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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1258011
審判番号 不服2011-17597  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-12 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2008-195107「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月23日出願公開、特開2008-253836〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯概要
本件は、特願2002-33776号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願としたものであり、その経緯概要は以下のとおりである。

平成14年 2月12日 原出願(特願2002-33776号)
平成20年 7月29日 本件出願(特願2008-195107号)
平成23年 4月20日 拒絶理由通知
平成23年 6月 8日 手続補正
平成23年 6月30日 拒絶査定
平成23年 8月12日 本件審判請求、手続補正
平成23年11月15日 審尋
平成24年 1月11日 回答書

第2.平成23年8月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は平成23年6月8日付け手続補正により補正された明細書及び図面を補正するものであって、その補正の前後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
後面側に設けられた基枠と、
前記基枠と第1施錠機構によって施錠される第1施錠枠と、
前記基枠及び第1施錠枠の少なくとも1つと第2施錠機構によって施錠される第2施錠枠と、
前記基枠、第1施錠枠及び第2施錠枠の少なくとも1つと第3施錠機構によって施錠される第3施錠枠と、
一対の板部がそれぞれの一端において屈曲された状態で接続され、かつ、一方の前記板部の他端に屈曲形成されて前記基枠と前記第1施錠枠の回動外端との隙間を塞ぐ阻止板が一方の前記板部に沿って延伸されると共に他方の前記板部の他端に屈曲形成された係止突起が他方の前記板部に沿って延伸され、前記一対の板部によって前記第1施錠機構、第2施錠機構及び第3施錠機構を一体化するユニット基板と、
を備えた遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】
後面側に設けられた基枠と、
前記基枠と第1施錠機構によって施錠される第1施錠枠と、
前記基枠及び第1施錠枠の少なくとも1つと第2施錠機構によって施錠される第2施錠枠と、
前記基枠、第1施錠枠及び第2施錠枠の少なくとも1つと第3施錠機構によって施錠される第3施錠枠と、
鍵部材を挿入可能にされた鍵挿入部材が固定されると共に、一対の板部がそれぞれの一端において屈曲された状態で接続され、かつ、一方の前記板部の他端に屈曲形成されて前記基枠と前記第1施錠枠の回動外端との隙間を塞ぐ阻止板が一方の前記板部に沿って延伸されると共に前記鍵挿入部材固定位置において他方の前記板部の他端に屈曲形成された係止突起が他方の前記板部に沿って延伸され、前記一対の板部によって前記第1施錠機構、第2施錠機構及び第3施錠機構を一体化するユニット基板と、
を備えた遊技機。」

上記補正は、補正前請求項1の「ユニット基板」に「鍵部材を挿入可能にされた鍵挿入部材が固定される」との限定を付し、同「他方の前記板部の他端に屈曲形成された係止突起が他方の前記板部に沿って延伸され」を「前記鍵挿入部材固定位置において他方の前記板部の他端に屈曲形成された係止突起が他方の前記板部に沿って延伸され」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献の記載事項
2-1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-137414号公報(公開日:平成10年5月26日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パチンコ機の機台枠の前面側に片開き状に取付けられた表枠と、この表枠の前面側の上下に片開き状に取付けられた金枠と前枠とを備え、前記表枠の自由端側の内側面に沿って縦設されて表枠、金枠および前枠を施錠する施錠ユニットを備えたパチンコ機の錠装置であって、
前記施錠ユニットは表枠に取付けられる固定基枠と、この固定基枠に沿って上下に案内されるハネ出しプレートと、同じく案内されて金枠を施錠する第1可動錠板と、同じく案内されて表枠を機台枠に施錠する第2可動錠板を備え、前記ハネ出しプレートと第1可動錠板とは不正開錠防止機構により連繋する構成としたことを特徴とするパチンコ機の錠装置。
【0006】
【実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明すると、図1はパチンコ機1の前方から見た斜視図、図2は同じく後方から見た斜視図を示すもので、このパチンコ機1は略方形枠状に枠組み形成された機台枠2と、この前面側にヒンジ(図示せず)を介して片開き状に取付けられる略方形状に枠組み形成された表枠3と、この表枠3の前面上下側にヒンジを介して片開き状に取付けられるガラスを取付けた金枠5と、この金枠5の下部側にヒンジを介して片開き状に前枠6が取付けられている。また、図2に示すように機台枠2の一方の縦枠2aの内側面の上下の所定位置には、表枠3の自由端側の縦枠3aの裏面側に取付けられた後述する施錠ユニット15の第2可動錠板65の第2ロック爪67a,67bと係合する受け爪7aを内方に突出するロック受け金具7が止着されている。
【0007】また、この表枠3の縦枠3aの上下の所定の位置にはその裏面側に取付けられた施錠ユニット15の第1可動錠板50の第1ロック爪56a,56bを挿通する長孔3bが貫設され、また、上部側の長孔3bの下部側の所定の位置には施錠ユニット15のスライド保持片18の外側面の所定の位置に取付けられたはね出し部80のはね出し棒83を挿通する長孔3cが貫設されている。また、下側の長孔3bの上部側の所定の位置には、施錠ユニット15に取付けられた不正開錠防止機構87の係合部材88に形成した作動レバー92を挿通する長孔3dが貫設されている。また、縦枠3aの下部側には所定の間隔で施錠ユニット15のスライド保持片18の外側面の下部側に上下にスライド可能に取付けられた第3可動錠板75の第3ロック爪76a,76bを挿通する長孔3eが貫設されている。また、上下の長孔3b間の所定の位置にはシリンダ錠22を取付ける錠取付孔が貫設されている。
【0008】金枠5の回動自由端側の裏面の上下の所定位置には、この第1可動錠板50の第1ロック爪56a,56bと係合するロック受け金具8が止着されている。また、前枠6の回動自由端側の裏面の上下の所定位置には施錠ユニット15の第3可動錠板75の第3ロック爪76a,76bと係合するロック受け金具9が取付けられている。
【0009】次に、表枠3の縦枠3aの裏面側に沿って縦設される施錠ユニット15について説明する。この施錠ユニット15は図4に示すように、固定基枠16と、この固定基枠16の内側にスライド可能にハネ出しプレート40と第1可動錠板50と第2可動錠板65とからなり、このハネ出しプレート40と第1可動錠板50、間には不正開錠防止機構87が介装されている(図5参照)。また、固定基枠16の外側の上部には金枠5のはね出し部80が設けられ、下部側には第3可動錠板75がスライド可能に取付けられている(図3(b) 参照)。なお、図4の分解斜視図はばね部材を省略して示す。
【0010】この固定基枠16は取付片17とスライド保持片18とにより断面略L形状に形成され、この取付片17の上下の所定の位置には断面略L形状で第2可動錠板65のガイド金具19が対応して取付けられ、このガイド金具19の立上り片19aにはそれぞれガイドピン20が取付けられている。また、取付片17の上端部寄りの所定位置にはシリンダ錠22の取付部21が切欠き形成されてシリンダ錠22が着脱可能にかつ位置調節可能に取付けられている。・・・
【0017】また、固定基枠17のスライド保持片18の外側面の下部には図3(b) に示すように第3可動錠板75がスライド保持片18に取付けられたガイドピン36a,36bを介してスライド可能に取付けられている。・・・
【0018】このように形成された各部材は、先ず、固定基枠16に形成した上下の挿通長孔27a,27bに第1可動錠板50の上下の第1ロック爪56a,56bを挿通して同錠板50の上下に形成したガイド溝57a,57bをスライド保持片18に取付けた上下のガイドピン30に挿通係合するとともに、固定基枠16側のばね掛け26bと第1可動錠板50のばね掛け片61との間にばね部材38bを掛合することで上方へ付勢される。・・・
【0021】そして、固定基枠16の取付片17の上下に取付けられたガイド金具19間には第2可動錠板65の上下のガイド溝71a,71bがガイドピン20に挿通係合されて上下動可能に取付けられるとともに、・・・
【0024】このように機台枠2の前面を閉止して状態で、表枠3を開く場合は、シリンダ錠22にキーを挿入して右方向に回動すると、シリンダ錠22に取付けられた開錠レバー23の第2開錠片23bが第2可動錠板65に形成した第2作動孔73の係合段部73aと係合されて、同第2可動錠板65はばね部材38cに抗し、ガイド溝71a,71bを介してガイドピン20およびガイド凸部25a,25bにガイドされて上動されることで第2ロック爪70a,70bとロック受け金具8とのロックが解かれ、金枠5と前枠4と一体的に機台枠2の前面側を開放することができる。

また、「パチンコ機の前方から見た斜視図」である図1において、機台枠2が表枠3、金枠5及び前枠6より後方に設けられていることが図示されている。

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「後方側に設けられた機台枠2と、
前記機台枠2と第2可動錠板65によって施錠される表枠3と、
前記表枠3と第1可動錠板50によって施錠される金枠5と、
前記表枠3と第3可動錠板75によって施錠される前枠6と、
キーを挿入可能なシリンダ錠が取り付けられると共に、固定基枠16が取付片17とスライド保持片18とにより断面略L形状に形成され、かつ、取付片17の上下に取付けられたガイド金具19間には第2可動錠板65の上下のガイド溝71a,71bがガイドピン20に挿通係合されて上下動可能に取付けられ、第1可動錠板50の上下に形成したガイド溝57a,57bをスライド保持片18に取付けた上下のガイドピン30に挿通係合し、第3可動錠板75はスライド保持片18に取付けられたガイドピン36a,36bを介してスライド可能に取付けられる、パチンコ機。」(以下、「引用発明」という。)

2-2.引用文献2
原査定時に周知技術として引用された、特開2000-317115号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチスロ機等のゲーム機に使用される施錠装置の受け金具に関する。
【0005】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、前扉の自由端側の隙間の内側に有効な壁を作り不正解錠を防止することができる施錠装置の受け金具を提供することを目的とする。
【0008】施錠状態では、前扉の自由端側の縁部がキャビネットの縁部に当接して閉鎖状態となるが、何らかの理由により、その突き合わせ面に隙間が生じたとしても、その突き合わせ面の内側奥に、受け金具の帯本体の縁部が、施錠装置に対し壁となって位置する。このため、突き合わせ面の隙間から針金などを差し込んで、施錠装置の連結杆や鉤部材を動かそうとしても、受け金具の縁部の壁により阻まれ、不正解錠を未然に防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、内部を省略したパチスロのキャビネット1を開いた状態の斜視図を示している。キャビネット1の前面に前扉2が蝶番3を介して開閉自在に取り付けられ、前扉2の自由端側の内側に、縦長の施錠装置4が取り付けられる。
【0013】一方、キャビネット1の内側前縁部における施錠装置4との対向位置には、受け金具10が縦に固定される。受け金具10は、図2に示すように、縦長の帯状金属板からなる帯本体11の上部と中間部に、係止部12、13を断面L形に曲げて突設し形成される。帯本体11には複数の取付孔が穿設され、帯本体11をキャビネット1の内側部に取り付けた際、係止部12、13が正面を向くように形成される。
【0017】そして、上記のように受け金具10を取り付けたキャビネット1に対し、施錠装置を取り付けた前扉2を閉じると、施錠装置4の上下の鉤部材5、6が、受け金具10の係止部12、13に当接しながら下方に回動し、再び水平位置に戻るように動作して施錠状態となる。・・・
【0018】また、施錠状態では、図4に示すように、前扉2の自由端側の縁部がキャビネット1の前面縁部に当接するが、その突き合わせ面に隙間が生じたとしても、その突き合わせ部の奥に、受け金具10の帯本体11の縁部11aが、施錠装置4に対し壁となって位置する。このため、突き合わせ部の隙間から針金などを差し込んで、施錠装置4の連結杆や鉤部材5、6を動かそうとしても、縁部11aの壁により阻まれ、不正解錠を未然に防止することができる。・・・
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、受け金具の装着時、その帯本体の縁部が、施錠装置に対し壁となって位置するから、突き合わせ面の隙間から針金などを差し込んで、施錠装置の連結杆や鉤部材を動かそうとしても、受け金具の縁部の壁により阻まれ、不正解錠を未然に防止することができる。・・・

したがって、これらの記載をまとめると、引用文献2には、
「キャビネット1の前面に前扉2が蝶番3を介して開閉自在に取り付けられ、
前扉2の自由端側の内側に縦長の施錠装置4が取り付けられる一方、キャビネット1の内側前縁部における施錠装置4との対向位置には、受け金具10が縦に固定される、パチスロ機等のゲーム機において、
前扉2の自由端側の縁部がキャビネット1の前面縁部に当接して閉鎖状態となる施錠状態で、その突き合わせ面に隙間が生じたとしても、受け金具10の帯本体11の縁部11aが、前扉2の自由端側の隙間の内側に有効な壁となって位置するため、突き合わせ面の隙間から針金などを差し込んで、施錠装置4の連結杆や鉤部材5、6を動かそうとしても、受け金具10の縁部11aの壁により阻まれ、不正解錠を未然に防止することができる、 パチスロ機等のゲーム機に使用される施錠装置の受け金具。」という技術事項が記載されていると認められる。

2-3.引用文献3
原査定時に周知技術として引用された、特開2000-157699号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている(なお、符号「51」の用語として「保持枠係合受部材」と「保持枠係合受」とを混用しているが、【符号の説明】の欄の記載に基づき、「保持枠係合受部材」の用語を採用した。)。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機などの遊技機に関し、特に、透明ガラス等の透明部材を有するカバー枠を前面枠に対して閉状態で施錠する錠部材を備えた遊技機に関するものである。
【0010】カバー枠3は、図2および図3に示すように、前面枠2の開口部よりも大きな合成樹脂製の装飾カバー部22が遊技盤15の周辺部および前面枠2の上部表面(開閉パネル7よりも上部)の殆どを覆い得る枠状体であり、左右の縦部23a,23bの外半部が外周側から中央にかけて前面に膨出するように形成され、この膨出部の裏面に窪部24が形成され、前面枠2に蝶着される側とは反対側(自由端側)の縦部23bの上下ほぼ中央には、後述する錠部材25が嵌合する貫通開口部26が外縁部分から切欠状に形成されている。また、このカバー枠3の左右の縦部23a,23bおよび上下の横部27a,27bの内半部には、開口部28を囲う環状装飾部材29の取付部30が形成され、その裏面にはガラス21板の保持枠31の取付座32が形成されている。・・・
【0011】保持枠31は、内側に2条の溝が形成された断面略W字状の金属製の枠体であり、上端の左右をロッド36で連結し、上記溝内に透明部材として透明ガラス21を嵌挿して保持する。そして、この保持枠31は、保持部39と固定部40とによりカバー枠3の裏面の所定位置に固定される。・・・
【0013】前面枠2はベニア合板製の枠体であり、図5から図7に示すように、上記カバー枠3によって被覆される前面部分には、左右の縦部23a,23bに断面略Z字状の金属製の長尺な突出部材45,46が縦方向に取り付けられ、上横材の前面部分には前記した凹部33に嵌合する合成樹脂製の長尺な凸条35が設けられている。
【0015】一方、前面枠2の自由端側である右縦部23bに取り付ける突出部材46は、図7に示すように、左側の突出部材45と同様に、前面枠2の表面に固定されるベース面46aの一側から防犯壁46bが立設されており、この防犯壁46bの高さ(突出長さ)はカバー枠3の窪部24の深さよりも少し小さく設定する。したがって、カバー枠3を閉じると、防犯壁46bが窪部24内に嵌合し、これにより前面枠2とカバー枠3との隙間から挿入されるピアノ線等の侵入を防止することができる。なお、突出部材46は、突出部材45と同様に、ベース面46aに開設したネジ孔内に挿入したネジ50を前面枠2にねじ込むことにより固定される。
【0016】この突出部材46のベース面46aの他側には、断面略コ字状のスライドベース部46cを形成し、このスライドベース部46cに保持枠係合受部材51を上下方向にスライド可能な状態で添設し、保持枠係合受部材51には施錠方向に付勢するスプリング(図示せず)を接続するとともに、後述する錠部材25の後端から突出した回動ピン(図示せず)に接続し、保持枠係合受部材51に切欠溝状に形成した係合受部(図示せず)に保持枠31の自由端側に突設したフック状の係合部52が係合することによりカバー枠3を閉状態で施錠でき、錠部材の鍵穴に差し込んだ鍵を一方に回動操作して保持枠係合受51をスライドさせると係合部52が係合受部から外れて解錠するように構成してある。・・・
【0017】ところで、前面枠2の右縦部23bの上下方向のほぼ中央には、図8に示すように、貫通孔53を開設し、この貫通孔内に、前面枠2やカバー枠3を閉状態で施錠する錠部材としてシリンダ錠25を前面枠2の板厚方向に取り付け、図9に示すように、前面枠2の表面から突出したシリンダ錠25の前端部分を囲繞する状態で錠飾り部材54を取り付け、この錠飾り部材54によりシリンダ錠25の無機質感を払拭するとともにこの周りをパチンコ遊技機1のデザイン上でのアクセントとして装飾する。
【0018】この錠飾り部材54を取り付けるには、前面枠2の右縦部23bの幅がそれ程広くないので、図5に示すように、前記突出部材46の防犯壁46bおよびベース面46aの一部を切り欠いて錠飾り取付領域49を形成し、この錠飾り取付領域49に錠飾り部材54を取り付ける。
【0019】錠飾り部材54は、図9に示すように、シリンダ錠25の前端面が丁度嵌合する錠嵌合窓55を開設した合成樹脂製の色鮮やかな箱状ケースであり、本実施形態では前面枠2の表面に当接するベース部54aと錠嵌合窓55を開設した錠飾り部分54bとを異なる色彩で構成した二色成型で成形し、ベース部54aの上部と下部には肉厚な耳片状の取付部56を縁部分から上下方向に突設し、各取付部56にはネジ孔を開設し、また、両取付部56の側面からベース部54aの下端縁(前面枠2の表面に当接する開口部側の縁部)に沿って溝57を形成してある。そして、上方の取付部56の上端から下方の取付部56の下端までの長さを、錠飾り取付領域49に臨んでいる防犯壁46bの端部同士の間隔、すなわち切り欠いた防犯壁46bの長さに合わせて設定する。なお、錠飾り部材54は、二色成型に限らず別個に成型した部材を組み付けて構成してもよい。
【0020】上記した構成から成る錠飾り部材54を錠飾り取付領域49に取り付けるには、図9に示すように、シリンダ錠25の先端面を錠嵌合窓55内に嵌合するとともに、上方の取付部56を上方の防犯壁46bの下端に、下方の取付部56を下方の防犯壁46bの上端にそれぞれ合わせた状態で各取付部56のネジ孔内にネジを挿入し、このネジの先端雄ネジ部分を前面枠2の表面に締め込んで固定する。この様にして錠飾り部材54を前面枠2の表面に固定すると、各取付部56の端部が錠飾り取付領域49に臨んだ防犯壁46bの端部にそれぞれ接続する。・・・

したがって、これらの記載をまとめると、引用文献3には、
「保持枠係合受部材51に形成した係合受部に保持枠31の自由端側に突設したフック状の係合部52が係合することにより、透明ガラス21等の透明部材を有するカバー枠3を前面枠2に対して閉状態で施錠し、錠部材の鍵穴に差し込んだ鍵を一方に回動操作して保持枠係合受部材51をスライドさせると係合部52が係合受部から外れて解錠する、遊技機において、
枠状体であるカバー枠3の裏面の所定位置には、透明ガラス21を嵌挿して保持する保持枠31が固定され、
枠状体である前面枠2の、上記カバー枠3によって被覆される前面部分には、左右の縦部23a,23bに断面略Z字状の金属製の長尺な突出部材45,46が縦方向に取り付けられ、
前面枠2の自由端側である右縦部23bに取り付けられる突出部材46は、前面枠2の表面にネジ50により固定されるベース面46aの一側から防犯壁46bが立設されており、カバー枠3を閉じると、防犯壁46bがカバー枠3の窪部24内に嵌合し、これにより前面枠2とカバー枠3との隙間から挿入されるピアノ線等の侵入を防止することができ、
突出部材46のベース面46aの他側には、断面略コ字状のスライドベース部46cを形成し、このスライドベース部46cに保持枠係合受部材51を上下方向にスライド可能な状態で添設し、
突出部材46の防犯壁46bおよびベース面46aの一部を切り欠いて錠飾り取付領域49を形成し、
前面枠2の右縦部23bの上下方向のほぼ中央には、錠部材としてシリンダ錠25を前面枠2の板厚方向に取り付け、前面枠2の表面から突出したシリンダ錠25の前端部分を囲繞する状態で錠飾り部材54を取り付け、
錠飾り部材54は、前面枠2の表面に当接するベース部54aとシリンダ錠25の前端面が丁度嵌合する錠嵌合窓55を開設した錠飾り部分54bとを成形し、ベース部54aの上部と下部には耳片状の取付部56を縁部分から上下方向に突設し、
錠飾り部材54を錠飾り取付領域49に取り付けるには、シリンダ錠25の先端面を錠嵌合窓55内に嵌合するとともに、上方の取付部56を上方の防犯壁46bの下端に、下方の取付部56を下方の防犯壁46bの上端にそれぞれ合わせた状態で各取付部56のネジ孔内にネジを挿入し、このネジを前面枠2の表面に締め込んで固定する、遊技機。」という技術事項が記載されていると認められる。

2-4.引用文献4
実願昭63-81077号(実開平2-3784号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

「<産業上の利用分野>
この考案はパチンコ機の施錠装置の取付構造に関し、特に標準寸法より幅の狭い外枠においても共通の部材を適用することのできるパチンコ機の施錠装置の取付構造に関する。」(2頁6?10行)
「前記のような前枠3を外枠4に施錠する施錠装置16は、第3図に示すように、前枠3の自由端の裏面に止着する縦長な基板37を有し、該基板37には鍵穴が前枠3の前面に臨むシリンダ錠38を設け、該シリンダ錠38の一方向への回動により作動する鍵片39を基板37の上下部分に摺動可能に装着すると共に、上記シリンダ錠38の反対方向への回動により作動するガラス枠開放片40を摺動可能に装着する。
上記基板37は適宜肉厚の金属板を打抜き屈曲成形して、所要の位置に前面部41、側板部42、案内リブ43、案内ボス44、スプリング掛け45等を設けた縦長な断面ほぼL字形の部材である。この基板37の前面部41には円形の通孔(図示せず)を開設し、この通孔にシリンダ錠38を後面から通し、鍵穴を前枠3の前面に臨ませる。シリンダ錠38の後端には、鍵穴に挿入したキーの回動により回転する回転部材46を設ける。この回転部材46には前後方向に突出する2本の第1係合ピン47aと第2係合ピン47bを設ける。
また、基板37の側板部42には案内リブ43に案内されて、側板部42に沿って摺動可能な連動杆48を設ける。」(7頁11行?8頁13行)

2-5.引用文献5
実願昭63-113520号(実開平2-35775号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

「[従来の技術]
パチンコ機の前面に設けた錠装置の一例を第2図の横断面図に示す。・・・錠装置は、第3図の正面図及び第4図の平面図に示すように、ほぼL字状に形成された基枠3は、固定壁3aと、固定壁3aに対して略直角を成す垂直壁3bと、垂直壁3bより略直角に折曲された案内壁3cとより構成され、固定壁3aが前面枠Bの裏面に固着される。」(2頁6行?3頁4行)
「[実施例]
本考案の実施例について図面を参照しながら説明する。
なお、従来例と同一部品には同一符号を付す。
第1図は、手動、電動兼用型の錠装置の要部斜視図を示す。
同図において、基枠3は、前面枠B(第2図参照)の裏面に固着される固定壁3cと、固定壁3cに略直角な垂直壁3bと、垂直壁3bの上端より略直角に折曲して設けられた3cとより成り、固定壁3aに設けられた案内突起3dと垂直壁3bとの間に第1移動片4及び第2移動片5が移動可能に設けられ、シリンダ錠6のロータ8の端部に固着された回転板9に第1係合部10、第2係合部11が設けられ、第1移動片4がばね15により第1係合部10に圧接すると共に、第1移動片4に設けられた突起16が係止部材2に係合してガラス枠Dが施錠され、第2移動片5がばね19(第3図及び第4図参照)により第2係合部11に圧接すると共に、第2移動片5に設けられた爪20が係止部材1に係合して前面枠Bが側壁Aに施錠されることは従来例と同様である。」(8頁19行?9頁20行)

3.対比
本願補正発明と引用発明(「2-1.引用文献1」参照)を対比する。
引用発明の「後方側に設けられた機台枠2」は本願補正発明の「後面側に設けられた基枠」に相当し、以下同様に、
「第2可動錠板65」は「第1施錠機構」に、
「表枠3」は「第1施錠枠」に、
「第1可動錠板50」は「第2施錠機構」に、
「金枠5」は「第2施錠枠」に、
「第3可動錠板75」は「第3施錠機構」に、
「前枠6」は「第3施錠枠」に、
「キーを挿入可能なシリンダ錠」は「鍵部材を挿入可能にされた鍵挿入部材」に、
「取付片17とスライド保持片18」は「一対の板部」に、
「断面略L形状に形成され」は「それぞれの一端において屈曲された状態で接続され」に、相当する。
そして、引用発明の「固定基枠16の取付片17の上下に取付けられたガイド金具19間には第2可動錠板65の上下のガイド溝71a,71bがガイドピン20に挿通係合されて上下動可能に取付けられ、第1可動錠板50の上下に形成したガイド溝57a,57bをスライド保持片18に取付けた上下のガイドピン30に挿通係合し、第3可動錠板75はスライド保持片18に取付けられたガイドピン36a,36bを介してスライド可能に取付けられる 」との構成によって、「第2可動錠板65」、「第1可動錠板50」及び「第3可動錠板75」が「取付片17」又は「スライド保持片18」に取り付けられることは明らかであるから、当該構成は本願補正発明の「前記一対の板部によって前記第1施錠機構、第2施錠機構及び第3施錠機構を一体化するユニット基板」に相当する。

そうすると、両者は、
「後面側に設けられた基枠と、
前記基枠と第1施錠機構によって施錠される第1施錠枠と、
前記基枠及び第1施錠枠の少なくとも1つと第2施錠機構によって施錠される第2施錠枠と、
前記基枠、第1施錠枠及び第2施錠枠の少なくとも1つと第3施錠機構によって施錠される第3施錠枠と、
鍵部材を挿入可能にされた鍵挿入部材が固定されると共に、一対の板部がそれぞれの一端において屈曲された状態で接続され、かつ、前記一対の板部によって前記第1施錠機構、第2施錠機構及び第3施錠機構を一体化するユニット基板と、
を備えた遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明は、「一方の前記板部の他端に屈曲形成されて前記基枠と前記第1施錠枠の回動外端との隙間を塞ぐ阻止板が一方の前記板部に沿って延伸される」ものであるのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記鍵挿入部材固定位置において他方の前記板部の他端に屈曲形成された係止突起が他方の前記板部に沿って延伸される」ものであるのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

4.判断
そこで、上記各相違点について検討する。

4-1.相違点1について
遊技機において、後面側に設けられた基枠と当該機枠に施錠される施錠枠の回動外端との隙間を塞ぐ阻止板を備えたものは、例えば、引用文献2に記載された技術事項の「キャビネット1の前面に前扉2が取り付けられるゲーム機において、施錠状態で、前扉2の自由端側の隙間の内側に有効な壁となって位置する、受け金具10の帯本体11の縁部11a」及び引用文献3に記載された技術事項の「前面枠2の自由端側である右縦部23bであって、カバー枠3によって被覆される前面部分には、防犯壁46bを立設する突出部材46が縦方向に取り付けられる遊技機において、カバー枠3を閉じると、カバー枠3の窪部24内に嵌合し、これにより前面枠2とカバー枠3との隙間から挿入されるピアノ線等の侵入を防止することができる、防犯壁46b」に示されるように周知技術であるから、当該周知技術を引用発明において採用し、ピアノ線等の挿入される場所である基枠と第1施錠枠の回動外端との隙間を塞ぐように、そこに位置する板部に沿って阻止板を設けることにより、相違点1にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

4-2.相違点2について
遊技機において、鍵挿入部材固定位置において他方の板部の他端に屈曲形成された係止突起を他方の板部に沿って設けたものは、引用文献4の「案内リブ43」及び引用文献5の「案内壁3c」に示されるように周知技術であるから、当該周知技術を引用発明において採用し、鍵挿入部材固定位置において他方の板部の他端に屈曲形成された係止突起を他方の板部に沿って設けることにより、相違点2にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記各周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明
1.本願発明の認定
平成23年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(第2の1.の(補正前)を参照)に記載された事項により特定されるものである。

2.進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「鍵部材を挿入可能にされた鍵挿入部材が固定される」及び「前記鍵挿入部材固定位置において」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-29 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-16 
出願番号 特願2008-195107(P2008-195107)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石塚 良一  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 秋山 斉昭
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  

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