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審決分類 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B01J
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B01J
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B01J
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部無効 2項進歩性  B01J
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  B01J
管理番号 1251820
審判番号 無効2010-800174  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-29 
確定日 2012-01-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4531873号発明「液化ガスの制御配給システム及び方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4531873号の請求項1乃至48に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4531873号(以下、「本件特許」という。)についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成 9年11月21日 特許出願(特願平9-321696号)
(パリ条約による優先権主張 平成8年11月25日、平成9年7月11日、アメリカ合衆国)
平成22年 6月18日 特許権の設定登録
平成22年 9月29日 無効審判請求
平成22年11月 1日 上申書提出(請求人)
平成23年 1月18日 上申書提出(被請求人)
平成23年 2月25日 訂正請求書及び答弁書提出(被請求人)
平成23年 4月 4日 弁駁書提出(請求人)
平成23年 6月14日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成23年 6月14日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成23年 6月28日 第1回口頭審理
平成23年 7月12日 上申書提出(被請求人)
平成23年 7月15日 上申書提出(請求人)

第2 訂正の請求
1.訂正の内容
被請求人は平成23年2月25日付けの訂正請求書により明細書の訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、以下の各訂正事項からなるものである。

(1)訂正事項1
次のとおりの本件特許明細書の特許請求の範囲の記載である、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a) ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b) ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C) ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段と、を備えたガス配給システム。
【請求項2】
(d) ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e) 減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項3】
(f) 伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項4】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段と、を備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項5】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項4に記載のガス配給システム。
【請求項6】
ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項4に記載のガス配給システム。
【請求項7】
1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えている請求項6に記載のガス配給システム。
【請求項8】
伝熱速度増加手段は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段をさらに備えた請求項6に記載のガス配給システム。
【請求項9】
伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができる請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項10】
伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項11】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項12】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、上面と、下面と、上記上下面間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項13】
スケールカバーは、上面に取付けられた窪み形状の部材をさらに備えた請求項12に記載のガス配給システム。
【請求項14】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて、加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する手段をさらに備えた請求項12に記載のガス配給システム。
【請求項15】
過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項16】
過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えている請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項17】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプである請求項16に記載のガス配給システム。
【請求項18】
過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項19】
過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備した請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項20】
加熱されるバルブは、ブロックバルブである請求項19に記載のガス配給システム。
【請求項21】
加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっている請求項19に記載のガス配給システム。
【請求項22】
加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えた請求項19に記載のガス配給システム。
【請求項23】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択される請求項19に記載のガス配給システム。
【請求項24】
ヒーターはヒートトレースである請求項23に記載の加熱されるガス配給システム。
【請求項25】
半導体処理装置と請求項1に記載のガス配給システムとを備えた半導体処理システム。
【請求項26】
液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a) ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程と、を備えたガス供給方法。
【請求項27】
(c) ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項28】
(d) 伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項29】
ガスはNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択される請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項30】
伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加する請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項31】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項30に記載のガス供給方法。
【請求項32】
1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項30に記載のガス供給方法。
【請求項33】
伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程を更に備えている請求項32に記載のガス供給方法。
【請求項34】
伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えている請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項35】
伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えている請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項36】
伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項37】
伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項38】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、上面と、下面と、上記上下面間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた請求項37に記載のガス供給方法。
【請求項39】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する工程を更に備えた請求項38に記載のガス供給方法。
【請求項40】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えた請求項27に記載のガス供給方法。
【請求項41】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えた請求項27に記載のガス供給方法。
【請求項42】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えた請求項41に記載のガス供給方法。
【請求項43】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えた請求項27に記載のガス供給方法。
【請求項44】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えた請求項27に記載のガス供給方法。
【請求項45】
加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブである請求項44に記載のガス供給方法。
【請求項46】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択される請求項44に記載のガス供給方法。
【請求項47】
ヒーターはヒートトレースである請求項46に記載のガス供給方法。
【請求項48】
加熱要素は中空部内に巻かれている請求項12に記載のガス配給システム。
【請求項49】
加熱要素は220゜F(104℃)までの温度で操作できる請求項12に記載のガス配給システム。
【請求項50】
中空部の下に更に絶縁層を備え、この絶縁層は加熱要素から上面に熱を向けるのに有効なものである請求項12に記載のガス配給システム。」
を、次のとおりの
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a) ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b) ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C) ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段とを備え、
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えたガス配給システム。
【請求項2】
(d) ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e) 減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項3】
(f) 伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項4】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項5】
ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項6】
1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項7】
伝熱速度増加手段は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項8】
伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができる請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項9】
伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項10】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項11】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた請求項10に記載のガス配給システム。
【請求項12】
スケールカバーは、頂部面に取付けられた窪み形状の部材をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項13】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて、加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する手段をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項14】
過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項15】
過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えている請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項16】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプである請求項15に記載のガス配給システム。
【請求項17】
過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項18】
過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備した請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項19】
加熱されるバルブは、ブロックバルブである請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項20】
加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっている請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項21】
加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えた請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項22】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択される請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項23】
ヒーターはヒートトレースである請求項22に記載の加熱されるガス配給システム。
【請求項24】
半導体処理装置と請求項1に記載のガス配給システムとを備えた半導体処理システム。
【請求項25】
液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a) ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程とを備え、
伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加するガス供給方法。
【請求項26】
(c) ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項27】
(d) 伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項28】
ガスはNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択される請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項29】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項30】
1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項31】
伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程を更に備えている請求項30に記載のガス供給方法。
【請求項32】
伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項33】
伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項34】
伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項35】
伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項36】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた請求項35に記載のガス供給方法。
【請求項37】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する工程を更に備えた請求項36に記載のガス供給方法。
【請求項38】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項39】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項40】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えた請求項39に記載のガス供給方法。
【請求項41】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項42】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項43】
加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブである請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項44】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択される請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項45】
ヒーターはヒートトレースである請求項44に記載のガス供給方法。
【請求項46】
加熱要素は中空部内に巻かれている請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項47】
加熱要素は220゜F(104℃)までの温度で操作できる請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項48】
中空部の下に更に絶縁層を備え、この絶縁層は加熱要素から上面に熱を向けるのに有効なものである請求項11に記載のガス配給システム。」
と訂正する。(なお、上記の下線は訂正箇所を示したものである。)

(2)訂正事項2
次の本件特許明細書の発明の詳細な説明中の
「【0025】
本発明の第三の形態は、液化状態からガスを配給する方法である。この方法は、(a)ガスラインを接続したガスシリンダー中に圧縮液化ガスを定起用する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体の温度が環境温度より高くならないように、環境とシリンダー間の伝熱速度を増加する工程を備えている。」
を、
「【0025】
本発明の第三の形態は、液化状態からガスを配給する方法である。この方法は、(a)ガスラインを接続したガスシリンダー中に圧縮液化ガスを提供する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体の温度が環境温度より高くならないように、環境とシリンダー間の伝熱速度を増加する工程を備えている。」
と訂正する。

2.訂正の可否に対する判断
上記各訂正事項について検討する。
訂正事項1は、以下の内容からなるものである。

(1)訂正前の請求項1に「伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えた」との事項を追加する。

(2)訂正前の請求項3に「請求項1に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項2に記載のガス配給システム」と訂正する。

(3)請求項4を削除する。

(4)訂正前の請求項5を新たな請求項4とし、「請求項4に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項1に記載のガス配給システム」と訂正する。

(5)訂正前の請求項6を新たな請求項5とし、「請求項4に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項1に記載のガス配給システム」と訂正する。

(6)訂正前の請求項7を新たな請求項6とし、「請求項6に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項1に記載のガス配給システム」と訂正する。

(7)訂正前の請求項8を新たな請求項7とし、「請求項6に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項1に記載のガス配給システム」と訂正する。

(8)訂正前の請求項9を新たな請求項8とする。

(9)訂正前の請求項10を新たな請求項9とする。

(10)訂正前の請求項11を新たな請求項10とする。

(11)訂正前の請求項12を新たな請求項11とし、「上面」及び「下面」を「頂部面」及び「底部面」にそれぞれ訂正する。また、「請求項11に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項10に記載のガス配給システム」と訂正する。

(12)訂正前の請求項13を新たな請求項12とし、「上面」を「頂部面」に訂正する。また、「請求項12に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項11に記載のガス配給システム」と訂正する。

(13)訂正前の請求項14を新たな請求項13とし、「請求項12に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項11に記載のガス配給システム」と訂正する。

(14)訂正前の請求項15を新たな請求項14とする。

(15)訂正前の請求項16を新たな請求項15とする。

(16)訂正前の請求項17を新たな請求項16とし、「請求項16に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項15に記載のガス配給システム」と訂正する。

(17)訂正前の請求項18を新たな請求項17とし、「請求項1に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項2に記載のガス配給システム」と訂正する。

(18)訂正前の請求項19を新たな請求項18とする。

(19)訂正前の請求項20を新たな請求項19とし、「請求項19に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項18に記載のガス配給システム」と訂正する。

(20)訂正前の請求項21を新たな請求項20とし、「請求項19に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項18に記載のガス配給システム」と訂正する。

(21)訂正前の請求項22を新たな請求項21とし、「請求項19に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項18に記載のガス配給システム」と訂正する。

(22)訂正前の請求項23を新たな請求項22とし、「請求項19に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項18に記載のガス配給システム」と訂正する。

(23)訂正前の請求項24を新たな請求項23とし、「請求項23に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項22に記載のガス配給システム」と訂正する。

(24)訂正前の請求項25を新たな請求項24とする。

(25)訂正前の請求項26を新たな請求項25とし、「伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加する」との事項を追加する。

(26)訂正前の請求項27を新たな請求項26とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(27)訂正前の請求項28を新たな請求項27とする。

(28)訂正前の請求項29を新たな請求項28とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(29)請求項30を削除する。

(30)訂正前の請求項31を新たな請求項29とし、「請求項30に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(31)訂正前の請求項32を新たな請求項30とし、「請求項30に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(32)訂正前の請求項33を新たな請求項31とし、「請求項32に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項30に記載のガス供給方法」と訂正する。

(33)訂正前の請求項34を新たな請求項32とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(34)訂正前の請求項35を新たな請求項33とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(35)訂正前の請求項36を新たな請求項34とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(36)訂正前の請求項37を新たな請求項35とし、「請求項26に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項25に記載のガス供給方法」と訂正する。

(37)訂正前の請求項38を新たな請求項36とし、「上面」及び「下面」を「頂部面」及び「底部面」にそれぞれ訂正する。また、「請求項37に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項35に記載のガス供給方法」と訂正する。

(38)訂正前の請求項39を新たな請求項37とし、「請求項38に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項36に記載のガス供給方法」と訂正する。

(39)訂正前の請求項40を新たな請求項38とし、「請求項27に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項26に記載のガス供給方法」と訂正する。

(40)訂正前の請求項41を新たな請求項39とし、「請求項27に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項26に記載のガス供給方法」と訂正する。

(41)訂正前の請求項42を新たな請求項40とし、「請求項41に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項39に記載のガス供給方法」と訂正する。

(42)訂正前の請求項43を新たな請求項41とし、「請求項27に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項26に記載のガス供給方法」と訂正する。

(43)訂正前の請求項44を新たな請求項42とし、「請求項27に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項26に記載のガス供給方法」と訂正する。

(44)訂正前の請求項45を新たな請求項43とし、「請求項44に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項42に記載のガス供給方法」と訂正する。

(45)訂正前の請求項46を新たな請求項44とし、「請求項44に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項42に記載のガス供給方法」と訂正する。

(46)訂正前の請求項47を新たな請求項45とし、「請求項46に記載のガス供給方法」とあるのを、「請求項44に記載のガス供給方法」と訂正する。

(47)訂正前の請求項48を新たな請求項46とし、「請求項12に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項11に記載のガス配給システム」と訂正する。

(48)訂正前の請求項49を新たな請求項47とし、「請求項12に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項11に記載のガス配給システム」と訂正する。

(49)訂正前の請求項50を新たな請求項48とし、「請求項12に記載のガス配給システム」とあるのを、「請求項11に記載のガス配給システム」と訂正する。

また、訂正事項2は、以下の内容からなるものである。

(50)【0025】の「定起用する」を「提供する」と訂正する。

次に、上記(1)乃至(50)の訂正の可否について検討する。
上記(1)の訂正は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項4に記載されていた「伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えた」との事項を追加することにより、請求項1並びにこれを引用する訂正前の請求項2乃至25及び請求項48乃至50を減縮する訂正に該当する。
上記(25)の訂正は、訂正前の請求項26に、訂正前の請求項30に記載されていた「伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加する」との事項を追加することにより、訂正前の請求項26及びこれを引用する訂正前の請求項27乃至47を減縮する訂正に該当する。
上記(2)の訂正は、訂正前の請求項3が引用する請求項を1から2に訂正することにより、請求項2の「(d) ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e) 減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段」との事項を追加することになるから、請求項3を減縮する訂正に該当する。
上記(11)、(12)及び(37)の訂正は、用語を発明の詳細な説明の【0058】で用いられている用語に合わせる訂正をし、さらに、請求項の番号が繰り上がることに合わせて引用する請求項を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記(3)乃至(10)、(13)乃至(24)、(26)乃至(36)、(38)乃至(49)の訂正は、請求項の削除及びそれに伴う請求項の番号の繰り上げ、さらに、これに合わせて引用する請求項を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記(50)の訂正は、「定起用」(ていきよう)を「提供」(ていきょう)という、ひらがなで標記すれば「よ」と「ょ」のみが相違する用語に訂正することにより、意味を明確にするものであるから、明らかに誤記の訂正若しくは明りょうでない記載の釈明に該当する。

また、上記(1)の訂正事項は、訂正前の請求項4に記載されていた事項に基づくものであり、上記(25)の訂正事項は、訂正前の請求項30に記載されていた事項に基づくものであり、その他の訂正事項は、請求項の削除に伴う項番の整理及び引用する請求項を整理、及び誤記の訂正をするものであるから、上記の各訂正事項は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされており、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。

3.訂正の可否のまとめ
したがって、平成23年2月25日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第1項並びに第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

第3 本件発明
上記被請求人による訂正請求は、適法なものであるから、本件特許の請求項1乃至48に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明48」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至48に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a) ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b) ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C) ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段とを備え、
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えたガス配給システム。
【請求項2】
(d) ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e) 減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項3】
(f) 伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項4】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項5】
ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項6】
1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項7】
伝熱速度増加手段は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項8】
伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができる請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項9】
伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項10】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項11】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた請求項10に記載のガス配給システム。
【請求項12】
スケールカバーは、頂部面に取付けられた窪み形状の部材をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項13】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて、加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する手段をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項14】
過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項15】
過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えている請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項16】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプである請求項15に記載のガス配給システム。
【請求項17】
過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項18】
過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備した請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項19】
加熱されるバルブは、ブロックバルブである請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項20】
加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっている請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項21】
加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えた請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項22】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択される請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項23】
ヒーターはヒートトレースである請求項22に記載の加熱されるガス配給システム。
【請求項24】
半導体処理装置と請求項1に記載のガス配給システムとを備えた半導体処理システム。
【請求項25】
液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a) ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程とを備え、
伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加するガス供給方法。
【請求項26】
(c) ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項27】
(d) 伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項28】
ガスはNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択される請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項29】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項30】
1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項31】
伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程を更に備えている請求項30に記載のガス供給方法。
【請求項32】
伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項33】
伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項34】
伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項35】
伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項36】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた請求項35に記載のガス供給方法。
【請求項37】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する工程を更に備えた請求項36に記載のガス供給方法。
【請求項38】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項39】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項40】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えた請求項39に記載のガス供給方法。
【請求項41】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項42】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項43】
加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブである請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項44】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択される請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項45】
ヒーターはヒートトレースである請求項44に記載のガス供給方法。
【請求項46】
加熱要素は中空部内に巻かれている請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項47】
加熱要素は220゜F(104℃)までの温度で操作できる請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項48】
中空部の下に更に絶縁層を備え、この絶縁層は加熱要素から上面に熱を向けるのに有効なものである請求項11に記載のガス配給システム。」

第4 請求人が主張する無効理由
1.請求人は、「特許第4531873号特許は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」として、下記の甲第1号証乃至甲第16号証を挙げた上で、請求の理由として以下のように述べている。

「7-1 無効理由の要旨
本件の請求項1乃至請求項50に係る発明は、出願前に頒布された甲第1号証?甲第16号証に記載された発明に基づいて出願時当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項により特許を受けることができず、よって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定に基づき無効とされるべきである。
また、本件の請求項1,4,5,9,11に係る発明は、出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項により特許を受けることができず、よって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定に基づき無効とされるべきである。
さらに、請求項1乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、発明の詳細な説明中の記載は当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に発明が記載されているものとは認められないから、特許法第36条第4項の規定に違反して特許されたものである。従って請求項1乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、同法第123条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである。
更にまた、請求項12乃至請求項14及び請求項26乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。従って請求項12乃至請求項14及び請求項26乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、同法第123条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである。
また、請求項1乃至請求項25及び請求項48乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第3いての本件特許は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。従って請求項1乃至請求項25及び請求項48乃至請求項50に係る発明についての本件特許は、同法第123条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである。」(審判請求書2-3頁)



甲第1号証 西独国特許出願公開第3042944号明細書及びその翻訳文
甲第2号証 SEMINAR TEXTBOOK No.4025 半導体製造プロセス用ガスの超高純度化技術と供給システムの最新動向-微量分析から特殊ガスの法規制まで-、株式会社リアライズ社、1986年10月16日、1-15頁
甲第3号証 実願平3-47965号(実開平4-132300号)のマイクロフィルム
甲第4号証 実願平3-42683号(実開平5-25099号)のCD-ROM
甲第5号証 実願平3-14038号(実開平4-110754号)のマイクロフィルム
甲第6号証 特開平5-283340号公報
甲第7号証 特願平9-321696号に係る平成21年4月9日付け意見書の写し
甲第8号証 特開平8-106972号公報
甲第9号証 特開平5-291217号公報
甲第10号証 特開平6-123381号公報
甲第11号証 特開平7-74113号公報
甲第12号証 特開平5-283371号公報
甲第13号証 特開平8-227836号公報
甲第14号証 特開平7-269741号公報
甲第15号証 国際公開第95/31583号
甲第16号証 特表平2-502683号公報

なお、平成22年11月1日付け上申書において、請求人は「平成22年9月29日提出の審判請求書に記載の甲第1号証について、誤ってドイツ公開公報DE3042944A1を添付してしまいました。そこで、本来提出すべき欧州公開公報EP0052351A2を改めて提出いたします。」として、欧州公開公報EP0052351A2を提出した。

2.さらに、平成23年4月4日付け弁駁書において、「環境温度」、「伝熱ガス」の解釈について、上記訂正請求書に対する弁駁理由に加え、被請求人の平成23年2月25日付け答弁書に対する弁駁を以下のように行なっている。

「7-1 本件訂正発明の解釈について
7-1-1 要旨
「環境温度」は、環境の温度、すなわち、「ガスシリンダーを囲む空気の温度」と解釈すべきである。
「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段(以下、要件Aという)」は、審判請求書の7-2-2-2キに示したとおり、「ガスシリンダー内の液体温度がガスシリンダーを囲む空気の温度を超えないように、空気が連続的にガスシリンダーの表面に沿って連続的に流れる強制体流の場合には、空気の流量を増やして、ガスシリンダーとガスシリンダーを囲む空気との間の外部伝熱係数を増加させる手段」、又は、「ガスシリンダー内の液体温度がガスシリンダーを囲む空気の温度を超えないように、ガスシリンダーを囲む空気の温度を高くして、ガスシリンダーを囲む空気とガスシリンダーとの間の温度差を増加させる手段」或いは「これらを併せ持つ手段」と解釈すべきである。
「伝熱ガス」は、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加するため、環境からシリンダーに熱を伝えるガス」と解釈する。

7-1-2 「環境温度」について
7-1-2-1 被請求人の解釈について
ア 被請求人は、審判事件答弁書(以下、答弁書という)の第3頁第10行?第12行において、「明細書及び図面を考慮すれば、本発明の『環境温度』とは、『ガスが引かれるガスラインを含む、液化状態からガスを分配するシステム』における『環境温度』と解釈すべきである。」と主張している。
イ 被請求人が「環境温度」の解釈の根拠として挙げている本件訂正明細書の段落0013及び段落0017には、「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」が開示されている。しかしながら、「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」には、具体的な技術の内容を詳細に説明されているとは限らず、そこに用いられる用語もまた必ずしも正確に用いられているとは限らない。
ウ 「環境温度」は、本件訂正発明において発明特定事項として用いられている用語であるから、「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」が示されているにすぎない段落0013及び段落0017の記載事項を根拠として解釈すべきではない。本件訂正発明の具体的な技術の内容を説明している記載箇所を根拠として「環境温度」を解釈すべきである。
エ なお、被請求人は、答弁書の第3頁第22行?第28行において、「本件発明における『環境温度』は、『環境温度が熱源のないとき(すなわち、伝熱速度を増加していないとき)のガスシリンダーを囲む空気(環境)の温度』を意図していることは、上述の説明から明確に理解される。」と主張しているが、本件訂正明細書にはこのように理解される根拠となる記載がないため、明確に理解することができない。
オ したがって、被請求人の主張は失当であり、本発明の「環境温度」は、「ガスが引かれるガスラインを含む、液化状態からガスを分配するシステム」における「環境温度」と解釈すべきでない。

7-1-2-2 請求人の解釈について
ア 本件訂正明細書の段落0029には、「環境」の用語が定義されている。一方、本件訂正発明の具体的な技術の内容を説明している段落0029?段落0041及び段落0049?段落0055においても、「環境温度」の用語は定義されていない。このような場合、当業者であれば、本件訂正明細書中に「環境」の用語の定義がある以上、文言どおりに「環境の温度」と解釈すると解すべきである。」(3-4頁)

3.加えて、平成23年7月15日付け上申書により以下の主張の補完を行なっている。

「ア 平成23年6月30日付「第1回口頭審理調書」の被請求人に対する第6項に関する、平成23年7月12日付被請求人上申書における被請求人の主張は、特許明細書中に根拠となる記載がなく失当である。
イ 訂正後の請求項9及び請求項10に記載された本件特許発明についての実施形態が、特許明細書に実質的に開示されていない。したがって、「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」が「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」に付加されて構成された伝熱速度増加手段が、どのようにして「環境とシリンダーとの間の伝熱速度を増加する」のか理解できないものとなっており、訂正後の請求項9及び請求項10に記載された本件特許発明は、その技術的意義が不明であるから、全体として不明確である。」(2頁)

第5 被請求人の反論の要点
1.被請求人は上記第2のように訂正請求を行なうと共に、平成23年2月25日付け答弁書、平成23年6月14日付け口頭審理陳述要領書によって、以下のように請求人の主張する無効理由はいずれも理由がないと主張している。

(1)「環境温度」の解釈について
「明細書及び図面を考慮すれば、本発明の「環境温度」とは、「ガスが引かれるガスラインを含む、液化状態からガスを分配するシステム」における「環境温度」と解釈すべきである。
すなわち、本発明の明細書の段落【0013】には「シリンダーの下流にあるガス分配システム中のより低い温度に起因して、再濃縮を引き起こす。その結果、ガスシリンダーから使用場所へ分配する全ての分配システムを加熱する場合は、このような再濃縮を阻止する必要がある。」と記載されている。
また、段落【0017】には「このシステムは液化ガスを含むシリンダーの圧力を正確に制御し、これと同時にシリンダーから引かれるガス中に入った液滴を最小にするものである。」と記載されている。
従って、これらの記載から、「環境温度」に関する被請求人の解釈は本発明の目的に適合していることは明らかである。」(答弁書3頁)

(2)甲第1号証を用いた容易想到性について
「甲1は、単位時間当たりの或る放出量を確保するために容器の内容物に「正確な」量の熱を伝えるかもしれない。しかし、甲1は、液体の温度を制限または監視することについての動機付けを示していないし、そうすることについての必要性も開示していない。容器内の圧力が下がった際にケース内の温度を高く設定することは、容器内の圧力を高め、更には液体の温度を高める場合もある。容器が通気されておらず且つ断熱されている(甲1の第6頁第14行?22行)という甲1の開示を考慮に入れた場合、液体温度の上昇はより起こり易い。
従って「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加すること」は、甲1の開示に基づいて当業者が容易に想到できるものではない。」(答弁書8頁)

2.加えて、口頭審理を踏まえて、平成23年7月12日付け上申書により、「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」による「伝熱速度の増加」の主張に関して、以下のように前記主張に対する補完を行なっている。

「ウ.先に(2)アで述べたように、「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」とを構成することにより、ガスシリンダーとガスシリンダーキャビネットとの間の「環境」内で強制対流が生じている。
他方、追加された「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」は、「環境」内の空気(伝熱ガス)を暖めるので、この暖かい空気がシリンダーの表面上に送られることとなる。この暖かい空気は、シリンダー表面に滞留することなく、「環境」に生じた強制体流の流れに乗ることになる(被請求人口頭審理陳述要領書10頁14?20行参照)。すなわち、この暖かい空気が「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」とで作られた「環境」内の強制体流の流れに組み込まれることになる。そして、このことにより、「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」もまた環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加することに寄与する結果となる。
なお、シリンダーの表面上に送られる暖かい空気は、シリンダー表面に滞留することなく、伝熱ガスの強制体流の流れに組み込まれるので、この暖かい空気に起因してシリンダー内の液体温度が「環境温度」を超えるようなことはない。」(4頁)

第6 甲各号証の記載事項
請求人の提示した甲各号証のうち、以下のものにはそれぞれ以下の事項が記載されている。
なお、上記「第4 1.」のなお書きのように、平成22年9月29日付け審判請求書に添付された甲第1号証としてのドイツ公開公報DE3042944A1は、平成22年11月1日付け上申書により、前記ドイツ公報と内容が同じで、公知日が相違する欧州公開公報EP0052351A2に差し替えることが請求人から提示され、第1回口頭審理で被請求人もこの差し替えを認めたので、以下、甲第1号証は欧州公開公報EP0052351A2であるとする。

1.甲第1号証
甲1a:「Die Erfindung betrifft ein Verfahren und eine Vorrichtung zum Bereitstellen eines Gases, wobei das Gas in Behaeltern in fluessiger Form oder zusammen mit einem in einer poroesen Masse verteilten Loesungsmittel unter Druck gespeichert ist, und die Behaelter erwaermt werden.」(1頁15-19行:行数は、公報各頁の左側の行数表示を参照している。以下同じ。)
(本発明は、液体の形で又は多孔性の固まりの中に分散された溶媒と共に、ガスを加圧状体で容器中に貯蔵し、及び容器を過熱してガスを供給する方法と装置に関する。)(括弧内の翻訳文は審判請求書15-23頁による。また、文字種のウムラウト及びエスツェットについては表記できないため、Aのウムラウトは「Ae」、aのウムラウトは「ae」のようにeを付し、エスツェットについては、「ss」と代用表記する。以下同じ。)

甲1b:「Der Erfindung liegt daher die Aufgabe zugrunde, ein Verfahren der eingangs erwaehnten Art anzugeben, das nur geringe Heizkosten verursacht, durch das jedoch eine weitgehende Entleerung der Behaelter nicht beeintraechtigt wird und weiterhin eine bestimmte Entnahmemenge pro Zeiteinheit garantiert ist.」(1頁33行-2頁3行)
(従って、本発明の目的は、加熱コストを下げるが、更に容器からのガスの排出を損なうことなく、単位時間当たりの取り出し量を確実に所定の量にする、最初に言及した技術の方法を提供することにある。)

甲1c:「Diese Aufgabe wird erfindungsgemaess dadurch geloest, dass ein oder mehrere Behaelter in eine ausschliesslich gasdichte Teile dieser Behaelter umschliessende Kapsel eingebaut wird bzw. werden, wobei der Kapselinnenraum waehrend der Gasentnahme wenigstens zeitweise erwaermt wird, waehrend der Aussenraum der Kapsel belueftet wird.」(2頁5-10行)
(この目的は、本発明により、1つ又は多数の容器を、該容器のもっぱら気密の部分を囲むカプセルの中に組み入れ、ガスを取り出す間カプセル内部空間を少なくとも一時的に加熱し、他方、カプセルの外部空間を換気することにより達成される。)

甲1d:「Der Heizenergieaufwand bei der Entnahme von Gasen aus Flaschen setzt sich hauptsaechlich aus folgenden Energiebeitraegen zusammen:
1. Energie fuer die Entloesung eines Gases aus einem Loesungsmittel, in dem das Gas geloest ist, wobei das Gas zusammen mit dem Loesungsmittel in einer poroesen Masse unter Druck verteilt ist bzw. Energie fuer die Verdampfung eines fluessig gespeicherten Gases.
2. Energie, die erforderlich ist, um Waermeverluste durch die Waende des beheizten Raumes auszugleichen.」(2頁16-27行)
(ガスをボンベから取り出す場合のエネルギー消費は、主に以下に述べるエネルギーの寄与から成り立つ。
1.ガスが溶解している溶媒からガスを取り出すエネルギーで、この場合、ガスは溶媒と共に多孔性の固まりの中に加圧状体で分散されている。又は、液体として貯蔵されたガスを蒸発するためのエネルギー。
2.加熱された空間の壁による熱損失を補うために必要なエネルギー。)

甲1e:「Daher ist die Oberflaeche des beheizten Raumes (der Kapsel) kleiner als bisher, wodurch die unter Punkt 2 angefuehrten Waermeverluste ueber die Waende des beheizten Raumes reduziert werden koennen. Diese Verluste koennen durch die Verwendung einer Kapsel, deren Wand mit waermeisolierendem Material beschichtet ist oder die aus einem derartigen Material besteht, ebenfalls weitgehend ausgeschaltet werden.」(4頁3-10行)
(したがって、加熱すべき空間(カプセル)の表面は今までのものより小さく、それにより、第2項で挙げた、加熱された空間の壁による熱損失を減少させることができる。該壁を断熱性材料で被覆するか又はそのような材料からなる壁のカプセルを使用することにより、上記の損失を更に一層排除できる。)

甲1f:「In einer vorteilhaften Ausgestaltung des Erfindungsgedankens werden die Behaelter mittels erhitzter Luft erwaermt und wird die Luft innerhalb des Kapselinnenraums umgewaelzt. Die Umwaelzung kann durch geeignete Vorrichtungen erzwungen werden. Ueblicherweise reicht jedoch die durch Temperaturunterschiede innerhalb einer Kapsel verursachte Waermekonvektion aus.
Durch diese Massnahme wird ein Waermestau im Bereich der Kapseldecke verhindert.」(4頁35行-5頁7行)
(本発明の好ましい実施態様によると、容器を加熱された空気により加熱し、空気をカプセル内部空間において循環させる。この循環は、適切な装置を用いて強制的に行なう。しかし、従来から行なわれているように、カプセル内部での温度の違いから起きる熱対流で充分である。この方法により、カプセルの蓋の領域での熱の滞留が防止できる。)

甲1g:「Mit Vorteil wird nach einer weiteren Ausgestaltung des Erfindungsgedankens die Tmperatur des Kapselinnenraums in Abhaengigkeit vom Druck in den Behaeltern geregelt. Hierdurch ist es moeglich, bei vollen Behaeltern eine niedrige Temperatur innerhalb der Kapsel, mit sinkendem Druck in den Behaeltern jedoch eine hoehere Temperatur einzustellen.」(5頁9-14行)
(有利には、本発明の思想の更なる態様に従い、カプセル内部空間の温度を容器内の圧力に依存して調整する。これによって、容器が満ちているときにはカプセル内の温度を低温に設定することが可能であるが、しかしながら、当該容器内の圧力が低下しているときには(カプセル内の)温度をより高く設定することが可能である。)

甲1h:「In einer Vorrichtung zur Durchfuehrung des Verfahrens mit innerhalb eines Raumes angeordneten Behaeltern mit Entnahmevorrichtungen ist bzw. sind mit Vorteil ein oder mehrere Behaelter so in eine allseitig geschlossene Kapsel eingebaut, dass sich nur die Behaeltergehaeuse sowie eine Heizvorrichtung im Kapselinnenraum befinden, waehrend die Gasentnahme- und Gasfuellstelle der Behaelter sowie die zugehoerigen Entnahmevorrichtungen ausserhalb der Kapsel angeordnet sind.」(5頁24-31行)
(取り出し装置を有し、空間内部に載置された容器を具備する、該方法を実施する装置であって、有利には、1つ又は多数の容器が、全面が密閉されたカプセル内に配置されており、その際、該容器ケース及び加熱装置だけがカプセルの内部空間に存在し、他方、該容器のガス取り出し箇所とガス充填箇所と並びに付属の取り出し装置とがカプセルの外部に配置されている。)

甲1i:「Nach einem weiteren Merkmal der Erfindung kann die Heizvorrichtung vorteilhafterweise ein unterhalb der Behaelter in der Kapsel angeordneter Lufterhitzer sein. Z.B. kann ein Waermetauscher mit Rippenrohren, durch die Warmwasser, Heisswasser oder Dampf stroemt und dabei die Rohre umspuelende Luft erwaermt, Verwendung finden.」(6頁13-18行)
(本発明の更なる特徴によると、好ましくは、加熱装置が容器の下方でカプセル内で配置された空気ヒーターである。例えば、フィン付きロールを有する熱交換機を使用でき、温水、熱水又は蒸気が該フィン付きロールを流れ、それによって該ロールが周りの空気を加熱する。)

甲1j:「In einer vorteilhaften Variante dieser Vorrichtung ist im Kapselinnenraum eine Wand mit Abstand und im wesentlichen parallel zu einer vertikalen Kapselwand angeordnet, wobei der zwischen der Wand und der vertikalen Kapselwand gebildete Raum den Bodenbereich der Kapsel mit dem Deckenbereich der Kapsel verbindet. Dabei sind in diesem Raum keine Behaelter angeordnet. Die erwaermte Luft stroemt hierbei durch den thermischen Auftrieb zwischen den Flaschenluecken vom Bereich des Kapselbodens zum Bereich der Kapseldecke. Aus diesem Bereich stroemt die abgekuehlte Luft ueber den zwischen Kapselwand und der weiteren Wand gebildeten Zwischenraum zurueck.」(6頁20-30行)
(この装置の好ましい変更態様によると、該カプセル内部空間において、壁が垂直のカプセル壁と間隔をおいて且つ本質的に平行に配置されており、該壁と垂直のカプセル壁の間に形成された空間がカプセルの底領域とカプセルの蓋領域とを接続しており、該空間内に容器が配置されていない。この場合、加熱された空気が、カプセルの底領域からカプセルの蓋領域までボンベの間のすき間を熱膨張により流れる。前記の領域から、冷却された空気が、カプセル壁と該更なる壁との間に形成された中間空間を介して流れて戻る。この更なる壁は、ヒーターにより上方に容器を撫でるように流れる空気が、冷却された空気に混じり合うことを防ぐ。)

甲1k:「In Figur 1 sind vier Flaschen 1 bis 4 dargestellt. Die Behaelter stehen auf einer gelochten Bodenplatte 5, unterhalb deren zwei Heizkoerper 6 angeordnet sind. Die Behaelter 1 bis 4 sind von einer aus fuenf Waenden bestehenden Kapsel umgeben. In der Figur sind lediglich die beiden Seitenwaende 7,8 und die Decke 9 dargestellt. Die Behaelter werden vor der Gasentnahme so in diese Kapsel montiert, dass lediglich die Behaeltergehaeuse innerhalb der Kapsel angeordnet sind, waehrend die jeweiligen Flaschenventile 10 bis 13, Schlaeuche 14 bis 17 sowie die gemeinsame Entnahmeleitung 18 ausserhalb der Kapsel untergebracht sind. Zusammen mit dem Raum, in dem die Heizkoerper 6 angeordnet sind, bildet die Kapsel einen geschlossenen, im wesentlichen luftdichten Raum. Das Material, aus dem die Kapselwaende gefertigt werden, besitzt gute waermeisolierende Eigenschaften.」(7ページ10-24行)
(図1に4つのボンベ1ないし4を示す。これらの容器は穴の開いた底板5の上に置かれ、その下に2つのヒーター6が配置されている。容器1ないし4は、5つの壁からなるカプセルによって囲まれている。この図面には、両方の側壁7,8と蓋9だけが示されている。ガスの取り出しを行なう前には、該容器がカプセル内に載置されているが、その際、カプセルの内部には容器ケースだけが配置され、他方、それぞれのボンベのバルブ10ないし13、ゴム管14ないし17及び共通の排出管18がカプセルの外側に収納されている。ヒーター6が配置されている空間と共に、カプセルは本質的に気密の閉じた空間を形成している。カプセルの壁を形成する材料は、高い断熱性を有する。)

甲1l:「Waehrend der Gasentnahme werden die Behaelter beheizt, um die zur Entnahme erforderliche Loesungs-, Absorptions- und/ oder Verdampfungswaerme aufzubringen. In der Zeichnung ist eine Regeleinheit, ueber die die Temperatur des Kapselinnenraums in Abhaengigkeit vom Behaelterdruck geregelt werden kann, nicht dargestellt. Durch die Heizkoerper 6 erwaermte Luft streicht durch die gelochte Bodenplatte 5 und zwischen den Behaeltern 1 und 2 bzw. 3 und 4 empor. Im Waermekontakt mit den Behaeltern kuehlt die Luft etwas ab und fliesst zwischen den Flaschen 1 bzw. 4 und den Kapselwaenden 7 bzw. 8 sowie zwischen den Behaeltern 2 und 3 zu den Heizkoerpern 6 zurueck.」(7頁31行-8頁6行)
(ガスを取り出している間、取り出すために必要な溶解-吸収-熱及び/又は蒸発熱を発生させるために容器を加熱する。カプセル内部の温度を容器の圧力に依存して調整する制御装置は、図示していない。ヒーター6により加熱された空気は、穴の開いた床板5を通過し、容器1,2の間及び容器3,4の間を上方に向かって容器をなでるように流れる。容器に接触して加熱する間に、空気が冷却され、ボンベ1,4とカプセル壁7,8との間、並びに容器2と3の間を流れてヒーターに戻る。)

甲1m:「In Figur 2 ist eine erfindungsgemaesse Vorrichtung dargestellt, bei der sich die Behaelter 1,2,1',2' innerhalb eines mobilen Containers 20 befinden. Die Behaelter sind zu zwei Gruppen 1 bis 2 und 1' bis 2' zusammengefasst, die jeweils in eine eigene Kapsel eingeschlossen sind. Die beiden Gruppen sind rechts und links von einem begehbaren Mittelgang 22 angeordnet. Eine Aussenwand 8, 8' der Kapseln faellt jeweils mit einer der Containerwaende zusammen und ist daher nach Moeglichkeit besonders gut gegen Waermeverluste zu isolieren. In der Containerdecke befindet sich eine Lueftungsoeffnung 21. Nach herkoemmlichen Verfahren wurde das gesamte Containervolumen beheizt und zusaetzlich der gesamte Luftinhalt mehrmals pro Stunde (ca. 3mal) gewechselt.」(8頁16-28行)
(図2は、本発明の装置を示し、容器1,2,1’,2’が可動のコンテナーの内部にある。容器は2つのグループ1,2及び1’,2’にまとめられ、それぞれ独自のカプセルに閉じ込められている。これら両方のグループは、通過可能な中間路22の左右に配置されている。カプセルの外壁8,8’は、それぞれコンテナー壁の一方に重なっている。したがって、可能であれば、特に熱損失を充分に防止するために断熱すべきである。換気用開口21がコンテナーの蓋にある。従来の方法によると、コンテナーの体積全体が加熱され、更に、空気の体積が1時間に数回交換される(約3回)。)

甲1n:「In Figur 2 ist strichpunktiert eine Variante einer erfindungsgemaessen Vorrichtung eingetragen. Demnach wird zwischen den Kapselwaenden 7 bis 7' und den zugehoerigen Behaeltern 1 bzw. 2' eine zusaetzliche Wand 19 bzw. 19' mit Abstand und parallel zu den Kapselwaenden 7 bzw. 7' montiert. Durch die zusaetzlichen Waende 19 bzw. 19' wird eine Umwaelzung der Luft innerhalb der beiden Kapseln gefoerdert. Die durch Heizkoerper 6 erwaermte Luft streicht zwischen den Behaeltern 1 und 2 bzw. 1' und 2' empor, kuehlt dabei ab und wird aus dem Bereich der Kapseldecke ueber den Raum zwischen der Kapselwand 7 und der zusaetzlichen Wand 19 (7' und 19') in den Bodenbereich der Kapsel geleitet.」(9頁1-12行)
(本発明の装置の変更態様を図2に鎖線で示す。それによると、更なる壁19,19’が、カプセル壁7,7’とそれに関係する容器1,2’との間に、間隔を置き且つカプセル壁7,7’に平行に載置されている。これらの更なる壁19,19’により、両方のカプセルの内部での空気の循環が促進される。ヒーター6で加熱された空気が、容器1と2の間、容器1’と2’との間で容器をなでるように上方に流れ、その際冷却され、カプセルの蓋の領域から、カプセル壁7と更なる壁19(7’と19’)との間の空間を介して、カプセルの底領域に導かれる。)

2.甲第4号証
甲4a:「【0003】
また、この真空装置9をガス供給装置とは通常塵埃グレートの部屋で隔離されているので、大気圧よりも蒸気圧の低い液化ガスをその蒸気圧で真空装置9まで供給する配管7は長くなっている。このため、配管7の温度変化及び温度分布に注意する必要がある。すなわち、マスフローコントローラ4までの配管7の圧力は比較的高いことと、ボンベ1内温度より配管7の内の温度が低いので、ガスが液化し、配管7内が液体で満たされ、ガス供給が困難になるからである。これを防止するためにボンベ1の出口から真空装置本体9内にあるマスフローコントローラ4部までヒータ13を巻きボンベ1内温度より配管7内温度を高くし一定にするか、又はガスボンベ1を含めて周囲温度より高くかつ一定にする必要があった。」

甲4b:「【0010】
図1は本考案の一実施例におけるガス供給装置を説明するための配管系統図である。このガス供給装置6aは、図1に示すように、元バルブ2以降にバルブ3及びバルブ5と、供給するガス流量を自動調節するマスフローコントローラ4aと、バルブ3,元バルブ2及びマスフローコントローラ4aを含み、接続する配管を加熱するヒータ13aとを設けたことである。
【0011】
図2は大気圧より低い液化ガスの蒸気圧曲線を示すグラフである。次に、このガス供給装置の動作及び作用について説明する。いま、ボンベ内に図2に示す蒸気圧曲線の性質をもつ液化ガスが充填され、ガスが真空ポンプ12で排気されている真空容器に流れている状態であるとする。そして周囲温度及びボンベ1内温度が25℃とすると、図2に示すように、この時のボンベ1からマスフローコントローラ4aまでのガスの圧力は、A→B→Cとなり、0.2気圧である。この状態でヒータ13aで30℃に温調しているとすると、元バルブ2からマスフローコントローラ4までのガス状態は、ほぼB1点に移動するため気液同伴状態から完全気体状態に移行する。次に、ガスが流れている状態では、マスフローコントローラ4aの出口側圧力は入口側圧力より低くなっている。従って、真空装置9側の圧力が0.05気圧であったとすると、この状態でガスが液化し始める温度を見ると、図2に示すように、D→E→Fとなり、10℃以下にならないと液化しないことになる。すなわち、マスフローコントローラ4a以降、真空容器10までの配管は完全気体状態となり、特に加熱する必要がなくなる。このことは配管の施工に際しては、一般の高圧ガス配管と同様の配管施工及び管理ですむことになる。」

3.甲第9号証
甲9a:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂を介在させたウエハーとガラス基板等の取付け板とを加熱したのち加圧して接着するのに好適な設備に関する。」

甲9b:「【0006】
【実施例】実施例について図1?図4に基づき詳細に説明する。本発明の一実施例を示す一部断面正面図である図1に示すように、定盤状の基礎台1の中央部には、後述の昇降フレーム17を昇降させる昇降装置2が設置されている。この昇降装置2においては、一部断面正面図である図2に示すように、上下方向へ指向する中空回転軸3が軸受4を介してケーシング5に回転自在に装着され、中空回転軸3内にはボール内装のナット6が嵌着され、ナット6にはネジ軸7が螺合され、中空回転軸3の下端にはベルトプーリ8が軸受9に支持されて装着され、ネジ軸7の上端には連結部材10が嵌着され、さらに、中空回転軸3等の右側には、下向きの減速機11付きサーボモータ12が、ケーシング5に支持されて設けられ、サーボモータ12の出力軸は、ベルトプーリ13および無端ベルト14を介して前記ベルトプーリ8に連結されていて、ネジ軸7はサーボモータ12の正逆回転により昇降するようになっている。
【0007】また、図1に示すように、前記基礎台1の四隅には、ガイドロッド15、15が立設され、ガイドロッド15、15の上端間には、天井フレーム16が架設されている。さらに、ガイドロッド15、15には、昇降フレーム17が四隅においてリニアベアリング18、18を介して上下摺動自在に貫通されて装架され、昇降フレーム17の下面中央部には、前記昇降装置2の連結部材10が固着されている。また、昇降フレーム17上には3個のロードセル19、19、19が、平面図で見て一つの正三角形の各頂点にそれぞれ位置するように配置されて装着されており、これら3個のロードセル19、19、19は、マイクロコンピュータで成る制御器20にアンプリファイア21およびA/D変換器22を介して電気的に接続されていて、制御器20においては、3個のロードセル19、19、19に作用する荷重のアナログ信号がA/D変換器22を介してデジタル信号に変換されて入力され、これにより、3点にかかる荷重がそれぞれ測定されるとともに、これら3点の荷重の最高値と最低値との差が算出され、算出された差が、あらかじめ設定した設定値よりも大きい場合は、ウエハーと取付け板の平行度が所定のものになっていないことが検知されることになる。
【0008】また、これら3個のロードセル19、19、19の上端間には、加圧板機構23が架設されており、加圧板機構23においては、図1に示すように、長方形状のセラミックス製加圧板本体24および長方形状の支持板25が、仲介部材26を介して上下に所要の間隔を置きかつ対向して設けられ、加圧板本体24と支持板25との間には、加熱手段27と、冷却手段としての冷媒内臓の冷却パイプ28と、断熱部材40が配設されており、冷却パイプ28は図示しない冷媒循環装置に接続されている。」

4.甲第10号証
甲10a:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は要求に応じてガス状態を設定するための技術、特に、ガス供給系に配設されるレギュレータ、バルブ、マスフローコントローラなどにあってガスの凝縮を防止するために用いて効果のある技術に関するものである。」

甲10b:「【0007】なお、ガス供給源1a,1b,1c,1dの種類としては、処理装置7がエッチング処理の場合には四塩化炭素、塩素、臭素などが用いられ、CVDの場合にはアンモニア、クロロシランなどが用いられる。」

甲10c:「【0039】
【実施例2】図3は本発明によるガス供給系用部品の第2実施例を示す断面図である。ここでは、ガス供給系用部品の1種であるフィルタを例にしている。
【0040】円筒形の本体26の一端には、ガス入路27が設けられ、他端にはガス出路28が設けられている。本体26内には3つのエレメント29a,29b,29cが所定間隔で配設され、さらに本体26の両端には、エレメント29d,29eが設けられている。
【0041】この実施例において、断熱膨張が生じるのは、ガス入路27の出側の空間(断熱膨張発生部30)である。したがって、本実施例では加熱手段としてのヒータ31をガス入路27の取り付け部に配設している。
【0042】ここに示すフィルタは、ガス入路27より本体26内に導入されたガスに微小な異物が混入していた場合、エレメント29a?29eを順次通過する過程で除去され、清浄化されたガスがガス出路28から排出される。
【0043】このとき、ヒータ31が設けられているため、ガス入路27から断熱膨張発生部30に入るガスは加熱されており、断熱膨張発生部30において断熱膨張を生じることがなく、断熱膨張発生部30でのガスの温度低下が防止され、ガスの凝縮発生を防止することができる。」

5.甲第11号証
甲11a:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造装置等で使用されるガス供給装置に関し、さらに詳細には、気化温度が高く、常温において外部から熱を加えないと液化しやすいジクロールシラン、WF6、HBr等のプロセスガスを液化させることなく、高精度に供給するガス供給装置に関するものである。」

甲11b:「【0012】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例であるガス供給装置および質量流量計付電磁弁について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1にガス供給装置の全体構成を概念図で示し、図2にその斜視図を示す。質量流量計付電磁弁53の入力ポートには、継手ブロック24を介して入力ブロック10が付設されている。入力ブロック10の上面には、入力開閉弁52およびパージ弁12が付設されている。また、入力ブロック10の左側面には、ヒータ孔10aが穿設されている。ヒータ孔10aには棒状ヒータ15が装着され、止めネジ23により固定されている。質量流量計付電磁弁53の出力ポートには、継手ブロック25を介して出力ブロック11が付設されている。出力ブロック11の上面には、出力開閉弁54およびパージ出力弁55が付設されている。また、出力ブロック11の右側面にはヒータ孔11aが穿設されている。ヒータ孔11aには棒状ヒータ14が装着され、止めネジ23により固定されている。
【0013】また、入力ブロック10には、入力開閉弁52の入力ポートに接続する連通路16、継手ブロック24の連通路を介して入力開閉弁52の出力ポートと質量流量計付電磁弁53の入力ポートとパージ弁12の出力ポートとを連通する連通路18、およびパージ弁12の入力ポートに接続する連通路17とが穿設されている。連通路16は、ジクロールシランの供給源に連通している。また、連通路17は、入力ブロック10を横断的に連結する横断ブロック117に形成された連通路を介して、パージ用の窒素ガス供給源に連通している。また、出力ブロック11には、出力開閉弁54の出力ポートに接続する連通路20、パージ出力弁55の出力ポートに接続する連通路26、および継手ブロック25の連通路を介して出力開閉弁54の入力ポート、パージ出力弁55の入力ポートと質量流量計付電磁弁53の出力ポートとを連通する連通路19とが穿設されている。
【0014】連通路20は、半導体工程でジクロールシランFを使用する供給先に連通している。連通路26は、出力ブロック11を横断的に連結する横断ブロック126に形成された連通路を介して、残留したジクロールシランFを廃棄するためのタンクに連通している。また、出力ブロック11には、連通路20とは別に温度センサ13を埋設するためのセンサ孔11bが穿設されている。また、棒状ヒータ14,15および温度センサ13は、ガス供給装置の制御装置21に接続している。制御装置21は、図示しないマイクロコンピュータ、ROM、RAM等より構成され、ROMには、温度センサ13の出力を受けて入力ブロック10および出力ブロック11を一定温度に保持するために、棒状ヒータに所定の電流を供給する温度調整プログラムが記憶されている。」

6.甲第12号証
甲12a:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は気化ガス(液化ガスを気化したガス)の供給方法に係り,特に,半導体装置製造に使用する気化ガスの供給方法に関する。
【0002】液化ガスは沸点の高いガスで,常温高圧下では液体であり常温低圧下では気体となるものである。半導体装置製造プロセスでは,クロロシラン類,四塩化炭素(CCl_(4) ),塩化水素(HCl),六フッ化タングステン(WF_(6) )をはじめ,多くの液化ガスを気化して使用する。」

甲12b:「【0012】
【実施例】図1は実施例を示す模式図であり,1は液化ガス源であって液化ガスボンベ,,2は供給管であって気化ガス供給管,3は外部管,4は気体加熱源であってヒータ,5は送風手段であってファン,6は温度検出端(温度センサ)であって熱電対,7は温度制御器,8は半導体装置製造装置であってエッチング装置,9はマスフローメータ, 10はフィルタを表す。
【0013】液化ガス源1は例えば四塩化ケイ素のボンベであり,気化ガス供給管2は例えば外径10mmのステンレス管,外部管3は例えば内径20mmのステンレス管,気体加熱源4は例えばニクロム線である。また,温度制御器7は例えばPID温度制御器である。
【0014】液化ガス源1から四塩化ケイ素の気化ガスが気化ガス供給管2の中を通り,マスフローメータ9を経てエッチング装置9に供給される。ファン5により大気がフィルタ10を通して外部管3に送られその大気がヒータ4により加熱されて外部管3内を液化ガス源1側へ流れる。外部管3の中を流れる加熱された大気の方向は気化ガスの流れる方向と逆である。
【0015】熱電対6の温度が例えば24℃となるようにPID温度制御器7により,ヒータ4に供給するパワーを制御する。この温度はクリーンルームの空調温度でもある。熱電対6の温度は24℃より若干高めになるように設定しておいてもよい。このようにして,気化ガス供給管2中を通る四塩化ケイ素の温度は,少なくとも24℃に保たれ,再液化することが防止される。気化ガス供給管2中を通る四塩化ケイ素の圧力も安定に保たれる。」

7.甲第13号証
甲13a:「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、半導体製造装置等の産業用製造装置で使用されるガス供給装置に関し、さらに詳細には、複数種類のガスを供給する複数のガス供給装置を集積させてコンパクト化可能なガス供給集積ユニットに関するものである。」

甲13b:「【0015】
【実施例】 以下、本発明を具体化した一実施例であるガス供給集積ユニットについて、図面を参照して説明する。図4は、ガス供給集積ユニットの構成を示す回路図である。この回路図は、後述する発明の効果を明らかにするために、従来と同じ回路を使用している。供給ガスである腐食性ガスFの配管は、供給または遮断を行うための手動弁18に接続している。また、手動弁18は、腐食性ガスFのガス圧を調整するためのレギュレータ17に接続している。また、レギュレータ17は、腐食性ガスFの混入不純物を除去するためのフィルタ15に接続している。一方、レギュレータ17とフィルタ15との間には、腐食性ガスFの圧力をモニターするための圧力計16が接続されている。」

第7 当審の判断
1.特許法第29条第1項第3号及び第2項について
(1)請求項1について
ア 甲第1号証
甲第1号証には、上記甲第1号証の記載事項甲1a乃至甲1nを総合すると、以下の発明(以下、「甲1a発明」という。)が記載されていると認められる。
「液体の形で容器に貯蔵されているガスからガスを供給する装置であって、容器バルブ、ゴム管及び排出管が接続された容器と、容器が収容されている可動のコンテナーと、可動のコンテナー内で容器を閉じ込めるカプセルと、容器が置かれる穴の開いた床板と、該床板の下方の空間に配置されたヒーターとを有し、ヒーターにより加熱された空気は、床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れて容器に接触して加熱するように構成された、ガスを供給する装置。」

イ 対比
本件発明1と甲1a発明を対比する。
(ア) 甲1a発明の「液体の形で容器に貯蔵されているガスからガスを供給する装置」及び「ガスを供給する装置」は、本件発明1の「液化状体からガスを配給するシステム」及び「ガス配給システム」にそれぞれ相当する。
(イ) 甲1a発明の「容器バルブ、ゴム管及び排出管」は容器からガスを送出するための手段であるから、本件発明1の「ガスが引かれるガスライン」に相当する。
(ウ) 甲1a発明の「容器」及び「可動のコンテナー」は、本件発明1の「圧縮液化ガスシリンダー」及び「ガスシリンダーキャビネット」にそれぞれ相当する。
(エ) 下記4.(3)に詳述するように、本件発明1の「環境」とは、本件特許明細書の【0029】によれば「ガスシリンダーを囲む雰囲気」のことである。
また、本件発明1の「環境温度」の定義は本件特許明細書には記載されていないので、「環境温度」とはその文言通り、「環境」の「温度」のことであると認められる。そして、「環境」が加熱される場合には、加熱された「環境」の「温度」が「環境温度」であると認められる。
したがって、甲1a発明の「カプセル」の内側は、本件発明1の「環境」に相当する。また、甲1a発明のヒーターにより加熱された空気の温度が、本件発明1の「環境温度」に相当する。
(オ) 本件特許明細書の【0033】の「伝熱速度は、(1)総合伝熱係数,(2)伝熱に有効な表面領域,(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差により支配される。」との記載から、本件発明1の「伝熱速度」は「環境とガスシリンダーとの間の温度差により支配される」ものであり、また、温度差が大きければ熱が伝わる速度が増加することは技術常識であるから、本件発明1の「伝熱速度増加手段」には、環境とガスシリンダーとの間の温度差を大きくする手段も含まれることは明らかである。
そして、甲1a発明の、可動のコンテナー内で容器を閉じ込めるカプセルと、容器が置かれる穴の開いた床板と、該床板の下方の空間に配置されたヒーターとを有し、ヒーターにより加熱された空気は、床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れて容器に接触して加熱する構成も、容器を加熱するカプセル内の空気をヒーターで加熱して、容器と空気との温度差を大きくしていることは明らかであるから、前記構成は、本件発明1の「伝熱速度増加手段」に相当する。
(カ) 甲1a発明において、容器内の液体温度とカプセル内の温度のいずれが高いか甲第1号証に明確には記載されていないが、甲1a発明ではカプセル内の空気を加熱してその熱で容器内の液体を加熱しているのであるから、容器内の液体の温度がカプセル内の空気の温度を超えないことは明らかである。
(キ) 甲1a発明の「穴」は、本件発明1の「開口」に相当する。そして、甲1a発明では「穴」の数は限定されていないが、「1若しくはそれ以上」であることは明らかである。
(ク) 甲1a発明のカプセル内の空気は、本件発明1の「伝熱ガス」に相当する。

したがって、両発明は
「液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a) ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b) ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C) ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段とを備え、
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えたガス配給システム。」(以下、「一致点a」という。)
で一致し、差異はない。

ウ むすび
したがって、本件発明1は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(2)請求項2について
ア 本件発明2
本件発明2は、本件発明1に「(d) ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e) 減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明2と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明2は、(d)ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e)減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えるのに対して、甲1a発明は、これらの手段を備えるか不明な点。

ウ 判断
上記相違点1について検討する。
まず、本件発明2の「減圧手段」について、本件特許明細書には「【0009】典型的なガス配給システムでは、シリンダーを離れた後、ガスが通過する最初の構成要素は、圧力調整器やオリフィスなどの減圧装置である。しかし、比較的低い蒸気圧を有する材料(WF_(6),BCl_(3),HF,SiH_(2)Cl_(2)など)を含むシリンダーでは、調整器は適切ではない。この場合、第一の構成要素はバルブとすることができる。」と記載されているから、バルブ及び弁は本件発明2の「減圧手段」に含まれる。
そして、甲第4号証に記載された「マスフローコントローラ」は、その「出口側圧力は入口側圧力より低くなって」(【0011】)おり、また、一般にマスフローコントローラは流量制御弁を備える構造であるから、本件発明2の「減圧手段」に相当する。
また、甲第4号証に記載された「ヒータ」は、ガスが液化することを防止するためにボンベ内温度より配管内温度を高くするためのものであるから(【0003】)、本件発明2の「ガスを過熱する手段」に相当する。

また、甲第10号証に記載された「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」(【請求項1】)とは、「【0010】ところで、バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラなどの各部品は、いずれも断面積が急激に変化(増大)する通路部分を含んでおり、常温で供給されるガスに対して断熱膨張による温度低下が生じるために凝縮を生じ、材料の腐食や流量、流速、圧力などを安定に制御することができなくなる。」との記載から明らかなとおり、本件発明2の「減圧手段」に相当する。
また、甲第10号証に記載された「加熱手段」は、「【0026】【作用】上記した手段によれば、通路の断面積が急激に大きくなることに起因して生じるガスの凝縮は、通路断面積が急激に変化する位置より前で加熱することにより、断熱膨張によるガスの温度低下を防止することができる。」との記載から明らかなとおり、本件発明2の「ガスを過熱する手段」に相当する。

また、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」は「弁」の一種であるから、本件発明2の「減圧手段」に相当する。
また、甲第11号証に記載された「棒状ヒータ」は、「入力ブロックに埋設された棒状ヒータは、質量流量計付電磁弁の入力ポートと接続する入力ブロックを加熱保温して、液化しやすい気体を気化温度以上の所定の温度に保持する。また、出力ブロックに埋設された棒状ヒータは、質量流量計付電磁弁の出力ポートと接続する出力ブロックを加熱保温して、液化しやすい気体を気化温度以上の所定の温度に保持する。」(【0010】)との記載から明らかなとおり、本件発明2の「ガスを過熱する手段」に相当する。

そして、甲第1号証、甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明はいずれもガス配給システムという同一の技術分野に属し、それぞれの上記各構成要素の目的も、甲1a発明にも内在していることは明らかであるから、甲第4号証に記載された上記の「マスフローコントローラ」及び「ヒータ」、甲第10号証に記載された上記の「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」及び「加熱手段」並びに甲第11号証に記載された上記の「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」はいずれも本件発明2の「減圧手段」及び「ガスを過熱する手段」に相当し、これら各手段のいずれかを甲1a発明に適宜適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明2は甲第1号証並びに甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証の内のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3)請求項3について
ア 本件発明3
本件発明3は、本件発明2に「(f) 伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、をさらに備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明3と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点1’:本件発明3は、(d)ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e)減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、を備え、さらに(f) 伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、を備えるのに対して、甲1a発明は、このような手段を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点1’について検討する。
上記相違点1’の「(d)ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e)減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と」の構成に関する判断については、上記(2)ウのとおりである。
そして、複数の制御対象を共通の制御手段を用いて統合可能に制御することは、制御手段の共通化や装置の小型化等を目的として一般に行なわれることであるから、過熱手段について、伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、を備えることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明3は甲第1号証並びに甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証の内のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(4)請求項4について
ア 本件発明4
本件発明4は、本件発明1に「伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明4と甲1a発明を対比すると、甲1a発明のカプセル内の気体は「空気」である点は、本件発明4の「伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである」に相当する。
よって、両発明は上記一致点aの他に、伝熱ガスは空気である点で一致し、差異はない。

ウ むすび
したがって、本件発明4は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(5)請求項5について
ア 本件発明5
本件発明5は、本件発明1に「ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明5と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点2:本件発明5では、ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えているのに対して、甲1a発明では、穴の詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点2について検討する。
空気を通すことが可能な開口としてプレナム板又はスリットは周知の事項に過ぎないから、甲1a発明において、穴が1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えるようにすることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明5は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(6)請求項6について
ア 本件発明6
訂正後の請求項6は請求項1を引用しているが、第1回口頭審理において、訂正後の請求項6は引用する請求項が「請求項5」であったのを間違って記載した明らかな誤記である旨の陳述が被請求人からなされ、請求人もこれを認め、請求項6の当該事項は誤記であるのは明らかなので、以下、訂正後の請求項6は請求項5を引用するものとして判断する。
本件発明6は、本件発明5に「1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明6と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点2に加えて以下の点で相違する。
相違点3:本件発明6では、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えているのに対して、甲1a発明では、穴の詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点3について検討する。
上記(5)のとおり、空気を通すことが可能な開口としてプレナム板又はスリットは周知の事項に過ぎず、また、空気の流れ方向を定めるためのフィンも周知の事項に過ぎないから、甲1a発明において、穴が1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えるように構成する際に、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えるようにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明6は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(7)請求項7について
ア 本件発明7
訂正後の請求項7は請求項1を引用しているが、第1回口頭審理において、訂正後の請求項7は引用する請求項が「請求項5」であったのを間違って記載した明らかな誤記である旨の陳述が被請求人からなされ、請求人もこれを認め、請求項7の当該事項は誤記であるのは明らかなので、以下、訂正後の請求項7は請求項5を引用するものとして判断する。
本件発明7は、本件発明5に「伝熱速度増加手段は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段をさらに備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明7と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点2に加えて以下の点で相違する。
相違点4:本件発明7では、伝熱速度増加手段が、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段を備えるのに対して、甲1a発明では、このような手段を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点4について検討する。
上記相違点4に係る手段は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項7に対応する訂正前の請求項8に関して、「プレナム板又はスリットに、これらの温度を電気的に制御する手段を設けることは、当業者であれば容易に想到し得る構成であり、格別の困難性は存在しない。また、プレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値とすることは設計事項にすぎない。したがって、相違点7に係る構成は、容易に想到し得る構成である。」(審判請求書66頁)と主張している。
しかしながら、請求人は、「相違点7に係る構成は、容易に想到し得る構成である」ことの根拠となる公知文献や周知技術をなんら提示していない。そして、甲1a発明においては、ヒーターによって空気を加熱して、空気が開口を介して容器をなでるように上方に流れて容器に接触して加熱するものであり、甲1a発明の「ヒーター」が本件発明7の「伝熱速度増加手段」に相当し、以下同様に「空気の温度」が「環境温度」に、そして「開口」が「プレナム板」又は「スリット」に相当するが、甲1a発明においては、「ヒーター」により「開口」が加熱されることがあるとしても、「開口」を「空気」よりも高い温度となるように電気的に制御することについては、その課題も構成も甲第1号証には記載されていない。
したがって、「プレナム板又はスリットに、これらの温度を電気的に制御する手段を設けることは、当業者であれば容易に想到し得る構成であり、格別の困難性は存在しない。」や、「プレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値とすることは設計事項にすぎない。」とは認められない。

エ むすび
したがって、本件発明7は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)請求項8について
ア 本件発明8
本件発明8は、本件発明1に「伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができる」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明8と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点5:本件発明8では、伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができるのに対して、甲1a発明では、空気は床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れる点。

ウ 判断
上記相違点5について検討する。
上記相違点5に係る点は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項8に対応する訂正前の請求項9に関して、「甲第1号証には、ヒーターにより加熱された空気が穴の開いた床板を通過し、容器と容器との間を上方に向かって容器をなでるように流れることが開示されている(7-3-1-1サ)。このように、加熱された空気が上方に向かって容器をなでるように流れることから、液体-蒸気界面の高さが上下方向に変動した場合であっても、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当する容器上の位置に向けることができると解する。従って、相違点8に係る構成は、甲第1号証の記載に基づいて容易に想到し得る構成である。」(審判請求書67頁)と主張している。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明では、加熱された空気の流れは、対流により上昇しているに過ぎないから、実質的に液体-蒸気界面に相当する容器上の位置に向けられているものとは認められない。

エ むすび
したがって、本件発明8は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)請求項9について
ア 本件発明9
本件発明9は、本件発明1に「伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明9と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点6:本件発明9では、伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えるのに対して、甲1a発明では、ヒーターの詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点6について検討する。
ヒーターの種類として放射パネルヒーターは周知の事項であるから、甲1a発明において、ヒーターを放射パネルヒーターとすることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明9は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(10)請求項10について
ア 本件発明10
本件発明10は、本件発明1に「伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明10と甲1a発明を対比すると、甲1a発明はの容器の下に置かれたヒーターは、本件発明10のガスシリンダーの下に置かれたヒーターに相当する。
したがって、両発明は上記一致点aの他に、伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備える点で一致し、両発明に差異はない。

ウ むすび
したがって、本件発明10は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(11)請求項11乃至13について
ア 本件発明11
本件発明11は、本件発明10に「ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明11と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点a及び上記(10)イで挙げた点で一致し、以下の点で相違する。
相違点7:本件発明11では、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えたのに対して、甲1a発明では、ヒーターの詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点7について検討する。
上記相違点7に係る構成は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項11に対応する訂正前の請求項12に関して、
「甲第9号証には、ロードセル19と、ロードセル上に設けられた加圧板機構23とが開示されている。また、加圧板機構23は、上面を構成する加圧板本体24と、下面を構成する支持板25とを有しており、加圧板本体24と支持板25とが、仲介部材26を介して上下に所要の間隔を置いて対向配置されており、加圧板本体24と支持板25との間には加熱手段27が設けられている構成が開示されている(7-3-9-2)。
そして、甲第9号証の「ロードセル19」が本件特許発明12の「スケール」に対応するものである。また、甲第9号証の「加圧板機構23」が本件特許発明12の「スケールカバー」に対応するものである。さらに、「加圧板本体24」が「上面」に、「支持板25」が「下面」に、「加圧板本体24と支持板25との間の、上下方向の所要の間隔」た「上記上下面間に形成された中空部」に、「加熱手段27」が「加熱要素」に、それぞれ対応するものである。
ここで、甲第9号証の「加圧板機構23」を「ロードセル19」を完全に覆うように構成することは、当業者であれば容易に相当し得るものである。従って、相違点11に係る構成は、甲第9号証の記載に基づいて容易に想到し得る構成である。」(審判請求書69-70頁)
と主張している。
しかしながら、甲第9号証に記載された「加圧板機構」は、「【0005】
【作用】このように構成された接着設備の動作について説明すると、熱可塑性樹脂を介在させたウエハーおよび取付け板を、加圧板機構と受圧板機構との間にセットしたのち、加圧板機構および受圧板機構の表面付近を加熱手段により所定温度に加熱して熱可塑性樹脂を溶解させ、かつ、3個のロードセルを介してウエハーおよび取付け板の平行度を検知しながら、ウエハー等を加圧板機構と受圧板機構とで加圧し、加圧完了後、熱可塑性樹脂を冷却手段により冷却して固化する。これにより、熱可塑性樹脂を介してシリコンウエハーと取付け板を接着することが出来る。」との記載から理解されるとおり、「熱可塑性樹脂を介してシリコンウエハーと取付け板を接着する」ための「加圧板機構」である。そして、甲1a発明の技術分野と相違する甲第9号証記載のこの「加圧板機構」の構成を、甲1a発明の「ヒーター」の構成として採用するための課題については、いずれの甲各号証にも記載されておらず、周知の課題であるとも言えない。

エ むすび
したがって、本件発明11は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明11にさらに発明特定事項を追加した本件発明12及び13も、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(12)請求項14について
ア 本件発明14
本件発明14は、本件発明2に「過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明14と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1に加えて以下の点で相違する。
相違点8:本件発明14では、過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えるのに対して、甲1a発明では、このような手段を備えない点。

ウ 判断
上記相違点8について検討する。
上記(2)ウに記載したとおり、甲第10号証に記載された「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」及び「加熱手段」は、本件発明14すなわち請求項14が引用する請求項2に係る発明における「ガスを減圧する手段」及び「過熱手段」にそれぞれ相当する。
また、甲第10号証には、「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」としてフィルタが挙げられており(【実施例2】)、このフィルタが本件発明14の加熱されるガスフィルターに相当する。
そして、甲第1号証及び甲第10号証に記載された発明はともにガス配給システムという同一の技術分野に属するから、甲第10号証に記載された「フィルタ」及び「加熱手段」を甲1a発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明14は甲第1号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(13)請求項15について
ア 本件発明15
本件発明15は、本件発明2に「過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明15と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1に加えて以下の点で相違する。
相違点9:本件発明15では、過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えているのに対して、甲1a発明では、このような手段を備えない点。

ウ 判断
上記相違点9について検討する。
上記請求項2についての判断の(2)ウにおいて検討したように、甲第4号証に記載された「マスフローコントローラ」及び「ヒータ」は、本件発明15すなわち請求項15が引用する請求項2に係る発明における「ガスを減圧する手段」および「過熱手段」にそれぞれ相当する。
また、甲第4号証には、配管にヒーターを巻いて配管内温度を高くすることが記載されており(【0003】)、このヒーターが本件発明15のガスラインと接触しているヒーターに相当する。
そして、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明はともにガス配給システムという同一の技術分野に属するから、甲第4号証に記載されたマスフローコントローラ及び配管に巻くヒーターを甲1a発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明15は甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(14)請求項16について
ア 本件発明16
本件発明16は、本件発明15に「ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明16と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び9に加えて以下の点で相違する。
相違点10:本件発明16では、ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプであるのに対して、甲1a発明では、このようなヒーターを有していない点。

ウ 判断
上記相違点9及び10について検討する。
上記(13)ウに記載したとおり、甲1a発明に甲第4号証に記載された「ヒータ」を適用することは当業者が容易になし得たことである。そして、甲第4号証に記載されたヒーターは、配管に巻きつけて温調するタイプのヒーターであり、電気的に加熱するタイプのヒーターであるか、少なくともヒータとして電気的な加熱タイプは周知の事項であるから、甲第4号証に記載された「ヒータ」を甲1a発明に適用する際に、電気的な加熱タイプを採用して適用することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明16は甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(15)請求項17について
ア 本件発明17
本件発明17は、本件発明2に「過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明17と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1に加えて以下の点で相違する。
相違点11:本件発明17では、過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えるのに対して、甲1a発明ではこのような過熱手段を有していない点。

ウ 判断
上記相違点11について検討する。
甲第12号証に記載された「大気」、「ヒータ」及び「ファン」は、本件発明17の「空気」、「空気を加熱する手段」及び「加熱される空気を吹き込む手段」にそれぞれ相当する。
そして、甲第1号証、甲第4号証及び甲第12号証に記載された発明はいずれもガス配給システムという同一の技術分野に属するから、甲1a発明に過熱手段を適用する際に、甲第12号証に記載された「ヒータ」及び「ファン」からなる構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明17は甲第1号証、甲第4号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(16)請求項18について
ア 本件発明18
本件発明18は、本件発明2に「過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備した」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明18と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1に加えて以下の点で相違する。
相違点12:本件発明18では、過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備するのに対して、甲1a発明では、このようなバルブを備えない点。

ウ 判断
上記相違点12について検討する。
上記請求項2についての判断の(2)ウにおいて検討したように、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」は、本件発明18すなわち請求項18が引用する請求項2に係る発明における「ガスを減圧する手段」および「過熱手段」にそれぞれ相当する。
また、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」がガス入口、ガス出口及び弁を開閉するアクチュエータを備えることは明らかである。
そして、甲第1号証および甲第11号証に記載された発明はともに液化ガスの制御配給システムという同一の技術分野に属するから、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」を甲1a発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明18は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(17)請求項19について
ア 本件発明19
本件発明19は、本件発明18に「加熱されるバルブは、ブロックバルブである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明19と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び12に加えて以下の点で相違する。
相違点13:本件発明19では、加熱されるバルブはブロックバルブであるのに対して、甲1a発明では、このようなバルブを備えない点。

ウ 判断
上記相違点13について検討する。
上記(16)ウで検討したように、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」を甲1a発明に適用することは当業者が容易になし得たことであり、その実施化の際には、採用するバルブの形式として種々の用途に用いられる周知のブロックバルブを採用することは当業者が必要に応じて適宜なし得た事項である。また、ブロックバルブを採用することによる格別の効果も見出せない。

エ むすび
したがって、本件発明19は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(18)請求項20について
ア 本件発明20
本件発明20は、本件発明18に「加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明20と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び12に加えて以下の点で相違する。
相違点14:本件発明20では、加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっているのに対して、甲1a発明では、このようなバルブを備えない点。

ウ 判断
上記相違点14について検討する。
甲第11号証に記載された「連通路」及び「パージ用の窒素ガス」は本件発明20の「第二のガス入り口」及び「パージガス」にそれぞれ相当する。そして、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」を甲1a発明に適用する際に、上記の「連通路」を形成してパージ用の窒素ガスを質量流量計付電磁弁に入るよう構成することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明20は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(19)請求項21について
ア 本件発明21
本件発明21は、本件発明18に「加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明21と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び12に加えて以下の点で相違する。
相違点15:本件発明21では、加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えたのに対して、甲1a発明では、このようなバルブを備えない点。

ウ 判断
上記相違点15について検討する。
甲第13号証に記載された「圧力計」は本件発明21の「圧力測定装置」に相当する。そして、甲第13号証の「圧力計」はマスフローコントローラーに供給するガスの圧力を確認するものとして周知の手段であり、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」はマスフローコントローラーでもあるから、これを甲1a発明に適用する際に、上記の周知の「圧力計」を付加することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明21は甲第1号証、甲第11号証及び甲第13号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(20)請求項22について
ア 本件発明22
本件発明22は、本件発明18に「ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択される」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明22と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び12に加えて以下の点で相違する。
相違点16:本件発明22では、ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択されるのに対して、甲1a発明では、このようなヒーターを備えない点。

ウ 判断
上記相違点16について検討する。
甲第11号証に記載された「棒状ヒータ」は入力ブロック及び出力ブロックにそれぞれ穿設されたヒータ孔に装着されるものであるから、本件発明22の「カートリッジヒーター」に相当する。また、「自己調整型ヒーター」及び「抵抗型ヒーター」はいずれも種々の用途に用いられる周知のヒーターの一種に過ぎない。そして、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」を甲1a発明に適用する際に、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択されるヒーターを適用することは当業者が容易になし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明22は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(21)請求項23について
ア 本件発明23
本件発明23は、本件発明22に「ヒーターはヒートトレースである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明23と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、上記相違点1及び12に加えて以下の点で相違する。
相違点16’:本件発明23では、ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択され、該ヒーターはヒートトレースであるのに対して、甲1a発明では、このようなヒーターを備えない点。

ウ 判断
上記相違点16’について検討する。
上記(20)ウのとおり、甲1a発明に甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「ヒーター」を適用することは当業者が容易になし得たことであり、その際のヒーターとして、自己調整型ヒーター、抵抗型ヒーター、カートリッジヒーター等の電気ヒーターにおいて自分自身で発熱量を制御するヒーターにおける周知の制御方法である「ヒートトレース」を選択することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明23は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(22)請求項24について
ア 本件発明24
本件発明24は、「半導体処理装置と請求項1に記載のガス配給システムとを備えた半導体処理システム。」である。

イ 対比
本件発明24と甲1a発明を対比すると、両発明は上記一致点aで一致し、以下の点で相違する。
相違点17:本件発明24では、ガス配給システムと半導体処理装置とにより半導体処理システムを構成しているのに対して、甲1a発明では、ガス配給システムの用途が不明な点。

ウ 判断
上記相違点17について検討する。
半導体処理装置とガス配給システムとを備えた半導体処理システムは甲第10号証乃至甲第13号証に記載されているように周知の事項であるから、甲1a発明のガス配給システムと半導体処理装置とにより半導体処理システムを構成することは当業者が容易になし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明24は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(23)請求項25について
ア 甲第1号証
甲第1号証には、上記甲第1号証の記載事項甲1a乃至甲1nを総合すると、以下の発明(以下、「甲1b発明」という。)が記載されていると認められる。
「液体の形で容器に貯蔵されているガスからガスを供給する方法であって、この方法は、液体の形でガスが貯蔵された、容器バルブ、ゴム管及び排出管が接続された容器を、可動のコンテナー内に設けられたカプセル内に組み込む工程と、カプセル内の空気を加熱することにより容器を加熱する工程とを備え、該容器を加熱する工程は、容器が置かれる穴の開いた床板の下方の空間に配置されたヒーターにより加熱された空気が前記床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れて容器に接触して加熱する、ガス供給方法。」

イ 対比
本件発明25と甲1b発明を対比する。
(ア) 甲1b発明の「液体の形で容器に貯蔵されているガスからガスを供給する方法」は、本件発明25の「液化状体からガスを供給する方法」に相当する。
(イ) 甲1b発明の「容器バルブ、ゴム管及び排出管」は容器からガスを送出するための手段であるから、本件発明25の「ガスライン」に相当する。
(ウ) 甲1b発明の「容器」及び「可動のコンテナー」は、本件発明25の「ガスシリンダー」及び「ガスシリンダーキャビネット」にそれぞれ相当する。
(エ) 下記4.(3)に詳述するように、本件発明25の「環境」とは、本件特許明細書の【0029】によれば「ガスシリンダーを囲む雰囲気」のことであるから、甲1b発明の容器を組み込まれた「カプセル」の内側は、本件発明25の「環境」に相当する。
また、本件発明25の「環境温度」とは、本件特許明細書にはその定義がないので、「環境」の「温度」であると認められ、甲1b発明のカプセル内の温度が、本件発明25の「環境温度」に相当する。
(オ) 本件発明25の「伝熱速度増加工程」とは、請求項1についての上記(1)イ(オ)での検討を参酌すれば、本件特許明細書の【0033】の記載から、環境とガスシリンダーとの間の温度差を大きくする工程も含まれるから、甲1b発明の、可動のコンテナー内で容器を組み込まれたカプセル内の空気をヒーターにより加熱し、該加熱された空気は、床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れて容器に接触して加熱する工程は、本件発明25の「伝熱速度増加工程」に相当する。
(カ) 甲1b発明において、容器内の液体温度とカプセル内の空気の温度のいずれが高いか甲第1号証に明確に記載されていないが、甲1b発明ではカプセル内の空気を加熱してその熱で容器内の液体を加熱しているのであるから、容器内の液体の温度がカプセル内の空気の温度を超えないことは明らかである。
(キ) 甲1b発明の「穴」は、本件発明25の「開口」に相当する。そして、甲1b発明では「穴」の数は限定されていないが、「1若しくはそれ以上」であることは明らかである。
(ク) 甲1b発明のカプセル内の空気は、本件発明25の「伝熱ガス」に相当する。

したがって、両発明は
「液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a) ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程とを備え、
伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加するガス供給方法。」(以下、「一致点b」という。)
で一致し、差異はない。

ウ むすび
したがって、本件発明25は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(24)請求項26について
ア 本件発明26
本件発明26は、本件発明25に「(c) ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明26と甲1b発明を対比すると、両発明は上記(23)の一致点bで一致し、以下の点で相違する。

相違点18:本件発明26では、ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を備えるのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点18について検討する。
甲第4号証に記載された「マスフローコントローラ」は、その「出口側圧力は入口側圧力より低くなって」(【0011】)いるから、マスフローコントローラーを通過したガスはその圧力の低下に伴って膨張していることは明らかである。また、甲第4号証に記載されたヒータによりマスフローコントローラーへ入るガスを加熱する工程は、ガスが液化することを防止するためにボンベ内温度より配管内温度を高くするものであるから(【0003】)、本件発明26の「ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程」に相当する。

また、甲第10号証に記載された「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」(【請求項1】)をガスが通ることは、「【0010】ところで、バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラなどの各部品は、いずれも断面積が急激に変化(増大)する通路部分を含んでおり、常温で供給されるガスに対して断熱膨張による温度低下が生じるために凝縮を生じ、材料の腐食や流量、流速、圧力などを安定に制御することができなくなる。」との記載から明らかなとおり、本件発明26の「ガスの膨張」に相当する。
また、甲第10号証に記載された加熱手段によりガスを加熱する工程は、「【0026】【作用】上記した手段によれば、通路の断面積が急激に大きくなることに起因して生じるガスの凝縮は、通路断面積が急激に変化する位置より前で加熱することにより、断熱膨張によるガスの温度低下を防止することができる。」との記載から明らかなとおり、本件発明26の「ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程」に相当する。

また、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」は「弁」の一種であるから、該弁を通過するガスは減圧されて膨張することは明らかである。
そして、甲第11号証に記載された棒状ヒータにより質量流量計付電磁弁を通過するガスを加熱する工程は、「入力ブロックに埋設された棒状ヒータは、質量流量計付電磁弁の入力ポートと接続する入力ブロックを加熱保温して、液化しやすい気体を気化温度以上の所定の温度に保持する。」(【0010】)との記載から明らかなとおり、質量流量計付電磁弁を通過して膨張する前にガスの液化を防止するために過熱しているから、本件発明26の「ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程」に相当する。

そして、甲第1号証、甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された発明はいずれもガス供給方法という同一の技術分野に属するから、甲第4号証に記載された上記の「マスフローコントローラ」及び「ヒータ」、甲第10号証に記載された上記の「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」及び「加熱手段」並びに甲第11号証に記載された上記の「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」のいずれかを適宜選択して甲1b発明に適用して、ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明26は甲第1号証並びに甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証の内のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(25)請求項27について
ア 本件発明27
本件発明27は、本件発明26に「(d) 伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明27と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記相違点18に加えて以下の点で相違する。
相違点19:本件発明27では、伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えるのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点19について検討する。
複数の制御対象を共通の制御手段を用いて統合可能に制御することは、制御手段の共通化や装置の小型化等を目的として一般に行なわれることであるから、甲1b発明にガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備える際に、伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えることは、当業者が適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明27は甲第1号証並びに甲第4号証、甲第10号証及び甲第11号証の内のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(26)請求項28について
ア 本件発明28
本件発明28は、本件発明25に「ガスはNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択される」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明28と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、以下の点で相違する。
相違点20:本件発明28では、ガスはNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択されるのに対して、甲1b発明では、ガスが特定されていない点。

ウ 判断
上記相違点20について検討する。
液化して保管されたものを気化して供給し使用するガスの種類としてNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) はいずれも周知の事項である。
そして、甲1b発明は液化して保管されたガスを気化して供給し使用する技術に関する発明であって、ガスの種類が特定されるものではないから、甲1b発明においてガスとしてNH_(3) ,AsH_(3) ,BCl_(3) ,CO_(2) ,Cl_(2) ,SiH_(2) Cl_(2) ,Si_(2) H_(6) ,HBr,HCl,HF,N_(2) O,C_(3) F_(8) ,SF_(6),PH_(3) ,及びWF_(6) から選択されるものを採用することは当業者が適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明28は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(27)請求項29について
ア 本件発明29
本件発明29は、本件発明25に「伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明29と甲1b発明を対比すると、甲1b発明のカプセル内の気体は「空気」である点は、本件発明29の「伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである」に相当する。
よって、両発明は上記一致点bで一致し、さらに、伝熱ガスは空気である点で一致し、差異はない。

ウ むすび
したがって、本件発明29は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(28)請求項30について
ア 本件発明30
本件発明30は、本件発明25に「1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明30と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、以下の点で相違する。
相違点21:本件発明30では、1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えているのに対して、甲1b発明では、穴の詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点21について検討する。
空気を通すことが可能な開口としてプレナム板又はスリットは周知の事項に過ぎないから、甲1b発明において、穴が1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えるようにすることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明30は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(29)請求項31について
ア 本件発明31
本件発明31は、本件発明30に「伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程をさらに備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明31と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記相違点21の他に以下の点で相違する。
相違点22:本件発明31では、伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程をさらに備えているのに対して、甲1b発明ではこのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点22について検討する。
上記相違点22に係る工程は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項31に対応する訂正前の請求項33に関して、「相違点34は、上述した相違点7に対応するものである(7-4-8-2)。したがって、相違点34に係る構成は、上記相違点7と同様に、容易に想到し得る構成である。」(審判請求書88頁)と主張している。
しかしながら、上記(7)請求項7についてと同様に、請求人は、根拠となる公知文献や周知技術はなんら提示していない。そして、「開口」を「空気」よりも高い温度となるように電気的に制御することについては、その課題も構成も甲第1号証には記載されていない。したがって、「プレナム板又はスリットに、これらの温度を電気的に制御する手段を設けることは、当業者であれば容易に想到し得る構成であり、格別の困難性は存在しない。」や、「プレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値とすることは設計事項にすぎない。」とは認められない。

エ むすび
したがって、本件発明31は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(30)請求項32について
ア 本件発明32
本件発明32は、本件発明25に「伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明32と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、以下の点で相違する。
相違点23:本件発明32では、伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えているのに対して、甲1b発明では、空気は床板に開いた穴を通過し、容器をなでるように上方に流れる点。

ウ 判断
上記相違点23について検討する。
上記相違点23に係る工程は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項32に対応する訂正前の請求項34に関して、「相違点35は、上述した相違点8に対応するものである(7-4-9-2)。従って、相違点35に係る構成は、上記相違点8と同様に、甲第1号証の記載に基づいて容易に想到し得る構成である。」(審判請求書89頁)と主張している。
しかしながら、上記(8)と同様に、甲1b発明では、加熱された空気の流れは、対流により上昇しているに過ぎないから、実質的に液体-蒸気界面に相当する容器上の位置に向けられているものとは認められない。

エ むすび
したがって、本件発明32は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(31)請求項33について
ア 本件発明33
本件発明33は、本件発明25に「伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えている」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明33と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、以下の点で相違する。
相違点24:本件発明33では、伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えているのに対して、甲1b発明では、このような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点24について検討する。
空気を通すことが可能な開口としてプレナム板又はスリットは周知の事項に過ぎず、また、空気の流れ方向を定めるためのフィンも周知の事項に過ぎないから、甲1b発明において、1若しくはそれ以上の穴としてプレナム板又はスリットを用意し、そのプレナム板又はスリットに伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えるようにすることは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明33は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(32)請求項34について
ア 本件発明34
本件発明34は、本件発明25に「伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明34と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、さらに、伝熱速度増加工程はヒーターを備える点で一致し、以下の点で相違する。
相違点25:本件発明34では、伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えたのに対して、甲1b発明では、ヒーターの詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点25について検討する。
放射パネルヒーターはヒーターの一種に過ぎないから、甲1b発明において、ヒーターとして放射パネルヒーターを選択してガスシリンダーを加熱することは当業者が適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明34は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(33)請求項35について
ア 本件発明35
本件発明35は、本件発明25に「伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明35と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致する。また、甲1b発明では容器の下のヒーターで容器を囲む空気を加熱することにより、容器を加熱しているから、ヒーターで容器を加熱すると認められる。よって、本件発明35と甲1b発明とは差異がない。

ウ むすび
したがって、本件発明35は甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同第1項の規定により、特許を受けることができない。

(34)請求項36、37について
ア 本件発明36
本件発明36は、本件発明35に「ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明36と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、さらに上記(33)イで指摘した点で一致し、以下の点で相違する。
相違点26:本件発明36では、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えたのに対して、甲1b発明では、ヒーターの詳細が不明な点。

ウ 判断
上記相違点26について検討する。
上記相違点26に係る工程は、請求人の挙げた甲各号証には記載されていないし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
請求人は訂正後の請求項36に対応する訂正前の請求項38に関して、「相違点39は、上述した相違点11に対応するものである(7-4-12-2)。従って、相違点39に係る構成は、上記相違点11と同様に、甲第9号証の記載に基づいて容易に想到し得る構成である。」(審判請求書91-92頁)と主張している。
しかしながら、上記(11)請求項11乃至13についてと同様に、甲第9号証に記載された「加圧板機構」は、「熱可塑性樹脂を介してシリコンウエハーと取付け板を接着する」ための「加圧板機構」である。そして、甲1b発明の技術分野と相違する甲第9号証記載のこの「加圧板機構」の構成を、甲1b発明の「ヒーター」の構成として採用するための課題はいずれの甲各号証にも記載されておらず、周知の課題であるとも言えない。

エ むすび
したがって、本件発明36は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明36にさらに発明特定事項を追加した本件発明37も、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(35)請求項38について
ア 本件発明38
本件発明38は、本件発明26に「ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明38と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)で挙げた相違点18に加えて以下の点で相違する。
相違点27:本件発明38では、ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えたのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
甲第10号証には、「ガス流路の断面積が急激に増大する部位」としてフィルタが挙げられており(【実施例2】)、このフィルタが本件発明38の加熱されるガスフィルターに相当する。
そして、甲第1号証及び甲第10号証に記載された発明はともにガス供給方法という同一の技術分野に属するから、甲第10号証に記載された「フィルタ」及び「加熱手段」を甲1b発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明38は甲第1号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(36)請求項39について
ア 本件発明39
本件発明39は、本件発明26に「ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明39と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)で挙げた相違点18に加えて以下の点で相違する。
相違点28:本件発明39では、ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えたのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点28について検討する。
甲第4号証には、配管にヒーターを巻いて配管内温度を高くすることが記載されており(【0003】)、このヒーターが本件発明39のガスラインと接触しているヒーターに相当する。
そして、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明はともにガス供給方法という同一の技術分野に属するから、甲第4号証に記載されたマスフローコントローラ及び配管に巻くヒーターを甲1b発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明39は甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(37)請求項40について
ア 本件発明40
本件発明40は、本件発明39に「ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明40と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)及び(36)で挙げた相違点18及び28に加えて以下の点で相違する。
相違点29:本件発明40では、ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えたのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点29について検討する。
上記(14)請求項16について、で検討したように、甲第4号証に記載されたヒーターは電気的に加熱するタイプのヒーターであるか、少なくともヒーターとして電気的な加熱タイプは周知の事項であるから、甲第4号証に記載された「ヒータ」を甲1b発明に適用する際に、電気的な加熱タイプを採用して適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明40は甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(38)請求項41について
ア 本件発明41
本件発明41は、本件発明26に「ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明41と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)で挙げた相違点18に加えて以下の点で相違する。
相違点30:本件発明41では、ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えたのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点30について検討する。
甲第12号証に記載された大気をヒータで加熱してファンで外部管に送る工程は、本件発明41の「空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程」に相当する。
そして、甲第1号証、甲第4号証及び甲第12号証に記載された発明はいずれもガス供給方法という同一の技術分野に属するから、甲1b発明にガスを過熱する工程を適用する際に、甲第12号証に記載された大気をヒータで加熱してファンで外部管に送る工程を採用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明41は甲第1号証、甲第4号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(39)請求項42について
ア 本件発明42
本件発明42は、本件発明26に「ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えた」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明42と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)で挙げた相違点18に加えて以下の点で相違する。
相違点31:本件発明42では、ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えたのに対して、甲1b発明では、そのような工程を備えていない点。

ウ 判断
上記相違点31について検討する。
甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」は、本件発明42における「バルブ」及び「ヒーター」にそれぞれ相当する。
そして、甲第1号証および甲第11号証に記載された発明はともにガス供給方法という同一の技術分野に属するから、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」を甲1b発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明42は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(40)請求項43について
ア 本件発明43
本件発明43は、本件発明42に「加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明43と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)及び(39)で挙げた相違点18及び31に加えて以下の点で相違する。
相違点32:本件発明43では、加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブであるのに対して、甲1b発明では、そのようなバルブは備えていない点。

ウ 判断
上記相違点32について検討する。
上記(17)請求項19についてと同様に、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「棒状ヒータ」を甲1b発明に適用する際に、採用するバルブの形式として種々の用途に用いられる周知のブロック形状を採用することは当業者が適宜なし得た事項である。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明43は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(41)請求項44について
ア 本件発明44
本件発明44は、本件発明42に「ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択される」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明44と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)及び(39)で挙げた相違点18及び31に加えて以下の点で相違する。
相違点33:本件発明44では、ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択されるのに対して、甲1b発明では、そのようなヒーターを備えていない点。

ウ 判断
上記相違点33について検討する。
甲第11号証に記載された「棒状ヒータ」は入力ブロック及び出力ブロックにそれぞれ穿設されたヒータ孔に装着されるものであるから、本件発明44の「カートリッジヒーター」に相当する。また、「自己調整型ヒーター」及び「抵抗型ヒーター」はいずれもヒーターの一種に過ぎない。そして、甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」を甲1a発明に適用する際に、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択されるヒーターを適用することは当業者が容易になし得たことである。

エ むすび
したがって、本件発明44は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(42)請求項45について
ア 本件発明45
本件発明45は、本件発明44に「ヒーターはヒートトレースである」との発明特定事項を追加したものである。

イ 対比
本件発明45と甲1b発明を対比すると、両発明は上記一致点bで一致し、上記(24)、(39)及び(41)で挙げた相違点18、31及び33に加えて以下の点で相違する。
相違点34:本件発明45では、ヒーターはヒートトレースであるのに対して、甲1b発明では、そのようなヒーターを備えていない点。

ウ 判断
上記相違点34について検討する。
上記(21)請求項23についてと同様に、甲1a発明に甲第11号証に記載された「質量流量計付電磁弁」及び「ヒーター」を適用する際のヒーターとして、周知の制御方法である「ヒートトレース」を選択することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。また、そのことによる効果に格別のものはない。

エ むすび
したがって、本件発明45は甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(43)請求項46乃至48について
本件発明46乃至48は、本件発明11にさらに発明特定事項を追加したものである。
したがって、本件発明11は甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明46乃至48も、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.特許法第36条第4項について
(1)本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【請求項1】
液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a) ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b) ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C) ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段とを備え、
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えたガス配給システム。」

「【請求項9】
伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項10】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項11】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた請求項10に記載のガス配給システム。
【請求項12】
スケールカバーは、頂部面に取付けられた窪み形状の部材をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項13】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて、加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する手段をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。」

「【請求項25】
液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a) ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程とを備え、
伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加するガス供給方法。」

「【請求項34】
伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項35】
伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項36】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた請求項35に記載のガス供給方法。
【請求項37】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する工程を更に備えた請求項36に記載のガス供給方法。」

「【請求項46】
加熱要素は中空部内に巻かれている請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項47】
加熱要素は220゜F(104℃)までの温度で操作できる請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項48】
中空部の下に更に絶縁層を備え、この絶縁層は加熱要素から上面に熱を向けるのに有効なものである請求項11に記載のガス配給システム。」

「【0033】
シリンダー温度と圧力の変化速度は、シリンダーに対する伝熱速度、流速による特定のエネルギー要求及びシリンダーの熱容量のバランスである。環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、(1)総合伝熱係数,(2)伝熱に有効な表面領域,(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差により支配される。概略的にいうと、無限に長いシリンダーとしてのガスシリンダーは、総合伝熱係数が以下の式1により計算される。
【0034】
【数1】

【0035】
上記式において、Uは、総合伝熱係数(W/m2K)、roは、シリンダーの外径(m),riはシリンダーの内径(m),hiシリンダーと液体との間の内部伝熱係数(W/m2K)、kは、シリンダー材料の熱伝導率(W/m2K)、h0は、シリンダーと環境との間の外部伝熱係数(W/m2K)である。
【0036】
総合的な伝熱係数Uは、伝熱に対する個々の抵抗値のもっとも小さい値(すなわち、式Iの分母中の各項)よりも少ない値である。通常使用されるシリンダーの寸法(例えば、内容積55l以下)では、総合的な伝熱係数は、第一に、外部伝熱係数h0の値によって制御される。この事は以下の例により示される。ここで、ri=3インチ、r0=3.2インチ、k=40W/m2K,hi=890W/m2K,h0=4.5W/m2Kである。伝熱係数の値は、一般に入手可能な工学技術の表に基づき、これは内部と外部の両方の伝熱に対して、第一のメカニズムとして自然対流を用いている。総合的な伝熱係数Uは4.47W/m2Kに等しく、この値は外部伝熱係数h0に大変近い。
【0037】
以下の例は、外部伝熱係数h_(0)は、強制対流の場合総合的な伝熱係数式をも支配することを示している。ガスキャビネットは、通常、キャビネットの底部内に空気を引き込み、例えば頂部から排気をすることによりパージがなされる。その結果、空気は連続的にガスシリンダーの表面に沿って連続的に流れる。強制対流伝熱係数が12W/m^(2)Kとすると(正方形板上を2m/sで流れる空気の特徴)、このようなシステムの総合的な伝熱係数は、11.8W/m^(2)Kである。従って、伝熱に対する第一の抵抗は環境とシリンダーとの間に生じる。
【0038】
外部伝熱係数h_(0)は、シリンダーの全ての表面に沿って一定ではない。空気がキャビネット底部に近いキャビネットに入るので、流れ方向はキャビネットのその領域内でシリンダーを横切る(すなわち、シリンダーの長手軸に対して横断する)。キャビネットの頂部に近い領域では、空気は第一に垂直方向に移動する (すなわち、シリンダーの長手軸に平行)。」

「【0049】
図10を参照して、液化状態からガスを配送する進歩性のあるシステム及び方法の好適な具体例を以下に示す。しかし、特定のシステムの形態は、一般に、コスト、安全性、及びキャビネットの流動性に依存する。
【0050】
このシステムは、ガスキャビネット003 内に収容される一又は二以上の圧縮液化ガスシリンダー002 を備えている。液化ガスシリンダー内に充填される特定の材料は、限定されないが、プロセスに依存する。典型的な材料は表1、2に示すもので、NH_(3)、AsH_(3)、BCl_(3)、CO_(2)、Cl_(2)、SiH_(2)Cl_(2)、Si_(2)H_(6)、HBr、HCl、HF、N_(2)O、C_(3)F_(8)、SF_(6)、PH_(3)、WF_(6)である。ガスキャビネット003 は、格子004 を有し、ここを通ってパージ空気がキャビネットに入る。このパージ空気は、好ましくは乾燥し、排気ダクト005 を通って、ガスキャビネットから排気される。
【0051】
環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、ガスシリンダー中の液体温度が環境温度を超える値に増加しないように、増加する。伝熱速度を増加させる適切な手段の例は、ガスキャビネット003 内の一又は二以上のプレナム板(plenum plates) 、又はスリット列006 で、ここを通って、空気が強制的にシリンダーを横切るようになっている。空気がプレナム板又はスリットを強制的に通すのに、空気吹込み器又はファン007 を使用できる。吹込み器又はファンは可変速度で操作出来るものが好ましい。
【0052】
所定の減圧(吹込み器またはファン特性で決る)に対して最大伝熱係数を持つ適切なプレナム板は、Holger Martin で市販されている。このような構成要素は、ガスキャビネット寸法で最小の又は増加しないガスキャビネット内に容易に組み込むことができる。
【0053】
プレナム板またはスリットは、空気の流れを設定することができるフィンを加えることにより、選択的に修正することができる。フィンは、液体-蒸気界面の近傍で第一にシリンダーに向けて空気の流れを設定するものが好ましい。
【0055】
プレナム面又はスリットの温度は、また、伝熱速度を更に増加するために環境よりもやや高い値に電気的に制御することができる。しかし、プレナム面またはスリットの温度は、液体-蒸気界面でのみ蒸発が生じるように限定されなければならない。そして、環境を越える温度にシリンダー内側の液体を加熱するのを避けるようにしなければならない。
【0056】
付加的又はこれとは別に、シリンダーの下にある放射パネルヒーターまたはヒーター(例えば、その上にシリンダーがセツトされるホットプレートタイプのヒーター)は、環境とガスシリンダーと間の伝熱速度を増加するように使用できる。特に好ましい本発明の具体例では、ホットプレートタイプのヒーターを使用することにより伝熱速度が増加される。
【0057】
図11A及び11Bは、実施例のホットプレートタイプのヒーターの側断面および平面図をそれぞれ示す。ヒーター100 は、重量測定計(以下、スケールと略称する)用のカバーの形をとっており、このスケールはヒーターにより囲われることができる。このようなスケールは公知であり、通常はガスキャビネットの床上に置かれる。液化ガスを充填するシリンダーは、一般にスケール上に直接乗せられ、このスケールでシリンダー内に残っている材料の量を測定する。図11A、11Bで例示される加熱される重量測定計のカバー(以下、スケールカバーと略称する)を使用する時、シリンダーは、カバーされたスケール上に直接置かれる。
上述したスケールカバー/ヒーターは、ガスシリンダーをごくわずか移動しさえすれば、現存するガスキャビネット内に適合することができるので、特に有効である。従って、現存するガスキャビネット又はガス配管を再適合したり修正することは不要となる。
【0058】
ヒーター100 は、センタースペーサー手段106 、多数のサイドスペーサー108 、及びスクリュー110 により、底部面すなわち底部板104 に取付けられた頂部面即ち頂部板102 を有する。ヒーターは、さらに加熱要素(図示せず)を入れる空隙を有する。適切な加熱要素には、これに限定されるものではないが、電気加熱タイプにような抵抗型ヒーターまたはヒートトレスのような自己調節型ヒーターが挙げられる。加熱要素は、好ましくは、空隙112 内に巻かれることができるものが良い。加熱要素は、環境温度?約220゜Fの温度で操作できるべきである。
【0059】
面内の好適な加熱要素の一端を保持するために、端部はセンタースペーサー106 内で遮断部114 に固定でき、加熱要素は、所望の領域がカバーされるまでセンタースペーサーの回りに、及び選択的にサイドスペーサーの回りに巻回することができる。加熱要素はガスシリンダーとスケールとの間の接触領域をカバーするのが好ましい。加熱要素の有効な長さ、例えば16フィートまたはそれ以上の長さが、ヒーター内で巻かれる。20ワット/1フィートの加熱要素の16フィート長さを考えると、320ワットの熱がヒーターから得られる。
【0060】
空隙112 の底部は、絶縁層116 を使用して絶縁され、加熱要素からの熱が直接上方のガスシリンダーの底部に向けるのが好ましい。絶縁層はまた、加熱要素と頂部面102 との間の接触を維持するように働く。ヒーターは、さらに前後部パネル118 、サイドパネル120 及びブリッジ122 を有し、ヒーターがシリンダーの重量を測定するスケール(以下、シリンダースケールと称する)上に適合することができるようにしている。
【0061】
ヒーター100 の構成材料は、有効な伝熱がガスシリンダーの底部に成されるものでなければならない。頂部板102 は好ましくはステンレススチールで作られ、前後部パネル、サイドパネル、ブリッジは好ましくはアルミニウムまたは炭素鋼で構成されるのがよい。
【0062】
使用される特定のタイプのヒーターに依存して、各種の方法で温度制御できる。本発明の好適な形態によれば、ヒーターの出力は、ガスシリンダーの要求エネルギーに基づいて、オン、オフできる。この目的のための好適な制御方法及びアルゴリズムを以下に述べる。
【0063】
本発明の更なる形態によれば、ヒーター100 は、ヒーターの頂部面102 に取付けられた窪みまたはカップ形状部分を有することができる。窪み部分は、好ましくは、シリンダーに対するより有効な伝熱が可能となるように、ガスシリンダーの底部の形に従うのがよい。窪み部分は比較的硬くてガスシリンダーとの接触に関して変形抵抗があり、シリンダーに対して熱を移動するのに有効である材料で形成されるべきである。このような材料には、例えば、炭素鋼、ステンレススチールがある。」

(2)記載事項の検討
ア 請求項1に係る発明の「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」について、上記記載事項の【0033】によれば、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、「(1)総合伝熱係数、(2)伝熱に有効な表面領域、(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差」の3つの要素に支配されると理解できる。ここで、前記「(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差」については、環境とガスシリンダーとの温度差が大きいほど、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度が大きくなることは当業者にとって自明の事項である。
してみると、「環境とガスシリンダーとの間の温度差」を大きくする手段も、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」であることが理解できる。

イ これに対して、上記記載事項の
「付加的又はこれとは別に、シリンダーの下にある放射パネルヒーターまたはヒーター(例えば、その上にシリンダーがセツトされるホットプレートタイプのヒーター)は、環境とガスシリンダーと間の伝熱速度を増加するように使用できる。特に好ましい本発明の具体例では、ホットプレートタイプのヒーターを使用することにより伝熱速度が増加される。」(【0056】)、「ヒーター100 は、センタースペーサー手段106 、多数のサイドスペーサー108 、及びスクリュー110 により、底部面すなわち底部板104 に取付けられた頂部面即ち頂部板102 を有する。ヒーターは、さらに加熱要素(図示せず)を入れる空隙を有する。」(【0058】)、「ヒーター100 の構成材料は、有効な伝熱がガスシリンダーの底部に成されるものでなければならない。頂部板102 は好ましくはステンレススチールで作られ、前後部パネル、サイドパネル、ブリッジは好ましくはアルミニウムまたは炭素鋼で構成されるのがよい。」(【0061】)、「本発明の更なる形態によれば、ヒーター100 は、ヒーターの頂部面102 に取付けられた窪みまたはカップ形状部分を有することができる。窪み部分は、好ましくは、シリンダーに対するより有効な伝熱が可能となるように、ガスシリンダーの底部の形に従うのがよい。窪み部分は比較的硬くてガスシリンダーとの接触に関して変形抵抗があり、シリンダーに対して熱を移動するのに有効である材料で形成されるべきである。このような材料には、例えば、炭素鋼、ステンレススチールがある。」(【0063】)
によれば、ヒーターからガスシリンダーに熱を移動することすなわちガスシリンダーを加熱することも「伝熱速度を増加する」ことになると記載されている。ここで、本件特許明細書にも「【0031】図1は、3l/mの流速の7lのCl2シリンダーについて、各種位置での外部シリンダー壁温度を時間の関数で示す。シリンダー内の蒸気圧力も時間の関数として示す。シリンダーの操作中、外部シリンダー温度は、実質的に環境温度よりも低くなった。シリンダー表面の最も低い温度は、液体-蒸気界面の位置に対応する。何故なら、この領域で気化プロセスが生じるためである。」とあるとおり、液化ガスを気化する際には気化熱を吸収することにより液体の温度は低下し、それにより液体を収容するガスシリンダーの温度も低下することから、ガスシリンダーの温度はその周囲の環境の温度よりも低くなることが一般的である。

ウ してみると、温度が周囲の環境よりも低くなっているガスシリンダーを加熱すると、環境とガスシリンダーとの間の温度差は小さくなると認められ、この場合、上記アで示したように温度差が小さくなれば環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は増加しないことは明らかであるから、結局【0056】乃至【0063】の記載は、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」がどのような手段によって実施できるのかが明確でなく、その他の記載も含めた本件特許明細書全体からも、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」はどのようにすれば実施できるのかが明確でないから、本件特許明細書は当業者が請求項1に係る発明を実施できるように記載されているとはいえない。
また、請求項2乃至48についても同様の理由により、本件特許明細書は当業者が請求項2乃至48に係る発明を実施できるように記載されているとはいえない。

(3)被請求人の主張について
被請求人は平成23年7月12日付け上申書において、以下のように主張している。
「ウ.先に(2)アで述べたように、「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」とを構成することにより、ガスシリンダーとガスシリンダーキャビネットとの間の「環境」内で強制対流が生じている。
他方、追加された「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」は、「環境」内の空気(伝熱ガス)を暖めるので、この暖かい空気がシリンダーの表面上に送られることとなる。この暖かい空気は、シリンダー表面に滞留することなく、「環境」に生じた強制対流の流れに乗ることになる(被請求人口頭審理陳述要領書10頁14?20行参照)。すなわち、この暖かい空気が「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」とで作られた「環境」内の強制対流の流れに組み込まれることになる。そして、このことにより、「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」もまた環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加することに寄与する結果となる。」(4頁)
しかしながら、上記の主張の特に「追加された「放射パネルヒーター」又は「ヒーター」は、「環境」内の空気(伝熱ガス)を暖めるので、この暖かい空気がシリンダーの表面上に送られることとなる。この暖かい空気は、シリンダー表面に滞留することなく、「環境」に生じた強制対流の流れに乗ることになる(被請求人口頭審理陳述要領書10頁14?20行参照)。すなわち、この暖かい空気が「ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段」とで作られた「環境」内の強制対流の流れに組み込まれることになる。」との作用については本件特許明細書には該当する記載がなく、本件特許明細書の【0056】乃至【0063】に記載されているヒーターでガスシリンダーを直接加熱する旨の記載に接した当業者にとっては、自明の事項であるとも言えない。

3.特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項第1号について、請求人は、平成22年9月29日付け審判請求書では、請求項12並びにこれを引用する請求項13、14、48乃至50の「上面」及び「下面」について、及び請求項26並びにこれを引用する請求項27乃至47の「(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」について無効の理由を主張している。
これに対して、平成23年4月4日付け弁駁書では、訂正後の請求項1、4、6、25及び29の「伝熱ガス」について、及び訂正後の請求項25乃至45の「(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」についての無効理由を主張している。
平成23年4月4日付け弁駁書で主張する訂正後の請求項1、4、6、25乃至29の「伝熱ガス」についての無効理由は訂正による新たな構成に対する無効理由ではなく、訂正前の特許明細書に既に有していた文言に対して弁駁書で追加された新たな無効理由ではあるが、第1回口頭審理において被請求人は同無効理由についても審理することに同意したので、以下、同無効理由も審理の対象として検討する。
(1)請求人の主張
請求人は弁駁書において、以下のとおり主張している。
「7-7-1 本件訂正発明1,4,6,25,29について
ア 本件訂正発明1,4,6,25,29の発明特定事項である「伝熱ガス」が、発明の詳細な説明中に記載がない。
イ さらに、本件訂正発明4、29には、「伝熱ガス」が空気又は不活性ガスであることが発明の詳細な説明に記載されていない。
ウ したがって、本件訂正発明1,4,6,25,29は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。
7-7-2 請求項26(訂正後の請求項25)、請求項27?47(訂正後の請求項26?45)について
ア 上記7-6-1-6ア?エにおいて説明したように、被請求人の「請求項26(訂正後の請求項25)の『(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程』とは、『液化ガスが充填されたガスシリンダーを用意する』と実質的に同義である。」との主張は失当である。
イ なお、被請求人は、答弁書の第29頁第24行?第25行において、「よって、請求項26(訂正後の請求項25)の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。」と主張している。しかしながら、上記アに係る解釈は失当であり、本件訂正明細書において「ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」に関する記載もない。したがって、被請求人の「請求項26(訂正後の請求項25)の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。」との主張は失当である。
ウ 同様に、請求項27?47(訂正後の請求項26?45)に記載の発明は請求項26(訂正後の請求項25)に従属する発明である。したがって、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。」(41-42頁)

(2)被請求人の主張
被請求人は答弁書において、以下のとおり主張している。
「3.請求項26(訂正後の請求項25)、請求項27?47(訂正後の請求項26?45)について
請求人は、『当業者が「(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」は発明の詳細な説明に記載されていない』旨主張する。
段落【0017】の「このシステムは液化ガスを含むシリンダーの圧力を正確に制御し」の記載から、請求項26(訂正後の請求項25)の「(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」とは、「液化ガスが充填されたガスシリンダーを用意する」と実質的に同義である。このように解釈できることは、本発明の目的として、段落【0017】の「このシステムは液化ガスを含むシリンダーの圧力を正確に制御し、これと同時にシリンダーから引かれるガス中に入った液滴を最小にする。」と記載されていることから理解できる。
よって、請求項26(訂正後の請求項25)の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。同様に、請求項27?47(訂正後の請求項26?45)についても、発明の詳細な説明に記載されたものである。」(29頁)

また、被請求人は口頭審理陳述要領書において、以下のとおり主張している。
「請求項25の「ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する」という限定は、ガスキャビネットの外部で圧縮液体ガスを充填したガスシリンダーをガスキャビネットの内部に並べる工程を意味します。この主張の根拠は、少なくとも以下にあります:
段落【0002】には・・・と記載されている。
請求項25および段落【0025】の「ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する」という限定は、ガスキャビネットの外部で圧縮液体ガスを充填したガスシリンダーをガスキャビネットの内部に並べる工程を意味すると当業者は理解し、これを、ガスキャビネット内に設置されたガスシリンダーに圧縮された液化ガスを充填することを意味すると理解する当業者はいない。」(13-14頁)

(3)当審の判断
ア 本件特許明細書には、例えば【0050】の「このシステムは、ガスキャビネット003 内に収容される一又は二以上の圧縮液化ガスシリンダー002 を備えている。液化ガスシリンダー内に充填される特定の材料は、限定されないが、プロセスに依存する。典型的な材料は・・・」との記載のように、ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に圧縮液化ガスが充填されていることは記載されているものの、これが、ガスキャビネットの内部に置いてあるガスシリンダー内に圧縮液化ガスを充填したのか、それとも、すでに外部で圧縮液化ガスが充填されたガスシリンダーをガスキャビネットの内部に配置したのかは明らかでない。しかしながら、ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に圧縮液化ガスが充填されているためには、ガスキャビネットの内部に置いてあるガスシリンダー内に圧縮液化ガスを充填するか、それとも、すでに外部で圧縮液化ガスが充填されたガスシリンダーをガスキャビネットの内部に配置するかによることは当業者にとって自明の事項である。してみると、訂正後の請求項25に係る発明の「(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程」は、当業者にとっては自明の事項であるから、訂正後の請求項25が本件特許明細書に記載されていないとはいえない。

イ 訂正後の請求項1に係る発明の「伝熱ガス」について、本件特許明細書にはその定義は記載されていないが、訂正後の請求項1の記載からは、「伝熱ガス」とは、1若しくはそれ以上の開口を通るガスすなわち気体であって、伝熱すなわち熱を伝える作用を有する気体であると理解できる。
一方、本件特許明細書には、「【0051】環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、ガスシリンダー中の液体温度が環境温度を超える値に増加しないように、増加する。伝熱速度を増加させる適切な手段の例は、ガスキャビネット003 内の一又は二以上のプレナム板(plenum plates) 、又はスリット列006 で、ここを通って、空気が強制的にシリンダーを横切るようになっている。空気がプレナム板又はスリットを強制的に通すのに、空気吹込み器又はファン007 を使用できる。吹込み器又はファンは可変速度で操作出来るものが好ましい。」との記載があり、該記載から、ガスキャビネット内の一又は二以上のプレナム板又はスリット列を通った空気がシリンダーを取囲み、該空気が環境を構成する気体であって、該空気からシリンダーに熱が伝わることが理解できる。
してみると、訂正後の請求項1に係る発明の「伝熱ガス」とは、上記【0051】においては「空気」のことであることは明らかであるから、訂正後の請求項1が本件特許明細書に記載されていないとはいえない。

4.特許法第36条第6項第2号について
(1)請求人の主張
ア 請求人は審判請求書において、以下のとおり主張している。
「ア 請求項1には、以下の記載がある。
『(c)ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段』
イ 上記記載内容のうち、「環境」は、「ガスシリンダーを囲む空気」(上記7-2-2-2イ)と規定されている。
その一方で、請求項1には「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する」との記載がある。ここで、上記7-2-2-2エ?キに示すように「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する」とは、「ガスが引き抜かれているガスシリンダーにおいて、ガスシリンダーを囲む空気(環境)を媒体としてガスシリンダーに熱を供給する」ことを意味すると解され、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加するために、「ガスシリンダーを囲む空気の温度を高くして、ガスシリンダーを囲む空気とガスシリンダーとの間の温度差を増加させる」(上記7-2-2-2カ)ことも含まれると解される。
そうすると、「環境温度」が、「熱源のないとき(すなわち、伝熱速度を増加していないとき)のガスシリンダーを囲む空気(環境)の温度」を示しているのか、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加している際のガスシリンダーを囲む空気(環境)の温度」を示しているのか不明瞭になっている。
ウ 次に、上記記載内容のうち、「伝熱速度増加手段」について、本件明細書には、上記7-6-1イに示すように、「シリンダーの下にある放射パネルヒーターまたはヒーター(例えば、その上にシリンダーがセツトされるホットプレートタイプのヒーター)は、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加するように使用できる。特に好ましい本発明の具体例では、ホットプレートタイプのヒーターを使用することにより伝熱速度が増加される。」(段落0056)と記載されている。
エ しかしながら、伝熱速度増加手段の特に好ましい具体例として記載されている「ホットプレートタイプのヒーター」は、ガスシリンダーの底部を直接加熱するものであり、「ガスが引き抜かれているガスシリンダーにおいて、ガスシリンダーを囲む空気(環境)を媒体としてガスシリンダーに熱を供給する」ものではない。すなわち、上記「ホットプレートタイプのヒーター」が「伝熱速度増加手段」の具体的態様の一例であるとした場合に、「伝熱速度増加手段」が「ガスが引き抜かれているガスシリンダーにおいて、ガスシリンダーを囲む空気(環境)を媒体としてガスシリンダーに熱を供給する」ものではない構成をも含むものとなっている。これにより、「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する手段」がどのような構成を示しているのか不明瞭になっている。
オ 以上のように、請求項1に記載の発明においては、用語の定義が不明瞭であるとともに、実施形態の記載が不明瞭である結果、発明の範囲が不明確になっているから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。
・・・請求項2?25及び請求項48?50に記載の発明は、請求項1と同様に、発明の範囲が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。」

イ また、請求人は弁駁書において以下のとおり主張している。
「ア 先の7-1-2-1で述べたように、被請求人は、本件訂正明細書の段落0013及び0017を根拠として、「環境温度とは、『ガスが引かれるガスラインを含む、液化状体からガスを分配するシステム』における『環境温度』と解釈すべきである。」と主張している。
イ これに対して、請求人は、本件訂正明細書中に『環境』の用語の定義がある以上、当業者であれば『環境温度』は、文言どおりに『環境の温度』と解釈するはずである。」と主張した。
ウ すなわち、上記段落0041には、「環境」と「シリンダー」との間の大きすぎる温度差に起因する、液滴同伴(飛沫同伴)の課題(課題A)が開示されており、段落0049?段落0055において、上述した課題Aを解決するための「伝熱速度増加手段」が開示されている。したがって、課題Aは、「環境(シリンダーを囲む雰囲気)」と「シリンダー」との間の熱の受け渡しの問題であるため、「環境温度」を「環境の温度」、すなわち「シリンダーを囲む空気の温度」と解しても矛盾を生じることがない。
エ 一方、被請求人が「環境温度」の解釈の根拠として示す、本件訂正明細書の段落0013には、「シリンダーの下流にあるガスラインなどのガス分配システムを加熱する場合は、再濃縮を防止するために、シリンダーの下流にあるガスライン等のガス分配システム中に、加熱ゾーン(シリンダー)よりも低い温度ゾーンができないように、シリンダーの下流にあるガスライン等を、シリンダーよりも高い温度となるように加熱する必要がある(課題B)。」が示されている。したがって、課題Bは、「加熱ゾーン(シリンダー)」と「シリンダーの下流にあるガスライン」との間の温度関係の問題である。なお、上記課題Bは、段落0013に示されるように、圧縮液化ガスを用いる際の、従来から公知の課題である。
オ ここで、被請求人が主張するように、「環境温度」を『ガスが引かれるラインを含む、液化状体からガスを分配するシステム』における「環境温度」と解釈すると、「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する手段」が、課題Aを解決すると同時に、従来から公知の課題Bをも解決する場合がある。
カ とすれば、「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで」の部分は課題Bを示しており、「ガスシリンダー内の液体温度」が「加熱ゾーン(シリンダー)」に、「環境温度」が「シリンダーの下流にあるガスラインの温度」に、それぞれ対応すると解する。
キ 一方、「環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する」の部分は課題Aを示しており、「環境(シリンダーを囲む空気)」と「シリンダー」との間の熱の受け渡しに対応すると解する。
ク このように解釈すると、発明特定事項である「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」において、一方で「環境(シリンダーを囲む空気)」と定義されているにも関わらず、他方で「環境温度(シリンダーの下流にあるガスラインの温度)」と解釈させることになる。
ケ また、本件訂正明細書中の段落0049?段落0055には「伝熱速度増加手段」について具体的な記載がなされているが、「伝熱速度増加手段」が上記課題A及び課題Bを同時に解決する際に、「環境温度」を上述のように解釈すべきであることは、当業者であっても容易に理解できるものではない。このように「環境」について定義しているにも関わらず、「環境温度」について文言通りではない解釈をさせるのであれば、被請求人は「環境温度」の用語について明確に定義をおくべきである。
コ したがって、「環境温度」及び「ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段」は、不明瞭であるといわざるを得ない。
サ 以上のように、訂正後の請求項1に記載の発明においては、用語の定義が不明瞭であるとともに、実施形態の記載が不明瞭である結果、発明の範囲が不明確になっているから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。
シ ・・・訂正後の請求項2?24及び請求項46?48に記載の発明は、訂正後の請求項1と同様に、発明の範囲が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。」

(2)被請求人の主張
ア これに対して、被請求人は答弁書において以下のとおり主張している。
「明細書及び図面を考慮すれば、本発明の「環境温度」とは、「ガスが引かれるガスラインを含む、液化状体からガスを分配するシステム」における「環境温度」と解釈すべきである。
すなわち、本発明の明細書の段落【0013】には「シリンダーの下流にあるガス分配システム中のより低い温度に起因して、再濃縮を引き起こす。その結果、ガスシリンダーから使用場所へ分配する全ての分配システムを加熱する場合は、このような再濃縮を阻止する必要がある。」と記載されている。
また、段落【0017】には「このシステムは液化ガスを含むシリンダーの圧力を正確に制御し、これと同時にシリンダーから引かれるガス中に入った液滴を最小にするものである。」と記載されている。
従って、これらの記載から、「環境温度」に関する被請求人の解釈は本発明の目的に適合していることは明らかである。」(3頁10-21行)

イ また、被請求人は口頭審理陳述要領書において以下のとおり主張している。
「環境:
本発明では、用語「環境」を、ガスシリンダーを囲む雰囲気と定義しています(段落【0029】)。」(3頁2-4行)

「環境温度
本発明では、用語「環境温度」は、環境の加熱されていない温度、実施例に基づいて具体的に述べれば、ホットプレート又は電気的に制御されたプレナム板やスリットにより加熱する前の環境の温度です。この定義は、発明の詳細な説明における以下の部分にさらに裏付けられています。
図1を参照する段落【0031】には・・・と記載されている。
さらに、「環境温度」という用語を明確には使用していませんが、以下の開示は、用語「環境温度」が環境の加熱されていない温度を意味することの根拠をさらに提供します。
段落【0013】には・・・。
これらの開示に基づいて、被請求人は、当業者であれば「環境温度」が、環境の加熱されていない温度を意味することを理解するであろうと謹んで申し述べます。」(4頁22行-7頁6行)

「本件特許発明は、・・・キャビネット内の温度を迅速に調節して、シリンダーのより正確な制御を可能とすることができます。ガスシリンダー内部の液体の温度を環境温度よりも高めることなく、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加させること」(7頁25-28行)

(3)当審の判断
ア 本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0029】
ここに使用されるように、「環境」(ambient)なる用語は、ガスシリンダーを囲む雰囲気に関する。」

「【0033】
シリンダー温度と圧力の変化速度は、シリンダーに対する伝熱速度、流速による特定のエネルギー要求及びシリンダーの熱容量のバランスである。環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、(1)総合伝熱係数,(2)伝熱に有効な表面領域,(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差により支配される。概略的にいうと、無限に長いシリンダーとしてのガスシリンダーは、総合伝熱係数が以下の式1により計算される。
・・・」

「【0050】
このシステムは、ガスキャビネット003 内に収容される一又は二以上の圧縮液化ガスシリンダー002 を備えている。・・・
【0051】
環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、ガスシリンダー中の液体温度が環境温度を超える値に増加しないように、増加する。伝熱速度を増加させる適切な手段の例は、ガスキャビネット003 内の一又は二以上のプレナム板(plenum plates) 、又はスリット列006 で、ここを通って、空気が強制的にシリンダーを横切るようになっている。空気がプレナム板又はスリットを強制的に通すのに、空気吹込み器又はファン007 を使用できる。吹込み器又はファンは可変速度で操作出来るものが好ましい。
・・・
【0053】
プレナム板またはスリットは、空気の流れを設定することができるフィンを加えることにより、選択的に修正することができる。フィンは、液体-蒸気界面の近傍で第一にシリンダーに向けて空気の流れを設定するものが好ましい。
・・・
【0055】
プレナム面又はスリットの温度は、また、伝熱速度を更に増加するために環境よりもやや高い値に電気的に制御することができる。しかし、プレナム面またはスリットの温度は、液体-蒸気界面でのみ蒸発が生じるように限定されなければならない。そして、環境を越える温度にシリンダー内側の液体を加熱するのを避けるようにしなければならない。」

イ 本件発明における「環境」の定義は、【0029】に記載されているように「ガスシリンダーを囲む雰囲気」であると認められる。

ウ 本件発明における「環境温度」の定義は本件特許明細書には記載されていない。また、被請求人の主張する「環境の加熱されていない温度」であると解釈すべき根拠は認められない。すなわち、本件特許明細書には、ガスシリンダー内の液体温度を環境の加熱されていない温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段は記載されていない。
被請求人が主張する「環境温度」の定義を裏付ける本件特許明細書の記載箇所には、ホットプレート又は電気的に制御されたプレナム板やスリットにより加熱する前の環境の温度を特に「環境温度」と呼ぶとの記載はない。

エ したがって、「環境温度」とは、本件特許明細書の【0029】で定義された「環境」の温度のことであり、環境が加熱される場合には、加熱された後の環境の温度であると認められる。

オ 本件発明における「伝熱速度増加手段」の定義は本件特許明細書には記載されていないので、「伝熱速度増加手段」とは、その文言を一般的な技術用語として理解すれば、「伝熱速度」を「増加」する「手段」であると認められる。
そして、「伝熱速度」については上記の記載事項より、(1)総合伝熱係数、(2)伝熱に有効な表面領域、(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差の3つの要素に支配されるものであると理解できるから、「伝熱速度増加手段」とは、該3つの要素を伝熱速度が増加するように調整する手段であると理解できる。

カ したがって、本件の請求項1の記載は明確でないとはいえない。
また、請求項2乃至24及び請求項46乃至48についても同様に、記載が明確でないとはいえない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、4、10、25、29及び35に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明2、3、5、6、9、14乃至24、26乃至28、30、33、34、38乃至45に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件発明1乃至48に係る特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液化ガスの制御配給システム及び方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化状態からガスを配給するシステムであつて、(a)ガスが引かれるガスラインを有する圧縮液化ガスシリンダーと、(b)ガスシリンダーが収容されているガスシリンダーキャビネットと、(C)ガスシリンダー内の液体温度が環境温度を超えないで、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加手段とを備え、
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口と、伝熱ガスが1若しくはそれ以上の開口を通るようにする手段とを備えたガス配給システム。
【請求項2】
(d)ガスシリンダーから引かれるガスの減圧手段と、(e)減圧手段の上流に置かれている、ガスシリンダーから引かれたガスを過熱する手段と、をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項3】
(f)伝熱速度増加手段と過熱手段を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及び減圧手段の上流にあるガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御できるようにする手段、をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項4】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項5】
ガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項6】
1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは、伝熱ガスの流れ方向を定めるためのフィンを備えている請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項7】
伝熱速度増加手段は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する手段をさらに備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項8】
伝熱速度増加手段は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向けることができる請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項9】
伝熱速度増加手段は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項10】
伝熱速度増加手段は、ガスシリンダーの下に置かれたヒーターを備えた請求項1に記載のガス配給システム。
【請求項11】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備えた請求項10に記載のガス配給システム。
【請求項12】
スケールカバーは、頂部面に取付けられた窪み形状の部材をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項13】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて、加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する手段をさらに備えた請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項14】
過熱手段は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器を備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項15】
過熱手段は、ガスラインと接触しているヒーターを備えている請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項16】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプである請求項15に記載のガス配給システム。
【請求項17】
過熱手段は、空気を加熱する手段と、ガスラインの一部分に接続して、加熱される空気を吹き込む手段をさらに備えた請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項18】
過熱手段は、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた、加熱されるバルブをさらに具備した請求項2に記載のガス配給システム。
【請求項19】
加熱されるバルブは、ブロックバルブである請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項20】
加熱されるバルブは、更に第二のガス入口を備え、ここを通ってパージガスがバルブ内に入ることができるようになっている請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項21】
加熱されるバルブは、これに接続された圧力測定装置をさらに備えた請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項22】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとからなる群から選択される請求項18に記載のガス配給システム。
【請求項23】
ヒーターはヒートトレースである請求項22に記載の加熱されるガス配給システム。
【請求項24】
半導体処理装置と請求項1に記載のガス配給システムとを備えた半導体処理システム。
【請求項25】
液化状態からガスを供給する方法であって、この方法は、(a)ガスシリンダーキャビネットに収容され、ガスラインを有するガスシリンダー内に、圧縮液化ガスを供給する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体温度を環境温度を超えることなく環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する伝熱速度増加工程とを備え、伝熱ガスをガスキャビネット中の1若しくはそれ以上の開口を通すことにより、伝熱速度を増加するガス供給方法。
【請求項26】
(c)ガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程を更に備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項27】
(d)伝熱速度の増加と過熱工程を統合可能に制御して、ガスシリンダーの圧力と温度、及びガスの膨脹前にガスシリンダーから引かれるガスを過熱する度合を制御する工程を更に備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項28】
ガスはNH_(3),AsH_(3),BCl_(3),CO_(2),Cl_(2),SiH_(2)Cl_(2),Si_(2)H_(6),HBr,HCl,HF,N_(2)O,C_(3)F_(8),SF_(6),PH_(3),及びWF_(6)から選択される請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項29】
伝熱ガスは、空気又は不活性ガスである請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項30】
1若しくはそれ以上の開口は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項31】
伝熱速度増加工程は、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットの温度を環境温度よりも高い値に電気的に制御する工程を更に備えている請求項30に記載のガス供給方法。
【請求項32】
伝熱速度増加工程は、空気の流れを実質的に液体-蒸気界面に相当するガスシリンダー上の位置に向ける工程を備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項33】
伝熱速度増加工程は、ガスキャビネット中に1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットを用意する工程を備え、1若しくはそれ以上のプレナム板又はスリットは空気の流れ方向を決めるためのフィンを備えている請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項34】
伝熱速度増加工程は、一又はそれ以上の放射パネルヒーターを備え、該ヒーターでガスシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項35】
伝熱速度増加工程は、ガスシリンダーの下のヒーターでシリンダーを加熱する工程を備えた請求項25に記載のガス供給方法。
【請求項36】
ガスシリンダーの下に置かれたヒーターは、加熱されるスケールカバーで、このスケールカバーは、頂部面と、底部面と、上記頂部面と底部面との間に形成された中空部内に置かれた加熱要素とを備え、この方法は更にスケールでガスシリンダーの重量を測定する工程を備えた請求項35に記載のガス供給方法。
【請求項37】
ガスシリンダー圧力と重量の入力に基づいて加熱されるスケールカバーからの熱出力を制御する工程を更に備えた請求項36に記載のガス供給方法。
【請求項38】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、加熱されるガスフィルター又は加熱される清浄器でガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項39】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、ガスラインと接触しているヒーターでガスを過熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項40】
ガスラインと接触しているヒーターは、電気的な加熱タイプを備えた請求項39に記載のガス供給方法。
【請求項41】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、空気を加熱する工程と、ガスライン部分上に、加熱される空気を吹き込む工程とを備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項42】
ガスシリンダーから引かれるガスを過熱する工程は、バルブと熱接触するヒーターを備えたバルブ内でガス流を加熱する工程を備えた請求項26に記載のガス供給方法。
【請求項43】
加熱されるバルブは、ブロック形状のバルブである請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項44】
ヒーターは、自己調整型ヒーターと、抵抗型ヒーターと、カートリッジヒーターとの群から選択される請求項42に記載のガス供給方法。
【請求項45】
ヒーターはヒートトレースである請求項44に記載のガス供給方法。
【請求項46】
加熱要素は中空部内に巻かれている請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項47】
加熱要素は220°F(104℃)までの温度で操作できる請求項11に記載のガス配給システム。
【請求項48】
中空部の下に更に絶縁層を備え、この絶縁層は加熱要素から上面に熱を向けるのに有効なものである請求項11に記載のガス配給システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、液化状態からのガスの制御配給システム、及びこれを備えた半導体処理システムに関する。本発明は又液化状態からのガスの制御配給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工業では、シリンダーに貯えられた高純度ガスが処理ツールに供給され、各種半導体製造プロセスを行うようになっている。このようなプロセスの例として、拡散、化学的気相蒸着(CVD)、エッチング、スパッタリング、及びイオン注入(ion implantation)が挙げられる。ガスシリンダーは通常ガスキャビネット内に収容されている。これらガスキャビネットは、又、シリンダーをマニホールドを介して夫々のプロセスガスラインに安全に接続する手段を備えている。プロセスガスラインは、ガスが各種プロセスツールに導入される導管を備えている。
【0003】
半導体製造プロセスに使用される各種のガスのうち、多くは液化状態でシリンダーに貯蔵されている。この方法で貯えられる化学品の部分的なリスト、及びこれらが貯えられる圧力は以下の表1に示す。
【0004】
【表1】

【0005】
ガスキャビネットの第一の目的は、1若しくは二以上のガスをシリンダーからプロセスツールに配給する安全な運搬具を提供することにある。ガスキャビネットは、通常、安全な方法で、シリンダーの変更及び/又は構成要素の取り替え可能な配置として、各種流量制御装置を備えたガスパネル、バルブ、その他を有している。
【0006】
キャビネットは、従来、シールが壊れる前に不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)を備えたガス配給システムをパージするシステムを備えている。パージ操作の制御及び自動化は公知である。例えば、米国特許4,989,160、Garrettらに開示されている。この特許は、異なるタイプのガスに対して異なるパージプロセスが要求されることが示されているが、液化ガスシリンダーに関して特別の考慮が必要であることが認識されていない。
【0007】
HClの場合、ジュール-トンプソン効果(Joule-Thompsom Expansion and Corrosion in HCl system,Solid State Technology,July 1992,53-57頁、参照)による濃縮が起こる。液化HClは、その蒸気形態よりもより腐食性が強い。同様に、上記表1の化学品の多くは、液体の形態が対応する気体の形態よりも腐食性が強い。これは、水蒸気などの不純物によるもので、これらは液相内にトラップされて、ガス分配システムの表面に存在する。従って、ガス配給システム中にこれら材料が濃縮すると、腐食を導いてしまう。このことはシステムの構成要素にとって有害である。更に、腐食生成物は、高純度プロセスガスの汚染を導いてしまう。この汚染は、操業プロセスに関して有害であり、結局、製造される半導体装置に有害となる。
【0008】
ガス配給システム中の液体の存在は、また、流量制御に際し不正確さを導くと評価されていた。すなわち、各種流量制御装置中に液体が蓄積すると、流速及び圧力制御の問題を引き起こすとともに構成要素の破損を引き起こし、処理上の問題を生じる。このような挙動の一つの例は、液体塩素によるバルブシートの膨張である。これによりバルブは、永久的に閉じられてしまう。
【0009】
典型的なガス配給システムでは、シリンダーを離れた後、ガスが通過する最初の構成要素は、圧力調整器やオリフィスなどの減圧装置である。しかし、比較的低い蒸気圧を有する材料(WF_(6),BCl_(3),HF,SiH_(2)Cl_(2)など)を含むシリンダーでは、調整器は適切ではない。この場合、第一の構成要素はバルブとすることができる。これらの調整器又はバルブは、しばしばサービスや必要な取り替え中に故障する。これらの構成要素の故障は、この要素中の液体の存在にしばしば起因する。このような故障は、故障パーツの取り替えやこれに続くリークのチェック中でのプロセスのシャットダウンを必要とする。
【0010】
米国特許5,359,787,Mostowy,Jr.etalでは、HClのような吸湿、腐食化学品をバルクソース(例えばチューブトレイラー)から使用場所に配給する装置が記載されている。この特許は、不活性ガスのパージと真空サイクルとバルク貯蔵コンテナの下流にある、加熱される清浄器の使用を開示している。減圧下で加熱することにより、配給ラインでの腐食性ガスの濃縮を防ぐことができる。米国特許5,359,787は、バルク貯蔵システムに関し、貯蔵される化学品の体積は実質的にガスキャビネット中に貯蔵されるシリンダーの通常の体積よりも大きい。バルク貯蔵システムが大きな体積を有する結果、バルク貯蔵コンテナ内の温度と圧力とは、コンテナ内の液体が実質的に空になるまで、一般に一定である。このようなコンテナ内の圧力は、第一に環境温度の季節的な変動により制御される。
【0011】
逆に、ガスキャビネット内に貯蔵される比較的少ない体積のシリンダーの圧力変動は、シリンダーから引かれるガスの速度(及び気化に必要な熱の排出)とともにシリンダーへの環境エネルギーの移動に依存する。このような影響は、バルク貯蔵システムでは一般に存在しない。バルク貯蔵システムでは、貯蔵化学品の熱量が十分大きく、液体温度変化は比較的ゆっくり生じる。バルクシステム中のガス圧は液体の温度により制御される。すなわち、コンテナ内の圧力は、コンテナ内に収容されている液体の温度での化学品の蒸気圧と等しい。シリンダーに基づくガス配給システムでは、シリンダー温度に関して液体温度を制御することによりシリンダー圧力を制御する必要性が従来から認識されている。ガスシリンダー加熱/冷却ジャケットとして、シリンダー温度の制御を通してシリンダー圧力を制御することが提案されている。このような場合、加熱/冷却ジャケットは、ガスシリンダーと直接接触するように置かれる。このジャケットは、流体を循環することにより一定温度に維持される。この温度は、外部のヒーター/冷却ユニットにより制御される。このような加熱/冷却ジャケットは、例えば、アキュレート ガス コントロール システム 社から市販されている。
【0012】
これら加熱/冷却ジャケットは、一般に、ジボラン(B_(2)H_(6))等の熱的に不安定なガスの温度制御に使用される。加熱/冷却ジャケットの他の使用方法は、BCl_(3)、WF_(6)、HF,SiH_(2)Cl_(2)などの低い蒸気圧ガスを含むシリンダーの加熱である。これらガスのシリンダー圧力が低いため、液体温度を下げて更なる減圧をすると、流量制御問題を引き起こす。
【0013】
全てのガス配管システムの熱調整と協同してシリンダー温度を制御して、ガス配給システム中の濃縮を防止することが、低い蒸気圧を有するガスに対して提案されている。配管システムの熱調整を要求すると、シリンダーが加熱/冷却ジャケットに起因して環境温度よりもより大きくなる結果となる。もし、ガスラインが熱的に制御されないと、加熱ゾーンから、より低い温度ゾーンを通過したときに、そこを通るガス流の再濃縮が起こってしまう。しかし、熱調整器と協同した加熱/冷却ジャケットは、システムメンテナンス(例えばシリンダー取り替え中)での煩雑さや費用の増加が生じるため、好ましくはない。更に加えて、加熱/冷却ジャケットは、ジャケットがシリンダー回りを被覆し、また全てのシステムが加熱され、そして加熱温度になるために、過熱に対して大きなポテンシャルを有している。このような過熱は、シリンダーの下流にあるガス分配システム中のより低い温度に起因して、再濃縮を引き起こす。その結果、ガスシリンダーから使用場所へ分配する全ての分配システムを加熱する場合は、このような再濃縮を阻止する必要がある。
【0014】
さらに、シリンダー加熱/冷却ジャケットは、熱的に有効ではない。例えば、典型的なシリンダー加熱/冷却ジャケットは、約1500Wの加熱と冷却の容量を持っている。表2は、シリンダーから10slm(standard liters per minute)の流速で各種ガスを連続的に気化するためのエネルギー要求を要約している。このデータは、気化のためのエネルギー要求は、実質的にシリンダージャケットの加熱/冷却速度よりも低いことを示している。
【0015】
【表2】

【0016】
【発明が解決しようとする課題】
加熱/冷却ジャケット及びガス分配システムの厳格な熱調節器を用いると上記の欠点があるため、その使用は好ましくない。
【0017】
半導体処理工業の要望に適合させるために、本発明の目的は、液化状態からガスを制御配給する新規なシステムを提供するもので、このシステムは液化ガスを含むシリンダーの圧力を正確に制御し、これと同時にシリンダーから引かれるガス中に入った液滴を最小にするものである。従って、単一相のプロセスガス流は、実質的に流速増加を伴って得られる。その結果、各種のプロセスツールを単一のガスキャビネットにより提供することができる。あるいは、個々のプロセスツールに、より高い流速で配給することができる。更に、扱いにくい加熱/冷却ジャケツの使用を避け、かつプロセスラインの厳格な熱管理を避けることができる。
【0018】
さらに本発明の目的は、液化ガスからガスを制御配給する進歩性のあるシステムを備えた半導体プロセスシステムを提供することにある。
【0019】
さらに本発明の目的は、液化ガスからガスを制御配給するための方法で、これは進歩性あるシステム及び方法と組み合わされて使用できるものを提供することにある。
【0020】
さらに本発明の目的は、ガス流を調整する、加熱されるバルブを提供することにある。
【0021】
さらに本発明の目的は、進歩性のあるシステム及び方法に使用できる、加熱されるスケールカバーを提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的及び事項は、ここに示された明細書、図面、請求範囲を見ることにより、当業者であれば、容易に理解できる。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、本発明のシステム及び方法に適合される。本発明の最初の形態によれば、液化状態からガスを配給する新規なシステムを提供する。このシステムは、(a)ガスが引かれるガスラインを接続した圧縮液化ガスシリンダー、(b)ガスシリンダーが収容されるガスシリンダーキャビネット、及び(c)ガスシリンダー内の液体の温度が環境温度より高くならないように、環境とシリンダー間の伝熱速度を増加する手段を備えている。
【0024】
本発明の第二の形態によれば、半導体プロセスシステムが提供される。このシステムは、半導体処理装置と、液化状態からガスを配給する進歩性あるシステムとを備えている。
【0025】
本発明の第三の形態は、液化状態からガスを配給する方法である。この方法は、(a)ガスラインを接続したガスシリンダー中に圧縮液化ガスを提供する工程と、(b)ガスシリンダー内の液体の温度が環境温度より高くならないように、環境とシリンダー間の伝熱速度を増加する工程を備えている。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の目的及び利点は、添付図面と関連する好適な実施の形態の詳細な説明から明確である。
【0027】
すなわち、この発明は、シリンダー加熱/冷却ジャケットを使用することなく、シリンダー内の圧力を制御する有効な方法を提供し、同時にシリンダーから引かれるガス中に同伴される液滴を最小にする方法を提供する。
【0028】
驚くべきかつ予想し得なかったことに、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度の増加が明確になされた。これは、環境とシリンダーとの間の温度差を減少し、シリンダー加熱/冷却ジャケットを使用したときに、ガスラインで要求されるのと同様の厳格な熱調整が要求されることはない。伝熱速度の増加によりシリンダー温度が増加することはないので、このような厳格な調整は要求されない。
【0029】
ここに使用されるように、「環境」(ambient)なる用語は、ガスシリンダーを囲む雰囲気に関する。
【0030】
ノーマルなシリンダー使用中に、プロセスガス中にいかに同伴液滴が見出されるかを示すために、シリンダー中の熱変化を図1、2を参照して以下に示す。
【0031】
図1は、3l/mの流速の7lのCl2シリンダーについて、各種位置での外部シリンダー壁温度を時間の関数で示す。シリンダー内の蒸気圧力も時間の関数として示す。シリンダーの操作中、外部シリンダー温度は、実質的に環境温度よりも低くなった。シリンダー表面の最も低い温度は、液体-蒸気界面の位置に対応する。何故なら、この領域で気化プロセスが生じるためである。
【0032】
Cl2蒸気圧力曲線に基づき、シリンダー内部の圧力は、最も低い外部壁温度よりも低い液体温度を示す。このような効果は、図2に明確に示される。これは、シリンダー中の液体温度の関数として塩素蒸気圧を示す(実線)。また、測定外部シリンダー温度の関数として、流速が0.16,1,及び3l/m(個々の点)に対するシリンダー圧力を示す。液体の温度は最も低い外部シリンダー温度よりも低くなければならないので、自然対流流動が引き起こされる。これらの自然対流流動により、液相の温度の均一化が促進される。
【0033】
シリンダー温度と圧力の変化速度は、シリンダーに対する伝熱速度、流速による特定のエネルギー要求及びシリンダーの熱容量のバランスである。環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、(1)総合伝熱係数,(2)伝熱に有効な表面領域,(3)環境とガスシリンダーとの間の温度差により支配される。概略的にいうと、無限に長いシリンダーとしてのガスシリンダーは、総合伝熱係数が以下の式1により計算される。
【0034】
【数1】

【0035】
上記式において、Uは、総合伝熱係数(W/m2K)、roは、シリンダーの外径(m),riはシリンダーの内径(m),hiシリンダーと液体との間の内部伝熱係数(W/m2K)、kは、シリンダー材料の熱伝導率(W/m2K)、h0は、シリンダーと環境との間の外部伝熱係数(W/m2K)である。
【0036】
総合的な伝熱係数Uは、伝熱に対する個々の抵抗値のもっとも小さい値(すなわち、式Iの分母中の各項)よりも少ない値である。通常使用されるシリンダーの寸法(例えば、内容積55l以下)では、総合的な伝熱係数は、第一に、外部伝熱係数h0の値によって制御される。この事は以下の例により示される。ここで、ri=3インチ、r0=3.2インチ、k=40W/m2K,hi=890W/m2K,h0=4.5W/m2Kである。伝熱係数の値は、一般に入手可能な工学技術の表に基づき、これは内部と外部の両方の伝熱に対して、第一のメカニズムとして自然対流を用いている。総合的な伝熱係数Uは4.47W/m2Kに等しく、この値は外部伝熱係数h0に大変近い。
【0037】
以下の例は、外部伝熱係数h_(0)は、強制対流の場合総合的な伝熱係数式をも支配することを示している。ガスキャビネットは、通常、キャビネットの底部内に空気を引き込み、例えば頂部から排気をすることによりパージがなされる。その結果、空気は連続的にガスシリンダーの表面に沿って連続的に流れる。強制対流伝熱係数が12W/m^(2)Kとすると(正方形板上を2m/sで流れる空気の特徴)、このようなシステムの総合的な伝熱係数は、11.8W/m^(2)Kである。従って、伝熱に対する第一の抵抗は環境とシリンダーとの間に生じる。
【0038】
外部伝熱係数h_(0)は、シリンダーの全ての表面に沿って一定ではない。空気がキャビネット底部に近いキャビネットに入るので、流れ方向はキャビネットのその領域内でシリンダーを横切る(すなわち、シリンダーの長手軸に対して横断する)。キャビネットの頂部に近い領域では、空気は第一に垂直方向に移動する(すなわち、シリンダーの長手軸に平行)。
【0039】
図3及び4は、シリンダーの長手軸301,401を横切る二つの異なる面300,400でのガスキャビネット内での空気速度ベクトルを示す。図3の面300は、キャビネットの底部から約0.15mの位置でガスキャビネット内に空気を引き込む位置である。一方、面400は、図4のガスキャビネットの底部から約1mである。図3に示されるように、流れは第一にシリンダーを横切って、ガスキャビネットの底部に近いシリンダーの長手軸301を横断する。逆に、図4は、空気流が第一にガスシリンダーの頂部に近いシリンダー長手軸401に平行である。
【0040】
ガスキャビネット中の空気流パターンは、外部伝熱係数h_(0)の局地的な値により決定される。シリンダーの長さに沿う外部伝熱係数h_(0)の等高線図を図5に示す。外部伝熱係数h_(0)の値は負であり、エネルギーは環境からシリンダーに流れることを示している。しかし、全ての伝熱係数Uを計算するのに絶対値を使用している。従って、伝熱係数間でなされる比較はその絶対値に基づく。よって、-50W/m^(2)Kの伝熱係数は、-25W/m^(2)Kの伝熱係数よりも大きいとする。外部伝熱係数h_(0)の値は、約-36から約-2W/m^(2)Kの範囲にあり、外部伝熱係数h_(0)の平均値は-10.5W/m^(2)Kである。図5に示される結果に基づき、外部伝熱係数は、環境空気がキャビネット内に引かれる位置と逆の点で最大である。これは、この領域での空気の方向と速度の大きさによる。
【0041】
外部伝熱係数h0の増加と、その結果として生じる伝熱速度の増加に伴い、外部シリンダー温度もまた増加する(同一のプロセスガス流速とする)。また、より高いプロセスガスの流速とすることもできる。そのことにより、環境とシリンダーとの間の温度に同様の差を維持することができる。しかし、材料を環境とシリンダー間の温度差が大きすぎるシリンダー(類推すれば、シリンダーとシリンダーに貯蔵された液体との間)から引き抜くことは好ましくない。その理由は、異なる沸騰現象に起因して、シリンダーから引き抜かれるガス中の液滴を同伴する可能性があるためである。シリンダーと液体との間の温度差が増加するので、蒸発プロセスは、界面蒸発の一つから沸騰タイプの現象に変化する。
【0042】
図6は、シリンダーTwとシリンダーに貯蔵された液体Tsatとの間の温度差ΔTxを有する内部伝熱係数hiの質的変動を示す。小さな温度差では、蒸発プロセスは、液体-蒸気界面で起こる。大きな温度差では、少しの度合だけ大きくても、液体中での蒸気沸騰の形成を通して蒸発プロセスが進行する。沸騰が界面で起こるので、ごく微細な液滴はガス流中に同伴されることが可能である。この液滴の同伴は観察され、図7での3slm流速のCl_(2)シリンダーについて定量化される。この図は、時間の関数として、3slmのCl_(2)ガス流中の液滴の濃度を示す。液滴濃縮中の初期腐食は、シリンダーのヘッドスペース内の液滴をパージすることに関するものであるが、この後、液滴数は時間経過によりゼロに落ちた。Cl_(2)シリンダーの温度は低下し続けるので、沸騰現象は最終的に変化する。この変化は、液滴カウント数の急激な増加により証明される。
【0043】
図8は、図14A、14Bで例示した、形状がブロック状のバルブ(以下、ブロックバルブと称する)を用いたとき、時間の関数として、1slmCl2ガス流中の液体液滴の濃縮を示す。ヘッドスペースからガス流内の多数の液滴は、シリンダーバルブを開いたときに、はじめから存在する。これら液滴は、過飽和状態でヘッドスペースに存在する。ガスの流れが連続しているので、液滴は最終的にはヘッドスペースからパージされる。従って、ガス流の液滴数は、減少する。初期の段階で検出された液滴は、部分的な膨張プロセスにより形成されるが、これはシリンダーバルブが開いたときに生じ、及び/又は液滴がシリンダーのヘッドスペース内に懸濁された平衡液滴の数に寄与できると思われる。形成メカニズムを考慮することなく、これら液滴が出口ガス中にある時間の長さは、シリンダーの液体レベル(または換言すれば、ヘッドスペース容積)とシリンダーから除去されるガスのガス流速に関係する。仮に、液滴を同伴するガスが一定圧力で加熱される場合、液滴は蒸発されることが分かった。
【0044】
ガス配送システム中の液体が存在するのは、シリンダーからガスを引くプロセス、環境変動による局部的な冷却、若しくは膨張プロセス中の液滴形成の結果である。図9を参照すると、295Kで飽和蒸気からHClの等エンタルピー減圧を伴い、材料は二つの相領域内を通る。表1,2の他のガスは、等エンタルピー減圧に関して二つの相領域内を通ることはない。しかし、膨張過程で伴う熱力学的な経路は、断熱ではなく(実際の膨張プロセスは、運動エネルギーに対して初期エネルギーを変換するために、等エントロピーに近い)、以下の不等式を満たした場合、二つの相領域に入る可能性を持つ。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、不等式の左側は、一定エントロピーでの温度変化を伴う圧力の変化を示す。不等式の右側は、温度の関数としての蒸気圧の導関数を示す。
【0047】
上記関係は、表1、2の各ガスに対して満足する。膨張プロセスの局部的な制御が困難なので、膨張経路が2相領域に入ることを防ぐために、膨張前にガスを加熱する必要がある。ガスがシリンダーから引かれる前に加熱されると、圧力は上がらず、要求される厳格な熱管理の困難性を未然に防ぐ。
【0048】
上述したシステム中にガスを流す液相の存在に対して信頼性のある三つのメカニズムの組合わせ(すなわち、シリンダーから引かれる液滴、シリンダーの下流にある第一要素内の膨張過程での形成、及び流れの開始過程で存在する液滴のパージ)は、個々のガスキャビネットマニフォールドにより信頼性をもって供給されるガス流速を有効に制限する。現在、これらの制限は、単位分当り、数標準リットルに達し、これは連続ベースで測定される。プロセスガス中でこれらの液滴が消失するので、より多くのプロセスツールを単一のガスキャビネットに接続することができ、また、単一のプロセスツールに対する流速が実質的に上昇することが見出された。
【0049】
図10を参照して、液化状態からガスを配送する進歩性のあるシステム及び方法の好適な具体例を以下に示す。しかし、特定のシステムの形態は、一般に、コスト、安全性、及びキャビネットの流動性に依存する。
【0050】
このシステムは、ガスキャビネット003内に収容される一又は二以上の圧縮液化ガスシリンダー002を備えている。液化ガスシリンダー内に充填される特定の材料は、限定されないが、プロセスに依存する。典型的な材料は表1、2に示すもので、NH_(3)、AsH_(3)、BCl_(3)、CO_(2)、Cl_(2)、SiH_(2)Cl_(2)、Si_(2)H_(6)、HBr、HCl、HF、N_(2)O、C_(3)F_(8)、SF_(6)、PH_(3)、WF_(6)である。ガスキャビネット003は、格子004を有し、ここを通ってパージ空気がキャビネットに入る。このパージ空気は、好ましくは乾燥し、排気ダクト005を通って、ガスキャビネットから排気される。
【0051】
環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度は、ガスシリンダー中の液体温度が環境温度を超える値に増加しないように、増加する。伝熱速度を増加させる適切な手段の例は、ガスキャビネット003内の一又は二以上のプレナム板(plenum plates)、又はスリット列006で、ここを通って、空気が強制的にシリンダーを横切るようになっている。空気がプレナム板又はスリットを強制的に通すのに、空気吹込み器又はファン007を使用できる。吹込み器又はファンは可変速度で操作出来るものが好ましい。
【0052】
所定の減圧(吹込み器またはファン特性で決る)に対して最大伝熱係数を持つ適切なプレナム板は、Holger Martinで市販されている。このような構成要素は、ガスキャビネット寸法で最小の又は増加しないガスキャビネット内に容易に組み込むことができる。
【0053】
プレナム板またはスリットは、空気の流れを設定することができるフィンを加えることにより、選択的に修正することができる。フィンは、液体-蒸気界面の近傍で第一にシリンダーに向けて空気の流れを設定するものが好ましい。
【0055】
プレナム面又はスリットの温度は、また、伝熱速度を更に増加するために環境よりもやや高い値に電気的に制御することができる。しかし、プレナム面またはスリットの温度は、液体-蒸気界面でのみ蒸発が生じるように限定されなければならない。そして、環境を越える温度にシリンダー内側の液体を加熱するのを避けるようにしなければならない。
【0056】
付加的又はこれとは別に、シリンダーの下にある放射パネルヒーターまたはヒーター(例えば、その上にシリンダーがセツトされるホットプレートタイプのヒーター)は、環境とガスシリンダーと間の伝熱速度を増加するように使用できる。特に好ましい本発明の具体例では、ホットプレートタイプのヒーターを使用することにより伝熱速度が増加される。
【0057】
図11A及び11Bは、実施例のホットプレートタイプのヒーターの側断面および平面図をそれぞれ示す。ヒーター100は、重量測定計(以下、スケールと略称する)用のカバーの形をとっており、このスケールはヒーターにより囲われることができる。このようなスケールは公知であり、通常はガスキャビネットの床上に置かれる。液化ガスを充填するシリンダーは、一般にスケール上に直接乗せられ、このスケールでシリンダー内に残っている材料の量を測定する。図11A、11Bで例示される加熱される重量測定計のカバー(以下、スケールカバーと略称する)を使用する時、シリンダーは、カバーされたスケール上に直接置かれる。上述したスケールカバー/ヒーターは、ガスシリンダーをごくわずか移動しさえすれば、現存するガスキャビネット内に適合することができるので、特に有効である。従って、現存するガスキャビネット又はガス配管を再適合したり修正することは不要となる。
【0058】
ヒーター100は、センタースペーサー手段106、多数のサイドスペーサー108、及びスクリュー110により、底部面すなわち底部板104に取付けられた頂部面即ち頂部板102を有する。ヒーターは、さらに加熱要素(図示せず)を入れる空隙を有する。適切な加熱要素には、これに限定されるものではないが、電気加熱タイプにような抵抗型ヒーターまたはヒートトレスのような自己調節型ヒーターが挙げられる。加熱要素は、好ましくは、空隙112内に巻かれることができるものが良い。加熱要素は、環境温度?約220°Fの温度で操作できるべきである。
【0059】
面内の好適な加熱要素の一端を保持するために、端部はセンタースペーサー106内で遮断部114に固定でき、加熱要素は、所望の領域がカバーされるまでセンタースペーサーの回りに、及び選択的にサイドスペーサーの回りに巻回することができる。加熱要素はガスシリンダーとスケールとの間の接触領域をカバーするのが好ましい。加熱要素の有効な長さ、例えば16フィートまたはそれ以上の長さが、ヒーター内で巻かれる。20ワット/1フィートの加熱要素の16フィート長さを考えると、320ワットの熱がヒーターから得られる。
【0060】
空隙112の底部は、絶縁層116を使用して絶縁され、加熱要素からの熱が直接上方のガスシリンダーの底部に向けるのが好ましい。絶縁層はまた、加熱要素と頂部面102との間の接触を維持するように働く。ヒーターは、さらに前後部パネル118、サイドパネル120及びブリッジ122を有し、ヒーターがシリンダーの重量を測定するスケール(以下、シリンダースケールと称する)上に適合することができるようにしている。
【0061】
ヒーター100の構成材料は、有効な伝熱がガスシリンダーの底部に成されるものでなければならない。頂部板102は好ましくはステンレススチールで作られ、前後部パネル、サイドパネル、ブリッジは好ましくはアルミニウムまたは炭素鋼で構成されるのがよい。
【0062】
使用される特定のタイプのヒーターに依存して、各種の方法で温度制御できる。本発明の好適な形態によれば、ヒーターの出力は、ガスシリンダーの要求エネルギーに基づいて、オン、オフできる。この目的のための好適な制御方法及びアルゴリズムを以下に述べる。
【0063】
本発明の更なる形態によれば、ヒーター100は、ヒーターの頂部面102に取付けられた窪みまたはカップ形状部分を有することができる。窪み部分は、好ましくは、シリンダーに対するより有効な伝熱が可能となるように、ガスシリンダーの底部の形に従うのがよい。窪み部分は比較的硬くてガスシリンダーとの接触に関して変形抵抗があり、シリンダーに対して熱を移動するのに有効である材料で形成されるべきである。このような材料には、例えば、炭素鋼、ステンレススチールがある。
【0064】
図12は、時間の関数として、ガス流の中での液滴の存在に関するヒーター温度の影響を示すグラフである。試験は、流速5slmで、C3F8で行ない、ヒーター温度を約78°F?112°F(25.6-44℃)で変化させた。使用したヒーターは、上述したホットプレートタイプのヒーター100である。ヒーター温度の上昇により、液滴濃度中の有意義な減少が得られた。
【0065】
上述した伝熱速度を増加する手段の結合もまた、この発明で考えることができる。例えば、放射ヒーターまたはホットプレート型ヒーターは吹き込み器またはファンと組合わせて、さらには上述のプレナム板またはスリットと組合わせて使用できる。
【0066】
発明によるシステムの操作は、図13を参照してここに述べる。接続されたガスラインを通ってシリンダー302から引かれる。ガスラインを構成する好適な材料は、ガスに腐食性があるため、電気研磨されたステンレススチール、ハステロイ、またはモネルが挙げられる。
【0067】
ガスラインは、更にシリンダーから引かれるガスの圧力を下げる手段304を含む。上述のように、圧力調整器、またはバルブはこの減圧工程に適切である。このような構成要素は例えば、AP Techから市販のルートで入手できる。
【0068】
システムは、更にシリンダーから引かれるガスを過熱する手段306を備えることができる。過熱手段は、減圧手段の上流側に置かれている。ガスの過熱はシリンダーヘッドスペース内の液滴またはミストの移動で生じる有害な影響を防止することができ、これはシリンダーからの初期ガス流中に独特なものである。過熱手段は、この蒸気の過熱を最小の度合いとして、これに続く膨脹プロセスで液滴が形成される可能性を確実に避ける。
【0069】
過熱手段は、加熱されるラインのように、ガス流に同伴される液滴を有効に除去するユニットであればどのようなものでもよい。このラインは、例えば、ガスラインの長さに沿って設けた、電気加熱型のような抵抗型ヒーター、ヒートトレースのような自己調整型ヒーターが使用できる。
【0070】
本発明の好適な具体例によれば、過熱手段は修正ブロックバルブの形態を取ることができる。図14A、14Bを参照して、ブロックバルブ400は、適切なガス配管および付属品(図示せず)を通ってガスシリンダーに接続されている。配管は、入口部402でブロックバルブに接続されている。ブロックバルブは、さらに、パージガス入口部404を有し、ここを通って、窒素やアルゴンなどの不活性ガスがバルブ内に導入される。入口部402を通って導入されるプロセスガスは、出口部406を通ってバルブを出る。この出口部406は、適切なガス配管、付属品、バルブなどを通って、使用場所、たとえば、プロセスツールに接続されている。ブロックバルブは、アクチュエータ408,410により操作され、これらはバルブ内でガス流経路を開いたり、閉じたりする。バルブ内のガス圧力は、圧力変換機などの圧力測定機器によりモニターされる。
本発明はブロックバルブにかぎらず、加熱されるバルブの過熱手段が、ガス入口、ガス出口、バルブを開閉するアクチュエータ、及びバルブと熱接触するヒーターとを備えた加熱されるバルブであればよい。
【0071】
熱は、ブロックバルブに取り付けられ、またはブロックバルブ内に挿入された一または二以上の加熱要素414によりブロックバルブ400に提供される。加熱要素は、ブロックバルブに対して一定の熱流動を提供できるものとすべきである。適切な熱要素には、これに限定するものではないが、ヒートトレースのような自己調整型ヒーター、電気加熱型のような抵抗型ヒーター、若しくはカートリッジヒータが挙げられる。図示した具体例に示されるように、ヒートトレース414の一または二以上のストリップは、この目的のために、ブロックバルブの後ろ側に取り付けることができる。ヒートトレースのような自己調整型ヒーターの場合、ヒーターは全時間維持できる。逆に、カートリッジヒータを使用した場合、ブロックバルブ内、例えば位置416内に挿入できる。
【0072】
伝熱効率を改善するために、ブロックバルブには、好ましくは、出口部分406に加えられた焼結金属ディスク418が挙げられる。金属ディスク418は、孔サイズが例えば約1?60ミクロン、好ましくは5?30ミクロンの孔サイズを有するフィルターの形態を取ることができる。金属ディスク418は加熱要素により加熱されるので、ガスが接触するための付加的な加熱表面領域を設ける。したがって、金属ディスク418は必要なエネルギーを提供して、ガス流中の任意の液体が確実に気化するのを助ける。
【0073】
金属ディスクは、出口部内の場所に溶接できる。金属ディスクの構成材料は、バルブを流通するプロセスガスに基づいて選択される。すなわち、構成材料は、プロセスガスと適合して、プロセスガスの汚染を防ぎ、同時に各種ガスライン構成要素のダメージを防ぐものでなければならない。金属ディスクの典型的な材料として、これに限定されるものではないが、ステンレススチール(例えば、316L)、ハステロイ及びニッケルが挙げられる。
【0074】
上述の構造に加えて、過熱手段は、空気または不活性ガス、好ましくは乾燥したガスを加熱するユニットを備えることができ、これは吹込み器またはファンによりガスラインのセクション上に吹かれる。加熱される空気または不活性ガスは共軸ライン構造の使用により、ガス流を加熱するのにも使用される。
【0075】
付加的又はこれとは別に、過熱手段は、ライン中に加熱ガスフィルターおよび/または加熱ガス浄化器を有することができる。上述した焼結金属ディスクは、そのようなタイプのフィルターの一つである。加熱ガスフィルターはガス中の粒子を除去し、伝熱のために大きな表面領域を提供する。加熱ガス浄化器は、シリンダー内のガスからの不所望な汚染物を除去することができ、伝熱のために大きな表面領域を提供する。
【0076】
図15A及び15Bは、最初にガスシリンダーバルブを開くときに観察される多数の液滴を減少するのに過熱器の有効性を示すものである。試験は、5slmで過熱器を用いない場合(図15A)と過熱器を用いた場合(図15B)とで行われた。使用された過熱器は、上述した加熱ブロックバルブであった。過熱器を用いない場合、約3800/l?約19,000/lの範囲の数の液滴がガス流中に観察された。これら液滴は、過熱器を使用したときに、有効に消失された。
【0077】
図13の概略ダイヤグラムに戻って、このシステムは、伝熱速度増加手段308と過熱手段306とを統括的に制御する手段をさらに備えることができる。この制御手段は、シリンダーの圧力と温度とを、また、減圧手段304の上流側のシリンダーから引かれたガスを過熱する度合いを正確に制御することができる。従って、一定のシリンダー圧力、環境温度もしくは環境温度よりもやや低いシリンダー温度、および膨脹前のガス過熱の所望する度合いを全て得ることができる。
【0078】
適切な制御手段は公知であり、例えば、一又は二以上のプログラム可能な論理制御器(PLCs)またはマイクロプロセッサーがある。圧力センサー310は、シリンダー310の出口で圧力をモニターする。圧力センサーで読まれる圧力は、気化が生じる圧力を示し、さらに伝熱速度増加手段を調整するコントローラー314に入力する。この調整は、例えば、瞬間的な圧力値とその履歴に基づくことができる。選択的に、シリンダー過熱センサー316をも設けて、所定の温度リミットを越えたときにコントローラーを無視するようにすることもできる。
【0079】
過熱手段306と減圧機器304の上流側の直接のガス温度は、上述したのと同様の仕方で制御される。
【0080】
過熱手段の制御システムは、温度センサー318を有し、これは過熱手段306の下流側と減圧手段304の上流側に位置している。温度センサーの出力に基づき、コントローラー314は、制御信号を過熱器306に送り、このことによりガス温度を調整する。
【0081】
過熱制御温度のセットポイントは、例えば、その時点のシリンダー圧力およびシリンダー壁温度に依存する。シリンダー壁温度と液体温度(上気圧曲線により定義される)との間の示唆された差が増加する時に、多数の液滴が引かれるので、過熱器で要求されるエネルギー量が増加する。
【0082】
過熱の度合は、エネルギー出力又は温度の関数として制御することができる。エネルギー出力の関数として過熱の度合いを制御するのが望ましい場合、以下の式が過熱器の出力を支配する。
【0083】
【数3】

【0084】
ここで、A及びBは定数で、含有される特定のガスに対する蒸気圧曲線に依存し、Tliqは、蒸気圧曲線によるシリンダー圧力測定値から導かれる。同様の式は、温度の関数として過熱の度合いを制御する場合に適用可能である。或るガスの場合、過熱セットポイントはシリンダー圧力で変化しないことが可能である。このことは、低い圧力ガスでほとんど正しいといえる。
【0085】
図16を参照して、以下は、本発明の液化ガス配給用のさらなる制御システムに関する記述である。特定の加熱構成要素に限定されることなく、この例示された制御システムは、スケール602、底部ヒーター/スケールカバー604とともに上述したブロックバルブ加熱器606を有するガス配給システムと結合して使用される。
【0086】
好適には、ブロックバルブは、ヒートトレースのような自己調整加熱要素で加熱される。その結果、さらに制御することなく、ブロックバルブヒーターに出力を連続的に供給することができる。制御システムは、ガスシリンダーのエネルギー要求量を決定する。例示した制御システムは、他の公知のコンピューター制御の形態も可能であるが、一または二以上のプログラム可能な論理コントローラー(PLCs)608に基づく。
【0087】
気相がガスシリンダ610からのみ流れることを確認するために、PLCで使用するためにアルゴリズムを作り、シリンダーのエネルギー要求量を決定するようにする。アルゴリズムのステップを図17に示し、フローチャートを図18に示す。
【0088】
アルゴリズムは、変可入力値として、とりわけ、ガスシリンダー圧力Pおよびガスシリンダー容積(すなわち自重)Mtを必要とする。シリンダー圧力は、加熱ブロックバルブ内の圧力変換器などの圧力測定機器で測定される。シリンダー容量は、下部ヒーターによりカバーされたスケールで測定され、シリンダーは、この下部ヒーター上でガスシリンダーキャビネット内にセットされている。シリンダー圧力と容量は、PLCにより読まれる。そして、シリンダーのエネルギー要求量は従ってシリンダーの使用により直接制御される。
【0089】
特に、シリンダー内に残る生成物の重量Mpは、スケールで測定されるように、シリンダー重量Mから自重(すなわち空のシリンダー重量で、可変入力値)を減算することにより算出される。全ての重量はポンドで測定される。
【0090】
次にMpは、変動値(inequality)、(ρg/1000.0*V*s)*2.2と比較される。ここでρgは、PLC内に入力される表により提供される。V(可変入力値)はリットルで示すシリンダーの容積で、sは安全係数である。不純物がシリンダーの底部で残りの液体中に濃縮する傾向があるので、安全係数は、ガスシリンダー中の液体の完全な減少を防ぐために使用される。このような不純物は、ガス配給システムの構成要素と共に、作られる半導体装置にとって潜在的に有害である。これに限定されるものではないが、安全係数sの典型的な値は1.1?1.3である。
【0091】
結局、Mpは、上述した不等式よりも少なく、「出力」関数は、零の値が割り当てられる。このような場合、「分数」関数(分数=出力/最大出力)もまた零に等しい。
【0092】
逆に、もしMpが上述した不等式よりも大きければ、液体温度Tldk(°K)は式Tldk=(B/(ln(P)-A)から計算される。ここで、AおよびBは、特定の材料の蒸気圧曲線から決定される定数である。Aは蒸気圧曲線のy遮断(intercept)で、一方Bは蒸気圧曲線の傾斜である。A、B値の値のテーブルは、PLC内に予めプログラムされる。圧力P(psia)は、圧力センサーで測定される。
【0093】
次に、液体温度Tldkは、式Tld=1.8*Tldkにより温度Tld(°F)に変換される。温度Tldは、温度セットポイントTsp(°F)(入力値)と比較される。温度差(「誤差」”error”)は、式、誤差=Tsp-Tldで計算される。
【0094】
「総和」”sume”関数は、次に式、総和”sume”=総和”sume”+誤差”error”*dtで計算される。ここで、dtはサンプル時間(総和関数は制御アルゴリズムの初期化の後、最初は零の値にセットされた)。「総和」”sume”は、誤差”error”、すなわち温度差の総和を示す。
【0095】
「誤差」”error”関数の値は次にチェックされる。もし値が零よりも少ないと、「出力」”output”関数は零の値が割り当てられる。しかし、もしこの値が零未満ではないとするとKc値は、式、Kc=Tgain*Mで計算される。ここで、Tgainは、W/°F-lb単位中の、ガスシリンダーとここに充填されている1秒当りの(per second)液体の熱容量を示す。この値に限定されるものではないが、Tgainは、例えば、10?100W/°F-lbの値をとることができる。例示するシステムでは、Tgainは、約30W/°F-lbに等しい。Kcはシステム(シリンダーおよび液体)の温度を1°F上昇するのに要求される出力を示し、W/°Fの単位をもつ。
【0096】
「出力」”output”関数の値は、次に式、出力”output”=Kc*誤差”error”+Kc/tau*総和”sume”で計算される。tauは,制御システムに対するヒーターの応答の遅れ時間に基づく定数である。
【0097】
「分数」”fraction on”関数は、次に式、分数”fraction on”=出力”output”/最大出力”maxoutput”により決められる。「分数」”fraction on”関数は、ヒーターがオンする時間を示す。「最大出力」”masoutput”は、ワットでヒーターの最大出力を示す。制御システムを通して、ヒーターへの出力は、「分数」”fraction on”関数で計算された時間、オンされる。
【0098】
制御ループは、不等式,Mp<ρg/1000.0*V*s)*2.2に適合するまで続けられる。この時間、ガスシリンダーは、置き換えられ、アルゴリズムは再度初期化されるべきである。
【0099】
ガスシリンダーから気相のみを配送する容量を最大とすることに加えて、上述したアルゴリズムおよび制御システムは、ガス流速とともにシリンダーがこのような高い流量を配給できる時間の長さを最大とすることができる。
【0100】
上述した制御システムの特別な有益な形態はバルク貯蔵容器やトレイラーのような,シリンダーよりも大きな相当大きな液化ガス源ガスから、ガスを全べて確実に気相配給するまで、システムを評価することができる。
【0101】
発明の結果として、シリンダー内の液化ガスからプロセスガス流速の実質的な増加は、ガスシステム中の同伴液滴の最小化もしくは完全な不存在を達成することができる。シリンダーから除去される液滴は、有効に消失され、膨脹プロセスで形成される液滴の可能性もまた最小化され、消失される。
【0102】
シリンダー温度に関してシリンダーの内側の液体の温度が環境温度と等しいかまたはやや低い値に維持されるので、ヒーター下流での厳格な熱管理は、不必要となる。また、進歩性のあるシステムおよび方法に関連する任意の熱駆動力により,シリンダーキャビネットの下流の配管システム中での濃縮が避けられる。
【0103】
進歩性のあるシステム及び方法により得られる外部伝熱係数hoの増加は、約100W/m2Kと推定される。これは,液体温度を環境温度を越えて増加することなく、環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度の実質的な増加に転換される。その結果、ガス流速は約10倍で増加することができる。
【0104】
発明はその特定の具体例を参照することにより詳細に記載されているが、当業者であれば、請求項の発明の範囲を逸脱しないで、各種変更や修正を行い、均等物を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリンダーに沿う各種の位置で測定された外部シリンダー壁温度と、Cl_(2)シリンダーに対する時間の関数としてのシリンダー内の蒸気圧力を示すグラフ。
【図2】各種流速における、シリンダー内の液体温度の関数としてシリンダー内の蒸気圧と、最も低い外部シリンダー温度に対応する理論蒸気圧を示す図。
【図3】ガスキャビネット中の第1の面での空気速度ベクトルを示す図。
【図4】ガスキャビネット中の第1の面から垂直に置かれた第二の面内での空気速度ベクトルを示す図。
【図5】ガスシリンダーの外側表面に沿う外部伝熱速度中の変動を示す概略図。
【図6】シリンダーとシリンダー内の液体との間の温度差の関数としてシリンダー内部伝熱係数の量的変動を示す図。
【図7】時間の関数として、3slmでのCl_(2)シリンダーから引かれるガス流内に検知される液体液滴の濃度を示す図。
【図8】時間の関数として、1slmでのCl_(2)シリンダーから引かれるガス流内に検知される液体液滴の濃度を示す図。
【図9】無水HClの状態図。
【図10】この発明の第一の形態による、ガスキャビネットと環境とガスシリンダーとの間の伝熱速度を増加する手段を示すダイアグラム。
【図11】11A及び11Bは、本発明のガスシリンダーヒーターの側断面図及び平面図。
【図12】時間の関数として、液体液滴の存在に関するヒーター温度の影響を示すグラフ。
【図13】本発明の第一の形態による、液化ガスの配給を制御するシステムを示す概略図。
【図14】14A及び14Bは、本発明の第一の形態による、ガス流を過熱する手段を示す図。
【図15】15A及び15Bは、ガス流中の液滴の存在を除去する過熱器の有効性を示す図。
【図16】この発明の第一の形態による、液化ガスの配給を制御する好適なシステムを示す概略図。
【図17】本発明の第一の形態によるヒーターを制御するコントロールアルゴリズムを示す図。
【図18】図17の制御アルゴリズムのフローチャート。
【符号の説明】
002…圧縮液化ガスシリンダー
003…ガスキャビネット
004…格子
006…プレナム板(plenum plates)、又はスリット列
007…空気吹込み器又はファン
100…ヒーター
102…頂部板
104…底部板
106…センタースペーサー手段
108…サイドスペーサー
110…スクリュー
112…空隙
114…遮断部
116…絶縁層
118…前後部パネル
120…サイドパネル
122…ブリッジ
301,401…シリンダーの長手軸
300,400…二つの異なる面
302…シリンダー
304…減圧手段
306…過熱手段
308…伝熱速度増加手段
310…圧力センサー
314…コントローラー
316…シリンダー過熱センサー
318…温度センサー
400…ブロックバルブ
402…入口部
404…パージガス入口部
406…出口部
408,…410 アクチュエータ
414…加熱要素
416…位置
418…金属ディスク
602…スケール
604…底部ヒーター/スケールカバー
606…ブロックバルブ加熱器
610…ガスシリンダ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-08-11 
結審通知日 2011-08-15 
審決日 2011-08-31 
出願番号 特願平9-321696
審決分類 P 1 113・ 852- ZA (B01J)
P 1 113・ 851- ZA (B01J)
P 1 113・ 113- ZA (B01J)
P 1 113・ 536- ZA (B01J)
P 1 113・ 537- ZA (B01J)
P 1 113・ 121- ZA (B01J)
P 1 113・ 853- ZA (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中澤 登三崎 仁  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 加藤 友也
川村 健一
登録日 2010-06-18 
登録番号 特許第4531873号(P4531873)
発明の名称 液化ガスの制御配給システム及び方法  
代理人 堀内 美保子  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 哲  
代理人 河野 直樹  
代理人 中村 誠  
代理人 志賀 正武  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 伏見 俊介  
代理人 勝俣 智夫  
代理人 高橋 詔男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 中村 誠  

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