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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 B65D 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65D |
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管理番号 | 1255370 |
審判番号 | 無効2011-800119 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-07-07 |
確定日 | 2012-03-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4709842号発明「大形転がり軸受用のパッケージ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件の主な手続を、整理して以下に示す。 (1)特許出願:平成17年9月20日(特願2007-535044号) (本件特許出願は、日本を指定国とした国際特許出願である。) (2)設定登録:平成23年3月25日(特許第4709842号) (3)審判請求:平成23年7月7日 (4)訂正請求及び答弁:平成23年10月28日 (以下、上記訂正請求を「本件訂正請求」という。) なお、平成23年11月9日付けで訂正請求書及び審判事件答弁書の副本を請求人に送付し、期間を指定して意見を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなされなかった。 2 当事者の主張 (1)請求人の主張の概要 審判請求書の記載を総合すると、請求人の主張は、本件特許の請求項1、2、7、10、11、14、17に係る発明は、甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明であるから無効にすべきであり、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の請求項15に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号により規定する要件を満たしていないから、本件特許は無効にすべきであるというものと認める。 【証拠方法】 甲第1号証:実願昭61-91008号(実開昭62-203821号)の マイクロフィルム 甲第2号証:特開2003-128154号公報 甲第3号証:実願平3-83007号(実開平6-85236号)のCD- ROM 甲第4号証:特開2002-2705号公報 甲第5号証:意匠登録第753525号公報 甲第6号証:実願平2-1294号(実開平3-117688号)のマイク ロフィルム 甲第7号証:特開2000-168778号公報 甲第8号証:特開平11-255271号公報 甲第9号証:実願平5-15709号(実開平6-44737号)のCD- ROM (審判請求書第13ページの「8.証拠方法」の欄には、甲第1号証として「実開昭62-203821号公報」と記載されているが、甲第1号証の写しとして添付された書類からみて、「実願昭61-91008号(実開昭62-203821号)のマイクロフィルム」が甲第1号証であると認める。甲第3号証、甲第6号証、甲第9号証についても同様に、上記のとおりと認める。) (2)被請求人の主張の概要 平成23年10月28日付け審判事件答弁書の記載を総合すると、被請求人の主張は、概略、次のとおりと認める。 「本件訂正請求による訂正は適法であり、訂正後の本件特許の請求項1、2、7、10、11、14、17に係る発明は、請求人が提出した証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、訂正後の本件特許の請求項15に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。」 3 本件訂正請求の適否についての判断 (1)訂正の内容 被請求人が請求した本件訂正請求は、特許請求の範囲を本件訂正請求に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下のとおりと認める。 《訂正事項1》 請求項1中の「大形転がり軸受(15)の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方向箇所で、固定可能な保持部材によって把持され、この際に、前記パッケージ(1)の下部(2)に解除可能に結合された前記保持部材はその位置を変えることができ、それによってパッケージ(1)の中心点からの保持部材の間隔が増大又は縮小され得るように構成されていることを特徴とする」を、「大形転がり軸受(15)の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方向箇所で、固定可能な保持部材(12)によって把持され、この際に、前記パッケージ(1)の下部(2)に解除可能に結合された前記保持部材(12)はその位置を変えることができ、それによってパッケージ(1)の中心点からの保持部材の間隔が増大又は縮小され得るように構成されており、前記保持部材(12)の、円形に構成されたベースプレート(12.1)の上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピン(12.4)が配置されていることを特徴とする」と訂正する。 《訂正事項2》 請求項3中の「前記保持部材(12)の、円形に構成されたベースプレート(12.1)の上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピン(12.4)が配置されており、ベースプレート(12.1)の下側に、このベースプレートに対して同心的に配置された円筒形の支持突起(12.6)が設けられている」を、「ベースプレート(12.1)の下側に、このベースプレートに対して同心的に配置された円筒形の支持突起(12.6)が設けられている」と訂正する。 (2)本件訂正についての当審の判断 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲である、特許登録時における特許請求の範囲の請求項1に記載された「保持部材(12)」について、「円形に構成されたベースプレート(12.1)の上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピン(12.4)が配置されていること」を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。この技術的事項は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項3に記載されているから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項であるといえる。そして、この技術的限定をすることは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載を訂正するものであって、訂正事項1の訂正に伴って明瞭でない記載の釈明を行うものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。 4 無効理由についての当審の判断 (1)本件発明 上記のとおり、本件訂正請求は適法であるから、本件訂正請求に添付した訂正特許請求の範囲のとおりの訂正を認める。よって、本件特許の請求項1、2、7、10、11、14、15、17に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、7、10、11、14、15、17に記載された事項によって特定される発明である。 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、以下のとおりに分説できると認める。 「A.大形転がり軸受(15)の取扱い及び発送用のパッケージ(1)であ って、互いに被せ嵌め可能な下部(2)と上部(3)とから成ってお り、この下部(2)と上部(3)との間に少なくとも1つの大形転が り軸受(15)を受容するためのスペースが形成されている形式のも のにおいて、 B.大形転がり軸受(15)の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方 向箇所で、固定可能な保持部材(12)によって把持され、 C.この際に、前記パッケージ(1)の下部(2)に解除可能に結合され た前記保持部材(12)はその位置を変えることができ、それによっ てパッケージ(1)の中心点からの保持部材の間隔が増大又は縮小さ れ得るように構成されており、 D.前記保持部材(12)の、円形に構成されたベースプレート(12. 1)の上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置さ れたピン(12.4)が配置されていることを特徴とする、 E.大形転がり軸受用のパッケージ。」 (2)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の第1ページ第20行?第2ページ第2行、第3ページ第15行?第8ページ第8行及び第1図?第4図の記載などからみて、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認める(以下、「甲1発明」という。請求項1の分説に合わせて分説して示す。)。 「a.略円盤形状の物品の搬送用の物品収納具であって、少なくとも1つの 略円盤形状の物品を受容するためのスペースが形成されている形式の ものにおいて、 b.略円盤形状の物品の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方向箇所 で、固定可能なガイドバーによって把持され、 c.この際に、前記物品収納具に解除可能に結合された前記ガイドバーは その位置を変えることができ、それによって物品収納具の中心点から のガイドバー(2)の間隔が増大又は縮小され得るように構成されて いる、 e.略円盤形状の物品用の物品収納具。」 (3)本件発明1と甲1発明との対比・判断 ア 甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 《相違点》 本件発明1では、保持部材(12)が構成要件D、すなわち、円形に構成されたベースプレート(12.1)及びこのベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピン(12.4)を備えているのに対し、甲1発明の物品収納具は、構成要件Dに相当する構成を備えていない点。 イ 甲1発明との相違点の判断 上記相違点について検討すると、甲第1号証には、構成要件Dに相当する構成は記載されておらず、かつ、示唆もされていない。 また、甲第2号証?甲第9号証のいずれにも構成要件Dに相当する構成は記載されておらず、かつ、示唆もされていないので、甲1発明に対して、甲第2号証?甲第9号証に記載又は示唆された技術的事項を適用しても、本件発明1の構成要件Dを得ることはできない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。また、本件の請求項2、7、10、11、14、17に係る発明は、いずれも本件発明1の構成要件をすべて備える発明であるから、これら発明も、甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (4)特許法第36条第4項第1号について ア 請求人の主張 特許法第36条第4項第1号に関する請求人の主張は、概略、次のとおりであると認める。 a 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「潤滑剤及び耐腐食剤に対し て強いプラスチック」の具体例について何ら記載されていない。 b 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、どのようなプラスチックがど のような潤滑剤及び耐腐食剤に対して強いのかが何ら記載されていない 。 c 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「非常に長時間の搬送時間」 及び「非常に長い貯蔵時間」がどの程度の時間を意味するのかについて 何ら記載されていない。 イ 判断 本件特許明細書の【0021】には、「請求項15によれば、潤滑剤及び耐腐食剤に対して強いプラスチックより製造されている。これは必要である。何故ならば、パッケージ材料は、非常に長時間の搬送時間においても、又は、非常に長い貯蔵時間においても、前記潤滑剤及び耐腐食剤によって損傷を受けないようにし、それによって再使用可能なものでなければならないからである。」と記載されている。 ここで、具体的な潤滑剤及び耐腐食剤については、個々の大形転がり軸受に対して当業者が適宜定めるものであり、また、具体的な搬送時間及び貯蔵時間についても、個々のパッケージに対して当業者が適宜定めるものである。 そして、パッケージに梱包される大形転がり軸受の潤滑剤及び耐腐食剤に対して、そのパッケージに定められた搬送時間や貯蔵時間を経ても再使用可能な程度の耐性を有するプラスチックを選択することは、本件特許明細書の発明の詳細な説明において具体的な潤滑剤、耐腐食剤、プラスチック、搬送時間及び貯蔵時間が明らかにされていなくても、当業者であれば過度な試行錯誤を経ずになし得たことである。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、訂正後の本件特許の請求項15に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 5 むすび 以上のとおり、本件訂正請求は適法であり、かつ、本件訂正請求後の請求項1、2、7、10、11、14、17に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲各号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえず、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正請求後の請求項15に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、請求人が主張する無効理由は、いずれも理由がない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 大形転がり軸受用のパッケージ 【技術分野】 【0001】 本発明は、大形転がり軸受の管理若しくは取扱い及び発送用のパッケージ(梱包体)であって、互いに被せ嵌め可能な下部と上部とから成っており、この下部と上部との間に少なくとも1つの大形転がり軸受を受容するためのスペースが形成されている形式のものに関する。本発明において大形転がり軸受とは、大形転がり軸受の在庫部品(例えば内レース及び外レース)も含む。また本発明は、その他の形式の回転対称的な部分のためにも適用することができる。 【0002】 背景技術 当業者は、大形転がり軸受とは、直径が約360mm?610mmの範囲内にある軸受構造体のことであると理解している。このような大きい寸法によって、軸受の重量は30kg及びそれ以上になる。このような形式の大形転がり軸受を搬送する際に、安全に取扱うことができるようにするために、相応のパッキング(梱包)する必要があることは明白である。 【0003】 このために、このような軸受を、木材より成る箱内に梱包することが公知であり、この場合、転がり軸受は、箱内に入れる前にプラスチックバンドで巻き付けられるか、又は袋及び段ボールで保護される。しかしながらこのような形式の梱包は、費用のかかる梱包材準備作業を必要とし、従って高価である。例えば巻き付け工程は非常に時間がかかる。さらに、木箱は、大形転がり軸受のそれぞれの外径寸法に適合させる必要があり、相応に多くのクッション材料を必要とし、これらのクッション材料は再び廃棄しなければならない。 【0004】 ドイツ連邦共和国実用新案登録第4010626号明細書、同第40107641号明細書、同第40107642号明細書並びに同第40203397号明細書によれば、下部と上部とから成る、軸受及び軸受部分のための軸受容器が公知である。下部と上部とは互いに被せ嵌め可能であって、この下部と上部との間に大形転がり軸受を受容するためのスペースが形成されている。 【0005】 この場合、このような形式の軸受容器は常に、使用された軸受寸法に適合させなければならない、という欠点がある。使用された軸受寸法への適合は、軸受容器内に、軸受を受容する挿入体が設けられていることによって、行われる。このような挿入体は、それぞれの軸受寸法に適応させる必要がある。従って軸受製造業者は、異なる寸法の多数の挿入体を準備しておく必要があり、これは、パッケージ全体にとってはやりコスト的に不必要な負担である。 【0006】 発明の要約 従来技術におけるこのような公知の欠点から出発して、本発明の課題は、ユニバーサルに使用可能な、大形転がり軸受用のパッケージ(梱包体)を提供することである。 【0007】 この課題を解決した本発明によれば、大形転がり軸受の管理若しくは取扱い及び発送用のパッケージであって、互いに被せ嵌め可能な下部と上部とから成っており、この下部と上部との間に少なくとも1つの大形転がり軸受を受容するためのスペースが形成されている形式のものにおいて、大形転がり軸受の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方向箇所で、固定可能な保持部材によって把持され、この際に、前記パッケージの下部に解除可能に結合された前記保持部材はその位置を変えることができ、それによって、パッケージの中心点からの保持部材の間隔が増大又は縮小され得るように構成されている。 【0008】 本発明による解決策の利点は、同じパッケージによって、種々異なる大きさの軸受を受容することができる、という点にある。これは、大形転がり軸受又は軸受構成部分(例えば転がり軸受の外レース)を、互いに間隔を保って配置された複数の周方向箇所で把持する保持部材が、その位置を変えることができることによって可能である。このことはつまり、保持部材が、大形転がり軸受のそれぞれの外周面に関連してその所定の箇所で下部と結合され、それによって保持部材が大形転がり軸受の外周面に当接する、ということである。同じパッケージによって、より大きい又はより小さい大形転がり軸受を受容する場合、保持部材は相応にずらされ、それによって、パッケージの中心点からの間隔が増大又は縮小され、保持部材は常にそれぞれの大形転がり軸受の外周面に当接する。このような形式で、大形転がり軸受は種々異なる周方向箇所で把持され、パッケージ内において確実に固定される。パッケージ内で大形転がり軸受を固定することは特に重要である。何故ならば転がり軸受は、道路車両、レール車両、船又は飛行機によって搬送され、それによって多様な動きにさらされるからである。 【0009】 本発明の別の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。 【0010】 請求項2によれば、保持部材が下部と形状結合及び/又は摩擦結合によって結合されている。有利な形式で、形状結合(形状による束縛)的な結合が有利である。何故ならばこのような形式で、特に簡単に保持部材と下部とを分離することができるからである。 【0011】 保持部材の特に有利な実施例は、請求項3に記載されている。請求項3によれば、前記保持部材の、円形に構成されたベースプレートの上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピンが配置されており、ベースプレートの下側に、このベースプレートに対して同心的に配置された円筒形の支持突起が設けられている。ベースプレートは種々異なる周方向箇所で下部内に差し込むことができ、それによって、偏心的にずらして配置されたピンが、円形の循環軌道に沿って移動し、この循環軌道の各箇所に係止可能となっており、それによってパッケージの中心点に関連して常に異なる間隔を調整することができる。 【0012】 以上の関連性において、請求項4に従って、前記保持部材の円形に構成されたベースプレートがその外周面で歯列を備えており、この歯列は、同様に歯列を備えた、下部の対応する円形の自由室内に係合するようになっていれば、有利である。このような形式で、相応の形状結合的な結合によって、ベースプレートは、偏心的にずらして配置されたピンが大形転がり軸受の外周面を把持する箇所において、確実に係止するようになっている。 【0013】 請求項5に記載した本発明の別の特徴によれば、保持部材の円形に構成されたベースプレートの上側に目盛が設けられており、この目盛が、第1の自由室のマーキングと合致せしめられるようになっている。目盛とマーキングとが合致することによって、保持部材の偏心的にずらして配置されたピンが、各大形転がり軸受の外周面が延在する箇所に正確に位置決めできるようになっている。 【0014】 請求項6に従って、保持部材の円筒形の支持突起が端面側で形状結合部材を備えており、この形状結合部材が下部の対応する形状結合部材に係合するようになっていれば、有利である。これによって、負荷されていない状態、例えば大形転がり軸受なしの状態で、保持部材がパッケージ内において緩く巻き付けられることは避けられる。 【0015】 請求項7に記載した別の付加的な特徴によれば、下部及び/又は上部の内側が、垂直に配置された開口部を備えている。この開口部は、大形転がり軸受の重量において必ず与えられなければならない、上部及び下部の高い形状安定性を配慮する。この場合、垂直に配置された開口部の形式は、例えば形状安定性が得られれば、任意である。 【0016】 請求項8によれば、前記開口部が、互いに平行に配置されたウエブによって形成されており、これらのウエブが互いに長手方向列及び横方向列に配置されている。開口部の別の構成は請求項9に記載されている。請求項9によれば、開口部が、半径方向で互いに間隔を保って円形に配置された複数のウエブによって形成されており、この場合、少なくとも周方向の少なくとも1箇所に、側縁部に対して平行に延在するウエブが配置されている。 【0017】 請求項10に記載した本発明の別の付加的な特徴によれば、上部及び/又は下部がその内側に、同心的に配置された開放部を備えている。この開放部は、大形転がり軸受を取り出すために用いられるので、特に下部のために重要である。これは昇降手段によって大形転がり軸受は、開放部において下から係合され、それによって取り出すことができるようになっている。 【0018】 請求項11に記載した本発明の別の特徴によれば、下部がその外側に、突出する積み重ね部材(スタック部材)を備えており、これらの積み重ね部材が上部の上側に配置された対応する切欠に係合するようになっている。前述のように、積み重ね部材は、パッケージを確実に積み重ねることができるか、又は2つのパッケージ上に1つのパッケージを互いに違いに積み重ねられるように配慮する。この場合、積み重ね部材の構成は重要ではない。つまり積み重ね部材は種々異なる構成を有していてよい。 【0019】 請求項12によれば、前記積み重ね部材が円筒形に構成されていて、円形の切欠内に係合するようになっている。請求項13によれば、積み重ね部材が長方形に構成されていて、円の弓形の突起を有している。 【0020】 請求項14に記載した本発明の付加的な特徴によれば、上部の上側と下部の下側とが、緊締手段を受容するための溝を備えている。この緊締手段は、パッケージの上部が下部から外れないように、配慮する。 【0021】 請求項15によれば、潤滑剤及び耐腐食剤に対して強いプラスチックより製造されている。これは必要である。何故ならば、パッケージ材料は、非常に長時間の搬送時間においても、又は非常に長い貯蔵時間においても、前記潤滑剤及び耐腐食剤によって損傷を受けないようにし、それによって再使用可能なものでなければならないからである。 【0022】 請求項16によれば、少なくとも上部が、透明なプラスチックより製造されている。これは、取り外すことなしに、いつでもパッケージ内容物を視覚的に簡単に管理することができるので、有利である。 【0023】 請求項17に記載されているように、下部及び上部の側壁が、この下部及び上部を上下方向で被覆している。この変化実施例によれば、パッケージ内に種々異なる直径の大形転がり軸受だけでなく、種々異なる軸方向幅の大形転がり軸受を収容することができる、という利点が得られる。転がり軸受の幅が大きければ大きい程、下部と上部の側壁の被覆寸法は小さくなる。何故ならば、上部は軸受から事実上持ち上げられるからである。言い換えれば、上部のベースプレートからの下部のベースプレートの間隔は、積載品の軸方向幅によって規定される。 【0024】 以下に本発明を図面に示した実施例について詳しく説明する。 【0025】 図1は、上下に積み重ねられた2つのパッケージ、 図2及び図3は、パッケージを上方から見た図、及び下方から見た図、 図4及び図5は、上部の内側のそれぞれ平面図、 図6は、上部を上から見た平面図、 図7は、下部を下から見た図、 図8及び図9は、それぞれ挿入された保持部材を備えた下部の平面図、挿入された保持部材及び軸受を備えた下部の平面図、 図10は、保持部材の斜視図、 図10aは、下部に配置された保持部材の平面図、 図11は、保持部材の平面図、 図12は、図11のXII-XIIに沿った断面図、 図13は、保持部材の側面図である。 【0026】 図面の詳細な説明 図1、図2及び図3に示したパッケージ1は、下部2と上部3とから成っており、この下部2と上部3との間に大形転がり軸受用を受容するための、図面では見えていないスペースが形成されている。下部2も上部3も、ベースプレート2.1,3.1より成っており、これらのベースプレートから、直角に配置された側壁2.2、3.2が上方及び下方に延在しており、この側壁2.2と側壁3.2とは、下部2と上部3とが互いにケーキ箱のように被せ嵌められるように、合わせられている。下部2は積み重ね部材4を備えており、これらの積み重ね部材4は、ほぼ長方形に形成されていて、それぞれ2つのアーチ状の切欠4.1を有しており、それによってほぼ円弧状の突起4.2が形成されている。上部3には所属の切欠5が形成されており、この切欠5は、円弧状の隆起部5.1によって制限されている。積み重ね部材4と所属の切欠5とは、図1に示したように互いに上下に配置されたパッケージ1の滑落を阻止するように、互いに合わせられている。これは、上部3の隆起部5.1が下部2の積み重ね部材4の円弧状の切欠4.1内に係合するように、行われる。前記図面に示されているように、上部3の上側も、下部2の下側も、溝6を備えており、これらの溝6は、図示の実施例では中央部で交差し合っている。これらの溝6は、緊締手段例えばベルトを受容するために用いられ、パッケージ1の上部3が下部2から外れないようにする。 【0027】 図4及び図5には、パッケージ1の上部3の内側が示されている。この内側に複数の開口部7,8が設けられている。これらの開口7,8は、互いに平行に配置されたウエブ7.1,7.2によって形成されており、これらウエブ7.1,7.2は、長手方向列及び横方向列で互いに交差し合っている。この場合、ウエブ7.1,7.2は、上部3のベースプレート3.1に結合されているので、ワッフル状に配置された複数の開口部7によって形成されている。第2実施例では、複数の開口部8は、半径方向で互いに間隔を保って円形に配置された複数のウエブ8.1によって形成されている。これらのウエブ8.1は、複数の周方向箇所で、側壁3.2に対して平行に延在するウエブ8.2と結合されている。ウエブ7.1,7.2,8.1,8.2の形式及び配置は重要ではない。この部分の高い形状安定性が得られればよい。図4及び図5にはさらに、どちらの実施例においても上部3内に、円形に形成された開放部9が存在することが図示されている。 【0028】 図7及び図6には、別の形に形成された積み重ね部材が図示されている。この積み重ね部材は、所属の切欠11内に係合する円弧状のセグメント10より成っている。この場合、切欠11は隆起部11.1によって仕切られており、この隆起部11.1は円弧状のセグメント10を包囲し、それによって滑落を阻止する。 【0029】 同じパッケージを種々異なる寸法の大形転がり軸受のために使用する、本来の本発明の実施例は、図8乃至図13に示されている。この場合、まず図10、図10a、図11、図12及び図13に示された保持部材について詳しく説明する。 【0030】 符号12で示した保持部材は、射出成形部分として簡単な形式で一体的に製造可能であって、円形に構成されたベースプレート12.1より成っており、このベースプレートの外周面12.2は歯列12.3を備えている。ベースプレート12.1の上側にはピン12.4が配置されており、このピン12.4は、保持部材12の回転軸線12.5に対して偏心的にずらして位置決めされている。ベースプレート12.1の下側には、中心に配置された円筒形の支持突起12.6が設けられており、この支持突起12.6は、前記ピン12.4とは逆の軸方向に延在している。図12及び図13に示されているように、この支持突起12.6はその下の端面側で形状結合部材12.7を備えているか、又はやや円錐形に構成されている。このような形式で、大形転がり軸受15が装填されていない場合に保持部材12が下部2から抜け落ちることは阻止される。保持部材12がその軸線12.5を中心にして回転すると、偏心的にずらして配置されたピン12.4が円弧軌道に沿って移動するので、図8及び図9に示されているように、パッケージ1の中心からピン12.4の種々異なる間隔を調節することができる。 【0031】 図10aに示されているように、保持部材12のベースプレート12.1の上側に環状に配置された目盛12.8が設けられていれば、有利である。270?370の範囲の与えられた数値は、大形転がり軸受の直径mmに相当する。相応の値が、側壁13.1のマーキング13.3と合致すれば、保持部材12の偏心的にずらされたピン12.4が、当該の大形転がり軸受の外周面に当接するために正しい位置にある。 【0032】 図8及び図9に示されたパッケージ1の下部2は、図5に関連して記載した形式で、機械的な形状安定性を高めるための開口部8を備えている。このためにベースプレート2.1は、半径方向で互いに間隔を保って配置された複数の円形のウエブ8.1を備えており、これらのウエブ8.1は、互いに同じ間隔を保って配置された4つの周方向箇所で側壁2.2に対して平行に延在するウエブ8.2に結合されており、この場合、中央に円形の開放部9が形成されている。円形に延在するウエブ8.1は、各角隅領域で第1の円環状の自由室13によって中断されており、この自由室13は、360°に亘って環状に延在する側壁13.1によって制限されている。第1の自由室13の側壁13.1は歯列13.2を備えており、また第1の自由室13は、この第1の自由室13よりも直径の小さい第2の自由室14に続いている。 【0033】 特に図9に示されているように、符号15で概略的に示された大形転がり軸受は、その符号15.1で示された内孔が開放部9とほぼ合致するように、下部2の内側に取り付けられている。その前に、符号12で示された保持部材は、その回転軸線12.5に対して偏心的にずらして配置されたピン12.4が大形転がり軸受15の外周面に当接せしめられる。このような形式で、大形転がり軸受15は外周面の4箇所でピン12.4によって把持され、それによって大形転がり軸受15は滑ることがないようになっており、この場合、大形転がり軸受は、保持部材12のベースプレート12.1の一部に載っている。保持部材12はその支持突起12.6が第2の自由室14内でガイドされながら、そのベースプレート12.1が第1の自由室13内に挿入される。この場合、半径方向で外方に向けられた、保持部材12の歯列12.3が、側壁13.1の半径方向で内方に向けられた歯列13.2に噛み合い、それによって保持部材12が第1の自由室13内に形状結合式(形状による束縛)に固定される。大形転がり軸受15が、より直径の大きいものに交換される場合、交換される方の軸受が、まずリフト装置(Hebezeug)を用いて、直線状に構成されたウエブ8.2によって制限されたギャップ16内に進入せしめられることによって、取り出される。次に保持部材12がまず2つの自由室13,14から取り出され、次いで再び挿入されて、保持部材12のピン12.4が、大形転がり軸受15の、直径の増大された外周面に当接せしめられる。 【0034】 図9で分かるように、パッケージ1内に、種々異なる軸方向幅を有する大形転がり軸受も収容することができる。何故ならば、下部2の側壁2.2は高さ方向で上部3の側壁3.2(図示せず)によって被覆されるようになっているからである。側壁2.2,2.3の被覆は、大形転がり軸受15が装着されていない状態で最大で、大形転がり軸受15の軸方向幅が大きくなるに従って次第に減少する。言い換えれば、上部3のベースプレート3.1からの下部2のベースプレート2.1の間隔は、大形転がり軸受15の軸方向幅によって規定されるということである。 【0035】 以上説明した実施例では1つだけの大形転がり軸受のパッケージについてのみ説明されているが、本発明は複数の大形転がり軸受のパッケージに含むものである。つまり、前記実施例に従って1つのパッケージユニット内に複数の大形転がり軸受を収容することもできる、ということである。 【図面の簡単な説明】 【0036】 【図1】上下に積み重ねられた2つのパッケージの斜視図である。 【図2】パッケージを上方から見た図である。 【図3】パッケージを下方から見た図である。 【図4】上部の内側の平面図である。 【図5】別の実施例による上部の内側の平面図である。 【図6】上部を上から見た平面図である。 【図7】下部を下から見た図である。 【図8】挿入された保持部材を備えた下部の平面図である。 【図9】挿入された保持部材及び軸受を備えた下部の平面図である。 【図10】保持部材の斜視図である。 【図10a】下部に配置された保持部材の平面図である。 【図11】保持部材の平面図である。 【図12】図11のXII-XIIに沿った断面図である。 【図13】保持部材の側面図である。 【符号の説明】 【0037】 1 パッケージ、2 下部、2.1 ベースプレート、2.2 側壁、3 上部、3.1 ベースプレート、3.2 側壁、4 支持部材、4.1 円弧状の切欠、4.2 突起、5 切欠、5.1 隆起部、6 開放部、7 開口部、7.1,7.2 ウエブ、8 開口部、8.1,8.2 ウエブ、9 開放部、10 支持部材、11 切欠、11.1 隆起部、12 保持部材、12.1 ベースプレート、12.2 外周面、12.3 歯列、12.4 ピン、12.5 回転軸線、12.6 支持突起、12.7 形状結合部材、12.8 目盛、13 第1の自由室、13.1 側壁、13.2 歯列、13.3 マーキング、14 第2の自由室、15 大形転がり軸受、15.1 内孔、16 ギャップ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 大形転がり軸受(15)の取扱い及び発送用のパッケージ(1)であって、互いに被せ嵌め可能な下部(2)と上部(3)とから成っており、この下部(2)と上部(3)との間に少なくとも1つの大形転がり軸受(15)を受容するためのスペースが形成されている形式のものにおいて、 大形転がり軸受(15)の外周面が、互いに間隔を保った複数の周方向箇所で、固定可能な保持部材(12)によって把持され、この際に、前記パッケージ(1)の下部(2)に解除可能に結合された前記保持部材(12)はその位置を変えることができ、それによってパッケージ(1)の中心点からの保持部材の間隔が増大又は縮小され得るように構成されており、前記保持部材(12)の、円形に構成されたベースプレート(12.1)の上側に、このベースプレートに対して偏心的にずらして配置されたピン(12.4)が配置されていることを特徴とする、大形転がり軸受用のパッケージ。 【請求項2】 前記保持部材が下部(2)と形状結合及び/又は摩擦結合によって結合されている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項3】 ベースプレート(12.1)の下側に、このベースプレートに対して同心的に配置された円筒形の支持突起(12.6)が設けられている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項4】 前記保持部材(12)の円形に構成されたベースプレート(12.1)がその外周面(12.2)で歯列(12.3)を備えており、この歯列(12.3)は、同様に歯列(13.2)を備えた、下部(2)の対応する円形の自由室(13)内に係合する、請求項3記載のパッケージ。 【請求項5】 保持部材(12)の円形に構成されたベースプレート(12.1)の上側に目盛(12.8)が設けられており、この目盛(12.8)が、第1の自由室(13)のマーキング(13.3)と合致せしめられるようになっている、請求項3記載のパッケージ。 【請求項6】 保持部材(12)の円筒形の支持突起(12.6)が端面側で形状結合部材(12.7)を備えており、この形状結合部材(12.7)が下部(2)の対応する形状結合部材に係合する、請求項3記載のパッケージ。 【請求項7】 下部(2)及び/又は上部(3)の内側が、垂直に配置された開口部(7,8)を備えている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項8】 前記開口部(7)が、互いに平行に配置されたウエブ(7.1,7.2)によって形成されており、これらのウエブ(7.1,7.2)が互いに長手方向列及び横方向列に配置されている、請求項7記載のパッケージ。 【請求項9】 前記開口部(8)が、半径方向で互いに間隔を保って円形に配置された複数のウエブ(8.1)によって形成されている、請求項7記載のパッケージ。 【請求項10】 上部(3)及び/又は下部(2)がその内側に、同心的に配置された開放部(9)を備えている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項11】 下部(2)がその外側に、突出する積み重ね部材(4,10)を備えており、これらの積み重ね部材(4,10)が上部(3)の上側に配置された対応する切欠(5,11)に係合する、請求項1記載のパッケージ。 【請求項12】 前記積み重ね部材が円筒形に構成されていて、円形の切欠内に係合する、請求項10記載のパッケージ。 【請求項13】 積み重ね部材(4)が長方形に構成されていて、円の弓形の突起(4.2)を有している、請求項10記載のパッケージ。 【請求項14】 上部(3)の上側と下部(2)の下側とが、緊締手段を受容するための溝(6)を備えている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項15】 潤滑剤及び耐腐食剤に対して強いプラスチックより製造されている、請求項1記載のパッケージ。 【請求項16】 少なくとも上部(3)が、透明なプラスチックより製造されている、請求項15記載のパッケージ。 【請求項17】 下部(2)及び上部(3)の側壁(2.2,3.2)が、この下部(2)及び上部(3)を上下方向で被覆している、請求項1記載のパッケージ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2012-01-12 |
結審通知日 | 2012-01-20 |
審決日 | 2012-01-31 |
出願番号 | 特願2007-535044(P2007-535044) |
審決分類 |
P
1
123・
536-
YA
(B65D)
P 1 123・ 121- YA (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 真 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
▲高▼辻 将人 熊倉 強 |
登録日 | 2011-03-25 |
登録番号 | 特許第4709842号(P4709842) |
発明の名称 | 大形転がり軸受用のパッケージ |
復代理人 | 二宮 浩康 |
復代理人 | 上島 類 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
復代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 平井 保 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 久野 琢也 |
復代理人 | 上島 類 |