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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1260014
審判番号 不服2009-18353  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-29 
確定日 2012-07-11 
事件の表示 特願2004-500517「デジタルテレビジョンにおける自動信号エラーユーザ表示及びユーザのガイドによる回復方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日国際公開、WO03/92307、平成17年 8月11日国内公表、特表2005-524305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、平成15年4月21日(優先権主張2002年4月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成20年 9月30日(起案日)
手続補正 :平成20年12月18日
拒絶査定 :平成21年 5月29日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成21年 9月29日
手続補正 :平成21年 9月29日
前置審査報告 :平成21年12月 4日
審尋 :平成23年 1月13日(起案日)
回答書 :平成23年 7月19日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。
本願の各請求項に係る発明(平成20年12月18日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2000-115654号公報
刊行物2:特開平11-313260号公報(査定時周知例)
刊行物3:特開2000-165268号公報(査定時周知例)
刊行物4:特開平11-127397号公報(査定時周知例)

第2 補正却下の決定
平成21年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成21年9月29日付けの手続補正を却下する。

《理由》
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正前、平成20年12月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、補正前の請求項1ないし21を、補正後の請求項1ないし21とするものである。

特許請求の範囲(補正前)
【請求項1】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号の信号妨害についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階;
前記テレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階;
前記テレビジョン信号受信器に対する表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給する失敗が生じたかどうかを判定する段階;並びに
前記失敗が所定の時間期間に生じたと判定したときに、
ディスプレイに対して信号妨害についてのシステム状態情報のエラー状態の表現を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の回復にユーザをガイドするように動作する前記ディスプレイにユーザ選択可能介入オプションを提供する段階;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階は、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信する段階を有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記テレビジョン信号受信器により表示のための前記デジタルテレビジョン信号を提供するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のフロントエンドをロックするように試みる段階を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、テレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のガイド情報を処理するように試みる段階を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記テレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つをバッファリングするように試みる段階を有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記テレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つを復号化するように試みる段階を有する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、失敗が生じたと判定したときにディスプレイにエラー状態の表現を提供する段階は、前記エラー状態のグラフィック表現を提供する段階を有する、方法。
【請求項8】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階;
前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階;並びに
所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、
前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能妨害オプションを提供する段階;
を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階は、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信する段階を有する、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記テレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のフロントエンドをロックするように試みる段階を有する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記テレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のガイド情報を処理するように試みる段階を有する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、前記テレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つをバッファリングするように試みる段階を有する、方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法であって、前記テレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つを復号化するように試みる段階を有する、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、前記信号妨害のオンスクリーン表示表現を提供する段階は、前記信号妨害のグラフィック表現を提供する段階を有する、方法。
【請求項15】
デジタルテレビジョン信号を処理するように動作する処理回路/ロジック;
該前記処理回路/ロジックに結合しているデジタルチューナ;
前記処理回路/ロジックに接続されたオンスクリーン表示生成器;及び
前記処理回路/ロジックに結合されたメモリであって、前記処理回路により実行されるときに、テレビジョン信号受信器が、デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整するようにし、所定の時間期間に生じる前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出するときに、前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供し、前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作する前記オンスクリーン表示にユーザ選択可能介入オプションを提供するようにする、メモリ;
を有するデジタルテレビジョン信号受信器。
【請求項16】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号について前記チャネルを調整するようにするプログラム命令を更に有し、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信する、テレビジョン信号受信器。
【請求項17】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出するようにするプログラム命令を更に有し、前記デジタルテレビジョン信号のフロントエンドをロックするように試みる、テレビジョン信号受信器。
【請求項18】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出するようにするプログラム命令を更に有し、前記デジタルテレビジョン信号のガイド情報を処理するように試みる、テレビジョン信号受信器。
【請求項19】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出するようにするプログラム命令を更に有し、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つをバッファリングするように試みる、テレビジョン信号受信器。
【請求項20】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出するようにするプログラム命令を更に有し、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート、音声及び映像の少なくとも1つを復号化するように試みる、テレビジョン信号受信器。
【請求項21】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記テレビジョン信号受信器が、前記信号妨害のオンスクリーン表示を提供するようにするプログラム命令を更に有し、前記信号妨害のグラフィック表現を提供するように試みる、デジタルテレビジョン信号受信器。

特許請求の範囲(補正後)
【請求項1】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号の信号妨害についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器による提示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のエラー状態表現を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の回復にユーザをガイドするように動作する前記ディスプレイにユーザ選択可能介入オプションを提供する段階;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階は、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信する段階を有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を提供するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号受信器のフロントエンドをロックするように試みる段階を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のガイド情報を処理するように試みる段階を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号をバッファリングするように試みる段階を有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号受信器による表示のための前記デジタルテレビジョン信号を供給するように試みる段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号を復号化するように試みる段階を有する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記ディスプレイに前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報を表すエラー状態表現を提供する段階は、前記エラー状態のグラフィック表現を提供する段階を有する、方法。
【請求項8】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階;
前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する段階;
を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階は、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信する段階を有する、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号受信器のフロントエンドをロックするように試みる段階を有する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号受信器のガイド情報を処理するように試みる段階を有する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号をバッファリングするように試みる段階を有する、方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法であって、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出する段階は、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号を復号化するように試みる段階を有する、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、前記信号妨害を表現するオンスクリーン表示を提供する段階は、前記信号妨害のグラフィック表現を提供する段階を有する、方法。
【請求項15】
デジタルテレビジョン信号受信器であって:
デジタルテレビジョン信号を処理するように動作する処理回路/ロジック;
該処理回路/ロジックに結合しているデジタルチューナ;
前記処理回路/ロジックに接続されたオンスクリーン表示生成器;及び
前記処理回路/ロジックに結合されたメモリであって、前記処理回路により実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、
デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始し、
所定の時間期間に生じる前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出し、
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの検出に対応する前記信号妨害の性質を決定し、
前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供し、前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作する前記オンスクリーン表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する、
ようにするプログラム命令を有する、メモリ;
を有するデジタルテレビジョン信号受信器。
【請求項16】
請求項15に記載のテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行される際であり、特定のテレビジョンチャネルについてのユーザ要求を受信するときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が前記デジタルテレビジョン信号について前記チャネル調整を開始するようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。
【請求項17】
請求項15に記載のデジタルテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出し、前記デジタルテレビジョン信号のフロントエンドをロックするようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。
【請求項18】
請求項15に記載のデジタルテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出し、前記デジタルテレビジョン信号のガイド情報を処理するようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。
【請求項19】
請求項15に記載のデジタルテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出し、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号をバッファリングするようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。
【請求項20】
請求項15に記載のデジタルテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、前記デジタルテレビジョン信号に関する前記信号妨害を検出し、前記デジタルテレビジョン信号のトランスポート信号、音声信号及び映像信号の少なくとも一の信号を復号化するようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。
【請求項21】
請求項15に記載のデジタルテレビジョン信号受信器であって、前記メモリは、前記処理回路/ロジックにより実行されるときに、前記デジタルテレビジョン信号受信器が、前記信号妨害のオンスクリーン表示を提供し、前記信号妨害のグラフィック表現を提供ようにする更なるプログラム命令を有する、テレビジョン信号受信器。

2.補正の適合性
(1)補正の範囲(第17条の2第3項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的(第17条の2第4項第1号?第4号)
(2a)補正事項
本件補正は、少なくとも、補正前請求項8についてする、以下の補正事項を含むものである。
補正前の請求項8の
「前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階;並びに
所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、
前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」の記載を、補正後の請求項8の
「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」の記載とする補正。

(2b)上記補正事項に対する判断
(2b-1)補正前の請求の範囲「前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」を、補正後の請求の範囲「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階」と補正することについてについて
発明の詳細な説明をみれば、本件補正発明が検出する信号妨害は、テレビジョン信号受信器にて処理されるテレビジョン信号に関する信号妨害であり、テレビジョン信号受信器に関する信号妨害ではないから誤記の訂正である。
(2b-2)補正前の請求の範囲「所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、
前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」を、
補正後の請求の範囲「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」と補正することについて
上記補正事項に関して、発明の詳細な説明の記載は、段落【0026】-【0034】を参酌すると、おおむね以下のとおりである。
例えば、【0027】、【0028】の例では、
デジタルテレビジョンチャネルへのチューニングの試みは、種々のシステムレベルのチューニングにおける幾つかの試みを含み、幾つかのチューニングの試みを割り当てるには十分とした後、チューニングに対する失敗は認識され、チューニングに対する失敗は、信号妨害を構成し、(チューニングに対する失敗という)信号妨害のために、ユーザにシステム状態情報を提供することで、ユーザは信号妨害の性質を知ることができ、
同【0029】の例では、
フロントエンドをロックする試みは、代表的には、種々のシステムレベル及び/又は種々の連続的段階のロックにおける幾つかの試みを含み、幾つかのロッキングの試み、若しくはそのような再試行機構及び/又はタイムアウトの実行を割り当てるには十分とした後に、フロントエンドのロックに対する失敗は認識され、フロントエンドのロックに対する失敗は、信号妨害を構成し、ロックに対する失敗に関連し、表示されることで、チャネルエネルギーの不足、ビットエラーレート情報等のような情報がユーザに提供され、ユーザは信号妨害の性質を知ることができ、
同【0030】の例では、
ガイド情報を処理する試みは、音声/映像PID、格付けデータ等のような、種々のシステムレベル及び/又は種々の連続的段階の処理における幾つかの試みを含み、幾つかの処理の試みを割り当てるには十分とした後に、ガイドデータの処理に対する失敗は認識され、処理に対する失敗は、信号妨害を構成し、成功しなかった、多くの整合性のチェック、データCRC値及びデータのチェック範囲は、(ユーザへの表示のために解釈され、)ユーザインタフェースに送られ、ユーザに情報が提供され、ユーザは信号妨害の性質を知ることができ、
同【0031】の例では、
バッファリング/復号化を実行する試みは、種々のシステムレベル及び/又は種々の連続的段階の処理における幾つかの試みを含み、幾つかの処理の試みを割り当てるには十分とした後に、バッファリング/復号化に対する失敗は認識され、処理に対する失敗は、信号妨害を構成し、成功しなかった、多くの整合性のチェック、データCRC値及びデータのチェック範囲は、(ユーザへの表示のために解釈され)ユーザインタフェースに送られ、ユーザに情報が提供され、ユーザは信号妨害の性質を知ることができ、
る構成であることが理解できる。
上記記載によれば、「(テレビジョン信号に関する)信号妨害を検出する段階」は【0027】ないし【0031】のそれぞれの例にある「幾つかの試み」の「各(ひとつひとつの)試み」であって、この「幾つかの試み」を割り当てるには十分とした後(すなわち、「幾つかの試み」の最初の試みが開始され、最後の試みが終えるまでの時間)を、請求の範囲では「所定の時間期間」といい、
上記【0027】ないし【0031】の各例のそれぞれで、所定の時間期間の間に失敗が認識されることを、
「所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき」(補正前の請求の範囲)、
「デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じた(ことの判定)」(補正後の請求の範囲)
と表現していると認めることができる。
ここで、補正後の請求の範囲において、「前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」の「前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定」は、請求の範囲に、「判定する段階」が、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」しかないから、この「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」でなされた「判定」が、「前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」の「判定」ということができる。
すなわち、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」は、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階」であるということができ、上記判定する段階にて「信号妨害(があること)を検出したとき」が、補正前の「所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき」に対応する。
次に、「前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」の「判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」について検討する。
「判定に対応する前記信号妨害の性質」であるから、信号妨害は「判定」に対応するものであり、また、上で検討したとおり、「判定」は、【0027】ないし【0031】の各例のそれぞれで、所定の時間期間の間に失敗が認識されることをいうのであるから、「(判定に対応する)前記信号妨害の性質」とは、【0027】ないし【0031】のそれぞれの例で判定された各例の判定(所定の時間期間の間に認識された失敗)に対応しているものであるということができる。
してみると、「信号妨害の性質を決定する」とは、「(上記各例の判定に対応するように)判定結果を区別する」ことであって、具体的には、「チューニングに対する失敗(【0027】、【0028】」、「フロントエンドのロックに対する失敗(【0029】)」、「ガイドデータの処理に対する失敗(【0030】)」、「バッファリング/復号化に対する失敗(【0031】)」の判定を区別し、どの判定により信号妨害が生じたと判定しているかを決定する、すなわち、信号妨害が生じたその内容等を決定していることということができる。
そして、補正前の請求の範囲では、「(所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、)前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」を有しているのであるから、オンスクリーン表示がなされるのは、上記【0027】ないし【0031】それぞれの例を区別することなく、どれかひとつの例で失敗が認識されれば、失敗したという情報が提供されることを「オンスクリーン表示を提供する段階」というものと理解できる。
これに対して、補正後の請求の範囲は、「(前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;)
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」とあるから、「信号妨害の性質を決定する段階」で決定した信号妨害の内容等を、理解することができるように表示することが「ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」であるということができる。
すなわち、補正後の請求の範囲では、「信号妨害が検出される例」が、【0027】ないし【0031】のように複数あって、オンスクリーンに表示をする際に、上記複数ある「信号妨害が検出される例」の、いずれによって「信号妨害が検出され」たかという信号妨害の内容等を区別し、表示することを「(前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの)判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」と表現しているということができる。
してみると、補正前の特許請求の範囲では、「信号妨害が検出され」ることと、その結果を表示する構成であったのに対し、補正後の特許請求の範囲では、「信号妨害が検出され」ることが複数あって、上記複数の「信号妨害が検出され」た結果を、それぞれ(区別して)表示することに限定したということができるから、特許請求の範囲の限定的減縮ということができる。

以上のことから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項に規定された、特許請求の範囲の減縮に該当する補正事項を含んでいると認められる。

(3)独立特許要件(第17条の2第5項)
本件補正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする、上記補正事項を含むものである。そこで検討する。

(3a)補正後の本願発明(本件補正発明)
平成21年9月29日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載された発明(以下「本件補正発明」という)は、次のとおりのものである。

【請求項8】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階;
前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する段階;
を有する方法。

(3b)刊行物A(特開2000-49720号公報)の記載内容
前置報告書にて審査官が引用した、特開2000-49720号公報(以下「刊行物A」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル放送受信装置における放送電波の受信状況不良時に、その受信状況不良を診断し、その診断結果を表示するデジタル放送受信状況の診断システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4(ブロック図)は、従来のデジタル放送受信状況の診断システムを示すものであり、そのデジタル放送受信状況の診断システムは、デジタル放送電波を受信する受信アンテナAからの受信信号を受け信号処理をする受信信号処理装置Bにおける前記受信信号の電界強度を検出する信号強度検出手段D11、該信号強度検出手段D11で検出した受信信号の電界強度に基づいて放送電波の受信状態を判定する受信状態判定手段D2、該受信状態判定手段D2による判定結果に基づいて放送電波の受信状況を診断する受信診断手段D3、及び前記受信診断手段D3による診断結果を表示する表示手段D4とから構成されている。なお、選局装置Cは、一般のデジタル放送受信装置における操作ボタンなどの操作手段を有する選局装置であって、この受信状況診断システムにおいては、受信状態判定手段D2による判定結果が「受信状況・不良」、すなわち、受信信号の電界強度が不十分と判定されたとき、ユーザが操作ボタンなどの操作手段を操作し他の放送局を選局して、他の放送局の放送電波の受信状況を診断するためのものである。
【0003】以上のような、従来のデジタル放送受信状況の診断システムの基本的動作を、図5(フローチャート)を用いて説明する。まず、受信アンテナAによって受信され受信信号処理装置Bにより信号処理された受信信号の電界強度が信号強度検出手段D11にて検出され(ステップS51)、その検出信号レベルに基づいてその受信状態(信号強度)が良好であるか否かが受信状態判定手段D2にて判定される(ステップS52)。受信状態判定手段D2による判定結果が「YES:良好である」であれば、前記信号強度検出ステップ(ステップS51)に戻り、該信号強度検出ステップ(ステップS51)と前記信号強度判定ステップ(ステップS52)からなるループを繰り返し、受信状態判定手段D2による判定結果が「NO:良好でない」ときには、ユーザにより選局装置Cを操作し他の放送局が選局される(ステップS53)。
【0004】他の放送局が選局される(ステップS53)と、選局された放送電波の受信信号の電界強度が信号強度検出手段D11にて検出され、受信状態判定手段D2によって、その受信状態(信号強度)が良好であるか否かが判定される(ステップS54)。そして、その判定結果が「YES:良好」であれば、先の判定(ステップS52)で「NO:良好でない」と診断された放送局側に受信状況不良の原因があることが受信診断手段D3により診断され、その診断結果が表示され(ステップS56)、判定結果が「NO:良好でない」であれば、「受信状況・不良」という診断結果が表示される(ステップS55)。なお、上記受信診断手段D3により診断されて表示手段D4により表示される「受信状況・不良」の原因は、デジタル放送自体、気象条件、アンテナ、あるいは衛星食などによる放送電波の電界強度が不十分によるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来のデジタル放送受信状況の診断システムにおいては、受信診断結果の内容が、単純に、放送局側の問題とか、放送電波の電界強度の問題とかであるため、受信状況不良の真の原因が判らず適切な対策を講ずることができないという問題がある。また、ユーザによって選局装置Cを操作しなければならないため、受信状況の診断に時間がかかり煩わしいという問題もある。また、従来、この種のデジタル放送受信状況の診断システムとして、デジタル放送受信装置特有のLOCK信号やエラー率を測定して診断する診断システムや、AGC信号レベルから放送電波の電界強度を間接的に測定して診断したり、誤り訂正処理結果に基づいて診断する診断システムも知られているが、LOCK信号やエラー率を測定して診断する診断システムにおいては、受信状況の善し悪しといった程度の診断であり、他の多くの要因まで判定して診断するものではなく、また、AGC信号レベルから放送電波の電界強度を間接的に測定して診断する診断システム、誤り訂正処理結果から診断する診断システムなどは、いずれも単純な診断をするものであり、迅速かつ的確な診断はできないなどの問題がある。
【0006】以上のように、従来のデジタル放送受信状況の診断システムのいずれも、それぞれのパラメータ受信情報を個々に使用した診断システムであるので、ユーザには放送電波の受信状態の善し悪しの診断しか判らず、何が原因で受信状況が不良なのか推測することも、その対応もすることができないという問題点がある。本発明は、上記の問題点を解消して、ユーザによる放送電波の受信状況の診断が、簡単、迅速、的確に行うことができるデジタル放送受信状況の診断システムを得ることを目的(課題)とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明のデジタル放送受信状況の診断システムの実施の形態を、図1,図2を用いて説明をする。図1は、本発明のデジタル放送受信状況の診断システムを示すものであり、この受信状況の診断システムは、デジタル放送電波を受信する受信アンテナAからの受信信号を信号処理する受信処理装置Bにおける複数のパラメータ信号を検出する判定パラメータ信号検出手段D1(信号強度検出手段D11、LOCK信号検出手段D12、エラー数検出手段D13、及びイコライザ動作環境検出手段D14から構成されている)、判定パラメータ信号検出手段D1で検出した複数のパラメータ信号のそれぞれの受信状態を判定する受信状態判定手段D2、受信状態判定手段D2による判定結果に基づいて放送電波の受信状況の良否を診断するとともに、その対策を指示する受信診断手段D3、及び受信診断手段D3による診断結果とその対策を表示する表示手段D4とから構成されている。なお、選局手段D15は、受信状況の診断システムの前記受信状態判定手段D2の判定結果が「受信状況・不良」であるとき、自動的に、他の放送局を選局する選局手段である。
【0011】以上の本発明のデジタル放送受信状況の診断システムの動作を、図2(フローチャート)を用いて説明する。まず、任意の放送局にチャネル選局(ステップS20)を行った後、受信信号処理装置Bにより信号処理された受信信号から、LOCK信号検出手段D12によって検出されたLOCK信号の有無が判定され(ステップS21)、その判定結果が、「YES:LOCK信号あり」であれば、次に、エラー数検出手段D13により受信信号のエラー数が検出され、受信状態判定手段D2でそのエラー率が判定される(ステップS22)。そして、エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「YES:誤り(エラー)が少ない」であるときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4によって「受信状況・良好」と表示される(ステップS23)。一方、エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「NO:誤り(エラー)が多い」であるときは、受信診断手段D3によって「ビット誤りが多い」と診断され、表示手段D4によって、受信状況「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」などが表示される(ステップS28)。
【0012】また、上記LOCK信号判定ステップ(ステップS21)において、「NO:LOCK信号なし」と判定されたときは、受信診断手段D3により「LOCK信号なし」と診断され、表示手段D4によって、受信状況「LOCK信号なし」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」が表示される(ステップS24)と同時に、受信状態判定手段D2によって、放送電波の受信信号の電界強度が十分であるか不十分であるが判定される(ステップS25)。そして、表示ステップS24において、ユーザによりアンテナの方向と接続が確認され、その確認後の信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)において、イコライザ動作環境検出手段D14によって検出されたタップ係数から、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果が、「YES:ゴーストがなくノイズが少ない」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4により「受信状況・良好」と表示され(ステップS27)、また、判定結果が「NO:ゴーストがありノイズが大きい」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好でない」と診断され表示手段D4により「受信状況・不良」と、その原因「ゴーストがありノイズが大きい」が表示される(ステップS30)。
【0013】一方、受信状態判定手段D2における前記受信信号強度判定ステップ(ステップS25)における判定結果が「NO:不十分」であれば、受信診断手段D3によって、「受信状況は良好でない」と診断され、表示手段D4によって「受信状況・不良」とユーザへの指示「アンテナ方向の再確認,ブースタ使用のすすめ」が表示される(ステップS31)。また、受信状態判定手段D2における前記エラー率判定ステップ(ステップS22)において、「NO:誤りが多い」と判定され、表示手段D4によって「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続などの確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」が表示された(ステップS28)場合は、ユーザによる「アンテナ方向と接続などの確認」を行い、その後、イコライザ環境動作を「REFモード」に変更する(ステップS29)と、再度、上記エラー率判定ステップ(ステップS22)が実行される。
【0014】さらに、受信状態判定手段D2における信号強度判定ステップ(ステップS25)による判定結果が「NO:不十分」であり、「受信状況は良好でない」と診断され、「受信状況・不良」と表示された(ステップS31)場合は、自動的に、選局手段D15によって他の放送局が選局され(ステップS32)、再び、選局された放送局からの放送電波に対して同様な受信状況診断システムの動作が行われ、その放送電波の受信状況の診断が行われる。この受信状況診断によって、先の放送電波受信状況の診断により「受信状況・不良」とされた放送局側に受信状況不良の原因があるのか否かの診断が、迅速かつ的確に行うことができる。
【0015】以上のように、このデジタル放送電波受信状況の診断システムは、チャネル選局ステップ(ステップS20)の実行から始まり、選局された放送電波について、4つのパラメータ信号判定ステップ(S21,S22,S25,S26)の実行によって、その受信状況の診断が行われ、その診断結果・対策の表示ステップ(S21,S22,S25,S26)の実行により、その動作は終了する。なお、選局手段D15による「他の放送局・選局ステップ(ステップS32)」は、自動的に行われるものであるが、選局操作ボタンなどの手動操作手段により、ユーザが、適宜、実行させることもできる。また、診断結果及びその対策を表示する表示手段D4は、スピーカなどによる音、又は振動によって、ユーザに報知する報知手段であってもよい。

(3c)引用発明
(3c-1)デジタル放送受信状況の診断システム
刊行物Aの「本発明は、デジタル放送受信装置における放送電波の受信状況不良時に、その受信状況不良を診断し、その診断結果を表示するデジタル放送受信状況の診断システムに関するものである。」【0001】の記載によれば、刊行物Aに開示された発明は、「デジタル放送受信装置における、放送電波の受信状況不良を診断し、その結果を表示する、デジタル放送受信状況の診断システムに関する」発明であるということができる。
そして、以下で検討するように、上記「診断し、その結果を表示する」ための、以下の各ステップを有しているから、「診断し、その結果を表示する」ための各ステップを有する方法の発明であるということができる。
以上のことから、刊行物1に記載された発明は、「デジタル放送受信装置における、放送電波の受信状況不良を診断し、その結果を表示する、デジタル放送受信状況の診断システムに関する、各ステップを有する方法」ということができる。

(3c-2)チャンネル選局
刊行物Aの「本発明のデジタル放送受信状況の診断システムの動作を、図2(フローチャート)を用いて説明する。まず、任意の放送局にチャネル選局(ステップS20)を行った後」【0011】の記載によれば、刊行物Aの受信診断システムは「まず、任意の放送局にチャンネル選局を行うステップを有し」ているということができる。

(3c-3)受信診断手段
刊行物Aの【0011】-【0014】の
ア:「受信信号処理装置Bにより信号処理された受信信号から、LOCK信号検出手段D12によって検出されたLOCK信号の有無が判定され(ステップS21)、その判定結果が、「YES:LOCK信号あり」であれば、次に、エラー数検出手段D13により受信信号のエラー数が検出され、受信状態判定手段D2でそのエラー率が判定される(ステップS22)。そして、エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「YES:誤り(エラー)が少ない」であるときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4によって「受信状況・良好」と表示される(ステップS23)。一方、エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「NO:誤り(エラー)が多い」であるときは、受信診断手段D3によって「ビット誤りが多い」と診断され、表示手段D4によって、受信状況「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」などが表示される(ステップS28)。」
イ:「上記LOCK信号判定ステップ(ステップS21)において、「NO:LOCK信号なし」と判定されたときは、受信診断手段D3により「LOCK信号なし」と診断され、表示手段D4によって、受信状況「LOCK信号なし」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」が表示される(ステップS24)と同時に、受信状態判定手段D2によって、放送電波の受信信号の電界強度が十分であるか不十分であるが判定される(ステップS25)。そして、表示ステップS24において、ユーザによりアンテナの方向と接続が確認され、その確認後の信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)において、イコライザ動作環境検出手段D14によって検出されたタップ係数から、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果が、「YES:ゴーストがなくノイズが少ない」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4により「受信状況・良好」と表示され(ステップS27)、また、判定結果が「NO:ゴーストがありノイズが大きい」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好でない」と診断され表示手段D4により「受信状況・不良」と、その原因「ゴーストがありノイズが大きい」が表示される(ステップS30)。」
ウ:「受信状態判定手段D2における前記受信信号強度判定ステップ(ステップS25)における判定結果が「NO:不十分」であれば、受信診断手段D3によって、「受信状況は良好でない」と診断され、表示手段D4によって「受信状況・不良」とユーザへの指示「アンテナ方向の再確認,ブースタ使用のすすめ」が表示される(ステップS31)。また、受信状態判定手段D2における前記エラー率判定ステップ(ステップS22)において、「NO:誤りが多い」と判定され、表示手段D4によって「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続などの確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」が表示された(ステップS28)場合は、ユーザによる「アンテナ方向と接続などの確認」を行い、その後、イコライザ環境動作を「REFモード」に変更する(ステップS29)と、再度、上記エラー率判定ステップ(ステップS22)が実行される。」
の記載によれば、
刊行物Aの受信診断手段は、
「診断ア:(ステップ21でLOCK信号有りの場合に、)エラー率判定ステップ(ステップ22)でエラーが多いか少ないか判定し、その診断結果を表示するステップ、
診断イ:(ステップ21でLOCK信号なしの場合に、)受信信号強度判定ステップ(ステップ25)で判定結果が、不十分であれば、その診断結果を表示するステップ、
診断ウ:(ステップ25の判定結果が「YES:十分」の場合に、)イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)で、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果に基づく診断結果を表示」するステップを有していることが理解できる。

(3c-4)診断結果の表示内容
上記(3c-3)で検討した、診断アないし診断ウの「診断結果を表示するステップ」にて表示される診断結果の表示は、
診断ア:
エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「YES:誤り(エラー)が少ない」であるときは、「受信状況・良好」と表示され(ステップ23)、
エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「NO:誤り(エラー)が多い」であるときは、(受信診断手段D3によって「ビット誤りが多い」と診断され、)表示手段D4によって、受信状況「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」などが表示され(ステップ28)、
診断イ:
(信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)へ)、受信信号強度判定ステップ(ステップS25)における判定結果が「NO:不十分」であれば、受信診断手段D3によって、「受信状況は良好でない」と診断され、表示手段D4によって「受信状況・不良」とユーザへの指示「アンテナ方向の再確認,ブースタ使用のすすめ」が表示され(ステップ31)、
診断ウ:
(信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、)イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)において、イコライザ動作環境検出手段D14によって検出されたタップ係数から、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果が、「YES:ゴーストがなくノイズが少ない」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4により「受信状況・良好」と表示され(ステップS27)、また、判定結果が「NO:ゴーストがありノイズが大きい」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好でない」と診断され表示手段D4により「受信状況・不良」と、その原因「ゴーストがありノイズが大きい」が表示される(ステップS30)
各ステップを有しているということができる。

(3c-5)まとめ
上記(3c-1)ないし(3c-4)によれば、刊行物Aに記載された発明(以下、「引用発明」という。)として、以下のとおりのものを認定することができる。

デジタル放送受信装置における、放送電波の受信状況不良を診断し、その結果を表示する、デジタル放送受信状況の診断システムに関する発明であって、
まず、任意の放送局にチャンネル選局を行うステップを有し、
診断ア:(ステップ21でLOCK信号有りの場合に、)エラー率判定ステップ(ステップ22)でエラーが多いか少ないか判定し、その診断結果を表示するステップ、
診断イ:(ステップ21でLOCK信号なしの場合に、)受信信号強度判定ステップ(ステップ25)で判定結果が、不十分であれば、その診断結果を表示するステップ、
診断ウ:(ステップ25の判定結果が「YES:十分」の場合に、)イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)で、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果に基づく診断結果を表示するステップを有し、
診断アないし診断ウの「診断結果を表示するステップ」にて表示される診断結果の表示は、
診断ア:
エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「YES:誤り(エラー)が少ない」であるときは、「受信状況・良好」と表示され(ステップ23)、
エラー率判定ステップ(ステップS22)の判定結果が「NO:誤り(エラー)が多い」であるときは、(受信診断手段D3によって「ビット誤りが多い」と診断され、)表示手段D4によって、受信状況「ビット誤りが多い」と、ユーザへの指示「アンテナ方向と接続の確認」,「イコライザ環境をREFモードに変更(但し、ゴーストがない場合)」などが表示され(ステップ28)、
診断イ:
(信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)へ)、受信信号強度判定ステップ(ステップS25)における判定結果が「NO:不十分」であれば、受信診断手段D3によって、「受信状況は良好でない」と診断され、表示手段D4によって「受信状況・不良」とユーザへの指示「アンテナ方向の再確認,ブースタ使用のすすめ」が表示され(ステップ31)、
診断ウ:
(信号強度判定ステップ(ステップS25)の判定結果が、「YES:十分」であれば、次の、)イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)において、イコライザ動作環境検出手段D14によって検出されたタップ係数から、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果が、「YES:ゴーストがなくノイズが少ない」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好である」と診断され表示手段D4により「受信状況・良好」と表示され(ステップS27)、また、判定結果が「NO:ゴーストがありノイズが大きい」と判定されたときは、受信診断手段D3により「受信状況は良好でない」と診断され表示手段D4により「受信状況・不良」と、その原因「ゴーストがありノイズが大きい」が表示される(ステップS30)
各ステップを有する方法。

(3d)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(3d-1)「デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって」について

引用発明は「デジタル放送受信装置における、放送電波の受信状況不良を診断し、その結果を表示する、デジタル放送受信状況の診断システムに関する、各ステップを有する方法」であることは、上記(3c-1)にて検討したとおりである。
刊行物Aには、「デジタル放送受信装置」が「デジタルテレビジョン信号受信器」であるとの記載はないが、刊行物Aの【0020】には「表1の診断結果の定義」として「(c)悪い(映像が乱れる)。」との記載があることから、映像信号を受信する受信装置であることは明らかであり、映像信号を受信する放送受信装置はテレビジョン信号受信器ということができるから、刊行物Aの「デジタル放送受信装置」は「デジタルテレビジョン信号受信器」といえる。
そして、引用発明のデジタル放送受信装置は「デジタルテレビジョン信号受信器」ということができるのであるから、引用発明が受信する「放送電波」は、デジタルテレビジョン信号であるということができる。
引用発明の「放送電波の受信状況不良」とは、デジタル放送受信装置において、前記放送電波を受信したとき、放送電波が、送信局からデジタル放送受信装置に至る過程で生じた前記放送電波に生じた状況不良のことであることは明らかであり、放送電波が送信局からデジタル放送受信装置に至る過程というシステムの状態の状況不良(すなわち、システムの状態)ということができるから、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態ということができる。
そして、引用発明は、放送電波の受信状況不良の診断結果を表示しているから、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態の診断結果を表示しており、システム状態の診断結果は、システム状態の情報ということができ、上記情報を表示することは、上記情報を提供しているといえる。
以上のことからみて、引用発明は「デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法」であるということができる。

(3d-2)「前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階」について

本件補正発明の「チャネル調整」について、発明の詳細説明を参酌すると、【0026】に有るように「(コマンド又は要求を受信して)デジタルテレビジョンチャネルにチューニングする」ことであると認めることができるから、本件補正発明の「前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階」は、「前記デジタルテレビジョン信号についてデジタルテレビジョンチャネルにチューニングすることを開始する段階」といえる。
これに対して、引用発明は「まず、任意の放送局にチャンネル選局を行うステップを有し」ている。
引用発明の「放送」は「デジタルテレビジョン放送」であるといえることは、前記(3d-1)にて検討したとおりであり、選局される放送局の「放送信号」および「放送されるチャンネル」は、それぞれ、「デジタルテレビジョン信号」、「デジタルテレビジョンチャンネル」であるということができる。
引用発明の「任意の放送局にチャンネル選局を行う」とは、「所望の放送局の放送信号を受信するため、複数の放送局の中から任意に一つの放送局を選択し、選択した放送局が放送する放送信号が放送されているチャンネルを選局し、選局した放送信号を受信するようにチューニングする」ことといえ、いいかえると、引用発明は「所望の放送信号を受信するため、上記所望の放送信号が放送されているチャンネルに選局(チューニング)」しているといえる。
引用発明は上記選局を「まず・・・行う」のであるから、「選局を開始」しているといえる。
以上のことから、引用発明は「所望のデジタルテレビジョン信号を受信するため、上記所望のデジタルテレビジョン信号が放送されているデジタルテレビジョンチャンネルにチューニングを開始するステップ」を有しているといえる。
引用発明は「所望のデジタルテレビジョン信号を受信するため、・・・チューニングを開始する」のであるから、「(所望の)デジタルテレビジョン信号について、デジタルテレビジョンチャンネルにチューニングを開始するステップ」を有しているといえ、本件補正発明と相違がない。

(3d-3)「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」について

上記第2 2.(2)(2b)で検討したように、
(あ)本件補正発明の「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階」が、発明の詳細な説明の【0027】ないし【0031】の例においてなされる「幾つかの試み(のひとつひとつ)」に対応し、
(い)本件補正発明の「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」は、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階」であって、発明の詳細な説明の、【0027】ないし【0031】の各例のそれぞれで、所定の時間期間の間に失敗が認識されることに対応し、
(う)本件補正発明の「(前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの)判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」とは、発明の詳細な説明の、【0027】ないし【0031】の、どの判定により、信号妨害が生じたかどうか決定することであり、信号妨害が生じたその内容等を決定していることに対応し、
(え)本件補正発明の「ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」は、発明の詳細な説明の、「信号妨害の性質を決定する段階」で決定した信号妨害の内容等を、理解することができるように表示することに対応し
ているということができる。

本件補正発明を上記発明の詳細な説明を参酌して引用発明と対比する。
(ア)「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階」について
引用発明は、
「診断ア:(ステップ21でLOCK信号有りの場合に、)エラー率判定ステップ(ステップ22)でエラーが多いか少ないか判定し、その診断結果を表示するステップ、
診断イ:(ステップ21でLOCK信号なしの場合に、)受信信号強度判定ステップ(ステップ25)で判定結果が、不十分であれば、その診断結果を表示するステップ、
診断ウ:(ステップ25の判定結果が「YES:十分」の場合に、)イコライザ・タップ係数判定ステップ(ステップS26)で、ゴーストの有無、及びノイズの大小が判定され、その判定結果に基づく診断結果を表示するステップ」を有している。
上記「診断ア」ないし「診断ウ」のそれぞれの判定ステップにおいて、「エラーが多い(診断ア)」、「(受信強度が)不十分(診断イ)」、「ゴースト有り及びノイズ大(診断ウ)」と判定される場合は、受信が正常に行われていないという点において、本件補正発明の信号妨害が生じた状態を検出しているということができ、上記それぞれの判定ステップは、本件補正発明の「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階」といえる。

(イ)「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」について
本件補正発明の「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が生じたかどうかを判定する段階」が、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階」であって、発明の詳細な説明の、【0027】ないし【0031】の各例のそれぞれで、所定の時間期間の間に失敗が認識されることに対応していることは前記のとおりである。
これに対して、引用発明の上記「診断ア」ないし「診断ウ」の各判定ステップは、本件補正発明の「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階」といえることは、上記(ア)にて検討したとおりである。
そして、引用発明は、上記「診断ア」ないし「診断ウ」の各判定ステップでそれぞれ判定を行う(すなわち、それぞれ個別に信号妨害を検出する)と、上記検出をもって、診断結果を表示するステップに移行するから、「信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうか」を判定していない。
したがって、引用発明は、「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階」に相当する構成を有しているということができない。

(ウ)「(前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの)判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」について
本件補正発明の「(前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの)判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」とは、発明の詳細な説明の、【0027】ないし【0031】の、どの判定により、信号妨害が生じたかどうか決定することであり、信号妨害が生じたその内容等を決定していることに対応している。
これに対して、引用発明は、診断アないし診断ウにおいて、受信が正常に行われていないと診断された場合の診断結果の表示として、「受信状況「ビット誤りが多い」とユーザへの指示(診断ア)」、「「受信状況・不良」とユーザへの指示(診断イ)」、「「受信状況・不良」とその原因(診断ウ)」が表示されるから、ユーザはそれぞれの表示を見ることにより、診断アないし診断ウのいずれの判定の結果、信号妨害が生じているか知ることができる。
すなわち、上記診断アないし診断ウの判定内容等を異なるように表示しているということができ、診断アないし診断ウの判定内容等を異なるように区別しているのであるから、診断アないし診断ウの判定内容等を決定しているといえる。
引用発明の「診断アないし診断ウの各判定ステップ」が、本件補正発明の「信号妨害を検出する段階」といえることは、上記(ア)にて検討したとおりである。
以上のことから、引用発明も信号妨害の内容等を決定しているということができ、この点において、本件補正発明と相違がない。
したがって、引用発明は「(判定に)対応する前記信号妨害の性質を決定する段階」に対応する構成を有しているということができる。
もっとも、上記(イ)で検討したとおり、本件補正発明の「判定(に対応する前記信号妨害の性質)」は、「前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定(に対応する前記信号妨害の性質)」であるのに対し、
引用発明の「診断アないし診断ウ」は、それぞれ個別に信号妨害を検出すると、上記検出をもって、診断結果を表示するステップに移行するから、「信号妨害の検出(に対応する前記信号妨害の性質)」である点で相違する。

(エ)「ディスプレイに対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」について
本件補正発明の上記段階が、「発明の詳細な説明の、「信号妨害が検出され」ることが複数あって、上記複数の「信号妨害が検出され」た結果を、それぞれ(区別して)表示することに対応し」ていることは前記のとおりである。
引用発明の「診断アないし診断ウの判定内容等を決定する」ことが、本件補正発明の「信号妨害の性質を決定する」に対応することは、上記(ウ)にて検討したとおりである。
そして、引用発明の、「放送電波の受信状況不良の診断結果を表示」することが、「システム状態情報の提供」に対応することは、上記(ア)にて検討したとおりである。
以上のことから、引用発明は「表示手段に対して前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報を提供する段階」を有しているということができる。
もっとも、引用発明の表示手段は、発明の詳細な説明を参酌しても、「表示手段」とあるだけで、どのような手段にどのように表示しているか具体的な記載がないから、「ディスプレイに対して・・・オンスクリーン表示(を提供)」しているかは明らかでない。
よって、引用発明は、
「前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報を提供する段階」を有している点で本件補正発明と一致し、
「ディスプレイに対して・・・オンスクリーン表示(を提供)」しているか明らかでない点で本件補正発明と相違する。

(オ)小括
上記(ア)ないし(エ)で検討したとおり、
引用発明は、
「前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
判定に対応する前記信号妨害の性質を決定する段階;
前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報の表示を提供する段階」
を有している点で、本件補正発明と一致し、
引用発明は
「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの(判定)」の構成を有していない点、および、
「ディスプレイに対して・・・オンスクリーン(表示を提供)」の構成であるか明らかでない点で、本件補正発明と相違する。

(3d-4)「前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する段階」について

引用発明の、診断アないし診断ウの「診断結果を表示するステップ」にて表示される診断結果の表示は、上記(3d-3)で検討したとおり、「診断アないし診断ウにおいて、受信が正常に行われていないと診断された場合の診断結果の表示は「・・・ユーザへの指示(診断ア)」、「・・・ユーザへの指示(診断イ)」、「・・・その原因(診断ウ)」が表示される 」構成である。
上記表示において、「ユーザへの指示」は、「受信が正常に行われていない」状態を解決するためにユーザが選択することができるユーザ操作のガイドということができ、本件補正発明の「信号妨害の解決方法にユーザをガイドする」表示であって、「ユーザ選択可能介入オプション」ということができる。
したがって、引用発明は本件補正発明の「前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作する表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する段階」を有しているといえる。
もっも、上記(3d-3)(エ)にて検討したとおり、引用発明は「オンスクリーン表示」であるか明らかでない点で、本件補正発明と相違する。

(3d-5)まとめ(一致点、相違点)

以上の対比によれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

《一致点》
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネル調整を開始する段階;
前記テレビジョン信号に関する信号妨害を検出する段階;
前記信号妨害の性質を決定する段階;
前記信号妨害の前記性質についてのシステム状態情報の表示を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の前記信号妨害の解決方法にユーザをガイドするように動作する表示にユーザ選択可能介入オプションを提供する段階;
を有する方法。

《相違点》
1.相違点1
引用発明は、本件補正発明の「前記デジタルテレビジョン信号受信器に対する提示のための前記デジタルテレビジョン信号における信号妨害が(所定の時間期間の間に)生じたかどうかを判定する段階;
前記デジタルテレビジョン信号を与えないようにする前記信号妨害が所定の時間期間の間に生じたことの判定」を有しているということができない点。

2.相違点2
本件補正発明は、表示の提供が「ディスプレイに対して・・・オンスクリーン表示」であるのに対し、引用発明は、どのような表示か明らかでない点。

(3e)判断
上記相違点について検討する。
(3e-1)相違点1について
一般的な受信器において、受信が正常に行われているか否か判定する際(すなわち信号妨害の有無を判定する際)、受信の状態が変化していることを、その前提として考慮することは普通に行われていることである。なぜなら、上記判定を行う際、変化する受信の状態を、そのまま現在の受信状態であると判定すれば、そのたびごとに「信号妨害がある」という判定と「信号妨害がない」という判定が、上記変化のたびに繰り返されるような事態が生じることが普通に想定されるからである。
そのため、受信状態の判定を行うときは、所定の時間期間の間、受信が正常(あるいは異常)な状態が継続することを検出することにより、受信状態が正常(あるいは異常)と判定する構成を採用することは普通に行われていることである。(下記の周知文献AないしE参照)
引用発明のデジタルテレビジョン信号受信器も、受信器であることから、下記の周知文献に記載された受信器と相違が無く、その受信状態が変動しており、受信状態の判定を、変動する受信状態により行うことにより、判定結果が判定のたびごとに変わってしまう問題は当然予想され、下記の周知文献に記載された構成を、引用発明に転用することは当業者が容易になし得たことである。

周知文献A:特開平11-313260号公報(例えば【0009】)
周知文献B:特開平11-252479号公報(例えば【0020】)
周知文献C:特開平 5- 91487号公報(例えば【0028】)
周知文献D:特開2001-28561号公報(例えば【0247】)
周知文献E:特開平 7-336674号公報(例えば【0028】)

(3e-2)相違点2について
引用発明が「デジタルテレビジョン信号受信器」に関する発明であることは、上記(3d-1)にて検討したとおりであり、デジタルテレビジョン受信器であるから、ディスプレイを有することは当業者であれば普通に想定し得たことである。
そして、ディスプレイを有するデジタルテレビジョン受信器において、何らかの表示を行おうとしたとき、該ディスプレイに、オンスクリーン表示することは普通に行われていることであるから、引用発明において、「システム状態情報」および「ユーザ選択可能介入オプション」を表示手段に表示するとき、デジタルテレビジョン受信器が有するディスプレイにオンスクリーン表示することは当業者が普通に想定し得たことである。

(3f)効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本件補正発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

(3g)まとめ(独立特許要件)
以上によれば、本件補正発明は、刊行物Aに記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成21年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成20年12月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項8に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成20年12月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項8】
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階;
前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階;並びに
所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、
前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階;及び
前記デジタルテレビジョン信号の信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能妨害オプションを提供する段階;
を有する方法。

第4 査定の検討
1.刊行物1(特開2000-115654号公報)の記載内容
原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-115654号公報(以下「刊行物1」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル放送受信装置に関し、より詳しくは、受信不能をユーザに報知する手段を備えた当該装置に関する。
【0002】
【従来の技術】MPEG(Moving Picture Experts Group)方式の符号化技術を利用して映像信号を圧縮符号化し、デジタルビデオ信号とデジタル音声信号とを衛星を使って放送するデジタル衛星放送が開始されている。図7はこのようなデジタル衛星放送の受信システムの一例についてその概要を示したものである。図7において、101はデジタル衛星放送信号を送出する衛星、102は衛星101からの放送信号を受信するアンテナ、103′は受信した放送信号から映像/音声信号を復号する受信機(IRD:Integrated Receiver/Decoder)、104は復号した映像を映すモニタである。
【0003】図6は受信機(IRD)103′の構成例を示すブロック図である。デジタル衛星放送の受信システムの動作を図6,図7により説明すると、衛星101からMPEG方式によるデジタル映像/音声信号のストリームが12GHz帯の搬送波に載せ送られてくる。アンテナ102で受信された放送信号はIRD103′に供給される。IRD103′は、所定のチャンネルを選択するチューナ部1、ビットストリームを復調する復調回路2、誤り訂正を行う誤り訂正部3、ビットストリームから映像データと音声データとを分離するトランスポートDEMUX4、分離したMPEGビデオ信号及びオーディオ信号を復号するMPEGデコーダ5、復号されたビデオ信号から例えばNTSC方式のコンポジットビデオ信号を生成するビデオエンコーダ6、受信システム全体の制御を行うCPU8などを備えている。衛星101から送られてきた放送信号は、アンテナ102を経てIRD103′で復調され、モニタ104で受信画像が映し出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようなデジタル衛星放送では、例えば12GHz帯の電波を使って信号が送られるが、このような高い周波数の電波は降雨による減衰を受けやすく、豪雨の時には受信レベルが悪くなり、受信不能になる場合もある。こうした受信不能状態になると、IRD103′ではMPEGビデオデコーダ5にデータが供給されなくなり、ビデオエンコーダ6へのデータ出力が直流成分だけとなるため、モニタ104には黒い画面だけが表示されるようになる。このためユーザは故障が発生したと誤認する可能性がある。
【0005】一方、アナログのビデオ信号を放送する衛星放送の場合にも同様に、降雨による減衰を受け、豪雨の時には受信レベルが悪くなり受信不能になる。しかしアナログのビデオ信号の場合には降雨による受信レベルの悪化と共に徐々にノイズが増えていくため、ユーザは受信レベルの悪化が降雨の影響であることを把握しやすい。これに対し、デジタル衛星放送では降雨による受信レベルの悪化の時には黒い画面のみが表示されるため、どのような原因で映像が映らないのかをユーザが理解しにくい。本発明は、高い周波数の搬送波を用いるデジタル放送を受信する従来のデジタル受信装置における上記した問題点に鑑みてなされたもので、黒画面が表示され、放送(表示)の中断と認識される場合に、その原因をユーザが分からないという状況を起こさないようにし、降雨などによる受信レベルの悪化を認識しやすくした衛星等によるデジタル放送の受信装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は選局したチャンネルの受信状態を表す受信レベルを監視する受信レベルチェック手段を備え、現在の受信レベルを報知あるいは表示するようにしたデジタル衛星放送の受信装置である。受信しているチャンネルのトランスポートパケットにおける誤り訂正結果からエラー数を取得し、この値とあらかじめ設定してある比較値とを比較し、その結果比較値よりエラー数が多くなったら受信状態が悪くなったと判断し、その時の受信状態(受信レベル)をOSD(On Screen Display)あるいはIRDに備えられた表示手段などでユーザに報知する。このようにすることによりユーザは受信レベルが悪化した時に受信レベルを知ることが可能となり、受信不能のため黒い画面だけになっても受信レベルの悪化によるものと判断することができる。

【0015】
【発明の実施の形態】本発明によるデジタル放送受信装置の1実施形態を添付図を用い説明する。図1は、本発明の1実施形態のデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図であり、図1の装置構成をその動作とともに以下に説明する。アンテナ102で衛星からのデジタル衛星放送信号が受信される。アンテナ102で受信された放送信号は受信機(IRD)1031のチューナ部1に供給される。チューナ部1では受信信号の中から所定のチャンネルの信号が選択され、その信号が復調回路2に供給される。
【0016】復調回路2で受信信号から信号のビットストリームが復調され、誤り訂正部3に供給される。誤り訂正部3で選局されたチャンネルのトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される。誤り訂正部3の出力がトランスポートDEMUX4に供給される。トランスポートDEMUX4は誤り訂正部3から出力されるビットストリームを受け、パケット列に分離し、パケット毎に所望のデータであるかどうかを判断し、MPEGデコーダ5に供給する。
【0017】MPEGデコーダ5はMPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードするものである。入力されるMPEG方式に従うビデオデータがMPEGデコーダ5によりデコードされ、得られるコンポーネントビデオ信号をビデオエンコーダ6に供給する。ビデオエンコーダ6でコンポーネントビデオ信号から例えばNTSC方式のコンポジットビデオ信号が生成され、モニタ104に出力される。入力されるMPEG方式に従うオーディオデータがMPEGデコーダ5によりデコードされ、得られるデジタルオーディオ信号を音声DAC(Digital/AnalogConverter:デジタル/アナログ変換器)7に供給する。音声DAC7でデジタルオーディオ信号がアナログオーディオ信号に変換され、音声出力される。
【0018】CPU8は、装置全体の動作を制御し管理するが、ここではCPU8により管理される各種の装置の動作状態などをOSD機能により画面上に表示できるようにしている。すなわち、CPU8の出力に基づき、OSD表示部9からOSD表示信号が生成される。このOSD表示信号がビデオエンコーダ6に供給され、この信号がビデオエンコーダ6で受信したビデオ信号にOSD表示のために重畳される。この発明が適用されたIRDでは受信レベルをユーザに知らせるための手段を備える。この手段は、降雨による減衰を受けやすいデジタル衛星放送の12GHz帯のような高い周波数の電波が豪雨の時に受信レベルが低くなり受信不能になると、モニタ104では黒い画面だけが表示され、ユーザに故障が起きたと誤認されることがあるが、この誤認を解き、状況を知らせるために備えられる。
【0019】実施化手段として、この発明の適用されたIRDでは、受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせることにより、ユーザは受信レベルが悪化したことが原因で映像が出なくなったことを理解することができる。受信レベルについては、1手段として、選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度からそれを知ることができる。受信レベルが良好の時には、誤り訂正部3でエラーが検出されないか、または訂正可能な程度のエラーである。受信レベルが悪くなると、誤り訂正部3では訂正が不可能になる程のエラーが起きる。
【0020】受信レベルの変化を誤り訂正において検出されるエラーの頻度から求める処理フローを図2を用いて次に説明する。なお、このシステムにおいては、1枚の画像を構成するのに必要なビットストリームは複数のパケットに分割されて送られてくるものとする。まず、この処理フローの開始時に、エラー数を初期化しておき(ステップS11)、各パケットでのエラーをエラー数カウント部10で数える(ステップS12)。ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS13)、受信したと判断した時に、これまでにエラー数カウント部10で計数したエラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行うレベル変換部11で受信レベルの変換を行う(ステップS14)。変換された受信レベルをCPU8に送り、CPU8は受け取ったデータを基に表示方法を選び、選んだ表示方法に従う形式でOSD表示部9にOSD表示信号を出力する(ステップS15)。
【0021】次に、上記した受信レベルの表示に際し、表示の仕方に条件を付す、すなわち受信状態或いは受信レベルを常に表示するのではなく、受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした本発明の実施形態を説明する。図3は、本実施形態のデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図であり、上記した図1の装置構成との相違は、IRD1032における構成要素として、エラー数カウント部10で計数されたエラー数を設定された所定の比較数と比較する比較器12と比較数設定器13を設けた点にある。本実施形態をその処理動作のフローを示す図4を用いて次に説明する。前述の通り、受信レベルは誤り訂正部3でのエラー数をエラー数カウント部10で計数することにより知ることができる。まず、この処理フローの開始時に、受信レベルが悪化したと判断できるエラー数をあらかじめ比較数設定器13に比較数として設定しておく(ステップS21)。この比較数はあらかじめ決めておいた値を設定しても良いし、受信レベルが良好な時のエラー数の平均値などを設定しても良い。
【0022】エラー数カウント部10におけるエラー数を初期化し(ステップS22)、処理期間の始めからのエラー数をカウントしていく(ステップS23)。ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS24)、受信したと判断した時に、エラー数カウント部10でカウントしたエラー数と比較数設定器13に設定、格納されている値を比較器12で比較する(ステップS25)。エラー数が比較数設定器13に設定された比較数より大きくなった時には受信状態或いは受信レベルが悪化したと判断し、受信レベル悪化信号14を出力する(ステップS26)。 レベル変換部11はこの受信レベル悪化信号14を受け取った場合に、エラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行う受信レベルの変換を行う(ステップS27)。 CPU8は受信レベル悪化信号14を受け取ると、レベル変換部11で変換された受信レベルを基にOSD表示部9にOSD表示信号を出力しOSD表示を行う(ステップS28)。ステップS25でエラー数が比較数設定器13に設定された比較数より小さい場合は受信レベルは良いと判断し、CPU8はOSD表示を行わないようにする(ステップS29)。 こうした動作により、受信レベルが悪化した時にのみ受信状態あるいは受信レベルの表示を行い、受信レベルが回復すると受信レベルの表示を行わないようになる。

2.刊行物1に記載された発明
(2a)「受信不能をユーザに報知する手段」について
【0001】の記載によれば、刊行物1には「デジタル放送受信装置に関する、受信不能をユーザに報知する手段」に関する発明が開示されているといえる。
そして、【0017】の記載によれば、上記デジタル放送受信装置は、「MPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードする、MPEGデコーダ」を有している。
以上のことから、刊行物1記載の発明は「MPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードする、MPEGデコーダを有するデジタル放送受信装置に関する、受信不能をユーザに報知する手段」に関する発明である。

(2b)「受信信号のエラーの検出」について
【0015】の記載によれば、刊行物1のデジタル放送受信装置は、「アンテナ102で衛星からのデジタル衛星放送信号が受信される。アンテナ102で受信された放送信号は受信機(IRD)1031のチューナ部1に供給される。チューナ部1では受信信号の中から所定のチャンネルの信号が選択され、その信号が復調回路2に供給される。」構成であり、【0019】の記載によれば、当該構成により「受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせる」とき、「受信レベルについては、選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度からそれを知ることができる。」ものであることが理解できる。

(2c)「受信レベルの変化を誤り訂正において検出されるエラーの頻度から求める処理(受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした本発明の実施形態)」について
【0021】ないし【0022】の記載によれば、刊行物1のデジタル放送受信装置が、誤り訂正において受信レベルを検出する具体的な実施例は、
「受信レベルが悪化したと判断できるエラー数をあらかじめ比較数設定器13に比較数として設定し(ステップS21)、
エラー数カウント部10におけるエラー数を初期化し(ステップS22)、
処理期間の始めからのエラー数をカウントし(ステップS23)、
ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS24)、
受信したと判断した時に、エラー数カウント部10でカウントしたエラー数と比較数設定器13に設定、格納されている値を比較器12で比較し(ステップS25)、
エラー数が比較数設定器13に設定された比較数より大きくなった時には受信状態或いは受信レベルが悪化したと判断し、受信レベル悪化信号14を出力する(ステップS26)」の方法によるものであることが理解できる。

(2d)「OSD表示」について
【0021】、【0022】の記載によれば、刊行物1のデジタル放送受信装置は、OSD表示のため
「受信レベルの表示に際し、受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした実施形態を有し、具体的には、レベル変換部11はこの受信レベル悪化信号14を受け取った場合に、エラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行う受信レベルの変換を行い(ステップS27)、CPU8は受信レベル悪化信号14を受け取ると、レベル変換部11で変換された受信レベルを基にOSD表示部9にOSD表示信号を出力しOSD表示を行う(ステップS28)。」
構成を有している。

(2e)まとめ
上記(2a)ないし(2d)によれば、刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)として、以下のとおりのものを認定することができる。

MPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードする、MPEGデコーダを有するデジタル放送受信装置に関する、受信不能をユーザに報知する手段に関する発明であって、
「アンテナ102で衛星からのデジタル衛星放送信号が受信される。アンテナ102で受信された放送信号は受信機(IRD)1031のチューナ部1に供給される。チューナ部1では受信信号の中から所定のチャンネルの信号が選択され、その信号が復調回路2に供給される」、構成を有し、当該構成により「選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度から受信レベルを知ることができ、この受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせる」構成であって、
受信レベルを検出する具体的な構成は、
「受信レベルが悪化したと判断できるエラー数をあらかじめ比較数設定器13に比較数として設定し(ステップS21)、
エラー数カウント部10におけるエラー数を初期化し(ステップS22)、
処理期間の始めからのエラー数をカウントし(ステップS23)、
ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS24)、
受信したと判断した時に、エラー数カウント部10でカウントしたエラー数と比較数設定器13に設定、格納されている値を比較器12で比較し(ステップS25)、
エラー数が比較数設定器13に設定された比較数より大きくなった時には受信状態或いは受信レベルが悪化したと判断し、受信レベル悪化信号14を出力する(ステップS26)」の方法によるものであり、
OSD表示のため、
「受信レベルの表示に際し、受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした実施形態を有し、具体的には、レベル変換部11はこの受信レベル悪化信号14を受け取った場合に、エラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行う受信レベルの変換を行い(ステップS27)、CPU8は受信レベル悪化信号14を受け取ると、レベル変換部11で変換された受信レベルを基にOSD表示部9にOSD表示信号を出力しOSD表示を行う(ステップS28)。」
の構成を有する報知手段。

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
(3a)「デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって」について

刊行物1発明は、「MPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードする、MPEGデコーダを有するデジタル放送受信装置に関する、受信不能をユーザに報知する手段に関する発明」である。
刊行物1のデジタル放送受信装置は「MPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードする、MPEGデコーダを有」しているから、デジタルテレビジョン信号受信器ということができる。
刊行物1の「デジタル放送受信装置に関する、受信不能」とは、上記デジタルテレビジョン信号受信器が受信すべき信号を、何らかの異常な状態が生じることにより受信できないことといえるから「デジタルテレビジョン信号受信器が受信すべき信号を、何らかの異常な状態が生じることにより受信できないこと」といえる。
そして、「デジタルテレビジョン信号受信器が受信すべき信号を、何らかの異常な状態が生じることにより受信できない」とは、デジタルテレビジョン信号が、送信局から受信器に至るシステムにおいて、何らかの異常な状態が生じていること、すなわち、デジタルテレビジョン信号についてのシステムの状態に異常が生じていることといえる。
刊行物1発明は、「受信不能をユーザに報知する手段に関する発明」であるから、「デジタルテレビジョン信号についてのシステムの状態に異常が生じていることをユーザに報知する手段に関する発明」といえる。
「システムの状態に異常が生じていることをユーザに報知する」とは、「システムの状態をユーザに報知する」ことといえ、「システム状態情報を提供」しているということができる。
また、刊行物1発明は、具体的には、以下で検討する各ステップを実行することにより、上記「システム状態情報を提供」しているから、「システム状態情報を提供する方法」に関する発明ということができる。
以上のことから、刊行物1発明は「デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法で」あるということができる。

(3b)「前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階」について

刊行物1発明は「「アンテナ102で衛星からのデジタル衛星放送信号が受信される。アンテナ102で受信された放送信号は受信機(IRD)1031のチューナ部1に供給される。チューナ部1では受信信号の中から所定のチャンネルの信号が選択され、その信号が復調回路2に供給される」、構成を有し、当該構成により「選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度から受信レベルを知ることができ、この受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせる」構成」を有している。
刊行物1発明の「受信状態が悪化していることをユーザに知らせる構成」は、上記(3a)で検討した、「システム状態情報を提供する」構成ということができ、刊行物1発明では、上記受信状態が悪化していることを知るために、「選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度」を用いているということができる。
刊行物1発明は「選局された受信信号の復調後のトランスポートストリーム」のエラーを検出しているのであるから、まず選局を行う段階があって、その後エラー信号を検出しているということができる。
選局するためには、受信するためにいずれかのチャンネルに同調するようにチャンネル調整を行うことが普通であるから、チャンネルを調整しているということができる。
刊行物1発明の受信する信号がデジタルテレビジョン信号であることは、上記(3a)で検討したとおりであるから、刊行物1発明は「前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階」を有しているということができる。

(3c)「前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」について

刊行物1発明の、受信レベルを検出する具体的な構成は、
「受信レベルが悪化したと判断できるエラー数をあらかじめ比較数設定器13に比較数として設定し(ステップS21)、
エラー数カウント部10におけるエラー数を初期化し(ステップS22)、
処理期間の始めからのエラー数をカウントし(ステップS23)、
ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS24)、
受信したと判断した時に、エラー数カウント部10でカウントしたエラー数と比較数設定器13に設定、格納されている値を比較器12で比較し(ステップS25)、
エラー数が比較数設定器13に設定された比較数より大きくなった時には受信状態或いは受信レベルが悪化したと判断し、受信レベル悪化信号14を出力する(ステップS26)」の方法によるものである。
本願発明の「信号妨害を検出する段階」は【0027】ないし【0031】のそれぞれの例にある「幾つかの試み」の「各(ひとつひとつの)試み」であって、この「幾つかの試み」を割り当てるには十分とした後(すなわち、「幾つかの試み」の最初の試みが開始され、最後の試みが終えるまでの時間)を、請求の範囲では「所定の時間期間」ということは、上記第2 2.(2)(2b)で検討したとおりである。
刊行物1発明の受信レベルの検出は、結局、「ステップ25で、エラー数と格納されている値を比較し、ステップ26にて、エラー数が比較数設定器13に設定された比較数より大きくなった時には受信状態或いは受信レベルが悪化したと判断し、受信レベル悪化信号14を出力する」ことであるから、このステップ25、26は、受信状態が悪化したことを検出するステップということができる。
刊行物1の「受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせることにより、ユーザは受信レベルが悪化したことが原因で映像が出なくなったことを理解することができる。」【0019】、「デジタル衛星放送で降雨などにより受信レベルが悪化し、受信不能になり黒い画面だけが出るようになった場合」【0025】の記載をみれば、刊行物1において、「受信状態の悪化」とは、「映像が出なくなった」、「受信不能」といった状態のことをいうのであるから、本願発明の信号妨害が生じている状態と同じである。
そして、刊行物1発明のステップ25、26は、「(ステップ24で)一定の時間期間が経過するか判断し」、該時間期間に受信した信号のエラーの数により受信状態を判断しているから、一定の時間期間に受信した信号に対するエラー数の割合に基づき受信状態の悪化(すなわち、受信妨害)を判断しているということができる。
してみると、上記ステップ25、26は、上記「一定期間の間に一度(のみ)」受信妨害が生じたことを判断している(すなわち、受信妨害が生じたことの検出をいくつか試みているのではない)といえるから、刊行物1発明のステップ25、26は、本願発明の(実施例の)いくつかの試みの「各(ひとつひとつの)試み」といえる。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」を有しているということができる。

(3d)「所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」について

刊行物1発明は、OSD表示のため、
「受信レベルの表示に際し、受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした実施形態を有し、具体的には、レベル変換部11はこの受信レベル悪化信号14を受け取った場合に、エラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行う受信レベルの変換を行い(ステップS27)、CPU8は受信レベル悪化信号14を受け取ると、レベル変換部11で変換された受信レベルを基にOSD表示部9にOSD表示信号を出力しOSD表示を行う(ステップS28)。」の構成を有している。
上記(3c)で検討したように、エラー数を比較し、受信レベル悪化信号が出力されるステップ(25、26)が本願発明の「テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」に対応しているから、刊行物1発明は「テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」で「デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき」にOSD表示部に表示を行うということができ、上記表示により「受信不能をユーザに報知(すなわち、信号妨害に関するシステム状態情報の表示)」をOSD表示しているということができる。
以上のことから、刊行物1発明は「前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」を有しているということができる。
もっとも、上記(3c)で検討したように、刊行物1発明のステップ26は、本願発明の「テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階」に対応するのであって、「受信妨害が生じたことの検出をいくつか試みているのではない」から、「所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき」ではない。
以上まとめると、刊行物1発明は「前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階」を有している点で、本願発明と相違はない。
もっとも、本願発明は、「所定の時間期間に生じる、(前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき)」であるのに対し、刊行物1発明は、「所定の時間期間に生じる、(前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき)」ではない点で、本願発明と相違する。

(3e)「(所定の時間期間に生じる、前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、)前記デジタルテレビジョン信号の信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作するオンスクリーン表示にユーザ選択可能妨害オプションを提供する段階」について

刊行物1発明は、「受信レベル悪化信号14を受け取ると、レベル変換部11で変換された受信レベルを基にOSD表示部9にOSD表示信号を出力しOSD表示を行」っているが、上記OSD表示は、刊行物1の発明の詳細な説明を参酌しても、受信装置の「受信状態あるいは受信レベル」(例えば【0022】、【0024】)を表示すること以外について、格別の記載はなく、上記「受信状態あるいは受信レベル」は、本願発明の「(デジタルテレビジョン信号の)信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作する(オンスクリーン表示に)ユーザ選択可能妨害オプション(表示)」ということはできない。
したがって、刊行物1発明は「オンスクリーン表示」を行う点において、本願発明と相違がないが、本願発明は「前記デジタルテレビジョン信号の信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作する(オンスクリーン表示に)ユーザ選択可能妨害オプションを提供する段階」を有するのに対し、刊行物1発明は、そのような段階を有しない点で相違する。

(3f)一致点、相違点
以上の対比によれば、本願発明と刊行物1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

《一致点》
デジタルテレビジョン信号受信器において、デジタルテレビジョン信号についてのシステム状態情報を提供する方法であって:
前記デジタルテレビジョン信号についてチャネルを調整する段階;
前記テレビジョン信号受信器に関する信号妨害を検出する段階;並びに
前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したときに、
前記信号妨害に関するシステム状態情報のオンスクリーン表示を提供する段階;及び
を有する方法。

《相違点》
相違点1
本願発明は、「所定の時間期間に生じる、(前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき)」であるのに対し、刊行物1発明は、「所定の時間期間に生じる、(前記デジタルテレビジョン信号に関する信号妨害を検出したとき)」ではない点。

相違点2
本願発明は「前記デジタルテレビジョン信号の信号妨害の解決方法をユーザにガイドするように動作する(オンスクリーン表示に)ユーザ選択可能妨害オプションを提供する段階」を有するのに対し、刊行物1発明は、そのような段階を有しない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(4a)相違点1について
一般的な受信器において、受信が正常に行われているか否か判定する際(すなわち信号妨害の有無を判定する際)、受信の状態が変化していることを、その前提として考慮することは普通に行われていることである。なぜなら、上記判定を行う際、変化する受信の状態を、そのまま現在の受信状態であると判定すれば、そのたびごとに「信号妨害がある」という判定と「信号妨害がない」という判定が、上記変化のたびに繰り返されるような事態が生じることが普通に想定されるからである。
そのため、受信状態の判定を行うときは、所定の時間期間の間、受信が正常(あるいは異常)な状態が継続することを検出することにより、受信状態が正常(あるいは異常)と判定する構成を採用することは普通に行われていることである。(下記の周知文献AないしE参照)
刊行物1発明のデジタルテレビジョン信号受信器も、受信器であることから、下記の周知文献に記載された受信器と相違が無く、その受信状態が変動しており、受信状態の判定を、変動する受信状態により行うことにより、判定結果が判定のたびごとに変わってしまう問題は当然予想され、下記の周知文献に記載された構成を、刊行物1発明に転用することは当業者が容易になし得たことである。

周知文献A:特開平11-313260号公報(例えば【0009】)
周知文献B:特開平11-252479号公報(例えば【0020】)
周知文献C:特開平 5- 91487号公報(例えば【0028】)
周知文献D:特開2001-28561号公報(例えば【0247】)
周知文献E:特開平 7-336674号公報(例えば【0028】)

(4b)相違点2について
テレビジョン受像器において、受信が正常に行われない場合(すなわち信号妨害を検出したとき)、受信を正常に行うようにするための対処法をモニタに表示することは、下記の周知文献a、bにあるとおり本願出願前周知の技術事項であり、刊行物1発明において、受信が正常に行われていないことを検知したときに、受信が正常に行われていないことを表示することに加えて、その対処手順を表示することにより、ユーザがどのように対処してよいか知ることができるようにしようとすることは、刊行物1発明に触れた当業者であれば容易に推考し得たことである。

周知文献a:特開2000-165268号公報(例えば【0026】)
周知文献b:特開平11-127397号公報(例えば【0011】)

5.効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

6.まとめ(査定の検討)
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項8に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、残る請求項1ないし7、9ないし21に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-01 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-27 
出願番号 特願2004-500517(P2004-500517)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 聡生  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 藤内 光武
乾 雅浩
発明の名称 デジタルテレビジョンにおける自動信号エラーユーザ表示及びユーザのガイドによる回復方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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