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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1251965
審判番号 不服2010-20552  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-13 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2004- 49056「ICタグを用いた物品検索システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開,特開2005-242509〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成16年2月25日の出願であって,平成21年11月27日付けの拒絶理由の通知に対し,平成22年1月26日付けで手続補正がなされ,平成22年2月19日付けの拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知に対し,平成22年4月8日付けで手続補正がなされたが,平成22年6月7日付けで,平成22年4月8日付けの手続補正について補正却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年9月13日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年4月22日付けで審尋がなされ,これに対して同年6月14日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年9月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年9月13日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち,請求項1の記載は次のとおりである。(下線部は,補正箇所。)
「物品に取付けられ,当該物品を特定するデータを記録するICタグを含み,
前記ICタグは,記録されたデータの消去または変更が不可能であり,
前記ICタグのデータを読取り,所定のデータ格納部を有するリーダライタと,
前記ICタグを特定するデータおよび前記物品の所有者に関するデータを登録するデータベースを有する管理センタとを含み,
前記リーダライタを用いて,前記ICタグを有する物品を探索可能であり,
前記リーダライタはカウンタを有し,
前記物品は盗難物品と放置物品とを含み,
前記物品は自転車であり,
前記リーダライタは,前記物品が前記盗難物品か前記放置物品かを判別する判別手段を含み,前記リーダライタを用いて前記物品を探索し,
前記判別手段が前記物品を前記盗難物品と判別したとき,前記盗難物品を発見した旨が所有者に通知され, 前記判別手段が前記物品を前記放置物品と判別したとき,前記放置物品ごとに前記カウンタへのカウントアップが行われ,前記放置物品についてのカウントアップされた値が前記データベースに登録され,前記物品の探索時において連続的に放置されているか否かによらず,前記放置物品についてのカウントアップによって前記カウンタの値が一定値を越えたときは,前記放置物品が所定の保管場所へ移動され,その旨が所有者に通知される,
ICタグを用いた物品探索システム。」
上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「物品」,「判別手段」,及び判別手段の判別に基づく物品探索の内容について,上記補正箇所に記載されたとおりの限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2003-170872号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,盗難された乗り物を発見するための照合装置及び照合方法,並びに,それに用いて好適な携帯される端末及びICタグ付登録シールに関する。」
・「【0047】即ち,該DBサーバ10は,インターネット等の通信網12を介して,警察署14,携帯型無線端末16,自転車販売店18との間でデータ通信可能に構成されている。」
・「【0050】ICタグ付登録シール20は,図2の(A)に示すように,ユニークな番号(以後,登録番号と呼ぶ。)が印刷された登録シール20Aに,それと同一の登録番号を格納したICタグ20Bを内蔵させたものである。・・・」
・「【0053】自転車販売店18は,自転車22を販売する際に,上記警察署14により発行されたICタグ付登録シール20の一つをその自転車22に貼り付けた上で,購入者(以後,所有者24と称する。)に渡す。またこのとき,当該自転車22と所有者24についての情報を上記DBサーバ10へ登録番号を基準として登録すると共に,登録証26を発行する。・・・」
・「【0054】また,所有者24は,自身の所有する自転車22が盗難に遭ったときには,その旨を警察署14に届け出る。警察署14は,その盗難情報を上記DBサーバ10の盗難車リスト10Aに登録する。」
・「【0056】この該携帯型無線端末16は,上記ICタグ付登録シール20と無線通信して上記登録番号を取得することができる取得手段を備えている。・・・」
・「【0059】・・・自転車販売店18は,前述したように,警察署14から登録番号を格納したICタグ付登録シール20の発行を受けている。一方,所有者24は,自転車22購入時には,防犯登録を行う必須義務がある。そこで,自転車販売店18(の販売員)は,自転車22を購入しようとする所有者24より所有者名義,住所,職業,等の所有者の属性を示す所有者情報を取得し,その所有者情報と,購入対象の自転車22の属性を示す乗り物情報(乗り物(ここでは,自転車)の型(メーカ,製造番号,型名,色,等),購入店舗,等),及びその自転車22に貼り付けようとするICタグ付登録シール20に印刷された登録番号(及び警察署14より発行を受けた日付である登録日時)を,DBサーバ10に送信する。・・・」
・「【0060】DBサーバ10では,これら送られてきた所有者情報,乗り物情報,及び登録番号をリレーショナルし,登録する。・・・」
・「【0061】自転車販売店18では,上記書き込み完了通知を受けて,当該ICタグ付登録シール20を購入対象の自転車22に貼り付ける。・・・」
・「【0062】ここで,上記DBサーバ10は,図2の(C)に示すように,上記登録番号をキーにしてリレーショナルした盗難車リスト10A,所有者属性10B,及び乗り物属性10Cを管理している。そして,上記自転車販売店18から上記所有者情報,乗り物情報,及び登録番号を受信したとき,その登録番号をキーにして,情報蓄積手段としての所有者属性10B及び乗り物属性10Cにそれら所有者情報及び乗り物情報を登録する。・・・」
・「【0069】・・・例えば所定時間おきに通信網12を介してDBサーバ10から携帯型無線端末16に上記盗難車リスト10Aを取り込んでおく。そして,照合を行う際には,携帯型無線端末16より自転車22に貼り付けられたICタグ付登録シール22に登録番号の要求を送信し,それに応じて当該ICタグ付登録シール22から送られてくる登録番号を受信する。そして,この登録番号により該携帯型無線端末16内の盗難車リストをチェックすることで当該自転車22が盗難車であるか否かを判別し,表示する。・・・」

(イ)これらの記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。
・引用例1に記載された技術は,自転車の照合システムに関するものである(【0001】)。
・ICタグ付登録シールは,ユニークな番号(登録番号)を格納したICタグを内蔵し(【0050】),自転車を販売する際に,自転車に貼り付けられる(【0053】)。
・DBサーバは,通信網を介して,警察署,携帯型無線端末,自転車販売店との間でデータ通信可能に構成されており(【0047】),DBサーバには,上記登録番号をキーにして盗難車リスト,所有者属性を管理し(【0062】),自転車と所有者についての情報及び盗難情報が登録されている(【0054】,【0059】?【0062】)。
・携帯型無線端末は,ICタグ付登録シールと無線通信して登録番号を取得する取得手段を備える(段落【0056】)。
・DBサーバから携帯型無線端末に盗難車リストを取り込んでおき,ICタグ付登録シールから送られてくる登録番号により携帯型無線端末内の盗難車リストをチェックすることで当該自転車が盗難車であるか否かを判別し表示することができる(【0069】)。
(ウ)したがって,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ICタグ付登録シールは,ユニークな番号(登録番号)を格納したICタグを内蔵し,自転車に貼り付けられるものであり,
DBサーバは,通信網を介して,警察署,携帯型無線端末,自転車販売店との間でデータ通信可能に構成されており,DBサーバには,上記登録番号をキーにして盗難車リスト,所有者属性を管理し,自転車と所有者についての情報及び盗難情報が登録されており,
携帯型無線端末は,ICタグ付登録シールと無線通信して登録番号を取得する取得手段を備え,DBサーバから携帯型無線端末に盗難車リストを取り込んでおき,ICタグ付登録シールから送られてくる登録番号により携帯型無線端末内の盗難車リストをチェックすることで当該自転車が盗難車であるか否かを判別し表示する,
自転車の照合システム。」

イ 同じく引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2001-256448号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
・「【0003】無線周波数識別(RFID)技術が発達し続けてきたので,ますます多くのアプリケーションがそれを使用するのに適したものになってきた。RFID技術は電波(またはマイクロ波範囲など異なる周波数範囲からの他の諸信号)を使用して,情報をアンテナからトラックされる品目に添付されたタグへ,またはタグからアンテナへ伝送する。RFIDシステムは3つの基本的な構成要素,すなわち,タグ(それぞれのメーカ/ユーザ技術により,トランスポンダーまたはデータ・キャリアとしても知られる),アンテナ(リーダまたは読み書きヘッドとしても知られる),コントローラからなる。・・・」
・「【0038】本発明に関して使用し得るもう一つの機能は,タグ40内に読取り専用メモリ50を設けることである。メモリ50を一度だけ書込めるようにすることにより,メモリ50に収納される情報を再書込みすることによる本発明の迂回が防止できる。」
上記記載から,引用例2には,RFIDシステムにおいて,タグ内に読取り専用メモリを設けることにより,メモリに収納される情報を再書込みすることを防止した技術が記載されている。
ウ 同じく引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2003-216754号公報(以下,「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,駅前等に放置された自転車を撤去して保管する放置自転車管理方法に関する。」
・「【0015】・・・本発明の請求項1の放置自転車管理方法においては,放置自転車チェック時,放置禁止場所に放置されている自転車それぞれを確認対象車とし,係員が携帯する非接触式の情報読取用の携帯端末により,確認対象車に予め又はチェック時に貼付けられた無線タグ又はICチップの識別票が無線発信した自転車毎の個別の識別情報を読取り,携帯端末の放置車リストに登録されている各自転車の識別情報と,確認対象車の識別情報との比較から,確認対象車が前記リストに登録されているか否かを判別し,確認対象車が前記リストに未登録であれば,確認対象車を前記リストに登録してその放置確認回数を1に初期設定し,確認対象車が前記リストに既登録であれば,このリストの確認対象車の放置確認回数に1加算して加算後の放置確認回数が所定の撤去決定回数に達したか否かを判別し,放置確認回数が撤去決定回数に達したときにのみ,確認対象車を撤去車に決定し,携帯端末の撤去車の決定に基づき,放置禁止場所に放置されている自転車を選択的に撤去する。」
・「【0036】・・・識別票6は自転車毎の個別の識別情報を保持した無線タブ又はICチップからなり,識別情報は,例えば,数字,文字等を組合せた適当な桁数(字数)の情報又はこの情報に登録された所有者(購入者)の地域コードを付加した情報からなる。」
・「【0041】・・・携帯端末3は,受信した確認対象車の識別情報と,携帯端末3がデータベース装置4から事前に取込んだ放置車リストの各自転車の識別情報とを比較し,確認対象車が放置車リストに既に登録された放置自転車(登録済み放置車)か否かを判別する。」
・「【0042】そして,一致する識別情報がなく,確認対象車が未登録であれば,換言すれば,初めてチェックした放置自転車であれば,ステップS4に移行して放置車リストにその自転車(確認対象車)5を追加登録し,ステップS5によりその放置確認回数Kを1に初期設定し,その自転車5は撤去する自転車(撤去車)とはしない。」
・「【0043】一方,一致する識別情報があり,確認対象車が登録済みであれば,換言すれば以前にもチェックした自転車5であれば,ステップS3からステップS6に移行する。」
・「【0044】そして,放置車リストのその自転車5の最後の放置確認日(チェック日)が前回のチェック実施日であるか否か,すなわち連続的にチェックされた自転車か否かを判別し,連続的にチェックされた自転車であれば,ステップS6からステップS7に移行し,その放置確認回数KをK+1に1加算する。」
・「【0045】さらに,ステップS7からステップS8に移行し,加算後の放置確認回数Kが予め設定された撤去決定回数kmax,例えば3回に達したか否かを判別する。」
・「【0046】そして,K=kmaxであれば,ステップS8からステップS9に移行してその自転車5を撤去車に決定する。」
・「【0047】なお,ステップS6において,確認対象車の最後の放置確認日が前々回以前のチェック実施日であれば,すなわち連続的に放置された自転車でなければ,この形態では撤去する自転車を極力少なくするため,ステップS6からステップS10に移行し,放置確認回数Kを1に再設定し,その自転車5は撤去車とはしない。」
・「【0048】また,ステップS7で加算した放置確認回数Kが撤去決定回数kmaxより少なければ,その自転車も撤去車とはしない。」
・「【0049】そして,放置禁止場所1に放置されている全ての自転車5について,携帯端末3によるチェックが終了すると,撤去車に決定された自転車5のみが,トラック等で所定の保管場所7に搬送され,放置禁止場所1から撤去される。」
・「【0052】したがって,この形態の場合は,放置禁止場所1に放置された各自転車5のうちの連続する3回のチェック時に放置されていた自転車,すなわち長期間に渡って放置されている,真に撤去すべき自転車5のみが,選択的に撤去される。」
上記記載から,引用例3には,自転車毎の個別の識別情報を保持した無線タグ又はICチップからなる識別票を自転車に貼付し,携帯端末により,確認対象車の識別票から受信した識別情報とデータベース装置から取込んだ放置車リストの識別情報とを比較し,確認対象車が放置車リストに既に登録されているか否かを判別し,確認対象車が前記リストに未登録であれば,確認対象車を前記リストに登録してその放置確認回数を1に初期設定し,確認対象車が前記リストに既登録であれば,このリストの確認対象車の放置確認回数に1加算して加算後の放置確認回数が所定の撤去決定回数に達したか否かを判別し,放置確認回数が撤去決定回数に達したとき,確認対象車を撤去するようにした,放置自転車を管理するシステムに係る技術が記載されている。

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「ICタグ付登録シール」は,ユニークな番号(登録番号)を格納したICタグを内蔵し,自転車に貼り付けられるものであるから,本願補正発明の「物品に取付けられ,当該物品を特定するデータを記録するICタグ」に相当し,また,引用発明が対象とする物品は,本願補正発明と同様に,「自転車」である。
・引用発明の「携帯型無線端末」は,ICタグ付登録シールと無線通信して登録番号を取得する取得手段を有し,また,DBサーバから盗難車リストを取り込むことができ,データを格納する手段を有することは明らかであるから,本願補正発明の「ICタグのデータを読取り,所定のデータ格納部を有するリーダライタ」に相当する。
・引用発明の「DBサーバ」は,少なくとも登録番号及び自転車と所有者についての情報が登録されており,また,何らかの施設に設置されていることは自明であるから,本願補正発明の「ICタグを特定するデータおよび物品の所有者に関するデータを登録するデータベースを有する管理センタ」に相当する。
・引用発明は,携帯型無線端末によって,ICタグ付登録シールから送られてくる登録番号とDBサーバから取り込んだ盗難車リストとを照合することができるから,本願補正発明と同様に,「リーダライタを用いて,ICタグを有する物品を探索可能」ということができる。
・引用発明が対象とする自転車に,「盗難物品と放置物品と」が含まれることは自明である。
・引用発明は,携帯型無線端末によって,登録番号と盗難車リストとを照合することにより,当該自転車が盗難車であるか否かを判別し表示するものであるから,本願補正発明と,「リーダライタは,物品が盗難物品か否かを判別する判別手段を含」む点で共通する。
・引用発明の「自転車の照合システム」は,本願補正発明の「ICタグを用いた物品探索システム」に対応する。
イ 以上のことから,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「物品に取付けられ,当該物品を特定するデータを記録するICタグを含み,
前記ICタグのデータを読取り,所定のデータ格納部を有するリーダライタと,
前記ICタグを特定するデータおよび前記物品の所有者に関するデータを登録するデータベースを有する管理センタとを含み,
前記リーダライタを用いて,前記ICタグを有する物品を探索可能であり,
前記物品は盗難物品と放置物品とを含み,
前記物品は自転車であり,
前記リーダライタは,前記物品が前記盗難物品か否かを判別する判別手段を含む,
ICタグを用いた物品探索システム。」
【相違点1】
「ICタグ」について,本願補正発明は,記録されたデータの消去または変更が不可能であるのに対し,引用発明は,当該構成について特定されていない点。
【相違点2】
リーダライタの判別手段が物品を盗難物品と判別したとき,本願補正発明は,「盗難物品を発見した旨が所有者に通知」されるのに対し,引用発明は,盗難物品を発見した旨を所有者に通知することは特定されていない点。
【相違点3】
リーダライタの「判別手段」が,本願補正発明は,物品が盗難物品か放置物品かを判別するものであるのに対し,引用発明は,物品が盗難物品か否かを判別するものである点。
【相違点4】
本願補正発明は,リーダライタがカウンタを有し,判別手段が物品を放置物品と判別したとき,放置物品ごとにカウンタへのカウントアップが行われ,放置物品についてのカウントアップされた値がデータベースに登録され,物品の探索時において連続的に放置されているか否かによらず,放置物品についてのカウントアップによってカウンタの値が一定値を超えたときは,放置物品が所定の保管場所へ移動され,その旨が所有者に通知されるのに対し,引用発明は,物品が放置物品である場合の処理について特定されていない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用例2には,上記(2)イのとおり,RFIDシステムにおいて,タグ内に読取り専用メモリを設けることにより,メモリに収納される情報を再書込みすることを防止した技術が記載されており,同引用例に記載されたタグは,記録されたデータの消去または変更が不可能なICタグにほかならない。
引用発明におけるICタグとして,引用例2に記載された,記録されたデータの消去または変更が不可能なICタグを採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
一般に,盗難物品の所有者が判明した場合,盗難物品を発見した旨を所有者に通知するか否かは任意事項であり,引用発明において,判別手段が物品を盗難物品と判別したとき,盗難物品を発見した旨を所有者に通知する構成とするか否かは,当業者が適宜選択できる事項である。したがって,引用発明において,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
引用発明の自転車の照合システムは,自転車が盗難車であるか否かを判別するものであるところ,人が乗車していない自転車の照合に適用すれば,自転車が盗難車でない場合に,放置自転車と判別できることは,自明である。
引用発明において,物品が盗難物品でない場合に,放置物品と判断する構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
引用例3には,上記(2)ウのとおり,放置自転車を管理するシステムに係る技術が記載されており,ここで,携帯端末は,無線タグからなる識別票と通信して識別情報を取得するとともに,データベース装置から放置車リストの識別情報を取込み,自転車の放置確認回数を加算し,その回数が所定の撤去決定回数に達したとき,確認対象車を撤去するものであるから,本願補正発明の「リーダライタ」に対応するものであり,放置確認回数をカウントするカウンタに相当する構成を有することは明らかである。
さらに,引用例3には,「なお,ステップS6において,確認対象車の最後の放置確認日が前々回以前のチェック実施日であれば,すなわち連続的に放置された自転車でなければ,この形態では撤去する自転車を極力少なくするため,ステップS6からステップS10に移行し,放置確認回数Kを1に再設定し,その自転車5は撤去車とはしない。」(【0047】)と記載されていることから,撤去する自転車を極力少なくする必要がないのであれば,「物品の探索時において連続的に放置されているか否かによらず」,カウンタの値が一定値を超えたとき撤去することが示唆されている。
そうすると,引用例3には,携帯端末(リーダライタ)により,自転車(物品)に取り付けた無線タグ(ICタグ)から自転車ごとの識別情報(物品を特定するデータ)を受信し,放置自転車(放置物品)を管理するシステムであって,携帯端末がカウンタを有し,受信した識別情報とデータベース装置から取込んだ放置車リストの識別情報とを比較し,確認対象車が前記リストに登録されている場合,放置自転車ごとにカウンタへのカウントアップが行われ,放置自転車についてのカウントアップされた値がデータベースに登録され,自転車の探索時において連続的に放置されているか否かによらず,放置自転車についてのカウントアップによってカウンタの値が一定値を越えたときは,放置自転車が所定の保管場所へ移動される発明が記載されているということができる。ここで,放置自転車を保管場所へ移動した旨,所有者に連絡する構成とするか否かは,上記イと同様,当業者が適宜選択できる事項である。
引用発明と,引用例3に記載された発明は,いずれも,リーダライタにより,自転車に取り付けたICタグから自転車ごとの「物品を特定するデータ」(登録番号又は識別情報)を受信し,受信した情報とデータベースから取込んだ情報とを比較し,自転車を管理するシステムである点で共通するものであるから,引用発明において,引用例3に記載された発明を付加し,盗難車の照合に加え,放置自転車の管理に用いることができるように構成することは,当業者が容易に想到し得たものである。
オ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2,3に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年9月13日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成22年1月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「物品に取付けられ,当該物品を特定するデータを記録するICタグを含み,
前記ICタグは,記録されたデータの消去または変更が不可能であり,
前記ICタグのデータを読取り,所定のデータ格納部を有するリーダライタと,
前記ICタグを特定するデータおよび前記物品の所有者に関するデータを登録するデータベースを有する管理センタとを含み,
前記リーダライタを用いて,前記ICタグを有する物品を探索可能であり,
前記リーダライタはカウンタを有し,
前記物品は盗難物品と放置物品とを含み,
前記物品が盗難物品か放置物品かを判別する判別手段を含み,
前記リーダライタを用いて前記物品を探索し,前記判別手段が前記物品を放置物品と判別したとき,
前記放置物品ごとに前記カウンタへのカウントアップが行われ,
前記放置物品についてのカウントアップされた値が前記データベースに登録される,ICタグを用いた物品探索システム。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から,物品が「自転車」である点,判別手段が「物品を盗難物品と判別したとき,盗難物品を発見した旨が所有者に通知」される点,及び放置物品の場合,「物品の探索時において連続的に放置されているか否かによらず,放置物品についてのカウントアップによってカウンタの値が一定値を越えたときは,放置物品が所定の保管場所へ移動され,その旨が所有者に通知」される点に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-30 
結審通知日 2011-12-06 
審決日 2011-12-20 
出願番号 特願2004-49056(P2004-49056)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北嶋 賢二  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 田中 秀人
酒井 伸芳
発明の名称 ICタグを用いた物品検索システム  
代理人 吉田 博由  
代理人 伊藤 英彦  
代理人 森下 八郎  

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