• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1263591
審判番号 不服2011-21314  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-03 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2007-222844「充電台と携帯電子機器とからなるセット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日出願公開、特開2008-141940〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年8月29日(優先権主張平成18年11月10日)の出願であって、平成23年3月7日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年3月15日)、これに対し、平成23年4月14日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年8月31日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年9月6日)、これに対し、平成23年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.平成23年10月3日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年10月3日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
交流電源(15)に接続してなる1次コイル(11)を内蔵する充電台(10)、(70)と、この充電台(10)、(70)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)、(60)とからなり、
充電台(10)、(70)は、携帯電子機器(20)、(60)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)、(72)を上面に有し、この上面プレート(12)、(72)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)、(60)は、充電台(10)、(70)の上面プレート(12)、(72)に載せる平面状の背面プレート(22)、(62)を有すると共に、この背面プレート(22)、(62)の内側に2次コイル(21)を配設しており、
さらに、充電台(10)、(70)は、上面プレート(12)、(72)に位置決め凸部(14)、(74)を有し、この位置決め凸部(14)、(74)に嵌合される位置決め凹部(24)、(64)を携帯電子機器(20)、(60)の背面プレート(22)、(62)に設けており、
さらにまた、前記2次コイル(21)は、線材を平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルであって、この平面コイルの2次コイル(21)が、背面プレート(22)、(62)の内側に背面プレート(22)、(62)と平行な姿勢で配置されると共に、2次コイル(21)である平面コイルは中心の巻き径を位置決め凹部(24)、(64)の内径よりも大きくして、平面コイルの中心に中空部(26)を設けて、この中空部(26)に位置決め凹部(24)、(64)を設けており、
充電台(10)、(70)の位置決め凸部(14)、(74)を携帯電子機器(20)、(60)の位置決め凹部(24)、(64)に案内して、1次コイル(11)と2次コイル(21)を電磁結合して、1次コイル(11)から2次コイル(21)に交流電力を供給して携帯電子機器(20)、(60)の電池(31)を充電するようにしてなる充電台と携帯電子機器。
【請求項2】
充電台(10)、(70)が、上面プレート(12)、(72)の全面を平面状としている請求項1に記載される充電台と携帯電子機器。
【請求項3】
充電台(70)の上面プレート(72)に、携帯電子機器(60)を載せる位置を示すセット位置を図形(79)で表示しており、このセット位置に合わせて上面プレート(72)に携帯電子機器(60)が載置されて、1次コイル(11)と2次コイル(21)が電磁結合されて、1次コイル(11)から2次コイル(21)に交流電力を供給して携帯電子機器(60)の電池(31)を充電するようにしてなる請求項1に記載される充電台と携帯電子機器。
【請求項4】
交流電源(15)に接続してなる2次コイル(21)を内蔵する充電台(10)と、この充電台(10)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)とからなり、 充電台(10)は、携帯電子機器(20)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)を上面に有し、この上面プレート(12)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)は、充電台(10)の上面プレート(12)に載せる平面状の背面プレート(22)を有すると共に、この背面プレート(22)の内側に2次コイル(21)を配設しており、充電台(10)が、携帯電子機器(20)のセット位置を検出する位置センサ(16)を内蔵しており、
この位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出して表示するようにしてなり、
位置センサ(16)が、1次コイル(11)に流れる電流、1次コイル(11)の消費電力、1次コイル(11)の共振周波数、1次コイル(11)のインピーダンスのいずれかを検出して、携帯電子機器(20)の位置を検出する充電台と携帯電子機器。
【請求項5】
交流電源(15)に接続してなる2次コイル(21)を内蔵する充電台(10)と、この充電台(10)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)とからなり、
充電台(10)は、携帯電子機器(20)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)を上面に有し、この上面プレート(12)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)は、充電台(10)の上面プレート(12)に載せる平面状の背面プレート(22)を有すると共に、この背面プレート(22)の内側に2次コイル(21)を配設しており、充電台(10)が、携帯電子機器(20)のセット位置を検出する位置センサ(16)を内蔵しており、
この位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出し、携帯電子機器(20)を載せる位置がセット位置からずれると、位置ずれ警報を発するようにしてなる請求項4に記載される充電台と携帯電子機器。
【請求項6】
前記位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出し、携帯電子機器(20)を載せる位置がセット位置にあると正常表示をするようにしてなる請求項4に記載される充電台と携帯電子機器。
【請求項7】
2次コイル(21)を入れることができる嵌合穴(35A)を設ける板状のスペーサ(35)を配置し、2次コイル(21)の外側面とスペーサ(35)の外周表面とを同一面とする請求項1に記載される充電台と携帯電子機器。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
交流電源(15)に接続してなる1次コイル(11)を内蔵する充電台(10)、(70)と、この充電台(10)、(70)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)、(60)とからなり、
充電台(10)、(70)は、携帯電子機器(20)、(60)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)、(72)を上面に有し、この上面プレート(12)、(72)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)、(60)は、充電台(10)、(70)の上面プレート(12)、(72)に載せる平面状の背面プレート(22)、(62)を有すると共に、この背面プレート(22)、(62)の内側に2次コイル(21)を配設しており、
さらに、充電台(10)、(70)は、上面プレート(12)、(72)に位置決め凸部(14)、(74)を有し、この位置決め凸部(14)、(74)に嵌合される位置決め凹部(24)、(64)を携帯電子機器(20)、(60)の背面プレート(22)、(62)に設けており、
さらにまた、前記2次コイル(21)は、線材を平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルであって、この平面コイルの2次コイル(21)が、背面プレート(22)、(62)の内側に背面プレート(22)、(62)と平行な姿勢で配置されると共に、2次コイル(21)である平面コイルは中心の巻き径を位置決め凹部(24)、(64)の内径よりも大きくして、平面コイルの中心に中空部(26)を設けて、この中空部(26)に位置決め凹部(24)、(64)を設けており、
充電台(10)、(70)の位置決め凸部(14)、(74)を携帯電子機器(20)、(60)の位置決め凹部(24)、(64)に案内して、1次コイル(11)と2次コイル(21)を電磁結合して、1次コイル(11)から2次コイル(21)に交流電力を供給して携帯電子機器(20)、(60)の電池(31)を充電するようにしてなる
充電台(70)の上面プレート(72)に、携帯電子機器(60)を載せる位置を示すセット位置を図形(79)で表示しており、このセット位置に合わせて上面プレート(72)に携帯電子機器(60)が載置されて、1次コイル(11)と2次コイル(21)が電磁結合されて、1次コイル(11)から2次コイル(21)に交流電力を供給して携帯電子機器(60)の電池(31)を充電するようにしてなる充電台と携帯電子機器とからなるセット。
【請求項2】
充電台(10)、(70)が、上面プレート(12)、(72)の全面を平面状としている請求項1に記載される充電台と携帯電子機器とからなるセット。
【請求項3】
交流電源(15)に接続してなる2次コイル(21)を内蔵する充電台(10)と、この充電台(10)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)とからなり、
充電台(10)は、携帯電子機器(20)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)を上面に有し、この上面プレート(12)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)は、充電台(10)の上面プレート(12)に載せる平面状の背面プレート(22)を有すると共に、この背面プレート(22)の内側に2次コイル(21)を配設しており、充電台(10)が、携帯電子機器(20)のセット位置を検出する位置センサ(16)を内蔵しており、
この位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出して表示するようにしてなり、
位置センサ(16)が、1次コイル(11)に流れる電流、1次コイル(11)の消費電力、1次コイル(11)の共振周波数、1次コイル(11)のインピーダンスのいずれかを検出して、携帯電子機器(20)の位置を検出する充電台と携帯電子機器とからなるセット。
【請求項4】
交流電源(15)に接続してなる2次コイル(21)を内蔵する充電台(10)と、この充電台(10)の1次コイル(11)に電磁結合される2次コイル(21)を備え、かつこの2次コイル(21)に誘導される電力で充電される充電できる電池(31)とを備える携帯電子機器(20)とからなり、
充電台(10)は、携帯電子機器(20)を脱着自在に載せる平面状の上面プレート(12)を上面に有し、この上面プレート(12)の特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイル(11)を内蔵しており、
携帯電子機器(20)は、充電台(10)の上面プレート(12)に載せる平面状の背面プレート(22)を有すると共に、この背面プレート(22)の内側に2次コイル(21)を配設しており、充電台(10)が、携帯電子機器(20)のセット位置を検出する位置センサ(16)を内蔵しており、
この位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出し、携帯電子機器(20)を載せる位置がセット位置からずれると、位置ずれ警報を発するようにしてなる請求項3に記載される充電台と携帯電子機器とからなるセット。
【請求項5】
前記位置センサ(16)が携帯電子機器(20)を載せる位置を検出し、携帯電子機器(20)を載せる位置がセット位置にあると正常表示をするようにしてなる請求項3に記載される充電台と携帯電子機器とからなるセット。
【請求項6】
2次コイル(21)を入れることができる嵌合穴(35A)を設ける板状のスペーサ(35)を配置し、2次コイル(21)の外側面とスペーサ(35)の外周表面とを同一面とする請求項1に記載される充電台と携帯電子機器とからなるセット。」


(2)目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

記載内容から判断して、本件補正前の請求項1及び3は本件補正後の請求項1に対応し、本件補正前の請求項2は本件補正後の請求項2に対応し、本件補正前の請求項4-7は各々本件補正後の請求項3-6に対応している。また、本件補正前の請求項2、3は各々本件補正前の請求項1のみを引用している。
本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項3に対応、即ち本件補正前の請求項1を削除したものとすると、本件補正前の請求項3を引用する請求項は本件補正前には無いが、本件補正後の請求項1を本件補正後の請求項2が引用しており、また、本件補正後の請求項2は本件補正前の請求項1-3全ての記載事項を包含するが、本件補正前の請求項2、3は各々本件補正前の請求項1のみを引用しているから、本件補正前の請求項1-3全ての記載事項を包含する請求項は本件補正前には存在しないので、上述した対応関係にあるものとは認められず、同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項1に対応するとすれば、本件補正後の請求項1には「充電台(70)の上面プレート(72)に、携帯電子機器(60)を載せる位置を示すセット位置を図形(79)で表示しており」とあり、図形を用いて携帯電子機器を充電台の上面プレートに位置決めしているが、本件補正前の請求項1には、位置決めのための図形に関する記載は無いから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-110409号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

1-a「本発明は、電子機器へ電力を供給する電力供給システムに関するものであり、特に、携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラ、電子玩具等のモバイル可能な電子機器に電力を供給する電力供給システムに関するものである。」(【0001】)

1-b「上記目的を達成するために本発明は、商用電源が与えられる送電装置から受電機器へ電気的に非接触な方式で電力を供給する電力供給システムにおいて、前記受電機器の電力に応じて送電電力を調整する電力調整手段を設けたものである。このようにすると、1つの送電装置で異なる種類の受電機器に電力を供給することができる。」(【0009】)

1-c「以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態の電力供給システムを搭載した送電装置と受電機器の外観を示す外観図である。図1において、1は電力を供給する送電装置であり、(a)は受電機器が携帯電話機2である場合を示し、(b)は受電機器がノートパソコン3である場合を示している。送電装置1はACプラグ1aとコード1bを備えており、壁面等に設けられたコンセントにACプラグ1aを差し込むことによりコード1bを介して商用電源(AC100V)が送電装置1に供給される。送電装置1は、供給されたAC100Vを一旦、直流電圧に変換した後、スイッチングし、磁気結合を利用した非接触電力供給方法によって受電機器である携帯電話機2やノートパソコン3の蓄電池に、充電に使用するDC電圧を供給する。また、このDC電圧は直接、携帯電話機2やノートパソコン3の駆動電源とすることもできる。」(【0049】)

1-d「次に、図2を参照して非接触伝送方式の原理を説明する。図2は、図1に示す送電装置1と携帯電話機2の内部の概略構成を説明するための図であり、(a)は送電装置1と携帯電話機2の全体を示し、(b)はコイル部分を拡大して示している。図2において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図2(a)に示すように、送電装置1は1次側回路10と1次側コイル11を備えており、携帯電話機2は2次側コイル12と2次側回路13と充電制御回路14を備えている。
1次側回路10はACプラグ1a、コード1bを介して供給されたAC100Vを全波整流し平滑して、一旦、直流電圧にした後、その直流電圧をスイッチングしたパルス電圧を1次側コイル11に与える。1次側コイル11と2次側コイル12とは、図2(b)に示すように、1次側コア(フェライト)15と2次側コア(フェライト)16とが磁気結合されたトランスを形成しており、1次側コイル11にスイッチングされたパルス電圧が与えられると、2次側コイル12には磁気結合により1次側コイル11と2次側コイル12との巻数比に応じた電圧が誘起される。そして、その誘起された誘起電圧を2次側回路13で整流し平滑した直流電圧を充電制御回路14に与え、充電制御回路14はその与えられたDC電圧で蓄電池を充電する。このようにして、送電装置1から携帯電話機2への非接触電力供給が行われる。」(【0051】-【0052】)

1-e「次に、受電機器が送電装置1の上に正しく載置されているかどうかの判断であるが、受電機器が送電装置1の上に正しく載置されているという意味は、非接触電力供給において、送電側のコイルと受電側のコイルとが電力の伝達効率が高い位置に配置されているかどうか、換言すれば、図2に示した送電装置1の1次側コア15と受電機器である携帯電話機2の2次側コア16の磁気結合が高い結合度になる位置に送電装置1と携帯電話機2とが配置されているかどうかという意味である。」(【0063】)

1-f「図8は、本発明の第5実施形態の電力供給システムを搭載した送電装置と携帯電話機の外観を示す外観図である。図8において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図8において、(a)は送電装置1と携帯電話機2が離れている状態を示し、(b)は送電装置1の上に携帯電話機2が載置された状態を示す。図8(a)に示すように、送電装置1に凸部51を設け、携帯電話機2に凹部52を設けてあり、凸部51と凹部52を嵌合することにより、送電装置1と携帯電話機2との位置合わせを行なうことができる。さらに、図示していないが、携帯電話機2以外の受電機器、例えば、ノートパソコン、デジタルカメラ、PDA等の携帯電話機2以外の受電機器についても、携帯電話機2とまったく同じ形状の凹部52を設けることにより、どの機器も送電装置1に対する位置合わせを行なうことが可能となる。それにより、1つの送電装置1を多くの受電機器で共有使用することが可能となる。」(【0085】)

1-g「図9は、本発明の第6実施形態の電力供給システムを搭載した送電装置と携帯電話機の外観を示す外観図である。図9において、図8と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図9において、(a)は送電装置1と携帯電話機2が離れている状態を示し、(b)は送電装置1の上に携帯電話機2が載置された状態を示す。図8(a)に示すように、送電装置1に充電可能領域を示すマーク53及び位置合わせのための補助マーク(十字マーク)54を設け、携帯電話機2に位置合わせのためのマーク55をそれぞれ設けてある。携帯電話機2のマーク55が送電装置1の充電可能領域内におさまるように携帯電話機2を置く、即ち、マーク55とマーク53が重なるように携帯電話機2を置くと、携帯電話機2の充電が可能となる。さらに、図示していないが、携帯電話機2以外の受電機器、例えば、ノートパソコン、デジタルカメラ、PDA等の携帯電話機2以外の受電機器についても、携帯電話機2とまったく同じマーク55を設けることにより、どの機器も送電装置1に対する位置合わせを行なうことが可能となる。それにより、1つの送電装置1を多くの受電機器で共有使用することが可能となる。また、このようなマークによる位置合わせでは、図8に示す実施形態のような凹凸部が必要ないため、送電装置1及び携帯電話機2を薄型化することが可能である。」(【0086】)

上記記載及び図面に基づけば、送電装置は1次側コイルを内蔵している。
上記記載及び図面に基づけば、モバイル可能な電子機器が載置される箇所は、送電装置の平面状のプレートの上面であり、この平面状のプレートの特定部分に交流磁束が誘導される。
上記記載及び図面に基づけば、モバイル可能な電子機器は送電装置の平面状のプレートに載置させる背面のプレートを有し、モバイル可能な電子機器の背面のプレートの内側に2次側コイルを配設している。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「商用電源を全波整流し平滑した直流電圧をスイッチングしたパルス電圧を与える1次側コイルを内蔵する送電装置と、この送電装置の1次側コイルに磁気結合される2次側コイルを備え、かつこの2次側コイルに誘起される電圧で充電される蓄電池とを備えるモバイル可能な電子機器とからなり、
送電装置は、モバイル可能な電子機器を載置させる平面状のプレートを上面に有し、この平面状のプレートの特定部分に交流磁束を誘導するように1次側コイルを内蔵しており、
モバイル可能な電子機器は、送電装置の平面状のプレートに載置させる背面のプレートを有すると共に、このモバイル可能な電子機器の背面のプレートの内側に2次側コイルを配設しており、
さらに、送電装置は、平面状のプレートに凸部を有し、この凸部に嵌合される凹部をモバイル可能な電子機器の背面のプレートに設けており、
送電装置の凸部をモバイル可能な電子機器の凹部に嵌合して、1次側コイルと2次側コイルを磁気結合して、1次側コイルから2次側コイルに電力を供給してモバイル可能な電子機器の蓄電池を充電するようにしてなる
送電装置の平面状のプレートにモバイル可能な電子機器が載置されて、1次側コイルと2次側コイルが磁気結合されて、1次側コイルから2次側コイルに電力を供給してモバイル可能な電子機器の蓄電池を充電するようにしてなる送電装置とモバイル可能な電子機器とからなるセット。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、上記記載事項からみて、引用例1には、
「商用電源を全波整流し平滑した直流電圧をスイッチングしたパルス電圧を与える1次側コイルを内蔵する送電装置と、この送電装置の1次側コイルに磁気結合される2次側コイルを備え、かつこの2次側コイルに誘起される電圧で充電される蓄電池とを備えるモバイル可能な電子機器とからなり、
送電装置は、モバイル可能な電子機器を載置させる平面状のプレートを上面に有し、この平面状のプレートの特定部分に交流磁束を誘導するように1次側コイルを内蔵しており、
モバイル可能な電子機器は、送電装置の平面状のプレートに載置させる背面のプレートを有すると共に、このモバイル可能な電子機器の背面のプレートの内側に2次側コイルを配設しており、
送電装置の平面状のプレートに、モバイル可能な電子機器を載置させる位置をマークで表示しており、このマークに合わせて送電装置の平面状のプレートにモバイル可能な電子機器が載置されて、1次側コイルと2次側コイルが磁気結合されて、1次側コイルから2次側コイルに電力を供給してモバイル可能な電子機器の蓄電池を充電するようにしてなる送電装置とモバイル可能な電子機器とからなるセット。」
との事項(以下、「引用例1記載事項」という。)が記載されている。


(2)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「商用電源」、「1次側コイル」、「送電装置」、「磁気結合」、「2次側コイル」、「誘起」、「蓄電池」、「モバイル可能な電子機器」、「載置させる」、「平面状のプレート」、「背面のプレート」、「凸部」、「凹部」、「嵌合」、「電力」は、それぞれ本願補正発明の「交流電源」、「1次コイル」、「充電台」、「電磁結合」、「2次コイル」、「誘導」、「充電できる電池」又は「電池」、「携帯電子機器」、「着脱自在に載せる」又は「載せる」、「上面プレート」、「背面プレート」、「位置決め凸部」、「位置決め凹部」、「案内」、「交流電力」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明の「商用電源を全波整流し平滑した直流電圧をスイッチングしたパルス電圧を与える1次側コイル」は、本願補正発明の「交流電源に接続してなる1次コイル」に相当し、引用発明の「誘起される電圧で充電される」は、本願補正発明の「誘導される電力で充電される」に相当し、引用発明の「送電装置の平面状のプレートにモバイル可能な電子機器が載置されて」は、本願補正発明の「上面プレートに携帯電子機器が載置されて」に相当する。

したがって、両者は、
「交流電源に接続してなる1次コイルを内蔵する充電台と、この充電台の1次コイルに電磁結合される2次コイルを備え、かつこの2次コイルに誘導される電力で充電される充電できる電池とを備える携帯電子機器とからなり、
充電台は、携帯電子機器を脱着自在に載せる平面状の上面プレートを上面に有し、この上面プレートの特定部分に交流磁束を誘導するように1次コイルを内蔵しており、
携帯電子機器は、充電台の上面プレートに載せる平面状の背面プレートを有すると共に、この背面プレートの内側に2次コイルを配設しており、
さらに、充電台は、上面プレートに位置決め凸部を有し、この位置決め凸部に嵌合される位置決め凹部を携帯電子機器の背面プレートに設けており、
充電台の位置決め凸部を携帯電子機器の位置決め凹部に案内して、1次コイルと2次コイルを電磁結合して、1次コイルから2次コイルに交流電力を供給して携帯電子機器の電池を充電するようにしてなる
上面プレートに携帯電子機器が載置されて、1次コイルと2次コイルが電磁結合されて、1次コイルから2次コイルに交流電力を供給して携帯電子機器の電池を充電する充電台と携帯電子機器とからなるセット。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明は、2次コイルは、線材を平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルであって、この平面コイルの2次コイルが、背面プレートの内側に背面プレートと平行な姿勢で配置されると共に、2次コイルである平面コイルは中心の巻き径を位置決め凹部の内径よりも大きくして、平面コイルの中心に中空部を設けて、この中空部に位置決め凹部を設けているのに対し、引用発明は、2次コイルは、このような構成が特定されていない点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、充電台の上面プレートに、携帯電子機器を載せる位置を示すセット位置を図形で表示しており、このセット位置に合わせて上面プレートに携帯電子機器が載置されるのに対し、引用発明は、この様な構成を有していない点。


(3)判断
相違点1について
携帯電子機器を薄型化することは、記載は無くとも携帯電子機器に当然に要求される課題であるから、引用発明においても薄型化を図る課題が内在している。また、線材を平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルを携帯電子機器の電力供給に用いることは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-6440号公報等にもみられるように周知の事項である。そうであれば、引用発明においても、薄型化を図るために2次コイルの線材を上記周知の事項のように平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルとすることは当業者であれば適宜選択し得るものと認められる。
その際、より多くの電力を1次コイルから2次コイルに送るには、1次コイルと2次コイルの電磁結合は密、即ち相互インダクタンスの結合係数が1に近い方が好ましいから、1次コイルと2次コイルの中心を合わす方が好ましい。また、非接触型の電力電送装置において、1次コイルと2次コイルの位置合わせのために凹凸係合を用い、2次コイルの中心の巻き径を位置決め凹部の内径よりも大きくして、2次コイルの中心に中空部を設けて、この中空部に位置決め凹部を設けることは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-90201号公報等にもみられるように慣用手段(必要が有れば特開平10-23676号公報【図2】、特開2000-217279号公報【図13】参照)であるから、引用発明においても、2次コイルを線材を平面に渦巻き状に巻いた空芯の平面コイルとし、この平面コイルの2次コイルを、上記慣用手段のように、背面プレートの内側に配置すると共に、2次コイルである平面コイルは中心の巻き径を位置決め凹部の内径よりも大きくして、平面コイルの中心に中空部を設けて、この中空部に位置決め凹部を設けることは当業者であれば容易に考えられることと認められる。なお、2次コイルを平行な姿勢で配置することは、コイル同士の電磁結合等を考慮して当業者であれば適宜なし得ることと認められる。

相違点2について
充電台と携帯電子機器とからなるセットにおいて、携帯電子機器の位置合わせのために図形(「マーク」が相当)を用い、充電台の上面プレートに、携帯電子機器を載せる位置を示すセット位置を図形で表示して、このセット位置に合わせて上面プレートに携帯電子機器を載置することは、引用例1記載事項にもみられるように周知の技術(必要が有れば上記特開2005-6440号公報【0024】参照)であるから、引用発明においても、携帯電子機器の充電台へのより素早い載置のために、上記周知の技術に基づいて充電台の上面プレートに、携帯電子機器を載せる位置を示すセット位置を図形で表示し、このセット位置に合わせて上面プレートに携帯電子機器を載置することは当業者であれば適宜採用できることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の事項、慣用手段、周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の事項、慣用手段、周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した平成23年4月14日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由II](1)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から携帯電子機器の載置に関し「充電台(70)の上面プレート(72)に、携帯電子機器(60)を載せる位置を示すセット位置を図形(79)で表示しており、このセット位置に合わせて」上面プレート(72)に携帯電子機器(60)が載置されるとの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由II](2)及び(3)」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の事項、慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、相違点2についての検討が不要になるほかは同様の理由により、引用発明及び上記周知の事項、慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項、慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-12 
結審通知日 2012-07-17 
審決日 2012-07-30 
出願番号 特願2007-222844(P2007-222844)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 572- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康石川 晃  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
川口 真一
発明の名称 充電台と携帯電子機器とからなるセット  
代理人 大橋 雅昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ