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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1254198
審判番号 不服2011-4184  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-25 
確定日 2012-03-22 
事件の表示 特願2006-209353「論理区画のリソース割り当て方法及び論理区画式計算機システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月30日出願公開、特開2006-323872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成12年7月28日に出願した特願2000-228302号の一部を平成18年8月1日に新たな特許出願としたものであって、平成19年6月21日付けで手続補正がなされ、平成20年10月27日付けで手続補正がなされ、平成22年5月19日付けで拒絶理由通知(同年5月25日発送)がなされ、同年7月14日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年11月24日付けで拒絶査定(同年11月30日発送)がなされ、これに対し、平成23年2月25日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。そして、平成23年6月15日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年9月29日付けで当審より審尋(同年10月4日発送)がなされ、同年11月28日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年2月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年2月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成22年7月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6の記載

「 【請求項1】
物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムにおける論理区画のリソース割り当て方法であって、
前記物理計算機においては、どの論理区画にも割り当てられていない予備リソースを有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出し、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、前記論理区画から前記ハイパーバイザにおけるリソース割り当て回収手段に対してリソースの回収を要求し、
前記リソース割り当て回収手段は前記要求を受けて、要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収して前記予備リソースとし、
前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、前記リソース割り当て回収手段に対して前記論理区画はリソースの割り当てを要求し、
前記リソース割り当て回収手段は、該要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当てることを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項2】
請求項1記載の論理区画のリソース割り当て方法において、
論理区画ごとに予備リソースの割り当て可否を示す前記ハイパバイザが管理する情報を格納しておき、
前記リソース不足がある場合にリソースの割り当て要求を受けた場合に、前記格納した情報に基づいて、要求をした論理区画への割り当て可否を判定することを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項3】
請求項2記載の論理区画のリソース割り当て方法において、
前記予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す情報を前記ハイパバイザに格納しておき、
前記論理区画への割り当て可否判定により、割り当て可能な論理区画からのリソース割り当て要求であった場合に、予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す前記情報を参照して、要求した論理区画に割り当て可能な予備リソースであるかを判定して、割り当て可能な予備リソースを抽出することを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項4】
物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムであって、
前記物理計算機においては、どの論理区画にも割り当てられていない予備リソースを有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出するリソース監視手段と、
前記ハイパバイザは、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、前記論理区画からリソースの回収の要求を受け、前記論理区画に割り当て中のリソースを前記論理区画から回収して前記予備リソースとし、前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、前記論理区画からのリソースの割り当て要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当てるリソース割り当て回収手段を有することを特徴とする論理区画式計算機システム。
【請求項5】
請求項4記載の論理区画式計算機システムにおいて、
論理区画ごとに予備リソースの割り当て可否を示す前記ハイパバイザが管理する情報を格納しておき、
前記リソース不足がある場合であってリソースの割り当て要求を受けた場合に、前記格納した情報に基づいて、要求をした論理区画への割り当て可否を判定する手段を有することを特徴とする論理区画式計算機システム。
【請求項6】
請求項5記載の論理区画式計算機システムにおいて、
前記予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す情報を前記ハイパバイザに格納しておき、
前記論理区画への割り当て可否判定により、割り当て可能な論理区画からのリソース割り当て要求であった場合に、予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す前記情報を参照して、要求した論理区画に割り当て可能な予備リソースであるかを判定して、割り当て可能な予備リソースを抽出する手段を有することを特徴とする論理区画式計算機システム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムにおける論理区画のリソース割り当て方法であって、
前記物理計算機においては、どの論理区画にも割り当てられていない予備リソースを有し、
前記論理区画には、オペレーテングシステムのリソースを追加および切り離すためのゲストリソース追加/切離手段を有し、前記ハイパバイザには、前記論理区画からのリソースを回収および前記論理区画へリソースを割り当てる予備リソース割り当て/回収手段を有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出し、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、
前記ゲストリソース追加/切離手段は、
前記オペレーティングシステムからリソースを切り離し、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの回収を要求し、
前記予備リソース割り当て/回収手段は、前記要求を受けて、要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収して前記予備リソースとし、
前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、
前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの割り当てを要求し、
前記予備リソース割り当て/回収手段は、該要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当て、前記ゲストリース追加/切離手段へ追加したことを通知することを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項2】
請求項1記載の論理区画のリソース割り当て方法において、
論理区画ごとに予備リソースの割り当て可否を示す前記ハイパバイザが管理する情報を格納しておき、
前記リソース不足がある場合にリソースの割り当て要求を受けた場合に、前記格納した情報に基づいて、要求をした論理区画への割り当て可否を判定することを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項3】
請求項2記載の論理区画のリソース割り当て方法において、
前記予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す情報を前記ハイパバイザに格納しておき、
前記論理区画への割り当て可否判定により、割り当て可能な論理区画からのリソース割り当て要求であった場合に、予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す前記情報を参照して、要求した論理区画に割り当て可能な予備リソースであるかを判定して、割り当て可能な予備リソースを抽出することを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。
【請求項4】
物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムであって、
前記物理計算機においては、どの論理区画にも割り当てられていない予備リソースを有し、前記論理区画には、オペレーテングシステムのリソースを追加および切り離すためのゲストリソース追加/切離手段を有し、前記ハイパバイザには、前記論理区画からのリソースを回収および前記論理区画へリソースを割り当てる予備リソース割り当て/回収手段を有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出するリソース監視手段と、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、
前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記オペレーティングシステムからリソースを切り離し、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの回収の要求をし、
前記予備リソース割り当て/回収手段は、前記論理区画に割り当て中のリソースを前記論理区画から回収して前記予備リソースとし、
前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、
前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記予備リソース割り当て/回収手段に対して、リソースの割り当て要求をし、
前記予備リソース割り当て/回収手段は、前記リソースの割り当て要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当て、前記ゲストリース追加/切離手段へ追加したことを通知することを特徴とする論理区画式計算機システム。
【請求項5】
請求項4記載の論理区画式計算機システムにおいて、
論理区画ごとに予備リソースの割り当て可否を示す前記ハイパバイザが管理する情報を格納しておき、
前記リソース不足がある場合であってリソースの割り当て要求を受けた場合に、前記格納した情報に基づいて、要求をした論理区画への割り当て可否を判定する手段を有することを特徴とする論理区画式計算機システム。
【請求項6】
請求項5記載の論理区画式計算機システムにおいて、
前記予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す情報を前記ハイパバイザに格納しておき、
前記論理区画への割り当て可否判定により、割り当て可能な論理区画からのリソース割り当て要求であった場合に、予備リソースごとに特定の論理区画への割り当てが可能であるかどうかを示す前記情報を参照して、要求した論理区画に割り当て可能な予備リソースであるかを判定して、割り当て可能な予備リソースを抽出する手段を有することを特徴とする論理区画式計算機システム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして、本件補正は、論理区画式計算機システムにおけるハイパバイザと論理区画との間で、リソースの切り離し、回収、割り当て、追加という手段を実現するために必要となる構成を限定した補正であることから、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開昭64-2145号公報 (昭和64年1月6日公開、以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:引用文献には丸印のなかに数字が記載されている表記がある。以下では、そのような表記については“○x”(xは任意の整数)にて代用して表記することにする。)

A 「仮想計算機システムでは,利用者からの要求にしたがって1つの実計算機上に複数の仮想計算機を生成し,同時並行的に動作させることができる。
実計算機上で各仮想計算機を管理する仮想計算機制御プログラム(以後CPという)は,仮想計算機(以後VMという)を立ち上げる際に,メモリ(仮想記憶)やCPU使用率などの資源を割り当てる。」(第2頁左上欄5?12行)

B 「[発明が解決しようとする問題点]
従来のVMシステムの資源管理方式では,個々のVMに対する資源割り当て量を適切に管理することは困難であり,VMごとに過不足が生じて,全体の資源利用効率が悪くなり,特に資源割り当て量が不足しているVMでは処理が遅れ,スループットが小さくなるなどの処理性能が低下するという問題があった。
本発明は,ゲストVMとVM制御プログラムとが動作中連携して割り当て資源の使用率を評価し,その結果にしたがって各VMに対する資源割り当て量を動的に変更し最適化を図る手段を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄16?左下欄9行)

C 「[問題点を解決するための手段]
第1図は,本発明の原理説明図である。
図において,
10は,仮想計算機制御プログラム(CPで表す)である。
11ないし13は,仮想計算機(VM1,VM2,VM3で表す)である。
14はCP内に設けられた資源割り当て制御部である。
15ないし17は,各VMのOSに設けられる資源使用量測定部である。
CPの資源割り当て制御部14は,各VMに対する資源の初期割り当ておよびVM動作中に割り当て量を変更する制御機能をもつ。
各VMの資源使用量測定部15ないし17は,自身のVMに割り当てられた資源の実際の使用量を測定しデータをとる機能をもつ。」(第2頁左下欄10?右下欄7行)

D 「[作用]
第1図において,CPの資源割り当て制御部14は,各VMを立ち上げる際に,それぞれに予め定められている初期量の資源を割り当てる。
立ち上げられた各VMの資源使用量測定部15ないし17は,割り当てられている資源についての使用量を,動作中一定のタイミングで測定し,そのデータを保持する。
CPの資源割り当て制御部14は,各VMの資源使用量測定部15ないし17が保持している資源使用量のデータを収集し,各VMに対する割り当て資源量の使用率から割り当て量変更の要,不要を判定し,必要な場合に資源の再配分を行う。」(第2頁右下欄8行?第3頁左上欄1行)

E 「第4図は,本発明方式の1実施例による資源管理の制御手順を示したものである。図中の○1ないし○8は,制御手順の各ステップを表している。
○1 各VMはメモリの使用あるいは不使用(空き)の領域を調べる。たとえばVM2は斜線で示す不使用領域の存在を検出する。
○2 CPからの問い合わせに応じて各VMは,メモリの使用/不使用領域の状況をCPに通知する。この場合,VM2は,不使用領域をCPに通知し,またVM1はメモリ不足を通知する。
○3 CPは,各VMのメモリ使用状況に基づいて,割り当て量の過不足を判定し,必要な場合変更方針を決定する。たとえばVM2からVM1へのメモリ領域の移し替えを決定する。
○4 CPは,まずVM2に不使用領域の取り外しを依頼する。
○5 VM2は,不使用領域を低位アドレス側に移動(リロケーション)し,取り外しを行い,その後,CPに取り外し完了を通知する。
○6 CPは,VM2に対するメモリ割り当て量を削減し,VM1に追加するVM資源の構成変更を行う。
○7 CPは,VM1にVM2の不使用領域相当分のメモリ領域の割り当て追加を通知する。
○8 VM1は,追加されたメモリ領域を取り込み,使用可能状態に管理する。
このようにしてCPと各VMは,連携して任意の割り当て資源について,動的に再配分する最適化処理を行うことができる。」(第3頁右上欄14行?右下欄3行)

(ア)上記Aの「仮想計算機システムでは、…(中略)…1つの実計算機上に複数の仮想計算機を生成し、同時並行的に動作させることができる。」及び「実計算機上で各仮想計算機を管理する仮想計算機制御プログラム(以後CPという)は,仮想計算機(以後VMという)を立ち上げる際に,メモリ(仮想記憶)やCPU使用率などの資源を割り当てる。」との記載、上記Cの「第1図は,本発明の原理説明図である。」、「10は,仮想計算機制御プログラム(CPで表す)である。」、「11ないし13は,仮想計算機(VMI,VM2,VM3で表す)である。」、「14はCP内に設けられた資源割り当て制御部である。」、「15ないし17は,各VMのOSに設けられる資源使用量測定部である。」、及び「CPの資源割り当て制御部14は,各VMに対する資源の初期割り当ておよびVM動作中に割り当て量を変更する制御機能をもつ。」との記載からすると、引用文献には、
実計算機の資源が割り当てられた複数の仮想計算機と、前記仮想計算機の資源割り当てを制御する仮想計算機制御プログラムを有し、該仮想計算機のそれぞれでOSが稼働する仮想計算機システムにおける仮想計算機の資源割り当て方法
が記載されている。

(イ)上記Aの「実計算機上で各仮想計算機を管理する仮想計算機制御プログラム(以後CPという)は,仮想計算機(以後VMという)を立ち上げる際に,メモリ(仮想記憶)やCPU使用率などの資源を割り当てる。」、及び上記Cの「14はCP内に設けられた資源割り当て制御部である。」及び「CPの資源割り当て制御部14は,各VMに対する資源の初期割り当ておよびVM動作中に割り当て量を変更する制御機能をもつ。」との記載、上記Eの「○4 CPは,まずVM2に不使用領域の取り外しを依頼する。」、「○5 VM2は,不使用領域を低位アドレス側に移動(リロケーション)し,取り外しを行い」、「○7 CPは,VM1にVM2の不使用領域相当分のメモリ領域の割り当て追加を通知する。」、及び「○8 VM1は,追加されたメモリ領域を取り込み」との記載、そして当該「資源」は、仮想計算機を立ち上げるために必要となるものであり、仮想計算機はOSによって稼働することから、当該「資源」は、OSが使用する資源を意味する。
してみれば、引用文献には、
仮想計算機には、OSの資源を追加および取り外すための機能(以下、「資源追加/取り外し部」という。)を有し、仮想計算機制御プログラムには、前記仮想計算機から資源を取り外し、前記仮想計算機へ資源を追加する制御を行う資源割り当て制御部を有する態様
が記載されている。

(ウ)上記Cの「15ないし17は,各VMのOSに設けられる資源使用量測定部である。」との記載、上記Dの「立ち上げられた各VMの資源使用量測定部15ないし17は,割り当てられている資源についての使用量を,動作中一定のタイミングで測定し,そのデータを保持する。」との記載、上記Eの「○1 各VMはメモリの使用あるいは不使用(空き)の領域を調べる。たとえばVM2は斜線で示す不使用領域の存在を検出する。」及び「○2 CPからの問い合わせに応じて各VMは,メモリの使用/不使用領域の状況をCPに通知する。この場合,VM2は,不使用領域をCPに通知し,またVM1はメモリ不足を通知する。」との記載、そして、不使用領域があるということは資源余剰であることを意味するものであることから、引用文献には、
各仮想計算機において資源の使用量を測定するとともに、各仮想計算機が資源余剰であること、並びに資源不足であることを検出する態様
が記載されている。

(エ)上記Eの「VM2からVM1へのメモリ領域の移し替え」とは、不使用領域を通知した仮想計算機のメモリ領域を取り外し、メモリ不足を通知した仮想計算機に前記メモリ領域を割り当て追加することを意味するものである。してみると、上記Fの「たとえばVM2は斜線で示す不使用領域の存在を検出する。」、「○2 CPからの問い合わせに応じて各VMは,メモリの使用/不使用領域の状況をCPに通知する。この場合,VM2は,不使用領域をCPに通知し,またVM1はメモリ不足を通知する。」、「○3 CPは,各VMのメモリ使用状況に基づいて,割り当て量の過不足を判定し,必要な場合変更方針を決定する。たとえばVM2からVM1へのメモリ領域の移し替えを決定する。」、及び上記Aの「実計算機上で各仮想計算機を管理する仮想計算機制御プログラム」との記載から、引用文献には、
検出に基づいて、一の仮想計算機で割り当て中のメモリの不使用領域がある場合には、前記一の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対して不使用領域を通知し、また、他の仮想計算機でメモリ不足がある場合には、前記他の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対してメモリ不足を通知し、
前記仮想計算機制御プログラムは、前記各通知を受けて、前記不使用領域を通知した仮想計算機のメモリ領域を取り外すこと、前記メモリ不足を通知した仮想計算機に前記メモリ領域を割り当て追加することを決定する
ことが記載されている。

(オ)上記Eの「○4 CPは,まずVM2に不使用領域の取り外しを依頼する。」、「○5 VM2は,不使用領域を低位アドレス側に移動(リロケーション)し,取り外しを行い,その後,CPに取り外し完了を通知する。」、及び「○6 CPは,VM2に対するメモリ割り当て量を削減し」との記載において、「不使用領域」の「取り外し」は、仮想計算機制御プログラムが決定して仮想計算機に「依頼」することにより仮想計算機が実行するものであるから、仮想計算機制御プログラムの制御のもとで行われるものである。
してみれば、引用文献には、
仮想計算機制御プログラムでは、不使用領域を通知した仮想計算機に割り当て中のメモリの不使用領域の取り外しを制御する
ことが記載されている。

(カ)上記Eの「○7 CPは,VM1にVM2の不使用領域相当分のメモリ領域の割り当て追加を通知する。」及び「○8 VM1は,追加されたメモリ領域を取り込み,使用可能状態に管理する。」との記載において、「割り当て追加」も、仮想計算機制御プログラムが決定して仮想計算機に「通知」することにより仮想計算機が実行するものであるから、仮想計算機制御プログラムの制御のもとで行われるものである。
してみれば、引用文献には、
仮想計算機制御プログラムでは、メモリ不足を通知した仮想計算機への取り外された不使用領域の割り当て追加を制御する
ことが記載されている。

以上、(ア)ないし(カ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

実計算機の資源が割り当てられた複数の仮想計算機と、前記仮想計算機の資源割り当てを制御する仮想計算機制御プログラムを有し、該仮想計算機のそれぞれでOSが稼働する仮想計算機システムにおける仮想計算機の資源割り当て方法であって、
前記仮想計算機には、OSの資源を追加および取り外すための資源追加/取り外し部を有し、前記仮想計算機制御プログラムには、前記仮想計算機から資源を取り外し、前記仮想計算機へ資源を追加する制御を行う資源割り当て制御部を有し、
前記各仮想計算機において資源の使用量を測定するとともに、各仮想計算機が資源余剰であること、並びに資源不足であることを検出し、
前記検出に基づいて、一の仮想計算機で割り当て中のメモリの不使用領域がある場合には、前記一の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対して不使用領域を通知し、また、他の仮想計算機でメモリ不足がある場合には、前記他の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対してメモリ不足を通知し、
前記仮想計算機制御プログラムは、前記各通知を受けて、前記不使用領域を通知した仮想計算機のメモリ領域を取り外すこと、前記メモリ不足を通知した仮想計算機に前記メモリ領域を割り当て追加することを決定し、
前記仮想計算機制御プログラムでは、前記不使用領域を通知した仮想計算機に前記割り当て中のメモリの不使用領域の取り外しを制御し、
前記仮想計算機制御プログラムでは、前記メモリ不足を通知した仮想計算機への取り外された不使用領域の割り当て追加を制御する
ことを特徴とする仮想計算機の資源割り当て方法。

(3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「実計算機」及び「OS」は、それぞれ、本願補正発明の「物理計算機」及び「オペレーティングシステム」に相当する。また、引用発明の「資源」ないし「メモリ領域」は、本願補正発明の「リソース」に相当する。そして、引用発明の「資源割り当て方法」は、本願補正発明の「リソース割り当て方法」に相当する。そして、引用発明における「仮想計算機」は、そこでOSが稼働し、資源ないしメモリ領域が配分されることで動作するものであるから、本願補正発明における、そこでオペレーティングシステムが稼働し、リソースが配分されることで動作する「論理区画」に相当する。そして、引用発明の「仮想計算機制御プログラム」及び「仮想計算機システム」は、本願補正発明の「ハイパバイザ」及び「論理区画式計算機システム」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明は、“物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムにおける論理区画のリソース割り当て方法”である点で一致する。

引用発明の「取り外す」、「資源追加/取り外し部」、「取り外し」、及び「追加する」は、それぞれ、本願補正発明の「切り離す」、「ゲストリソース追加/切離手段」、「回収」、及び「割り当てる」に相当する。そして、引用発明の「資源割り当て制御部」と、本願補正発明の「予備リソース割り当て/回収手段」は、ともに、回収したリソースを割り当てる機能を有するものであることから、“リソース再配分手段”である点で共通する。したがって、本願補正発明と引用発明は、“論理区画には、オペレーテングシステムのリソースを追加および切り離すためのゲストリソース追加/切離手段を有し、ハイパバイザには、前記論理区画からのリソースを回収および前記論理区画へリソースを割り当てるリソース再配分手段を有”する点で共通する。

引用発明の「資源の使用量」、「測定」、「資源余剰」、及び「資源不足」は、それぞれ、本願補正発明の「リソース使用量」、「監視」、「リソース余剰」、及び「リソース不足」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明は、“各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出”する点で一致する。

引用発明の「不使用領域」の「通知」は、割り当て中のメモリに不使用領域がある場合に、仮想計算機が実計算機上の仮想計算機制御プログラムに対して行うものであり、該通知を受けて、メモリ領域を取り外すことを決定させて前記不使用領域を通知した仮想計算機に割り当て中のメモリの不使用領域の取り外しを制御させるための通知である。
他方、本願補正発明の「リソースの回収」の「要求」は、リソース余剰がある場合には、ハイパバイザの予備リソース割り当て/回収手段に対して論理区画のゲストリソース追加/切離手段が行うものであり、前記要求を受けて、リソースの回収を要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収させるための要求である。
そして、引用発明の「通知」と本願発明の「要求」は、単なる表現上の差異にすぎないものであることを考慮すると、本願補正発明と引用発明は、“リソース余剰がある場合には、論理区画は、物理計算機に対してリソースの回収を要求し、前記物理計算機では、該要求を受けて、該論理区画に割り当て中の余剰リソースを回収”する点で共通する。

引用発明の「メモリ不足」の「通知」は、メモリ不足がある場合に、仮想計算機が実計算機上の仮想計算機制御プログラムに対して行うものであり、該通知を受けて、メモリ領域の割り当て追加を決定させて前記メモリ不足を通知した仮想計算機に取り外された不使用領域の割り当て追加を制御させるための通知である。
他方、本願補正発明の「リソースの割り当て」の「要求」は、リソース不足がある場合には、ハイパバイザの予備リソース割り当て/回収手段に対して論理区画のゲストリソース追加/切離手段が行うものであり、該要求を受けて、リソースの割り当てを要求した該論理区画に回収した余剰リソースを割り当てさせるための通知である。
そして、引用発明の「通知」と本願発明の「要求」は、単なる表現上の差異にすぎないものであることを考慮すると、本願補正発明と引用発明は、“リソース不足がある場合には、論理区画は、物理計算機に対してリソースの割り当てを要求し、前記物理計算機では、該要求を受けて、該論理区画に回収した余剰リソースを割り当てる”点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムにおける論理区画のリソース割り当て方法であって、
前記論理区画には、オペレーテングシステムのリソースを追加および切り離すためのゲストリソース追加/切離手段を有し、前記ハイパバイザには、前記論理区画からのリソースを回収および前記論理区画へリソースを割り当てるリソース再配分手段を有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出し、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、
前記論理区画は、前記物理計算機に対してリソースの回収を要求し、前記物理計算機では、該要求を受けて、該論理区画に割り当て中の余剰リソースを回収し、
前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、
前記論理区画は、前記物理計算機に対してリソースの割り当てを要求し、前記物理計算機では、該要求を受けて、該論理区画に回収した余剰リソースを割り当てることを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。

(相違点1)

本願補正発明は、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを「リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて」検出するものであるのに対し、引用発明は、「各仮想計算機が資源余剰であること、並びに資源不足であること」を何に基づいて検出するのか特定されていない点。

(相違点2)

本願補正発明における物理計算機は、「どの論理区画にも割り当てられていない予備リソース」を有しているのに対し、引用発明における実計算機は、どの仮想計算機にも割り当てられていない予備のリソースを有しているか不明である点。

(相違点3)

リソースの回収、割り当てにおいて、本願補正発明は、「リソース再配分手段」が「予備リソース割り当て/回収手段」であって、「前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記オペレーティングシステムからリソースを切り離し、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの回収を要求し、前記予備リソース割り当て/回収手段は、前記要求を受けて、要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収して前記予備リソースとし、 前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの割り当てを要求し、前記予備リソース割り当て/回収手段は、該要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当て、前記ゲストリース追加/切離手段へ追加したことを通知する」ものであるのに対して、引用発明は、「リソース再配分手段」が「資源割り当て制御部」であって、「前記検出に基づいて、一の仮想計算機で割り当て中のメモリの不使用領域がある場合には、前記一の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対して不使用領域を通知し、また、他の仮想計算機でメモリ不足がある場合には、前記他の仮想計算機は前記仮想計算機制御プログラムに対してメモリ不足を通知し、前記仮想計算機制御プログラムは、前記各通知を受けて、前記不使用領域を通知した仮想計算機のメモリ領域を取り外すこと、前記メモリ不足を通知した仮想計算機に前記メモリ領域を割り当て追加することを決定し、前記仮想計算機制御プログラムでは、前記不使用領域を通知した仮想計算機に前記割り当て中のメモリの不使用領域の取り外しを制御し、前記仮想計算機制御プログラムでは、前記メモリ不足を通知した仮想計算機への取り外された不使用領域の割り当て追加を制御する」ものである点。

(4)当審の判断

上記「相違点1」ないし「相違点3」について検討する。

(4-1)相違点1について

引用発明は、「各仮想計算機において資源の使用量を測定するとともに、各仮想計算機が資源余剰であること、並びに資源不足であることを検出」するものであるが、測定した資源の使用量に対して、資源の余剰/不足を検出する際に、資源余剰を判断するための基準(本願補正発明における「リソース余剰を検出するための閾値」に相当)及び資源不足を判断するための基準(本願補正発明における「リソース不足を検出するための閾値」に相当)に基づいて行うように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得たものである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(4-2)相違点2及び相違点3について

引用発明は、「一の仮想計算機で割り当て中のメモリの不使用領域があ」り、「他の仮想計算機でメモリ不足がある場合」に、不使用領域がある仮想計算機から当該不使用領域を取り外して、メモリ不足がある仮想計算機に割り当て追加しようとするものであるところ、仮想計算機におけるメモリの使用状況は個々の仮想計算機の処理状態に依存し、一の仮想計算機での不使用領域の通知と、他の仮想計算機でのメモリ不足の通知は、独立した事象である。

一方、論理区画式計算機システムにおいて、物理計算機資源を、システム稼働中の構成変更が可能な「どの論理区画にも割り当てられていない」資源、すなわち、予備リソースとして管理する構成は、当業者にとって周知技術である。
例えば、本願の出願の日前である平成10年11月4日に頒布された刊行物である特開平10-293695号公報に、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、計算機システムにおいて、システム稼働中に計算機資源の構成変更を実行する制御方法に係わる。」、
「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、物理計算機資源の論理区画への割り当て状況、論理区画における使用状況、論理区画の走行状態を論理区画の制御プログラムであるハイパバイザ内で管理し、これらの管理情報を元にシステム稼働中の物理計算機資源の構成変更の可否を判定する」、
「【0008】論理区画のアクティベーション、すなわち物理計算機での電源投入相当の操作では、あらかじめ論理区画に対して定義れた各物理計算機資源の構成情報に従って、物理計算機資源を占有または共有させることによって論理区画に割り当てる。各物理計算機資源の構成情報及び、論理計算機資源への割り当て状態は、それぞれの物理計算機資源に対応する物理資源管理テーブル161、162で管理され、論理区画のアクティベーションや、アクティベーション後の個々の物理計算機資源に対する割り当て操作の際に、等が論理区画に対して割り当てた物理計算機資源に対応する物理資源管理テーブルの割り当て管理マスクをオンに設定する。また、論理区画のディアクティベーション、すなわち物理計算機での電源切断相当の操作や、個々の物理計算機資源の割り当て解除操作では、割り当て解除される物理計算機資源に対応する物理資源管理テーブルの割り当て管理マスクをオフに設定する。」、
「【0010】構成変更対象の物理計算機資源が、どの論理区画にも割り当てられていない、すなわち当該物理計算機資源に対応する物理資源管理テーブルにおいて、各論理区画に対応する割り当て管理マスクが全てオフのとき、論理区画への物理計算機資源の割り当て状況からシステム稼働中の物理計算機資源の構成変更の可否を決定する手段153により、当該計算機資源に対する構成変更が可能と判断でき」と記載されている。
そうすると、引用発明において、不使用領域の通知のみがあった場合、前記通知をした仮想計算機のメモリ領域を取り外すことを決定して前記仮想計算機から当該不使用領域を取り外し、当該取り外したメモリ領域を、後にメモリ不足の通知がなされるときに該通知をした仮想計算機にメモリ領域を割り当て追加することを決定して前記取り外したメモリ領域を割り当て追加するという制御ができるように、実計算機において上記周知技術のように予備リソースとして保有させておくことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、上記Eに「○7 CPは,VM1にVM2の不使用領域相当分のメモリ領域の割り当て追加を通知する」と記載されるように、引用発明の仮想計算機制御プログラムが「メモリ不足を通知した仮想計算機への取り外された不使用領域の割り当て追加を制御する」際に、不使用領域を割り当てた仮想計算機の資源追加/取り外し部に対して追加したことを通知するように構成することについても、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、上記「(3)本願補正発明と引用発明との対比」でも検討したように、引用発明の「資源割り当て制御部」と、本願補正発明の「予備リソース割り当て/回収手段」は、ともに、回収したリソースを割り当てる機能を有する点で共通する。

してみれば、引用発明においても、本願補正発明同様、「前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記オペレーティングシステムからリソースを切り離し、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの回収を要求し、前記予備リソース割り当て/回収手段は、前記要求を受けて、要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収して前記予備リソースとし、 前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、前記ゲストリソース追加/切離手段は、前記予備リソース割り当て/回収手段に対してリソースの割り当てを要求し、前記予備リソース割り当て/回収手段は、該要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当て、前記ゲストリース追加/切離手段へ追加したことを通知する」ように構成することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

よって、相違点2及び相違点3は格別なものではない。

(4-3)小括

上記で検討したごとく、「相違点1」ないし「相違点3」は格別のものではなく、そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび

以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成23年2月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「物理計算機のリソースが割り当てられた複数の論理区画と、前記論理区画のリソース割当を制御するハイパバイザを有し、該論理区画のそれぞれでオペレーティングシステムが稼動する論理区画式計算機システムにおける論理区画のリソース割り当て方法であって、
前記物理計算機においては、どの論理区画にも割り当てられていない予備リソースを有し、
前記各論理区画においてリソース使用量を監視するとともに、リソース余剰を検出するための閾値と、リソース不足を検出するための閾値に基づいて、各論理区画がリソース余剰であること、並びにリソース不足であることを検出し、
前記検出に基づいて、リソース余剰がある場合には、前記論理区画から前記ハイパーバイザにおけるリソース割り当て回収手段に対してリソースの回収を要求し、
前記リソース割り当て回収手段は前記要求を受けて、要求した該論理区画から割り当て中のリソースを回収して前記予備リソースとし、
前記検出に基づいて、リソース不足がある場合には、前記リソース割り当て回収手段に対して前記論理区画はリソースの割り当てを要求し、
前記リソース割り当て回収手段は、該要求を受けて、該論理区画に前記予備リソースを割り当てることを特徴とする論理区画のリソース割り当て方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本願補正発明から、論理区画の予備リソース割り当て/回収手段とハイパバイザのリソース割り当て回収手段との間の連携処理について具体化した記載を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成23年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(4)当審の判断」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-19 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-06 
出願番号 特願2006-209353(P2006-209353)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 修治  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 清木 泰
田中 秀人
発明の名称 論理区画のリソース割り当て方法及び論理区画式計算機システム  
代理人 井上 学  

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