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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61K
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61K
審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する A61K
管理番号 1251823
審判番号 訂正2010-390052  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2012-01-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3546058号に関する訂正2010-390052審判事件について、平成22年12月15日付けの審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成23年(行ケ)第10018号、平成23年11月30日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり審決する。 
結論 特許第3546058号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
(1) 本件特許第3546058号は,平成8年(1996年)2月7日(パリ条約による優先権主張,1995年2月8日 独国,1995年6月7日 米国)を国際出願日とするものであって,平成16年4月16日に設定登録がなされたものである。
(2) 本件特許に対して,平成19年9月13日に,沢井製薬株式会社から無効審判の請求(無効2007-800192号)があり,平成21年3月4日付けで「訂正を認める。特許第3546058号の請求項1?10に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決がされた。
(3) 上記特許権は,上記無効審判請求後の平成20年9月17日付で,登録名義人がベーリンガー マンハイム ファーマシューティカルズ コーポレイション?スミスクライン ベックマン コーポレイション リミテッド パートナーシップ ナンバー1に表示変更され,さらに同日付でロシュ セラピューティックス インコーポレイテッドへ,そして,エフ ホフマン?ラ ロシュ アクチェンゲゼルシャフトに移転登録され,さらにまた同日付けで本件請求人である第一三共株式会社に移転登録されている。
(4) 上記審決に対して,請求人は,平成21年4月13日に知的財産高等裁判所に審決取消しの訴えを提起(平成21年(行ケ)第10101号)するとともに,同年5月12日に訂正審判を請求(訂正2009-390065)し,知的財産高等裁判所は,平成21年6月8日付けで特許法第181条第2項に基づく審決取消しの決定をして,事件を特許庁に差し戻した。
(5) 事件の差戻し後,上記訂正審判の請求書に添付された訂正明細書を援用した訂正請求がなされ,平成22年3月29日付けで「訂正を認める。特許第3546058号の請求項1?10に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決がされた。
(6) 上記審決に対して,請求人は,平成22年5月6日に知的財産高等裁判所に審決取消しの訴えを提起(平成22年(行ケ)第10140号)するとともに,同年6月2日に本件訂正審判を請求(訂正2010-390052)した。
(7) 本件訂正審判事件について,平成22年12月15日付けの審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成23年(行ケ)第10018号,平成23年11月30日判決言渡)があった。

2.請求の要旨
本件審判請求の要旨は,上記特許に係る明細書(以下,「特許明細書」ともいう。)の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであって,上記訂正明細書の特許請求の範囲の記載事項は次のとおりである。
「【請求項1】利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類における虚血性のうっ血性心不全に起因する死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤の製造のための、単独でのまたは1もしくは複数の別の治療薬と組み合わせたβ-アドレナリン受容体アンタゴニストとα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストの両方である下記構造:
<構造式は省略する>
を有するカルベジロールの使用であって、前記治療薬がアンギオテンシン変換酵素阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選ばれる、カルベジロールの使用。
【請求項2】1単位中に3.125mgまたは6.25mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を初回量として1日1回または2回7?28日間の期間に渡り投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項3】1単位中に12.5mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を1日1回または2回7?28日間の期間に渡り投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項4】1単位中に25.0mgまたは50.0mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を維持量として1日1回または2回投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項5】前記アンギオテンシン変換酵素がカプトプリル、リシノプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル並びにそれらの任意の医薬上許容される塩から成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールに使用。
【請求項6】前記利尿薬がヒドロクロロチアジド、トラセミドおよびフロセミド並びにそれらの任意の医薬上許容される塩から成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項7】前記強心配糖体がシゴキシン、β-メチルジゴキシンおよびジギトキシンから成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項8】次の摂生:
(a) 3.125mgまたは6.25mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、7?28日間の期間に渡り投与し、
(b)その後、12.5mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、追加の7?28日間の期間を渡り投与し、そして
(c)最後に、25.0mgまたは50.0mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、維持量として投与する
に従った、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類において虚血性のうっ血性心不全に起因する死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤の製造のためのカルベジロールの使用。
【請求項9】カルベジロールを1または複数の別の治療薬と組み合わせて投与することを含んで成り、前記治療薬がアンギオテンシン変換酵素阻害剤,利尿薬および強心配糖体から成る群より選ばれる、請求項8に記載のカルベジロールの使用。
【請求項10】10?l00mgカルベジロールの1日維持量において投与されるうっ血性心不全治療用薬剤の調製のためのカルベジロールの使用であって、前記薬剤が3段階の投与摂生を含んで成る増分投薬スキームにおいて投与され、第一摂生が7?28日間の期間に渡りカルベジロールの前記1日維持量の10?30%の量を投与することを含んで成り、第二摂生が7?28日後の期間に渡り前記1日維持量の20?70%の量を投与することを含んで成り、そして第二摂生の終了後に始まる第三摂生が前記1日維持量の100%を投与することを含んで成る、請求項1に記載のカルベジロールの使用。」

そして,その訂正の内容は次のとおりである。
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「哺乳類」を,
「利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類」と訂正する。
(2) 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の「うっ血性心不全」を,
「虚血性のうっ血性心不全」と訂正する。
(3) 訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1の「死亡率を減少させる」を,
「死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる」と訂正する。
(4) 訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1の「薬剤」を,
「薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤」と訂正する。
(5) 訂正事項e
特許請求の範囲の請求項8の「哺乳類」を,
「利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類」と訂正する。
(6) 訂正事項f
特許請求の範囲の請求項8の「うっ血性心不全」を,
「虚血性のうっ血性心不全」と訂正する。
(7) 訂正事項g
特許請求の範囲の請求項8の「死亡率を減少させる」を,
「死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる」と訂正する。
(8) 訂正事項h
特許請求の範囲の請求項8の「薬剤」を,
「薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤」と訂正する。

3.当審の判断
(1) 訂正の目的について
上記訂正事項は,いずれも,請求項1又は請求項8に係る発明において,発明を特定するために必要な事項について,更に限定事項を追加するものであるから,本件訂正は特許法第126条第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(審決注:本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1は,「本乳類におけるうっ血性...」と記載されているが,平成23年9月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1は,「哺乳類におけるうっ血性...」と記載されており,特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1の記載事項は,公報編さん時の誤植によるものと解される。)

(2) 新規事項の追加の有無,及び,特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている,カルベジロールを患者に投与した具体例を示す「実験」(特許掲載公報第7ページ?9ページ)において「利尿薬、ACE阻害剤および/またはジゴキシンでのバッククラウンド療法を実施中の患者」を対象としたこと(7ページ32?33行参照),対象となる患者は重症度II?IVであり(8ページ表1参照),患者には「虚血性病因」と「非虚血性病因」が含まれ,重症度によらず死亡率が66?68%の危険性減少を示したこと(9ページ表2参照),チャレンジ期間の間,患者はラベル公開下で低用量カルベジロール(6.25mg b.i.d.)を二週間投与されたこと(8ページ2?3行),「各実験の維持期間は6?12ヶ月に及」んだこと(8ページ6行)が,それぞれ記載されている。
してみれば,上記訂正事項は,いずれも,願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであって,上記(1)のとおり,特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである以上,特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかである。
したがって,本件補正は,特許法126条第3項及び第4項の規定に適合する。

(3) 独立特許要件について
平成22年12月15日付けでした審決を取り消すとした上記判決において,「訂正発明1は,カルベジロールを虚血性心不全患者に投与することにより,死亡率の危険性を67%減少させる効果を得ることができる発明であり,訂正発明1における死亡率の危険性を67%減少させるとの上記効果は,「カルベジロールを『非虚血性心不全患者』に少なくとも3か月間投与し,左心室収縮機能等を改善するという効果を奏する」との刊行物A発明からは,容易に想到することはできないと解すべきである。」と判示された。
上記判示事項は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであって,行政事件訴訟法第33条第1項に規定により当審を拘束する。
そうすると,訂正後の請求項1に係る発明が刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである以上,請求項1に係る発明について,更に限定事項を加えた発明である請求項2ないし7及び請求項10に係る発明も,刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。また,請求項1と同様の訂正がされた訂正後の請求項8及び同請求項を引用する請求項9に係る発明についても同様である。
そして,上記訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明について,特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって,本件訂正は,特許法126条第5項の規定に適合する。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正審判請求に係る訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
うっ血性心不全の治療へのカルバゾール化合物の利用
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類における虚血性のうっ血性心不全に起因する死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤の製造のための、単独でのまたは1もしくは複数の別の治療薬と組み合わせたβ-アドレナリン受容体アンタゴニストとα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストの両方である下記構造:

を有するカルベジロールの使用であって、前記治療薬がアンギオテンシン変換酵素阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選ばれる、カルベジロールの使用。
【請求項2】1単位中に3.125mgまたは6.25mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を初回量として1日1回または2回7?28日間の期間に渡り投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項3】1単位中に12.5mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を1日1回または2回7?28日間の期間に渡り投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項4】1単位中に25.0mgまたは50.0mgのカルベジロールを含有する医薬製剤を維持量として1日1回または2回投与する、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項5】前記アンギオテンシン変換酵素がカプトプリル、リシノプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル並びにそれらの任意の医薬上許容される塩から成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールに使用。
【請求項6】前記利尿薬がヒドロクロロチアジド、トラセミドおよびフロセミド並びにそれらの任意の医薬上許容される塩から成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項7】前記強心配糖体がシゴキシン、β-メチルジゴキシンおよびジギトキシンから成る群より選ばれる、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【請求項8】次の摂生:
(a)3.125mgまたは6.25mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、7?28日間の期間に渡り投与し、
(b)その後、12.5mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、追加の7?28日間の期間を渡り投与し、そして
(c)最後に、25.0mgまたは50.0mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、維持量として投与する
に従った、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグランド療法を受けている哺乳類において虚血性のうっ血性心不全に起因する死亡率をクラスIIからIVの症状において同様に実質的に減少させる薬剤であって、低用量カルベジロールのチャレンジ期間を置いて6ヶ月以上投与される薬剤の製造のためのカルベジロールの使用。
【請求項9】カルベジロールを1または複数の別の治療薬と組み合わせて投与することを含んで成り、前記治療薬がアンギオテンシン変換酵素阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選ばれる、請求項8に記載のカルベジロールの使用。
【請求項10】10?100mgカルベジロールの1日維持量において投与されるうっ血性心不全治療用薬剤の調製のためのカルベジロールの使用であって、前記薬剤が3段階の投与摂生を含んで成る増分投薬スキームにおいて投与され、第一摂生が7?28日間の期間に渡りカルベジロールの前記1日維持量の10?30%の量を投与することを含んで成り、第二摂生が7?28日後の期間に渡り前記1日維持量の20?70%の量を投与することを含んで成り、そして第二摂生の終了後に始まる第三摂生が前記1日維持量の100%を投与することを含んで成る、請求項1に記載のカルベジロールの使用。
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、うっ血性心不全(CHF)患者の死亡率を減少させるために、二元性非選択的β-アドレナリン受容体およびα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストである化合物、特に式Iのカルバゾリル-(4)-オキシプロパノールアミン化合物、好ましくはカルベジロールを使用する新規治療方法に関する。本発明はまた、CHF患者の死亡率を減少させるために、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選択された1または複数の別の治療薬と組み合わせて二元性非選択的β-アドレナリン受容体およびα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストである化合物、特に式Iのカルバゾリル-(4)-オキシプロパノールアミン化合物、好ましくはカルベジロールを使用する治療方法に関する。本発明は更に、β-アドレナリン受容体およびα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストである化合物を投与するための増分(incremental)投与スキームにも関する。
発明の背景
うっ血性心不全は心臓のポンプ機能の損傷の結果として起こり、この疾患は水とナトリウムの異常停留に関連づけられる。慣例的には、軽度の慢性不全の治療には、身体運動の制限、塩分の摂取の制限、および利尿薬の使用が含まれている。それらの手法が十分でない場合、心筋の収縮力を増強する薬剤である強心配糖体が治療プログラムに加えられる。
その後、アンギオテンシンIから昇圧活性アンギオテンシンIIへの変換を防止する化合物であるアンギオテンシン変換酵素阻害剤が、利尿薬、強心配糖体またはその両者と併用してうっ血性心不全の慢性治療に処方される。
また、うっ血性心不全は高死亡率を引き起こす周知の心臓障害である。Applefeld,M.M.,(1986)Am.J.Med.,80,Suppl.2B,73-77。従って、CHF患者においてCHFに起因する死亡率を減少させるであろう治療薬は非常に望ましい。
発明の要約
本発明は、うっ血性心不全の治療用の薬剤の調製のための、二元性非選択的β-アドレナリン受容体およびα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストである化合物の新規使用に関する。特に、哺乳類においてうっ血性心不全に起因する死亡率を減少させるための治療薬として、単独でのまたは1もしくは複数の別の治療薬と併用した式Iのカルバゾリル-(4)-オキシプロパノールアミン化合物が好ましい。ここで前記治療薬は、ACE阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選択される。特に、本発明は好ましくは、単独でのまたはACE阻害剤、利尿薬および強心配糖体から成る群より選択された1もしくは複数の別の治療薬と併用した、式Iの化合物(式中、R_(1)は-Hであり、R_(2)は-Hであり、R_(3)は-Hであり、R_(4)は-Hであり、Xは0であり、Arはフェニルであり、R_(5)はオルト-OCH_(3)であり、そしてR_(6)は-Hである;この化合物はカルベジロールとしてよく知られている1-(カルバゾール-4-イルオキシ)-3-{〔2-(2-メトキシフェノキシ)エチル〕アミノ}-2-プロパノールである)または医薬上許容されるその塩での治療方法を提供する。
発明の詳細な説明
米国特許第4,503,067号明細書は、式Iのカルバゾリル-(4)-オキシプロパノールアミン化合物:

(上式中、
R_(1)は水素、炭素原子数6までの低級アルカノイル、またはベンゾイルおよびナフトイルより選ばれたアロイルであり;
R_(2)は水素、炭素原子数6までの低級アルキル、またはベンジル、フェニルエチルおよびフェニルプロピルより選ばれたアリールアルキルであり;
R_(3)は水素または炭素原子数6までの低級アルキルであり;
R_(4)は水素もしくは炭素原子数6までの低級アルキルであるか、またはXが酸素である時、R_(4)はR_(5)と一緒になって-CH_(2)-O-を表すことができ;
Xは一価結合、-CH_(2)-、酸素または硫黄であり;
Arはフェニル、ナフチル、インダニルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれ;
R_(5)およびR_(6)は個々に水素、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、炭素原子数6までの低級アルキル、-CONH_(2)基、炭素原子数6までの低級アルコキシ、ベンジルオキシ、炭素原子数6までの低級アルキルチオ、炭素原子数6までの低級アルキルスルホニル、および炭素原子数6までの低級アルキルスルホニルより選ばれ;または
R_(5)とR_(6)は一緒になってメチレンジオキシを表す)
および医薬上許容されるその塩を開示している。
この特許明細書は更に、式IIに示される構造を有する1-(カルバゾール-4-イルオキシ)-3-{〔2-(2-メトキシフェノキシ)エチル〕アミノ}-2-プロパノールである、カルベジロールとして良く知られている式IIの化合物を開示している:

カルベジロールがその典型例である式Iの化合物は、軽度から中程度の高血圧の治療に有用である新規の多効性薬剤である。カルベジロールは競合的な非選択的β-アドレナリン受容体アンタゴニストと血管拡張薬の両方であることが知られており、そして高濃度ではカルシウムチャンネルアンタゴニストでもある。カルベジロールの血管拡張作用は主にα_(1)-アドレナリン受容体の遮断から生じ、一方該薬剤のβ-アドレナリン受容体遮断活性は、高血圧の治療に使うと反射頻拍を防止する。カルベジロールのこれらの多重作用は、動物、特にヒトにおけるこの剤の抗高血圧薬効の原因である。
Willette,R.N.,Sauermelch,C.F.& Ruffolo,R.R.,Jr.(1990)Eur.J.Pharmacol.,176,237-240;Nichols,A.J.,Gellai,M.& Ruffolo,R.R.,Jr.(1991)Fundam.Clin.Pharmacol.,5,25-38;Ruffolo,R.R.,Ir.,Gellai,M.,Hieble,J.P.,Willette,R.N.& Nichols,A.J.(1990)Eur.J.Clin.Pharmacol.,38,S82-588;Ruffolo,R.R.,Ir.,Boyle,D.A.,Venuti,R.P.& Lukas,M.A.(1991)Drugs of Today,27,465-492;およびYue,T.-L.,Cheng,H.,Lysko,P.G.,Mckenna,P.J.,Feuerstein,R.,Gu,I.,Lysko,K.A.,Davis,L.L.& Feuerstein,G.(1992)J.Pharmacol.Exp.Ther.,263,92-98を参照のこと。
カルベジロールの抗高血圧作用は、主として、他の抗高血圧薬に通常伴う付随の反射による心拍数変化を引き起こすことなく、全体的な末梢血管抵抗を減らすことにより媒介される。Willette,R.N.他(前掲);Nichols,A.J.他(前掲);Ruffolo,R.R.,Jr.,Gellai,M.,Hieble,J.P.,Willette,R.N.& Nichols,A.J.(1990)Eur.J.Clin.Pharmacol.,38,S82-S88。カルベジロールはまた、おそらく酸素遊離基によって開始される脂質過酸化を弱めるというそれの抗酸化作用の結果として(Yue,T.-L.,他,前掲)、急性心筋梗塞のラット、イヌおよびブタモデルにおいて梗塞サイズを顕著に減少させる(Ruffolo,R.R.,Jr.,他,Drugs of Today,前掲)。
最近、臨床実験において、二元性非選択的β-アドレナリン受容体およびα_(1)-アドレナリン受容体アンタゴニストである医薬化合物、特に式Iの化合物、好ましくはカルベジロールが、単独でまたは従来の薬剤(ACE阻害剤、利尿薬および強心配糖体である)と併用して、CHFを治療するのに有効な薬剤であることが発見された。CHFの治療の際にカルベジロールのような薬剤を使用することは驚くべきことである。何故なら、一般に、β-遮断薬は望ましくない心臓機能低下作用を有することが知られているためにβ-遮断薬は心不全患者において禁忌であるからである。CHFを治療するためにこの化合物を使った実験からの最も驚くべき結果は、前記化合物、特にカルベジロールが、ヒトにおいてCHFに起因する死亡率を約67%減少させることかできることである。更に、この結果はCHFの全分類および両方の病因(虚血性と非虚血性)にまたがって認められる。CHFの治療にβ-遮断薬であるメトプロロール(Waagstein他(1993)Lancet,342,1441-1446)とビソプロロール(CIBIS研究者と委員、(1994)Circulation,90,1765-1773)を使った最近の2つの死亡率研究では、薬剤治療患者と偽薬治療患者とで死亡率に全く差が示されなかったことから、この結果は驚くべきことである。
本発明の治療方法によれば、式Iの化合物、特にカルベジロールの望ましい治療効果は、前記化合物のいずれか1つ、または前記化合物の任意の医薬上許容される塩を、CHFの治療に有効な治療薬であるACE阻害剤、利尿薬および強心配糖体と併用することにより、増強することができる。特に、本発明の好ましいACE阻害剤はカプトプリル、リシノプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル並びにそれらの任意の医薬上許容される塩から成る群より選択され、そして本発明の好ましい利尿薬はヒドロクロロチアジド、フロセミドもしくはトラセミドまたはそれらの任意の医薬上許容される塩である。本発明の好ましい強心配糖体はジゴキシン、β-メチルジゴキシンまたはジギトキシンである。組み合わせて投与すると、そのようなACE阻害剤または利尿薬または強心配糖体の効果と式Iの化合物、特にカルベジロールの望ましい治療効果とか付加される。カプトプリルはE.R.Squibb & Sons,Inc.から市販されており、リシノプリル、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドはMerck & Co.から市販されている。フロセミドはHoechst-Roussel Pharma-ceuticals,Inc.から市販されている。ジゴキシンはBurroughs Wellcome Co.およびBoehringer Mannheim GmbHから市販されている。ジギトキシン、β-メチルジゴキシン、フォシノプリオルおよびトラセミドはBoehringer Mannheim GmbHから市販されている。
式Iの化合物は、便利には米国特許第4,503,067号明細書に記載されたようにして調製することかできる。カルベジロールはSmithKline Beecham CorporationおよびBoehringer Mannheim GmbH(ドイツ)から市販されている。
単独でのまたはACE阻害剤もしくは利尿薬もしくは強心配糖体と組み合わせた式Iの化合物(カルベジロールを含む)の医薬組成物は、本発明に従って任意の医学的に許容される方法で、好ましくは経口で、患者に投与することができる。非経口投与用の医薬組成物は、適当な容器(例えばアンプル)中に貯蔵された無菌注射液の形、または水性もしくは非水性液体懸濁液の形であろう。医薬担体、希釈剤または賦形剤の性質および組成は、もちろん意図する投与経路、例えば静脈内注射によるのか筋肉内注射によるのか、に依存するだろう。
本発明に従って使われる式Iの化合物の医薬組成物は、非経口投与用に溶液としてまたは凍結乾燥粉末として製剤化することができる。粉末は適当な希釈剤または他の医薬上許容される担体の添加により使用前に再構成することができる。液体製剤は通常は緩衝化された等張水溶液である。適当な希釈剤の例は規定等張塩溶液、標準5%ブドウ糖水溶液または緩衝化された酢酸ナトリウムもしくは酢酸アンモニウム溶液である。そのような製剤は特に非経口投与に適当であるが、経口投与に使ってもよく、または計量吸入器もしくはガス注入用噴霧器(ネブライザー)の中に入れてもよい。エタノール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムのような賦形剤を添加することが望ましいかもしれない。
あるいは、それらの化合物を経口投与用にカプセル化し、錠剤化し、または乳液もしくはシロップ中に調剤することができる。組成物を増強もしくは安定化するために、または組成物の調製を容易にするために、医薬上許容される固体または液体担体を添加してもよい。液状担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、グリセリン、食塩水、エタノールおよび水が挙げられる。固形担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウムニ水和物、石膏、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天またはゼラチンが挙げられる。担体は、単独でまたはワックスと共に、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような徐放性物質を含んでもよい。固形担体の量は異なるが、好ましくは投与単位あたり約20mg?約1gであろう。医薬製剤は、錠剤形には粉砕、混合、造粒および必要な時は圧縮;または硬質ゼラチンカプセル形には粉砕、混合、造粒および充填、を含む常用の製剤技術に従って製造される。液状担体が使われる時、製剤はシロップ剤、エリキシル剤、乳剤または水性もしくは非水性懸濁液の形態であろう。そのような液体製剤は直接p.o.投与されるかまたは軟質ゼラチンカプセル中に充填することができる。
上述の二元的性質を有する化合物は、好ましくは三段階投薬スキームに従って投与される。このスキームは、規定の維持量を与えるまでの或る期間に渡り活性成分の増分用量を患者に投与するという事実によって特徴づけられる。この維持量を100%である設定値として定義すると、第一期の投薬摂生(application regimen)が7?28日の期間に及び、そこでは設定量の10?30%のみが投与される。この期の後、、第二の投薬摂生が続き、この第二期では7?28日の期間に渡り設定量の20?70%の用量が患者に投与される。第二期の終了後、第三の投薬期間が続き、そこでは完全な1日設定量(維持量)が毎日投与される。1日維持量は前記活性成分10?100mgの範囲で異なることができる。
カルベジロールの場合、本発明に従った病気の治療のためのヒトへの投与は、好ましくは1日2回与えられる式Iの化合物(特にカルベジロール)約3.125?約50mgの用量範囲を越えるべきではない。患者を式Iの所望の化合物(特にカルベジロール)の低用量摂生から出発し、そのような化合物に対する周知の不耐症(例えば失神)について患者をモニタリングすべきであることは当業者の容易に理解するところであろう。患者がそのような化合物に対して耐容であるとわかったら、ゆっくりと増分的に維持用量まで持ってくるべきである。好ましい治療過程は、患者を3.125または6.25mg活性成分/1投与単位(好ましくは1日2回投与される)を含む製剤での7?28日間に渡る投薬摂生で開始することである。特定の患者に対する最も適当な初回量の選択は、体重を含むがそれに限定されない周知の医学理論を使って医師により決定される。患者が医学上許容される該化合物の耐容性を示す場合には、2週間の終了時に用量を倍増し、追加の期間に渡り、好ましくはもう2週間に渡り、患者を新たな高用量に維持し、そして不耐症の徴候について観察する。患者が維持量に到達するまでこの過程を続ける。好ましい維持量は、85kgまでの体重を有する患者について25.0mgの活性成分/1単位(好ましくは1日2回投与される)てある。85kgを越える体重を有する患者については、維持量は約25.0mg?約50.0mgであり、好ましくは1日2回投与され;好ましくは約50mgの活性成分/1単位であり、好ましくは1日2回投与される。
本発明は、哺乳類においてうっ血性心不全に起因する死亡率を減少させるための治療方法にも関し、該方法は次のスケジュールに従って、カルベジロールの有効量をそれを必要とする前記哺乳類に投与することを本質的に含んで成る:
(a)3.125または6.25mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、7?28日間の期間に渡り投与し、
(b)その後、12.5mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、追加の7?28日間の期間に渡り投与し、そして
(c)最後に、25.0mgまたは50.0mgカルベジロール/1単位を含有する医薬製剤を1日1回または2回、維持量として投与する。
本発明に従った病気の治療のためのヒトへの投与は、式Iの化合物と常用薬剤との併用を包含する。例えば、ヒドロクロロチアジドの一般的成人量は1回量または分割量として1日25?100mgである。エナラプリルの推奨される出発量は1日1回または2回投与される2.5mgである。エナラプリルの通常の治療量範囲は、1回量または分割量として投与される1日5?20mgである。大部分の患者については、カプトプリルの通常の初回1日量は1日3回(tid)25mgであり、大部分の患者に1日3回(tid)の50または100mgの投与で十分な臨床的改善が見られる。
本発明の組成物において使われる化合物の好ましい実際量は、処方される特定の組成、投与形式、特定の投与部位および治療しようとする宿主に応じて異なるだろう。
式IIの化合物を含む式Iの化合物を本発明に従って使用する時、許容できないような毒性作用は全く予想されない。以下に記載する実施例は本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明の化合物の使い方を具体的に説明するために与えられる。その他の多くの実施態様は当業者に容易に明らかであろう。
実験
CHF患者における死亡率研究
要約。β-アドレナリン作用の遮断が心不全(CHF)を有する生存者に対する交感神経系の有害作用を阻害することができるかどうかを調べるために、先を見越して1052人のCHF患者をマルチセンター試行プログラムに登録し、その登録患者を無作為に偽薬(プラシーボ)(PBO)またはカルベジロール(CRV)での6?12カ月の治療に割り当てた(二重盲目試験)。共通のスクリーニング期間の後、クラスII?IVのCHF(CIの分類の定義については次の段落を参照のこと)および<0.35の駆出率を有する患者を、6分間の歩行試験での遂行能力に基づいて4つのプロトコールの1つに割り当てた。ジゴキシン、利尿薬およびACE阻害剤による現行療法にPBOまたはCRVを加えた。先を見越して作製したデータ&セイフティーモニタリングボード(DSMB)によりあらゆる原因の死亡率をモニタリングした。登録から25カ月後、DSMBは生存者に対するCRVの好結果のためにプログラムの終結を勧めた。死亡率はPBOグループで8.2%であったがCRVグループではわずか2.9%であった(P=0.0001、Cochran-Mantel-Haensel分析)。これは、CRVによる死亡の危険性が67%減少することを意味する(95%CI:42%→81%)。治療効果はクラスIIとクラスIII?IVの症状を有する患者とで同様であった。死亡率はクラスII患者で5.9%から1.9%に減少し、68%の減少(95%CI:20%→97%)〔P=0.015〕、クラスIII?IV患者では11.0%から4.2%に減少し、67%の減少(95%CI:30%→84%)〔P=0.004,log-rank〕であった。重要なのは、CRVの効果が虚血性心臓病(危険性が67%減少した、P=0.003)と非虚血性拡張型心筋症(危険性が67%減少した、P=0.014)において同様であったことである。結果として、従来の療法へのCRVの追加は、慢性CHF患者の死亡率の実質的(67%)減少に関連づけられる。治療効果は広範囲の重症度および病因に渡って観察される。
本明細書中で用いる時の「クラスII CHF」とは、身体運動の軽度または中程度の制限を引き起こす心臓病を有する患者を意味する。これらの患者は静止していると楽である。普通の運動をすると疲労、動悸、呼吸困難、またはアンギナ性痛を生じる。「クラスIII CHF」とは、身体運動の顕著な制限を引き起こす心臓病を有する患者を意味する。これらの患者は静止していると楽である。普通以下の運動でも疲労、動悸、呼吸困難、またはアンギナ性疼痛を生じる。「クラスIV CI」とは、不快感、症状または心不全を伴わずにどんな身体運動も行うことができなくなる心臓病を有するかまたはアンギナ性症候群の患者を意味する。「普通以下の身体運動」とは、ひと続きの階段を昇ることまたは200ヤード(182.88メートル)を歩くことを意味する。
研究計画:利尿薬、ACE阻害剤および/またはジゴキシンでのバックグラウンド療法を実施中の患者を、基準の最大下運動能力に基づいて次の4つの試行の1つに層別化した:
・研究220、第一次終点として運動試験についての中程度(NYHA II?IV)CHFにおける用量応答研究。
・研究221、第一次終点として運動試験についての中程度(NYHA II?IV)CIにおける用量滴定研究。
・研究239、第一次終点として生活の質についての重度(NYHA III?IV)CHFにおける用量滴定研究。
・研究240、第一次終点としてCHFの進行についての軽度(NYHA II?III)CHFにおける用量滴定研究。
米国の64箇所のセンターがこの試験プログラムに参加した。全所がプロトコール239と240を実施し、33箇所がプロトコール220をそして31箇所がプロトコール221を実施した。
各試験はそれぞれ独自の個別の目標を有したが、先を見越して定められた全体的なプログラム目標は全ての原因の死亡率の評価であった。計画した1100人の患者の登録に基づいて、試験期間に渡る偽薬グループの死亡率を12%と仮定すると、プログラムはカルベジロールと偽薬の間での死亡率の50%減少(両側での)を検出するのに90%の検出率を有した(α=0.05)。
無作為化に先立って前記4つのプロトコールに共通したスクリーニングとチャレンジ期間が置かれた。スクリーニング期間の目的は、研究に入る患者を量化して再現性のある基準測定値を得ること、そして最大下運動試験に基づいて適当な試行に患者を層別化することであった。チャレンジ期間の間、患者はラベル公開下で低用量カルベジロール(6.25mg b.i.d.)を二週間投与された。この用量を耐容できない患者は無作為化に進めなかった。低用量カルベジロールを耐容する患者を次いで盲目薬物治療(カルベジロールか偽薬)に向けて無作為化し、6.25mg?50mg b.i.d.の範囲のカルベジロール(または同等レベルの偽薬)を使って数週間に渡り用量滴定した。各実験の維持期間は6?12カ月に及び、その後、患者は延長研究においてラベル公開下でカルベジロールを受ける選択権を有した。
結果。下記に与える分析は、DSMBが試験を終わらせるよう勧告を行ったデータセットに相当する。このintent-to-eat分析には、1995年1月20日より米国試験に登録された全患者が含まれ;624人がカルベジロールをそして356人が偽薬を投与された。患者のベースライン特徴の分析(表1)は、無作為化したグループ間で良好なバランスを示す。

このプログラムの全死亡率結果を表2に示す。治療目的期間中に起こった全ての死亡が含まれる。カルベジロールでの治療は全ての原因での死亡率の危険性を67%減少させた。幾つかのベースライン特徴による死亡率の分析は、これがCIの重症度または病因に関係なく広範囲の効果であることを証明する。この効果は軽い心不全患者にも中程度?重度の心不全患者にも一様であった。同様に、死亡率の減少率は虚血性心不全患者と非虚血性心不全患者において同等であった。

今までの記載は本発明の化合物の使用法の例示である。しかしながら、本発明は本明細書中に記載されるそのままの態様に限定されるのではなく、下記に記載する請求の範囲内に含まれる全ての変更を包含する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2010-12-01 
審決日 2010-12-15 
出願番号 特願平8-523982
審決分類 P 1 41・ 832- Y (A61K)
P 1 41・ 851- Y (A61K)
P 1 41・ 856- Y (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬下 浩一  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 渕野 留香
鵜飼 健
大久保 元浩
平井 裕彰
登録日 2004-04-16 
登録番号 特許第3546058号(P3546058)
発明の名称 うっ血性心不全の治療へのカルバゾール化合物の利用  
代理人 奥村 直樹  
代理人 箱田 篤  
代理人 高石 秀樹  
代理人 新谷 雅史  
代理人 高石 秀樹  
代理人 奥村 直樹  
代理人 箱田 篤  
代理人 辻居 幸一  
代理人 平山 孝二  
代理人 辻居 幸一  
代理人 新谷 雅史  
代理人 平山 孝二  

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