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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1262817
審判番号 不服2010-22798  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-08 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 特願2007-525627「リソースの利用を追跡し、精算し、課金する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日国際公開、WO2006/020325、平成20年 4月 3日国内公表、特表2008-510371〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2005年7月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2004年8月13日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、
原審において平成21年8月19日付け拒絶理由通知に対し、平成22年2月25日に意見書および手続補正書の提出があったが、同年5月31日付けで拒絶査定となり、これに対し同年10月8日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

上記補正は、補正前の請求項2-52を削除し、補正前の請求項1を残したものである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第1項第4号に規定する、同法同条第4項第1号の請求項の削除を目的とするものであって、適法にされた補正である。

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成22年10月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「ある量のサービスをユーザに対して伝達する経費に関連する情報をユーザ毎に決定して用いる方法において、このサービスは、複数の通信デバイスの内の少なくとも1つとの通信をサポートするための第1のアクセス通信リンクの使用に対応しており、前記方法は、
前記サービスに対応する少なくとも1つのシステム経費成分に対応するシステム経費成分値を総計して、第1の請求可能経費成分値をユーザ毎に生成することと、
前記サービスの量と前記第1の請求可能経費成分値との双方を、料金精算プロトコルを用いて料金精算サーバに対して送信することとを含み、
前記少なくとも1つのシステム経費成分は、リソースの使用効率に関する情報と、特定の通信デバイスによって用いられている前記リソースの他のユーザに対する影響に関する情報とを含む方法。」

2.引用発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開2004-153776号公報(以下、「引用例」という。)には、「情報配信システム、アクセス中継装置、配信中継装置、通信端末装置、情報配信方法及びプログラム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0070】
図3は、図1に示した通信システム52におけるマルチメディアコンテンツの送受信の他の例を示す模式図である。ここでは、図2と同様に、オブジェクトA、B、Cの3つのオブジェクトから構成されたマルチメディアコンテンツの送受信の例を示している。図3の例では、オブジェクトA、B、Cは、それぞれ異なる情報配信サーバ装置3a、3b、3cそれぞれに登録されており、これらの情報配信サーバ装置3a、3b、3cから配信中継装置2を介して通信端末装置1へとオブジェクトA、B、Cが送信されることによって、マルチメディアコンテンツが送受信される。
【0071】
情報配信システム50には、図1に示すように、さらに、配信制御装置4が設置されている。配信制御装置4は、情報配信サーバ装置3と通信端末装置1とのあいだで行われるマルチメディアコンテンツの送受信を制御するとともに、マルチメディアコンテンツの送受信に伴って発生した通信料金の課金処理を行う。ここで、通信料金とは、通信リソースの使用料金、マルチメディアコンテンツやオブジェクト自体の使用料金、その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関する料金をいう。
【0072】
続いて、本実施形態にかかる配信制御装置について詳しく説明する。まず、本実施形態にかかる配信制御装置の構成について説明する。配信制御装置4は、通信ポリシー設定監視部40と、通信リソース予約確保部47と、送受信制御部41と、課金処理部42と、メタポリシー設定部43と、通信ポリシーデータベース45と、課金対応データベース46とを備えて構成される。
【0073】
通信ポリシーデータベース45には、マルチメディアコンテンツを受信するユーザごとに、マルチメディアコンテンツを構成するオブジェクトを単位として適用可能な通信ポリシー(あるいは通信ポリシーを決定するために必要な情報)が格納されている。ここで「オブジェクトを単位として適用可能」とは、「オブジェクト種別を単位として適用可能」という概念を含んでいる。
【0074】
ここで、通信ポリシーとは、送信装置から受信装置に対してデータを送受信する際に決めなければならないデータ送受信処理規則をいい、具体的には例えば下記の項目(以下、ポリシー設定項目という)が含まれる。なお、通信ポリシーに下記のポリシー設定項目のすべてを含む必要はない。」(17頁4行?35行)

ロ.「【0097】
(12)情報の到達度合およびその保証手法
ここで「情報の到達度合」とは、送信装置から送信されたデータの総量に対して、受信装置によって正常なデータとして受信されたデータの量が占める割合である。ここで「正常なデータとして受信されたデータの量」とは、送信されたデータの総量からパケットロス、パケット廃棄、パケット遅延によって正常なデータとして受信されなかったデータの量を差し引いた量である。
【0098】
(13)課金規則
本ポリシー設定項目については、通信料金の課金規則が設定される。ここで、「通信料金」とは、通信リソースの使用料金、マルチメディアコンテンツやオブジェクト自体の使用料、通信リソースを予約使用するための予約料、通信ポリシーを適用するためのサービス料、送受信データの中継処理料金、データ変換処理料金、送信したデータのデータ量(例えば、バイト数)や送信したデータの種類(データが構成するコンテンツあるいはオブジェクト)に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関する料金をいう。」(20頁30行?45行)

ハ.「【0161】
課金対応データベース46には、図6に示すように、通信ポリシーに応じた通信料金の算出規則(通信ポリシーと通信料金との対応表)が格納されている。
【0162】
課金処理部42は、マルチメディアコンテンツの送受信によって発生した通信料金を算出して課金処理を行う。具体的には、課金処理部42は、課金対応データベース46を参照し、通信ポリシー設定監視部40によって上述のごとく設定された通信ポリシーに従って通信料金を算出して課金処理を行う。
【0163】
図6に示した課金対応データベース46では、通信帯域、スループット、ジッター、遅延時間、到達度合、再送率、到達完了時刻、及びセッション数などの通信ポリシーのポリシー設定項目に対し、ギャランティモードまたはベストエフォートモードに対応する通信料金、達成目標値に対応する通信料金、及び目標値関数に対応する通信料金がそれぞれ示されている(例えば、通信帯域に対する通信料金A?G参照)。マルチメディアコンテンツの送受信に対する通信料金は、これらの各項目に対する通信料金を参照して算出される。なお、各項目に対する通信料金は、具体的な料金の値、または料金を算出するための計算則などによって指定される。
【0164】
この場合、課金処理部42は、通信料金の課金先を、マルチメディアコンテンツ単位、オブジェクト単位、オブジェクトの類型単位、オブジェクトを構成するデータ毎に設定することができるように構成されている。
【0165】
課金処理部42による通信料金の算出手法(あるいは課金手法)としては、例えば以下の手法が考えられる。
【0166】
(1)マルチメディアオブジェクトを送受信したときの通信ポリシーの達成度合に応じて通信料金を算出する。これにより、マルチメディアコンテンツの送受信における通信ポリシーの達成度合に応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0167】
(2)通信ポリシーとして設定されたポリシー設定項目の項目数、ユーザ階級を示す情報であるランク、優先度、通信品質の劣化度合、各ポリシー設定項目の達成度合に応じて通信料金を算出する。これにより、通信ポリシーを構成するポリシー設定項目の具体的な内容に応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0168】
(3)マルチメディアコンテンツを構成する1または複数のオブジェクトのそれぞれの送受信において実現された、情報配信サーバ装置3と通信端末装置1との間の通信路または配信中継装置2と通信端末装置1との間の通信路でのスループットまたはその特性に応じて通信料金を算出する。これにより、スループットに応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0169】
(4)送受信制御部41が複数のセッション間で同期を取りながら複数のオブジェクトのそれぞれを同時的に送受信している場合、送受信制御部41が複数のオブジェクトのそれぞれを同時的に送受信することによって発生した処理負荷に対する同期調整料を通信料金に加算する。これにより、マルチメディアコンテンツの送受信における具体的な通信状況に応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0170】
(5)マルチメディアコンテンツの送受信に際して、コネクション、トンネル、セッションのそれぞれに設定された通信ポリシー、あるいは通信ポリシーの達成度合に応じて、発生した通信料金を計算する。
【0171】
(6)通信ポリシーのポリシー設定項目に対する達成目標値を算出するための目標値関数を設けた場合、達成目標値の算出に適用する目標値関数に応じて通信料金を算出する。これにより、各ポリシー設定項目に対する達成目標値の算出方法に応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0172】
(7)情報配信サーバ装置3と通信端末装置1との間の通信路、情報配信サーバ装置3と配信中継装置2との間の通信路、または配信中継装置2と通信端末装置1との間の通信路のそれぞれについて設定された通信ポリシーに対し、各装置間のそれぞれの通信路に対して課金先及び通信料金基準を設定し、各通信路で実現された通信ポリシーの達成度合に応じて、通信料金を算出する。これにより、各通信路での通信状況に応じて、好適に通信料金の課金を行うことができる。
【0173】
(8)情報配信サーバ装置から送出されたデータ量、すなわち、配信中継装置が情報配信サーバ装置から受信し中継送信したオブジェクトデータまたは中継送信した中継データを課金対象データとして通信料金を算出する。この場合、UDPで中継しようがTCPで中継しようが、一切関係なく、中継したオブジェクトのデータを課金対象データとして通信料金を算出する。ただし、通信料金の単価は、上記いずれかの手法にて算出する。したがって、通信端末へ送信されたオブジェクト毎のデータ量に対して、それぞれのデータが送信された時に実現された通信品質、中継事業者の設備の通信リソースの使用単価、オブジェクトデータの内容等に応じて、さらには、利用者の利用実績に応じて、通信料金の単価が計算され、通信料金が計算される。
【0174】
ここで、サーバ情報配信サーバ装置3から通信端末装置1に向かってオブジェクトを送信(ダウンロード)する場合は、配信中継装置2が情報配信サーバ装置3から受信し、通信端末装置1に向けて中継送信したオブジェクトのデータ量がパケットキャプチャ等によりカウントされ、オブジェクト毎に登録された課金先に対して課金処理がなされる。一方、通信端末装置1から情報配信サーバ装置3に対してオブジェクトをアップロードする場合は、配信中継装置2が通信端末装置1から受信し、情報配信サーバ装置3に向けて中継送信したオブジェクトのデータ量がパケットキャプチャ等によりカウントされ、オブジェクト毎に登録された課金先に対して課金処理がなされる。このように、送信元から送信され、配信中継装置から受信先へ中継送信されたオブジェクトのデータサイズによって、通信料金の算出時の課金対象データ量が算出される。
【0175】
(9)オブジェクトの送受信のために送受信されたパケットのデータサイズが送信元から送信されたオブジェクトのデータサイズから算出され、算出したデータサイズの通信料金を、送受信のために発生したコストとして通信料金に加算する。」(29頁16行?31頁1行)

上記引用例の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
(a)まず、引用例記載の「通信ポリシーデータベース45」には、上記イ.【0073】及び図1にあるように、「マルチメディアコンテンツを受信するユーザごとに、マルチメディアコンテンツを構成するオブジェクトを単位として適用可能な通信ポリシー(あるいは通信ポリシーを決定するために必要な情報)が格納」されており、
当該「通信ポリシー」に関して、上記イ.【0074】、ロ.【0098】及びハ.【0162】によれば、
「マルチメディアコンテンツを受信するユーザ」に対して、「送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用」に関連する「通信料金」を通信ポリシー設定項目の課金規則としてユーザ毎に設定し、「設定された通信ポリシーに従って通信料金」(情報)を「算出」(決定)し「課金処理を行う」から、結局、通信料金の課金に関する方法として、
『マルチメディアコンテンツを受信するユーザに対して送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関連する情報を通信ポリシーに基づきユーザ毎に決定して用い』ている、といえる。

(b)また、引用例記載の「情報配信システム」は、上記イ.【0070】、【0071】及び図1にあるように、「配信制御装置4」を備え、該配信制御装置4は、情報配信サーバ装置3と通信端末装置1とのあいだで行われるマルチメディアコンテンツの送受信に伴って発生した通信料金の課金処理を行うから、
『このマルチメディアコンテンツを送受信することは、通信端末装置と、配信中継装置と、情報配信サーバ装置で構成される通信システムと配信制御装置とを接続した情報配信システムによって行われて』いる、といえる。

(c)また、引用例の「課金処理部42」は、上記ハ.【0162】、【0163】及び図6によれば、上記(a)で検討した課金処理を行うものであり、
上記ロ.【0098】に、「「通信料金」とは、通信リソースの使用料金、・・・、送信したデータのデータ量(例えば、バイト数)や送信したデータの種類(データが構成するコンテンツあるいはオブジェクト)に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関する料金」とあり、
通信料金はサービスを受信したユーザ毎に課金されるから、結局、「課金処理部42」は
『前記マルチメディアコンテンツを送受信することに対応する通信リソースの使用料、データ量等に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等を前記通信ポリシーに従って算出し、ユーザ毎に課金処理を行』っている、といえる。

(d)また、上記ハ.【0165】?【0167】、【0172】?【0175】にあるように、引用例の「課金処理部42」による通信料金の算出方法(あるいは課金手法)として、
「通信ポリシーとして設定されたポリシー設定項目の項目数、ユーザ階級を示す情報であるランク、優先度、通信品質の劣化度合い、各ポリシーの設定項目の達成度合いに応じて通信料金を算出」し、
「情報配信サーバ装置3」及び「通信端末装置1」からの課金対象のデータ量を「配信中継装置2」がカウントし、オブジェクト送受信のためのパケットのデータサイズから「算出したデータサイズの通信料金を、送受信のために発生したコストとして通信料金に加算」しているから、結局、「課金処理部42」は、
『情報配信サーバ装置から送出されたデータ量に基づく通信料金と、前記通信リソースの使用料、データ料等に応じて発生する送信費用その他の通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等に基づく通信料金を、加算して算出することを含み、
前記通信料金は、各ポリシー設定項目の達成度合いに関する情報を含』むものといえる。

そして、引用例にはこのような情報配信システムによる通信料金を求める方法が開示されている。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「マルチメディアコンテンツを受信するユーザに対して送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関連する情報を通信ポリシーに基づきユーザ毎に決定して用いる方法において、このマルチメディアコンテンツを送受信することは、通信端末装置と、配信中継装置と、情報配信サーバ装置で構成される通信システムと配信制御装置とを接続した情報配信システムによって行われており、前記方法は、
前記マルチメディアコンテンツを送受信することに対応する通信リソースの使用料、データ量等に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等を前記通信ポリシーに従って算出し、ユーザ毎に課金処理を行うことと、
情報配信サーバ装置から送出されたデータ量に基づく通信料金と、前記通信リソースの使用料、データ料等に応じて発生する送信費用その他の通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等に基づく通信料金を、加算して算出することを含み、
前記通信料金は、各ポリシー設定項目の達成度合いに関する情報を含む方法。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

まず、引用発明の「マルチメディアコンテンツ」の情報配信は「サービス」であり、情報としての「量」を有するのは自明であるから、本願発明の「ある量のサービス」に相当する。
引用発明の「送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関連する情報」とは、情報を送信(伝達)するための費用(経費)に関連する情報といえるから、本願発明の「伝達する経費に関連する情報」に相当する。
さらに、引用発明の「送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用」(伝達する経費)に関連する情報は、通信ポリシーに基づきユーザ毎に求められるから、結局、
引用発明の「マルチメディアコンテンツを受信するユーザに対して送信費用その他通信リソースを使用するために発生した諸費用に関連する情報を通信ポリシーに基づきユーザ毎に決定して用いる方法」は、
本願発明の「ある量のサービスをユーザに対して伝達する経費に関連する情報をユーザ毎に決定して用いる方法」に相当する。

また、引用発明の「マルチメディアコンテンツ」の「送受信」は、上記検討のとおり、本願発明の「サービス」に相当する。
また、引用発明の「通信端末装置」、「配信中継装置」、「情報配信サーバ装置」で構成される「通信システム」及び「配信制御装置」は各々通信する装置(通信デバイス)といえるから、本願発明の「複数の通信デバイス」に含まれるものであり、
引用発明の前記「通信端末装置」、「配信中継装置」、「情報配信サーバ装置」、及び「配信制御装置」間で通信することは自明であり、通信を行う(通信をサポートする)ために、前記「通信端末装置」、「配信中継装置」、「情報配信サーバ装置」、及び「配信制御装置」で「情報配信システム」を形成し、「マルチメディアコンテンツを送受信」しているから、
「マルチメディアコンテンツを送受信すること」(サービス)は、上記形成された『情報配信システムの使用に対応』している、といえる。
さらに、当該『情報配信システム』は、ネットワークとして各通信装置にアクセスする通信リンクを有するのは自明であり、これを「第1のアクセス通信リンク」と呼ぶことは任意であるから、
引用発明の「このマルチメディアコンテンツを送受信することは、通信端末装置と、配信中継装置と、情報配信サーバ装置で構成される通信システムと配信制御装置とを接続した情報配信システムによって行われ」ることは、
本願の「このサービスは、複数の通信デバイスの内の少なくとも1つとの通信をサポートするための第1のアクセス通信リンクの使用に対応し」に相当する。

また、引用発明の「マルチメディアコンテンツを送受信すること」(サービス)に対応する「通信リソースの使用料」、「データ量等に応じて発生する送信費用」、「その他通信リソースを使用するために発生した費用」に関する料金等の『通信リソースの使用』成分、『データ料等に応じて発生する送信費用』成分、『その他の通信リソースを使用するために発生した費用』成分は、『サービスに対応するシステム経費成分』として本願発明と共通である。
そして、引用発明の「通信リソースの使用料」、「データ量等に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等」は、各々上記『サービスに対応するシステム経費成分』に対応した料金等(値)であるから、本願発明の「システム経費成分値」に対応する。
さらに、引用発明では、「通信リソースの使用料、データ量等に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等」(システム経費成分値)を通信ポリシーに従って算出、加算(総計)し、ユーザ毎に課金処理(生成)しており、また当該『総計した経費成分値』を「第1の請求可能経費成分値」と呼ぶことは任意であるから、
引用発明の「前記マルチメディアコンテンツを送受信することに対応する通信リソースの使用料、データ量等に応じて発生する送信費用その他通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等を前記通信ポリシーに従って算出し、ユーザ毎に課金処理を行うことと」は
本願発明の「前記サービスに対応する少なくとも1つのシステム経費成分に対応するシステム経費成分値を総計して、第1の請求可能経費成分値をユーザ毎に生成すること」と共通する。

また、引用発明の「情報配信サーバ装置から送出されたデータ量」は、「サービス」のために送出されたデータであるから、本願発明の「サービス量」に相当する。
また、引用発明の「前記通信リソースの使用料、データ料等に応じて発生する送信費用その他の通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金」等に基づく課金処理されたものは、上記検討を踏まえると、本願発明の「第1の請求可能経費成分値」に相当し、
引用発明は、前記「情報配信サーバ装置から送出されたデータ量」(サービス量)に基づく通信料金と、前記通信リソースの使用料、データ料等に応じて発生する送信費用その他の通信リソースを使用するために発生した費用に関する料金等(第1の請求可能経費成分値)に基づく通信料金とを加算しており、
本願発明の「前記サービスの量と前記第1の請求可能経費成分値との双方を、料金精算プロトコルを用いて料金精算サーバに対して送信すること」が、料金精算サーバにて、(通信)料金を求めるために、サービスの量と第1の請求可能経費成分値とを使用しているから、
引用発明と本願発明とは、『前記サービスの量と前記第1の請求可能経費成分値とを通信料金を求めるために使用すること』に関して共通している。

そして、引用発明の「前記通信料金」は、「各ポリシー設定項目の達成度合いに関する情報を含」むものであり、該ポリシー設定項目には、例えば、「通信路のそれぞれについて設定された通信ポリシーに対し、各装置間のそれぞれの通信路に対して課金先及び通信料金基準を設定し、各通信路で実現された通信ポリシーの達成度合に応じて、通信料金を算出する」から、通信路で実現された『通信ポリシーの達成度合い』は『(通信)リソースの使用に関する情報』といえる。さらに、(通信)リソースの使用料は、上記検討を踏まえると、『システム経費成分』であるから、
引用発明の「前記通信料金は、各ポリシー設定項目の達成度合いに関する情報を含む」ことと
本願発明の「1つのシステム経費成分は、リソースの使用効率に関する情報と、特定の通信デバイスによって用いられている前記リソースの他のユーザに対する影響に関する情報を含む」こととは、
「少なくとも1つのシステム経費成分は、リソースの使用に関する情報を含」む点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「ある量のサービスをユーザに対して伝達する経費に関連する情報をユーザ毎に決定して用いる方法において、このサービスは、複数の通信デバイスの内の少なくとも1つとの通信をサポートするための第1のアクセス通信リンクの使用に対応しており、前記方法は、
前記サービスに対応する少なくとも1つの経費成分に対応するシステム経費成分値を総計して、第1の請求可能経費成分値をユーザ毎に生成することと、
前記サービスの量と前記第1の請求可能経費成分値とを、通信料金を求めるために使用することと、
前記少なくとも1つのシステム経費成分は、リソースの使用に関する情報を含む方法。」

<相違点>
(1)「サービスの量と第1の請求可能経費成分値」に関し、
本願発明は「料金精算プロトコルを用いて料金精算サーバに対して送信」しているのに対し、
引用発明では、通信料金を算出するために必要な情報、すなわち、サービスの量と第1の請求可能経費成分値の生成を、課金処理部42が配置された配信中継装置(上記ハ.【0173】、図9,10)において行い、当該課金処理部にて通信料金を計算するため、
当該サービスの量と第1の請求可能経費成分値を料金精算サーバに送信するか不明である点。
(2)『少なくとも一つのシステム経費成分が含むリソースの使用に関する情報』に関し、
本願発明は「リソースの使用効率」であるのに対し、
引用発明は、「ポリシー設定項目の達成度合い」である点。
(3)さらに、『少なくとも一つのシステム経費成分が含む情報』に関し、
本願発明は、「特定の通信デバイスによって用いられている前記リソースの他のユーザに対する影響に関する情報」を含むのに対し、
引用発明は、当該情報を含むか否か不明である点。

4.検討
上記相違点(1)について検討する。
まず、「料金精算プロトコルを用いて料金精算サーバに対して送信」することに関し、
通信料金の計算のために、通信リソースの使用状況に関する情報を課金機能を持つ他装置(料金精算サーバ)に送信して、該他装置(料金精算サーバ)で前記通信リソースの使用状況に基づく課金処理を行うことは周知技術である。(例えば、原審の拒絶の理由に引用した特開2000-78196号公報(【0014】-【0016】)、特開2002-315057号公報(【0045】-【0047】))
また、通信リソースの使用状況を送信するために何らかの通信プロトコルがあることは当業者に自明であり、当該通信プロトコルを料金精算プロトコルと呼ぶことは任意であり、格別のものでない。
したがって、引用発明において上記周知技術を採用し、引用発明の「課金処理部」を他装置に別途備え、通信リソースの使用状況に関する情報を当該他装置に送信されるように構成することに格別困難性をみいだせない。

次に、相違点(2)について検討する。
引用発明の「ポリシー設定項目の達成度合い」とは、実際に(通信)リソースを使用した際のポリシー設定項目の基準値に対する達成度合いであり、当該『達成度合い』は使用効率(一般的には、基準使用量に対する実際使用量)という概念に含まれるから、
システム経費成分が含むリソースの使用に関する情報として、引用発明に記載されたポリシー設定項目の達成度合いを、リソースの使用効率とすることに格別困難性は認められず、当業者が容易に想到し得るものである。

最後に、相違点(3)について検討する。
通信料金を算出する際に、一つのシステム経費成分が含む情報として、『特定の通信デバイスによって用いられている(通信)リソースの他のユーザに対する影響に関する情報』を考慮することは、例えば、特開平11-136398号公報(【0046】、【0047】)にみられるように周知技術であり、
引用発明において、当該周知技術を採用して、特定の通信デバイスによって用いられている(通信)リソースの他のユーザに対する影響に関する情報を、通信料金を算出するシステム経費成分に含めることは当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測しうるものであって、格別のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-04 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2007-525627(P2007-525627)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角張 亜希子  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 遠山 敬彦
新川 圭二
発明の名称 リソースの利用を追跡し、精算し、課金する方法及び装置  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 勝村 紘  
代理人 村松 貞男  
代理人 野河 信久  
代理人 山下 元  
代理人 竹内 将訓  
代理人 白根 俊郎  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 市原 卓三  

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