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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 特37条出願の単一性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1260648
審判番号 不服2011-7397  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-07 
確定日 2012-07-25 
事件の表示 特願2005-501254「カラー・エレクトロルミネセンス表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月29日国際公開、WO2004/036961、平成18年 1月26日国内公表、特表2006-503418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)10月16日(パリ条約による優先権主張 2002年10月18日 米国 2003年6月9日 米国)を国際出願日とする特願2005-501254号であって、平成21年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成22年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 特許法第29条第2項(発明の進歩性の規定)の違反について
1 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「第1電極と第2電極の間に位置する厚膜絶縁層を備える厚膜絶縁体エレクトロルミネッセンス表示装置用の画素サブ構造であって、
前記画素サブ構造は、少なくとも2つのサブ画素を備え、
前記各サブ画素は、
青色光を放射するエレクトロルミネッセンス無機蛍光体層と、
少なくとも1つのフォトルミネッセンス蛍光体層と、
を備え、各フォトルミネッセンス蛍光体層は、前記サブ画素のそれぞれと関連付けられており、その結果、前記サブ画素のそれぞれによって放射された青色光が、関連付けられたフォトルミネセンス蛍光体層によって実質的に吸収され、それにより前記フォトルミネセンス蛍光体層が青色光以外の有色光を放射するようにする、画素サブ構造。」

2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭62-12769号(実開昭63-121396号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

「3.考案の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本考案は、所望の色に発光させることができる電場発光装置に関する。
〔従来の技術〕
透明電極と背面電極との間に発光層を介装してなるエレクトロルミネツセント素子(以下、EL素子と称す)をパツケージフイルム内に収納し、上記両電極間に交流電場を印加することによつて発光層を発光させるようにした電場発光装置は、従来から広く用いられている。
かかる電場発光装置は、文字、記号等を直接表示するデイスプレイ装置として使用されたり、あるいは液晶素子のバツクライトや文字の照光用として使用されており、EL素子の発光層中に含まれる蛍光体粉末の種類に応じて所望の色に発光させることが可能である。例えば、比較的輝度寿命が長い硫化亜鉛を主成分とする蛍光体粉末をバインダ樹脂で固めて形成した発光層は、ブルーグリーンに発光し、一般に広く用いられているが、このほか、橙色に発光する蛍光体と青色に発光する蛍光体のように補色の関係を有する複数種類の蛍光体粉末を所定の比率で混合し、これらをバインダ樹脂で固めて形成した発光層は、白色に発光する。」(明細書第1ページ第12行?第2ページ第16行)

「〔実施例〕
以下、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図および第2図は本考案の一実施例を示すもので、第1図は電場発光装置の断面図、第2図はその平面図である。
図中において、1はインジウムと錫の混合酸化物からなる透明な電極部1aを透明なベースフイルム1bの下面に薄膜形成して構成されている透明電極、2はアルミニウム箔からなる背面電極、3は硫化亜鉛を主成分とする蛍光体粉末3aをバインダ樹脂3b中に分散させてなる発光層で、これらは下から背面電極2、発光層3、透明電極1の順に重ね合わされてEL素子を構成している。そして、透明電極1と背面電極2との間には交流電場が印加されるようになつており、この電場を形成することによつて、発光層3における蛍光体粉末3aがブルーグリーンに発光する。
透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面には、スクリーン印刷等の手段で、赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタが、均一な厚さに形成されている。これらの蛍光フイルタ4?7は、それぞれ、可視光を受けると励起して赤色に発光する染料4a、橙色に発光する染料5a、黄色に発光する染料6a、および緑色に発光する染料7aを、バインダ樹脂4b,5b,6bおよび7b中に分散させて形成したものであり、例えば赤色蛍光フイルタ4に含まれる赤色の染料4aとしてはローダミンB等を用いており、バインダ樹脂4b?7bとしてはポリフツ化ビニリデンやポリ塩化ビニリデン等の防湿性の良好な樹脂を用いている。
また、これらの蛍光フイルタ4?7と上記EL素子との積層体は、防湿性が良好なポリ3フツ化塩化エチレン等のパツケージフイルム8,9によつて封止されている。
上記構成からなる電場発光装置は、透明電極1と背面電極2との間に所定の交流電場を印加すると、両電極1,2間に介装した発光層3がブルーグリーンに発光し、この光は透明電極1を透過した後、蛍光フイルタ4?7のうちのいずれか1種の蛍光フイルタを透過し、該蛍光フイルタの種類に応じた所定の色に変化される。例えば、発光層3からの光が赤色蛍光フイルタ4を透過すると、ブルーグリーンに対して赤色は補色の関係にあるため、ブルーグリーンの光は白色に変化される。同様に、発光層3からの光が橙色蛍光フイルタ5または黄色蛍光フイルタ6または緑色蛍光フイルタ7を透過すると、それぞれ、ブルーグリーンが、クリーム色、黄緑色、緑色に変化される。したがつて、透明電極1上における各蛍光フイルタ4?7の配置に応じて、この電場発光装置は白色、クリーム色、黄緑色、緑色といつた相異なる複数種類の発光色を呈することになり、しかも各蛍光フイルタ4?7の形状や並べ方は任意に設定できることから、同一発光面を自由に多色化することが可能となつている。このため、例えばビデオテープレコーダの表示部にこの電場発光装置を用いれば、表示箇所ごとに相異なる色で照明することができ、該表示部の意匠性および表示内容の視認性の向上が図れる。」(第5ページ第3行?第8ページ第5行)

「なお、上記実施例においては、蛍光フイルタ4?7を発光させるためにローダミンB等の染料を用いているが、これに代えて顔料を用いてもよい。また、発光層3の蛍光体粉末3aとしては輝度寿命を考慮して、ブルーグリーンに発光する硫化亜鉛等の発光体を用いているが、これ以外にも、例えばブルーに発光する蛍光体を用いてもよく、発光層の蛍光体粉末や蛍光フイルタの染料、顔料を適宜選択、組み合わせることによつて、電場発光装置の発光色として多種類の色が実現でき、所望の多色化が行える。」(第9ページ第2?12行)

「【図1】

【図2】



(2)引用例1に記載された発明の認定
引用例1の第9ページ第5?8行の「発光層3の蛍光体粉末3aとして」用いられる「発光体」について「ブルーグリーンに発光する硫化亜鉛」以外として挙げられている「ブルーに発光する蛍光体」は、「ブルーに発光する無機の蛍光体」であることは明らかである。よって、上記記載(図面の記載も含む)を総合勘案すれば、引用例1には、
「文字、記号等を直接表示するデイスプレイ装置として使用される電場発光装置において、
下から背面電極2、発光層3、透明電極1の順に重ね合わされて構成されているEL素子を備え、
発光層3はブルーに発光する無機の蛍光体であり、
透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面には、スクリーン印刷等の手段で、赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタが、均一な厚さに形成され、
透明電極1と背面電極2との間に所定の交流電場を印加すると、両電極1,2間に介装した発光層3がブルーに発光し、この光は透明電極1を透過した後、蛍光フイルタ4?7のうちのいずれか1種の蛍光フイルタを透過し、該蛍光フイルタの種類に応じた所定の色に変化され、
透明電極1上における各蛍光フイルタ4?7の形状や並べ方は任意に設定できることから、同一発光面を自由に多色化することが可能となつている電場発光装置の発光層と蛍光フィルタの構造。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 本願発明と引用発明の対比
(1)対比
ここで、本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「透明電極1」及び「背面電極2」が、それぞれ、本願発明の「第1電極」及び「第2電極」に相当する。
引用発明の「文字、記号等を直接表示するデイスプレイ装置として使用される」ことと、本願発明の「厚膜絶縁体エレクトロルミネッセンス表示装置用」であることとは、「エレクトロルミネッセンス表示装置用」である点で一致する。
引用発明の「透明電極1上」に「各蛍光フイルタ4?7」を任意に並べて「同一発光面を自由に多色化」した際の、多色化された同一発光面上の1つの色に対応する箇所が、本願発明の「画素」に相当するといえるから、引用発明の「下から背面電極2、発光層3、透明電極1の順に重ね合わされて構成されているEL素子を備え」、「透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面には、スクリーン印刷等の手段で、赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタが、均一な厚さに形成され」る構造が、本願発明の「画素サブ構造」に相当する。
よって、引用発明の「文字、記号等を直接表示するデイスプレイ装置として使用される電場発光装置において」、「下から背面電極2、発光層3、透明電極1の順に重ね合わされて構成されているEL素子を備え」、「透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面には、スクリーン印刷等の手段で、赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタが、均一な厚さに形成され」、「透明電極1上における各蛍光フイルタ4?7の形状や並べ方は任意に設定できることから、同一発光面を自由に多色化することが可能となつている」構造と、本願発明の「第1電極と第2電極の間に位置する厚膜絶縁層を備える厚膜絶縁体エレクトロルミネッセンス表示装置用の画素サブ構造」とは、「第1電極と第2電極を備えるエレクトロルミネッセンス表示装置用の画素サブ構造」である点で一致する。

引用発明の「透明電極1上」に「各蛍光フイルタ4?7」を任意に並べて「同一発光面を自由に多色化」した際の、「各蛍光フイルタ4?7」のそれぞれに対応する箇所が、本願発明の「サブ画素」に相当する。
よって、引用発明の「透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面には、スクリーン印刷等の手段で、赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタが、均一な厚さに形成され、透明電極1と背面電極2との間に所定の交流電場を印加すると、両電極1,2間に介装した発光層3がブルーに発光し、この光は透明電極1を透過した後、蛍光フイルタ4?7のうちのいずれか1種の蛍光フイルタを透過し、該蛍光フイルタの種類に応じた所定の色に変化され、透明電極1上における各蛍光フイルタ4?7の形状や並べ方は任意に設定できることから、同一発光面を自由に多色化することが可能となつている」ことが、本願発明の「前記画素サブ構造は、少なくとも2つのサブ画素を備え」る点に相当する。

引用発明の「ブルーに発光する無機の蛍光体」である「発光層3」が、本願発明の「青色光を放射するエレクトロルミネッセンス無機蛍光体層」に相当する。

引用発明の「透明電極1のベースフイルム1bの上面、つまり発光層3の形成側とは反対側の面」に「均一な厚さに形成され」る「赤色蛍光フイルタ4、橙色蛍光フイルタ5、黄色蛍光フイルタ6、および緑色蛍光フイルタ7の4種類の蛍光フイルタ」が、本願発明の「少なくとも1つのフォトルミネッセンス蛍光体層」に相当する。

引用発明の「透明電極1と背面電極2との間に所定の交流電場を印加すると、両電極1,2間に介装した発光層3がブルーに発光し、この光は透明電極1を透過した後、蛍光フイルタ4?7のうちのいずれか1種の蛍光フイルタを透過し、該蛍光フイルタの種類に応じた所定の色に変化され」ることが、本願発明の「各フォトルミネッセンス蛍光体層は、前記サブ画素のそれぞれと関連付けられており、その結果、前記サブ画素のそれぞれによって放射された青色光が、関連付けられたフォトルミネセンス蛍光体層によって実質的に吸収され、それにより前記フォトルミネセンス蛍光体層が青色光以外の有色光を放射するようにする」ことに相当する。

(2)本願発明と引用発明の一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「第1電極と第2電極を備えるエレクトロルミネッセンス表示装置用の画素サブ構造であって、
前記画素サブ構造は、少なくとも2つのサブ画素を備え、
前記各サブ画素は、
青色光を放射するエレクトロルミネッセンス無機蛍光体層と、
少なくとも1つのフォトルミネッセンス蛍光体層と、
を備え、各フォトルミネッセンス蛍光体層は、前記サブ画素のそれぞれと関連付けられており、その結果、前記サブ画素のそれぞれによって放射された青色光が、関連付けられたフォトルミネセンス蛍光体層によって実質的に吸収され、それにより前記フォトルミネセンス蛍光体層が青色光以外の有色光を放射するようにする、画素サブ構造。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(3)本願発明と引用発明の相違点
本願発明は、第1電極と第2電極の間に「厚膜絶縁層」を備え、本願発明のエレクトロルミネッセンス表示装置が「厚膜絶縁体」エレクトロルミネッセンス表示装置であるのに対して、引用発明においてはその点の限定がない点。

4 当審の判断
(1)相違点の検討
無機のエレクトロルミネッセンス表示装置において、電極間の短絡を防ぐために2つの電極間に発光層と並列して絶縁層(誘電体層)を設けることは通常に行われている周知技術(原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-82587号公報や特開昭60-220597号公報参照。)であり、当該絶縁体層を厚膜とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎない。
よって、引用発明において、上記の周知技術を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 特許法第37条(発明の単一性の規定)の違反について
原査定は、本願が、特許法第37条の規定に違反していることについても拒絶の理由としているので、この点についての判断も示す。

1 本願の請求項1に係る発明について
(1)本願の請求項1に係る発明は、上記「第2 特許法第29条第2項(発明の進歩性の規定)の違反について」の「1 本願の請求項1に係る発明」に記載されたとおりであるところ、少なくとも、「画素サブ構造は、少なくとも2つのサブ画素を備え」ること、「青色光を放射するエレクトロルミネッセンス無機蛍光体層」と、「少なくとも1つのフォトルミネッセンス蛍光体層」と、を備え、「各フォトルミネッセンス蛍光体層は、前記サブ画素のそれぞれと関連付けられて」いることを特定事項としている。

(2)そして、上記の本願の請求項1に係る発明に関連した技術課題として、本願明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

・「従来から、青色のエレクトロルミネセンス表示装置にはセリウムで活性化した硫化ストロンチウム蛍光体材料が使用されており、赤色と緑色にはマンガンで活性化した硫化亜鉛材料が使用されている。これらの蛍光体材料からの発光は、赤、緑および青のサブ画素(sub-pixel)に必要な色座標を実現するために適切な色フィルタを通さなければならず、その結果、輝度とエネルギー効率の損失が起こる。」(【0003】)
・「一般に、表示装置のサブ画素を構成する赤、緑、および青のエレクトロルミネセンス蛍光体の輝度は、異なる割合で低下し、その結果、年数が経つにつれて表示装置のカラーバランスが変化する。この変化は、駆動回路によってある程度補正することができる。例えば、異なる色の輝度減衰の割合が予測可能な場合、あるいは表示装置寿命の様々な時点でサブ画素輝度を測定するセンサが組み込まれている場合は、サブ画素に対する駆動電圧の調整を行うことができる。しかしながら、そのような測定は、表示装置の製造と操作の複雑さとコストを高める。」(【0004】)
・「さらに、表示装置の赤、緑および青の各エレクトロルミネセンス蛍光体はそれぞれ、それぞれが発光し始める特定のしきい電圧を有する。表示装置の電力消費を最小にするためには、そのような特定のしきい電圧をそれぞれ個々の蛍光体に注意深く適合させなければならない。そのような電圧が適切に適合されない場合は、赤、緑および青間の明るさの割合が不適切になる。そのように適合させるには、表示装置内の蛍光体層とその隣りの絶縁体層の厚さと組成を、製造歩留まりが妥協できる程度に正確な制御する必要がある。」(【0005】)
・「パターン形成プロセスは、各サブ画素蛍光体材料ごとに、フォトレジスト付着、露光、蛍光体薄膜エッチング、および蛍光体薄膜リフトオフのプロセスを含むフォトリソグラフィ工程を必要とし、これは、多数の連続した工程を必要とし、また製造コストを比較的高くする。そのようなフォトリソグラフィ工程で使用される化学薬品は、注意深く浄化されなければならず、またその使用は、パターン形成プロセス中、一般に水分に弱い蛍光体材料の損傷を回避するのために注意深く制御されなければならず、これがまた、表示装置製造コストを高める可能性がある。」(【0006】)
・「従来技術の欠点をなくす費用効率が高くかつ操作的に有効な方式でカラー・エレクトロルミネセンス表示装置を提供することがきわめて望ましい。」(【0008】)

(3)上記から、本願の請求項1に係る発明は、
赤、緑および青の各エレクトロルミネセンス蛍光体をそれぞれ有するサブ画素における欠点を解消し、費用効率を高めるために、上記のように「画素サブ構造は、少なくとも2つのサブ画素を備え」ること、「青色光を放射するエレクトロルミネッセンス無機蛍光体層」と、「少なくとも1つのフォトルミネッセンス蛍光体層」と、を備え、「各フォトルミネッセンス蛍光体層は、前記サブ画素のそれぞれと関連付けられて」いることを特定事項としたものであるといえる。
そうすると、本願の請求項1に係る発明は、発明の主要部についても、発明が解決しようとする課題についても、「2つのサブ画素」に関連する上記構造と関係するものである。

2 本願の請求項59?65に係る発明
(1)これに対して、本願の請求項59?65に係る発明は、平成21年12月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項59?65に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項59】
アドレス指定可能な画素を有し、フォトルミネセンス蛍光体層で構成される発光表示装置であって、
前記フォトルミネセンス蛍光体層は、
有機フォトルミネセンス分子の固溶体を含む顔料粉末と、
マトリックス材料と、
を含み、前記顔料粉末が前記マトリックス材料中に分散され、前記マトリックス材料が、有機フォトルミネセンス分子のフォトルミネセンス効率が実質的に維持されるように前記顔料粉末と化学的かつ物理的に適合性を有する、発光表示装置。
【請求項60】
前記顔料粉末が、緑色顔料、緑色顔料、青色顔料、赤色顔料、赤色含量、および黄色顔料、ならびにこれらの混合物からなるグループから選択された請求項59に記載の発光表示装置。
【請求項61】
前記マトリックス材料が、エポキシ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびポリメチルグルタリドイミドからなるグループから選択された請求項59に記載の発光表示装置。
【請求項62】
前記マトリックス材料がエポキシである、請求項61に記載の発光表示装置。
【請求項63】
前記マトリックス材料がフォトレジスト材料である請求項59に記載の発光表示装置。
【請求項64】
前記発光表示装置が、厚膜エレクトロルミネセンス表示装置、有機発光ダイオード表示装置、液晶ディスプレイ、およびプラズマディスプレイからなるグループから選択された請求項59に記載の発光表示装置。
【請求項65】
発光表示装置における1または複数の画素から放射された青色光を吸収するための方法であって、
前記1または複数の画素と関連付けられており、その結果、前記画素のそれぞれによって放射された青色光が、関連付けられたフォトルミネセンス蛍光体層によって実質的に吸収され、それにより前記フォトルミネセンス蛍光体層が青色光以外の有色光を放射するようにするフォトルミネセンス蛍光体層を提供し、
前記フォトルミネセンス蛍光体層が、有機フォトルミネセンス分子の固溶体を含む顔料粉末と、マトリックス材料とを含み、前記顔料粉末が前記マトリックス材料中に分散され、前記マトリックス材料が、有機フォトルミネセンス分子のフォトルミネセンス効率が実質的に維持されるように前記顔料粉末と化学的かつ物理的に適合性を有する、発光表示装置における1または複数の画素から放射された青色光を吸収するための方法。」

(2)上記の請求項59?65の記載から、本願の請求項59?65に係る発明は、フォトルミネセンス蛍光体層の「顔料粉末」と「マトリックス材料」との関連に関した発明であるということができ、「2つのサブ画素」に関連する構造と関係する発明でないことは明らかである。すなわち、本願の請求項59?65に係る発明は、発明が解決しようとする課題も発明の主要部も「2つのサブ画素」に関連したものではない。よって、請求項1に係る発明と、請求項59?65に係る発明は、発明が解決しようとする課題及び発明の主要部のいずれをも異にする。

3 結論
以上のとおりであり、請求項1に係る発明と、請求項59?65に係る発明は、発明が解決しようとする課題及び発明の主要部のいずれも異なるから、両者は特許法第37条第1,2号に掲げる関係を有するものではない。また、両者が、特許法第37条第3?5号に掲げるいずれの関係をも有するものではないことは明らかである。
したがって、特許法第37条の規定に違反している。

第4 結言
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
また、本願は、特許法第37条の規定に違反しているから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-27 
結審通知日 2012-02-28 
審決日 2012-03-13 
出願番号 特願2005-501254(P2005-501254)
審決分類 P 1 8・ 64- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
発明の名称 カラー・エレクトロルミネセンス表示装置  
代理人 小野 由己男  
代理人 稲積 朋子  

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