」であることからみて、複数の「ボロメータとなる検出器」を有することは明らかである。したがって、引用発明において、「ボロメータアレイ」の「製造」するための「浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522」における「シリコンウェハ基板502」が複数の「ボロメータとなる検出器」を有することは、本願補正発明の「前記犠牲基層」が「複数の構成部品を保持する」ことに相当する。 以上のように、引用発明の「シリコンウェハ基板502」が複数の「ボロメータとなる検出器」を有するから、当該「ボロメータとなる検出器」に「形成」される「コンタクト金属パッド510」は、複数「形成」されるものである。してみれば、「検出器ウェハ522」と「マルチプレクサウェハ524」とを「エポキシ接着剤528を用いて接合する」とき、前記「コンタクト金属パッド510」に対応する「金属膜533」が「堆積」される「ポスト532」を、前記「マルチプレクサウェハ524」が複数有することは明らかである。しかしながら、引用発明の「マルチプレクサウェハ524」が「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」を複数有するかどうかは、不明である。したがって、引用発明の「マルチプレクサウェハ524」が「その面上に前記マルチプレクサセルを有」することと、本願補正発明の「前記非犠牲基層」が「複数の前記エレクトロニクス装置を保持する」こととは、非犠牲基層がエレクトロニクス装置を保持する点で共通する。 そして、引用発明の「エポキシ接着剤528」は、本願補正発明の「中間の接合材料」に相当する。 すると、引用発明の「前記検出器にパターニングされたVO_(2) 層508とコンタクト金属パッド510を形成し、その表面に窒化物被覆512を形成したシリコンウェハ基板502からなる前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522と、前記マルチプレクサセルを有し、ポスト532と前記ポスト532に堆積した金属膜533を有する前記マルチプレクサウェハ524とを、エポキシ接着剤528を用いて接合するステップ」と、本願補正発明の「複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び複数の前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層をそれぞれ中間の接合材料により接合するステップ」とは、いずれも、複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層をそれぞれ中間の接合材料により接合するステップである点で共通する。 ウ.本願補正発明の「前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化するステップ」において、「前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化する」ことは、「前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化する」ことと「前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化する」ことの択一的な記載であり、また、このうちの「前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化する」ことは、「前記犠牲基層をパターン化」「する」ことと「前記犠牲基層を」「薄厚化する」ことの択一的な記載であるから、当該「ステップ」においては、「前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化する」ことと、「前記犠牲基層をパターン化」「する」ことと、「前記犠牲基層を」「薄厚化する」ことの、いずれか一つを選択することで足りる。 そして、引用発明の「前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522から前記シリコンウェハ基板502が取り除かれる」ことは、本願補正発明の「前記犠牲基層を」「薄厚化する」ことに対応するから、引用発明の「前記浮遊式微細構造を有する検出器ウェハ522から前記シリコンウェハ基板502が取り除かれるステップ」は、本願補正発明の「前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化するステップ」に相当する。 エ.上記アの記載も参照すると、引用発明の「前記マルチプレクサセルと前記検出器との間の相互接続が形成される」ことは、本願補正発明の「犠牲基層の構成部品を非犠牲基層上のエレクトロニクス装置と相互に接続する」ことに対応するので、引用発明の「前記コンタクト金属パッド510を通り前記金属膜533上で止まるコンタクトホール534を形成し、前記コンタクトホール534に可鍛金属を用いた比較的厚い膜536を堆積し、相互接続区域を規定するリソグラフィックマスクを適用し、かつ前記相互接続区域の外の金属をエッチングすることによって前記マルチプレクサセルと前記検出器との間の相互接続が形成されるステップ」は、本願補正発明の「犠牲基層の構成部品を非犠牲基層上のエレクトロニクス装置と相互に接続するステップ」に相当する。 (4-2)そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「第一の犠牲基層の上に設けられた構成部品及び第二の非犠牲基層の上に設けられたエレクトロニクス装置を組み合わせて集積化した装置を形成する方法において、 複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層をそれぞれ中間の接合材料により接合するステップと、 前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化するステップと、 犠牲基層の構成部品を非犠牲基層上のエレクトロニクス装置と相互に接続するステップとを備える方法。」 《相違点》 本願補正発明は、「非犠牲基層」が、「複数の前記エレクトロニクス装置を保持する」のに対して、引用発明は、本願補正発明の「非犠牲基層」に対応する「マルチプレクサウェハ524」が、本願補正発明の「エレクトロニクス装置」に対応する「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」を有するものの、引用発明の前記「マルチプレクサセル」は、複数かどうかが、不明である点。 (5)相違点についての判断 ア.前記「(4)対比」の項の(4-1)の「イ」で述べたように、引用発明の「マルチプレクサウェハ524」が「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」を複数有するかどうかは、不明である。そして、引用例1には、引用発明の「マルチプレクサセル」については、前記「(3-1)引用例1の記載」の項で挙げた「オ」、すなわち、「実施例2」にしか記載されておらず、当該「オ」の「実施例2」には、「マルチプレクサウェハ524」の「面上」に「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」を何個設けるのかは、何ら記載されていない。 しかしながら、引用例1の「実施例1」においては、同「エ」の段落【0018】に「熱検出器の微小回路アレイを備えるウェハ122は、微小回路マルチプレクサアレイを備えるウェハ124に混成される。」と記載され、ウェハ122に熱検出器の微小回路を複数設けるとともに、ウェハ124に微小回路マルチプレクサを複数設けることが記載されている。 イ.引用発明は、「ボロメータアレイの製造方法」であるので、「ボロメータアレイ」は複数の「ボロメータ」を有している。そして、前記「ボロメータアレイ」が複数の前記「ボロメータ」を有する場合には、引用発明の「シリコン集積回路で形成されたマルチプレクサセル」を、1つではなく、複数とすることは、当然に考慮されるべきことである。 そして、上記アで述べた通り、引用例1の「実施例1」においては、熱検出器の微小回路とともに、微小回路マルチプレクサを、複数設けることが記載されている。 ウ.してみれば、引用発明の「その面上に前記マルチプレクサセルを有し、ポスト532と前記ポスト532に堆積した金属膜533を有する前記マルチプレクサウェハ524」において、当該「マルチプレクサウェハ524」の「面上」に前記「マルチプレクサセル」を複数設けることにより、本願補正発明の「複数の前記エレクトロニクス装置を保持する前記非犠牲基層」となすことは、当業者が適宜設定できた程度のことと認められる。 エ.審判請求人は、「請求の理由」として、「(4)本願発明が特許されるべき詳細な理由」において、「上述した本願発明の特徴に対し、引用文献1に記載のものにあっては、2つの基板に設けられた部分同士を圧力をもって接触させ、その形態において2つの基板の間に形成された空間にエポキシを注入するものであって、この注入を行うには自ずと一定の大きさ以上の間隔が必要であり、得られた集積化した装置の厚さを必要以上に大きなものとせざるを得ない。」と主張している。 しかしながら、本件補正後の請求項1には、「犠牲基層」及び「非犠牲基層」の「接合」方法に関しては、「それぞれ中間の接合材料により接合する」と記載されているだけであって、具体的な「接合」方法を何ら特定していない。 したがって、前記主張は本件補正後の請求項1の記載に基づくものではないので、これを採用することができない。 オ.また、審判請求人は、平成23年4月1日付けの回答書において、「このため、引用文献1は、本願請求項1に係る発明によって得られる中間の接合した層に当業者が想到するための理由または動機付けとは単純に成り得ず、当業者は、引用文献1の記載に基づいて本願請求項1に係る発明に容易に想到することはできません。」と主張している。 しかしながら、本件補正後の請求項1には、「中間の接合した層」の記載は存在せず、前記主張は本件補正後の請求項1の記載に基づくものではない。 そこで、仮に、前記「中間の接合した層」が、「中間の接合材料」によって形成される層を示しているとする。しかし、引用発明も、「検出器ウェハ522」と「マルチプレクサウェハ524」とを「エポキシ接着剤528を用いて接合する」ものであるから、前記「検出器ウェハ522」と「マルチプレクサウェハ524」の「接合」後は、各「ウェハ」の「中間」に「接合」材料であった「エポキシ接着剤528」の層を有することとなる。 なお、引用例1には、引用発明の「方法」によって「製造」される「ボロメータアレイ」が、「製造」の中間段階においては前記「エポキシ接着剤528」の層を有すること、完成前には前記「エポキシ接着剤528」の層は除去されること、が記載されている。この点でも、本願明細書の発明の詳細な説明の記載内容(たとえば、段落【0029】及び段落【0031】、段落【0034】及び段落【0035】を参照)と相違するところがない。 したがって、前記「中間の接合した層」が、本願発明の「中間の接合材料」によって形成される層を示していると仮定すると、引用発明も同様の中間の接合した層を有するものである。 以上から、前記主張は当を得ておらず、これを採用することができない。 (6)検討のまとめ 以上のとおり、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。そして、本願補正発明の効果は、引用発明から当業者が予期し得たものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.小括 以上の次第で、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下すべきものである。 第3.本願発明 1.以上のとおり、本件補正(平成21年6月17日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の請求項1(平成21年1月6日に提出された誤訳訂正書により補正された請求項1)に記載された、次のとおりのものである。 【請求項1】 「第一の犠牲基層の上に設けられた構成部品及び第二の非犠牲基層の上に設けられた構成部品を組み合わせて集積化した装置を形成する方法において、 第一の複数の構成部品を保持する前記犠牲基層及び第二の複数の構成部品を保持する前記非犠牲基層をそれぞれ中間の接合材料により接合するステップと、 前記犠牲基層をパターン化し且つ薄厚化するか、又は、前記犠牲基層をパターン化或いは薄厚化するステップと、 犠牲基層の構成部品を非犠牲基層上の構成部品と相互に接続するステップとを備える方法。」 2.引用例1の記載と、引用発明については、前記「第2.平成21年6月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件を満たすかどうかの検討」の「(3)引用例1の記載と引用発明」の、「(3-1)引用例1の記載」及び「(3-2)引用発明」の項において認定したとおりである。 3.対比・判断 前記「第2.平成21年6月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定」の、「1.本件補正の内容」の「〈補正事項a〉」及び「2.補正目的の適否」の「(1)補正事項aについて」の各項において検討したように、本願補正発明は、本件補正前の発明の「構成部品」を、「エレクトロニクス装置」と限定したものである。逆に言えば、本件補正前の発明(本願発明)は、本願補正発明から、少なくとも上記の限定をなくしたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、前記「第2.平成21年6月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件を満たすかどうかの検討」の、「(4)対比」及び「(5)相違点についての判断」の各項において検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.結言 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-08 |
結審通知日 | 2011-09-09 |
審決日 | 2011-09-21 |
出願番号 | 特願2001-553579(P2001-553579) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 英樹 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
小川 将之 恩田 春香 |
発明の名称 | 構成部品を接続する方法 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 富田 博行 |