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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01G
管理番号 1261884
審判番号 不服2011-1670  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-24 
確定日 2012-08-16 
事件の表示 特願2000-197150「粉体重量計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月18日出願公開、特開2002- 13973〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年6月29日の出願であって、明細書について平成21年11月16日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成22年6月14日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、同年10月14日付け(送達:同年同月22日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおり補正するものである。(本件補正前)
「粉体容器内に収容された微粉炭、チャー(燃焼残渣)等の粉体を前記粉体容器の出口からの管路に接続されるロックホッパにて昇圧し、該ロックホッパの出口管路を開閉する粉体弁を経て該粉体弁の下方に配設された計量用ホッパに導くとともに、該粉体弁と計量用ホッパとの間に、前記ロックホッパに連通される伸縮継手が上下に介装された支持用架台梁を設け、前記計量用ホッパに設けられたロードセルにより該計量用ホッパに導入される前記粉体の重量を計測するように構成された粉体重量計測装置において、
前記架台梁の上下に設けられた前記伸縮継手を、該伸縮継手内部における圧力が均衡されて該伸縮継手から前記架台梁側への圧力反力の作用を阻止する圧力均衡型伸縮継手にて構成し、
前記圧力均衡型伸縮継手に、該圧力均衡型伸縮継手の両端間の変位を計測して該圧力均衡型伸縮継手に作用するばね反力F2を検出する変位検出器を設け、
前記ロードセルの計量重量W1と計量用ホッパの重量W2とともに、前記検出したばね反力F2に基づいて、粉体の実重量Wを「W=W1-(W2+F2)」式より求めることを特徴とする粉体重量計測装置。」
(本件補正後)
「粉体容器内に収容された微粉炭、チャー(燃焼残渣)の高温粉体を前記粉体容器の出口からの管路に接続されるロックホッパにて昇圧し、該ロックホッパの出口管路を開閉する粉体弁を経て該粉体弁の下方に配設された計量用ホッパに導くとともに、該粉体弁と計量用ホッパとの間に、前記ロックホッパに連通される伸縮継手が上下に介装された支持用架台梁を設け、前記計量用ホッパに設けられたロードセルにより該計量用ホッパに導入される前記粉体の重量を計測するように構成された粉体重量計測装置において、
前記架台梁の上下に設けられた前記伸縮継手を、該伸縮継手内部における圧力が均衡されて該伸縮継手から前記架台梁側への圧力反力の作用を阻止する圧力均衡型伸縮継手にて構成し、
前記架台梁の下に設けられた圧力均衡型伸縮継手に、該圧力均衡型伸縮継手の両端間の変位を計測して該圧力均衡型伸縮継手に作用するばね反力F2を検出する変位検出器を設け、
前記ロードセルの計量重量W1と計量用ホッパの重量W2とともに、前記検出したばね反力F2に基づいて、粉体の実重量Wを「W=W1-(W2+F2)」式より求めることを特徴とする粉体重量計測装置。」に補正する補正事項を含むものである。(下線は補正箇所。)

この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「チャー(燃焼残渣)等の粉体」を、「チャー(燃焼残渣)の高温粉体」と限定するとともに、「圧力均衡型伸縮継手」について「前記架台梁の下に設けられた」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例1に記載の事項・引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭58-104833号公報(以下、「引用例1」という。)には、1個の粉粒体分配輸送タンクから粉粒体を複数供給端に質量流量を任意の設定値に制御して連続供給する方法及びその装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(g)が図面とともに記載されている。
(a)「この発明は、溶鉱炉等の複数羽口に微粉炭や精練剤のような炉内装入物の量を任意の設定値で定流量又は一定固気比で供給する方法及び装置に関し・・・」(2頁左下欄2行?5行)
(b)「更に、被輸送物を比較的多量に且つ連続して定流量輸送することができると共に被輸送物である微粉炭、精練剤の粉粒体物性を広い範囲に選択使用することができるものであり、・・・」(3頁左上欄10行?13行)
(c)「先ず第1図の装置を方法と共に説明する。
被輸送物である粉粒体は受けホッパー及び供給タンクを経て、分配輸送用加圧タンク(1)に投入され補給される。
輸送タンク(1)は公知の荷重絶縁手段特に後述の特殊ベローズにおいて重力的に絶縁され計量装置が正確に作動するように考慮されている。」(3頁右上欄2行?8行)
(d)「また輸送タンク(1)の重量は、ロードセル等の計量装置(26)で常時計量されておりこの計量値を微分器(29)で時間微分することにより、単位時間当たりのタンク重量変化率、即ち粉粒体切出し量の変化分が得られるから、・・・」(5頁左上欄13行?17行)
(e)「これを図について説明すると、(31)は下部にエアレータ(32)と排出部(33)を有する補給タンクであってその排出口は投入元弁(34)及び重力荷重絶縁用ベローズ(35)を介して前記輸送タンク(1)の上部投入弁(25)に接続している。(36)は計量装置であって前記輸送タンクの計量装置(26)と同様の装置である。この計量装置の正確な作動を確保すべく補給タンク(31)は前記ベローズ(35)の他受けホッパー(40)との接続部に介装したベローズ(38)等により荷重的に絶縁されている。」(6頁左上欄9行?18行)
(f)「粉粒体輸送中において、分配輸送タンク(1)内の粉粒体残量が設定値以下になると計量装置(26)の出力によって補給用加圧タンク(31)は輸送タンク(1)と同圧に加圧され均一化される。」(6頁右上欄12行?15行)
(g)「更に充填期間中は上下の両タンク(1)(31)が均圧化されているので通常のベローズでは該ベローズ内の圧力上昇によって上方の補給タンク(31)を上方に押し上げ下方の輸送タンク(1)を下方に押し下げる推力が発生する。
そこで本発明においては第3図の如き圧力均衡型ベローズ(35)が用いられる。
このベローズ(35)は中心開口(90)を有する平行な円板体(91)(92)間に上ベローズ(93)、中ベローズ(94)及び下ベローズ(95)が配設され、上ベローズ(93)の上端が円板体(91)に、下端が中心開口(97)を有し円板体(92)と連杆(98)によって接続された中間板体(99)に夫々連通接続され、又中ベローズ(94)の上端が中間板体(99)に、下端が中心開口(100)を有し円板体(91)と連杆(101)によって接続された円板体(102)に夫々連通接続され、更に下ベローズ(95)の上端が円板体(102)に、下端が円板体(92)に夫々連通接続されている。そして円板体(91)が投入元弁(34)に、円板体(92)が投入弁(25)に接続されている。
このベローズによると、常時は勿論投入弁(25)を開いて輸送用タンク(1)の圧力をベローズ(35)内に導入して加圧状態としたときでも中ベローズ(94)で発生する推力がベローズ(93)(95)で発生する推力で打ち消され、投入弁(25)及び投入弁(34)間が重力的に絶縁され、従って輸送用タンク(1)及び補給用タンク(31)に対して充分な計量精度を保償するものである。」(7頁左上欄8行?右上欄13行)

前記記載(a)?(c),(e)及び第1図より、
・微粉炭は受けホッパー(40)に供給・収容されること、
・受けホッパー(40)の出口は管路により補給用加圧タンク(31)に接続されていること、
前記記載(f)より、
・補給用加圧タンク(31)内の微粉炭は加圧されること、
前記記載(e)及び第1図より、
・微粉炭は、補給用加圧タンク(31)の排出口に接続される投入元弁(34)を経て投入元弁(34)の下方に配設された輸送タンク(1)に導かれること、が読み取れる。
以上をまとめると、前記記載(a)?(c)、(e)、(f)及び第1図より、
(ア)「受けホッパー(40)に収容された微粉炭を前記受けホッパー(40)の出口からの管路に接続される補給用加圧タンク(31)にて加圧し、その排出口に接続される投入元弁(34)を経て該投入元弁(34)の下方に配設された輸送タンク(1)に導く。」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(e)及び第1図より、
(イ)「投入元弁(34)と輸送タンク(1)との間に、補給用加圧タンク(31)に接続する重力荷重絶縁用ベローズ(35)を設ける。」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(d)より、
(ウ)「輸送タンク(1)に設けられたロードセル等の計量装置(26)により該輸送タンク(1)の単位時間当たりの重量変化率を計測する計量装置。」との技術事項が見て取れる。
・前記記載(g)によれば、第3図の圧力均衡型ベローズ(35)はベローズ(35)を加圧状態にしても、中ベローズ(94)に発生する圧力がベローズ(93)(95)で発生する圧力で打ち消されて(すなわちベローズ内部で圧力が均衡して)圧力が働かず、したがって、投入弁(25)側から投入元弁(34)側に圧力が伝わらないことになり、その反力も作用しないことになる。このことを考慮すると、
・前記記載(g)より、
(エ)「重力荷重絶縁用ベローズ(35)を、重力荷重絶縁用ベローズ(35)内部で圧力が均衡して加圧状態にしても圧力・反力が伝わらない圧力均衡型ベローズにて構成すること。」との技術事項が読み取れる。
以上の技術事項(ア)ないし(エ)を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「受けホッパー(40)に収容された微粉炭を前記受けホッパー(40)の出口からの管路に接続される補給用加圧タンク(31)にて加圧し、その排出口に接続される投入元弁(34)を経て該投入元弁(34)の下方に配設された輸送タンク(1)に導くとともに、
投入元弁(34)と輸送タンク(1)との間に、前記補給用加圧タンク(31)に接続する重力荷重絶縁用ベローズ(35)を設け、輸送タンク(1)に設けられたロードセル等の計量装置(26)により該輸送タンク(1)の単位時間当たりの重量変化率を計測する計量装置において、
重力荷重絶縁用ベローズ(35)を、重力荷重絶縁用ベローズ(35)内部で圧力が均衡して加圧状態にしても圧力・反力が伝わらない圧力均衡型ベローズにて構成した輸送タンク(1)の単位時間当たりの重量変化率を計測する計量装置。」(以下、「引用発明1」という。)

(3)引用例2記載の事項・引用発明2
同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-174612号公報(以下「引用例2」という。)には、
「タンク装置」(発明の名称)に関し、次の記載がある。
(h)「【従来の技術】図3に、従来のタンク装置を示す。1はタンク、2はタンク1に固定された部材、3はロードセル、4はタンク1の上部に配設された管、5は管4の上端に接続された伸縮継手、6は伸縮継手5の上端に接続された管、7は管6に固定された部材を示す。タンク1は、部材2を介してロードセル3に支持され、更に、ロードセル3は、建屋20に支持されている。管6は部材7を介して建屋20に固定されている。タンク1内に貯蔵された物質の重量は、ロードセル3によって計測される。」(段落【0002】)
(i)「タンク1内に粉体等の物質が貯蔵された時、供給中の一定時間毎に又は必要に応じて、ロードセル3によってタンク1内に物質がある時のタンクの重量の計測値Lを計測する」(段落【0011】)
(j)「本発明の第2の実施例を、図2によって説明する。同図において、タンク1,タンク1に固定された部材2,ロードセル3,管4,伸縮継手5,管6,管6に固定された部材7及び建屋20は、図3に示す従来のタンク装置におけると同じであるので、その説明を省略する。
12は管4に配設された圧力計、13は伸縮継手全長の伸縮量を計測するための変位計である。タンク1外に設けられた演算装置30には、ロードセル3,圧力計12及び変位計13の計測値が入力されるようになっている。
本実施例においても、圧力計12,変位計13及びロードセル3によるタンク1内に物質がない時とある時のそれぞれの計測値を演算装置30に信号入力し、演算装置30においては、前記の信号入力に基づいて次の(2)式による演算を行い、一定時間間隔をおき又は必要に応じて、タンク1内の物質の重量を精度良く求めることができる。

W=LーLo +kXーPA……………………………………………(2)
たゞし、
W :タンク1内の物質重量
L :タンク内に物質がある時のロードセル計測値
Lo :タンク内に物質を入れる前のロードセル計測値
k :伸縮継手の軸方向ばね常数
X :伸縮継手の変位量(伸び側を(+)とする)
P :配管4内の圧力
A :配管4の内面積」(段落【0013】?【0016】)

以上の記載(h)(i)(j)から次の技術事項が読み取れる。
「タンク1内の粉体の重量を求める装置であって、建屋20によって固定された部材7によって管6を支持し、管6とタンク1に配設された管4との間に伸縮継手5を配置し、該伸縮継手5全長の伸縮量を計測するための変位計13を設け、
W=LーLo +kXーPA、
ただし、
W :タンク1内の粉体重量
L :タンク内に粉体がある時のロードセル計測値
Lo :タンク内に粉体を入れる前のロードセル計測値
k :伸縮継手の軸方向ばね常数
X :伸縮継手の変位量(伸び側を(+)とする)
P :配管4内の圧力
A :配管4の内面積
kX:伸縮継手がタンクに与えるばね力
によりタンク内の粉体重量を求める装置。」(以下、「引用発明2」という。)。

(4)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(4-1)引用発明1における、
「受けホッパー(40)」、「補給用加圧タンク(31)」、「加圧」、「投入元弁(34)」、「その排出口に接続される投入元弁(34)」、「輸送タンク(1)」、「接続する」、「重力荷重絶縁用ベローズ(35)」、「ロードセル等の計量装置(26)」、「輸送タンク(1)の単位時間当たりの重量変化率を計測する計量装置」、「重力荷重絶縁用ベローズ(35)内部で圧力が均衡して加圧状態にしても圧力・反力が伝わらない」及び「圧力均衡型ベローズ」は、
本願補正発明における、
「粉体容器」、「ロックホッパ」、「昇圧」、「粉体弁」、「ロックホッパの出口管路を開閉する粉体弁」、「計量ホッパ」、「連通する」、「伸縮継手」、「ロードセル」、「計量用ホッパに導入される前記粉体の重量を計測するように構成された粉体重量計測装置」、「伸縮継手を、該伸縮継手内部における圧力が均衡されて該伸縮継手から前記架台梁側への圧力反力の作用を阻止する」及び「圧力均衡型伸縮継手」にそれぞれ相当する。
(4-2)本願補正発明における「微粉炭、チャー(燃焼残渣)の高温粉体」についてみると、微粉炭とチャー(燃焼残渣)の高温粉体微粉とが並列的に記載されているものと解されるから、引用発明1における「微粉炭」は、本願補正発明における「微粉炭、チャー(燃焼残渣)の高温粉体」に相当する。

してみると、両者は
(一致点)
「粉体容器内に収容された微粉炭、チャー(燃焼残渣)の高温粉体を前記粉体容器の出口からの管路に接続されるロックホッパにて昇圧し、該ロックホッパの出口管路を開閉する粉体弁を経て該粉体弁の下方に配設された計量用ホッパに導くとともに、該粉体弁と計量用ホッパとの間に、前記ロックホッパに連通される伸縮継手を設け、前記計量用ホッパに設けられたロードセルにより該計量用ホッパに導入される前記粉体の重量を計測するように構成された粉体重量計測装置において、
前記伸縮継手を、該伸縮継手内部における圧力が均衡されて該伸縮継手からの圧力反力の作用を阻止する圧力均衡型伸縮継手にて構成した粉体重量計測装置。」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
(ア)相違点1:支持用架台について、
本願補正発明では、「粉体弁と計量用ホッパとの間に、ロックホッパに連通される伸縮継手が上下に介装された支持用架台梁を設け」ているのに対し、引用発明1では、粉体弁と計量用ホッパとの間に、前記ロックホッパに連通される伸縮継手を設け」ているものの、「伸縮継手が上下に介装された支持用架台」を有しない点。
(イ)相違点2:変位検出器について、
本願補正発明では、「架台梁の下に設けられた圧力均衡型伸縮継手に、該圧力均衡型伸縮継手の両端間の変位を計測して該圧力均衡型伸縮継手に作用するばね反力F2を検出する変位検出器を設け」ているのに対し、引用発明1では変位検出器を備えていない点。
(ウ)相違点3:粉体実重量を求める計算式について、
本願補正発明では、「ロードセルの計量重量W1と計量用ホッパの重量W2とともに、前記検出したばね反力F2に基づいて、粉体の実重量Wを「W=W1-(W2+F2)」式より求め」ているのに対し、引用発明1では、計量ホッパをロードセルで計量しているものの、どのような演算式を用いるかは明らかでない点。

(4)判断
前記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
この種の流動物の計量装置において、弁と計量ホッパとの間にベローズ(伸縮継手に相当)を上下に接続した枠(「支持用架台」に相当)を設けるようにすることは周知技術である(例えば、原審で引用された特開昭59-212721号公報、第2図及び2頁左上欄4行?左下欄9行に示されたベローズ6,9や7,10が設けられた枠8を参照のこと。)。
したがって、引用発明1に前記周知技術を採用して、粉体弁と計量用ホッパとの間に、圧力均衡型伸縮継手をそれぞれ支持用架台の上下に設けた構成とすることは当業者ならば容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2、相違点3について
相違点2と相違点3をあわせて、検討する。
引用発明2を、本願補正発明との対応関係を含めて、改めて記載する。
(引用発明2)
「タンク1内の粉体の重量を求める装置であって、建屋20によって固定された部材7によって管6を支持し、管6とタンク1に配設された管4との間に伸縮継手5を配置し、該伸縮継手5全長の伸縮量を計測する(「伸縮継手の両端間の変位を計測して」に相当。)ための変位計13(「変位検出器」に相当。)を設け、
W=L-Lo +kX-PA、
ただし、
W :タンク1内の粉体重量(「粉体の実重量W」に相当。)
L :タンク内に粉体がある時のロードセル計測値(「ロードセルの計量重量W1」に相当。)
Lo :タンク内に粉体を入れる前のロードセル計測値(「計量用ホッパの重量W2」に相当。)
k :伸縮継手の軸方向ばね常数
X :伸縮継手の変位量(伸び側を(+)とする)
P :配管4内の圧力
A :配管4の内面積
kX:伸縮継手がタンクに与えるばね力(-ばね反力(-F2)に相当)によりタンク内の粉体重量を求める装置。」

引用発明1も引用発明2も、共に、流動物を計量する計量装置である点で、お案じ技術分野に属し、しかも、タンク内の粉体の重量を精度良く測る点で共通の技術課題を有するものでもあるから、引用発明1に、引用発明2を適用して、「架台梁の下に設けられた圧力均衡型伸縮継手に、該圧力均衡型伸縮継手の両端間の変位を計測して該圧力均衡型伸縮継手に作用するばね反力F2を検出する変位検出器を設け」た構成とすることに、格別の創意を要したとはいえない。ここで、その変位を検出すべき伸縮継手は、タンクに接続されていることで、タンクに何らかの力を及ぼすおそれのある伸縮継手であることは、明らかである。
そして、その際、引用発明1は、伸縮継手として圧力均衡型伸縮継手を用いており、該伸縮継手は前記「2.(2)(エ)」で説示したように、加圧状態にしても圧力・反力が伝わらないのであるから、引用発明1に引用発明2を適用した結果、配管4内の圧力Pはゼロになり、したがって、タンク内の重量を求める式は、
W=L-Lo +kX、
すなわち、本願補正発明の記法で書き直すと、
W=W1-(W2+F2)
となることは、当業者が容易に想到し得るところといえる。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1、引用発明2及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、補正1及び補正2によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「粉体容器内に収容された微粉炭、チャー(燃焼残渣)等の粉体を前記粉体容器の出口からの管路に接続されるロックホッパにて昇圧し、該ロックホッパの出口管路を開閉する粉体弁を経て該粉体弁の下方に配設された計量用ホッパに導くとともに、該粉体弁と計量用ホッパとの間に、前記ロックホッパに連通される伸縮継手が上下に介装された支持用架台梁を設け、前記計量用ホッパに設けられたロードセルにより該計量用ホッパに導入される前記粉体の重量を計測するように構成された粉体重量計測装置において、
前記架台梁の上下に設けられた前記伸縮継手を、該伸縮継手内部における圧力が均衡されて該伸縮継手から前記架台梁側への圧力反力の作用を阻止する圧力均衡型伸縮継手にて構成し、
前記圧力均衡型伸縮継手に、該圧力均衡型伸縮継手の両端間の変位を計測して該圧力均衡型伸縮継手に作用するばね反力F2を検出する変位検出器を設け、
前記ロードセルの計量重量W1と計量用ホッパの重量W2とともに、前記検出したばね反力F2に基づいて、粉体の実重量Wを「W=W1ー(W2+F2)」式より求めることを特徴とする粉体重量計測装置。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「2.(2)引用例1記載の事項・引用発明1」、「2.(3)引用例2記載の事項・引用発明2」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から「粉体」についての限定事項である「高温」との発明特定事項、及び「圧力均衡型伸縮継手」について限定事項である「前記架台梁の下に設けられた」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比」、「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-18 
結審通知日 2012-06-22 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2000-197150(P2000-197150)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01G)
P 1 8・ 575- Z (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司石井 哲  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山川 雅也
森 雅之
発明の名称 粉体重量計測装置  
代理人 特許業務法人 高橋松本&パートナーズ  

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