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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1255417
審判番号 不服2010-17919  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-09 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2007-510424「数値解析装置および数値解析プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月 5日国際公開、WO2006/103996〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・用語の用い方について
1.手続の経緯
本願は、
平成18年3月22日(優先権主張、平成17年3月25日、日本国)を国際出願日とする出願であって、
平成22年1月4日付けで最初の拒絶理由通知(同年同月19日発送)がなされ、
同年3月12日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、
同年4月26日付けで拒絶査定(同年5月11日発送)がなされ、
同年8月9日付けで審判請求がなされるともに、手続補正がなされたものである。
なお、同年9月9日付けで審査官より同法第164条第3項に基づく報告(前置報告)がなされ、
平成23年3月25日付けで当審より同法第134条第4項に基づく審尋(同年同月29日発送)がなされ、
同年5月27日付けで回答書が提出されている。

2.用語の用い方について
本審決においては、検討する対象となる請求項に係る「数値解析装置」などが特許法第2条第1項で定義される「発明」に該当するか否かを検討している。そのため、用語を用いる上での便宜上、以下では、「補正後の請求項1に係る発明」、「本願発明」、「引用発明」等の「発明」という語を含む用語が示すものは、特に断らない限り、特許法第2条第1項で定義される「発明」であるとは限らない。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成22年8月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、
同年3月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載
「 【請求項1】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析装置であって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値解析装置。
【請求項2】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手段は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項4】
前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて出力する出力処理手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項5】
前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理することを特徴とする請求項4に記載の数値解析装置。
【請求項6】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項7】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項2に記載の数値解析装置。
【請求項8】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項9】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項10】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析装置であって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値解析装置。
【請求項11】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項12】
前記設定手段は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手段は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項13】
前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて出力する出力処理手段を備えたことを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項14】
前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理することを特徴とする請求項13に記載の数値解析装置。
【請求項15】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項16】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項11に記載の数値解析装置。
【請求項17】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項18】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項10に記載の数値解析装置。
【請求項19】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析プログラムであって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手順と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手順と、
前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手順と、
前記1階微分量算出手順が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手順と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手順、前記1階微分量算出手順、および前記物理量算出手順に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする数値解析プログラム。
【請求項20】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項21】
前記設定手順は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手順は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項22】
前記物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて出力する出力処理手順を備えたことを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項23】
前記出力処理手順は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理することを特徴とする請求項22に記載の数値解析プログラム。
【請求項24】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項25】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項20に記載の数値解析プログラム。
【請求項26】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項27】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項19に記載の数値解析プログラム。
【請求項28】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析プログラムであって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手順と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手順と、
前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手順と、
前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記1階微分量算出手順が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手順と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手順、前記1階微分量算出手順、および前記物理量算出手順に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする数値解析プログラム。
【請求項29】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。
【請求項30】
前記設定手順は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手順は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。
【請求項31】
前記物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて出力する出力処理手順を備えたことを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。
【請求項32】
前記出力処理手順は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理することを特徴とする請求項31に記載の数値解析プログラム。
【請求項33】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。
【請求項34】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項29に記載の数値解析プログラム。
【請求項35】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。
【請求項36】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項28に記載の数値解析プログラム。」
(以下、「補正前の請求項」という。)を、
「 【請求項1】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、制御部と出力部を備えた数値解析装置であって、
前記制御部は、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段と、
を備え、
前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理すること、
を特徴とする数値解析装置。
【請求項2】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手段は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項4】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項5】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項2に記載の数値解析装置。
【請求項6】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項7】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項1に記載の数値解析装置。
【請求項8】
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、制御部と出力部を備えた数値解析装置に実行させるための数値解析プログラムであって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手順と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手順と、
前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手順と、
前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手順と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手順、前記1階微分量算出手順、および前記物理量算出手順に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手順と、
前記物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手順と、
を前記制御部に実行させ、
前記出力処理手順は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理すること、
を特徴とする数値解析プログラム。
【請求項9】
前記解析微小変数量および前記基準変数値は、それぞれ解析微小時間および基準時刻であり、前記1階微分量および前記2階微分量は、それぞれ1階時間微分量および2階時間微分量であることを特徴とする請求項8に記載の数値解析プログラム。
【請求項10】
前記設定手順は、前記数値解析の終了条件を設定し、
前記演算制御手順は、前記数値解析の終了条件を満足する場合に前記数値解析を終了させる制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の数値解析プログラム。
【請求項11】
前記2階微分方程式は、変数量項を含むことを特徴とする請求項8に記載の数値解析プログラム。
【請求項12】
前記2階微分方程式は、時間項を含むことを特徴とする請求項9に記載の数値解析プログラム。
【請求項13】
前記2階微分方程式は、多元連立方程式であることを特徴とする請求項8に記載の数値解析プログラム。
【請求項14】
表計算プログラムを用いて数値解析を行うことを特徴とする請求項8に記載の数値解析プログラム。」
(以下、「補正後の請求項」という。)
と補正するものである。なお、上記では補正前の各請求項と補正後の各請求項に付されていた下線は省略した。

2.補正前の各請求項と補正後の各請求項の対応付け
本件補正は、補正前の請求項1乃至9と補正前の請求項19乃至27を削除するものである。
そして、本件補正は、補正前の請求項10、13及び14に記載されていた内容(補正前の請求項14は補正前の請求項13を引用し、補正前の請求項13は補正前の請求項10を引用するものである。)を合併して、さらに補正を行ったものを、補正後の請求項1とし、補正前の請求項28、31及び32に記載されていた内容(補正前の請求項32は補正前の請求項31を引用し、補正前の請求項31は補正前の請求項28を引用するものである。)を合併して、さらに補正を行ったものを、補正後の請求項8とするものである。
以下、補正前の請求項14が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項32が補正後の請求項8に対応するとした第1の場合と、補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項28が補正後の請求項8に対応するとした第2の場合について、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定(以下、「目的要件」という。)を満たすものであるか否かを検討する。また、仮に目的要件を満たすものであるとして、次に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定(以下、「独立特許要件」という。)を満たすものであるか否かを検討する。

3.補正前の請求項14が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項32が補正後の請求項8に対応するとした場合の目的要件の検討
補正前の請求項10乃至18においては、補正前の請求項11、請求項12、請求項13、請求項15、請求項17及び請求項18のそれぞれが、補正前の請求項10を直接引用し、補正前の請求項14が補正前の請求項13を直接引用し、補正前の請求項16が補正前の請求項11を直接引用するものである。ここで、補正前の請求項14を直接引用する補正前の請求項は存在しない。
ところが、補正後の請求項1乃至7においては、補正後の請求項2、請求項3、請求項4、請求項6及び請求項7のそれぞれが、補正後の請求項1を直接引用し、補正後の請求項5が補正後の請求項2を引用するものである。
本件補正において、補正前の請求項14が補正後の請求項1に対応するとした場合、本件補正により、直接引用する請求項の存在しなかった補正前の請求項14に対応する、補正後の請求項1について、直接引用する請求項が存在するようになったということになる。このような実質的に請求項を追加する補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げられる目的のいずれをも有するとはいえない。つまり、本件補正は目的要件を満たさない。
補正前の請求項28乃至36と補正後の請求項8乃至14についても、補正前の請求項32が補正後の請求項8に対応するとした場合には、同様である。

4.補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項28が補正後の請求項8に対応するとした場合の目的要件の検討
補正前の請求項10と補正後の請求項1を比較すると、以下の点で両者は異なる。
(1)補正前の請求項10では「数値解析装置」と記載されているのに対し、補正後の請求項1では「制御部と出力部を備えた数値解析装置」と記載されている点。
(2)補正前の請求項10では「…(前略)…前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、…(中略)…前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段」と記載されているのに対し、補正後の請求項1では「…(前略)…前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、…(中略)…前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段」と記載されている点。
(3)補正前の請求項10では「数値解析装置」に「設定手段」、「2階微分量算出手段」、「1階微分量算出手段」、「物理量算出手段」、「演算制御手段」からなる5つの手段が備えられているのに対し、補正後の請求項1では「数値解析装置」には上記した5つの手段に加え、6つめの手段として「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段」を備え、さらに「前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理する」ものであるとされる点。
(4)補正前の請求項10では「設定手段」、「2階微分量算出手段」、「1階微分量算出手段」、「物理量算出手段」、「演算制御手段」からなる5つの手段が「数値解析装置」に備えられるものであるのに対し、補正後の請求項1では上記した5つの手段と「出力処理手段」が「制御部と出力部を備えた数値解析装置」における「制御部」に備えられるものである点。

補正前の請求項10には補正後の請求項1における「出力処理手段」に対応する記載がないことから、補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応するとした場合には、上記した(1)乃至(4)のうち、少なくとも(3)については、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下、「限定的減縮」という。)を目的とするものであるとはいえない。
また、上記した(1)乃至(4)のうち、少なくとも(3)については、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項における他の号(第1号、第3号及び第4号)に掲げられる目的を有するともいえない。
よって、補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応するとした場合、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げられる目的のいずれをも有するとはいえない。つまり、本件補正は目的要件を満たさない。
補正前の請求項28乃至36と補正後の請求項8乃至14の関係についても、補正前の請求項28が補正後の請求項8に対応するとした場合には、同様である。

5.独立特許要件の検討
補正前の請求項14と補正後の請求項1を比較すると、以下の点で両者は異なる。
(1)’補正前の請求項14(が間接的に引用している補正前の請求項10)では「数値解析装置」と記載されているのに対し、補正後の請求項1では「制御部と出力部を備えた数値解析装置」と記載されている点。
(2)’補正前の請求項14(が間接的に引用している補正前の請求項10)では「…(前略)…前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、…(中略)…前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段」と記載されているのに対し、補正後の請求項1では「…(前略)…前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、…(中略)…前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段」と記載されている点。
(3)’補正前の請求項14(が引用する補正前の請求項13)では「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて出力する出力処理手段」と記載されているのに対し、補正後の請求項1では「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段」と記載されており、「出力処理手段」が行う出力の出力先が「出力部」であることが特定されている点。
(4)’(補正前の請求項10及び請求項13の記載もあわせて考慮すると、)補正前の請求項14では「設定手段」、「2階微分量算出手段」、「1階微分量算出手段」、「物理量算出手段」、「演算制御手段」、「出力制御手段」からなる6つの手段が「数値解析装置」に備えられるものであるのに対し、補正後の請求項1では上記した6つの手段が「制御部と出力部を備えた数値解析装置」における「制御部」に備えられるものである点。

補正前の請求項14が補正後の請求項1に対応するとした場合、上記した(1)’乃至(4)’のうち、少なくとも(1)’、(3)’、(4)’は特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応するとした場合、上記「4.補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項28が補正後の請求項8に対応するとした場合の目的要件の検討」において示した(1)乃至(4)のうち、少なくとも(1)、(3)、(4)は特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(念のため言及するならば、上記した(2)’及び(2)は、明細書の【0045】?【0051】に記載された実施の形態2と補正後の請求項の記載を適切に対応付けるためのものであり、誤記の訂正を目的としたものである。)
なお、補正後の請求項8についても同様である。

そこで、仮に、本件補正による補正後の請求項1に関する手続補正が、限定的減縮の目的を有するものとして、補正後の請求項1について独立特許要件が満たされているか否かを検討する。

5の1.特許法第29条第1項柱書の検討
5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段
本願の明細書には、解決しようとする課題や課題を解決するために用いる手段について、下記の記載がある。

「【0001】
この発明は、自然現象や機械運動などにおける種々の運動態様を解析することができる数値解析装置および数値解析プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、常微分方程式を用いた数値解析法には、区間の初期変位、初期速度、初期加速度などを用いて、つぎの時刻の変位や速度を求めるオイラー法が広く用いられている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004-062676号公報
【特許文献2】特開2002-258933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したオイラー法は、微小時間Δt毎に処理ステップを重ねる毎にその解析結果に比較的大きな誤差が生じるという問題点があった。さらに、この誤差を抑えるために微小時間Δtを小さくすると、解析結果を得るために膨大な処理時間を要し、実用に供しないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、解析結果に大きな誤差を生じさせず、簡易かつ短時間に数値解析処理を行うことができる数値解析装置および数値解析プログラムを提供することを目的とする。」

「【0031】
(実施の形態1)
…(中略)…
【0037】
すなわち、この動解析装置1による動解析処理は、解析微小時間Δt後における変位x(t+Δt)を次のようにして求める。まず、基準時刻tにおける解析方程式である加速度α(t)を、基準時刻tにおける物理量である変位x(t)および基準時刻tにおける一階時間微分量である速度v(t)をもとに、式(1)によって算出する。その後、この解析微小時間Δt経過後における速度v(t+Δt)を、式(2)をもとに求め、さらに解析微小時間Δt経過後における変位x(t+Δt)を、式(3)をもとに求める。
α(t) = f(x(t),v(t)) …(1)
v(t+Δt) = v(t) + α(t)・Δt …(2)
x(t+Δt) = x(t) + v(t+Δt)・Δt …(3)
【0038】
ところで、従来の動解析装置では、オイラー法を用いるものがあり、このオイラー法では、上述した式(3)におけるv(t+Δt)をv(t)とする次式(4)によって求めていた。すなわち、
x(t+Δt) = x(t) + v(t)・Δt …(4)
によって変位(t+Δt)を求めていた。しかし、このオイラー法では、単振動などの動解析を行うと発散してしまう場合があった。そこで、式(3)を次式(5)によって求める修正オイラー法が考え出された。すなわち、
x(t+Δt) = x(t)
+ (1/2・(v(t)+v(t+Δt)))・Δt …(5)
である。この修正オイラー法では、v(t+Δt)を、基準時刻tと、基準時刻tから解析微小時間Δt経過後の時刻(t+Δt)との間の平均速度(1/2・(v(t)+v(t+Δt)))に置き換えて動解析を行うようにしている。この修正オイラー法によれば、オイラー法に比較して発散の程度を小さくすることができるが、依然として発散した動解析となってしまい、精度が低い動解析結果となってしまっていた。したがって、オイラー法や修正オイラー法を用いた動解析では、解析微小時間Δtを極端に小さくし、多大な時間をかけて精度を確保せざるを得なかった。これに対し、上述した式(1)?(3)を繰り返し行う動解析処理では、解析微小時間Δtが短くても精度の高い動解析結果を得ることができる。
【0039】
この発明による動解析処理、従来のオイラー法、修正オイラー法の概念を図化すると図3?図5に示すようになる。図3は、この発明の実施の形態1による動解析処理の概念を示す図であり、図4は、従来のオイラー法による動解析処理の概念を示す図であり、図5は、従来の修正オイラー法による動解析処理の概念を示す図である。図3?図5において、この発明による動解析処理では、図3に示すように、時刻tにおける変位および速度から加速度を求め、この時刻tにおける速度と加速度とを用いて解析微小時間Δt経過時刻(t+Δt)の速度を求める。その後、この時刻(t+Δt)の速度と時刻tの変位を用いて時刻(t+Δt)の変位を求めるようにしており、特に、時刻(t+Δt)時の速度を用いて時刻(t+Δt)の変位を求めることが特徴である。一方、オイラー法では、図4に示すように、時刻tにおける速度と時刻tにおける変位を用いて、時刻(t+Δt)の変位を求めるようにしている。さらに、従来の修正オイラー法では、図5に示すように、時刻tと時刻(t+Δt)との間の平均速度(1/2・(v(t)+v(t+Δt)))を用いて、時刻(t+Δt)における変位を求めるようにしている。
…(中略)…
【0041】
図7は、図6に示したばね-質点系の解析結果を示す図である。この動解析は、解析微小時間Δt=0.01(s)で行っている。図7に示すように、オイラー法および修正オイラー法では、時間の経過とともに発散しているのに対し、この発明による動解析処理では、発散もなくほぼ代数解に一致した結果を得ることができている。この結果、この発明の実施の形態1によれば、オイラー法や修正オイラー法に比して短時間に精度の高い動解析を行うことができる。換言すれば、この実施の形態1による動解析処理は、同じ解析時間では、オイラー法や修正オイラー法に比して格段に精度の高い動解析を行うことができる。」

「【0045】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、現時点の速度などの一階時間微分量および現時点の加速度などの二階微分量をもとに次の時点の一階時間微分量を求め、さらにこの次の時点の一階時間微分量および現時点の変位などの物理量を用いて次の時点の物理量を求めるようにしていたが、この実施の形態2では、現時点の一階時間微分量、現時点の二階時間微分量および現時点の物理量をもとに、一度で次の時点の物理量を求めるようにしている。ただし、次の時点の二階時間微分量を算出する際に用いる次の時点の一階時間微分量は、現時点において求めておく。
【0046】
図14は、この発明の実施の形態2である数値解析装置の一例である動解析装置の概要構成を示すブロック図である。図14に示すように、この動解析装置は、物理量算出モジュール24に替えて、物理量算出モジュール24aを設けている。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0047】
二階時間微分量算出モジュール22は、一階時間微分量算出モジュール23が求めておいた速度v(t)と、物理量算出モジュール24が求めておいた基準時刻tにおける変位x(t)とを用いて、加速度α(t)を求め、物理量算出モジュール24aは、この加速度α(t)と、速度v(t)と、基準時刻tにおける変位x(t)とを用いて、直接、解析微小時間Δt経過後の変位x(t+Δt)を求めている。これは、式(3)に式(2)を代入した次式(10)によって直接、変位x(t+Δt)を求めることができることを意味する。すなわち、
x(t+Δt) =
x(t)+ v(t)・Δt+ α(t)・Δt^(2) …(10)
によって求めることができる。」

本願明細書の上記で指摘する箇所に示されるように、xに関する2階微分方程式である式(1)
α(t) = f(x(t),v(t)) …(1)
を、差分法等を用いて数値解析する際に、(前進)オイラー法である式(2)と式(4)の組み合わせ
v(t+Δt) = v(t) + α(t)・Δt …(2)
x(t+Δt) = x(t) + v(t)・Δt …(4)
を用いた場合や、修正オイラー法である式(2)と式(5)の組み合わせ
v(t+Δt) = v(t) + α(t)・Δt …(2)
x(t+Δt) = x(t)
+ (1/2・(v(t)+v(t+Δt)))・Δt …(5)
を用いた場合には、数値解析を進めていくにつれて、数値解析により求めたx等の値が本来の正確なx等の値から大きくずれてしまうという数学的課題を解決することを本願においては解決しようとする課題としている。
本願明細書の上記で指摘する箇所に示されるように、当該数学的課題を解決するために、本願の実施の形態1(この実施の形態1が後述の本願発明(補正前の請求項1)に対応する。)では、xに関する2階微分方程式を差分法等を用いて数値解析する際に、オイラー法や修正オイラー法に代えて、(本願の発明者が後の著書にて言うところの)ミックスオイラー法である式(2)と式(3)の組み合わせ
v(t+Δt) = v(t) + α(t)・Δt …(2)
x(t+Δt) = x(t) + v(t+Δt)・Δt …(3)
を用いている。
また、本願明細書の上記で指摘する箇所に示されるように、当該数学的課題を解決するために、本願の実施の形態2(この実施の形態2が補正後の請求項1に対応する。)では、xに関する2階微分方程式を差分法等を用いて数値解析する際に、オイラー法や修正オイラー法に代えて、(本願の発明者が後の著書にて言うところの)ミックスオイラー法と数学的には等価である、式(2)と、式(2)を式(3)に代入して得た式(10)の組み合わせ
v(t+Δt) = v(t) + α(t)・Δt …(2)
x(t+Δt) =
x(t)+ v(t)・Δt+ α(t)・Δt^(2) …(10)
を用いている。
本願においては、式(2)と式(3)の組み合わせ、または、式(2)と式(10)の組み合わせを用いることにより、数値解析により求めたx等の値が本来の正確なx等の値から大きくずれないようにしている。つまり、本願は、オイラー法や修正オイラー法とは異なる数学的な計算手順を用いることにより、上記した数学的課題を解決しようとするものである。
このような、数学的課題を解決するための数学的な計算手順自体は、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」には該当しない。

5の1の2.補正後の請求項1における数値解析対象に関する検討
さて、補正後の請求項1の記載を検討すると、まず、補正後の請求項1の冒頭に「解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う」と記載されている。つまり、補正後の請求項1にて数値解析される対象である2階微分方程式は運動態様を支配する方程式であり、数値解析は当該運動態様の動解析処理を意味するものである。
しかしながら、補正後の請求項1における「前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する」ことや、「解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する」ことや、「前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する」ことや、「前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する」ことや、「前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う」ことのそれぞれが示す処理はいずれも、解析対象の運動の時間発展に関する物理的性質への考察に基づく処理を含むものとはいえない。むしろ、補正後の請求項1における上記したそれぞれの処理は、解析対象の運動態様を支配する2階微分方程式による物理量の定式化等が済んだ後の、一般的な2階微分方程式に関する数値解析であれば共通して行われるような数学的な操作に専ら終始するものであり、上記した「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」で示した数学的課題を解決するための数学的計算手順に過ぎない。
つまり、補正後の請求項1にて数値解析される対象である2階微分方程式は運動態様を支配する方程式であり、数値解析は当該運動態様の動解析処理を意味するものであるものの、補正後の請求項1に記載されている上記した各処理は、解析対象の物理的性質を離れた純粋に数学的な手法を示すに過ぎないので、この点によっては、補正後の請求項1に記載されたものが、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」に該当するとはいえない。

5の1の3.補正後の請求項1において形式上複数の手段が存在することに関する検討
補正後の請求項1では、上記「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」に示した式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行しつつ数値解析するための処理である、「前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する」ことや、「解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する」ことや、「前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する」ことや、「前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する」ことや、「前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う」ことを行う手段として、「設定手段」、「2階微分量算出手段」、「1階微分量算出手段」、「物理量算出手段」及び「演算制御手段」が示されている。
しかしながら、補正後の請求項1は実質的には、既存の数値解析装置を単に用いて、上記「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」に示した式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行しつつ数値解析するための各処理を行うことを示す程度に過ぎない。そして、式(1)、式(2)、及び式(10)を繰り返し実行しつつ数値解析することは数学的な計算手順そのものであり、この数学的な計算手順が解決しようとする課題も、解析対象の物理的性質を離れた数学的課題である。このように、ハードウェアである数値解析装置自体に何らかの技術的思想に基づく創作があるとはいえず、既存の数値解析装置が専ら数学的課題を解決するための式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行しつつ数値解析するものである場合には、使用目的に応じた特有の数値解析装置が構築されているとはいえず、数値演算装置の単なる使用にあたる。このように、補正後の請求項1においては形式的に上記した5つの手段が示されているに過ぎないのであって、この点によっては、補正後の請求項1が、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」に該当するとはいえない。

5の1の4.補正後の請求項1における、出力部と出力処理手段に関する検討
上記「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」に示した式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行しつつ数値解析するための処理のための直接的な手段以外の構成として、補正後の請求項1には「出力部」と「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段」が記載され、さらに「前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理する」とも記載されている。
しかしながら、上記「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」において示したように、本願における上記した数学的課題を解決するための直接的な解決手段は、(補正後の請求項1に対応する実施の形態2に即して言えば、)式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行することである。この式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行することに関しては、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」には該当するといえる事情がないことは、上記した「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」、「5の1の2.補正後の請求項1における数値解析対象に関する検討」及び「5の1の3.補正後の請求項1において形式上複数の手段が存在することに関する検討」において示したとおりである。
このように、補正後の請求項1の記載における解決しようとする課題のための特定事項について特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用」していないと判断されるときには、式(1)、式(2)、及び、式(10)を繰り返し実行することに直接の関係のない(言うなれば、周知または自明な構成である)出力部や出力処理手段を補正後の請求項1に加えたとしても、補正後の請求項1全体として「自然法則を利用」したものであるということはできず、補正後の請求項1が、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」に該当するか否かの判断が左右されるものではない。
さらにいえば、「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段」及び「前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理する」という記載自体も、「出力処理手段」が「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する」ことや「前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理する」ことという処理を単に実行することが示されている程度であるから、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。

5の1の5.特許法第29条第1項柱書の検討に関する小括
以上、5の1の1?5の1の4で検討したように、補正後の請求項1に記載されたものが特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」に該当するといえる事情があるとはいえないので、補正後の請求項1に記載されたものは同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
補正後の請求項8についても同様である。

5の2.特許法第29条第2項の検討
上記「5の1.特許法第29条第1項柱書の検討」で示したように、補正後の請求項1に記載されたものは特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当せず、補正後の請求項1に記載されたものは同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。しかしながら、仮に補正後の請求項1に記載されたものが特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当するとして、補正後の請求項1に係る発明が、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か、つまり、補正後の請求項1に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないか否かを検討する。

5の2の1.先行技術文献に記載されている技術的事項と先行技術文献に記載されている発明の認定

5の2の1の1.引用例1に記載されている技術的事項
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-317158号公報(平成11年11月16日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(1の1)
「【0054】図1は本発明を実施するためのコンピュータシステムである。
【0055】図1に示すように、100は入力装置、101は出力装置、102は記憶装置であり、103は計算装置で、104はモニターである。入力装置によって、電子軌道計算に関するパラメータを決定して、計算を行わせる。
【0056】入力装置100は、電子の射出位置、引き上げ電極の電位Va、引き上げ電極と表面伝導型電子放出素子との距離、高電位薄膜部極、低電位薄膜部間の電位差Vf、及び亀裂の実効的幅d等の値を入力するためのものである。また、高電位薄膜部表面上での散乱確率、散乱分布の分布関数等をここで設定する。」

(1の2)
「【0057】図2は本発明方法のフローチャートである。S01で、必要とされるパラメータを入力し、S02で電子軌道計算を実行させて、S03のように終了する。その後後処理S04として、計算データから所望の物理量を算出する。」

(1の3)
「【0059】図3は、入力手段によって与えられたN本の模擬電子の軌道計算を行う流れ図になっている。流れ図に沿って、説明する。まず、S11でS01でのパラメータに応じて、初期条件を決定しておく。S12で、必要に応じて模擬電子が運動する領域の電界分布を関する予め計算しておく。(有限要素法、差分法で電界を求める場合は、各接点において電界分布を全て求める。また、境界要素法を用いて電界を求める場合は、ここで境界要素の所望の物理量について計算しておく。更に、解析解によって電界を求める場合は、共通の物理量に関する計算を予め行っておく。)その後、N本の模擬電子に関する軌道計算を行う。S13で模擬電子の番号を1として、S14-S16の順で1本目から、N本目までの電子軌道計算を行うようになっている。」

(1の4)
「【0061】1本目から、N本目までを順番に行うようになっている。図4は、模擬電子軌道の計算部(S15)をより詳しく記述した流れ図である。
【0062】図4は、模擬電子軌道の計算部をより詳しく記述した流れ図である。S202において、模擬電子の初期位置を設定する。次に、S203で所望の分布関数に応じて、乱数による初速度(初期運動エネルギー、初期運動方向)を決定する。その後S204で、模擬電子の現状の位置近傍での電界を計算で求める。(有限要素法等の場合、近傍の接点での電界値から、補間によって求める。境界要素法、解析解の場合、それぞれの方法でその位置での電界計算を行う。)求まった電界にしたがって、Δt時間を決定し(S204)、Δt時間後の模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)
【0063】
【数6】
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
によって求める(S205)。但し、ここで、x=(x,y,z)で、E=(Ex ,Ey ,Ez )で与えられる位置ベクトル、及び電界ベクトルである。
【0064】これを離散化し、差分方程式に落す必要がある。最も、簡単な場合として、オイラー差分を使うと式(7)
【0065】
【数7】
e
v_(new) = ??? E_(old) Δt + v_(old)
m

x_(new) = v_(new) Δt + x_(old)
となる。実際に、実施形態で使用しているのはシンプレクティック数値解法等の運動の保存性に立脚した計算方法を取っているが、式(7)に現れるような、時間間隔の誤差の問題は同様に起きる。」

(1の5)
「【0074】このように求めた模擬電子のΔt後の位置が、領域外にあるか否かを判定する。つまり、模擬電子が境界を交差したか否かを見る。(S206)、もし領域内にあればs207に進む。つまり、模擬電子は、非境界部(真空中)を運動していることを意味し、境界部分に到達するまでは、真空中の与えられた静電場によって力を受けて運動する。…(後略)…」

(1の6)
「【0081】…(中略)…計算の過程における軌道と電位分布の一部をモニター6に出力した…(後略)…」

(1の7)
引用例1の図4のフローチャートには、S204とS205の各ステップの後にS206のステップに至り、S206においてNoの判断である場合に、S207の「t=t+Δt」のステップを経てS204のステップに戻ることが示されている。

5の2の1の2.引用発明の認定
上記(1の1)に「図1は本発明を実施するためのコンピュータシステムである。…(中略)…図1に示すように、100は入力装置、101は出力装置、102は記憶装置であり、103は計算装置で、104はモニターである。入力装置によって、電子軌道計算に関するパラメータを決定して、計算を行わせる。」と記載され、上記(1の2)に「図2は本発明方法のフローチャートである。…(中略)…S02で電子軌道計算を実行させて、…(後略)…」と記載され、上記(1の3)に「図3は、入力手段によって与えられたN本の模擬電子の軌道計算を行う流れ図になっている。…(中略)…N本の模擬電子に関する軌道計算を行う。S13で模擬電子の番号を1として、S14-S16の順で1本目から、N本目までの電子軌道計算を行うようになっている。」と記載され、上記(1の4)に「図4は、模擬電子軌道の計算部をより詳しく記述した流れ図である。…(中略)…Δt時間後の模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)…(中略)…によって求める(S205)。」と記載され、また、上記(1の4)の【0063】の式(6)
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
は2階微分方程式であることは明らかであるので、引用例1は、解析対象である電子の運動態様を示す2階微分方程式(A)を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、計算装置103とモニター104を備えたコンピュータシステムに関するものである。ただし、2階微分方程式(A)は
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
である。

上記(1の1)に「入力装置によって、電子軌道計算に関するパラメータを決定して、…(中略)…入力装置100は、電子の射出位置…(中略)…を入力するためのものである。また、…(中略)…散乱分布の分布関数等をここで設定する。」と記載され、上記(1の2)に「図2は本発明方法のフローチャートである。S01で、必要とされるパラメータを入力し、」と記載され、上記(1の3)に「図3は、入力手段によって与えられたN本の模擬電子の軌道計算を行う流れ図になっている。…(中略)…まず、S11でS01でのパラメータに応じて、初期条件を決定しておく。」と記載され、上記(1の4)に「図4は、模擬電子軌道の計算部をより詳しく記述した流れ図である。S202において、模擬電子の初期位置を設定する。次に、S203で所望の分布関数に応じて、乱数による初速度(初期運動エネルギー、初期運動方向)を決定する。…(中略)…Δt時間を決定し(S204)、」と記載されていることから明らかなように、引用例1におけるコンピュータシステムは、電子の初期位置及び初速度の設定及び微少時間Δtの設定を行うものである。
引用例1におけるコンピュータシステムは、電子の初期位置及び初速度の設定及び微少時間Δtの設定を行うものであるから、引用例1におけるコンピュータシステムの計算装置103に、電子の初期位置及び初速度の設定及び微少時間Δtの設定を行う設定手段が備えられていることは自明である。

上記(1の4)の【0063】の式(6)である2階微分方程式(A)
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
は、
d^(2)x e
??? = ??? E
dt^(2) m
と変形できることから明らかなように、2階微分方程式(A)の物理量xに関する2階微分量は
e
??? E
m
である。
また、上記(1の4)には「Δt時間後の模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)…(中略)…
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
によって求める(S205)。…(中略)…これを離散化し、差分方程式に落す必要がある。最も、簡単な場合として、オイラー差分を使うと式(7)…(中略)…
e
v_(new) = ??? E_(old) Δt + v_(old)
m

x_(new) = v_(new) Δt + x_(old)
となる。」と記載されていることから明らかなように、引用例1のコンピュータシステムは、式(7)に示される2つの式
e
v_(new) = ??? E_(old) Δt + v_(old)
m

x_(new) = v_(new) Δt + x_(old)
を実現して、微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)と微少時間Δt増分後の物理量x_(new)を算出するものである。
既に示したことから明らかなように、時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)は
e
??? E_(old)
m

と表せるものであり、この2階微分量(B)は式(7)に含まれるものであるから、結局のところ、引用例1のコンピュータシステムは、時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出し、算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出し、算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出するものである。
引用例1のコンピュータシステムは、時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出し、算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出し、算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出するものであるから、引用例1におけるコンピュータシステムの計算装置103に、時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出する2階微分量算出手段と、2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する1階微分量算出手段と、1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する物理量算出手段が備えられていることは自明である。

上記(1の5)に「このように求めた模擬電子のΔt後の位置が、領域外にあるか否かを判定する。つまり、模擬電子が境界を交差したか否かを見る。(S206)、もし領域内にあればs207に進む。つまり、模擬電子は、非境界部(真空中)を運動していることを意味し、境界部分に到達するまでは、真空中の与えられた静電場によって力を受けて運動する。」と記載されている。また、上記(1の7)で示したように、引用例1の図4のフローチャートは、S204とS205の各ステップの後にS206のステップに至り、S206においてNoの判断である場合に、S207の「t=t+Δt」のステップを経てS204のステップに戻るものである。さらに、上記(1の4)に「Δt時間後の模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)…(中略)…によって求める(S205)。…(中略)…これを離散化し、差分方程式に落す必要がある。最も、簡単な場合として、オイラー差分を使うと式(7)…(中略)…となる。」と記載されていることから、既に指摘した2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出することは引用例1の図4のフローチャートのステップS205にて行われるものである。これらのことから明らかなように、引用例1のコンピュータシステムは、時刻tに微少時間Δtを加算した変数値t+Δtを新たな時刻tとして設定し、設定された時刻tを用いて2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出させる制御を繰り返し行うものである。
既に示したように、引用例1のコンピュータシステムの計算装置103には2階微分量算出手段、1階微分量算出手段、および物理量算出手段が備えられていることが自明であることと、引用例1のコンピュータシステムは、時刻tに微少時間Δtを加算した変数値t+Δtを新たな時刻tとして設定し、設定された時刻tを用いて2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出させる制御を繰り返し行うものであることをあわせて考慮すれば、引用例1のコンピュータシステムの計算装置103に、時刻tに微少時間Δtを加算した変数値t+Δtを新たな時刻tとして設定し、2階微分量算出手段、1階微分量算出手段、および物理量算出手段に対してそれぞれ設定された時刻tを用いて2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段が備えられていることは自明である。

上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

解析対象である電子の運動態様を示す2階微分方程式(A)を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、計算装置103とモニター104を備えたコンピュータシステムであって、
計算装置103は、
電子の初期位置及び初速度の設定及び微少時間Δtの設定を行う設定手段と、
時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出する2階微分量算出手段と、
2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する1階微分量算出手段と、
1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する物理量算出手段と、
時刻tに微少時間Δtを加算した変数値t+Δtを新たな時刻tとして設定し、2階微分量算出手段、1階微分量算出手段、および物理量算出手段に対してそれぞれ設定された時刻tを用いて2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とするコンピュータシステム。
ただし、2階微分方程式(A)は
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
であり、
2階微分量(B)は
e
??? E_(old)
m
である。

5の2の1の3.引用例2に記載されている技術的事項
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、牧野淳一郎,”物理シミュレーションの手法と結果の検証”,Interface,CQ出版株式会社,2002年9月1日,第28巻,第9号,Pages:62-71(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(2の1)
「学生B:ところで,僕が書いた最初の間違ったプログラムですが,どうしてあれのほうが正しいオイラー法よりも良いんですか?
赤木:そうねえ,まあ偉そうにいうと,あれはたまたま「一次のシンプレクティック法」というものになっていたからうまくいくのね.ハミルトン力学系でハミルトニアンが分離可能なとき,まあ,普通は要するに運動方程式が,
d^(2)x
??? = -∇φ(x) ……(9)
dt^(2)
とかける場合ね.そういうときに,一次のシンプレクティック法っていうのは,たとえば,
v_(i+1) = v_(i) - Δt ∇φ(x_(i)) ……(10)
x_(i+1) = x_(i) + Δt v_(i+1) ……(11)

というふうに,最初に速度を更新して,更新した速度を使って位置を更新するというふうに位置と速度で違うやり方で計算する方法なわけ.多変数だったら,もちろん速度の全要素を更新してから位置を更新しないといけないわけね.
これがどうしてうまくいくかってことだけど,理屈はいろいろあるけど,詳しくは吉田さんの解説^(2))でも見て.とりあえずさっきのオイラー法みたいに行列で書いてみて.
学生B:あ,はい……って,x_(i+1)の式にv_(i+1)があるから行列にならないんですが…….
赤木:でも,v_(i+1)はx_(i)とv_(i)で書けているんだから,それを代入すればいいでしょ.」
(第65頁左欄下から22行目?同頁右欄第1行目)

(2の2)
「学生B:ということは,シンプレクティック法でも1次ではなくてもっと高次の方法を使えば,誤差を簡単に小さくできるわけですよね.そういう高次の方法っていうのはあるんですか?
赤木:もちろんいくらでもあるの.ここ15年くらいでいろいろ研究が進んだし,まず2次からいきましょう.2次はこういうもの.
v_(i+1/2) = v_(i) + Δt a(x_(i))/2 ……(15)
x_(i+1) = x_(i) + Δt v_(i+1/2) ……(16)
v_(i+1) =
v_(i+1/2) + Δt a(x_(i+1))/2 ……(17)

学生B:なんだか変な格好ですね.v_(i+1/2)ってのは中間で定義されるってことですか?でも,それを消去して,
x_(i+1) =
x_(i) + Δt v_(i) + Δt^(2) a(x_(i))/2 ……(18)
v_(i+1) =
v_(i) + Δt [a(x_(i))+a(x_(i+1))]/2 ……(19)
としても同じじゃないですか?」
(第66頁右欄第31行目?同頁同欄第44行目)

5の2の1の4.引用例2に記載されている常套手段の認定
上記(2の1)には「一次のシンプレクティック法っていうのは,たとえば,
v_(i+1) = v_(i) - Δt ∇φ(x_(i)) ……(10)
x_(i+1) = x_(i) + Δt v_(i+1) ……(11)

というふうに,最初に速度を更新して,更新した速度を使って位置を更新するというふうに位置と速度で違うやり方で計算する方法なわけ.」と記載されていることを受けて、同じく(2の1)に「行列で書いてみて.…(中略)…x_(i+1)の式にv_(i+1)があるから行列にならないんですが…….…(中略)…v_(i+1)はx_(i)とv_(i)で書けているんだから,それを代入すればいいでしょ.」と記載されている。
つまり、上記(2の1)には、上記(2の1)の(10)式と(11)式が与えられたときに、(11)式のv_(i+1)の部分に(10)式を代入して、(10)式と(11)式に共通して存在する速度項v_(i+1)を消去して、x_(i+1)をx_(i)とv_(i)とΔtと∇φ(x_(i))の式で表すように式変形することが示されている。

また、上記(2の2)には「2次はこういうもの.
v_(i+1/2) = v_(i) + Δt a(x_(i))/2 ……(15)
x_(i+1) = x_(i) + Δt v_(i+1/2) ……(16)
v_(i+1) =
v_(i+1/2) + Δt a(x_(i+1))/2 ……(17)

学生B:なんだか変な格好ですね.v_(i+1/2)ってのは中間で定義されるってことですか?でも,それを消去して,
x_(i+1) =
x_(i) + Δt v_(i) + Δt^(2) a(x_(i))/2 ……(18)
v_(i+1) =
v_(i) + Δt [a(x_(i))+a(x_(i+1))]/2 ……(19)
としても同じじゃないですか?」と記載されている。
つまり、上記(2の2)には、上記(2の2)の(15)式と(16)式が与えられたときに、(16)式のv_(i+1/2)の部分に(15)式を代入して、(15)式と(16)式に共通して存在する速度項v_(i+1/2)を消去して、(18)式のごとく、x_(i+1)をx_(i)とΔtとv_(i)とa(x_(i))の式で表すように式変形することが示されている。
また、上記(2の2)には、上記(2の2)の(15)式と(17)式が与えられたときに、(17)式のv_(i+1/2)の部分に(15)式を代入して、(15)式と(17)式に共通して存在する速度項v_(i+1/2)を消去して、(19)式のごとく、v_(i+1)をv_(i)とΔtとa(x_(i))とa(x_(i+1))の式で表すように式変形することが示されている。

引用例2の上記(2の1)や上記(2の2)で例示したような、複数の式が与えられたときに、複数の式に共通して存在する共通項に注目し、一つの式の共通項の部分に他の式を代入して、共通項を消去した式を導き出すことは、当業者が適宜行う常套手段である(以下、当該常套手段を「常套手段1」という。)

5の2の1の5.引用例3に記載されている技術的事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である、上田 顯,”計算物理入門 第11回”,数理科学,株式会社サイエンス社,2000年11月1日,第38巻,第11号,Pages:66-74(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。ただし、引用例3において「r」のうえに「・」が付されている文字については、便宜上「r^(・)」と表記している。

(3の1)
「8.5.2 1次のシンプレクティック差分法
1次のシンプレクティック差分法は時間発展演算子を式(8.45)で近似した式(8.49)である.力をF(=-H_(r))で表し,H_(p)-r^(・)で速度に置き換えると

r_(j)(t+τ) = r_(j)(t) + τ r^(・)_(j)(t),
j=1,2,…,N, (8.50a)

r^(・)_(j)(t+τ) = r^(・)_(k)(t)
τ
+ ???F_(k)([r(t+τ)^(N)]),
m
k=1,2,…,N (8.50b)
が得られる.これが1次のシンプレクティック差分式である。まず時刻t+τにおける粒子座標を求めて力を計算し,それを用いて速度を求める.オイラー法の差分式

r_(j)(t+τ) = r_(j)(t)
+ τ r^(・)_(j)(t), (8.51a)

r^(・)_(j)(t+τ) = r^(・)_(k)(t)
τ
+ ???F_(k)([r(t)^(N)]),
m
k=1,2,…,N (8.51b)
との相違は明らかであろう.シンプレクティック変換になっているため,差分式(8.50a,b)はオイラー差分式より精度がはるかによくなる。
…(中略)…
元の時間発展演算子exp(iτ(L_(A)+L_(B)))はL_(A)とL_(B)の交換に対して対称であるが,分解すると式(8.45)のほかに,時間発展演算子としてexp(iτL_(B))exp(iτL_(A))がある.これについても同様にすれば次の差分式が導かれる.

r^(・)_(j)(t+τ) = r^(・)_(j)(t)
τ
+ ???F_(j)([r(t)^(N)]),
m
j=1,2,…,N, (8.57a)

r_(j)(t+τ) = r_(k)(t) + τ r^(・)_(k)(t+τ),
k=1,2,…,N, (8.57b)
…(後略)…」
(第69頁第7行目?第71頁第14行目)

5の2の1の6.シンプレクティック法に関する技術常識の認定
上記(2の1)に「一次のシンプレクティック法っていうのは,たとえば,
v_(i+1) = v_(i) - Δt ∇φ(x_(i)) ……(10)
x_(i+1) = x_(i) + Δt v_(i+1) ……(11)

というふうに,最初に速度を更新して,更新した速度を使って位置を更新するというふうに位置と速度で違うやり方で計算する方法なわけ.」と記載されている。
つまり、上記(2の1)には、位置x_(i)と速度v_(i)が与えられたときに、微少時間Δt後の位置x_(i+1)と速度v_(i+1)を数値解法にて求める際に、先に速度を更新してv_(i+1)とし、その更新した速度v_(i+1)を用いて位置を更新してx_(i)とする手法を、シンプレクティック法と呼ぶことが記載されている。

また、上記(3の1)に「8.5.2 1次のシンプレクティック差分法
1次のシンプレクティック差分法は時間発展演算子を式(8.45)で近似した式(8.49)である.力をF(=H_(r))で表し,H_(p)-r^(・)で速度に置き換えると

r_(j)(t+τ) = r_(j)(t) + τ r^(・)_(j)(t),
j=1,2,…,N, (8.50a)

r^(・)_(j)(t+τ) = r^(・)_(k)(t)
τ
+ ???F_(k)([r(t+τ)^(N)]),
m
k=1,2,…,N (8.50b)
が得られる.これが1次のシンプレクティック差分式である。まず時刻t+τにおける粒子座標を求めて力を計算し,それを用いて速度を求める.
…(中略)…
元の時間発展演算子exp(iτ(L_(A)+L_(B)))はL_(A)とL_(B)の交換に対して対称であるが,分解すると式(8.45)のほかに,時間発展演算子としてexp(iτL_(B))exp(iτL_(A))がある.これについても同様にすれば次の差分式が導かれる.

r^(・)_(j)(t+τ) = r^(・)_(j)(t)
τ
+ ???F_(j)([r(t)^(N)]),
m
j=1,2,…,N, (8.57a)

r_(j)(t+τ) = r_(k)(t) + τ r^(・)_(k)(t+τ),
k=1,2,…,N, (8.57b)」
と記載されている。
つまり、上記(3の1)では、時刻tにおける位置r(t)と速度r^(・)(t)が与えられたときに、微少時間τ後の時刻t+τにおける位置r(t+τ)と速度r^(・)(t+τ)を数値解法にて求める際に、式(8.50a)と式(8.50b)のごとく、先に位置を更新してr(t+τ)とし、その更新した位置r(t+τ)を用いて速度を更新してr^(・)(t+τ)とする手法と、式(8.57a)と式(8.57b)のごとく、先に速度を更新して速度r^(・)(t+τ)とし、その更新した速度r^(・)(t+τ)を用いて位置を更新してr(t+τ)とする手法の両方が考えられることが示され、これらの2つの手法が「8.5.2 1次のシンプレクティック差分法」という同じ項目のなかに記載されている。

上記した引用例2及び引用例3に例示されるように、位置と速度が与えられたときに、微少時間後の位置と速度を数値解法にて求める際に、先に位置を更新して微少時間後の位置とし、その更新した位置を用いて速度を更新して微少時間後の速度とする手法のみならず、先に速度を更新して微少時間後の速度とし、その更新した速度を用いて位置を更新して微少時間後の位置とする手法も、シンプレクティック法の一種であることは、当業者にとっては技術常識である(以下、当該技術常識を「技術常識1」という。)。

5の2の2.補正後の請求項1に係る発明と引用発明の対比
補正後の請求項1に係る発明と引用発明とを比較する。

引用発明の「解析対象である電子の運動態様」は、補正後の請求項1に係る発明の「解析対象である各種の運動態様」に相当する。
引用発明の「2階微分方程式(A)」は、補正後の請求項1に係る発明の「2階微分方程式」に相当する。
引用発明の「計算装置103」は、補正後の請求項1に係る発明の「制御部」に相当する。
引用発明の「モニター104」は、補正後の請求項1に係る発明の「出力部」に相当する。
引用発明の「コンピュータシステム」は、補正後の請求項1に係る発明の「数値解析装置」に相当する。
引用発明の「電子の初期位置及び初速度」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記数値解析の解析微小変数量」に相当する。
引用発明の「時刻t」は、補正後の請求項1に係る発明の「解析開始変数値である基準変数値」に相当する。
引用発明の「時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)」は、補正後の請求項1に係る発明の「解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量」に相当する。
引用発明の「時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記解析微小変数量増分後の1階微分量」に相当する。
引用発明の「時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt増分後の物理量x_(new)」は、補正後の請求項1に係る発明の「前記解析微小変数量増分後の物理量」に相当する。
引用発明の「新たな時刻t」は、補正後の請求項1に係る発明の「新たな基準変数値」に相当する。

すると、補正後の請求項1に係る発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、制御部と出力部を備えた数値解析装置であって、
前記制御部は、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値解析装置。

一方で、両者は次の点で相違する。

<相違点1>
乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段における「乗算した値」について、補正後の請求項1に係る発明では「前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し」た値と、「前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し」た値であるのに対し、引用発明では「1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し」た値である点。

<相違点2>
補正後の請求項1に係る発明は、「前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記出力部に出力する出力処理手段」を制御部に備えるものであり、「前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理する」ものであるのに対し、引用発明に対応する引用例1にはそのことが記載されていない点。

5の2の3.補正後の請求項1に係る発明と引用発明の相違点に対する判断
上記した相違点1及び2について検討する。

5の2の3の1.相違点1について
常套手段1として既に示したように、複数の式が与えられたときに、複数の式に共通して存在する共通項に注目し、一つの式の共通項の部分に他の式を代入して、共通項を消去した式を導き出すことは、当業者が適宜行う常套手段である。

そして、引用発明により行われる算出処理としては「2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する」ことと、「1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する」ことが含まれる。「2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)」を「a_(old)」と表記することにすると、引用発明により行われる上記した2つの算出処理は下記の2つの式で表せることになる。

v_(new) = a_(old) Δt + v_(old) ……(甲)
x_(new) = v_(new) Δt + x_(old) ……(乙)

ここで、共通項として「v_(new)」を有する2つの式(甲)(乙)に常套手段1を適用し、式(乙)の「v_(new)」の部分に式(甲)を代入して、下記の式(丙)を導き出し、

x_(new) =
(a_(old) Δt + v_(old)) Δt + x_(old)
x_(new) =
a_(old) Δt^(2) + v_(old) Δt + x_(old)
……(丙)

この導き出した式(丙)に基づいて、乗算した値と時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)(基準変数値における2階微分方程式の物理量)とを加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)(解析微小変数量増分後の物理量)として算出する物理量算出手段における「乗算した値」として、2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)a_(old)に微少時間Δtの2乗値を乗算した値と、時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)に微少時間Δtを乗算した値を用いるように、物理量算出手段の設計変更を行うことに特段の困難性はない。
よって、上記相違点1は格別のものではない。

5の2の3の2.相違点2について
引用発明に係るコンピュータシステムは「モニター104」を有するものであり、引用発明に対応する引用例1の上記(1の6)には「計算の過程における軌道…(中略)…をモニター6に出力した」と記載されていることからも、引用発明により算出されたものを「モニター104」に出力することが意図されていることは明らかである。
そして、物理法則に基づく運動態様を微少時間Δt刻みでコンピュータシステムを用いてシミュレーションする場合に、物理量を算出した時刻t毎にその物理量をグラフ表示することは、物理シミュレーションの分野の当業者であれば適宜なし得ることである。
よって、引用発明に係るコンピュータシステムにおいて、物理量算出手段によって算出された各時刻t毎の物理量x_(new)を、微少時間Δtの増分に対応させてモニター104に出力する出力処理手段を計算装置103に備えるようにし、出力処理手段は、微少時間Δtの増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各時刻t毎の物理量x_(new)をグラフ化処理するようにすることに、何ら困難性はない。
よって、上記相違点2は格別のものではない。

5の2の3の3.特許法第29条第2項の検討の小括
上記5の2の3の1.及び5の2の3の2.にて示したように、上記相違点1及び2は格別のものではない。
また、補正後の請求項1に係る発明が有する作用効果は、(引用例1に記載された)引用発明から当業者が予測できた範囲内のものである。
よって、補正後の請求項1に係る発明は、(引用例1に記載された)引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
補正後の請求項8に係る発明についても同様である。

5の3.請求人の主張に対する検討等
5の3の1.請求人(出願人)の平成22年3月12日付け意見書による主張について
請求人(出願人)は平成22年3月12日付け意見書において、引用例1に記載されている技術事項について下記の主張をしている。

「引用文献1に記載された動解析処理は、その段落0065に記載されているように、シンプレクティック数値解法等の運動の保存性に立脚した計算方法を用いている。そして、シンプレクティック数値解法によるエネルギー保存を守るように、時間間隔幅を可変にするようにしているに過ぎない。
すなわち、引用文献1には、式(7)の提示があるものの、本願発明における演算制御手段のように、式(7)、および式(6)における2階微分係数を陽関数として表したもの(本願明細書の式(1)に相当)を直接用いて演算するものではない。
したがって、本願発明と引用文献1に記載されたものとは、実質的に同一ではない。 ここで、引用文献1の段落0071には、シンプレクティック数値解法として「数理科学No.384JUNE1995年p37-p46,吉田春夫」を提示しているが、この文献では、上述した式(7)と異なる。
具体的に、吉田氏の文献による演算では、
v(t+Δt)=v(t)+α(t+1)・Δt
x(t+Δt)=x(t)+v(t)・Δt
となり、本願に示した、
v(t+Δt)=v(t)+α(t)・Δt
x(t+Δt)=x(t)+v(t+Δt)・Δt
とは異なるものである。
すなわち、引用文献1には式(7)が提示されているものの、本願発明が示す式(1)?(3)を用いた前進オイラー法と後退オイラー法とを組み合わせた、いわばミックスオイラー法による繰り返し演算を行うものではなく、本願発明が示す技術思想が適用できないという前提のもとに記載されている。すなわち、オイラー法を用いることは困難であって適用することができないという前提で記載されている。
そして、このことは、引用文献1のものでは、逆に、式(6)のような単純な運動方程式に、複雑なシンプレクティック法を誤って適用していると言わざるを得ない。」

しかしながら、技術常識1として既に示したように、位置と速度が与えられたときに、微少時間後の位置と速度を数値解法にて求める際に、先に位置を更新して微少時間後の位置とし、その更新した位置を用いて速度を更新して微少時間後の速度とする手法のみならず、先に速度を更新して微少時間後の速度とし、その更新した速度を用いて位置を更新して微少時間後の位置とする手法も、シンプレクティック法の一種であることは、当業者にとっては技術常識である。
そのため、上記(1の4)に「Δt時間後の模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)…(中略)…によって求める(S205)。…(中略)…これを離散化し、差分方程式に落す必要がある。最も、簡単な場合として、オイラー差分を使うと式(7)…(中略)…
e
v_(new) = ??? E_(old) Δt + v_(old)
m

x_(new) = v_(new) Δt + x_(old)
となる。」という記載の後に、「実際に、実施形態で使用しているのはシンプレクティック数値解法等の運動の保存性に立脚した計算方法を取っているが、式(7)に現れるような、時間間隔の誤差の問題は同様に起きる。」という記載があるからといって、S205を実施形態において実現する際に、式(7)が示す、先に速度を更新して微少時間Δt後の速度v_(new)とし、その更新した速度v_(new)を用いて位置を更新して微少時間Δt後の位置x_(new)とする手法が、先に位置を更新して微少時間後の位置とし、その更新した位置を用いて速度を更新して微少時間後の速度とする手法に変更されるものと解するのは妥当なものではなく、むしろ上記(1の4)の式(7)の記載のまま、先に速度を更新して微少時間Δt後の速度v_(new)とし、その更新した速度v_(new)を用いて位置を更新して微少時間Δt後の位置x_(new)とする手法が、S205を実施形態において実現する際にそのまま採用されると解することが自然な解釈である。
よって、請求人(出願人)の同意見書による上記主張は採用することはできない。

仮に、引用例1の上記(1の4)のS205を実施形態において実現する際には、先に位置を更新して微少時間後の位置とし、その更新した位置を用いて速度を更新して微少時間後の速度とする手法を用いるものであるという趣旨の請求人(出願人)の同意見書による上記主張を採用するとして、その点において、補正後の請求項1に係る発明(そして、後述の本願発明(補正前の請求項1に係る発明))と引用発明の間に相違点が存在するとしても、引用例1の上記(1の4)には式(7)として先に速度を更新して微少時間Δt後の速度v_(new)とし、その更新した速度v_(new)を用いて位置を更新して微少時間Δt後の位置x_(new)とする手法が示されており、かつ、技術常識1として示したように、位置と速度が与えられたときに、微少時間後の位置と速度を数値解法にて求める際に、先に位置を更新して微少時間後の位置とし、その更新した位置を用いて速度を更新して微少時間後の速度とする手法のみならず、先に速度を更新して微少時間後の速度とし、その更新した速度を用いて位置を更新して微少時間後の位置とする手法も、シンプレクティック法の一種であることは、当業者にとっては技術常識であるから、引用例1の上記(1の4)のS205を実施形態において実現する際にも、式(7)の記載のまま、先に速度を更新して微少時間Δt後の速度v_(new)とし、その更新した速度v_(new)を用いて位置を更新して微少時間Δt後の位置x_(new)とする手法をそのまま採用するようにすることに、特段の困難性はない。

5の3の2.引用例1の式(7)を実現するための算出手段について
仮に、上記(1の4)の式(7)の第1の式に含まれる項
e
??? E_(old) Δt
m
において、例えば、eとmとE_(old) の間の演算より先にeとmとE_(old)のいずれかとΔtとの演算を先に行うような、いわば人為的に不自然な演算順序を想定することにより、引用例1に式(6)及び式(7)が記載され、引用例1のコンピュータシステムが式(7)を実現するものであることからは、引用例1のコンピュータシステムの計算装置103に「時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出する2階微分量算出手段」と、「2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する1階微分量算出手段」と、「1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する物理量算出手段」が備えられていることが自明であるとまでは言えないとして、その点において、補正後の請求項1に係る発明(そして、後述の本願発明(補正前の請求項1に係る発明))と引用発明の間に相違点が存在するとしても、引用例1に式(6)及び式(7)が記載され、引用例1のコンピュータシステムが式(7)を実現するものであることが引用例1に記載されている以上、当業者にとって、引用例1のコンピュータシステムの計算装置103に、式(7)を実現するもっとも自然な算出手段である、「時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出する2階微分量算出手段」と、「2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する1階微分量算出手段」と、「1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する物理量算出手段」を備えるようにすることに、特段の困難性はない。

5の4.独立特許要件の小括
上記「5の1.特許法第29条第1項柱書の検討」で示したように、補正後の請求項1に記載されたものは特許法第2条第1項で定義される「発明」ではないから、補正後の請求項1に記載されたものは同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
また、仮に補正後の請求項1に記載されたものが特許法第2条第1項で定義される「発明」であるとしても、上記「5の2.特許法第29条第2項の検討」で示したように、補正後の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。つまり、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、補正後の請求項1に関して独立特許要件に違反するものである。
なお、補正後の請求項8についても同様である。

6.補正却下の決定のむすび
上記「3.補正前の請求項14が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項32が補正後の請求項8に対応するとした場合の目的要件の検討」及び「4.補正前の請求項10が補正後の請求項1に対応し、補正前の請求項28が補正後の請求項8に対応するとした場合の目的要件の検討」で示したように、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記「5.独立特許要件の検討」で示したように、仮に本件補正が限定的減縮の目的を有するとしても、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明の認定
平成22年8月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、同年3月12日付けの手続補正により補正された、本願の特許請求の範囲の請求項1(補正前の請求項1)に記載されたとおりの次のものと認められる。

「解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析装置であって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値解析装置。」

第4.特許法第29条第1項柱書の検討
上記「第2.補正却下の決定」の「5の1.特許法第29条第1項柱書の検討」のうち、「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」、「5の1の2.補正後の請求項1における数値解析対象に関する検討」、「5の1の3.補正後の請求項1において形式上複数の手段が存在することに関する検討」及び「5の1の5.特許法第29条第1項柱書の検討に関する小括」で指摘した点は、(本願発明に対応する)補正前の請求項1についても同様である。
(ただし、「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」における実施の形態1である式(1)、式(2)、式(3)が(本願発明に対応する)補正前の請求項1に関するものであり、「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」における実施の形態2である式(1)、式(2)、式(10)が補正後の請求項1に関するものであるので、(本願発明に対応する)補正前の請求項1に関しては、「5の1の1.本願明細書等において示されている、解決しようとする課題と課題解決手段」、「5の1の2.補正後の請求項1における数値解析対象に関する検討」、「5の1の3.補正後の請求項1において形式上複数の手段が存在することに関する検討」及び「5の1の5.特許法第29条第1項柱書の検討に関する小括」を適宜読み替える必要がある。)
よって、(本願発明に対応する)補正前の請求項1に記載されたものが、特許法第2条第1項に規定される「発明」、すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」に該当するといえる事情があるとはいえないので、(本願発明に対応する)補正前の請求項1に記載されたものは同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
補正前の請求項19についても同様である。

第5.特許法第29条第1項第3号の検討
上記「第4.特許法第29条第1項柱書の検討」で示したように、(本願発明に対応する)補正前の請求項1に記載されたものは特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当せず、(本願発明に対応する)補正前の請求項1に記載されたものは同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。しかしながら、仮に補正前の請求項1に記載されたものが特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当するとして、補正前の請求項1に係る発明、すなわち、本願発明が、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるか否か、つまり、本願発明が、同法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか否かを検討する。

1.先行技術文献に記載されている発明の認定
原審の拒絶理由通知において引用された引用例1には、図面とともに、上記「第2.補正却下の決定」の「5の2の1の1.引用例1に記載されている技術的事項」にて既に指摘した技術事項が記載されている。また、引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、上記「第2.補正却下の決定」の「5の2の1の2.引用発明の認定」にて認定したとおりの下記に再掲する引用発明が記載されていると認められる。

解析対象である電子の運動態様を示す2階微分方程式(A)を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う、計算装置103とモニター104を備えたコンピュータシステムであって、
計算装置103は、
電子の初期位置及び初速度の設定及び微少時間Δtの設定を行う設定手段と、
時刻tにおける2階微分方程式(A)の2階微分量(B)を算出する2階微分量算出手段と、
2階微分量算出手段が算出した2階微分量(B)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)として算出する1階微分量算出手段と、
1階微分量算出手段が算出した1階微分量v_(new)に微少時間Δtを乗算し、この乗算した値に時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)を加算し、この加算した値を微少時間Δt増分後の物理量x_(new)として算出する物理量算出手段と、
時刻tに微少時間Δtを加算した変数値t+Δtを新たな時刻tとして設定し、2階微分量算出手段、1階微分量算出手段、および物理量算出手段に対してそれぞれ設定された時刻tを用いて2階微分量(B)、1階微分量v_(new)、および物理量x_(new)を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とするコンピュータシステム。
ただし、2階微分方程式(A)は
d^(2)x
m ??? = eE
dt^(2)
であり、
2階微分量(B)は
e
??? E_(old)
m
である。

2.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「解析対象である電子の運動態様」は、本願発明の「解析対象である各種の運動態様」に相当する。
引用発明の「2階微分方程式(A)」は、本願発明の「2階微分方程式」に相当する。
引用発明の「電子の初期位置及び初速度」は、本願発明の「前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt」は、本願発明の「前記数値解析の解析微小変数量」に相当する。
引用発明の「時刻t」は、本願発明の「解析開始変数値である基準変数値」に相当する。
引用発明の「2階微分方程式(A)の2階微分量(B)」は、本願発明の「前記2階微分方程式の2階微分量」に相当する。
引用発明の「時刻tにおける2階微分方程式(A)の1階微分量v_(old)」は、本願発明の「前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt増分後の1階微分量v_(new)」は、本願発明の「前記解析微小変数量増分後の1階微分量」に相当する。
引用発明の「時刻tにおける2階微分方程式(A)の物理量x_(old)」は、本願発明の「前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量」に相当する。
引用発明の「微少時間Δt増分後の物理量x_(new)」は、本願発明の「前記解析微小変数量増分後の物理量」に相当する。
引用発明の「新たな時刻t」は、本願発明の「新たな基準変数値」に相当する。
引用発明の「コンピュータシステム」は、本願発明の「数値解析装置」に相当する。

すると、本願発明と引用発明は、次の点で一致し、両者には相違点はない。

<一致点>
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を行う数値解析装置であって、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する2階微分量算出手段と、
前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、
前記1階微分量算出手段が算出した1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値解析装置。

よって、本願発明は引用例1に記載された発明である。
つまり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
なお、本願の請求項19に係る発明についても同様である。

第6.特許法第29条第2項の検討
仮に、上記「第2.補正却下の決定」の「5の3の1.請求人(出願人)の平成22年3月12日付け意見書による主張について」または「5の3の2.引用例1の式(7)を実現するための算出手段について」にて指摘した点が、本願発明と引用発明の相違点であるとしても、上記「第2.補正却下の決定」の「5の3の1.請求人(出願人)の平成22年3月12日付け意見書による主張について」及び「5の3の2.引用例1の式(7)を実現するための算出手段について」で指摘したとおり、それらの相違点は格別のものではない。
また、本願発明が有する作用効果は、(引用例1に記載された)引用発明から当業者が予測できた範囲内のものである。
よって、仮に本願発明と引用発明の間に相違点が存在するとしても、本願発明は、(引用例1に記載された)引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
つまり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
なお、本願の請求項19に係る発明についても同様である。

第7.特許法第37条の検討
上記「第5.特許法第29条第1項第3号の検討」で示したように、本願発明及び本願の請求項19に係る発明は、本願の優先権主張の日前に既に公知であり、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、本願発明及び本願の請求項19に係る発明には、特許法第37条が委任する経済産業省令である特許法施行規則第25条の8で定める特別な技術的特徴はない。それゆえ、本願発明及び本願の請求項19に係る発明と、本願の請求項10乃至18、28乃至36に係る発明との間に、同一又は対応する特別な技術的特徴はない。よって、本願発明及び本願の請求項19に係る発明と、本願の請求項10乃至18、28乃至36に係る発明とは、特許法第37条が委任する経済産業省令である特許法施行規則第25条の8で定める技術的関係を有しているとはいえないから、本願は特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

第8.むすび
したがって、本願の請求項1及び19に係る発明は特許法第2条第1項で定義される「発明」ではないから、本願の請求項1及び19に係る発明は同法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
また、仮に本願の請求項1及び19に係る発明が特許法第2条第1項で定義される「発明」であるとしても、本願の請求項1及び19に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、同法第29条第1項第3号に該当し、他の請求項について検討をするまでもなく、特許を受けることができない。
さらに、仮に本願の請求項1及び19に係る発明と、前記刊行物に記載された発明の間に、相違点が存在するとしても、本願の請求項1及び19に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討をするまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
加えて、本願の請求項1及び19に係る発明と、本願の請求項10乃至18、及び、28乃至36に係る発明とは、特許法第37条が委任する経済産業省令である特許法施行規則第25条の8で定める技術的関係を有しているとはいえないから、本願は同法第37条に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。

付記.請求人の平成23年5月27日付け回答書における補正案について
請求人は独立請求項について下記の補正案を提示している。

「A.数値解析装置に関する独立項の補正案
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を表計算プログラムによって行う、制御部と出力部と前記表計算プログラムを格納した記憶部とを備えた数値解析装置であって、(補正の根拠:出願当初の請求項9、出願当初の段落0031、0042)
前記制御部は、
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手段と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を、前記出力部に予め出力されている複数のセルを行列状に含む前記表計算プログラムの表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量および前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を用いて算出する2階微分量算出手段と、(補正の根拠:出願当初の段落0037、段落0039、段落0042、段落0047、出願当初の図8、図9)
前記表示画面のセルに表示されている前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手段と、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記表示画面のセルに表示されている前記2階微分量算出手段が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手段と、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手段、前記1階微分量算出手段、および前記物理量算出手段に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手段と、
前記2階微分量算出手段によって算出された各基準変数値毎の2階微分量、前記1階微分量算出手段によって算出された各基準変数値毎の1階微分量、前記物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量、および前記演算制御手段によって設定された各基準変数値を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記表示画面のセルに出力する出力処理手段と、(補正の根拠:出願当初の段落0032、段落0042、出願当初の図8、図9)
を備え、
前記出力処理手段は、前記解析開始変数値である基準変数値および前記初期条件を或る行のセルに表示する第一の処理、前記2階微分量算出手段によって算出された基準変数値における2階微分量、前記1階微分量算出手段によって算出された解析微小変数量増分後の1階微分量、および前記物理量算出手段によって算出された解析微小変数量増分後の物理量を前記或る行のセルとは異なる前記或る行の別のセルに表示する第二の処理、前記演算制御手段によって設定された基準変数値を前記或る行とは異なる別の行のセルに表示する第三の処理、および前記或る行の別のセルに表示されている解析微小変数量増分後の1階微分量および解析微小変数量増分後の物理量をコピーし、コピーした1階微分量および物理量を前記別の行のセルとは異なる前記別の行の別のセルに表示する第四の処理を行い、そして、前記第二の処理、前記第三の処理、および前記第四の処理を繰り返し行い、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記2階微分量算出手段は、前記演算制御手段によって設定された基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する際、前記別の行の別のセルに表示されている1階微分量および物理量を用い、(補正の根拠:出願当初の段落0042、段落0045、段落0056、出願当初の図8、図9)
前記出力処理手段は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手段によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理すること、
を特徴とする数値解析装置。

B.数値解析プログラムに関する独立項の補正案
解析対象である各種の運動態様を示す2階微分方程式を数値解析して該運動態様の動解析処理を表計算プログラムによって行う、制御部と出力部と前記表計算プログラムを格納した記憶部とを備えた数値解析装置に実行させるための数値解析プログラムであって、(補正の根拠:出願当初の請求項9、出願当初の段落0031、0042)
前記2階微分方程式の初期条件を含むパラメータ設定および前記数値解析の解析微小変数量を設定する設定手順と、
解析開始変数値である基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を、前記出力部に予め出力されている複数のセルを行列状に含む前記表計算プログラムの表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量および前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量を用いて算出する2階微分量算出手順と、(補正の根拠:出願当初の段落0037、段落0039、段落0042、段落0047、出願当初の図8、図9)
前記表示画面のセルに表示されている前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、この乗算した値に前記表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量を加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の1階微分量として算出する1階微分量算出手順と、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記表示画面のセルに表示されている前記2階微分量算出手順が算出した2階微分量に前記解析微小変数量の2乗値を乗算し、前記表示画面のセルに表示されている前記基準変数値における前記2階微分方程式の1階微分量に前記解析微小変数量を乗算し、これらの乗算した値と前記基準変数値における前記2階微分方程式の物理量とを加算し、この加算した値を前記解析微小変数量増分後の物理量として算出する物理量算出手順と、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記基準変数値に前記解析微小変数量を加算した変数値を新たな基準変数値として設定し、2階微分量算出手順、前記1階微分量算出手順、および前記物理量算出手順に対してそれぞれ設定された基準変数値を用いて前記2階微分量、前記1階微分量、および前記物理量を算出させる制御を繰り返し行う演算制御手順と、
前記2階微分量算出手順によって算出された各基準変数値毎の2階微分量、前記1階微分量算出手順によって算出された各基準変数値毎の1階微分量、前記物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量、および前記演算制御手順によって設定された各基準変数値を、前記解析微小変数量の増分に対応させて前記表示画面のセルに出力する出力処理手順と、(補正の根拠:出願当初の段落0032、段落0042、出願当初の図8、図9)
を前記制御部に実行させ、
前記出力処理手順は、前記解析開始変数値である基準変数値および前記初期条件を或る行のセルに表示する第一の処理、前記2階微分量算出手順によって算出された基準変数値における2階微分量、前記1階微分量算出手順によって算出された解析微小変数量増分後の1階微分量、および前記物理量算出手順によって算出された解析微小変数量増分後の物理量を前記或る行のセルとは異なる前記或る行の別のセルに表示する第二の処理、前記演算制御手順によって設定された基準変数値を前記或る行とは異なる別の行のセルに表示する第三の処理、および前記或る行の別のセルに表示されている解析微小変数量増分後の1階微分量および解析微小変数量増分後の物理量をコピーし、コピーした1階微分量および物理量を前記別の行のセルとは異なる前記別の行の別のセルに表示する第四の処理を行い、そして、前記第二の処理、前記第三の処理、および前記第四の処理を繰り返し行い、(補正の根拠:出願当初の段落0042、出願当初の図8、図9)
前記2階微分量算出手順は、前記演算制御手順によって設定された基準変数値における前記2階微分方程式の2階微分量を算出する際、前記別の行の別のセルに表示されている1階微分量および物理量を用い、(補正の根拠:出願当初の段落0042、段落0045、段落0056、出願当初の図8、図9)
前記出力処理手順は、前記解析微小変数量の増分に対応する、物理量算出手順によって算出された各基準変数値毎の物理量をグラフ化処理すること、
を特徴とする数値解析プログラム。 」

上記補正案は、数値解析を表計算プログラムを用いて行うことに関して特定したものである。しかしながら、例えば、本願の発明者が著者となっている、園博昭,「Excelによる数値解析」,初版,培風館,2008年5月13日(初版第2刷2009年10月5日)においても参考文献のひとつとして挙げられている、本願の優先権主張の日前の刊行物である、趙華安,「Excelによる数値計算法」,初版,共立出版,2000年2月20日に、オイラー法等の数値解析に市販の表計算プログラムを用いることが記載されていることをはじめとして、本願の優先権主張の日前において、数値解析を市販の表計算プログラムを用いて行うことは当業者には周知である。また、上記補正案に示される、数値解析のために表計算プログラムを用いる手法は、表計算プログラムの利用形態としては通常の用い方であるに過ぎない。そのため、上記補正案のように、数値解析を表計算プログラムを用いて行うことに関して特定したとしても、上記補正案における各請求項に係る発明は、依然として、(引用例1に記載された)引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。つまり、上記補正案に基づく請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2012-02-07 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-29 
出願番号 特願2007-510424(P2007-510424)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 1- Z (G06F)
P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F)
P 1 8・ 65- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北元 健太  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清木 泰
石井 茂和
発明の名称 数値解析装置および数値解析プログラム  
代理人 酒井 宏明  

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