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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1252047
審判番号 不服2009-10905  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-10 
確定日 2012-02-10 
事件の表示 特願2007- 13569「組換え血管内皮細胞増殖因子D(VEGF-D)」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-167072〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,1997年8月21日(パリ条約による優先権主張,1996年8月23日 オーストラリア,1996年8月23日 米国,1996年11月11日 オーストラリア,1996年11月14日 米国,1997年2月5日 オーストラリア,1997年2月10日 米国,1997年6月19日 オーストラリア,1997年7月1日 米国)を国際出願日とする出願(特願平10-510953号)をし,これを分割して平成19年1月24日に新たな特許出願をしたものであって,平成21年2月16日に手続補正がなされたが,平成21年3月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成21年6月10日に審判請求がなされるとともに,平成21年7月10日に手続補正がなされたものである。

第2 平成21年7月10日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月10日の手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により,補正前の請求項1及び4は,
「【請求項1】
内皮細胞増殖の刺激,血管透過性の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
ここで,前記単離ポリペプチドは,以下の(a)?(c);
(a)配列番号5のアミノ酸配列のフラグメントであって,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸93?201となり,且つ前記活性を有するフラグメント,
(b)配列番号5のアミノ酸92?205を備え,且つ前記活性を有するポリペプチド,
(c)少なくとも1のアミノ酸の置換を有する前記(a)又は(b)のバリアントであって,前記少なくとも1のアミノ酸の少なくとも1の置換が,VEGF-D,VEGF-C,VEGF-165,VEGF-B及びPlGF間で保存されたアミノ酸以外のアミノ酸に限定され,且つ前記活性を有するバリアント,のいずれかを含む単離ポリペプチド。
【請求項4】
内皮細胞増殖の刺激,血管透過性の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
以下の(a)?(b)からなるグループから選択されるアミノ酸配列;
(a)配列番号3のアミノ酸配列,
(b)アフィニティータグが取り付けられた前記(a)のアミノ酸配列,からなる単離ポリペプチド。」
から,
「【請求項1】
内皮細胞増殖の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
ここで,前記単離ポリペプチドは,配列番号5のアミノ酸配列のフラグメントを含み,前記フラグメント,及び前記ポリペプチドが,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸92?205となり,且つ前記活性を有する,単離ポリペプチド。
【請求項4】
内皮細胞増殖の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
ここで,前記ポリペプチドは,成熟VEGF-Dに対応するアミノ酸配列からなり,成熟VEGF-D配列は,配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸残基93?205内に含まれるフラグメントからなり,且つ前記少なくとも1の活性を有する,単離ポリペプチド。」に補正された。

2.当審の判断
(1)補正前の請求項4は,配列番号3のアミノ酸配列に関連するものであるが,補正後の請求項1及び4は,配列番号5のアミノ酸配列に関連するものであるので,上記補正により,請求項4は削除され,補正前の請求項1は,上記補正に伴って,1つの請求項が増加し,請求項1と請求項4の2つの項になるものである。

このように請求項を増加させる補正は,原則として,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前特許法」という。)第17条の2第4項で補正の目的とし得る事項として規定された「請求項の削除」(1号),「誤記の訂正」(3号),「明りょうでない記載の釈明」(4号)のいずれにも該当しないことは,規定の文言上明らかである。

また,補正の目的とし得る事項として規定された改正前特許法17条の2第4項2号は,「特許請求の範囲の減縮」について,括弧書きで「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」と規定しているから,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」は,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであって,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,増項補正は,補正後の各請求項の記載により特定される各発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないというべきである。
してみると,補正前の請求項1項を,上記補正に伴って1項増加させ,補正後請求項1及び4とすることは,補正前発明の発明特定事項を限定的に減縮したものとはいえず,また,誤記の訂正,拒絶の理由についてする明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらないので,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
また,補正後の請求項3及び25も,新たに追加された請求項であり,同様である。
さらに,補正前の請求項3が請求項1のみを引用していたものを,対応する補正後の請求項5において,請求項1のみならず請求項4をも引用しているように,引用する請求項を増加させている請求項が数多くあるが,実質的に請求項を増加することになり,同様である。

また,補正前の請求項1は,(a)配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸93?201となったもの,(b)配列番号5のアミノ酸92?205を備えたもの,及び(c)少なくとも1のアミノ酸の置換を有するそのバリアントに関連するもので,これらより短いフラグメントは包含されていないものであったところ,補正後の請求項4は,「配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸残基93?205内に含まれるフラグメント」(なお,平成23年3月2日に提出された回答書によれば,93は92の誤記とのことである。)と配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸93?201より更に短くなったフラグメントも包含されるように補正されている。そうすると,上記補正により請求項は拡張されており,補正前発明の発明特定事項を限定的に減縮したものとはいえず,また,誤記の訂正,拒絶の理由についてする明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらないから,本件補正は改正前特許法17条の2第4項に規定する補正の要件を満たさない。

さらに,補正後の請求項57は,補正前の請求項62に対応するものであるが,「医薬組成物」の発明であったものを,「単離核酸分子,ベクター又は単離ポリペプチドの使用方法」の発明に変更しており,補正前発明の発明特定事項を限定的に減縮したものとはいえず,また,誤記の訂正,拒絶の理由についてする明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらないので,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)また仮に,改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しないとした場合について,本件補正前の請求項1における任意選択肢であった(c)の発明特定事項が削除されることにより,限定的に減縮されている,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について,念のために検討しておく。

(3)本件補正後の前記請求項1は,「内皮細胞増殖の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
ここで,前記単離ポリペプチドは,配列番号5のアミノ酸配列のフラグメントを含み,前記フラグメント,及び前記ポリペプチドが,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸92?205となり,且つ前記活性を有する,単離ポリペプチド。」というものである。
この記載の「前記フラグメント,及び前記ポリペプチドが,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸92?205となり」からすれば,フラグメントとポリペプチドの両者共に,アミノ酸92?205となったものであるといえる。そうすると,本願補正発明は,「内皮細胞増殖の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸92?205からなる単離ポリペプチド。」と同じ内容であるといえる。そうすると,請求項1の記載は,これに「フラグメント」という概念を加え,ことさら複雑にして不明確にしたものであるから,本願補正発明について,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2項の規定を満たすものではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

一方,請求項1を引用する請求項2及び請求項3は,「前記配列番号5のフラグメントが,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸93?201となっている請求項1に記載の単離ポリペプチド。
」及び「前記配列番号5のフラグメントに付着したアフィニティータグを有する,請求項1又は2に記載の単離ポリペプチド。」というものであり,これらの記載からすれば,請求項1は,アミノ酸92?205となった後,さらに欠損させてアミノ酸93?201となったものや,アミノ酸92?205となった後,アフィニティータグを付着させたものも包含するようである。
また,請求人は,平成23年7月10日に提出した請求の理由を変更する手続補正書において,「審査官殿がご指摘される『含む』との文言は,補正後の請求項1に存在致しますが,これは,VEGF-Dフラグメントに付着のアフィニティータグ等のオプションとしての異種配列を含むこと意図しているが,補正後の請求項1に係る単離ポリペプチドは,配列番号5のアミノ酸配列の,アミノ酸残基92?205に対するN-及びC-末端部分を含まないことにより,補正後の請求項1に係る単離ポリペプチドは,引用出願2に開示される全長配列とは明確に区別できるものである」ことを主張している。
ところが,請求項1の記載をどのように解釈すれば,さらに欠損したものや,本来のVEGF-Dの配列ではない異種配列を含むものも包含するように読むことができるのか,全く明らかでなく,本願補正発明について,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2項の規定を満たすものではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成21年7月10日の手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年2月16日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。

「内皮細胞増殖の刺激,血管透過性の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する単離ポリペプチドであって,
ここで,前記単離ポリペプチドは,以下の(a)?(c);
(a)配列番号5のアミノ酸配列のフラグメントであって,配列番号5のアミノ酸配列のN-末端とC-末端が欠損してアミノ酸93?201となり,且つ前記活性を有するフラグメント,
(b)配列番号5のアミノ酸92?205を備え,且つ前記活性を有するポリペプチド,
(c)少なくとも1のアミノ酸の置換を有する前記(a)又は(b)のバリアントであって,前記少なくとも1のアミノ酸の少なくとも1の置換が,VEGF-D,VEGF-C,VEGF-165,VEGF-B及びPlGF間で保存されたアミノ酸以外のアミノ酸に限定され,且つ前記活性を有するバリアント,のいずれかを含む単離ポリペプチド。」

第4 当審の判断
1.先願
原査定の拒絶の理由に引用された特願平10-505856号(国際公開第98/2543号,以下,「先願1」という。)は,特願平8-185216号(以下,「先願2」という。)に基づいて特許法第41条第1項の規定による優先権主張がなされたもので,特許法第41条第3項の規定により,本来,先願2を引用すべきであったものである。これに対し,請求人は,先願1が本願優先日後の出願であり,特許法第29条の2の規定を適用できないことを特段主張していないので,先願1の出願当初の明細書及び先願1の優先権主張の基となる先願2の出願当初の明細書の両方に共通して記載された発明について,特許法第29条の2の規定が適用されると正しく理解し,意見書等の反論をおこなったものと認められる。
そこで,原査定の拒絶の理由において,先願1ではなく,先願2が通知されたものとして,以下審理する。

先願1の出願当初の明細書,並びに本願優先日前の出願であり,特許法第184条の15第2項及び同法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる先願2の出願当初の明細書には,
実施例2及び3に,ヒトVEGF-Dと名付けられたタンパク質をコードするcDNAをクローニングし配列決定したことが記載されるとともに,コードするタンパク質の配列が配列番号1に記載され,
先願1の明細書5頁下から6行?6頁11行及び先願2の段落0015,0016に,タンパク質を大腸菌,CHO細胞,COS細胞などの宿主を用いて発現し,精製を行うことが可能であることが記載されている。

2.対比
先願1及び先願2の配列番号1のアミノ酸配列は,本願の配列番号5のアミノ酸配列と同じであるから,該先願1及び先願2のアミノ酸配列のポリペプチドは,本願の配列番号5のアミノ酸92?205を備えるポリペプチドを含むものである。
また,先願1及び先願2には,タンパク質を発現させ,精製を行うことが可能であることが記載されているし,遺伝子工学の周知の方法を用いることにより,タンパク質を発現させ,精製することにより単離ポリペプチドとすることが,本願優先日の技術常識からみて,当業者が容易に実施できることであるから,先願1及び先願2の出願当初の明細書には,クローニングされた遺伝子のみならず,該遺伝子にコードされ精製された単離タンパク質も,実質的に記載された発明であると認められる。
そこで,本願発明と先願1及び先願2の出願当初の明細書に記載された発明を比較すると,「配列番号5のアミノ酸92?205を備えるポリペプチドを含む単離ポリペプチド」である点で一致しているが,本願発明の単離ポリペプチドが「内皮細胞増殖の刺激,血管透過性の刺激,VEGFR-2の細胞外ドメインへの結合,及びVEGFR-3の細胞外ドメインへの結合からなるグループから選択される少なくとも1の活性を有する」ものであるのに対し,先願1及び先願2のものがそのような活性を有しているかどうか明
らかでない点で両者は相違している。

3.判断
本願明細書には,配列番号5のアミノ酸配列のアミノ酸93?201の断片が,VEGFR-2及びVEGFR-3の細胞外ドメインへ結合することが記載され,先願1及び先願2の配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドも同じ配列を内部に有するものであるから,同様に,VEGFR-2及びVEGFR-3の細胞外ドメインへ結合することが推測されるものであるし,本願の実施例7,11の記載や本願の出願後の文献であるが,The Journal of Biological Chemistry, 274 (1999) p.32127-32136にも,弱くではあるが,全長のものが,VEGFR-2及びVEGFR-3の細胞外ドメインへ結合することが記載されているから,先願1及び先願2のものが,本願発明と同じ活性を有するものであることは明らかであり,この点で発明が相違することにはならない。
したがって,本願発明は,先願1及び先願2の出願当初の明細書に記載された発明と同一であって,しかも,本願の発明をした者が先願2に係る発明の発明者と同一ではないし,本願の出願の時にその出願人と先願2の出願人とが同一の者でもない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

したがって,本願に係るその他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-02 
結審通知日 2011-09-08 
審決日 2011-09-28 
出願番号 特願2007-13569(P2007-13569)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C12N)
P 1 8・ 16- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯室 里美  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 内田 俊生
六笠 紀子
発明の名称 組換え血管内皮細胞増殖因子D(VEGF-D)  
復代理人 太田 隆司  
復代理人 山▲崎▼ 徹也  
代理人 北村 修一郎  
復代理人 太田 隆司  
代理人 北村 修一郎  
復代理人 山▲崎▼ 徹也  
復代理人 ▲崎▼山 尚子  
復代理人 ▲崎▼山 尚子  

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