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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1266269
審判番号 不服2011-15473  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-19 
確定日 2012-11-15 
事件の表示 特願2001-266266「カタログ情報の提供システム,提供方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月14日出願公開,特開2003- 76924〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年9月3日の出願であって,平成23年1月12日付けの拒絶理由の通知に対し,同年3月25日付けで手続補正がなされたが,同年4月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年7月19日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年1月26日付けの審尋に対し,同年4月2日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年7月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち,請求項6の記載は次のとおりである。なお,下線部は,補正箇所である。
「【請求項6】 カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,前記カタログ情報提供者側の取引相手である特定のクライアント側のコンピュータシステムとのみを利用して前記特定のクライアントにカタログ情報を提供するカタログ情報の提供方法であって,
(i) 国内外から前記特定のクライアントが扱う特定製品のカタログを収集するステップ
(ii) 収集した前記カタログをカタログ情報提供業者に集約するステップ
(iii) 前記カタログの中から,該カタログを利用する前記特定のクライアントが必要とし,かつ,前記カタログを特定するのに必要なデータとして予め決定された第一のデータを抽出し,該カタログを利用する前記特定のクライアントが必要とするデータとして予め決定され前記第一のデータが共通する第二のデータを抽出するステップ
(iv) 前記カタログ,前記第一のデータ及び前記第二のデータを相互に関連付けたカタログ情報としてデータベースに登録するステップ
(v) 前記データベースに登録された前記カタログ情報を,必要に応じて,前記特定のクライアントの希望する形態に変換して前記特定のクライアントに提供するステップ
を有することを特徴とするカタログ情報の提供方法。」

(2)上記補正は,補正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「クライアント」について「特定のクライアント」と,「特定商品」について「特定のクライアントが扱う特定製品」と,「収集したカタログの中から必要なデータを抜き出すステップ」について「前記カタログの中から,該カタログを利用する前記特定のクライアントが必要とし,かつ,前記カタログを特定するのに必要なデータとして予め決定された第一のデータを抽出し,該カタログを利用する前記特定のクライアントが必要とするデータとして予め決定され前記第一のデータが共通する第二のデータを抽出するステップ」と,また,「前記データを前記カタログと関連付けたカタログ情報」について「前記カタログ,前記第一のデータ及び前記第二のデータを相互に関連付けたカタログ情報」と,それぞれ限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,補正後の請求項6に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1に記載したとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願の日前の平成13年7月27日に頒布された刊行物である特開2001-202450号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,複数のカタログ提供者から商品に関するカタログ情報をネットワークを介して受け取り,この受け取った複数のカタログ情報を集積し,複数のカタログ利用者にネットワークを介して配信する電子カタログアグリゲーションシステムに関する。」
・「【0005】【発明が解決しようとする課題】上述したように,複数のカタログ提供者およびカタログ利用者が存在する場合,各カタログ提供者は従来各カタログ利用者毎にカタログ利用者が要求する商品のカタログの抽出作業,カタログ利用者が要求する形式への編集作業,カタログ利用者が要求する方式での配信作業を行う必要があり,また各カタログ利用者は従来各カタログ提供者毎にカタログの受け取り作業,カタログ利用者のシステムへの反映作業を行う必要があるため,煩雑であるという問題がある。」
・「【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため,請求項1記載の本発明は,予め登録されたカタログ提供者からネットワークを介して受け取った電子カタログデータをそれぞれの項目所定の共用形式に加工する加工手段と,加工手段により加工された電子カタログデータを格納する電子カタログデータベースと,予め登録されたカタログ利用者から受け取ったカタログ要求情報に対応する電子カタログデータを前記電子カタログデータベースから抽出する抽出手段と,抽出手段により抽出された当該電子カタログデータを前記カタログ要求情報で指定された形式の電子カタログに変換する変換手段と,変換手段により変換されてできた電子カタログをネットワークを介して前記カタログ利用者に配信する配信手段とを有することを要旨とする。」
・「【0026】・・・図1は,本発明の一実施形態に係る電子カタログアグリゲーションシステムの構成を示すブロック図である。同図に示す電子カタログアグリゲーションシステムは,複数のカタログ提供者装置からカタログ情報をネットワークを介して受け取り,この受け取った複数のカタログ情報を集積し,複数のカタログ利用者装置にネットワークを介して配信するシステムであり,カタログ情報を所有していて,このカタログ情報を提供する複数のカタログ提供者装置1a,1b,1c,1d,1eからなるカタログ提供者装置群1,このカタログ提供者装置群1にインターネットを含むネットワークを介して接続され,カタログ提供者装置群1から複数のカタログ情報を集積するカタログアグリゲータ3,このカタログアグリゲータ3にインターネットを含むネットワークを介して接続され,カタログアグリゲータ3から電子カタログを受け取って利用する複数のカタログ利用者装置5a,5b,5c,5dからなるカタログ利用者装置群5,・・・およびカタログアグリゲータ3にインターネットを含むネットワークを介して接続され,カタログ提供者装置1a,1b,1c,1d,1eやカタログ利用者装置5a,5b,5c,5dなどである企業などの信用情報などを所有している信用調査会社9から構成されている。・・・」
・「【0033】更に,カタログアグリゲータ3は,システムの管理,カタログ提供者やカタログ利用者の入退会の管理,カタログ確認などの管理機能を実施する管理機能部31を有する。この管理機能部31は,カタログ提供者装置群1およびカタログ利用者装置群5からWWWブラウザ11,51からそれぞれ企業情報,すなわちカタログ提供者情報およびカタログ利用者情報を受け取り,この受け取った企業情報に基づきカタログ提供者およびカタログ利用者の入会審査などを行うとともに,その情報を記憶管理するようになっている。」
・「【0056】図6では,まずカタログ提供者装置群1からカタログデータが自動的に抽出され(ステップS101),この抽出されたカタログ提供者独自のカタログデータがネットワークを介してカタログアグリゲータ3に送信され(ステップS103),カタログアグリゲータ3においてカタログデータ収集受信部33で受信される(ステップS105)。
【0057】カタログアグリゲータ3は,カタログデータを受信すると,どのカタログ提供者が提供したものであるのかを判別する(ステップS107)。・・・
【0058】次に,カタログアグリゲータ3は,カタログ提供者を判別すると,カタログデータには提供するカタログ提供者毎および提供回毎に品質のばらつきが存在するため,カタログ提供者から提供されたカタログデータを解析し,このカタログデータを共用カタログデータベース35に格納するための所定の共用形式に加工するためにどのような変換処理が必要であるかを分析し,処理の必要な項目を抽出する(ステップS109)。・・・
【0059】また,上記分析の結果,どのような処理が必要であるかが判明すると,このカタログデータで対象とする商品の分類を判別し,この判別した商品に共用商品分類コードが付与される(ステップS111)。
【0060】更に,判別したカタログ提供者に合った処理ルール,すなわちフォーマットルール,表記ルール,文字コードルール,画像ルールなどの処理ルールを参照し,処理の必要な部分に対して適切な処理を自動的に実行し,カタログアグリゲータ3の取り決めた所定の共用フォーマットに変換する(ステップS113)。なお,この変換では,更にファイル形式の変換,項目の変換,項目属性の変換,項目構造の変換なども行われる。それから,またカタログデータの正規化処理が行われて,形式変換される(ステップS115)。この変換では文字コードの変換,表記の統一などが行われる。このようにして,所定の共用形式の電子カタログに変換された後,共用カタログデータベース35に格納される(ステップS117)。また,これに加えて,上述したように判別された商品の分類毎に規定された形式に変換され,共用カタログデータベース35に格納される。
【0061】上述したように,カタログ提供者から提供されたカタログデータの処理に人手作業が不要となり,自動的に処理が行われるとともに,更に商品の分類毎に形式を取り決めることにより,商品の分類毎の特徴が失われずに比較的扱いやすく管理することができる。
【0062】次に続くステップS119以降の処理はカタログ利用者が電子カタログを要求して受信するまでの処理である。この処理では,まずカタログ利用者がカタログ利用者装置群5を介してカタログアグリゲータ3に任意の契機でアクセスし,カタログアグリゲータ3に対して電子カタログ要求情報を送信すると,カタログアグリゲータ3は,どのカタログ利用者からのアクセスであるかを判別する(ステップS119)。この結果,カタログ利用者が判別すると,どのような形式に変更するかが決定される。それから,カタログアグリゲータ3は,カタログ利用者からの電子カタログ要求情報に基づき共用カタログデータベース35を検索し,カタログ利用者の電子カタログ要求情報に合った電子カタログデータを共用カタログデータベース35から抽出する(ステップS121)。
【0063】このように共用カタログデータベース35から抽出された電子カタログデータは,カタログ利用者の要求する所望の形式に変換される(ステップS123)。この変換では,表記の加工,文字コードの変換,カタログ利用者の商品分類コードの付与が行われる。それから,更にカタログ利用者用にフォーマット変換が行われる(ステップS125)。このフォーマット変換では,カタログ利用者に合った処理ルール,例えばフォーマットルール,表記ルール,文字コードルール,画像ルールなどの処理ルールを参照して,項目の変換,項目属性の変換,項目構造の変換,ファイル形式の変換などの適切な変換処理が行われ,カタログ利用者の要求する所望の形式で電子カタログに変換される。また,この変換に加えて,商品の分類毎に規定された形式で格納されている共用カタログデータベース35から必要な電子カタログデータが抽出され,カタログ利用者の要求する形式に変換される。
【0064】上述したように変換された電子カタログデータは,カタログアグリゲータ3からカタログ利用者装置群5に送信され(ステップS127),カタログ利用者装置群5で受信され(ステップS129),カタログ利用者装置群5に自動的に挿入される(ステップS131)。
【0065】上述したように,カタログ利用者から要求される電子カタログデータの処理が完全に自動的に行われて,人手作業が不要となるとともに,更に商品の分類毎に取り決められた形式で格納された電子カタログデータを利用することにより,商品の分類毎の特徴が失われずに比較的扱いやすく処理することができる。」
・「【0077】【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,カタログ提供者からの電子カタログデータを所定の共用形式に加工して,電子カタログデータを格納し,カタログ利用者からのカタログ要求情報に対応する電子カタログデータを電子カタログデータベースから抽出して,カタログ要求情報で指定の形式の電子カタログに変換し,ネットワークを介してカタログ利用者に配信するので,従来カタログ提供者が各カタログ利用者毎に行っていたカタログの抽出作業,カタログ利用者の要求形式への編集作業,カタログ利用者の要求方式での配信作業が不要とするとともに,また各カタログ利用者が各カタログ提供者毎に行っていたカタログの受け取り作業,カタログ利用者のシステムへの反映作業が不要となり,効率化および迅速化を図ることができる。」

イ 引用例には,上記記載から,以下の技術的事項が記載されているということができる。
(ア)引用例に記載された技術は,複数のカタログ提供者から商品に関するカタログ情報をネットワークを介して受け取り,この受け取った複数のカタログ情報を集積し,複数のカタログ利用者にネットワークを介して配信する電子カタログアグリゲーションシステムに関するものである(【0001】,【0026】)。
(イ)当該システムは,カタログ情報を提供するカタログ提供者装置群1,当該カタログ提供者装置群1にネットワークを介して接続され,カタログ提供者装置群1から複数のカタログ情報を集積するカタログアグリゲータ3,及び当該カタログアグリゲータ3にネットワークを介して接続され,カタログアグリゲータ3から電子カタログを受け取って利用する,複数のカタログ利用者装置5a,5b,5c,5dからなるカタログ利用者装置群5等によって構成されている(【0026】)。
さらに,カタログアグリゲータ3は,企業情報等に基づきカタログ提供者およびカタログ利用者の入会審査などを行うとともに,カタログ利用者の入退会の管理を含む管理を行う機能を有し,カタログ利用者には企業が含まれる(【0033】)。
(ウ)上記電子カタログアグリゲーションシステムにおいて,カタログ提供者からのカタログ情報の収集,加工,共用カタログデータベース35への格納,カタログ利用者への提供等の処理は,次のように実行される。【(0055】)
a カタログ提供者装置群1から抽出されたカタログデータは,カタログアグリゲータ3に送信される(【0056】)。
b カタログアグリゲータ3は,カタログデータを受信すると,カタログデータを解析し,カタログデータを共用カタログデータベース35に格納するための所定の共用形式に加工するために必要な変換処理を分析し,処理の必要な項目を抽出し(【0058】),カタログデータが対象とする商品の分類を判別して共用商品分類コードを付与し(【0059】),さらに,ファイル形式,項目,項目属性,項目構造等を所定の共用フォーマットに変換するとともに,文字コード,表記等についての正規化処理を行い,カタログデータを所定の共用形式の電子カタログに変換した後,共用カタログデータベース35に格納する(【0060】)。
c カタログ利用者がカタログアグリゲータ3にアクセスし,電子カタログ要求情報を送信すると,カタログアグリゲータ3は,当該電子カタログ要求情報に基づき共用カタログデータベース35を検索し,電子カタログ要求情報に合った電子カタログデータを抽出する(【0062】)。
d 抽出された電子カタログデータは,表記の加工,文字コードの変換,カタログ利用者の商品分類コードの付与が行われ,さらに,カタログ利用者の処理ルールに基づいて,項目,項目属性,項目構造,ファイル形式等の変換,すなわちカタログ利用者用のフォーマット変換処理が行われ,カタログ利用者が要求する形式に変換された後(【0063】),カタログアグリゲータ3からカタログ利用者に送信される(【0064】)。

ウ これらのことから,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子カタログアグリゲーションシステムによって,複数のカタログ提供者から商品に関するカタログ情報を受け取り,この受け取った複数のカタログ情報を集積し,複数のカタログ利用者に配信する方法であって,
電子カタログアグリゲーションシステムは,カタログ情報を提供するカタログ提供者装置群,カタログ提供者装置群から複数のカタログ情報を集積するカタログアグリゲータ,及びカタログアグリゲータから電子カタログを受け取って利用する複数のカタログ利用者装置からなるカタログ利用者装置群を含んで構成され,
カタログアグリゲータは,カタログ利用者の入退会を管理し,カタログ利用者には企業が含まれ,
カタログ提供者装置群から抽出されたカタログデータは,カタログアグリゲータに送信され,
カタログアグリゲータは,受信したカタログデータに対し,共用商品分類コードの付与,ファイル形式,項目,項目属性,項目構造等の所定の共用フォーマットへの変換,文字コード,表記等の正規化処理を行い,カタログデータを所定の共用形式の電子カタログに変換した後,共用カタログデータベースに格納し,
カタログアグリゲータは,カタログ利用者から電子カタログ要求情報を受信すると,電子カタログ要求情報に基づいて共用カタログデータベースを検索し,電子カタログ要求情報に合った電子カタログデータを抽出し,カタログ利用者が要求する形式に変換した後,カタログ利用者に送信する,
方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,「電子カタログアグリゲーションシステムによって,複数のカタログ提供者から商品に関するカタログ情報を受け取り,この受け取った複数のカタログ情報を集積し,複数のカタログ利用者に配信する方法」であって,前記「電子カタログアグリゲーションシステム」は,「カタログ情報を提供するカタログ提供者装置群,カタログ提供者装置群から複数のカタログ情報を集積するカタログアグリゲータ,及びカタログアグリゲータから電子カタログを受け取って利用する複数のカタログ利用者装置からなるカタログ利用者装置群」を含むものである。ここで,「カタログアグリゲータ」は,カタログ情報を集積し,カタログ利用者に提供するものであり,また,「カタログ利用者装置」は,カタログアグリゲータから電子カタログを受け取って利用するものであり,いずれもコンピュータシステムによって構成されていることは自明であるから,それぞれ本願補正発明の「カタログ情報提供業者側のコンピュータシステム」及び「クライアント側のコンピュータシステム」に相当する。
また,引用発明の「カタログ利用者」は,カタログアグリゲータによって,その入退会が管理されていることから,電子カタログアグリゲーションシステムにおける,カタログアグリゲータ側の「取引相手」であって,「クライアント」ということができる。
したがって,本願補正発明と引用発明とは,「カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,カタログ情報提供者側の取引相手であるクライアント側のコンピュータシステムとを利用して前記クライアントにカタログ情報を提供するカタログ情報の提供方法」である点で共通する。

(イ)引用発明は,「カタログ提供者装置群から抽出されたカタログデータは,カタログアグリゲータに送信され,カタログアグリゲータは,受信したカタログデータに対し,共用商品分類コードの付与,ファイル形式,項目,項目属性,項目構造等の所定の共用フォーマットへの変換,文字コード,表記等の正規化処理を行い,カタログデータを所定の共用形式の電子カタログに変換した後,共用カタログデータベースに格納し,カタログアグリゲータは,カタログ利用者から電子カタログ要求情報を受信すると,電子カタログ要求情報に基づいて共用カタログデータベースを検索し,電子カタログ要求情報に合った電子カタログデータを抽出し,カタログ利用者が要求する形式に変換した後,カタログ利用者に送信する」ものであって,
a カタログを収集し,共用カタログデータベースに格納すること,
b 共用カタログデータベースに格納されるデータは,「共用商品分類コードの付与,ファイル形式,項目,項目属性,項目構造等の所定の共用フォーマットへの変換,文字コード,表記等の正規化処理を行い,カタログデータを所定の共用形式の電子カタログに変換した」電子カタログデータであって,カタログ利用者からの要求に基づいて検索し,要求に合ったデータを抽出することができるのであるから,「検索」の技術分野における技術常識から,「予め決定された第一のデータを抽出し,予め決定され前記第一のデータが共通する第二のデータを抽出」する検索方法,及び共用カタログデータベースに,「カタログ,第一のデータ及び第二のデータを相互に関連付けたカタログ情報」が登録された構成が含まれること,
c カタログ利用者から受信した電子カタログ要求情報に基づいて抽出されたデータを,カタログ利用者が要求する形式に変換した後,カタログ利用者に送信することから,「必要に応じて,クライアントの希望する形態に変換」するものであること,
は,いずれも明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明とは,「カタログを収集するステップ,収集したカタログをカタログ情報提供業者に集約するステップ,カタログの中から,第一のデータ及び前記第一のデータが共通する第二のデータを抽出するステップ,前記カタログ,前記第一のデータ及び前記第二のデータを相互に関連付けたカタログ情報としてデータベースに登録するステップ,及び前記データベースに登録された前記カタログ情報を,必要に応じて,前記クライアントの希望する形態に変換して前記クライアントに提供するステップ」を有する点で共通する。

イ 以上のことから,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,前記カタログ情報提供者側の取引相手であるクライアント側のコンピュータシステムとを利用して前記クライアントにカタログ情報を提供するカタログ情報の提供方法であって,
カタログを収集するステップ,
収集したカタログをカタログ情報提供業者に集約するステップ,
カタログの中から,予め決定された第一のデータを抽出し,予め決定され前記第一のデータが共通する第二のデータを抽出するステップ,
前記カタログ,前記第一のデータ及び前記第二のデータを相互に関連付けたカタログ情報としてデータベースに登録するステップ,及び
前記データベースに登録された前記カタログ情報を,必要に応じて,前記クライアントの希望する形態に変換して前記クライアントに提供するステップ
を有するカタログ情報の提供方法。
【相違点1】
本願補正発明は,「クライアント」が「特定のクライアント」であって,「特定のクライアント」にカタログ情報を提供すること,「特定のクライアントが扱う特定製品のカタログ」を収集すること,第一のデータが「カタログを利用する特定のクライアントが必要とし,かつ,カタログを特定するのに必要なデータ」であり,また第二のデータが「カタログを利用する特定のクライアントが必要とするデータ」であること,及びカタログ情報を「特定のクライアント」の希望する形態に変換することが特定されているのに対し,引用発明は,「クライアント」が「特定のクライアント」であることは特定されておらず,また,「収集するカタログ」,「第一のデータ」,「第二のデータ」,「カタログ情報を変換する形態」について,前記本願補正発明のような特定がされていない点。
【相違点2】
本願補正発明は,「カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,前記カタログ情報提供者側の取引相手であるクライアント側のコンピュータシステムとのみ」を利用してクライアントにカタログ情報を提供することが特定されているのに対し,引用発明は,当該構成は特定されていない点。
【相違点3】
本願補正発明は,カタログを「国内外から」収集するのに対し,引用発明は,当該構成は特定されていない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明は,「カタログアグリゲータは,カタログ利用者の入退会を管理し,カタログ利用者には企業が含まれ」ることから,カタログ情報の提供先は,不特定多数の者ではなく,管理されたクライアント,すなわち「特定のクライアント」にほかならず,さらに,カタログ利用者には「企業」が含まれることからすれば,企業活動における技術常識から,引用発明のシステムを,クライアント企業が扱う特定製品のカタログ収集に利用する利用形態が含まれることは,容易に想到し得ることである。
また,上記のとおり,引用発明は,企業を含む特定のクライアントを対象としていること,共用カタログデータベースに格納された「電子カタログデータ」は,「共用商品分類コードの付与,ファイル形式,項目,項目属性,項目構造等の所定の共用フォーマットへの変換,文字コード,表記等の正規化処理」がなされたものであり,また,カタログ利用者からの電子カタログ要求情報に基づいて共用カタログデータベースを検索し,電子カタログ要求情報に合った電子カタログデータを抽出し,カタログ利用者が要求する形式に変換した後,カタログ利用者に送信する」ものであること,及び検索の技術分野における技術常識から,検索に用いられる第一のデータ及び第一のデータが共通する第二のデータとして,「カタログ利用者が必要とし,かつ,カタログを特定するのに必要なデータ」あるいは「カタログを利用する特定のクライアントが必要とするデータ」を選択することは,当業者にとって自明のことである。
さらに,前記のとおり,引用発明のカタログ利用者は「特定のクライアント」ということができるから,抽出された電子カタログデータを「カタログ利用者が要求する形式」に変換することは,「特定のクライアントが希望する形態」に変換することにほかならない。
以上のとおりであるから,相違点1は,引用発明及び技術常識から当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
本願補正発明における,相違点2に係る構成,特に「のみ」と表現したことによる技術的意義は,発明特定事項からは明確でなく,また明細書及び図面の記載を参照しても,「のみ」の技術的意義を裏付ける又は示唆する事項は,実質的に記載されていない。そこで,審査経緯を参酌すれば,特許請求の範囲の記載における「のみ」の表現は,平成23年3月25日付けの手続補正において特定された表現であり,同日に提出された意見書を参照すれば,「本発明のシステムは,自牡が扱っている特定商品のカタログを収集して,自社内又は同族グループ,すなわち,相互に取引関係にあるなど信用関係にある利用者とのみで,カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと利用者側のコンピュータシステムを利用してカタログ情報を共有しています。」と記載されていることからして,カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムが「特定のクライアント」を対象としていることを特定するための表現と解される。
そうすると,上記アのとおり,引用発明も,特定のクライアントを対象としているということができるから,相違点2は,実質的な相違点ではない。
なお,仮に「のみ」の通常の意義から,本願補正発明のシステムが,カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,前記カタログ情報提供者側の取引相手である特定のクライアント側のコンピュータシステムとから構成され,他のシステムは含まないと解釈しても,引用発明は,カタログ情報が一旦収集されれば,共用カタログデータベースを含むカタログアグリゲータと管理されたカタログ利用者装置とのみによって,電子カタログデータを抽出し,カタログ利用者に送信することができるのであるから,引用発明において,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
相違点2は,格別のことではない。

ウ 相違点3について
引用発明において,対象とする製品のカタログが国内外に存在する場合,カタログを「国内外から」収集することは,当業者が必要に応じて適宜設計できる事項である。
相違点3は,格別のことではない。

エ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び技術常識から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年7月19日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし20に係る発明は,平成23年3月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,本願補正発明の補正前の発明である請求項10に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年3月25日付けの手続補正書によって補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その請求項10に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「【請求項10】 カタログ情報提供業者側のコンピュータシステムと,前記カタログ情報提供者側の取引相手であるクライアント側のコンピュータシステムとのみを利用して前記クライアントにカタログ情報を提供するカタログ情報の提供方法であって,(i)国内外から特定商品のカタログを収集するステップ(ii)収集した前記カタログをカタログ情報提供業者に集約するステップ(iii)収集したカタログの中から必要なデータを抜き出すステップ(iv)前記データを前記カタログと関連付けたカタログ情報としてデータベースに登録するステップ(v)前記データベースに登録された前記カタログ情報を,必要に応じて,前記クライアントの希望する形態に変換して前記クライアントに提供するステップを有することを特徴とするカタログ情報の提供方法。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,前記第2の[理由]1(2)で検討した限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願の請求項10に記載された発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-27 
出願番号 特願2001-266266(P2001-266266)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純岡北 有平  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 井上 信一
須田 勝巳
発明の名称 カタログ情報の提供システム、提供方法及びプログラム  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 高島 敏郎  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 高島 敏郎  

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