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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1255729
審判番号 不服2011-12795  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-15 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2004-341503「回胴の駆動制御装置及び遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-199045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年11月26日(優先日、平成15年12月15日)の出願であって、平成23年3月11日付け(発送:3月22日)で拒絶査定され、これに対し、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされ、当審において、同年9月6日付け(発送:9月13日)で審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、同年11月9日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成23年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年6月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?8に記載された
「【請求項1】 周面にそれぞれ複数の情報が表示された複数の回胴を、始動操作により駆動手段の駆動力でそれぞれ駆動させ、各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作によって停止したときの停止態様に基づいて、情報を報知するための回胴の駆動制御装置であって、
前記各回胴に設けられ、前記各回胴における回胴の位置を検知する位置検出センサと、
前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御パターン、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御パターン、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御パターン、のそれぞれのパターンに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、
この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段と、
この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後に前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御パターンにより前記駆動手段を制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段と、
を有する回胴の駆動制御装置。
【請求項2】
前記位置検出センサは、前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降に、前記各回胴の1周回の少なくとも1箇所でそれぞれの回胴の位置を検出するものであり、
前記計時手段は、前記位置検出センサによる前記回胴の位置検出終了時を計時スタート時期とすることを特徴とする請求項1記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項3】
前記位置検出センサが、前記回胴が1周回する間に位置検出を完了させ、その周回時間が、前記回胴の加速駆動制御パターンによる駆動制御終了時期、並びに前記回胴の定常回転時の速度に依存することを特徴とする請求項2記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項4】
前記信号生成手段で生成された信号に基づいて、前記停止操作手段が有効であることを報知する報知手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項5】
遊技媒体から所定数の遊技媒体を投入することで遊技可能状態とし、始動操作することで遊技開始となって周面にそれぞれ複数の情報が表示された複数の回胴の駆動が開始され、かつ投入数に応じた役抽選が実行され、当該役抽選が当選したか否かを前記各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作による図柄の表示形態によって報知し、当該内部当選が報知された場合に当該当選役に対応した配当を行う遊技機であって、
前記各回胴に設けられ、前記各回胴における回胴の位置を検知する位置検出センサと、
前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御パターン、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御パターン、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御パターン、のそれぞれのパターンに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、
この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段と、
この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後に前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御パターンにより前記駆動手段を制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段と、
を有する回胴の駆動制御装置。
【請求項6】
前記位置検出センサは、前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降に、前記各回胴の1周回の少なくとも1箇所でそれぞれの回胴の位置を検出するものであり、
前記計時手段は、前記位置検出センサによる前記回胴の位置検出終了時を計時スタート時期とすることを特徴とする請求項5記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項7】
前記位置検出センサが、前記回胴が1周回する間に位置検出を完了させ、その周回時間が、前記回胴の加速駆動制御パターンによる駆動制御終了時期、並びに前記回胴の定常回転時の速度に依存することを特徴とする請求項6記載の遊技機。
【請求項8】
前記信号生成手段で生成された信号に基づいて、前記停止操作手段が有効であることを報知する報知手段をさらに有することを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1項記載の遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】 周面にそれぞれ複数の情報が表示された複数の回胴を、始動操作により駆動手段の駆動力でそれぞれ駆動させ、各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作によって停止したときの停止態様に基づいて、情報を報知するための回胴の駆動制御装置であって、
前記各回胴に設けられ、前記各回胴の1回転に1回の信号を生成することにより、各回胴の停止制御時の基準となる位置を検知する位置検出センサと、
前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御パターン、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御パターン、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御パターン、のそれぞれのパターンに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、
この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段と、
この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後に前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御パターンにより前記駆動手段を制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段と、
を有する回胴の駆動制御装置。
【請求項2】
前記位置検出センサは、前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降に、前記各回胴の1周回の少なくとも1箇所でそれぞれの回胴の位置を検出するものであり、
前記計時手段は、前記位置検出センサによる前記回胴の位置検出終了時を計時スタート時期とすることを特徴とする請求項1記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項3】
前記位置検出センサが、前記回胴が1周回する間に位置検出を完了させ、その周回時間が、前記回胴の加速駆動制御パターンによる駆動制御終了時期、並びに前記回胴の定常回転時の速度に依存することを特徴とする請求項2記載の回胴の駆動制御装置。
【請求項4】
前記信号生成手段で生成された信号に基づいて、前記停止操作手段が有効であることを報知する報知手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の回胴の駆動制御装置。」
という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

(2)補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

(a)補正前の請求項1における「前記各回胴における回胴の位置を検知する位置検出センサと、」という事項を、
「前記各回胴の1回転に1回の信号を生成することにより、各回胴の停止制御時の基準となる位置を検知する位置検出センサと、」とする補正。

(b)補正前の請求項5?8を削除する補正。

上記補正事項についてそれぞれ検討する。

補正事項(a)については、「位置検出センサ」が検出する「各回胴における回胴の位置」を具体的に特定するものであるから、限定的減縮を目的とするものに該当する。

補正事項(b)については、請求項の削除を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮及び同項1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成22年7月23日付け拒絶理由通知)において引用文献2として引用された特開2003-199875号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 遊技開始手段の操作により当選役を決定する当選役決定手段と複数のリールごとに設けられたリール停止操作手段の操作とに応答し、前記当選役決定手段で決められた当選役に基づく図柄の組み合わせが表示窓で停止しやすいようにそれぞれ対応するリールの停止制御を行うリール停止制御手段とを備えた遊技機において、
所定の起点時から前記リール停止操作手段の操作までの経過時間を計測する計測手段と、前記経過時間が基準時間以内か否かを判定する判定手段とを設け、
前記リール停止操作手段の少なくとも一つの操作タイミングが前記基準時間以内であると判定されたときには、前記リール停止制御手段による停止制御を変更するようにしたことを特徴とする遊技機。」
(イ)「【0016】
【発明の実施の形態】図1に、本発明を用いたスロットマシンの外観を示す。筐体3の前面扉4に4個の図柄表示窓5a?5dが設けられ、各々の表示窓の奥に第1リール6a,第2リール6b,第3リール6c及び、サブリール7が回転自在に組み込まれている。周知のように、第1?第3リール6a?6cの外周には様々な図柄が一定ピッチで配列され、リールが停止した状態では図柄表示窓5a?5cを通して1リール当たり3個の図柄が観察される。これにより、各リールの図柄を一個ずつ組み合わせた直線状の入賞ラインが横3本斜め2本の合計5本が設定される。そして、ゲームの開始に先立ってメダル投入口8から1枚のメダルを投入したときには中央横一本の入賞ラインが有効化され、2枚では横3本、3枚ではさらに斜め2本を加えた5本の入賞ラインが有効化される。
【0017】右端のサブリール5dは、ゲーム開始用のスタートレバー10を操作したときに、他のリール6a?6cとともに回転を始め、その後の電子抽選で例えばBBゲームモードに移行させるBBフラグが抽選されたときに「7」の図柄を出す位置となるように停止制御される。また、サブリール5dは、後述する当選役決定部23でハズレ役以外の当選役が当選した場合に回転し、第1リール6aの駆動制御の変更の目安となる基準時間TSを表示する。なお、基準時間TSの表示をサブリール5dで行ったが、液晶表示(LCD)パネル等を設けて、基準時間TSの表示を行うようにしてもよい。」
(ウ)「【0019】図2に、上記スロットマシン2の電気的構成の機能ブロック図を示す。このスロットマシン2は、CPU20によってスロットマシン2の基本的な動作を制御している。このCPU20には、制御部20aの他に、電子抽選器22、当選役決定部23、経過時間測定部24、制御切換判定部25等が設けられている。電子抽選器22及び当選役決定部23は、スタートレバー10の操作によるゲームの開始時に、制御部20aからのゲームスタート信号を受けて、そのゲームでの当選役を決定する。このように、制御部20a及び電子抽選器22は当選役決定手段として機能する。」
(エ)「【0021】経過時間計測部24は、所定の起点時となるスタートレバー10の操作に応じて開始されたゲームの経過時間を計測するために設けられている。なお、この経過時間測定部24での計測は、制御部20aにフィードバックされた当選役信号がハズレ役以外の当選役のいずれかの場合にのみ行われる。そして、第1ストップボタン9aが押圧されると、その押圧信号を受けて、経過時間TLが制御切換判定部25に出力される。なお、所定の起点時はスタートレバー10の操作時に限定する必要はなく、例えばスタートレバーの操作後に回転されるリールの回転速度が定常速度に達した場合に、経過時間の計測開始となるようにしてもよい。」
(オ)「【0024】スタート信号発生部30は1?3枚のメダルが投入された後、スタートレバー10が操作されたときに、ゲームスタート信号を制御部20aに入力する。スタート信号が入力されるごとに、ゲーム数カウンタ31のカウント値が「1」だけインクリメントされる。したがって、ゲーム数カウンタ31のカウント値を参照することによって、このスロットマシン2で実行されたゲームの回数を識別することができる。
【0025】ゲームスタート信号を受けて、CPU20の制御部20aはメモリ28のROM領域に格納されたゲーム実行プログラムに基づいて第1?第3リール6a?6c及びサブリール7を回転させるとともにゲームの処理を開始する。各リールの駆動及び停止制御は、リール駆動コントローラ35によって行われる。それぞれのリールは個別のステッピングモータ36a?36dの駆動軸に固着され、各ステッピングモータ36a?36cの駆動を制御することにより各リールの制御が行われる。
【0026】ステッピングモータ36a?36dは供給された駆動パルスの個数に応じた回転角で回転するから、制御部20aにより駆動パルスの供給個数を制御することによって第1?第3リール6a?6c及び、サブリール7の回転角を制御することができ、また駆動パルスの供給を絶つことによりリールの停止位置を決めることができる。また、各リールには、その基準位置に反射信号部37a?37dが一体に形成され、その一回転ごとにフォトセンサ38a?38dがそれぞれの反射信号部37a?37dの通過を光電検出する。フォトセンサ38a?38dによる検知信号は、リールごとのリセット信号としてリセット信号発生部39から制御部20aに入力される。
【0027】制御部20aの内部にはステッピングモータごとのパルスカウンタが設けられ、各々のステッピングモータに供給された駆動パルスの個数を計数する。そして、フォトセンサ38a?38cによるインデックス信号を基に、対応するパルスカウンタのカウント値をクリアする。したがって、それぞれのパルスカウンタには、各リールの1回転内の回転角に対応した駆動パルスの個数が逐次に更新しながら保存されることになる。
【0028】第1?第3ストップボタン9a?9cが押下されると、ストップ信号発生部40はCPU20に向けてリールごとのストップ信号を制御部20aに向けて出力する。スタートレバー10を操作して全リールの回転が始まり、これらの回転が約80RPM程度の定常速度に達した時点でストップボタン9a?9cの操作が有効化される。その後、これらを操作することによってそれぞれ対応する第1?第3リール6a?6cの停止制御が開始され、ストップボタンを操作した後は、190msec以内に対応するリールが停止するようになっている。」
(カ)「【0042】本実施形態では、基準時間の前後でリールの停止制御を変更したが、それに加えて、各リールが自動停止する前の所定時間の間リールの停止制御を変更するようにしてもよい。この場合、自動停止前のリールの停止制御を、基準時間以前でのリールの停止制御に戻すようにする。例えば、基準時間以前のリールの停止制御が引き込み制御で、変更後のリールの停止制御が無制御の場合には、自動停止前のリールの停止制御が引き込み制御に戻されるので、ストップボタンの押下タイミングが取りづらい、非熟練者等の遊技者には、当選役に該当する図柄を引き込み制御で同一の入賞有効ライン上に停止させることができ、一方的な不利感を感じることなくゲームを行うことができる。」

以上、上記(ア)ないし(カ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「第1?第3リール6a?6cの外周には様々な図柄が一定ピッチで配列され、
前記第1?第3リール6a?6cは個別のステッピングモータ36a?36cの駆動軸に固着され、制御部20aが駆動パルスの供給個数を制御することによりリール駆動コントローラ35が前記ステッピングモータ36a?36cの駆動を制御するとともに各リールの駆動及び停止制御を行うものであり、
スタートレバー10が操作されたときに、ゲームスタート信号を前記制御部20aに入力し、前記ゲームスタート信号を受けて前記制御部20aは、前記第1?第3リール6a?6cを回転させ、前記第1?第3リール6a?6cの回転が約80RPM程度の定常速度に達した時点で第1?第3ストップボタン9a?9cの操作が有効化され、その後、前記第1?第3ストップボタン9a?9cが押下されると、ストップ信号発生部40はリールごとのストップ信号を前記制御部20aに向けて出力するとともに前記ストップボタン9a?9cに対応する前記第1?第3リール6a?6cの停止制御が開始され、前記第1?第3ストップボタン9a?9cを操作した後は、当選役に基づく図柄の組み合わせが図柄表示窓5aで停止しやすいようにそれぞれ対応するリールの停止制御を行い、190msec以内に対応するリールが停止するようになっており、
前記第1?第3リール6a?6cには、その基準位置に反射信号部37a?37cが一体に形成され、その一回転ごとにフォトセンサ38a?38cがそれぞれの反射信号部37a?37cの通過を光電検出し、前記フォトセンサ38a?38cによる検知信号は、リールごとのリセット信号としてリセット信号発生部39から前記制御部20aに入力され、
各リールが自動停止することもある、スロットマシン2。」の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」という。)。

また、原査定の拒絶の理由(平成22年7月23日付け拒絶理由通知)において引用文献3として引用された特開2001-58026号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(キ)「【0029】図5は、スロットマシンに用いられている制御回路を示すブロック図である。制御回路は、制御中枢としての制御部(マイクロコンピュータを含む)45を含む。制御部45は、以下に述べるようなスロットマシン1の動作を制御する機能を有する。制御部45は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には、制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU46とCPU46の動作プログラムを格納するROM47と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM48とが含まれている。さらに、CPU46と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート49と、電源投入時等にCPU46にリセットパルスを与える初期リセット回路51と、CPU46にクロック信号を与えるクロック発生回路52と、クロック発生回路52からのクロック信号を分周して割込パルスを定期的にCPU46に与えるパルス分周回路(割込パルス発生回路)53と、CPU46からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路54とを含む。」
(ク)「【0071】また、S211によりセットされたと判断された場合はS214に進み、右操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされる。S214で終了したと判断された場合は、S215により、右操作有効ランプ11Rを点灯する制御が行なわれてS216に進む。一方、S214で終了していないと判断された場合はそのままS216に進む。以上、S201?S215では、各リール6L?6Rの各リール基準位置6La?6Raが検出された後、各操作無効タイマが終了した順にストップボタンによる停止操作が有効になる。
【0072】次にS216により、左、中、右基準位置検出フラグのすべてがセットされたか否かの判断がなされる。S216においてセットされていないと判断された場合にはS218に進み、一方、S216においてすべてセットされていると判断された場合にはS217に進み、リール停止タイマをセットしてS218に進む。この場合、リール停止タイマはダウンカウントを開始する。」
(ケ)「【0077】次にS228により左リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS232により中リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS236により右リール停止フラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS240に進む。S228において左停止フラグがセットされている場合にはS229に進み、左リールが回転中であるか否かの判断がなされ、回転中である場合にはS230によりリール停止制御が行なわれた後にS231に進み、左リール停止フラグがクリアされる。一方、既に左リールが停止している場合にはS229によりNOの判断がなされて直接S231に進む。中リールおよび右リールについても左リールで説明したS228ないしS231と同様の処理が行なわれるために、ここでは説明の繰返しを省略する。」
(コ)「【0079】次にS243では、前記S217でセットされたリール停止タイマが終了したか否かの判断がなされる。S243により、終了していると判断された場合(リール停止タイマがセットされていない場合)はS201に戻る。一方、S243により、終了していないと判断された場合にはS244に進む。S244では、リール停止タイマのダウンカウントのカウント値から「1」を減算した場合にそのタイマが終了するか否かの判断がなされる。S244により終了すると判断された場合にはS245に進み、左、中、右リール停止フラグのすべてをセットしてS218に戻る。一方、S244により、終了しないと判断された場合にはそのままS218に戻る。」
(サ)「【0081】また、図12の制御においては、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された後各操作無効タイマが終了した順にストップ操作を有効化するようにしたが、これに限定されるものではなく、各リール駆動モータ7L?7Rが回転を開始した後、その回転速度が一定速度に達した後で、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された場合にストップ操作を有効化するようにしてもよい。この記載によって、前記所定の条件とは、前記可動表示部材の動きが一定速に達した後に前記基準位置検出手段により前記基準位置を検出することであることが開示されている。」

以上、上記(キ)ないし(サ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例2には、
「各リール駆動モータ7L?7Rの回転速度が一定速度に達した後で、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された場合にストップ操作を有効とするとともに、ストップ操作が有効となった時にリール停止タイマのカウントダウンを開始し、前記リール停止タイマのカウント値から「1」を減算した場合にそのタイマが終了すると判断された場合には左、中、右リール停止フラグすべてをセットして、回転中であるリールのリール停止制御が行われるスロットマシン1。」の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明2」という。)。

(4)対比
引用発明1の「複数の回胴」は本願補正発明の「第1?第3リール6a?6c」に相当する。以下同様に、
「外周」は「周面」に、
「様々な図柄」は「複数の情報」に、
「ステッピングモータ36a?36c」は「駆動手段」に、
「第1?第3ストップボタン9a?9c」は「複数の停止操作手段」に、
「CPU20」は「駆動制御装置」に、
「フォトセンサ38a?38c」は「位置検出センサ」に、
「制御部20a」は「駆動制御手段」に、
「フォトセンサ38a?38cによる検知信号」及び「リセット信号」は「位置検出センサからの検知信号」に、相当する。

さらに、引用例1の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明1は、第1?第3リール6a?6cは個別のステッピングモータ36a?36cの駆動軸に固着され、制御部20aが駆動パルスの供給個数を制御することによりリール駆動コントローラ35が前記ステッピングモータ36a?36cの駆動を制御するとともに各リールの駆動及び停止制御を行うものであり、スタートレバー10が操作されたときに、ゲームスタート信号を前記制御部20aに入力し、前記ゲームスタート信号を受けて前記制御部20aは、前記第1?第3リール6a?6cを回転させ、前記第1?第3リール6a?6cの回転が約80RPM程度の定常速度に達した時点で第1?第3ストップボタン9a?9cの操作が有効化され、その後、前記第1?第3ストップボタン9a?9cが押下されると、ストップ信号発生部40はリールごとのストップ信号を前記制御部20aに向けて出力するとともに前記ストップボタン9a?9cに対応する前記第1?第3リール6a?6cの停止制御が開始され、前記第1?第3ストップボタン9a?9cを操作した後は、当選役に基づく図柄の組み合わせが図柄表示窓5aで停止しやすいようにそれぞれ対応するリールの停止制御を行い、190msec以内に対応するリールが停止するようになっており、
リールの駆動制御において、停止状態から定常駆動状態になるときは加速駆動制御が行われ、定常駆動状態から停止状態になるときは減速駆動制御が行われるのが普通であるから、
引用発明1は、本願補正発明の「複数の回胴を、始動操作により駆動手段の駆動力でそれぞれ駆動させ、各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作によって停止したときの停止態様に基づいて、情報を報知するための回胴の駆動制御装置」を有しているとともに、
「前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御」、「前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御」、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御」を行うように、「前記駆動手段を制御する駆動制御手段」を有している点で共通しているといえる。

b.引用発明1は、第1?第3リール6a?6cには、その基準位置に反射信号部37a?37cが一体に形成され、その一回転ごとにフォトセンサ38a?38cがそれぞれの反射信号部37a?37cの通過を光電検出し、前記フォトセンサ38a?38cによる検知信号は、リールごとのリセット信号としてリセット信号発生部39から制御部20aに入力されるようになっているから、
引用発明1は、本願補正発明の「前記各回胴に設けられ、前記各回胴の1回転に1回の信号を生成することにより、各回胴の停止制御時の基準となる位置を検知する位置検出センサ」を有しているとともに、
「前記各回胴に設けられた位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段」を有している点で共通しているといえる。

c.引用発明1は、第1?第3ストップボタン9a?9cを有しているが、段落【0042】の記載からみて、該第1?第3ストップボタン9a?9cが操作されない場合に各リールが自動停止するものであるといえ、上記a.でも述べたように、停止制御が行われるときは減速駆動制御を行うのが普通であるから、
引用発明1は、本願補正発明と「前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段」を有している点で共通しているといえる。

d.引用発明1のスロットマシン2は、第1?第3リール6a?6cの駆動及び停止制御を行っているから、
引用発明1は、本願補正発明の「回胴の駆動制御装置」を備えているといえる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「周面にそれぞれ複数の情報が表示された複数の回胴を、始動操作により駆動手段の駆動力でそれぞれ駆動させ、各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作によって停止したときの停止態様に基づいて、情報を報知するための回胴の駆動制御装置であって、
前記各回胴に設けられ、前記各回胴の1回転に1回の信号を生成することにより、各回胴の停止制御時の基準となる位置を検知する位置検出センサと、
前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御を行うように、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記各回胴に設けられた位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、
前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段と、
を有する回胴の駆動制御装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
各回胴が、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御を行うように、各回胴の駆動手段を制御する駆動制御手段の制御を、
本願補正発明は、「停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御パターン、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御パターン、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御パターン、のそれぞれのパターンに基づいて」制御するのに対して、
引用発明1は、加速駆動制御・定常駆動制御・減速駆動制御がパターン化されているか不明であるため、このような制御を行うか不明である点。

<相違点2>
本願補正発明は、「加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段」を有し、
強制停止手段により、複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御パターンにより前記駆動手段を制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させるタイミングが、「この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後」であるのに対して、
引用発明1は、そのような信号生成手段と計時手段を有しておらず、どのようなタイミングで各リールが自動停止するのか明らかでない点。

(5)判断
<相違点1>について
駆動制御をパターン化することは、例示するまでもなく周知(以下、「周知技術1」という。)であるから、
引用発明1の加速駆動制御、定常駆動制御、減速駆動制御をパターン化して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

<相違点2>について
引用例2には、上記2.(3)に記載された引用発明2が開示されているが、
引用発明2の、各リール駆動モータ7L?7Rの回転速度が一定速度に達した後で、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された場合というのは、各リール駆動モータ7L?7Rの回転速度が一定速度に達した後の最初に各リール6L?6Rのリール基準位置が検出された場合であるといえるから、本願補正発明の「加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段」に相当する手段を有しているということができる。
また、引用発明2は、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された場合にストップ操作を有効とするとともに、リール停止タイマのカウントダウンを開始しているから、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出されたことに基づいてリール停止タイマのカウントダウンを開始しているといえるから、本願補正発明の「この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段」に相当する手段を有しているということができる。
さらに、引用発明2は、リール停止タイマのカウント値から「1」を減算した場合にそのタイマが終了すると判断された場合には左、中、右リール停止フラグすべてをセットして、回転中であるリールのリール停止制御を行っているから、リールタイマーのカウントダウンを開始してから所定時間後に全リール6L?6Rが回転中である場合、全リール6L?6Rの強制停止制御を行っているといえるから、本願補正発明の「この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後に前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御」「して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段」に相当する手段を有しているということができる。
そして、上記(4)c.で検討したとおり、引用発明1は本願補正発明と「前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段」を有している点で共通しており、段落【0042】の記載から各リールが自動停止するタイミングは事前に把握できるものであって、何らかの契機を基準にそのタイミングを決定していることが明らかであるから、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成にすることは、当業者が容易に成し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年6月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成22年9月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】 周面にそれぞれ複数の情報が表示された複数の回胴を、始動操作により駆動手段の駆動力でそれぞれ駆動させ、各回胴に対応してそれぞれ設けられた複数の停止操作手段の停止操作によって停止したときの停止態様に基づいて、情報を報知するための回胴の駆動制御装置であって、
前記各回胴に設けられ、前記各回胴における回胴の位置を検知する位置検出センサと、 前記各回胴における、停止状態から定常駆動状態へ加速させる加速駆動制御パターン、前記定常駆動状態を維持する定常駆動制御パターン、前記定常駆動状態から停止状態へ減速させる減速駆動制御パターン、のそれぞれのパターンに基づいて、前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記加速駆動制御パターンによる駆動制御終了以降前記定常駆動制御パターンによる駆動を開始した後に最初に出力される前記各回胴に設けられた前記全ての位置検出センサからの検知信号に基づいて信号を生成する信号生成手段と、
この信号生成手段で生成された信号に基づいて時間の計測を開始する計時手段と、
この計時手段が時間の計測を開始して所定時間経過後に前記複数の停止操作手段の停止操作がいずれも操作されていない場合に、減速駆動制御パターンにより前記駆動手段を制御して、前記複数の回胴を全て強制停止させる強制停止手段と、
を有する回胴の駆動制御装置。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-199875号公報(引用例1)に記載された発明は、前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(2)で検討した本願補正発明から、「位置検出センサ」が検出する「各回胴における回胴の位置」について、「1回転に1回の信号を生成することにより、各回胴の停止制御時の基準となる」との限定を付加した部分を削除したものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(5)に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-15 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-07 
出願番号 特願2004-341503(P2004-341503)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
瀬津 太朗
発明の名称 回胴の駆動制御装置及び遊技機  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  

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