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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1256893 |
審判番号 | 不服2010-23395 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-18 |
確定日 | 2012-05-09 |
事件の表示 | 特願2000-614630「インターネットをブラウズするための無線端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 2日国際公開、WO00/65800、平成14年12月17日国内公表、特表2002-543676〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は、2000年4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年4月26日、1999年6月7日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月18日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 本願の請求項1に係る発明は、平成22年3月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「トランシーバと、ブラウザと、ユーザ・インタフェースと、メモリとを備える端末装置であって、 前記トランシーバは、サーバに対して無線パケットを送受信するように構成され、 前記ユーザ・インタフェースは、コンテンツを表示しうるディスプレイと、ユーザ入力手段とを有し、 前記メモリは、アプリケーションの機能をエミュレートするためのデータであって、それぞれ固有のコンテンツ識別子を用いて前記ブラウザがアクセス可能な第1のアイテム及び複数の他のアイテムによる階層構造を有し、前記第1のアイテムが、少なくとも前記複数の他のアイテムのいずれかへのリンクを有し、前記複数の他のアイテムが、それぞれコンテンツまたはコンテンツへのリンクを有する、データを格納するように構成され、 前記ブラウザは、前記第1のアイテムに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該第1のアイテムにアクセスすることにより、前記アプリケーションのエミュレートを開始し、前記リンクに対してされる操作に応じて、前記第1及び他のアイテムのうち対応するものを提供することにより、前記アプリケーションの機能をエミュレートしうるように構成される、 端末装置。」 第2.引用発明および周知技術 A.これに対して、本願優先日前に頒布され、原審の拒絶の理由に引用された、佐々木元也,「携帯端末向け記述言語 ブラウザを搭載した携帯電話のコンテンツ作成へ Compact HTMLとWMLの2方式が登場」,日経インターネットテクノロジー,第12号,日経BP社,1998年6月22日,第106-113頁(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 イ.「ブラウザを搭載した携帯電話が,今年末から来年初めにかけて,相次いで登場してきそうだ。PDA(Personal Digital Assistants)に携帯電話機能を付け加えたものではない。大きさや重さは現在の携帯電話のまま,ブラウザ機能を付加して,WWW(World Wide Web)の情報を見られるようにした製品が,登場してくるのである(写真1)。」(106頁左欄1行?中欄2行) ロ.「まず問題となるのは,ディスプレイ・サイズだ。HTML4.0では,テーブルやフレームを定義している。しかし,ディスプレイの大きさが限られている携帯電話で,フレームで分割してあるWWWページを表示するのは,実際問題として不可能であろう。テーブルも同様である。携帯電話向けのコンテンツでは,標準であるHTML4.0にある機能でも使えないものがでてきてしまうのだ。 入力装置も大きく異なる。デスクトップ・パソコンは,フル・キーボードとマウスを備えている。特に,マウスはWWWページを見るには欠かすことができない装置だ。一方,携帯電話は,数字ボタンといくつかのファンクション・ボタンしかない。 CPUの処理能力やメモリー容量では圧倒的な差があるし,現時点では,携帯電話のデータ通信速度は,まだそれほど速くはない。新しい記述言語はこうした携帯電話の制限をふまえ,携帯電話でも快適にコンテンツを表示できるように工夫した言語なのである。」(107頁左欄12行?中欄10行) ハ.「一方のWMLはWAP(Wireless Application Protocol)Forumが策定したものだ。第1版は今年の4月30日に出来上がった。WAP Forumでは,WMLだけでなく通信プロトコルまで定めている(図2)。」(108頁左欄14行?19行) ニ.「図5がWMLによるサービスのイメージだ。表示される画面だけを見ると,Compact HTMLのものとあまり変わらない。しかし,WMLにはCompact HTMLにはない特徴がある。CardとDeckという概念を持っているのだ。 Deck単位でダウンロード Cardは一つひとつの画面のことであり,それぞれがURLを持つ。Deckは複数のCardを束ねたものだ(図6)。ダウンロードはDeck単位で行う。複数のCardを持つDeckであれば,端末のメモリー上にすべてのCardがキャッシュされ,必要に応じてメモリー上のCardを切り替えて表示する。1ページごとに,WWWサーバーにアクセスする必要のあるCompact HTMLに比べ,画面間の移動がスムーズだという。 WMLのソースの例を図7に示した。<WML></WML>のタグで囲まれた部分が,ひとつのDeckとなる。1枚のCardは<Card></Card>で囲んである部分だ。Deck全体のダウンロードが終了したあと,最初のCardの内容を表示するのである。」(110頁左欄11行?中欄10行) ホ.「WAP Forumで定めている通信プロトコルは,無線でのデータ伝送を前提とし,オーバーヘッドの少ないプロトコルとなっているため,データ伝送効率がよいという。」(110頁中欄23行?右欄2行) 引用例は、上記摘記事項及び図5によれば、WMLを利用したサービスを受ける携帯電話について開示するものである。 まず、上記摘記事項ハ.の「WAP Forumでは,WMLだけでなく通信プロトコルまで定めている」、及びホ.の「WAP Forumで定めている通信プロトコルは,無線でのデータ伝送を前提とし」という記載によれば、「携帯電話」は無線によるデータ通信機能を備えていることは明らかである。また、図8も参照すれば、インターネット上のサーバとの間で、パケット通信を行うようにされていることも技術常識から明らかであるから、「携帯電話」は、「サーバに対して無線パケットを送受信するように構成されたトランシーバ」を当然に備えている。 また、上記摘記事項ニ.の「ダウンロードはDeck単位で行う。複数のCardを持つDeckであれば,端末のメモリー上にすべてのCardがキャッシュされ,必要に応じてメモリー上のCardを切り替えて表示する。」という記載によれば、ダウンロードされたDeckはメモリーに記憶されるものである。 また、上記摘記事項ロ.の「まず問題となるのは,ディスプレイ・サイズだ。HTML4.0では,テーブルやフレームを定義している。しかし,ディスプレイの大きさが限られている携帯電話で,フレームで分割してあるWWWページを表示するのは,実際問題として不可能であろう。」、「新しい記述言語はこうした携帯電話の制限をふまえ,携帯電話でも快適にコンテンツを表示できるように工夫した言語なのである。」という記載によれば、携帯電話はコンテンツを表示しうるディスプレイを有しているが、この「ディスプレイ」と、上記摘記事項ロ.の「入力装置」とは、総称して「ユーザ・インタフェース」といいうるものである。 また、上記摘記事項ニ.の「Cardは一つひとつの画面のことであり,それぞれがURLを持つ。」という記載によれば、CardがURLを持つことが示されているが、ダウンロードの際にはDeckの指定がされなければならないことを考えれば、Deckもそれぞれ固有の識別子を持ち、識別子を用いてブラウザにアクセスされるものでなければならないことは当然である。そして、Deckは携帯電話のディスプレイに表示されるコンテンツを有するものであるから、この識別子を「コンテンツ識別子」と称することもできる。 さらに、図5には「WMLを利用したサービスの例」が記載されているが、表示されたコンテンツ中の選択肢を選択する操作に応じて、対応するものが提供されることが開示されているといえる。 したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 「トランシーバと、ブラウザと、ユーザ・インタフェースと、メモリーとを備える携帯電話であって、 前記トランシーバは、サーバに対して無線パケットを送受信するように構成され、 前記ユーザ・インタフェースは、コンテンツを表示しうるディスプレイと、入力装置とを有し、 前記メモリーは、それぞれ固有のコンテンツ識別子を用いて前記ブラウザがアクセス可能なDeckを格納するように構成され、 前記ブラウザは、前記Deckに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該Deckにアクセスし、表示されたコンテンツ中の選択肢を選択する操作に応じて、対応するものを提供する、 携帯電話。」 B.一方、本願優先日前に頒布され、原審の拒絶の理由に引用された、杉山泰一,「検証テクノロジ 携帯電話向けブラウザ 小さな画面を狙った記述言語 2方式が激突,決着は市場で」,日経コミュニケーション,第283号,日経BP社,1998年12月7日,第130-137頁(以下、「周知例」という。)には、図面とともに以下の事項ヘ.が記載されている。 ヘ.「1Deck中に任意のCardのリンク先となるCardも含むようにWMLファイルを作れば,リンク先に飛ぶたびにサーバーにアクセスするHTMLやC- HTMLより高速のレスポンスが期待できる。」(134頁左欄14行?19行) 上記摘記事項ヘ.及び図1の記載によれば、WMLやHTMLのようなマークアップ言語においては、「コンテンツデータ同士の関連付けをリンクによって行い、他のコンテンツデータへのリンクに対してされる操作に応じて、対応するコンテンツデータを提供すること」は周知技術であると認められる。 第3.対比・判断 a)引用発明の「メモリー」、「入力装置」は、本願発明の「メモリ」、「ユーザ入力手段」と一致している。 b)引用発明の「携帯電話」と、本願発明の「端末装置」とは、ブラウザを搭載した「端末装置」である点で、一致している。 c)引用発明の「Deck」と、本願発明の「第1のアイテム」とは、「それぞれ固有のコンテンツ識別子を用いて前記ブラウザがアクセス可能なアイテム」である点で、一致している。 d)ブラウザに関して、引用発明と本願発明とでは、「アイテムに関するコンテンツ識別子を使用して、該アイテムにアクセスし、操作に応じて、対応するものを提供する」ようにされている点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「トランシーバと、ブラウザと、ユーザ・インタフェースと、メモリとを備える端末装置であって、 前記トランシーバは、サーバに対して無線パケットを送受信するように構成され、 前記ユーザ・インタフェースは、コンテンツを表示しうるディスプレイと、ユーザ入力手段とを有し、 前記メモリは、それぞれ固有のコンテンツ識別子を用いて前記ブラウザがアクセス可能なアイテムを格納するように構成され、 前記ブラウザは、前記アイテムに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該アイテムにアクセスし、操作に応じて、対応するものを提供する、 端末装置。」 (相違点1) 「メモリ」に関し、本願発明では「アプリケーションの機能をエミュレートするためのデータであって、第1のアイテム及び複数の他のアイテムによる階層構造を有し、前記第1のアイテムが、少なくとも前記複数の他のアイテムのいずれかへのリンクを有し、前記複数の他のアイテムが、それぞれコンテンツまたはコンテンツへのリンクを有する、データ」を格納するものであるのに対し、引用発明では「Deck」を格納するものである点。 (相違点2) 「ブラウザ」に関し、本願発明では「前記第1のアイテムに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該第1のアイテムにアクセスすることにより、前記アプリケーションのエミュレートを開始し、前記リンクに対してされる操作に応じて、前記第1及び他のアイテムのうち対応するものを提供することにより、前記アプリケーションの機能をエミュレートしうるように構成される」ものであるのに対し、引用発明では「前記Deckに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該Deckにアクセスし、表示されたコンテンツ中の選択肢を選択する操作に応じて、対応するものを提供する」ものである点。 上記相違点1及び2について検討する。 明細書及び図面全体を参酌し、特に、審判請求人が平成22年3月22日に提出した誤訳訂正書の段落【0020】の「ブラウザ・アプリケーションは、今までは、WAPが供給する通常のブラウズ機能を供給してきたが、本発明においては、さらに、電子メール・アプリケーションやニュース閲覧アプリケーションのような、他の追加機能をも提供する。追加されるアプリケーションは、コンテンツを端末装置に転送することによって提供される。これらのコンテンツは、追加されるアプリケーションをエミュレートするために、ブラウザが使用するデッキの階層構造を提供する。」という記載、及び、平成22年10月18日に提出した審判請求書の「(ア)原審における一致点の認定の誤りについて」における「請求項1の『アプリケーションの機能をエミュレート』することが、『前記ブラウザは、前記第1のアイテムに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該第1のアイテムにアクセスすることにより、前記アプリケーションのエミュレートを開始し、前記リンクに対してされる操作に応じて、前記第1及び他のアイテムのうち対応するものを提供することにより』行われる」という記載を勘案すれば、本願発明の「アプリケーションの機能をエミュレートする」こととは、「アイテム(デッキ)を階層構造とし、他のアイテム(デッキ)へのリンクに対してされる操作に応じて、対応するアイテム(デッキ)を提供することにより、電子メールやニュース閲覧のような追加機能を実現する」ことと解釈できる。 これに対し、引用発明においては、アイテム(Deck)が階層構造とされている点は開示されていない。しかし、サービス内容を拡充することは当業者が適宜試みることであるところ、種々の制約(端末装置のメモリが小容量である点(引用例の図1参照)、ダウンロードがDeck単位で行われる点(上記摘記事項ニ.))からすれば、単一のアイテム(Deck)のみで一つのサービスを提供することには自ずと限界があるため、複数のアイテム(Deck)を相互に関連付けることによってサービスを提供するように構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 そして、マークアップ言語においては、「コンテンツデータ同士の関連付けをリンクによって行い、他のコンテンツデータへのリンクに対してされる操作に応じて、対応するコンテンツデータを提供すること」は周知技術であるが、サービスの提供形態として階層構造を有するニュース閲覧サービス(引用例の図5参照)を提供する場合に、当該周知技術を適用して、「アイテムを階層構造とし、他のアイテムへのリンクに対してされる操作に応じて、対応するアイテムを提供することにより、ニュース閲覧のような機能を実現する」ことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、上記のように、このような構成によってアプリケーションの機能をエミュレートするといいうるものであることからすれば、「メモリ」に関し、「アプリケーションの機能をエミュレートするためのデータであって、第1のアイテム及び複数の他のアイテムによる階層構造を有し、前記第1のアイテムが、少なくとも前記複数の他のアイテムのいずれかへのリンクを有し、前記複数の他のアイテムが、それぞれコンテンツまたはコンテンツへのリンクを有する、データ」を格納するようにし、「ブラウザ」に関し、「前記第1のアイテムに関する前記コンテンツ識別子を使用して、該第1のアイテムにアクセスすることにより、前記アプリケーションのエミュレートを開始し、前記リンクに対してされる操作に応じて、前記第1及び他のアイテムのうち対応するものを提供することにより、前記アプリケーションの機能をエミュレートしうるように構成される」ようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、周知技術から当業者が予測できる程度のものである。 第4.むすび したがって、本願発明は、引用発明、周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-15 |
結審通知日 | 2011-12-16 |
審決日 | 2011-12-27 |
出願番号 | 特願2000-614630(P2000-614630) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 浩兵 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 小宮 慎司 |
発明の名称 | インターネットをブラウズするための無線端末装置 |
代理人 | 川守田 光紀 |