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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1260027
審判番号 不服2010-26451  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-24 
確定日 2012-07-11 
事件の表示 特願2003-586778「アプリケーション共用セキュリティ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月30日国際公開、WO03/90103、平成17年 8月 4日国内公表、特表2005-523522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2003年4月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年4月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年10月22日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出されるとともに、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され、平成18年2月24日付けで審査請求がなされ、平成20年7月1日付けで手続補正がなされ、平成20年11月18日付けで審査官により最初の拒絶理由通知(同年11月25日発送)がなされ、平成21年4月27日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、平成22年1月22日付けで審査官により最後の拒絶理由通知(同年1月29日発送)がなされ、同年6月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月15日付けで審査官により前記平成22年6月29日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年7月23日発送)がなされるとともに、同日付けで審査官により拒絶査定(同年7月23日発送)がなされ、これに対して、同年11月24日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。そして、平成23年1月20日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年6月2日付けで当審より審尋(同年6月3日発送)がなされ、同年9月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成22年11月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成22年11月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成21年4月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項21の記載

「 【請求項1】
複数のユーザとアプリケーションを共用する方法において、
第1のコンピュータ上の複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択するステップと、
選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
アプリケーションを共用する前記少なくとも1つの第2のコンピュータを選択するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコンピュータを操作するユーザにより、前記選択されたアプリケーションの内の少なくとも1つを選択解除するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、開始双方向アプリケーション共用をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、開始一方向アプリケーション共用をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止するステップは、前記選択されたアプリケーションの少なくとも1つにおいて、メニューバーをグレイアウトするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1のコンピュータ上のアイコンを表示し、アプリケーション共用が開始されていることを示すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1のコンピュータのユーザが非常ボタンを起動するとき、アプリケーション共用を終了するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のコンピュータ上の前記選択されたアプリケーションの周囲にフレームを表示するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フレームは、アプリケーション共用の開始後、第2の色に変更することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フレームは、前記選択されたアプリケーションを含むために自動的に拡張することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のアプリケーションの内の少なくとも1つのアプリケーションを選択するステップは、1つまたは複数の予め選択されていないアプリケーションを含めるために、前記フレームを手動で動かすステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記選択されたアプリケーションの内の少なくとも1つを選択解除するステップは、1つまたは複数のアプリケーションを除外するために、前記フレームを手動で動かすステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記フレームは、選択されていないアプリケーションを除外するために、自動的に縮小することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記フレームは、1つのアプリケーションと関連するメニューバーを除外するために配置され、それによって前記第2のコンピュータのユーザが前記メニューバーにアクセスすることを防止することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記フレームは、1つのアプリケーションに関連する1つまたは複数のサイズ変更コントロールを除外するために配置されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のコンピュータからの入力を受信するステップと、
前記受信した入力を反映するために、前記第1のコンピュータ上で実行する1つのアプリケーションをアップデートするステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
不必要な状態の中に前記第1のコンピュータを配置する前記第2のコンピュータからの入力を識別するステップと、
前記識別された入力が前記第1のコンピュータへ送信されることを防止するステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の機能の内の少なくとも1つの機能を選択するステップは、複数のコンピュータを操作する複数のユーザがアクセスできない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複数のユーザとアプリケーションを共用する装置において、
第1のコンピュータ上で操作する複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択する手段と、
選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可する手段と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項21】
複数のユーザとのアプリケーションの共用を容易にするコンピュータにより実行可能な命令を含むコンピュータ読取り可能な媒体であって、前記命令は、コンピュータに
第1のコンピュータ上の複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択するステップと、
選択された前記アプリケーションを少なくとも1つの第2のコンピュータと共用するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可するステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータ読取り可能な媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
複数のユーザとアプリケーションを共用する方法において、
第1のユーザによって操作される第1のコンピュータ上の複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを第2のユーザが操作する第2のコンピュータと共用するために選択するステップと、
前記第2のユーザからのアクセスを拒否する機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップであって、前記第2のユーザは選択されなかった他の機能にはアクセスが許可され、前記選択された機能は前記第1のユーザによってアクセス可能である、選択するステップと、
前記第1のコンピュータ上で実行される前記選択されたアプリケーションを前記第2のコンピュータと共用するステップであって、
前記第1のコンピュータに表示されるデータの画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成するステップであって、前記画像はアクセスが拒否された機能、アクセスが許可された機能を視覚的に示す、生成するステップ、
前記画像のデータを前記第2のコンピュータに送信するステップ、
前記第2のコンピュータからの前記選択されたアプリケーションの複数の機能の内の1つへのアクセスの要求を受信するステップ、
アクセスを要求された機能が、アクセスが拒否された前記選択された機能であるか、アクセスが許可された前記選択されなかった他の機能であるかを判定するステップ、
アクセスを要求された機能が、アクセスが拒否された前記選択された機能である場合、前記第2のコンピュータが前記選択されたアプリケーションの前記選択された機能にアクセスすることを拒否するステップ、および
アクセスを要求された機能が、アクセスが許可された前記選択されなかった他の機能である場合、前記第2のコンピュータが前記選択されたアプリケーションの前記選択されなかった他の機能にアクセスすることを許可し、前記第1のコンピュータに表示されるデータの新しい画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成し、前記新しい画像のデータを前記第2のコンピュータに送信するステップ
を含む、共用するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
アプリケーションを共用する前記少なくとも1つの第2のコンピュータを選択するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコンピュータを操作するユーザにより、前記選択されたアプリケーションの内の少なくとも1つを選択解除するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1および第2のコンピュータによって前記アプリケーションを制御し、前記アプリケーションの出力結果を前記第1および第2のコンピュータのディスプレイに表示する双方向アプリケーション共用を開始するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1のコンピュータによって前記アプリケーションを制御し、前記アプリケーションの出力結果を前記第1および第2のコンピュータのディスプレイに表示する一方向アプリケーション共用を開始するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止するステップは、前記選択されたアプリケーションの少なくとも1つにおいて、メニューバーをグレイアウトするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1のコンピュータ上のアイコンを表示し、アプリケーション共用が開始されていることを示すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
選択された前記アプリケーションを共用するステップは、前記第1のコンピュータのユーザが非常ボタンを起動するとき、アプリケーション共用を終了するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のコンピュータ上の前記選択されたアプリケーションの周囲にフレームを表示するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フレームは、アプリケーション共用の開始後、第2の色に変更することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フレームは、前記選択されたアプリケーションを含むために自動的に拡張することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のアプリケーションの内の少なくとも1つのアプリケーションを選択するステップは、1つまたは複数の予め選択されていないアプリケーションを含めるために、前記フレームを手動で動かすステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記選択されたアプリケーションの内の少なくとも1つを選択解除するステップは、1つまたは複数のアプリケーションを除外するために、前記フレームを手動で動かすステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記フレームは、選択されていないアプリケーションを除外するために、自動的に縮小することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記フレームは、1つのアプリケーションと関連するメニューバーを除外するために配置され、それによって前記第2のコンピュータのユーザが前記メニューバーにアクセスすることを防止することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記フレームは、1つのアプリケーションに関連する1つまたは複数のサイズ変更コントロールを除外するために配置されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のコンピュータからの入力を受信するステップと、
前記受信した入力を反映するために、前記アプリケーションが前記第1のコンピュータと第2のコンピュータとで共用されているときに前記アプリケーションによって作成されたデータによって前記第1のコンピュータ上のデータを更新するステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のコンピュータが望まない前記第2のコンピュータからの入力を識別するステップと、
前記識別された入力が前記第1のコンピュータへ送信されることを防止するステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の機能の内の少なくとも1つの機能を選択するステップは、複数のコンピュータを操作する複数のユーザがアクセスできない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複数のユーザとアプリケーションを共用する装置において、
第1のコンピュータ上で操作する複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択する手段と、
前記第1のコンピュータ上で実行される選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段であって、前記第1のコンピュータに表示される画像データは前記第2のコンピュータのディスプレイに転送される、手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可する手段と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項21】
複数のユーザとのアプリケーションの共用を容易にするコンピュータにより実行可能な命令を含むコンピュータ読取り可能な媒体であって、前記命令は、コンピュータに
第1のコンピュータ上の複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択するステップと、
前記第1のコンピュータ上で実行される選択された前記アプリケーションを少なくとも1つの第2のコンピュータと共用するステップであって、前記第1のコンピュータに表示される画像データは前記第2のコンピュータのディスプレイに転送される、ステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止するステップと、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可するステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータ読取り可能な媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

2.補正の適否

2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討

補正後の請求項1は、その記載からして、少なくとも次の発明特定事項(a)及び(b)を含んでいる。

(a)前記第1のコンピュータに表示されるデータの画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成するステップであって、前記画像はアクセスが拒否された機能、アクセスが許可された機能を視覚的に示す、生成するステップ
(b)アクセスを要求された機能が、アクセスが許可された前記選択されなかった他の機能である場合、前記第2のコンピュータが前記選択されたアプリケーションの前記選択されなかった他の機能にアクセスすることを許可し、前記第1のコンピュータに表示されるデータの新しい画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成し、前記新しい画像のデータを前記第2のコンピュータに送信するステップ

前記(a)及び(b)について検討する。

ここで、前記(a)は、その記載からして、

(a-1)アクセスが拒否された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ
(a-2)アクセスが許可された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ

を含み、前記(b)は、その記載からして、

(b-1)アクセスを要求された機能が、アクセスが許可された他の機能である場合、第2のコンピュータにおいて表示するために、第1のコンピュータに表示されるデータの新しい画像を生成するステップ

を含むものと認められる。

しかしながら、特許法184条の4第1項の国際出願日(平成15年4月22日)における国際特許出願の明細書、請求の範囲、及び図面(図面の中の説明に限る。)の日本語による翻訳文、又は、国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)には、

「【0035】
共用セッション中、共用モジュールは、1人または複数のリモートユーザのディスプレイに、共用フレーム300に描かれたデータの同一のスクリーン画像を送信する。共用モジュール(図示せず)は、マウスクリック、キーボード入力、または他の共用アプリケーションを介したユーザから受信される他の入力を送信することにより、ユーザからの入力を共用することができる。ユーザは、提供者のデスクトップ全体への、または提供者のデスクトップ上で操作する1つまたは複数のアプリケーションへのアクセスを許可されることができる。提供者が特定のアプリケーションを共用したくない場合、提供者は、アプリケーションのアイコンを共用フレームの外部へ動かす(すなわち、マウスを用いてクリックしてドラッグする)ことが可能である。」、
「【0036】
提供者が特定のアプリケーション用の1つまたは複数のウィンドウを開く…(中略)…とき、提供者は、各アプリケーション…(中略)…に対する全ウィンドウのサブセットに対する共用をさらに制限することができる。…(中略)…。提供者は、スクリーンの異なるサイズおよび部分を共用することにより、共用されるもの、共用されないものをさらに絞り込むことができる。さらに、フレームを、動かし、形状を新たにし、またはサイズ調整し、共用されるスクリーンの一部を表すことができる。必要であれば、共用提供者は、複数のウィンドウを配置してサイズ調整し、およびデスクトップの背景の全てを隠すこれらのウィンドウの周りにフレームを配置することができる。」、
「【0039】
アプリケーション全体を削除する代わりに、提供者は、アプリケーションへのフルアクセスに満たないアクセスを、リモートユーザに提供する細かい制御を欲する場合がある。例えば、提供者は、特定のアプリケーションへのアクセスをリモートユーザに与えるが、リモートユーザがアクセスすることができる、そのアプリケーションに関連する複数の機能を制限することを選択することができる。細かい制御の例には、視覚的なアクセスを制限する制御、よおびスクリーンの可視部に対する双方向の制御が含まれる。」、
「【0042】
ウィンドウボーダは、共用提供者が共用することを望まない場合がある機能性へのアクセスも許可することができる。…(中略)…。この問題を防止するための、1つの解決策は、サイズ変更コントロールを含むウィンドウのウィンドウボーダを現すために、アプリケーションウィンドウ周辺にグラフィカル共用フレームを自動的にサイズ調整することである。別の解決策は、ウィンドウコントロールをグレイアウトすることである(図6に示す)。この様なサイズ変更コントロールへのアクセスをリモートユーザに与えることを望む共用提供者は、このボーダを示すためのフレームをサイズ調整することにより、これらの機能のコントロールを許可することができる。図7を参照すると、代わりの実施形態に基づく共用フレーム300の別の実施形態が示されている。図7において、メニューおよびウィンドウボーダは、共用参加者がメニューまたはサイズ変更コントロールにアクセスすることを防ぐためにグレイアウトされる。」、

と記載されているに過ぎない。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

すなわち、翻訳文等には、提供者がユーザに対して、特定のアプリケーション、ウィンドウ、機能等へのアクセスを制限したい場合、当該アクセスを制限するための具体的な解決策(例えば、「アプリケーションのアイコンを共用フレームの外部へ動かす」、「フレームを、動かし、形状を新たにし、またはサイズ調整し、共用されるスクリーンの一部を表す」、「複数のウィンドウを配置してサイズ調整し、およびデスクトップの背景の全てを隠すこれらのウィンドウの周りにフレームを配置する」、「視覚的なアクセスを制限する」、「アプリケーションウィンドウ周辺にグラフィカル共用フレームを自動的にサイズ調整する」、「ウィンドウコントロールをグレイアウトする」等)は記載されているものの、アクセスが拒否された機能を視覚的に示す画像を生成する態様、アクセスが許可された機能を視覚的に示す画像を生成する態様、及びアクセスを要求された機能が、アクセスが許可された他の機能である場合、第2のコンピュータにおいて表示するために、第1のコンピュータに表示されるデータの新しい画像を生成する態様については、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

したがって、補正後の請求項1に記載された発明特定事項(a)及び(b)は、翻訳文等に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもない。

以上のように、本件補正は、翻訳文等に記載した範囲内でしたものではないので、外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項に基づき、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討

仮に、本件補正が、翻訳文等に記載した範囲内においてなされたものであると仮定した場合に、本件補正が特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の請求項1について

補正後の請求項1は、その記載からして、前記(a)及び(b)を含んでいる。

そして、補正後の請求項1における複数のユーザとアプリケーションを共用する方法は、前記(a)及び(b)の記載からすると、「アクセスが拒否された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ」、「アクセスが許可された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ」、及び「アクセスすることを許可したデータの新しい画像生成するステップ」を含むものである。

しかしながら、アクセス可否に応じた画像を生成するこれらのステップ(「アクセスが拒否された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ」、「アクセスが許可された機能を視覚的に示す画像を生成するステップ」、及び「アクセスすることを許可したデータの新しい画像生成するステップ」)は、補正前の請求項1が含む何れのステップの下位概念ではなく、新たな構成を追加した補正であるものと認められる。

したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものとは認められない。

なお、前記補正前の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものではない。

(2)補正後の請求項20について

補正後の請求項20は、補正前の請求項20における発明特定事項「選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段」を、「前記第1のコンピュータ上で実行される選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段であって、前記第1のコンピュータに表示される画像データは前記第2のコンピュータのディスプレイに転送される、手段」と限定する補正であることから、前記補正前の請求項20についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

なお、前記補正前の請求項20についてする補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものではない。

(3)まとめ

以上のとおり、本件補正は、仮に、翻訳文等に記載した範囲内においてなされたものであると仮定した場合であっても、補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件

以上のように、補正前の請求項1についてする補正は、「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、翻訳文等に記載した範囲内でしたものではないので、外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項に基づき、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、「2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当せず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、翻訳文等に記載した範囲内にしたものであると仮定し、かつ、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合に、本件補正後の請求項20に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項20に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開平8-287016号公報 (平成8年11月1日公開、以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに以下の技術的事項が記載されている。

A 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、通信ネットワークで結合された複数の計算機により構成される分散環境において、個人作業を支援する機能に加え、複数の計算機の間でデータやアプリケーションを共有する機能を用意することにより、個人作業や複数人での協同作業を効率良く支援するための協同作業支援システムに関するものである。」

B 「【0060】
【実施例】
実施例1.本実施例は利用者の役割に対応させた共有レベル毎に操作権限を設定し、それに基づいて共同作業を管理するものである。図1は本実施例のシステム構成を示す図である。図において、1は共有管理手段、2は操作イベントを処理しその結果を共有管理手段1に返す共有アプリケーションである。3は共有データで、共有管理手段1が管理する。4は利用者からの入力を受け、共有アプリケーション2による処理結果を利用者に提示するユーザインタフェースである。5は通信手段、6は協同作業用情報処理装置、7は協同作業管理用情報処理装置、8はデジタル情報伝達手段で、複数の情報処理装置6、7を結合し、その間のデジタル情報を伝達する。9は共有レベル管理手段で、共有管理手段1に対して共有レベル記憶手段10に記憶されている条件に基づいた共有制御の指示を行なう。10は共有レベル記憶手段で、利用者の役割に対して割り当てた共有レベル毎に設定した情報の共有のしかたに関する条件を記憶する。」

C 「【0061】図2は共有レベル管理テーブル121を例示したもので、利用者の役割に対して割り当てた共有レベルに対応して、情報の共有のしかたに関する条件を示しており、共有レベル記憶手段10に記憶される。図2において、101は共有対象で、アプリケーションの画面表示や操作、アプリケーションの扱うデータ、注視点を示すがポインティングデバイスのカーソル表示や操作などで共有作業空間において操作を施す対象である。102は、利用者の役割などの共有レベルを示し、103は共有のしかたに関する条件で、アプリケーションプログラムの画面表示、扱うデータ等の共有情報を参照する権利、変更する権利、また、共有しているアプリケーションに対して操作する権利、注視点を示すポインティングデバイスのカーソルを操作する権利、参照する権利、あるいはこれらの共有のしかたを参照する権利、変更する権利などの共有条件を示しており、共有レベル102毎に共有対象101に対する共有条件103が定義される。」

D 「【0095】実施例7.本実施例は協同作業の局面に対応する利用者の役割に基づいて、共有モード毎と共有レベル毎の組み合わせで操作権限を設定し、それに基づいて協同作業を管理するものである。図19は、本実施例のシステム構成を示す図である。26は協同作業管理用情報処理装置で、27は共有条件管理手段で、共有管理手段1に対して共有条件記憶手段28に記憶された条件に基づいた共有制御の指示を行なう。28は共有条件記憶手段で、システム動作中の共有モ-ドを管理し、利用者の役割に対して割り当てた共有レベルと、協同作業を行なう局面に対する共有モードとの関係における共有のしかたに関する条件を記憶する。29は共有状態監視手段で、共有レベルと共有モードとに関連した共有の条件と現在の情報の共有のしかたの状態を獲得し提示する。30は情報の共有のしかたを共有実行時に変更する共有状態変更手段である。他は実施例1の図1と同様であり説明を省く。」

E 「【0096】図20は、共有条件記憶手段28に記憶される共有のしかたに関する条件を記した共有条件管理テーブル124である。101は共有対象を、102は共有レベルを、104は共有モードを、108は共有のしかたに関する条件を示しており、共有モード104毎に、共有レベル102に関連付けられた共有対象101に対する共有条件108が定義される。例えば、共有レベル102には、教師、ティーチングアシスタント、生徒を設定し、共有モード104としては、自習、講義、演習などを設定し、共有対象101としては、共有電子テキストへの書き込み/参照/操作、テレポインタの共有作業空間への表示操作などを設定し、共有条件108に、教師のテレポインタの操作は可、あるいは生徒の共有電子テキストへの書き込みは不可、などの条件が書かれる。」

F 「【0097】以下、図21を用いて共有動作を説明する。まず、利用者は、ユーザインタフェース4を通して共有アプリケーション2の共有作業空間、例えば「共有電子テキスト」に操作、例えば「書き込み」を施す(ステップS231)。すると、ユーザインタフェース4が利用者の行なった操作に相当する操作イベント「共有電子テキストへの書き込み」に利用者の共有レベル、例えば「生徒」を付加して、通信手段5を介して共有管理手段1にそれを送付する(ステップS232)。次に、共有管理手段1が通信手段5を介して共有レベル「生徒」を伴った操作イベントを受けとり、共有条件管理手段27にそれを渡す(ステップS233)。」

G 「【0098】すると、共有条件管理手段27は、操作イベントの情報からその操作の行なわれた共有対象「共有電子テキスト」を得て、共有条件管理手段27が管理するシステムの共有モードと、例えば「講義」と、共有レベル「生徒」と、を共有条件記憶手段28の共有条件管理テーブル124の内容と照合して、その共有モード「講義」においてその共有レベル「生徒」が、操作イベントが示す共有対象「電子共有テキスト」に対する「書き込み」操作が許可されているか否かの条件を得て(ステップS234)、共有条件管理手段27が共有可能であるかを判定する(ステップS235)。共有可能であった場合、共有条件管理手段27が共有管理手段1に対して受けとった操作イベントの処理を指示し(ステップS236)、共有条件管理手段1は、操作イベントを共有アプリケーション2に処理させ、その結果を通信手段5を介して複数の情報処理装置6に送付し、情報処理装置6上のユーザインタフェース4が処理結果を表示画面に反映する(ステップS237)。共有不可能であった場合、共有条件管理手段27が操作イベントを廃棄する(ステップS238)。この例の場合は、操作イベントは廃棄される。同様の処理は共有レベルが「生徒」である利用者全員に適用される。」

(ア)上記Aの「この発明は、通信ネットワークで結合された複数の計算機により構成される分散環境において、…(中略)…複数の計算機の間でデータやアプリケーションを共有する機能を用意することにより、…(中略)…複数人での協同作業を効率良く支援するための協同作業支援システムに関するものである。」との記載、及び上記Dの「実施例7.本実施例は協同作業の局面に対応する利用者の役割に基づいて、共有モード毎と共有レベル毎の組み合わせで操作権限を設定し、それに基づいて協同作業を管理するものである。」との記載からすると、引用文献には、
複数の利用者とアプリケーションを共有する協同作業支援システム
が記載されている。

(イ)上記Bの「図1は本実施例のシステム構成を示す図である。図において、…(中略)…2は操作イベントを処理しその結果を共有管理手段1に返す共有アプリケーション…(中略)…4は利用者からの入力を受け、共有アプリケーション2による処理結果を利用者に提示するユーザインタフェース…(中略)…6は協同作業用情報処理装置」との記載、上記Cの「101は共有対象で、アプリケーションの画面表示や操作、アプリケーションの扱うデータ、注視点を示すがポインティングデバイスのカーソル表示や操作などで共有作業空間において操作を施す対象である。102は、利用者の役割などの共有レベルを示し」との記載、上記Dの「図19は、本実施例のシステム構成を示す図である。26は協同作業管理用情報処理装置…(中略)…他は実施例1の図1と同様であり説明を省く。」との記載、上記Eの「図20は、共有条件記憶手段28に記憶される共有のしかたに関する条件を記した共有条件管理テーブル124である。101は共有対象を、102は共有レベルを、104は共有モードを、108は共有のしかたに関する条件を示しており、共有モード104毎に、共有レベル102に関連付けられた共有対象101に対する共有条件108が定義される。例えば、共有レベル102には、教師、ティーチングアシスタント、生徒を設定し、共有モード104としては、自習、講義、演習などを設定し、共有対象101としては、共有電子テキストへの書き込み/参照/操作、テレポインタの共有作業空間への表示操作などを設定し、共有条件108に、教師のテレポインタの操作は可、あるいは生徒の共有電子テキストへの書き込みは不可、などの条件が書かれる。」との記載、及びFの「利用者は、ユーザインタフェース4を通して共有アプリケーション2の共有作業空間、例えば「共有電子テキスト」に操作、例えば「書き込み」を施す」との記載からすると、引用文献には、
協同作業管理用情報処理装置上で操作する複数の共有モード(自習、講義、演習など)の内の複数の共有対象(共有電子テキスト、テレポインタなど)から少なくとも一つの共有対象(例えば「共有電子テキスト」)を選択する態様
が記載されている。そして、選択された操作対象は共有アプリケーションが有する共有対象であること、及び、他の利用者が協同作業用情報処理装置を介して当該共有対象を使用することからすると、引用文献には、
協同作業管理用情報処理装置上で実行される選択された共有対象を他の利用者(協同作業用情報処理装置)と共有する態様
が記載されているものと解される。

(ウ)上記Eの「図20は、共有条件記憶手段28に記憶される共有のしかたに関する条件を記した共有条件管理テーブル124である。101は共有対象を、102は共有レベルを、104は共有モードを、108は共有のしかたに関する条件を示しており、共有モード104毎に、共有レベル102に関連付けられた共有対象101に対する共有条件108が定義される。例えば、共有レベル102には、教師、ティーチングアシスタント、生徒を設定し、共有モード104としては、自習、講義、演習などを設定し、共有対象101としては、共有電子テキストへの書き込み/参照/操作、テレポインタの共有作業空間への表示操作などを設定し、共有条件108に、教師のテレポインタの操作は可、あるいは生徒の共有電子テキストへの書き込みは不可、などの条件が書かれる。」との記載からすると、引用文献には、
他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者に操作させない共有対象を、複数の共有対象から操作不可として設定する態様
が記載されている。

(エ)上記(ウ)における認定、上記Eの「例えば、…(中略)…、共有条件108に、教師のテレポインタの操作は可、あるいは生徒の共有電子テキストへの書き込みは不可、などの条件が書かれる」との記載、及び上記Gの「共有可能であるかを判定…(中略)…共有可能であった場合、共有条件管理手段27が共有管理手段1に対して受けとった操作イベントの処理を指示し…(中略)…共有不可能であった場合、共有条件管理手段27が操作イベントを廃棄する」からすると、引用文献には、
他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、操作不可と設定された共有対象を操作するのを防止し、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、共有モードの複数の共有対象の内、操作可と設定された共有対象を操作するのを許可する態様
が記載されている。

以上、(ア)ないし(エ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

複数の利用者とアプリケーションを共有する協同作業支援システムにおいて、
協同作業管理用情報処理装置上で操作する複数の共有モードの内の複数の共有対象から少なくとも一つの共有対象を選択する手段と、
前記協同作業管理用情報処理装置上で実行される選択された共有対象を他の協同作業用情報処理装置と共有する手段と、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者に操作させない共有対象を、前記複数の共有対象から操作不可として設定する手段と、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、前記操作不可と設定された共有対象を操作するのを防止する手段と、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、前記共有モードの複数の共有対象の内、操作可と設定された共有対象を操作するのを許可する手段と
を備えたことを特徴とする協同作業支援システム。

(3)本願補正発明と引用発明1との対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「利用者」、「共有」、及び「協同作業支援システム」は、それぞれ、本願補正発明の「ユーザ」、「共用」、及び「装置」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“複数のユーザとアプリケーションを共用する装置”である点で一致する。

引用発明1の「協同作業管理用情報処理装置」、「複数の共有モード」、及び「共有対象」は、それぞれ、本願補正発明の「第1のコンピュータ」、「複数のアプリケーション」、及び「機能」に相当する。そして、引用発明1において「少なくとも一つの共有対象」を選択することは、当該共有対象を有する共有モードを選択することに他ならない。してみれば、本願補正発明と引用発明1は、“第1のコンピュータ上で操作する複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択する手段”である点で一致する。

引用発明1の「他の協同作業用情報処理装置」は、本願補正発明の「第2のコンピュータ」に相当する。そして、引用発明1の「選択された機能」における「機能」とは、共有モードが有している機能を意味することから、上位概念で見ると、「選択された共有モード」を意味していると言える。してみれば、本願補正発明と引用発明1は、“第1のコンピュータ上で実行される選択されたアプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段”である点で一致する。

引用発明1の「操作」は、本願補正発明の「アクセス」に相当する。そして、引用発明1の「操作不可として設定する」とは、複数の共有対象の中から、操作不可とすべき対象を選択して操作不可として設定することである。してみれば、本願補正発明と引用発明1は、“前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択する手段”である点で一致する。

引用発明1の「操作不可と設定された共有対象」は、本願補正発明の「選択された機能」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止する手段”である点で一致する。

引用発明1の「操作可と設定された共有対象」は、操作不可と設定された共有対象以外の共有対象であることは自明なことである。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可する手段”である点で一致する。

以上から、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

複数のユーザとアプリケーションを共用する装置において、
第1のコンピュータ上で操作する複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択する手段と、
前記第1のコンピュータ上で実行される選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可する手段と
を備えたことを特徴とする装置。

(相違点)

アプリケーションを共用する手段において、本願補正発明が、「前記第1のコンピュータに表示される画像データは前記第2のコンピュータのディスプレイに転送される」ものであるのに対して、引用発明1では、アプリケーションを共有する際に、画像データを転送するものであるかどうか、不明である点。

(4)当審の判断

上記「相違点」について検討する。

アプリケーション共有方式において、ウィンドウのビットマップ情報等の画面情報を他の参加者に送信する技術は周知技術(必要であれば、特開2000-99233号公報(特に、段落【0065】ないし【0068】、図4、及び図7)等参照)であることから、引用発明1の「選択された共有対象を他の協同作業用情報処理装置と共有する手段」においても、表示画面の画像データを利用者に送信するように構成すること、すなわち、本願補正発明のように、“協同作業管理用情報処理装置に表示される画像データを、他の協同作業用情報処理装置のディスプレイに転送する”ように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得たものである。

よって、相違点は格別なものではない。

上記で検討したごとく、「相違点」は格別のものではなく、そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正後の請求項1についての当審の判断

上記(1)ないし(4)で検討したとおり、本願補正発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるが、本件補正後の請求項1に記載された発明についても検討しておく。

(5-1)補正後の請求項1に記載された発明

本件補正により、補正後の請求項1に記載された発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(5-2)引用文献に記載されている引用発明の認定

上記(2)における引用文献の認定からすると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

複数の利用者とアプリケーションを共有する協同作業支援方法において、
協同作業管理用情報処理装置上で操作する複数の共有モードの内の複数の共有対象から少なくとも一つの共有対象を選択するステップと、
前記協同作業管理用情報処理装置上で実行される選択された共有対象を他の協同作業用情報処理装置と共有するステップと、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者に操作させない共有対象を、前記複数の共有対象から操作不可として設定するステップと、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、前記操作不可と設定された共有対象を操作するのを防止するステップと、
前記他の協同作業用情報処理装置を操作する利用者が、前記共有モードの複数の共有対象の内、操作可と設定された共有対象を操作するのを許可するステップと
を備えたことを特徴とする協同作業支援方法。

(5-3)対比

そして、補正後の請求項1に記載された発明と引用発明2とは、以下の点で相違するが、その余の点では実質的な差異はない。

(相違点)

補正後の請求項1に記載された発明が、「前記第1のコンピュータに表示されるデータの画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成するステップであって、前記画像はアクセスが拒否された機能、アクセスが許可された機能を視覚的に示す、生成するステップ」、「前記画像のデータを前記第2のコンピュータに送信するステップ」、「アクセスを要求された機能が、アクセスが許可された前記選択されなかった他の機能である場合、前記第2のコンピュータが前記選択されたアプリケーションの前記選択されなかった他の機能にアクセスすることを許可し、前記第1のコンピュータに表示されるデータの新しい画像を前記第2のコンピュータにおいて表示するために生成し、前記新しい画像のデータを前記第2のコンピュータに送信するステップ」を備えるのに対して、引用発明2においては、アプリケーションを共有する際に、画像データの生成、転送を行うステップを有するかどうか、不明である点。

(5-4)判断

上記「相違点」について検討する。

上記(4)で検討したとおり、アプリケーション共有方式において、ウィンドウのビットマップ情報等の画面情報を他の参加者に送信する技術は周知技術(必要であれば、特開2000-99233号公報(特に、段落【0065】ないし【0068】、図4、及び図7)等参照)である。また、ウィンドウのビットマップ情報等の画面情報を送信するに際して、当該ビットマップ情報等の画面情報を生成することは、自明な事項に過ぎない。そして、当該画面情報に基づいて共有制御を行う際に、アクセスが許可される(ビットマップの)範囲、アクセスが許可されない(ビットマップの)範囲を決めることは、慣用的に行われていることに過ぎず、当該ビットマップの範囲を示す画像を生成することについても、当業者の通常の創作能力の範囲内のものである。
してみれば、引用発明2の「選択された共有対象を他の協同作業用情報処理装置と共有するステップ」においても、補正後の請求項1に記載された発明のように、“協同作業管理用情報処理装置に表示されるデータの画像を他の協同作業用情報処理装置において表示するために生成するステップであって、前記画像は操作が不可とされた共有対象、操作可と設定された共有対象を視覚的に示す、生成するステップ”、“画像のデータを他の協同作業用情報処理装置に送信するステップ”、“操作を要求された共有対象が、操作可とされた共有対象である場合、前記他の協同作業用情報処理装置が選択された共有モードの操作可とされた共有対象を操作することを許可し、協同作業管理用情報処理装置に表示されるデータの新しい画像を前記他の協同作業用情報処理装置において表示するために生成し、前記新しい画像のデータを前記他の協同作業用情報処理装置に送信するステップ”を備えるように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得たものである。

よって、相違点は格別なものではない。

上記で検討したごとく、「相違点」は格別のものではなく、そして、補正後の請求項1に記載された発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、補正後の請求項1に記載された発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ

以上のように、補正後の請求項1に記載された発明、及び、補正後の請求項20に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.むすび

以上のとおり、本件補正は、上記「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、翻訳文等に記載した範囲内でしたものではないので、外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項に基づき、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、仮に、本件補正が、翻訳文等に記載した範囲内においてなされたものであると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

そして、仮に、本件補正が、翻訳文等に記載した範囲内にしたものであると仮定し、かつ、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明、及び、補正後の請求項20に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成22年11月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項20に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年4月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項20に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数のユーザとアプリケーションを共用する装置において、
第1のコンピュータ上で操作する複数のアプリケーションの内の複数の機能を有する少なくとも1つのアプリケーションを選択する手段と、
選択された前記アプリケーションを第2のコンピュータと共用する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザにアクセスさせない機能を、前記複数の機能の内から少なくとも1つ選択する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが前記選択された機能にアクセスするのを防止する手段と、
前記第2のコンピュータを操作するユーザが、前記アプリケーションの複数の機能の内、前記選択された機能以外の機能にアクセスするのを許可する手段と
を備えたことを特徴とする装置。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成22年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成22年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本願補正発明から、「前記第1のコンピュータ上で実行される」、及び「前記第1のコンピュータに表示される画像データは前記第2のコンピュータのディスプレイに転送される」との記載を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成22年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(4)当審の判断」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-08 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-27 
出願番号 特願2003-586778(P2003-586778)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 殿川 雅也漆原 孝治  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
田中 秀人
発明の名称 アプリケーション共用セキュリティ  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 窪田 郁大  

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