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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1257160 |
審判番号 | 不服2008-6521 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-17 |
確定日 | 2012-05-16 |
事件の表示 | 特願2003-526374「固定化した血小板結合剤を有する血管閉塞固相剤」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日国際公開、WO03/22244、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-511502〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,2002年9月11日(パリ条約による優先権主張2001年9月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、本願請求項1?46に係る発明は、平成23年2月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?46に記載されたとおりのものであって、請求項1には、次のとおり記載されている。 「【請求項1】血小板結合成分が含まれる固相剤を含む、生体内で血栓の形成を誘導するための組成物であって、血小板結合成分は、血小板の活性化を誘導するために、血小板を固相剤に結合させることを特徴とする、生体内での血栓形成誘導用組成物。」 2.原査定の拒絶の理由 これに対する、原査定の拒絶の理由4.および5.は、「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項(審決注:正しくは、「特許法第36条第4項第1号」である。)に規定する要件を満たしていない。」および「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない。」というものであって、平成19年4月18日付けの拒絶理由通知において下記の点を指摘している。 「E.請求項1-4,9-23,28-34 上記請求項に係る発明は、「血小板を結合することが可能な結合剤を含む固相剤」を「血栓形成の誘導」に適用するという医薬用途に関する発明である。上記請求項には、「血小板を結合することが可能な結合剤」として種々のものが含まれるにも拘わらず,発明の詳細な説明に血栓形成の誘導を達成できると当業者が認識できるように記載されているのは、フォン・ウィルブランド因子のみである。 そうすると、出願時の技術常識に照らしても、上記請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、同項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ということができない また、発明の詳細な説明には、上記請求項に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。」(なお、本願明細書及び上記拒絶理由においては、「フォン・ウィルブランド因子」と記載され、平成23年2月17日付け手続補正書においては「フォン・ヴィルブランド因子」と記載されているが、同一の因子を意味するものとしてとくに区別しない。) 3.請求項の対応関係 上記拒絶理由において対象としている各請求項のうち、請求項15は、実質的にみて、平成22年8月11日付けの当審拒絶理由に対して平成23年2月17日付けで提出された補正書により補正された請求項1(すなわち本願発明)に対応するものと認められる。(なお、上記拒絶理由に対応して、請求人は、特段の反論をすることなく、一旦は、上記拒絶理由において「血栓形成の誘導を達成できると当業者が認識できるように記載されている」と認めたフォン・ヴィルブランド因子のみに限定する補正をしたものの、上記平成23年2月17日付けの手続補正書により、ふたたび「血小板結合成分」という記載に拡大補正したものであるから、上記拒絶理由が再度、そのまま該当することになるので、その妥当性について、以下に検討するものである。この点について、上記拒絶理由に接した際に請求人は既に十分に反論の機会を与えられたものであって、その際に特段の説明をすることなく、フォン・ヴィルブランド因子に限定したのであるから、当審においてあらためて同趣旨の拒絶理由を通知する必要はないものと認める。) 4.当審の判断 4-I.(特許法第36条第4項第1号について) 本願請求項1に係る発明は、医薬組成物の発明であり、「生体内で血栓の形成を誘導するための血小板結合成分が含まれる固相剤」を含有することを、特許を受けようとする発明を特定する事項とするものである。 本願明細書の発明の詳細な説明には、該血小板結合成分としてフォン・ヴィルブランド因子については、その生体内で血栓の形成を誘導する作用が具体的に裏付けられているが、それ以外の血小板結合成分については、明細書の段落番号【0066】において「フォン・ウィルブランド因子」に続けて、「オステオポンチン、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、ラミニン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ホスホリパーゼA2(phospholipase A2、PLA2)、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinases、MMPs)、トロンビン、ガラス、シアリル-ルイスX、フィブリン-1、血小板内被細胞接着分子(PECAM)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、細胞間接着分子2(ICAM-2)、CD11b/CD18(MAC-1)、CD11a/CD18(LFA-1)、p-セレクチン糖タンパク質リガンド1(p-selectin glycoprotein ligand 1、PSGL-1)の個々又はこれらの組み合わせが挙げられる。」と名称を列記するが、それ以外の記載としては、段落番号【0016】において、「本発明である、固相の血小板によって媒介される閉塞は、体の本来の能力を利用して,固相化したフォン・ウィルブランド因子(・・・)又は他の局所的に作用する血小板活性化剤に応じて血栓を形成する、・・・」(下線は審決において付加)、又段落番号【0017】において、「固相血小板結合剤を、患者由来(生体外)の又は血流内(生体内)の血液と接触させると、血小板の結合と、局所的な活性化が誘導され、固相剤周辺に血小板を付着させ、血栓症と、閉塞した血管によって供給される組織への血流の停止を招く。」といった漠然とした記載のみで、それら成分が、フォン・ヴィルブランドと同様に、固相剤に含まれるときに生体内で血栓の形成を誘導することが理解できる合理的説明はなんらなされていない。(かえって、血栓の形成を誘導することに疑問のあるもの(たとえば、ヘパリン)までもが例示されている。) したがって、フォン・ヴィルブランド因子以外の「生体内で血栓の形成を誘導するための血小板結合成分」について、その効果を確認することができる記載がなく、その効果を確認するには、当業者に過度の負担を求めることになる。 よって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本願請求項1に係る発明を実施できる程度に、明確かつ十分に記載されているとはいえない。 4-II.(特許法第36条第6項第1号について) (1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件について 特許法第36条第6項第1号は、「特許請求の範囲」の記載について、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要件としているが、同号は、特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有すると規定され、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した「特許請求の範囲の記載」に基づいて定めなければならないと規定されていること(特許法第68条、第70条第1項)を実効ならしめるために設けられた規定であって、仮に、「特許請求の範囲」の記載が、「発明の詳細な説明」に記載・開示された技術的事項の範囲を超えるような場合に、そのような広範な技術的範囲にまで独占権を付与することになれば、当該技術を公開した範囲で、公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的を逸脱するため、そのような特許請求の範囲の記載を許容しないものとしたものと解される。 そこで、本願について検討すると、上記4-I.に記載したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、該血小板結合成分としてフォン・ヴィルブランド因子については、その生体内で血栓の形成を誘導する作用が具体的に裏付けられているが、それ以外の血小板結合成分については、その効果を確認できず、かつ、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に記載された「血小板結合成分」の範囲にまで、発明の詳細な説明に開示されたフォン・ヴィルブランド因子を血小板結合成分とした場合の技術的事項の内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、請求項1は、発明の詳細な説明に開示された技術的事項の範囲を超えた、広範な技術的範囲を含む記載がされていると認められるから、請求項1の記載は、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」との要件を満たさない。 なお、請求人は、平成23年2月17日付けの意見書において、血小板結合成分をフォン・ヴィルブランド因子に限られないことにした理由として、(1)「とくにコラーゲンは非常に効果的であることが示され、2011年前半には販売のために利用可能になると予想される商業上の具体例のうちの1つ」であること、及び(2)それが拡張されなければならないという本出願人の議論を支持するものとして、より一層広い請求の範囲は、米国(特許第7、387,994号)、欧州(特許第1427391号)および韓国(特許第786907号)ですでに発行され」たことを挙げているが、(1)については具体的に効果について何の資料も提出されておらず、(2)については、そもそも参酌することのできないものであるばかりでなく、その米国、欧州の特許明細書の内容をみても、以下に示すように、請求人の主張と相違するものであって、上記結論を左右するものではない。すなわち、上記欧州特許の請求項1はその血小板結合成分がフォン・ヴィルブランド因子からなるものに限定されており、上記米国特許は本願明細書の内容にさらに血小板結合成分としてコラーゲンを使用する実施例13-16を追加記載したものであって(この実施例13-16に関する記載は、本願の優先日後に追加されたものである。)、その請求項1は血小板結合成分が上記追加されたコラーゲンからなるものに限定されており、一方、本願と内容が同一の米国特許第6、960,352号明細書の請求項1はその血小板結合成分が哺乳類由来のフォン・ヴィルブランド因子及び組み換えフォン・ヴィルブランド因子に限定されており、請求人の主張は事実と相違するものである。 5.むすび したがって、本願は、特許法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-19 |
結審通知日 | 2011-12-20 |
審決日 | 2012-01-05 |
出願番号 | 特願2003-526374(P2003-526374) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊池 美香 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
上條 のぶよ 穴吹 智子 |
発明の名称 | 固定化した血小板結合剤を有する血管閉塞固相剤 |
代理人 | 野田 裕子 |
代理人 | 来間 清志 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 澤田 達也 |
代理人 | 杉村 興作 |