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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1264532 |
審判番号 | 無効2010-800211 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-11-15 |
確定日 | 2012-09-11 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3327817号発明「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドへの透明窓の形成」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成 9年 8月18日 本件出願(優先権主張平成8年8月16日、ア メリカ合衆国) 平成14年 7月12日 設定登録(特許第3327817号) 平成15年 3月24日 特許異議申立(異議2003-70781号) 平成16年 5月 6日 特許異議の決定(訂正認容、一部取消し) 平成16年 9月23日 訴えの提起(平成17年(行ケ)第10023 号) 平成16年11月 1日 訂正審判請求(訂正2004-39252号) 平成17年 3月31日 審決(訂正認容) 平成17年 5月30日 判決言い渡し(異議の決定の取り消し) 平成17年 7月12日 特許異議の決定(特許維持) 平成22年11月15日 無効審判請求(請求項1?25に対し) 平成23年 5月13日 被請求人・口頭審理陳述要領書 平成23年 6月13日 請求人・口頭審理陳述要領書 平成23年 6月22日 口頭審理、無効理由通知 平成23年 6月30日 訂正請求、意見書(答弁書) 平成23年 7月 5日 補正書(訂正請求に対し) 第2.訂正請求について 1.訂正請求の内容 被請求人が求めた訂正の内容は、訂正請求書(平成23年7月5日補正書を含む)に添付された全文訂正明細書のとおりであって、しかも口頭審理調書に添付された訂正案のとおり、 (1)請求項13、17、22、23、25の「開口」が「貫通する」ものである点を明瞭にすべく訂正、 (2)請求項17における「部分」と「セクション」の用語を統一すべく訂正、 (3)請求項13における「研磨面」を用語を統一すべく「ポリッシング面」に訂正、 というものである。 2.訂正請求についての当審の判断 訂正請求について検討する。 訂正事項(1)は、「開口」が「貫通する」ものである点を明瞭に、すなわち明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 訂正事項(2)、(3)は、誤記の訂正を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。 第3.本件発明 本件特許の請求項1ないし25に係る発明は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。なお、各請求項のA.等の分説は、請求人の審判請求書(訂正請求前)によるものに準じた。 「【請求項1】 A.機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 B.ポリッシング面を有するパッド部と、 C.前記ポリッシング面に形成され前記パッド部を貫通した開口であって、前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクションおよび前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有する前記開口と、 D.前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と、前記開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する実質的に透明なプラグと、 E.前記プラグを前記開口内の前記パッド部に固定する手段とを備えるポリッシングパッド。 【請求項2】 F.前記プラグがポリウレタン材料で造られている、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項3】 G.前記固定手段が接着材料を有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項4】 H.前記接着材料がゴム弾性ポリウレタン材で造られている、請求項3に記載のポリッシングパッド。 【請求項5】 I.前記プラグの前記第1部分が前記開口の前記第1セクションと実質的に同一寸法であり、前記プラグの前記第2部分が前記開口の前記第2セクションと実質的に同一寸法である、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項6】 J.前記プラグの前記第1部分が、前記ポリッシング面と同じ高さである上面を有する、請求項5に記載のポリッシングパッド。 【請求項7】 K.前記プラグの前記第2セクションの厚さが前記開口の前記第2セクションの深さより小さい、請求項6に記載のポリッシングパッド。 【請求項8】 L.前記第1の寸法が前記第2の寸法より大きい、請求項6に記載のポリッシングパッド。 【請求項9】 M.前記プラグがリムを有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項10】 N.前記固定手段が、前記リム上に配置された接着材料を有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項11】 O.機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 P.ポリッシング面を有する第1層と、 Q.前記第1層に隣接する第2層と、 R.前記第1層および前記第2層を貫通する開口であって、第1の断面積を持つ前記第1層内の第1開口、および、より小さい第2の断面積を持つ前記第2層の第2開口とを有する前記開口と、 S.前記開口に配置され、前記第1層の前記第1開口内に位置決めされた第1部分と、前記第2層の前記第2開口内に位置決めされた第2部分とを有する実質的に透明なプラグと、 T.前記プラグを前記開口内の前記第1層と前記第2層に固定する接着材料と、を備えるポリッシングパッド。 【請求項12】 U.前記第1層が第1デュロメータ測定値を持ち、前記第2層が第2の、より小さいデュロメータ測定値を持つ、請求項11に記載のポリッシングパッド。 【請求項13】 V.ポリッシング面を持つポリッシングパッドを形成する方法であって、 W.開口が、前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクション、および、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有するように、ポリッシングパッドを貫通する前記開口を形成するステップと、 X.実質的に透明なプラグを、前記プラグが前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と前記開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する状態で、前記開口に配置するステップと、 Y.前記プラグを前記開口内の前記ポリッシングパッドに固定する固定ステップと、を備えるポリッシングパッド形成方法。 【請求項14】 Z.前記固定ステップが、前記プラグを接着材料で前記開口に固定するステップを有する、請求項13に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項15】 a.前記開口を形成するステップが、前記ポリッシングパッドから材料を除去する除去ステップを有する、請求項13に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項16】 b.前記除去ステップが、前記ポリッシングパッドの第1層から前記第1セクションを除去するステップと、前記ポリッシングパッドの第2層から前記第2セクションを除去するステップとを有する、請求項15に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項17】 c.機械化学的ボリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 d.ポリッシング面を有する物体と、 e.該物体を貫通して形成された開口であって、該開口は前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を有する第1セクション及び、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を有する第2セクションとを有する、該開口と、 f.該開口の前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており且つ前記第1セクション内において該開ロ内の前記物体に固定された実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【請求項18】 g.前記物体が、該ポリッシング面を有する第1層と、該第1層に隣接する第2層とを有する請求項17に記載のポリッシングパッド。 【請求項19】 h.該開口が、該第1層および該第2層を貫通する請求項18に記載のポリッシングパッド。 【請求項20】 i.該開口の該第1部分が該ポリッシング面に隣接し、該開口の該第1部分の寸法が該開口の該第2部分よりも大きい請求項19に記載のポリッシングパッド。 【請求項21】 j.該プラグの上面が、該ポリッシング面と実質的に同じ高さにある請求項17に記載のポリッシングパッド。 【請求項22】 k.機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 l.ポリッシング面を有する被覆層及び前記被覆層の下側に位置している裏打ち層を包含する物体と、 m.前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持ち、前記被覆層に形成された第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持ち、前記裏打ち層に形成された第2セクションとを有し、前記被覆層と前記裏打ち層を貫通する開口と、 n.前記開口の前記第1セクション内の前記物体に固定され、前記開口の前記第1セクションの前記第1寸法及び前記被覆層の厚さと夫々実質的に同じ寸法を有する実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【請求項23】 o.機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 p.ポリッシング面を有する物体と、 q.前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持つ第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションとを有し、前記物体を貫通する開口と、 r1.前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有しており、r2.前記物体に固定され、前記ポリッシング面と実質的に同じ高さである上面を有すると共にr3.前記第2部分の厚さが前記開口の前記第2セクションの深さより小さい実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【請求項24】 s.該上面が、該ポリッシング面のプラグと直に隣接する部分と実質的に共面である請求項23に記載のポリッシングパッド。 【請求項25】 t.機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 u.透過性を低下させる添加物を含むポリウレタンで形成されたポリッシング面を有する物体と、 v.前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持つ第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションとを有し、前記物体を貫通する開口と、 w.前記開口の前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており、前記第1セクション内に固定され、透過性を低下させる添加物を含まないポリウレタンで形成された、実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 上記請求項17の「ボリッシング装置」は誤記であり正しくは「ポリッシング装置」であると、同様に「開ロ内」は「開口内」であると認める。 第4.請求人の主張 1.要点 請求人は、本件特許の請求項1ないし25に係る特許発明を無効とするとの審決を求めている。 その理由は、以下のとおりである(請求書第19ページ(3))。 (ア)請求項1ないし25に係る特許発明は、甲第1号証?甲第25号証に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反する。 (イ)請求項13、請求項17、請求項22、請求項23、請求項24、請求項25及びその従属項に係る特許発明は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (ウ)請求項24に係る特許発明は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ただし、上記第2.のとおり、訂正請求が認容されたことから、特許法第36条に係る上記(イ)、(ウ)の主張は取り下げられた(口頭審理調書の「請求人 8」)。 2.証拠 請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開平7-52032号公報 甲第2号証:「機械的プラナリゼーション加工の加工終点検出技術の現状 と今後の課題」、精密工学会誌、Vol.62、No.4、 1996、発行日:平成8年4月5日 甲第3号証:特開平7-73485号公報 甲第4号証:実開昭64-19191号公報 甲第6号証:特開平8-10024号公報 甲第15号証:特開平5-309558号公報 甲第16号証:特開平5-80201号公報 甲第17号証:特開平5-271642号公報 甲第18号証:特表平5-505769号 甲第19号証:特開平7-235520号公報 甲第20号証:本件審査における平成14年4月22日付け意見書 甲第21号証:本件異議における平成16年1月8日付け異議意見書 甲第22号証:無効2006-80075審決書 甲第23号証:平成19年(行ケ)第10250号判決 甲第24号証:特開平5-21967号公報 甲第25号証:特開平5-193991号公報 甲第26号証:特開平3-234467号公報(口頭審理陳述要領書に添 付) 甲第27号証:特開平7-59727号公報(口頭審理陳述要領書に添付 ) なお、甲第5号証、甲第7ないし14号証は、口頭審理において、参考資料とされた(口頭審理調書の「審判長 1」)。 3.主張の概要 請求人の主張の概要は、以下のとおりである。 なお、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えた。行数は、空行を含まない。 (1)請求書第24ページ下から7行?第25ページ第3行 「丸2 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平07-52032号公報)の図1、【0022】には、本件請求項1に係る特許発明の構成中、A.「ポリシングパッド」、B.「パッド部」、C.「開口」、D.「プラグ」、E.「固定する手段」に相当する構成「研磨布5」、「研磨布5」、「研磨布窓6」、「透明窓材4」、「透明窓材4を開口内に嵌め込んで固定すること(すなわち「固定する手段」)」が記載されている。 そして、甲第1号証に記載された発明は、上記の構成により、プラグ(透明窓材4)を適正な位置に収容、保持することができる、という効果を有するものである。」 (2)請求書第26ページ第2?22行 「丸3 本件特許発明と先行技術発明との対比 (請求項1) 本件請求項1に係る特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、第1部分(大径部)と第2部分(小径部)とを有する実質的に透明なプラグを備えており、当該プラグがポリシングパッドに形成された開口内に位置決め(配置)されている点で一致し、請求項1に係る特許発明は、プラグがポリシングパッドに取り付けられているのに対し、甲第1号証に記載された発明は、プラグ(透明窓材4)が定盤1に取り付けられている点で、両者は相違する。 しかしながら、甲第2号証には、光学式終点検出技術(本件、甲第1号証はいずれも光学式終点検出技術に関するものである)においては、「定盤や研磨布を貫いて光路を確保・・・する技術開発が求められている」と記載されており、その光路を確保するために、プラグを定盤に取り付けるか又はポリシングパッドに取り付けるかは当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であって、単なる設計事項というべきであるから、甲第1号証記載のプラグ(透明窓材4)を同号証記載のポリシングパッド(研磨布5)に適用することは、当業者にとって容易である。 そして、甲第1号証記載のプラグ(透明窓材4)を同号証記載のポリシングパッド(研磨布5)に適用するに際して、当該プラグ(透明窓材4)を適切な位置に収容、保持するために、本件特許発明の構成C.「開口」、D.「プラグ」を採用することについては、甲第3号証?甲第8号証、及び甲第24号証に記載されており、当業者にとって容易である。」 (3)請求書第28ページ下から3行?第29ページ第11行 「(請求項2) 本件請求項2に係る特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載されたプラグ(透明窓材4)がパイレックス透明ガラス性であるのに対し、本件請求項2に係る特許発明がポリウレタン材料製である点で、両者は相違する。 しかしながら、甲第16号証(特開平5-80201号公報)の【0006】には、光ビームを透過するものとしてポリウレタンが記載されており、甲第25号証(特開平5-193991号公報)の特許請求の範囲には、透明なポリウレタンフィルムが記載されており、さらに、本件の明細書の【0016】には、2段型プラグ600の材料は、ニュージャージー州ニューアークのRodelから商品名EX-2000として入出可能な、実質的に純粋なポリウレタンとすることができる、と記載されているから、甲第1号証に記載されたプラグ(透明窓材4)として、既に公知の光ビームを透過するものとしてポリウレタンを採用することは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であって、単なる設計事項というべきである。」 (4)請求書第30ページ第1?26行 「(請求項5) 請求項4に係る特許発明の特徴点であるプラグの第1部分、第2部分がそれぞれ、開口の第1セクション、第2セクションと実質的に同一寸法である点については、甲第3号証?甲第8号証、甲第24号証に記載されている。また、このような構成を採ることは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であって、単なる設計事項というべきである。 (請求項6) 請求項6に係る特許発明の特徴点であるプラグの第1部分が、ポリッシング面と同じ高さである上面を有する点については、甲第3号証?甲第8号証に記載されている。 そもそも、プラグがポリッシング面よりも突出していると、当該突出したプラグがウエハに当たりこれを損傷させることが自明であり、一方、プラグ上面がポリッシング面よりも低いと、そこにスラリーが溜まって光の透過を阻害することも自明である。よって、プラグの第1部分が、ポリッシング面と同じ高さである上面を有する構成を採ることは自明である。 (請求項7) 請求項7に係る特許発明の特徴点であるプラグの第2セクションの厚さが開口の第2セクションの深さより小さい点については、甲第3号証?甲第8号証、甲第24号証に記載されている。 そもそも、研磨圧力の負荷の際、プラグの高さとポリッシング面の高さ関係を適正にするためには、プラグの厚さを、パッド材料及びプラグ材料の弾性率差に応じて適宜設定すればよいのであるから、プラグの第2セクションの厚さが開口の第2セクションの深さより小さい点については、単なる設計事項というべきである。また、研磨時にプラグ面とポリッシング面が同一高さと定義するのは研磨時点であるから、非研磨時には、弾性率差に応じて高さの差があることは自明である。」 (5)請求書第31ページ第15?24行 「(請求項11) 請求項11に係る特許発明は、請求項1に記載のパッド部の代わりに、「第1層」、「第2層」を用いている。その余は請求項1と同じである。 甲第18号証(特表平5-505769号)の図2、第3頁右上欄22?28行には、ポリッシング面を有する弾性パッド21、弾性パッド21に隣接する可撓性パッド22を含む二層のポリシングパッド(研磨パッド手段19)が記載されているから、甲第1号証に記載されたポリシングパッド(研磨布5)として、既に公知の二層のポリシングパッド(研磨パッド手段19)を採用することは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であって、単なる設計事項というべきである。」 (6)請求書第32ページ第2?5行 「(請求項13) 請求項13に係る特許発明は、カテゴリーが相違するものの実質的に請求項1と同内容であるから、請求項1に対し述べたのと同様の理由により、進歩性が否定されるべきである。」 (7)請求書第32ページ下から2行?第33ページ第1行 「(請求項17) 請求項17に係る特許発明は、実質的に請求項1と同内容であるから、請求項1に対し述べたのと同様の理由により、進歩性が否定されるべきである。」 (8)請求書第33ページ第14?20行 「(請求項22) 請求項22に係る特許発明は、実質的に請求項1と同内容であるから、請求項1に対し述べたのと同様の理由により、進歩性が否定されるべきである。 (請求項23) 請求項23に係る特許発明は、実質的に請求項1、請求項6及び請求項7と同内容であるから、請求項1、請求項6及び請求項7に対し述べたのと同様の理由により、進歩性が否定されるべきである。」 (9)請求書第33ページ第25?28行 「(請求項25) 請求項25に係る特許発明は、実質的に請求項2及び請求項5と同内容であるから、請求項2及び請求項5に対し述べたのと同様の理由により、進歩性が否定されるべきである。」 (10)口頭審理陳述要領書第2ページ下から8行?第3ページ第15行 「しかし、甲1には、定盤と研磨布に貫通孔を設け、研磨終点を検出するための光路を確保すること、該貫通孔には、研磨液を漏洩しないように透明窓材を固定すること、該透明窓材としては、異なる径部を有する透明なプラグを用いること、が記載されており、研磨液の漏洩を防止するための透明窓材の固定は、前記貫通孔のいずれの部分であってもよいこと、および、甲1において、貫通孔を閉じる部分としては、「定盤」と研磨布が考えられることが、技術常識に照らして、自明であり、異なる径部を有するプラグを固定相手の対応する開口内に固定して孔を閉じることは、甲3?8、甲24、さらには甲27に示されるように、本出願前に周知の技術であり、研磨布と定盤の開口を同一として光路を確保することは、甲19の図3、甲26の第1図に示されるように、周知技術である。[甲1では「研磨布」と称し、甲19では「研磨パッド」と称し、甲26では「研磨クロス」と称しているが、これらは本件発明1の「ポリッシングパッド」と同義である。]。 してみると、甲1に記載の、研磨終点を検出するための光路を確保する発明において、研磨布の開口を閉じるように、径部が研磨布の開口内に収納されるようにまた研磨液が漏洩しないように、異なる径部を有する透明なプラグを研磨布の開口内に固定することは当業者が容易に想起できることといえる。そもそも、研磨液が漏洩しないように貫通孔を閉じようとする場合、その態様は、実質的に透明なプラグを定盤に設けられた貫通孔に固定するか、研磨布に設けられた貫通孔に固定するか、両方に固定するかの3通りしかなく、これらの態様のいずれを採用しても、研磨液が漏洩しないようにしつつ、研磨終点を検出するための光路を確保できることが明らかであり、これらの態様のいずれを採用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であって、単なる設計事項というべきであるから、実質的に透明なプラグを、ポリッシングパッドのパッド部に固定することは容易である。」 (11)6/22口頭審理技術説明資料第14ページ第2?4行 「甲4、甲27は、いずれも「液が漏洩しないように」、かつ、「光を通過させるようにする」ために、第1の寸法および第2の寸法を持つ実質的に透明なプラグ(透明窓材)で、光が透過する貫通孔を閉じる構造である点で、本件特許発明1と同様である。」 (12)口頭審理調書の「請求人」欄 「3 進歩性の判断は、甲第1号証を主引用刊行物とすることでよい。 4 「事前連絡メモ」の相違点2について、パッドが硬く、厚いものも甲第 15号証に記載されている。 5 流出を手前のパッドで止めるか、後のプラテンで止めるかは、適宜選択 できる。 6 プラテンとパッドは、広義の意味でパッドである。」 第5.被請求人の主張 これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。 その主張の概要は、以下のとおりである。 (1)口頭審理陳述要領書第8ページ第12行?第12ページ第5行 「2 本件発明の特徴 本件発明のうち、ポリッシングパッドをクレームするものの特徴の1つは、第1の寸法を持つ第1セクションと第2の寸法を持つ第2セクションとを含む開口(2段型の開口)がポリッシングパッドのパッド部に形成され、実質的に透明なプラグが開口内に位置決めされ、プラグを開口内に固定する手段を備えることである。 ポリッシングパッド(のパッド部)は、薄くて柔軟な材料で作られているので、ポリッシングパッド(のパッド部)に開口を形成しても、これに実質的に透明なプラグを良好に固定することは困難である。 (略) 本件発明の利点の1つは、上記特徴により、実質的に透明なプラグが開口の縁以外の表面でポリッシングパッド(のパッド部)に固定できるようにし、プラグの開口への固定を良好に行うことができるようにしたものである(本件明細書の段落【0019】、【0020】)。 (略) 請求人が提出した公知文献のいずれにも、このような特徴は記載されていないし、薄くて柔軟な材料で作られるポリッシングパッドの開口にプラグを固定しようとする場合の課題やこれを解決する手段は記載も示唆もされていない。 (略) さらに、ポリッシングパッドの形成方法に関する本件発明13?16の特徴の1つは、2段型になるようにポリッシングパッドに開口を形成するステップと、実質的に透明なプラグを開口に配置するステップと、プラグを開口内に配置するステップを備えることであるが、この特徴も請求人が提出した公知文献には記載されていない。 (略) IV 特許法29条2項違反を根拠とする無効理由について 本件発明1?25が甲1?25に基づき当業者が容易になし得たので、特許法29条2項違反があるとする請求人の主張には理由がない。 このことは、以下に詳述するが、概括的に述べれば、請求人が依拠する甲3?8及び甲24は、いずれも、CMPの技術分野に属するものではなく(さらには光学的検出にも関係しない)、ポリッシングパッドのように薄くて柔軟な物体に形成されたウィンドウに関係するものではなく、さらに実質的に透明なプラグをポリッシングパッドの開口に固定する場合の問題について述べるものでもなく、これらに基づいて本件発明が容易想到であるとはいえない。そもそも、CMP装置用のポリッシングパッド(のパッド部)の開口に実質的に透明なプラグを固定することは困難であるというCMP特有の課題に直面した当業者が、課題を解決するために、全く異なる技術分野に属する光学レンズの保持装置(甲3)や時計ガラスの固定構造(甲4)などに関する技術を組み合わせるはずがない。」 (2)口頭審理調書の「被請求人」欄 「4 陳述要領書中の「2段型」とは、必ずしも段部を有することを意味し ない。たとえばテーパ開口も含まれる。 4 請求項2ないし請求項4、請求項8ないし請求項20についての進歩性 の判断は、請求項1についての進歩性の判断と同じ結論でよい。 5 請求項9の「リムを有する」とは、「段差部を有するもの」と同義であ る。請求項1は段差部を有しないものも含まれる。 6 請求項24の「共面」とは、実質的に高さの異なるもの、不連続のもの を含まない。 7 「事前連絡メモ」の相違点1について、開口が第1・第2セクションを 有することの効果は、取り付け面積が拡がり固定がしやすいことである。 8 「事前連絡メモ」の相違点2について、CMPパットは薄くて柔軟なも のであり、これに固定するものはない。 9 パッドに固定することによって、スラリがパッドの下に流出するこを防 止することができ、スラリが高額のため実施効果が大きい。 10 パッドとともにプラグ交換ができ、高さ調節も容易である。 11 本日提出の「被請求人口頭陳述要領」第41ページの請求項1の効果 は、発明の詳細な説明の段落【0019】、【0020】、【図3】等を 踏まえれば、当業者からみて自明である。」 なお「4」が重複しているが、明白な誤記である。 第6.当審の判断 1.本件発明 本件特許の請求項1ないし25に係る発明(以下「本件発明1ないし25」という。)は、上記第3.のとおりと認められる。 2.刊行物記載の発明 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下が記載されている。なお、甲第1号証を主引用刊行物とすることは、請求人も同意している(上記第4.の3.(12)の「3」)。 ア.段落0001 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウエハ、特にSOI(Silicon-on-Insulator)ウエハ等の膜付きウエハの研磨方法及び装置に関する。」 イ.段落0006 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、研磨途中でウエハを定盤から離すことなく研磨中の膜の厚さを知ることができ、研磨の高精度な制御が効率よくできるウエハの研磨方法及び装置を提供することを課題とする。」 ウ.段落0022?0026 「【0022】 【実施例】図1、図2に示した実施例について説明する。定盤1は直径300mm、厚さ10mmのアルミニウム製の円盤で、その中心の片面に定盤1を回転するための軸が固定してある。定盤1の軸を固定した面の反対側の面には、中心から放射状に伸びる近接した2本の直線で囲まれ、中心付近から周縁近くまで伸びた溝2が設けてある。溝2の中心側の幅は5mmで周縁側の幅は15mm、深さ1mmとなっている。溝2の長手方向中央には、直径10mmの貫通孔3が設けられ、溝2の反対側では円錐状に拡大している。貫通孔3の溝2側にはパイレックス透明ガラス製の透明窓材4が嵌め込まれ、研磨液が漏れないようにしてある。 【0023】定盤1の溝2を有する面には、定盤1と同形の厚さ0.7mmのローデルニッタ社製、商品名suba-500ウレタン含浸ポリエステル不織布からなる研磨布5が張り付けられ、溝2に相当する部分は溝2と同形に切り抜かれて、研磨布窓6が形成されている。透明窓材4は定盤1の表面より約0.5mm突出するが、研磨布5の弾性を考慮しても研磨布5の表面より十分低くなっている。 【0024】・・・。 【0025】片面に回転用の軸が固定された直径110mm、厚さ10mmの円盤状のアルミニウム製のウエハ支持板8に、表面に熱酸化膜を形成した2枚のシリコンウエハを、熱酸化膜を接せしめて接着し、一方のウエハを平面研削して厚さ15μmのシリコン膜として直径100mmのSOIウエハを、平面研削加工していない面をワックスで張り付けた。 【0026】粒径が0.01μm以下のシリカ粉末を含むアルカリ性溶液からなるローデルニッタ社製、商品名NALCO-2350を20倍に希釈した研磨液を定盤1の研磨布5の表面に滴下しつつ、定盤1を毎分50回転させながら、ウエハ支持板8に張り付けたウエハ7を、自転速度毎分40回転で回転させつつ、研磨布5に、回転中心が透明窓材4の上に位置するように、研磨荷重10kgfで押し付けて目標膜厚を1μmにして研磨を開始した。」 エ.図1 上部に大径部、下部に小径部を有し、研磨布窓6内に大径部が位置決めされた透明窓材4があり、透明窓材4の小径部を溝2に設けられた貫通孔3に嵌め込んだものが看取できる。 これら事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、本件発明1に照らして整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「シリカ粉末を含むアルカリ性溶液からなる研磨液を滴下しつつ研磨する研磨装置用の研磨布5であって、 研磨面を有する研磨布5と、 前記研磨面に形成され、研磨布5が張り付けられた定盤1の溝2と同形に研磨布5を切り抜いて形成した研磨布窓6と、 上部に大径部、下部に小径部を有し、前記研磨布窓6内に大径部が位置決めされた透明窓材4と、 前記透明窓材4の小径部を、研磨布5が張り付けられた定盤1の溝2に設けられた貫通孔3に嵌め込み、前記透明窓材4は研磨布5のポリッシング面より十分低いものである研磨布5。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、光学式終点検出技術において、「定盤や研磨布を貫いて光路を確保したり,リアルタイムで必要な情報を抽出したりする技術開発が求められている.」(第512ページ左欄第7?9行)と記載されている。 (3)甲第3号証 甲第3号証には、レンズホルダーにおいて、レンズ保持部25の2段型の開口に位置決めされた対物レンズ60が記載されている。 (4)甲第4号証 甲第4号証には、時計ケース1に形成された開口に位置決めされた時計ガラス4が記載されている。 (5)甲第6号証 甲第6号証には、コンタクトレンズ容器において、キャップ2に形成された凹部10に、キャップ2の上面とほぼ面一となるよう接着された識別部材11が記載されている。 (6)甲第15号証 甲第15号証には、ウエーハの研磨において、駆動軸2aに透明体のポリシングパッド1を取り付けたものが記載されている。 (7)甲第16号証 甲第16号証には、光ビームを透過するものとしてポリウレタン系プラスチックレンズが記載されている。 (8)甲第17号証 甲第17号証には、熱可塑性ポリエステルウレタンゴムを含むポリウレタン接着剤が記載されている。 (9)甲第18号証 甲第18号証には、半導体材料の平坦化装置において、ポリッシング面を有する弾性パッド21、弾性パッド21に隣接する可撓性パッド22を含む二層の研磨パッド手段19が記載されている。 (10)甲第19号証 甲第19号証には、半導体ウエハの機械化学研磨における終了点判定において、鋭いナイフ等の適当な器具を用いて、又は研磨パッド66の形成時に、パッドを切削して研磨パッド66にビューイング・アパーチャ73を形成することが記載されている。 (11)甲第24号証 甲第24号証には、移動端末機器等において、ケース2の開口15をめくらキャップ50の栓52で塞ぐものが記載されている。 (12)甲第25号証 甲第25号証には、航空機のための安全窓ガラスの保護フイルムにおいて、透明なポリウレタンフイルムが記載されている。 (13)甲第26号証 甲第26号証には、スタンバの研磨において、研磨クロス5の表面からわずかに後退してほぼ同一平面になるよう研磨定盤6の取付孔6bに、ガラス板4を嵌着するものが記載されている。 (14)甲第27号証 甲第27号証には、開口部51に形成された段部53に、レンズカバー35のフランジ52を嵌合させた内視鏡カバー3が記載されている。 3.本件発明1との対比・判断 (1)対比 甲1発明の「シリカ粉末を含むアルカリ性溶液からなる研磨液を滴下しつつ研磨する研磨装置用の研磨布5」は本件発明1の「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッド」に相当し、同様に「研磨面」は「ポリッシング面」に、「研磨布5」は「パッド部」に、「大径部」は「第1部分」に、「小径部」は「第2部分」に、相当する。 甲1発明の「研磨布5が張り付けられた定盤1の溝2と同形に研磨布5を切り抜いて形成した研磨布窓6」は本件発明1の「パッド部を貫通した開口」に含まれる。 本件発明1と、甲1発明とは、以下の点で一致する。なお、一致点について、両当事者間に争いはない(口頭審理調書の「当事者双方 1」)。 「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有するパッド部と、 前記ポリッシング面に形成され前記パッド部を貫通した開口と、 前記開口に位置決めされた第1部分を有する実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 本件発明1と、甲1発明とは、以下の点で相違する。なお、相違点について、両当事者間に争いはない(口頭審理調書の「当事者双方 1」)。 相違点1:パッド部を貫通した開口について、本件発明1は、「ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクションおよび前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有する」ものであるが、甲1発明は、開口の形状が明らかでない点。 相違点2:プラグについて、本件発明1は、「開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分」を有し、「開口内の前記パッド部」に固定されるが、甲1発明は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 (2)判断 先に、相違点2について検討する。 開口は、パッド部、定盤を貫通して形成されているところ、パッド部は定盤と比較すると柔軟性を有することが、一般的である。例えば、甲1発明においても、パッド部はウレタン含浸ポリエステル不織布、定盤はアルミニウム製である(上記第6.2.(1)ウ)。 プラグは、研磨液の漏出防止のためのものであるから、確実な固定が求められる。 よって、プラグを開口に固定する場合には、確実な固定の観点から、定盤に固定しようとすることが自然である。 すなわち、プラグを柔軟性を有するパッド部に固定するためには、特別の動機が必要と解されるが、提出された証拠のいずれにも、この点は示されていない。 本件発明1は、この点により、「スラリがパッドの下に流出するこを防止することができ、スラリが高額のため実施効果が大きい」(上記第5.(2)の9)という効果を有する。 請求人は、固定先は、パッド部か定盤か両方かの三択であるから、設計的事項であると主張する(上記第4.3.(10))が、上記のとおり、パッド部と定盤とが同格とは言えないから、請求人の主張は根拠がない。 さらに、本件発明1は、「開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分」を有し、柔軟性を有するパッド部に固定するために、プラグ形状の工夫がみられる。 以上、相違点2について、困難性なしとすることはできない。 次に、相違点1について検討する。 開口を形成する場合、加工効率、加工工程数減少の観点から、開口の形成方向において断面形状は同一とする、すなわち上部断面形状と下部断面形状とが同一であることが、一般的である。 よって、開口が、「ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクション」、「ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクション」を有するものとするためには、特別の動機が必要と解されるが、提出された証拠のいずれにも、この点は示されていない。 本件発明1は、前記相違点1、2が相まって、「取付面積が拡がり固定がしやすい」(上記第5.(2)の7)という効果を有する。 請求人は、甲第4号証、甲第27号証をもとに、かかる構造が周知である旨、主張する(上記第4.3.(11))。 しかし、甲第4号証は時計ガラスの防水に関するもの、甲第27号証は内視鏡の外れ防止構造に関するものであり、甲1発明とは技術分野が異なり、機能上も甲1発明のように処理液を積極的に利用するものではない。 すなわち、甲1発明に適用する動機を見出すことはできない。 以上、相違点1について、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明1は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 4.本件発明2ないし4 本件発明2ないし4は、いずれも本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 なお、被請求人は、請求項2ないし4、8ないし20に係る発明についての進歩性の判断は、請求項1に係るものと同じ結論で良いとしている(上記第5.(2)の4)。 5.本件発明5 本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記3.(1)の一致点、相違点1ないし2を有し、さらに、以下の点で相違する。 相違点3:本件発明5は、「前記プラグの前記第1部分が前記開口の前記第1セクションと実質的に同一寸法であり、前記プラグの前記第2部分が前記開口の前記第2セクションと実質的に同一寸法である」が、甲1発明は、そのようなものでない点。 相違点1、2については、上記3.における検討と同様に、困難性なしとすることはできない。 以下、同様な相違点については、判断が同様である旨の記載を省略する。 相違点3について検討する。 相違点3は、上記相違点1を前提としているから、相違点3についても、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明5は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 6.本件発明6 本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記3.(1)の一致点、相違点1ないし2、上記5.の相違点3を有し、さらに、以下の点で相違する。 相違点4:本件発明6は、「前記プラグの前記第1部分が、前記ポリッシング面と同じ高さである上面を有する」が、甲1発明は、「プラグはポリッシング面より十分低いものである」点。 相違点4について検討する。 プラグの上面を、ポリッシング面と同じ高さとすることは、いずれの証拠にも記載されていない。 パッド部は柔軟性を有し、変形することから、この相違点4は、プラグをパツド部に固定すること、すなわち相違点2を前提として、可能となるものである。 本件発明6は、これにより、スラリ集積を防止するという効果を有する。 なお、甲第26号証は、ガラス板4を研磨定盤6に固定し、研磨クロス5は柔軟性を有するから、研磨時に傷がつかないよう、ガラス板4を研磨クロス5の表面から、「わずかに後退」させるものであり、技術的意義が異なるものである。 したがって、本件発明6は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 7.本件発明7 本件発明7と甲1発明とを対比すると、上記3.(1)の一致点、相違点1ないし2、上記5.の相違点3、上記6.の相違点4を有し、さらに、以下の点で相違する。 相違点5:本件発明7は、「前記プラグの前記第2セクションの厚さが前記開口の前記第2セクションの深さより小さい」が、甲1発明はそのようなものでない点。 相違点5について検討する。 相違点5は、上記相違点1を前提としているから、相違点5についても、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明7は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 8.本件発明8ないし10 本件発明8ないし10は、いずれも本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 9.本件発明11 (1)甲1発明 甲1発明は、上記2.(1)のとおりである。 (2)対比 上記3.(1)の対応関係を踏まえ、本件発明13と、甲1発明とは、以下の点で一致する。 「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有するパッド部と、 前記パッド部を貫通する開口と、 前記開口内に位置決めされた第1部分を有する実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 本件発明11と、甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点6:パッド部について、本件発明11は「ポリッシング面を有する第1層と、前記第1層に隣接する第2層」からなるが、甲1発明は、2層構造でない点。 相違点7:パッド部を貫通した開口について、本件発明11は、「第1の断面積を持つ前記第1層内の第1開口、および、より小さい第2の断面積を持つ前記第2層の第2開口とを有する」ものであるが、甲1発明は、開口の形状が明らかでない点。 相違点8:プラグについて、本件発明11は、「前記第1層の前記第1開口内に位置決めされた第1部分と、前記第2層の前記第2開口内に位置決めされた第2部分と」を有し、パッド部の「開口」に配置されるが、甲1発明は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 相違点9:本件発明11は、「プラグを前記開口内の前記第1層と前記第2層に固定する接着材料」を備えるが、甲1発明は、明らかでない点。 (3)判断 相違点6について検討する。 甲第18号証に記載された事項は、「半導体材料の平坦化装置において、ポリッシング面を有する弾性パッド、弾性パッドに隣接する可撓性パッド22を含む二層の研磨パッド手段」というものである。 甲1発明、甲第18号証に記載された事項は、ともに研磨パッドに関するものであるから、甲1発明に、甲第18号証に記載された事項を適用し、相違点6に係るものとすることに困難性は認められない。 相違点7、8について検討する。 相違点7、8は、実質的に相違点1、2と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 相違点9について検討する。 接着材料による固定は周知であるとしても、相違点9は、相違点8を前提としているから、相違点9についても、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明11は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 10.本件発明12 本件発明12は、本件発明11に従属し、本件発明11の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 11.本件発明13 (1)甲1発明の2 甲第1号証に記載された事項を、本件発明13に照らし整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明の2」という。)が記載されていると認める。 「研磨面を有する研磨布5を形成する方法であって、 研磨布5が張り付けられた定盤1の溝2と同形に研磨布5を切り抜いて研磨布窓6を形成するステップと、 上部に大径部、下部に小径部を有する透明窓材4を、前記研磨布窓6内に大径部が位置決めされた状態で配置するステップと、 前記透明窓材4の小径部を、研磨布5が張り付けられた定盤1の溝2に設けられた貫通孔3に嵌め込むステップと、 を備える研磨布5形成方法。」 (2)対比 上記3.(1)の対応関係を踏まえ、本件発明13と、甲1発明の2とは、以下の点で一致する。 「ポリッシング面を持つポリッシングパッドを形成する方法であって、 ポリッシングパッドを貫通する開口を形成するステップと、 実質的に透明なプラグを、前記開口に配置するステップと、 を備えるポリッシングパッド形成方法。」 本件発明13と、甲1発明の2とは、以下の点で相違する。 相違点10:開口について、本件発明13は、「前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクション、および、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有する」ものであるが、甲1発明の2は、開口の形状が明らかでない点。 相違点11:プラグについて、本件発明13は、「前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と前記開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する状態で、前記プラグを前記開口内の前記ポリッシングパッドに固定する固定ステップ」を有するが、甲1発明の2は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 (3)判断 相違点10、11について検討する。 相違点10、11は、実質的に相違点1、2と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明13は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 12.本件発明14ないし16 本件発明14ないし16は、いずれも本件発明13に従属し、本件発明13の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 13.本件発明17 (1)甲1発明 甲1発明は、上記2.(1)のとおりである。 (2)対比 上記3.(1)の対応関係を踏まえ、本件発明17と、甲1発明とは、以下の点で一致する。 「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する物体と、 該物体を貫通して形成された開口と、 該開口内に配された実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 本件発明17と、甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点12:物体を貫通した開口について、本件発明17は、「前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を有する第1セクション及び、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を有する第2セクションとを有する」ものであるが、甲1発明は、開口の形状が明らかでない点。 相違点13:プラグについて、本件発明17は、「該開口の前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており且つ前記第1セクション内において該開口内の前記物体に固定された」ものであるが、甲1発明は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 (3)判断 相違点12、13について検討する。 相違点12、13は、実質的に相違点1、2と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明17は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 14.本件発明18ないし20 本件発明18ないし20は、いずれも本件発明17に従属し、本件発明17の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 15.本件発明21 本件発明21と甲1発明とを対比すると、上記13.(2)の一致点、相違点12ないし13を有し、さらに、以下の点で相違する。 相違点14:本件発明21は、「該プラグの上面が、該ポリッシング面と実質的に同じ高さにある」が、甲1発明は、「プラグはポリッシング面より十分低い」ものである点。 相違点14について検討する。 相違点14は、実質的に相違点4と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明21は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 16.本件発明22 (1)甲1発明 甲1発明は、上記2.(1)のとおりである。 (2)対比 上記3.(1)の対応関係を踏まえ、本件発明22と、甲1発明とは、以下の点で一致する。 「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する層を包含する物体と、 前記物体を貫通する開口と、 前記開口内に配された実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 本件発明22と、甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点15:物体について、本件発明22は、「被覆層及び前記被覆層の下側に位置している裏打ち層」からなるが、甲1発明は、2層構造でない点。 相違点16:物体を貫通した開口について、本件発明22は、「前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持ち、前記被覆層に形成された第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持ち、前記裏打ち層に形成された第2セクションと」を有するものであるが、甲1発明は、開口の形状が明らかでない点。 相違点17:プラグについて、本件発明22は、「前記第1セクション内の前記物体に固定され、前記開口の前記第1セクションの前記第1寸法及び前記被覆層の厚さと夫々実質的に同じ寸法を有する」ものであるが、甲1発明は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 (3)判断 相違点15ないし17について検討する。 相違点15、16、17は、順に、実質的に相違点6、1、2と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 したがって、本件発明22は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 17.本件発明23 本件発明23は、本件発明7と実質的に同一である。 したがって、同様の理由により、本件発明23は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 18.本件発明24 本件発明24と甲1発明とを対比すると、上記3.(1)の一致点、相違点1ないし5を有し、さらに、以下の点で相違する。 相違点18:本件発明24は、「該上面が、該ポリッシング面のプラグと直に隣接する部分と実質的に共面である」が、甲1発明は、明らかでない点。 相違点18について検討する。 プラグの上面を、「ポリッシング面のプラグと直に隣接する部分と実質的に共面」とすることは、いずれの証拠にも記載されていない。 本件発明24は、これにより、スラリ集積を防止するという効果を有する。 したがって、本件発明24は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 19.本件発明25 (1)甲1発明 甲1発明は、上記2.(1)のとおりである。 (2)対比 上記3.(1)の対応関係を踏まえ、本件発明25と、甲1発明とは、以下の点で一致する。 「機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する物体と、 前記物体を貫通する開口と、 前記開口内に配された実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。」 本件発明25と、甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点19:ポリッシング面について、本件発明25は、「透過性を低下させる添加物を含むポリウレタンで形成された」ものであるが、甲1発明は明らかでない点。 相違点20:物体を貫通する開口について、本件発明25は、「前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持つ第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションと」を有するものであるが、甲1発明は、開口の形状が明らかでない点。 相違点21:プラグについて、本件発明25は、「前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており、前記第1セクション内に固定され、透過性を低下させる添加物を含まないポリウレタンで形成された」ものであるが、甲1発明は、プラグの第2部分が「定盤」に固定される点。 (3)判断 相違点19について検討する。 ポリッシング面を、「透過性を低下させる添加物を含むポリウレタンで形成された」ものとする点は、いずれの証拠にも記載されていない。 請求人主張(上記第4.3.(3)、(9))の甲第16号証、甲第25号証記載のものは、ポリッシング面に関するものではない。 相違点20について検討する。 相違点20は、実質的に相違点1と同様であるから、同様に、困難性なしとすることはできない。 相違点21について検討する。 相違点21は、相違点2に加え、さらに「透過性を低下させる添加物を含まないポリウレタンで形成された」点で相違する。 よって、同様に、困難性なしとすることはできない。 本件発明25は、相違点19、21により、レーザービームの減衰が最小になるという効果(段落0014)を有する。 したがって、本件発明25は、証拠に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 第7.むすび 以上、本件発明1ないし25は、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1ないし25についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効とすることはできないものである。また、他に、無効とすべき理由を発見しない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドへの透明窓の形成 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有するパッド部と、 前記ポリッシング面に形成され前記パッド部を貫通した開口であって、前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクションおよび前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有する前記開口と、 前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と、前記開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する実質的に透明なプラグと、 前記プラグを前記開口内の前記パッド部に固定する手段とを備えるポリッシングパッド。 【請求項2】 前記プラグがポリウレタン材料で造られている、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項3】 前記固定手段が接着材料を有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項4】 前記接着材料がゴム弾性ポリウレタン材で造られている、請求項3に記載のポリッシングパッド。 【請求項5】 前記プラグの前記第1部分が前記開口の前記第1セクションと実質的に同一寸法であり、 前記プラグの前記第2部分が前記開口の前記第2セクションと実質的に同一寸法である、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項6】 前記プラグの前記第1部分が、前記ポリッシング面と同じ高さである上面を有する、請求項5に記載のポリッシングパッド。 【請求項7】 前記プラグの前記第2セクションの厚さが前記開口の前記第2セクションの深さより小さい、請求項6に記載のポリッシングパッド。 【請求項8】 前記第1の寸法が前記第2の寸法より大きい、請求項6に記載のポリッシングパッド。 【請求項9】 前記プラグがリムを有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項10】 前記固定手段が、前記リム上に配置された接着材料を有する、請求項1に記載のポリッシングパッド。 【請求項11】 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する第1層と、 前記第1層に隣接する第2層と、 前記第1層および前記第2層を貫通する開口であって、第1の断面積を持つ前記第1層内の第1開口、および、より小さい第2の断面積を持つ前記第2層の第2開口とを有する前記開口と、 前記開口に配置され、前記第1層の前記第1開口内に位置決めされた第1部分と、前記第2層の前記第2開口内に位置決めされた第2部分とを有する実質的に透明なプラグと、 前記プラグを前記開口内の前記第1層と前記第2層に固定する接着材料と、を備えるポリッシングパッド。 【請求項12】 前記第1層が第1デュロメータ測定値を持ち、前記第2層が第2の、より小さいデュロメータ測定値を持つ、請求項11に記載のポリッシングパッド。 【請求項13】 ポリッシング面を持つポリッシングパッドを形成する方法であって、 開口が、前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を持つ第1セクション、および、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションを有するように、ポリッシングパッドを貫通する前記開口を形成するステップと、 実質的に透明なプラグを、前記プラグが前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と前記開口の前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する状態で、前記開口に配置するステップと、 前記プラグを前記開口内の前記ポリッシングパッドに固定する固定ステップと、 を備えるポリッシングパッド形成方法。 【請求項14】 前記固定ステップが、前記プラグを接着材料で前記開口に固定するステップを有する、請求項13に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項15】 前記開口を形成するステップが、前記ポリッシングパッドから材料を除去する除去ステップを有する、請求項13に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項16】 前記除去ステップが、前記ポリッシングパッドの第1層から前記第1セクションを除去するステップと、 前記ポリッシングパッドの第2層から前記第2セクションを除去するステップとを有する、請求項15に記載のポリッシングパッド形成方法。 【請求項17】 機械化学的ボリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する物体と、 該物体を貫通して形成された開口であって、該開口は前記ポリッシング面に隣接し第1の寸法を有する第1セクション及び、前記ポリッシング面から遠く前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を有する第2セクションとを有する、該開口と、 該開口の前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており且つ前記第1セクション内において該開ロ内の前記物体に固定された実質的に透明なプラグと、 を備えるポリッシングパッド。 【請求項18】 前記物体が、該ポリッシング面を有する第1層と、該第1層に隣接する第2層とを有する請求項17に記載のポリッシングパッド。 【請求項19】 該開口が、該第1層および該第2層を貫通する請求項18に記載のポリッシングパッド。 【請求項20】 該開口の該第1部分が該ポリッシング面に隣接し、該開口の該第1部分の寸法が該開口の該第2部分よりも大きい請求項19に記載のポリッシングパッド。 【請求項21】 該プラグの上面が、該ポリッシング面と実質的に同じ高さにある請求項17に記載のポリッシングパッド。 【請求項22】 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する被覆層及び前記被覆層の下側に位置している裏打ち層を包含する物体と、 前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持ち、前記被覆層に形成された第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持ち、前記裏打ち層に形成された第2セクションとを有し、前記被覆層と前記裏打ち層を貫通する開口と、 前記開口の前記第1セクション内の前記物体に固定され、前記開口の前記第1セクションの前記第1寸法及び前記被覆層の厚さと夫々実質的に同じ寸法を有する実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【請求項23】 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 ポリッシング面を有する物体と、 前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持つ第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションとを有し、前記物体を貫通する開口と、 前記開口の前記第1セクション内に位置決めされた第1部分と前記第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有しており、前記物体に固定され、前記ポリッシング面と実質的に同じ高さである上面を有すると共に前記第2部分の厚さが前記開口の前記第2セクションの深さより小さい実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【請求項24】 該上面が、該ポリッシング面のプラグと直に隣接する部分と実質的に共面である請求項23に記載のポリッシングパッド。 【請求項25】 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドであって、 透過性を低下させる添加物を含むポリウレタンで形成されたポリッシング面を有する物体と、 前記ポリッシング面に隣接し、第1の寸法を持つ第1セクションと、前記ポリッシング面から遠く、前記第1の寸法とは異なる第2の寸法を持つ第2セクションとを有し、前記物体を貫通する開口と、 前記開口の前記第1セクションに対応する同一の形状を有しており、前記第1セクション内に固定され、透過性を低下させる添加物を含まないポリウレタンで形成された、実質的に透明なプラグと、を備えるポリッシングパッド。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、一般的には半導体製造に関し、より詳細には機械化学的ポリッシング(CMP)に用いられるポリッシングパッドに透明窓を形成する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】最新の半導体集積回路(IC)を製造するプロセスでは、先行するプロセスで形成された層や構造の上に、様々な材料層や構造を形成する必要がある。しかしながら、先に形成された処理中のウェーハの上面は、バンプや、高さの不揃いな部分、谷、溝、および/またはその他の凹凸により、幾何学的に著しく不規則なままであることが多い。これらの凹凸は次の層を形成するときに問題を生じる。例えば、先に形成された層の上に小さな寸法形状のフォトリソグラフィックパターンを印刷する場合、非常に浅い焦点深度が必要である。従って、平坦で平らな面であることが不可欠となり、さもないと、パターンの一部の焦点が合っても、他の部分では焦点が合わないことになる。実際には、25×25mmのダイ上にわたって、表面変動は1000オングストローム以下のオーダーであることが望ましいと考えられる。更に、それぞれの主要処理ステップでその凹凸が平準化(leveling)されていないと、ウェーハの表面は、幾何学的に一層不規則にさえなり、その後の処理で層が堆積するにつれて、更に問題を生じることになる。使用するダイのタイプと寸法形状により、表面凹凸が歩留まりと装置性能の低下を招く場合がある。従って、IC構造の或る種の平坦化、すなわち平準化を実現することが望ましい。実際に、最高密度のIC製作技術は何らかの方法を利用して、製造プロセスの重要段階で平坦化したウェーハ表面を形成するようにしている。 【0003】半導体ウェーハの平坦化、つまり幾何学的除去を達成する一つの方法は、機械化学的ポリッシング(CMP)プロセスである。一般に、機械化学的ポリッシング(CMP)プロセスは、制御しながら圧力を加えて、回転ポリッシングプラテンにウェーハを保持および/または回転させるステップを含む。図1に示すように、代表的なCMP装置10は、半導体ウェーハ14をポリッシングプラテン16に保持するためのポリッシングヘッド12を含む。ポリッシングプラテン16は、パッド18で覆われている。このパッド18は、普通は、プラテンの表面と接する裏打ち層20と、化学ポリッシングスラリとともに用いられてウェーハ14をポリッシングする被覆層22とを有する。しかし、パッドの中には、被覆層だけを持ち、裏打ち層のないものもある。被覆層22は通常、連続気泡の発泡ポリウレタン(例えば、Rodel IC1000)、または溝付き表面を持つポリウレタンシート(例えば、Rodel EX2000)のいずれかである。パッドの材料は、砥粒と化学物質の両方を含む化学ポリッシングスラリで濡らされている。一つの代表的な化学スラリは、KOH(水酸化カリウム)と薫蒸シリカ(fumed-silica)粒子とを含む。プラテンは通常、その中心軸24周りに回転される。更に、ポリッシングヘッドは通常、その中心軸26周りに回転され、並進アーム28を介してプラテン16の表面を横切って並進する。図1にはポリッシングヘッドが一つしか図示されていないが、CMP装置には通常、二つ以上のヘッドが、ポリッシングプラテンの周りに間隔を空けて円周方向に配置される。 【0004】CMPプロセス中に遭遇する問題は、部品が希望の平坦度、つまり相対的厚さまで平坦化された、と判定するところにある。一般に、希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検出する必要がある。これは様々な方法で達成されている。以前は、CMPプロセス中のウェーハ特性のモニターは不可能だった。通常、ウェーハはCMP装置から外されて別の場所で検査されていた。ウェーハが希望の仕様に合致しない場合、ウェーハをCMP装置に再び取り付けて再処理しなければならなかった。これは時間と人手のかかる手順であった。その外に、検査において材料が過剰に除去されているのが発見された場合、その部分は使用不能になった。従って、この分野では、CMPプロセス時に、その場で(in-situ)、希望の表面特性や厚さが得られた時点を検出できる装置に対するニーズがあった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】CMPプロセス中での終点のその場検出のために、いくつもの装置と方法が開発されている。例えば、超音波の使用したり、機械抵抗、電気的インピーダンス、あるいはウェーハ表面温度の変化の検出を取り込んだ装置と方法が使用されている。これらの装置と方法は、ウェーハやその層の厚さを測定することと、厚さ変化をモニターしてプロセスの終点を確定することに依存している。ウェーハの表面層を薄くする加工をしている場合、厚さの変化を利用して、表面層が何時、所望の深さになったかが決定される。凹凸表面を有する、パターン処理されたウェーハを平坦化する場合は、厚さの変化をモニターして、表面凹凸の近似的な深さを知ることによって、終点が決定される。厚さの変化が凹凸の深さに等しくなった時点で、CMPプロセスは終了する。これらの装置と方法は、意図される用途についてはほぼ満足に働くが、終点をより精確に決定するシステムに対するニーズは依然としてある。 【0006】 【課題を解決するための手段】概略的に述べるならば、本発明は、一態様において、機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドに関する。ポリッシングパッドは、内部に開口が形成されたポリッシング面を備えている。この開口は、第1の寸法を持つ第1セクションと、第2の寸法を持つ第2セクションとを含む。実質的に透明なプラグが開口内に位置決めされている。プラグは、開口の第1セクション内に位置決めされた第1部分と、開口の第2セクション内に位置決めされた第2部分とを有する。開口内には、プラグを固定する手段がある。 【0007】また、本発明は、別の態様において、ポリッシングパッド形成方法に関する。開口は、第1の寸法を持つ第1セクションと、第2の寸法を持つ第2セクションとを含むように、ポリッシングパッド内に形成される。実質的に透明なプラグが開口内に設けられる。プラグの第1部分は開口の第1セクション内に位置決めされ、プラグの第2部分は開口の第2セクション内に位置決めされる。プラグは開口部内に固定される。 【0008】具体的な実施態様では以下の点を含む。固定手段は接着材料を含むのがよい。プラグの第1部分は、開口の第1セクションと実質的に同一寸法で、プラグの第2セクションは、開口の第2セクションと実質的に同一寸法とするのがよい。第1の寸法は第2の寸法より大きい。プラグはポリウレタン材でもよいし、接着材はゴム弾性ポリウレタン材でもよい。開口の第1セクションを第1層中に形成し、開口の第2セクションを第2層中に形成してよい。取り外しステップは、第1セクションをポリッシングパッドの第1層から取り外すステップと、第2セクションをポリッシングパッドの第2層から取り外すステップとを含むことができる。第1層のデュロメータ測定値は、第2層のデユロメータ測定値より大きくてよい。プラグの上面はポリッシング面と同一面でよく、プラグの第2部分の厚さは、開口の第2セクションの深さより小さくてよい。 【0009】本発明の更なる目的と利点は以下の説明に記載され、一部はその説明から明らかとなり、さもなければ本発明を実施することによって理解されるだろう。本発明の目的と利点は、クレームに詳細に指摘された手段と組合せによって実現することができる。 【0010】なお、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を概略的に示し、上記の一般的な説明および下記の詳細な説明とともに、本発明の原理の説明に役立つものとなろう。 【0011】 【発明の実施の形態】図2は、本発明の一実施形態に従って改良されたCMP装置の一部を示す。孔30が、プラテン16と、その上の位置するプラテンパッド18とに形成されている。この孔30は、ポリッシングヘッド12の並進位置に拘らず、プラテンの回転中の一時期、ポリッシングヘッド12により保持されたウェーハ14が見えるように位置決めされている。レーザー干渉計32はプラテン16の下方の適所に固定されており、その位置では、レーザー干渉計32から投射されたレーザービーム34が、プラテン16の孔30を通り、孔30がウェーハ14に隣接している間、上に位置するウェーハ14表面に当たることができる。 【0012】プラテン孔30とウェーハ14(ウェーハがプラテン孔30の上に重なる時点)の詳細を図3の(A)?(C)に示す。図3の(A)から分かるように、プラテン孔30は段付きの内径部を持ち、従って肩部36を形成する。この肩部36は、レーザービーム34用の窓として働く石英インサート38を収容、保持するために使用される。プラテン16とインサート38との間の境界は封止されているので、ウェーハ14とインサート38との間に入り込んだ化学(化学薬品)スラリ40はプラテン16の底まで漏洩することはない。石英インサート38はプラテン16の上面の上方に、一部がプラテンパッド18の中まで突出している。インサート38のこの突出は、インサート38の上面とウェーハ14の表面との間の間隙を最小にすることを意図している。この間隙を最小にすることによって、間隙に捕捉されるスラリ40の量が最小になる。このことは、スラリ40が自らを通過する光を散乱させる傾向があるので、レーザー干渉計32から発射されたレーザービームを減衰させてしまうという観点において、有利となる。インサート38とウェーハ14との間のスラリ40の層が薄い程、レーザービーム34とウェーハからの反射光の減衰は少なくなる。間隙が約1mmであると、CMPプロセスの減衰値は許容可能であると考えられる。しかし、この間隙は更に小さくすることが望ましい。間隙はできるだけ小さくしなければならないが、同時に、CMPプロセス中は常に、インサート38がウェーハ14に触れないようにする必要がある。本発明の実施例では、インサート38とウェーハ14の間の間隙を10ミル(250μm)にセットして、満足すべき結果を得た。 【0013】図3の(B)は、プラテン16とパッド18の別の実施形態を示している。この実施形態では、石英インサートは除かれており、パッド18には貫通孔が存在しない。その代わりに、プラテン16の孔30の上に位置する部分で、パッド18の裏打ち層20(存在する場合)が除去されている。これによって、ウェーハ14と、プラテン16の底との間にはパッド18のポリウレタン被覆層22だけが残る。被覆層22で使用されるポリウレタン材は、レーザー干渉計32からのレーザービーム34を実質的に透過させることが分かっている。従って、プラテン孔30上に位置する被覆層22の部分がレーザービーム34の窓として働く。この代替構造には著しい利点がある。第1に、パッド18自体が窓として使用されるので、目に見える間隙は存在しない。従って、レーザービームの好ましくない散乱の原因となるスラリ40は殆どない。この代替実施形態の別の利点は、パッドの磨耗が無関係になることである。最初に説明した図3の(A)の実施形態では、石英インサート38とウェーハ14との間の間隙をできるだけ小さくした。しかし、パッド18が磨耗するにつれて、この間隙は更に小さくなる傾向がある。結局、磨耗が非常に大きくなると、インサート38の上面がウェーハ14に触れて、それを損傷させる可能性がある。図3の(B)の代替実施形態では、パッド18を窓として使用してウェーハ14と接触状態にするように設計されるので、パッド18の磨耗による悪影響はない。半透明の連続気泡タイプのパッドと、透明な溝付表面タイプのパッドの両者を使った試験では、透明な溝付き表面パッドの方がレーザービームの減衰が少ないことが分かった。従って、なるべくこのタイプのパッドを使用することが望ましい。 【0014】パッドの被覆層で使用されるポリウレタン材料はレーザービームを実質的に透過できるが、ナイロン微小球体等の或る種の添加物を含み、この添加物がその透過性を妨げる。この問題は、図3の(C)に記載された本発明の実施形態で解消される。この実施形態では、プラテン孔30上に位置する領域の代表的なパッド材料が、中実のポリウレタンプラグ42と置き換わっている。このプラグ42は、レーザービーム用の窓として働くが、ナイロン微小球体を含まないポリウレタン材料でできている。従って、プラグ42を通るレーザービーム34の減衰は最小になる。プラグ42はパッド18の中に一体成形してもよい。 【0015】例えば、ポリッシングパッドに既に切削加工してある孔内へ、流体ポリウレタンを注入して、プラグを形成してもよい。液体ポリウレタンを硬化させて、ポリッシングパッド内に一体成形されたプラグを成形する。或はまた、プラグを中実インサートとして予め成形することもできるだろう。このインサートを、溶融したポリッシングパッドバルク材料中に入れてから、プラグ42の材料とポリッシングパッド18の材料とが接合するように、そのアセンブリ全体を硬化させることができる。アセンブリが冷却されると、ポリウレタンプラグ42がポリッシングパッドの中に一体成形されることになる。しかしながら、ポリッシングパッド18の材料、特に被覆層22の材料は、ポリウレタンプラグ42の材料とは異なる。従って、アセンブリが硬化するときにプラグ42の材料が収縮して、窓を上か下に座屈させる傾向がある。これによって、スラリを集積させるくぼみか、ウェーハ14を損傷させる隆起のいずれかが発生する。 【0016】図3の(D)によれば、別の実施形態では、2段型プラグ600が、プラテン孔30の上のポリッシングパッド18中に位置決めされている。この2段型プラグ600は、レーザービーム用の窓として働く比較的透明な材料で形成される。2段型プラグ600の材料は、ニュージャージー州ニューアークのRodelから商品名EX-2000として入出可能な、実質的に純粋なポリウレタンとすることができる。上記材料は、ポリッシングプロセスに関して化学的に不活性で、ポリッシングパッドと同じ速度で侵食する。2段型プラグ600は、上側プラグ部602と下側プラグ部604とを含む。上側プラグ部602は被覆層22の孔、つまり開口630に嵌合し、下側プラグ部604は裏打ち層20の孔、つまり開口632に嵌合する。上側プラグ部602の上面606は、ポリッシングパッド18の上面23と同一平面である。下側プラグ部604の下面608とプラテン16の上面17との間に、間隙610があってもよい。 【0017】ウェーハ14からポリッシングパッド18上へ荷重が加えられると、裏打ち層20が圧縮される。従って、間隙610の幅は減少する。間隙610の大きさは、ウェーハ14がプラテン孔30の上に位置する場合でも、下面608がプラテン16の上面17に接触しないように充分大きく選定される。上面606はウェーハ14に接触するが、間隙610によってウェーハ上に圧力が働かない。従って、2段型プラグ600のより密度の高い材料が局部的に増加する負荷を生成することはない。従って、2段型プラグ600はウェーハ14のポリッシングに悪影響を及ぼすことはない。 【0018】図3の(E)と(F)によれば、ポリッシングパッド18を以下のように組み立ててもよい。中実のポリウレタンピースから2段型プラグ600を機械加工するか成形加工する。ポリッシングパッド18に開口612を切削加工する。或は、ポリッシングパッド18を開口612と一体に成形してもよい。開口612は2つのセクションを含む。開口の第1セクションを被覆層22の孔630とし、開口の第2セクションを裏打ち層20の孔632としてもよい。開口612は2段型プラグ600の形状に合わせる。プラグの形は、異なる断面積を持つ隣接する長方形の平板でもよい。具体的には、下側プラグ部604の断面積は、上側プラグ部602の断面積より大きい。例えば、上側プラグ部602の長さL_(1)を約2.0インチ(5.08cm)とし、高さH_(1)を約0.5インチ(1.27cm)とする。また、下側プラグ部604の長さL_(2)を約2.2インチ(5.59cm)、高さH_(2)を約0.7インチ(1.78cm)とすることができる。こうして、下側プラグ部64は上側プラグ部602よりも広がり、約0.1インチ(2.54mm)の幅W_(1)を持つリム616を形成する。プラグの配向は、その長手方向軸がポリッシングパッドの半径に沿うようにするのがよい。図3の(D)?(F)には、上側プラグ部602の断面積が下側プラグ部604の断面積よりも小さく図示されているが、必ずしもその必要はない。そうではなく、上側プラグ部602を下側プラグ部60よりも小さくしてもよい。上側プラグ部602の厚さT_(1)は、被覆層22の厚さに等しく、約50ミル(1270μm)である。従って、厚さT_(1)は、開口の第1セクションの深さD_(1)に等しい。下側プラグ部604は、裏打ち層20よりも約10ミル(254μm)薄い。下側プラグ部604の厚さT_(2)は、約40ミル(1016μm)でもよい。従って、厚さT_(2)は、開口の第2セクションの深さD_(2)より小さくなる。 【0019】接着剤614を下側プラグ部604のリム616の上に塗布する。接着剤614は、カリフォルニア州、Van NuysのBerman Industriesから、商品名WC-575A/Bで入手可能なゴム弾性ポリウレタンがよい。他の接着剤、例えばゴムセメントやエポキシを接着剤614として使用してもよい。 【0020】被覆層22の下側の領域618は、接着剤の残渣をかき取り、アセトンでそこを洗浄して清浄にする。次いで、開口612に2段型プラグ600を、そのリム616がポリッシングパッド18の領域618に接触するまで挿入する。この接触領域には、約15から20ポンド/平方インチの荷重がかかっている。このことにより、上側プラグ部602と被覆層22の間、または下側プラグ部604と裏打ち層20との間の間隙に、接着剤614が押し込まれる。室温で数日後、接着剤614は硬化して、プラグ600が開口612に固定される。接着剤614に熱を加えればもっと早く硬化するが、過剰な温度により、裏打ち材20が変形してしまうかもしれない。 【0021】スラリの分布を改善するために、ポリッシングパッド18の被覆層22に溝を切ったり細孔620を設けてもよい。これらの溝や細孔620は、下側プラグ部604の上方に配置され、純粋なポリウレタン材料622で充填される。更に、2段型プラグ600の上面606には溝を付けないままにしておく。2段型プラグ600の領域には溝やくぼみが存在しないので、レーザービーム34を遮るようなスラリの集積がない。コンディショニングプロセス中には、ポリッシングパッド18の粗さを回復するために、パッドコンディショナで被覆層22の上面23を研削除去するが、2段型プラグ600の上面606も引っかれて磨耗する。しかし、ポリウレタンは拡散性の材料なので、上面606の磨耗はレーザー干渉計32の性能に殆ど影響を与えない。 【0022】2段型プラグ600によって提供される窓は、レーザービーム34を遮る、プラテン孔30上へのスラリ集積を防止する。プラグ600は、スラリ40に対する化学的耐性を持つ材料で成形され、ポリッシングプロセスに関して化学的に不活性である。プラグは、ポリッシングパッド18の残部と同じ速度で侵食する。プラグは、プラテン孔30へのスラリ40の漏れを防ぐために開口内に密止され、またウェーハに局部的な負荷増加を防ぐために押し下げられる。 【0023】作動時には、本発明によるCMP装置は、レーザー干渉計からのレーザービームを使って、ウェーハ表面から除去された材料の量を判定したり、平坦化した時点を判定する。このプロセスの開始を、図4を参照して説明する。レーザーとコリメータ44、ビームスプリッタ46、および検知器48が、レーザー干渉計32の構成要素として図示されている。これは、CMPの作動に関する前記説明を容易にするためである。更に、便宜のために、石英インサート38を窓として使用する図3の(A)の実施形態を示す。勿論、図示された構成は単なる一つの可能な編成であって、他の構成も使用できる。例えば、前記のいずれの窓構造も使用可能であり、またレーザー干渉計32の代替実施形態も可能である。一つの代替干渉計編成では、或る角度でウェーハ間に入射するビームを発生させるためにレーザーが使用されるだろう。その実施形態では、ウェーハからの反射光が当たる位置に検知器が配置されるだろう。また、その代替実施形態では、ビームスプリッタは必要ないだろう。 【0024】図4に示すように、レーザーとコリメータ44は、ビームスプリッタ46の下部に入射する平行レーザービーム34を発生する。ビーム34の一部はビームスプリッタ46と石英インサート38を通って伝播する。ビーム34のこの部分がインサート38の上端を離れると、ビームはスラリ40を通って伝播してウェーハ14の表面に当たる。ウェーハ14は、図5で詳しく示すように、シリコン製基板50とその上に重なる酸化物層52(すなわちSiO_(2))を持つ。 【0025】ウェーハ14に当たる前記一部のビーム34は、酸化物層52の表面で部分的に反射され、第1反射ビーム54を形成する。しかし、その光線の一部も、酸化物層52を透過して、下に重なる基板50に当たる透過ビーム56を形成する。基板50に到達する透過ビーム56からの光の少なくともいくらかは酸化物層52を通って再び反射され、第2の反射ビーム58を形成することになる。第1と第2の反射ビーム54、56は、双方の位相関係によって互いに建設的にまたは破壊的に干渉して、合成ビーム60を形成する。この場合、この位相関係は、主として酸化物層52の厚さの関数である。 【0026】上記実施形態は、単一の酸化物層を持つシリコン基板を使用しているが、当該技術に精通した者ならこの干渉プロセスが他の基板や他の酸化物層でも発生することを十分理解するだろう。重要な点は、当たったビームを、酸化物層が部分的に反射して、部分的に透過させ、基板がそれを少なくとも部分的に反射することである。更に、干渉プロセスは基板上に積層する複数の層を持つウェーハにも適用できる。繰り返すが、各層が部分的に反射して部分的に透過する性質があれば、合成干渉ビームが形成される。もっとも、それはすべての層と基板から反射されたビームの組合せではある。 【0027】再び図4を参照すると、第1と第2の反射ビーム54、58(図5)の組合せを表す合成ビーム60が、スラリ40とインサート38を通ってビームスプリッタ46の上部に再び伝播することが分かる。ビームスプリッタ46は、合成ビーム60の一部を検知器48の方向に向ける。 【0028】プラテン16は通常、CMPプロセス中は回転している。従って、プラテン孔30は、その回転の一部の期間だけウェーハ14を見ることができない。従って、レーザー干渉計32からの検知器信号をサンプリングできるのは、レーザービーム34がウェーハ14に当たるときに限られる。重要なのは、レーザービーム34が孔30を通過して部分的に伝えられるときは、プラテン16の底の孔縁で一部が遮られるときと同様、サンプリングは行なわれないという点である。理由は、これによって信号に著しいノイズが生じるからである。この発生を防止するために位置センサ装置が組み込まれたのである。本発明の実施例では光学遮断型センサが使用され、後続の図で示されているが、ホール効果、渦電流、光学遮断器(インターラプタ)、または音響センサ等の任意の周知の近接センサが使用できるだろう。レーザー干渉計32を同期するための、本発明による装置を図6に示すが、光学遮断型センサ62(例えばLED/光ダイオードの対)が、プラテン16の周縁が見えるように、CMP装置のシャーシの固定位置に取り付けられる。このタイプのセンサ62は、そのセンサが発生する光学ビームが遮られたときに作動する。位置センサフラグ64がプラテン16の外周に取り付けられている。フラグ64の取付け位置と長さは、レーザー干渉計32からのレーザービーム34が先に説明した窓構造66を完全に透過したときに限って、フラグがセンサの光学信号を妨げるように決められる。例えば図6に示すように、センサ62はプラテン16の中心に対してレーザー干渉計32の直径方向反対側に取り付けられる。フラグ64は、窓構造66の直径方向反対側の位置でプラテンに取り付けられる。フラグ64の長さは、破線68によってほぼ決定されるが、フラグ64の正確な長さは、フラグ64がセンサ62によって検出されている期間中、レーザービームがプラテン16によって完全には妨げられない状態になるように、微調整される。この微調整は、位置センサのノイズや不正確さ、レーザー干渉計32の応答性等をすべて補償する。一旦、センサ62が作動すると、干渉計32からの検知器信号をいつサンプリングすべきかの決定に使用される信号が発生する。 【0029】位置センサ信号を使って、ウェーハがレーザービームに対して見得る状態である時にレーザー干渉計信号をサンプリングできるデータ収集システムは、この分野では周知技術であり、本発明の新規部分を構成するものではない。従って、ここで詳細な説明を行なわない。しかしながら、適切なシステムの選択にあたって、何らかの考慮がなされなければならない。例えば、干渉計からの信号を或る期間にわたって積分することが望ましい。この積分によって、積分された期間の高周波ノイズを平均化することによってS/N比が改善される。このノイズは様々な原因があり、例えばプラテンとウェーハの回転による振動や、不均等な平坦化によるウェーハ面の変動である。上記の装置では、石英窓の直径とプラテンの回転数が、信号を積分するためにプラテンの回転中に利用可能な時間を決定する。しかしながら、状況によっては、この利用可能な時間は充分でないかもしれない。例えば、許容可能なS/N比が、より長い積分時間を要求するかもしれないし、選択されたデータ収集システムで使用されるインタフェース回路が、ワンパスの間に利用できる時間を超える最小積分時間を要求するかもしれない。 【0030】この問題に対する一つの解決策は、プラテンの回転方向に沿ってプラテン孔を拡張することである。言い換えると、窓構造66’(すなわち、インサートやパッドやプラグ)の形状を、図7に示すような円弧形にする。勿論、フラグ64’を拡張して、より長寸の窓構造66’を収容させる。或はまた、窓はそのままにして、レーザー干渉計を窓の真下の回転するプラテンに取り付けることもできる。この場合、プラテンの下に干渉計を収容するようCMP装置を改変しなければならないだろうし、干渉計からの検知器信号のルートを準備する必要があるだろう。しかしながら、両方法の最終的な結果は、プラテンの各回転毎のデータ収集時間を延長することになるだろう。 【0031】プラテン孔と窓の拡張は有利だが、実際にはプラテンパッドの表面積を多少削減する。従って、プラテンの回転の一部分で、窓の上に重なるディスク領域の平坦化速度は減少する。更に、プラテン孔と窓の長さはウェーハの縁部を超えて拡張してはならないし、またウェーハの並進位置と関係なく、窓がウェーハの縁部を超えたときにデータサンプリングを行なってはならない。従って、拡張されたプラテン孔と窓の長さ、すなわちプラテンに取り付けられた干渉計をサンプリングできる時間は、ポリッシングパッドのあらゆる並進運動によって制限される。 【0032】従って、充分なデータ収集積分時間を得るためのより好ましい方法は、プラテンの1回転を超えてデータを収集することである。図8によれば、ステップ102において、レーザー干渉計信号が、プラテンの各回転で入手できるデータ収集時間の間にサンプリングされる。次に、ステップ104と106では、サンプリングされた各信号が前記のデータ収集時間にわたって積分され、その積分値が記憶される。次に、ステップ108と110では、プラテンの各回転後に積算サンプル時間が計算されて、望ましい最小サンプル時間と比較される。勿論、一つしかサンプルを取らない場合のサンプル回数は一回だけになる。積算サンプル時間が、望ましい最小サンプル時間に等しいかそれを超える場合、ステップ112に示すように、記憶された積分値が転送されて、合計される。そうでない場合は、積算サンプル時間の、サンプリング、積分、記憶、積算サンプル時間計算、および望ましい最小サンプル時間とそれとの比較、の各プロセスが継続される。最終ステップ114では、記憶された積分値の転送と合計の度毎に作成された合計積分値が、データ信号として出力される。ここで述べたデータ収集方法は、論理回路か、ソフトウェアアルゴリズムのいずれかを使って、いくつもの周知の方法で実行できる。これらの方法はよく知られているので、詳細な説明は不要であり、従って省略した。区分的なデータ収集方法が、窓の直径やプラテンの回転数の値に関係なく、望ましい最小サンプル時間を満たすという問題の解決を提供することに注目したい。実際、プロセスが位置センサ装置に関係する場合は、プラテン回転数は変化するかもしれないが、それでも信頼できるデータを得ることができるだろう。必要なデータを得るために要求されるプラテン回転数だけが変化するだろう。 【0033】合成ビーム60を形成した前記第1と第2の反射ビームによって、図4及び図5に示すように、検知器48の位置で干渉が認められる。第1と第2のビームが互いに同相の場合、それらは検知器48で極大値を生じる。一方、両ビームの位相が180°ずれていると、それらは検知器48で極小値を生じる。両反射ビーム間の他の位相関係は、すべて、検知器48で認められる極大値と極小値の間の干渉信号となる。その結果、検知器48からの信号出力は、酸化物層52の厚さがCMPプロセス中に減少するにつれて、その厚さと共に周期的に変化することになる。実際に、検知器48からの信号出力は、図9の(A)と(B)のグラフで示すように、正弦波状に変化することが観察された。図9の(A)のグラフは、時間(x軸)に対する、各サンプル期間中の検知器信号の積分振幅(y軸)を示す。このデータは、図4の装置のレーザー干渉計出力をモニターして得られたもので、その間、シリコン基板(すなわち、ブランク酸化物ウェーハ)上に積層する平滑な酸化物層を持つウェーハに対してCMPプロセスが実行された。図9の(B)のグラフは、図9の(A)のグラフからのデータを濾波したバージョンである。この濾波バージョンは、干渉計の出力信号の周期変動を極めて明瞭に示している。干渉信号の周期は、CMPプロセス時に材料が酸化物層から除去される速度によってコントロールされることに注目する必要がある。従って、プラテンパッドに押し付けるようウェーハに加えられる下向きの力や、プラテンとウェーハ間の相対速度等の要因がその周期を決める。図9の(A)と(B)にプロットされた出力信号のそれぞれの周期の間に一定厚さの酸化物層が除去される。除去される厚さは、レーザービームの波長と、酸化物層の屈折率とに比例する。具体的には、1周期当たりに除去される厚さの量はほぼλ/2nで、λはレーザービームの自由空間波長、nは酸化物層の屈折率である。かくして、図10の(A)に示した方法を使って、CMPプロセス中、その場で、どれだけの酸化物層が除去されるかを決定できる。まず、ステップ202では、データ信号によって示されるサイクル数がカウントされる。次に、ステップ204で、出力信号の1サイクル間に除去される材料の厚さが、レーザービームの波長とウェーハの酸化物層の屈折率から計算される。次に、ステップ206では、酸化物層から除去すべき希望の材料厚さが、実際の除去厚さと比較される。実際の除去厚さは、データ信号によって示されるサイクル数と、1サイクル中に除去される材料厚さの積に等しい。最終ステップ208では、除去される厚さが除去すべき希望の材料厚さに等しいかそれを超えたとき、常にCMPプロセスを終了する。 【0034】或はまた、除去材料の量を決定するために完全1サイクル未満を使うことができる。この方法では、希望の量を超えて除去される余分の材料を最小にできる。図10の(A)のステップ202の括弧部分に示すように、1サイクルの指定部分の発生数が、それぞれの繰り返しでカウントされる。例えば、極大値(すなわちピーク)と極小値(すなわち谷)またはその逆のそれぞれの発生が、サイクルの指定部分を構成する。極大値と極小値は周知の信号処理方法によって容易に検出できるので、サイクルのこの指定部分は都合がよい。次に、ステップ204では、1サイクル中に除去される材料量を決定した後、この厚さに、前記の指定部分が相当するサイクルの端数を掛ける。例えば、極大値と極小値の発生をカウントする場合、それは1サイクルの1/2に相当するので、サイクルの指定部分の間に除去される酸化物層の厚さを求めるには、計算された1サイクルの厚さに1/2を掛ける。この方法の残りのステップはそのまま変わらない。この代替方法の最終結果は、サイクルの一部分の発生後にCMPプロセスを終了できる、ということである。従って、余分の除去材料は、大抵の場合、除去される材料量を決定する基準として完全1サイクルを使用したときの除去量に比べて、少なくなるだろう。 【0035】ここで説明した方法は、サイクルの最後またはその中途で振り返って、希望量の材料が除去されたか否かを決定するものである。しかし、上記に示唆するように、除去材料量が希望量を超えるかもしれない。用途によっては、この余分な材料除去は許容できないだろう。このような場合には別の方法を使用できる。すなわち、先を見て、これから先の期間に除去される材料量を予想し、希望厚さが除去されたと予想される時点で手順を終了する方法である。この代替方法の好ましい実施形態を図10の(B)に示す。この図から分かるように、第1ステップ302は、検知器信号中の極大値と極小値との間、またはその逆の間、最初の発生の間の時間を測定するステップを含む(もっとも、完全1サイクルまたはその任意の部分を使用できたかもしれない)。次に、ステップ304では、サイクルの当該部分の間に除去される材料量が前記方法によって決定される。次に、ステップ306で示すように、除去された材料量を測定時間で除算することによって、除去速度が計算される。これは、材料がサイクルの先行部分で除去された速度を構成する。次のステップ308では、ステップ304で計算された除去材料の厚さが、除去すべき希望の厚さから差し引かれ、残りの除去厚さが決定される。次にステップ310では、この残りの除去厚さをその除去速度で除し、終了前にどれだけの時間CMPプロセスを続けるべきかが決定される。 【0036】しかしながら、注目すべきことに、検知器信号の周期、従って除去速度は通常、CMPプロセスの進行と共に変化する。従って、これを補償するために上記方法が繰り返される。換言すれば、一旦、残り時間が計算されると、極大値と極小値またはその逆の発生の度毎に、そのプロセスが繰り返される。従って、この方法の最初の作業(iteration)と全く同様に、次に発生する極大値と極小値との間の時間が測定され、この極大値と極小値の発生によって代表されるサイクルの部分(すなわち1/2)の間に除去される材料厚さが測定時間によって除算されて、除去速度が算出される。しかし、次のステップ308では括弧で示すように、すべての先行する繰り返し作業の間に除去された材料の総量が、希望の厚さから差し引かれる前に決定される。この方法のその他の部分は、除去すべき残りの厚さが新たに計算された除去速度によって除されて、残りのCMPプロセス時間が決定されるので、そのまま変わらない。このようにして、残りのプロセス時間は、検知器信号の1サイクルの指定部分の発生の度毎に再計算される。この作業は、残りのCMPプロセス時間が終了し次の繰返し作業が始まるまで継続される。ステップ312に示すように、その時点でCMPプロセスが終了する。通常、除去すべき厚さは、検知器信号の最初の半サイクルでは獲得されず、また直前の半サイクルに対して計算された後の除去速度の変動は小さい。従って、この前向き法(forward-looking method)は、希望の厚さだけをウェーハから除去する、非常に正確な方法を提供するものと考えられる。 【0037】ここで説明したモニター手順は、薄層化加工中の滑らかな表面を持つブランク酸化物ウェーハについては良好に機能するが、この手順を使って幾何的表面が極めて不規則なパターン処理済ウェーハを平坦化しようとしても大部分は旨くいかないことが分かっている。その理由は、通常のパターン処理済ウェーハは、異なるサイズの様々な表面特徴部を示すダイ(dies)を含むからである。これらの異なるサイズの表面特徴部は異なる速度でポリッシングされる傾向がある。例えば、他の特徴部から比較的離れて位置する小形の表面特徴部は大形の特徴部よりも早く小さくなる傾向がある。図11の(A)?(C)は、代表的なパターン処理済ウェーハ14に見られる、下地構造78、80、82を伴う酸化物層52の表面特徴部72、74、76のセットと、CMPプロセス中にそれらが受ける変化とを例示する。特徴部72は比較的小形で、特徴部74は中間サイズ、特徴部76は比較的大形である。図11の(A)は、ポリッシング前の特徴部72、74、76を示し、図11の(B)はポリッシングプロセスのほぼ中間の特徴部72、74、76を示し、図11の(C)はポリッシングプロセスの終了間際の特徴部72、74、76を示す。図11の(A)では、小形の特徴部72が中形や大形の特徴部74、76よりも早い速度で小さくなる。更に、中形の特徴部74は大形の特徴部76よりも早い速度で小さくなる。特徴部72、74、76が小さくなる速度も、ポリッシングプロセスの進行と共に減少する。例えば、小形の特徴部72は、当初は高い減少速度を持つが、この速度はポリッシングプロセスの間に低下する。従って、図11の(B)は、特徴部72、74、76の高さが平坦化し始める状態を示し、図11の(C)は特徴部72、74、76が基本的に平坦化した状態を示す。異なるサイズの特徴部は異なる速度で減少すると共に、これらの速度は変化しているので、各特徴部から生成される干渉信号は異なる位相と周波数を持つ。従って、各特徴部72、74、76からのすべての個々の反射から部分的に構成される合成干渉信号は、先に記載した周期的な正弦信号ではなく、外見上、ランダムな形で変動することになる。 【0038】しかしながら、上記で示唆したように、特徴部72、74、76のポリッシング速度は、平坦化点により近く収束する傾向がある。従って、特徴部72、74、76によって生成される干渉ビーム間の位相と周波数の差はゼロに近付く傾向がある。その結果、合成干渉信号が周期的な正弦波形として認識できるようになる。従って、いつ正弦干渉信号が始まったかを検出することによって、パターン処理済ウェーハの表面が平坦化された時点を決定することができる。この方法を図12に示す。まず、ステップ402では、干渉計信号の前記の正弦変動が探索される。その正弦変動が発見されると、ステップ404に示すように、CMP手順は終了する。 【0039】図13は、CMP手順中のパターン処理済ウェーハに関しての、時間に対する検知器信号の振幅をプロットしたグラフである。このグラフの作成に使用されるサンプリングデータは、次回の値が報告されるまで先の積分値に保持されるので、図示の、平らにカットされたピーク値の説明になる。よく調べると、識別可能な正弦サイクルが約250秒の所で姿を見せ始めているのが分かる。これは、パターン処理済ウェーハが最初に平坦化された位置と一致する。勿論、干渉計の出力信号のリアルタイム・モニタリングで、何時この周期変動が始まるかを正確に知ることは不可能だろう。むしろ、周期変動が始まったことが確認される前に、サイクルの少なくとも或る部分が発生していたと考えられる。CMP手順を終了する前に、1サイクル以下の経過を許容することが望ましい。1サイクルという制限は実際的な選択である。というのは、それによって、単にウェーハ表面の異なるサイズの特徴部のポリッシングによって生じるノイズ変動を示す信号ではなく、周期変動が実際に始まったのだ、という強い確信が得られるからである。更に、この1サイクル制限によって、平坦化達成後に、ウェーハ表面からごく小量の材料が確実に除去される。平坦化の程度は、2サイクル後も、1サイクル後の状態と基本的には同一なことが分かっている。従って、CMP手順の継続を許容することは、ウェーハの表面からの更なる材料除去に役立つだけだろう。一旦、パターン処理済ウェーハが平坦化された後、CMPプロセスを終了しようとする場合に1サイクルの猶予が好ましいとは言え、本発明をその時間枠に限定するつもりはない。信号が特に強い場合は、サイクルの一部だけの後で同じレベルの確信を得ることができるかもしれない。反対に、信号が特に弱い場合、必要な確信を得るのに1サイクル以上かかるかもしれない。その選択は、使用するシステムの特性次第であろう。例えば、石英窓とウェーハ表面の間の間隙のサイズが信号の強さに影響するし、またCMPプロセスを終了する前に何サイクル待つべきかの決定も同様である。 【0040】レーザー干渉計からの信号がいつ実際に周期変動し、従ってウェーハ表面が平坦化された状態を示しているかに関する実際の決定は、様々な方法で行なわれる。例えば、信号はディジタル的に処理されて、或るアルゴリズムを使って決定が行なわれる。そのような方法は米国特許第5,097,430号明細書に開示されており、そこでは信号の勾配を使って決定が行なわれている。更に、各種の周知の曲線近似アルゴリズム(curve fitting algorithms)が利用可能である。これらの方法は基本的に、干渉計信号を正弦曲線と比較するために使用されるようである。或る所定の公差内で一致が生じたときに周期変動が始まったと決定される。一部の半導体用途では、パターン処理済ウェーハのダイ上に形成された構造に積層する材料の厚さ(すなわち皮膜厚さ)が一定深さにあることや、この皮膜厚さがダイからダイ、およびウェーハからウェーハへと再現可能であることが要求される。通常のパターン処理済ウェーハを平坦化する前記方法は、必ずしもこの望ましい再現可能な皮膜厚さを作り出すわけではない。この平坦化方法の目的は平滑な表面を作り出すことであって、特定の皮膜厚さを作ることではない。従って、特定の構造や類似サイズの構造グループの上の皮膜厚さをコントロールすることが望ましい場合、別の方法を用いなければならない。この代替方法を以下に説明する。 【0041】先に示唆したように、ダイ上のパターン処理済構造の上に酸化物層を形成することによる異なるサイズの各表面特徴部は、独特の周波数と位相を持つ反射干渉信号を生成する傾向がある。異なるサイズの各特徴部の周波数と位相が収束するのは、平坦化点に近付くときだけである。この収束の前に、様々な異なるサイズの特徴部によって生じる干渉信号の独特な周波数と位相が組み合わされて、ランダムに変化するように見える検知器信号を生成する。しかしながら、この信号を処理して、特定サイズの特徴部や類似サイズの特徴部のグループを除き、異なる速度でポリッシングされるすべての特徴部の干渉信号成分を取り除くことは可能である。一旦、特定サイズの特徴部や特徴部グループに伴う干渉信号が分離されると、ブランク酸化物ディスクからの材料除去に関して検討された方法を使用して、希望の皮膜厚さを得るのに必要な材料の量だけが除去される。 【0042】勿論、信号処理の前に、対象(interest)となる特徴部によって生じた干渉信号成分の周波数を決定しなければならない。この周波数は、特定の積層皮膜厚さを持つべき構造に対応する構造によって排他的にパターン処理されたダイを含む試験片にCMPプロセスを施すことによって、容易に決定できるものと考えられる。このCMPプロセス中に生成された検知器信号は周知の方法によって解析され、上記構造に伴う表面特徴部によって生じた干渉信号の独特の周波数が決定される。 【0043】ウェーハのCMP処理中に、その場で、ダイ上の特定構造や類似サイズの構造グループの上の皮膜厚さをコントロールする上記方法を実行するために必要な具体的ステップを、図14に関して説明する。ステップ502では、対象となる構造に伴う所定の周波数を持つ信号成分だけを通すように、検知器信号が濾波される。このステップは、周知のバンドパスフィルタ技術を使って達成される。次に、ステップ504では、検知器信号中の極大値と極小値、またはその逆の最初の発生の間の時間が測定される(もっとも、完全1サイクルまたはその任意の部分を使用できたかもしれない)。サイクルの当該部分(すなわち1/2サイクル)の間に除去される材料の量は、ステップ506で、前記方法によって決定される。次に、ステップ508で示すように、除去された材料量を測定時間で除することによって、除去速度が算出される。これは、材料がサイクルの直前部分で除去された速度を構成する。次のステップ510では、ステップ506で算出された除去材料の厚さが、除去すべき希望厚さ(すなわち、除去されたとき、対象となる構造上に積層する希望皮膜厚さになる厚さ)から差し引かれ、残りの除去厚さが決定される。次にステップ512では、この残りの除去厚さを前記の除去速度で割って、終了までにどれだけの時間CMPプロセスを続けるべきかが決定される。一旦、残りの時間が算出されると、極大値と極小値、またはその逆の発生の度毎にそのプロセスが繰り返される。従って、この方法の最初の作業(iteration)と全く同様に、次に発生する極大値と極小値の間の時間が測定され、この極大値と極小値の発生によって代表されるサイクルの部分(すなわち1/2)の間に除去される材料厚さを、測定時間で除算して、除去速度が算出される。しかし、次のステップ510では、括弧で示すように、すべての先行する繰り返し作業の間に除去された材料の総量が、希望の厚さから差し引かれる前に決定される。この方法のその他の部分は、除去すべき残りの厚さが新たに算出された除去速度によって除されて、残りのCMPプロセス時間が決定されるので、そのまま変わらない。この作業は、残りのCMPプロセス時間が終了して次の繰返し作業が始まるまで継続される。ステップ514に示すように、その時点でCMPプロセスが終了する。 【0044】皮膜厚さをコントロールする上記方法は、図10の(B)で示すCMPプロセスの終点を決定する方法を利用しているが、希望すれば、本明細書に記載される他の終点決定方法もすべて使用できることを言及しておく。 【0045】更に、レーザー干渉計が発生するレーザービームのビーム直径(すなわちスポット)と波長を有利に操作できることも更に注目される。図15の(A)と(B)に示すように、細幅ビーム84、すなわち使用波長に対してできるだけ小さいスポットに集束されたビームは、よい広幅で集束の劣るビーム86よりも照射するウェーハの表面積が小さい。この細幅ビーム84は、広幅ビーム86よりも表面凹凸90による散乱(すなわちビーム88)を受け易い。というのは、広幅ビーム86はウェーハ14の表面領域のより広い部分に拡がって、より多くの表面凹凸90を包含するからである。従って、広幅ビーム86は統合的効果を持ち、ウェーハ14の表面を横切るときに、反射した干渉信号の極端な変動を受けにくいと考えられる。従って、この理由から広幅ビーム86の方が好ましい。レーザービーム幅は周知の光学装置を使って拡張できる。 【0046】ビームが完全に窓の境界内に含まれる時間は、細幅ビームの場合より少ないので、広幅ビームの方がプラテン1回転当りの利用可能なデータ収集時間を削減することも指摘しなければならない。しかし、前記データ収集方法に関して、このことにより大きな問題が生じてはならない。更に、広幅ビームは細幅ビームよりも広い面積に光のエネルギーを拡散させるので、反射の強さが多少弱くなる。この欠点はレーザー干渉計からのレーザービームの出力を増すことによって矯正できるので、反射ビームの強さの損失は検出時の要因ではない。 【0047】レーザービームの波長については、遠赤外線から紫外線までの任意の波長を使用できる。しかしながら、レッドライトレンジのビームを使用することが望ましい。この理由は2つあって、第1に、より短い波長は、散乱がレーザービームの周波数の4乗に比例するので、化学スラリによって生じる散乱量の増加をもたらす。従って、波長が長い程、散乱は少なくなる。しかしながら、波長を長くすると、1周期当りに除去される材料の量はほぼλ/2nに等しいので、干渉信号の1周期当りに除去される酸化物層の量が多くなる。従って、波長が短い程、1周期に除去される材料は少なくなる。余分の材料を除去する可能性を最小にするために、各周期の間に、できるだけ少量の材料を除去することが望ましい。例えば、サイクル数またはその一部をカウントして除去酸化物層の厚さを決定する前記方法を使用するシステムでは、各サイクルまたはその一部の間に除去される材料量をできるだけ少なくすれば、希望量を超えて除去される余分の材料は最小になるだろう。 【0048】レッドライトレーザービームを選べば、波長選択時のこれらの2つの競合要因が最適にバランスされると考えられる。レッドライトは許容可能な散乱度を提供すると共に、制御不能な量の材料がサイクル当りに除去されることがない。 【0049】第2の実施形態生成される干渉波形は、ポリッシングプロセスに関するかなりの追加情報を提供する。この追加情報を使って、ポリッシング層の均一性の直接測定を行なうことができる。また、それを使って、CMPシステムが仕様通り作動していない(すなわち、希望通りに作動していない)ことを検出することもできる。これらの両方の用途について説明する。 【0050】均一性の測定CMP装置で実行されるポリッシングおよび/または平坦化作業では一般に、ウェーハ/基板の表面全体にわたり均一な表面層の生成が要求される。言い換えれば、ウェーハの中心部はその縁部と同じ速度でポリッシングされなければならない。通常、ポリッシング層の厚さは約5?10%以上変化してはならない。この均一性レベルが達成されない場合、装置の歩留まりが許容できないほど低下するので、ウェーハを使用できない場合がある。実際には、ウェーハ全体にわたる均一なポリッシング速度の獲得はかなり難しい場合が多い。通常、仕様範囲内での実行を維持するためには、様々な変数を最適化する必要がある。前記の終点検知器は、ポリッシング中の層の均一性をモニターする極めて便利なツールを提供し、またそのモニターは、直接的なデータ収集とデータ処理の両方について実施できる。 【0051】我々は、ポリッシング中に干渉計によって生成される干渉波形が、ポリッシング中の層の均一性に関する情報を提供することを見いだした。上記のように、表面層(例えば酸化物層)がポリッシングされているときに干渉計の出力が正弦信号として現われる。その信号のピーク間の距離が、除去された材料量を示す。その正弦信号の上には別の高次周波の正弦信号も存在するだろう。その高次周波信号の振幅は、ウェーハの表面全体でどれだけポリッシング層の厚さが変動しているかを示す。 【0052】高周波信号が現われる理由は下記の通りである。ポリッシングが行なわれているとき、干渉計は通常、ウェーハ表面を横切って異なる場所をサンプリングする(または調べる)。これは、ポリッシング中、プラテンとウェーハの両者が回転しており、更にウェーハもプラテンに対して軸方向に移動しているからである。かくして、ポリッシング中、ウェーハ表面の異なる部分がプラテンの孔の上を通過し、干渉計はその孔を通してポリッシング中の層を見ることになる。ポリッシング層が完全に一様であれば、合成干渉波形は、ウェーハ表面を横切る異なる場所のサンプリングによって影響を受けることはないだろう。つまり、それは実質的に同一の振幅を持つことになる。他方、ポリッシング層が均一でない場合、異なる場所のサンプリングは正弦基本信号の上に更なる変動をもたらす。この更なる変動は、使用される回転速度と走査速度に依存する周波数を持ち、またポリッシング層の不均一の程度に比例した振幅を持つ。そのような波形の例を図16に示す。この例では、不均一性が比較的大きかったので、高周波信号をはっきり示している。 【0053】均一性の尺度は、低周波信号のピーク対ピーク振幅A_(lf)に対する、高周波信号のピーク対ピーク振幅A_(hf)の比である。この比が小さい程、ポリッシング層の均一性が向上し、反対にこの比が大きい程、不均一性が大きくなる。 【0054】均一性の尺度を作成するCMP装置を図17に示す。先に記載の図2に示すコンポーネントの他に、装置はコンピュータを含み、このコンピュータは干渉計の動作を制御すると共に、干渉信号をもとに均一性の尺度を生成するために必要な信号解析を行なうようにプログラムされており、また装置は、様々な情報と結果をオペレータに表示する表示装置160を含む。コンピュータ150は、例えば、適切にプログラムされた標準PCと、専用として特別設計されたディジタル演算処理装置を含め、制御および信号処理機能を実行できる任意の装置でよい。表示装置160は、ビデオディスプレイ、プリンタ、またはCMP装置オペレータに情報を連絡する任意の適切な装置およびその組合せでよい。 【0055】均一性の尺度を作成するために、コンピュータ150は、図18に示す信号処理その他の機能を実装して実行するようにプログラムされている。それに関して、コンピュータ150は、2つのプログラム可能なバンドパスフィルタ、すなわち高周波フィルタ152と低周波フィルタ154とを実装している。高周波フィルタ152は、均一性情報を含む高周波信号の周波数を中心とする通過帯域を持ち、低周波フィルタ154は、ポリッシング速度情報を含む低周波信号の周波数を中心とする通過帯域を持つ。これらの両通過帯域の幅は、周期が数十秒のオーダーの場合、数ミリヘルツのオーダーである。実際には、通過帯域の幅は、中心周波数に比例して変化するように、また言い換えると、調査される信号の周期に反比例して変化するようにプログラムされる。すなわち、関連信号の周期が増大すれば、バンドパスフィルタの帯域幅は減少し、その逆も成り立つ。 【0056】図19の(A)は実際の装置から得られた干渉計信号の例を示す。最初、信号は層が全く均一であること、すなわち、識別可能な高周波信号が低周波信号の上に乗っていないことを示しているのに注目されたい。短時間のポリッシングが行なわれた後に高周波信号が現われ始め、或るレベルの不均一性を示す。低周波フィルタ154は低周波成分を選択してその他の周波数を濾波し、図19の(B)に示す形の出力信号を発生させる。同様に、高周波フィルタ152は高周波成分を選択してその他の周波数を濾波し、図19の(C)に示す形の出力信号を生成する。 【0057】コンピュータ150は、フィルタ152と154の出力信号のピーク対ピーク振幅をそれぞれ測定する2つの振幅測定機能156と158を実装している。濾波された2つの信号の振幅が決定されると、コンピュータ150は、低周波信号のp-p振幅に対する高周波信号のp-p振幅の比(すなわち、A_(hf)/A_(lf))(機能ブロック162参照)を計算する。その比を計算した後、コンピュータ150はその算出比を、ローカルメモリへ先に記憶された閾値、つまり基準値164と比較する。算出比が記憶された閾値を超える場合、コンピュータ150は、ポリッシング層の不均一性が許容量を超えている旨、オペレータに警告する。それに応じて、オペレータはプロセスパラメータを調節して、プロセスを仕様内に戻すことができる。 【0058】高周波信号はポリッシングがある程度行なわれた後のみに現われる傾向があるので、不均一性の測定は待ってから行うのが有益である。実際は、その比を定期的に自動計算して、ポリッシング作業全体を通してポリッシング層の不均一性をモニターすることが望ましいかもしれない。その場合、ポリッシングプロセスに現われている変化および/または傾向をオペレータが検出できるように、コンピュータ150がプロセス全体を通して、その算出比を出力することも望ましいだろう。ポリッシング中の実際の生産品ウェーハに対して直接的にモニターを行なった場合は、この点は特に有益であろう。 【0059】ここで記載した機能は、コンピュータ上で動作するソフトウェアを介して実行できるか、この特定目的のために製作した専用回路を介して実行できることに注意されたい。 【0060】バンドパスフィルタは、当該技術に精通する者にとっては周知の技術を使って実装できる。記載の実施例では、それらは周波数と時間領域のいずれかで実行可能なFIR(有限インパルス応答)フィルタである。しかしながら、干渉計信号が入手可能な状態の時にリアルタイムで濾波を行なうために、発生時にその波形に適切な関数を絡ませることによって、時間領域で濾波が行なわれる。その適切な関数は、勿論、言うまでもなく希望の特性(すなわち、中心周波数と帯域幅)を持つバンドパスフィルタの時間領域表示である。 【0061】適切なフィルタパラメータを規定するためには、そのフィルタが選択すべき信号の周波数を知る必要がある。この情報は、干渉計の信号波形から容易に入手できる。例えば、低周波フィルタの中心周波数は、ウェーハ(例えば、単一の酸化物被覆を持つブランクウェーハ)の一バッチ(例えば25枚)を実行してポリッシング速度の正確な尺度を得ることによって入手できる。代替として、ポリッシング速度は、低周波信号のピーク間の距離を測定することによって、ポリッシング実行の最初の時点で決定できる。勿論、この代替方法を使用した結果は、大量のウェーハに対する測定値を平均する場合ほど正確ではない。いずれにしても、ポリッシング速度がバンドパスフィルタの中心周波数を決定し、またフィルタの希望帯域幅と共にその中心周波数を知ることによって、時間領域フィルタ関数の正確な形および/またはFIRフィルタの係数を容易に決定できる。 【0062】高周波信号の周波数は、同様の方法、すなわちCMP装置によるウェーハポリッシング中に、干渉計によって生成されるトレースから直接に入手できる。言い換えれば、オペレータは単に高周波信号のピーク間の距離を測定するだけである。このプロセスは、オペレータが指示装置(例えばマウス)の助けを借りてビデオディスプレイに現われる波形上の2点をマークできるように、またコンピュータがプログラミングによってその周波数を自動計算した後に適切なフィルタ係数を作成できるように、容易に自動化できる。次に、そのフィルタ関数のフィルタ係数および/または時間領域表示は、後からポリッシング時に使用して濾波作業を行なうために、ローカルメモリに記憶される。 【0063】プロセス・サイン(process signature)干渉計の波形は、その波形が得られた装置のサインの代わりにもなる(すなわち、それが装置の特徴を表す)。これによって、その波形は、生産作業に関して装置を評価するための有益な情報を提供する。希望通り作動していることが分かっている装置に対してサインが得られた場合、そのサイン波形(または波形から抽出された特徴)を、後から生成されたサインを比較する基準として使用して、後からサインが得られた当該装置が仕様内で機能しているか否かを決定することができる。例えば、ポリッシングパッドが交換されたり、新しいバッチのスラリをCMP装置で使用する場合、オペレータは、その変更は、装置が実行するポリッシングの質に有害に作用したか否かを知る必要がある。我々は、CPM装置の性能の変化がサインの変化をもたらすことを見いだした。つまり、以前は存在しなかった或る特徴が波形の中に現われるか、さもなければ前から存在する特徴が変化する。これらの変化を検出することによって、装置が希望通り作動していない時を検出できる。 【0064】上記実施形態では、干渉計波形から抽出される特徴は、ポリッシング速度と均一性の尺度である。これらの特徴はいずれも、ポリッシング中に生成される干渉計の波形から、先に記載の方法を使って容易に得ることができる。適切に作動する装置は、特定のポリッシング速度と特定の均一性の尺度を作り出す。これらの基準値からのずれは、装置が望ましい作業ポイントから逸脱している指標を与えると共に、製品の破壊を避けるために、オペレータに是正措置の必要性を警告する。 【0065】CMP装置のサインを使用する方法を図20の(A)に示し、ここで説明する。最初、最適作動状態にあること分かっているCMP装置に対して干渉計波形(すなわち、サイン)が作成される(ステップ250)。システムが最適作動状態にあるか否かの決定は、一組のテストウェーハを処理して結果を解析することによって経験的に決定される。生じた結果が仕様内にあるときは、その構成と一連の作業状態に対してサインを作成できる。干渉計波形の一部を取り込む前に、波形がそのポリッシング装置の真のサインになるように、酸化物の厚さの50?100%の間でウェーハをポリッシングすることが望ましい。 【0066】波形が得られた後、作成された波形から関連する特定の特徴が抽出され(ステップ252)、将来その装置性能を評価するための基準として、後で使用するために記憶される(ステップ254)。代替として、波形自体を記憶して基準として使用することもできる。記載の実施形態では、抽出された特徴は、ポリッシング速度と均一性の尺度とであり、両方とも上記のように、波形から決定できる。 【0067】図20の(B)を参照すると、後刻、記憶されたサイン(または抽出された特徴)を使って、当該装置や別の装置を生産用途に対して評価することができる。或る装置を生産に対して評価するには、その装置に対する新しいサインを獲得して(ステップ258)、関連する特徴をその新しいサインから抽出する(ステップ260)。抽出された特徴は、次に、記憶された特徴の基準セットと比較される(ステップ264)。抽出された特徴のセットの性質を持つ作業ポイントが、記憶された特徴の基準セットによって定義された基準ポイント付近の所定の領域内にある場合、その装置は適切に作動しており、また製品ウェーハの処理のためにその装置を稼働させることができる旨、決定される(ステップ266)。このプロセスを自動化すれば、コンピュータは、プロセスが仕様内にあることをこの時点でオペレータに知らせることになる。これに反して、作業ポイントが所定の領域外にある場合、それは、装置が仕様範囲内で作動していないことを示し、是正措置を取れるように、この問題に対してオペレータに警告される(ステップ268)。是正措置は、プロセスを仕様範囲内に引き戻すためにプロセスパラメータを適切に調節するステップを含んでもよい。例えば、ポリッシング速度が早すぎるか、酸化物の不均一性が許容値を超える場合、オペレータは、スラリの新しいバッチの使用や、パッドに働く圧力の調節や、更にはパッドの交換さえも適切であると認識できる。選択される是正措置のそれぞれの内容は、勿論、装置が望ましい作業ポイントからどれだけ逸脱しているかの詳細、その装置の構成と作業パラメータ、およびオペレータの経験による学習に依存している。 【0068】更なる有益情報をオペレータに提供するために、コンピュータは、その表示装置を介して、抽出した特徴に関する情報をオプションとしても出力する(ステップ262)。表示される情報は、抽出された特徴や、波形や、記憶された基準セットの様々な特徴に対する、抽出された各種の特徴の近似の程度として提示できるし、オペレータに最も有益であると判っているあらゆる方法で提示できる。 【0069】勿論、直接的なリアルタイムの上記モニター手順は、生産ウェーハを処理しながら定期的に使用できるし、CMP装置の何らかのプロセスパラメータが変更されて(例えば、新しいポリッシングパッド使用、パッド圧力調節、新バッチスラリの使用)CMPプロセスがまだ仕様範囲内にあることを知る必要が生じたときは、いつでも使用できる。更に、それは、実際の製品に使用する前にCMP装置を評価するために、実際の製品の代わりに、ブランクとしてウェーハに対しても使用できる。 【0070】我々は、サイン波形から情報を抽出するステップに対する直截的で単純なアプローチ、すなわちポリッシング速度と均一性の尺度を使って説明したが、サインまたは干渉計はより精巧な技術を使って解析できる(例えば、1、2の例を挙げるだけだが、パターン認識や特徴認識その他の画像解析アルゴリズム、または神経ネットワーク)。装置の動作に関して各種の抽出された特徴がもたらす情報は、経験を通して決定できるし、またオペレータにとって最も重要と思われる情報をもたらす特徴が使用できる。 【0071】また、オペレータに対する干渉計波形(例えばプロセスのサイン)の単なる表示が、装置は如何によく機能しているかの貴重なフィードバックを与えることも注目すべきである。通常、人間の目は、期待するイメージからの微妙な変化を検出する点で極めて敏感である。従って、若干の経験の後、オペレータはしばしば、単に波形を見るだけでCMP装置の総合的な性能の変化と切迫した問題を検出することができる。かくして、当該実施形態では、コンピュータが、処理中にオペレータにサイン波形も表示するので、オペレータもそれを使って装置の性能をモニターできる。 【0072】なお、当業者には公知の技術を使って、オペレータが探索する変化を自動的に認識または検出すると共に、特定の問題に対してオペレータに警告を発するソフトウェアを容易に開発できる。 【0073】性能を改善するための変形実施形態別の実施形態は、干渉計とウェーハとの間の、パッド内の窓に対する改変を含む。パッドは干渉計レーザービームの実質的部分を透過するが、パッドの底面からの反射成分もかなり存在することが分かっている。この状態を図21の(A)に示すが、この場合、レーザー干渉計32から発射されるレーザービーム34の一部が、パッド22を透過して、透過ビーム702を形成し、レーザービーム34の一部はパッド22の裏面704で反射して、反射ビーム706を形成する。この反射ビーム706は、データ信号中にかなりの直流(DC)シフトを生成する。図21の(B)にこのシフトを示す(明瞭化のために誇張されている)。この例において、反射レーザー光がもたらすDCシフトにより、信号全体に約8.0ボルトが追加される。DCシフトは、データ信号の有効部分の解析で問題を生じる。例えば、データ解析設備が0?10ボルトの範囲で作動する場合、信号のDC成分を削減または除去しない限り、対象部分のレベルアップのためのDCシフト信号の増幅は殆ど不可能である。DC成分を除去しないと、設備は増幅信号によって飽和してしまうだろう。DC成分を電子的に削減したり除去したりするには、追加の信号処理技術が必要で、信号の有効部分の劣化をもたらすかもしれない。DCシフトがここに記載した程大きくない場合でも、これを除去するには、まだ何らかの信号処理を必要とするかもしれない。従って、この望ましくないDC成分を削減または除去する非電子的方法が望まれる。 【0074】図21の(C)に示すように、パッド22の裏側の窓を構成する部分に拡散面704’を造ることによって、その表面からの反射光が減衰することが判明した。かくして、データ信号の望ましくないDC成分が削減される。この拡散面704’は、非透過レーザー光708の大部分を干渉計32の方向に反射するのではなく、実質的に散乱させる。ウェーハからの反射信号も当然、拡散面704’を通過するので、それによってその一部も散乱する。しかしながら、これは干渉計の性能を大きく劣化させないことが分かっている。 【0075】図21の(D)は、拡散面704’を使用したときに得られるデータ信号を示す。見て分かるように、DC成分が除去されているので、それを電子的に除去する必要なしに信号を容易に増幅、処理することができる。 【0076】いかにして拡散面を作るかは大した問題ではない。ポリッシングパッドの裏面の窓付近をサンディングするか、拡散材料の皮膜を塗布するか、あるいは希望の結果を生じる他の任意の方法で作ることができる本発明を好ましい実施形態によって説明したが、本発明は図示、説明された実施形態に限定されるものではなく、本発明の適用範囲は特許請求の範囲に定義される。 【図面の簡単な説明】 【図1】従来技術を代表する機械化学的ポリッシング(CMP)装置の側面図である。 【図2】本発明によって構成された終点検出装置を有する機械化学的ポリッシング装置の側面図である。 【図3】(A)?(D)は、それぞれ、図2の装置の窓部分の実施形態の断面略図であり、(E)は、図3の(D)の窓部分に使用される透明プラグの平面略図であり、(F)は、図3の(D)の窓部分のアセンブリを示す断面略図である。 【図4】図2の装置の窓部分の断面略図であって、レーザー干渉計のコンポーネントがレーザービームを発生して反射干渉ビームを検出する状態を示す図である。 【図5】図2の装置で処理されている状態の、ブランク酸化物ウェーハの断面略図であって、ウェーハ上に衝突するレーザービームと反射ビームとが、合成干渉ビームを形成する状態を概略的に示す図である。 【図6】図2の装置のプラテンの平面略図であって、窓とセンサーフラグとの間、およびセンサとレーザー干渉計との間で可能な一つの相対編成を示す図である。 【図7】図2の装置のプラテンの平面図であって、窓とセンサーフラグとの間、およびセンサとレーザーとの間の相対編成を示し、窓の形状は円弧であることを示す図である。 【図8】本発明による区分的データ収集方法の流れ図である。 【図9】(A)および(B)は、ブランク酸化物ウェーハを薄くする加工時間全体にわたる、レーザー干渉計からのデータ信号の周期変動を示すグラフであり、(A)は、希望のサンプル時間にわたって積分されたデータ信号の積分値を示すグラフ、(B)は、その積分値の濾波された値を示すグラフである。 【図10】(A)は、本発明による、ブランク酸化物ウェーハの酸化物層を薄くするCMPプロセスで終点を決定する後向き法(backward-looking method)のブロック図であり、(B)は、本発明による、ブランクとしての酸化物ウェーハの酸化物層を薄くするCMPプロセスで終点を決定する前向き法(forward-looking method)のブロック図である。 【図11】(A)?(C)は、図2の装置によって処理中の、不規則面を持ちパターン処理されたウェーハの断面略図であって、(A)は、CMPプロセス開始時のウェーハを示し、(B)は、プロセスのほぼ中間時のウェーハを示し、(C)は、平坦化時点に近いウェーハを示す図である。 【図12】本発明による、不規則面を持ちパターン処理されたウェーハを平坦化するためのCMPプロセスであって、終点を決定する方法の流れ図である。 【図13】パターン処理されたウェーハの平坦化時間全体にわたる、レーザー干渉計からのデータ信号の変動を示すグラフである。 【図14】本発明による、特定サイズの構造または類似サイズの構造グループの上に積層させる皮膜厚さを制御するための、CMPプロセスの終点を決定する方法のブロック図である。 【図15】(A)は、表面欠陥に小径レーザービームが照射された、ウェーハの断面略図であり、(B)は、表面欠陥に大径レーザービームが照射された、ウェーハの断面略図である。 【図16】ブランク酸化物ウェーハを薄くする加工時間全体にわたる、レーザー干渉計からのデータ信号の周期変動を示すグラフであって、不均一なウェーハ表面に伴う高周波信号を含んでいるグラフである。 【図17】干渉計と、干渉計波形の出力信号を解析、応答するようにプログラムされたコンピュータとを含む、代表的なCMP装置の概略図である。 【図18】均一性を直接その場でモニターするためにコンピュータ内で実行される機能性を示すブロック図である。 【図19】(A)?(C)は干渉計信号の例を示し、それぞれ、低周波バンドパスフィルタによって濾波された後の干渉計信号と、高周波バンドパスフィルタによって濾波された後の干渉計信号を示すグラフである。 【図20】(A)および(B)は、CMP装置のサインを作成した後にそれを使って、装置を生産用に評価する手順を示す流れ図である。 【図21】(A)は、ポリッシングパッドを窓として使用する、図2の装置の窓部分の実施例の断面略図であって、パッドの裏側からの反射を示す図であり、(B)は、時間に対するレーザー干渉計からのデータ信号の周期変動を示すグラフで、図21の(A)の実施形態のパッドの裏からの反射によって大きな直流成分が生じているところを示すグラフ、(C)は、反射を抑えるために、拡散処理された裏面を持つ窓としてポリッシングパッドを使用した、図2の装置の窓部分の実施例の断面略図、(D)は、時間に対するレーザー干渉計からのデータ信号の周期変動を示すグラフであり、図21の(C)の実施例の拡散処理した裏面による、パッドの裏側からの反射で生じる大直流成分は無い状態を示すグラフである。 【符号の説明】 10…機械化学的ポリッシング、12…ポリッシングヘッド、14…ウェーハ、16…プラテン、18…プラテンパッド(ポリッシングパッド)、ポリシングヘッド、20…裏打ち層、22…被覆層、600…プラグ、612…開口、614…接着剤、630…開口(第1開口)、632…開口(第2開口)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2011-07-07 |
結審通知日 | 2011-07-11 |
審決日 | 2011-07-22 |
出願番号 | 特願平9-221737 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丸山 英行、渡邊 豊英 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 刈間 宏信 |
登録日 | 2002-07-12 |
登録番号 | 特許第3327817号(P3327817) |
発明の名称 | 機械化学的ポリッシング装置用のポリッシングパッドへの透明窓の形成 |
代理人 | 八幡 宏之 |
代理人 | 伊藤 麻美 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 伊藤 麻美 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 古城 春実 |
代理人 | 松浦 憲三 |
代理人 | 玉城 光博 |
代理人 | 古城 春実 |
代理人 | 松村 潔 |
代理人 | 玉城 光博 |
代理人 | 堀籠 佳典 |
代理人 | 堀籠 佳典 |