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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F15B
管理番号 1267031
判定請求番号 判定2012-600022  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-01-25 
種別 判定 
判定請求日 2012-07-17 
確定日 2012-11-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3919399号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「油圧回路」は,特許第3919399号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 I.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は,イ号物図面及びイ号物説明書に示す油圧回路(以下「イ号物件」という。)は,請求人所有の特許第3919399号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

II.本件発明
本件判定請求では,請求人は本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)についての判定を求めており,本件発明の構成,目的及び効果は,明細書及び図面の記載からみて以下のとおりである。

1.本件発明の構成
本件発明の構成を分説すると,次のようになる(以下「構成要件A-1」などという。)。
A-1.ポンプと,ポンプに連通したコントロールバルブと,このコントロールバルブと負荷保持管路を介して接続したパイロットチェック弁と,圧力室をパイロットチェック弁に接続したシリンダ装置とを備え,
A-2.上記パイロットチェック弁にはシリンダ装置の上記圧力室に連通する背圧室を設ける一方,
A-3.上記コントロールバルブは,中立位置にあるとき,シリンダ装置をポンプから遮断し,上昇位置に切換わったとき,シリンダ装置の圧力室にポンプの吐出油を導いて負荷を上昇させ,また,下降位置に切換わったとき,シリンダ装置の圧力室の作動油を排出して負荷を下降させる構成にし,さらに,
A-4.上記コントロールバルブを上昇位置あるいは下降位置に切換えるためのパイロット圧を制御するパイロット圧制御手段を設け,
A-5.パイロットチェック弁の背圧室の圧力がシリンダ装置の圧力室の負荷圧となっているとき,このパイロットチェック弁によってシリンダ装置の圧力室側からの流れを阻止し,パイロットチェック弁の背圧室の作動油を排出したとき,このパイロットチェック弁が開いてシリンダ装置の圧力室側からの流れを許容する構成にした油圧制御回路において,
B.シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路と,
C.ノーマル状態で分岐通路を遮断し,切換わった状態で分岐通路を開くとともに絞りを介してシリンダ装置の圧力室と負荷保持管路とを連通する第1切換手段と,
D.ノーマル状態で,パイロットチェック弁の背圧室の圧力をシリンダ装置の圧力室の負荷圧に維持し,切換わった状態で背圧室の作動油を排出する第2切換手段とを備え,
E-1.これら第1,2切換手段を,コントロールバルブを下降位置に切換えるためのパイロット圧によって切換える構成とし,しかも,
E-2.そのパイロット圧が所定圧以下であれば,第1切換手段だけが切換わり,このパイロット圧が所定圧を超えれば,第1切換手段とともに第2切換手段も切換わる構成にした
F.ことを特徴とする油圧制御回路。

なお,構成要件Cとして,請求項1には,「圧力室を負荷保持管路とを連通する」と記載されているが,これは,本件特許明細書の段落【0025】,【0058】,及び【0071】等の記載から,「圧力室と負荷保持管路とを連通する」の誤記と認められるので,本件発明を上記のように認定した。

2.本件発明の目的及び効果
本件特許明細書の記載によれば,本件発明は,「油圧ショベルでクレーン作業を行ない,目的物を下降させているようなときに,万が一負荷保持管路5が破裂等したとしても,その目的物が急下降するのを防ぐことのできる油圧制御回路を提供すること」(本件特許明細書の段落【0011】参照)を目的とし,「第1の発明によれば,コントロールバルブを下降位置に切換えると,第1,2切換手段を切換えることができる。ここで,コントロールバルブを下降位置に切換えるためのパイロット圧が所定圧以下であれば,第1切換手段だけが切換わる。そして,第2切換手段がノーマル状態にあり,第1切換手段だけが切換われば,パイロットチェック弁によってシリンダ装置の圧力室側からの流れを阻止するとともに,シリンダ装置の圧力室の作動油を,分岐通路から絞りを介して排出することができる。この状態では,万が一,コントロールバルブとパイロットチェック弁との間の負荷保持管路が破裂等したとしても,その破裂部分よりも上流側に絞りがあるので,シリンダ装置の圧力室の作動油が,負荷保持管路の破裂部分からいっきに排出されるのを防ぐことができる。したがって,負荷が急下降するのを防止することができる。」(本件特許明細書の段落【0074】参照)という効果を奏するものである。

III.イ号物件
これに対し,イ号物図面及びイ号物説明書の記載によれば,イ号物件の構成を本件発明の構成要件の分説と対応するよう分説すると,次のとおりのものと認められる(以下,「構成a-1などという。)。

a-1.ポンプ1と,ポンプ1に連通し,ポンプ1からシリンダ装置3に対する作動油の給排を制御するコントロールバルブ2と,負荷保持管路5を介してコントロールバルブ2と接続されると共に圧力室側管路6を介してシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aと接続されたパイロットチェック弁7と,を備え,
a-2.パイロットチェック弁7は,弁部材13の背面に設けられた背圧室14を有し,背圧室14には弁部材13に形成された連通路28を通じて反ロッド側圧力室3aの作動油が導かれ,
a-3.コントロールバルブ2は,中立位置cにあるときには,シリンダ装置3をポンプ1から遮断し,上昇位置aに切換わったときには,シリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aにポンプ1から作動油を導いて負荷Wを上昇させ,下降位置bに切換わったときには,反ロッド側圧力室3aの作動油を排出して負荷Wを下降させ,
a-4.コントロールバルブ2を上昇位置a又は下降位置bに切換えるためのパイロット圧を制御するパイロットバルブ4を備え,
a-5.パイロットチェック弁7の背圧室14が反ロッド側圧力室3aの圧力に維持されているときには,パイロットチェック弁7は逆止弁としての機能を発揮し,反ロッド側圧力室3aからの作動油の流れが阻止され,パイロットチェック弁7の背圧室14の作動油が排出されたときには,パイロットチェック弁7の逆止弁としての機能が解除され,反ロッド側圧力室3aからの作動油の流れが許容される油圧回路において,
b.シリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aとパイロットチェック弁7とをつなぐ圧力室側管路6に,パイロットチェック弁7の弁部材13に形成された環状溝9を介して連通する通路10と,
c.ノーマル位置xで負荷保持管路5に対して通路10を遮断し,通路10をパイロット通路8に連通し,第1段階位置yで負荷保持管路5に対して通路10を開き,通路10をパイロット通路8に対し遮断するとともに絞り20を介してシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aと負荷保持管路5とを連通する第1供給ポート51の連通を切換える切換弁19と,
d.ノーマル位置xで負荷保持管路5に対してパイロット通路8を遮断し,パイロット通路8を通路10に連通し,第1段階位置yで負荷保持管路5に対してパイロット通路8を遮断し,パイロット通路8を通路10に対し遮断し,第2段階位置zで負荷保持管路5に対してパイロット通路8を開いて負荷保持管路5に連通して,ノーマル位置xと第1段階位置yとでパイロットチェック弁7の背圧室14の圧力をシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aの負荷圧に維持し,第2段階位置zで背圧室14の作動油をパイロット通路8を通じて排出する第2供給ポート52の連通を切換える切換弁19と,を備え,
e-1.切換弁19は,コントロールバルブ2を下降位置bに切換えるためのパイロット圧がパイロット室19aに供給されることによって切換えられ,
e-2.パイロット室19aに供給されるパイロット圧が所定圧以下であれば,切換弁19は第1段階位置yに切換わり,反ロッド側圧力室3aの作動油が通路10を通じて負荷保持管路5へ排出され,絞り20によって作動油の流れが絞られ,パイロット室19aに供給されるパイロット圧が所定圧を超えれば,切換弁19は第2段階位置zに切換わり,通路10と負荷保持管路5とは絞りを介さずに連通されると共に,背圧室14の作動油がパイロット通路8を通じて負荷保持管路5へ排出される,
f.油圧回路。

IV.対比及び判断
1.争いのない点について
(1)構成要件A-1について
本件発明の構成要件A-1とイ号物件の構成a-1とを対比すると,後者の「ポンプ1」は前者の「ポンプ」に相当し,以下同様に,「ポンプ1に連通し,ポンプ1からシリンダ装置3に対する作動油の給排を制御する」態様は「ポンプに連通した」態様に,「コントロールバルブ2」は「コントロールバルブ」に,「負荷保持管路5」は「負荷保持管路」に,「パイロットチェック弁7」は「パイロットチェック弁」に,「反ロッド側圧力室3a」は「圧力室」に,「シリンダ装置3」は「シリンダ装置」に,「負荷保持管路5を介してコントロールバルブ2と接続されると共に圧力室側管路6を介してシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aと接続されたパイロットチェック弁7」を備える態様は「このコントロールバルブと負荷保持管路を介して接続したパイロットチェック弁と,圧力室をパイロットチェック弁に接続したシリンダ装置と」を備えた態様に相当している。
したがって,構成a-1は構成要件A-1を充足する。

(2)構成要件A-2について
本件発明の構成要件A-2とイ号物件の構成a-2とを対比すると,後者の「背圧室14」は前者の「背圧室」に相当し,後者の「連通路28を通じて」「作動油が導かれ」る態様は前者の「連通する」態様に相当するから,後者の「背圧室14には弁部材13に形成された連通路28を通じて反ロッド側圧力室3aの作動油が導かれ」る態様は,前者の「シリンダ装置の圧力室に連通する背圧室を設ける」態様に相当する。
したがって,構成a-2は構成要件A-2を充足する。

(3)構成要件A-3について
本件発明の構成要件A-3とイ号物件の構成a-3とを対比すると,後者の「中立位置c」は前者の「中立位置」に相当し,以下同様に,「上昇位置a」は「上昇位置」に,「ポンプ1から作動油を導」く態様は「ポンプの吐出油を導」く態様に,「負荷W」は「負荷」に,「下降位置b」は「下降位置」に,それぞれ相当する。
したがって,構成a-3は構成要件A-3を充足する。

(4)構成要件A-4について
本件発明の構成要件A-4とイ号物件の構成a-4とを対比すると,後者の「パイロットバルブ4」は前者の「パイロット圧制御手段」に相当し,後者の「備え」た態様は前者の「設け」た態様に相当する。
したがって,構成a-4は構成要件A-4を充足する。

(5)構成要件A-5について
本件発明の構成要件A-5とイ号物件の構成a-5とを対比すると,後者の「背圧室14が反ロッド側圧力室3aの圧力に維持されているとき」は前者の「背圧室の圧力がシリンダ装置の圧力室の負荷圧となっているとき」に相当し,以下同様に,「パイロットチェック弁7は逆止弁としての機能を発揮し,反ロッド側圧力室3aからの作動油の流れが阻止され」る態様は「このパイロットチェック弁によってシリンダ装置の圧力室側からの流れを阻止」する態様に,「背圧室14の作動油が排出されたとき」は「背圧室の作動油を排出したとき」に,「パイロットチェック弁の逆止弁としての機能が解除され」た態様は「このパイロットチェック弁が開い」た態様に,「反ロッド側圧力室3aからの作動油の流れが許容される」態様は「シリンダ装置の圧力室側からの流れを許容する構成にした」態様に,「油圧回路」は「油圧制御回路」に,それぞれ相当する。
したがって,構成a-5は構成要件A-5を充足する。

(6)構成要件Dについて
本件発明の構成要件Dとイ号物件の構成dとを対比すると,後者の「ノーマル位置xと第1段階位置yとでパイロットチェック弁7の背圧室14の圧力をシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aの負荷圧に維持し」た態様は前者の「ノーマル状態で,パイロットチェック弁の背圧室の圧力をシリンダ装置の圧力室の負荷圧に維持し」た態様に相当し,以下同様に,「第2段階位置zで背圧室14の作動油をパイロット通路8を通じて排出する」態様は「切換わった状態で背圧室の作動油を排出する」態様に,「第2供給ポート52の連通を切換える切換弁19」は「第2切換手段」に相当する。
したがって,構成dは構成要件Dを充足する。

(7)構成要件E-1について
本件発明の構成要件E-1とイ号物件の構成e-1とを対比する。
まず,後述のとおり,イ号物件の構成cにおける「第1供給ポート51の連通を切換える切換弁19」が本件発明の構成要件Cにおける「第1切換手段」に相当する。
そうすると,イ号物件の構成e-1の「切換弁19」は,本件発明の構成要件E-1の「第1,2切換手段」に相当し,後者の「切換弁19は,コントロールバルブ2を下降位置bに切換えるためのパイロット圧がパイロット室19aに供給されることによって切換えられ」る態様は,前者の「これら第1,2切換手段を,コントロールバルブを下降位置に切換えるためのパイロット圧によって切換える構成とし」た態様に相当する。
したがって,構成e-1は構成要件E-1を充足する。

(8)構成要件Fについて
本件発明の構成要件Fとイ号物件の構成fとを対比すると,後者の「油圧回路」は前者の「油圧制御回路」に相当する。
したがって,構成fは構成要件Fを充足する。

以上のとおり,イ号物件の各構成a-1ないしa-5,構成d,構成e-1及び構成fは,それぞれ本件発明の構成要件A-1ないしA-5,構成D,構成E-1及び構成Fを充足しており,これらの点について,当事者間に争いはない。

2.争点1(構成要件Bの充足性)について
本件発明の構成要件Bとイ号物件の構成bとを対比すると,後者における「通路10」は前者における「分岐通路」に相当し,後者の「連通する」態様は前者の「接続した」態様に相当している。
また,両者は,文言上違いがあり,構成要件Bが「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」としているのに対し,構成bが「シリンダ装置(シリンダ装置3)の圧力室(反ロッド側圧力室3a)とパイロットチェック弁(パイロットチェック弁7)とをつなぐ圧力室側管路6にパイロットチェック弁7の弁部材13に形成された環状溝9を介して接続(連通)する通路10」としている点で相違している。
そこで,上記相違点について検討する。
まず,本件発明の構成要件Bの技術的意味について検討するに,本件発明の分岐通路は,第1切換手段が切換わった際に,パイロットチェック弁によってシリンダ装置の圧力室からの流れが阻止された状態で,すなわちパイロットチェック弁の弁部材13が弁座16に着座した状態の逆止弁機能部を通さずにシリンダ装置の圧力室の作動油を負荷保持管路へ導く機能を有するものである。
次に,イ号物件について検討するに,イ号物件では,切換弁19がノーマル位置xから第1段階位置yに切り換わった際には,反ロッド側圧力室3aの作動油が通路10を通じて負荷保持管路5へ排出され,その際に絞り20によって作動油の流れが絞られて負荷Wが低速で下降する。第1段階位置yでは,パイロットチェック弁7が逆止弁としての機能を維持するため,通路10は反ロッド側圧力室3aの作動油を圧力室側管路6からパイロットチェック弁7の逆止弁機能部を通さずに負荷保持管路5に導く。
ここで,通路10は,弁部材13に形成された環状溝9を介して,シリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aとパイロットチェック弁7とをつなぐ圧力室側管路6に連通している。つまり,第1段階位置yでは,反ロッド側圧力室3aの作動油は,パイロットチェック弁7の逆止弁機能部を通さずに,圧力室側管路6から環状溝9と通路10を通じて負荷保持管路5に導かれる。
このことから,イ号物件の通路10は,第1切換手段が切換わった際に,パイロットチェック弁によってシリンダ装置の圧力室からの流れが阻止された状態で,シリンダ装置の圧力室の作動油をパイロットチェック弁の逆止弁機能部を通さずに負荷保持管路へ導く機能を有し,本件発明の分岐通路18と同様の機能を有しているといえる。

ところで,本件特許の出願経過を参酌すると,出願当初の請求項1における「シリンダ装置の圧力室を,コントロールバルブとパイロットチェック弁との間の負荷保持管路に接続する分岐通路」なる記載を,その後の拒絶理由通知に対する応答時に提出した平成18年7月26日付け手続補正書によって「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」なる記載に変更する補正をしている。なお,補正後の記載が現状の構成要件Bの内容である。
そうすると,補正前の「分岐通路」は,「シリンダ装置の圧力室」を「負荷保持管路」に接続する通路として規定されており,「分岐通路」をどこから分岐させるかということについて何ら規定するものではない。ところが,補正後では,「分岐通路」の分岐する位置に着眼し,この点を「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間」と限定している。
この際,請求項1に対して拒絶理由が何ら通知されておらず,前記補正は拒絶理由を回避するためのものではないが,たとえ自主的に行った補正であっても,外形的に特許請求の範囲を限定した以上,意識的限定ないし除外に当たるというべきである。
したがって,前記補正は,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」以外の通路を意識的に除外する補正というべきであり,構成要件Bには「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」以外の通路は含まれないと解すべきである。
ここで,イ号物件の構成bを検討するに,イ号物件の「通路10」は,上記のとおりパイロットチェック弁の弁部材13に形成された環状溝9を介してシリンダ装置の圧力室に接続される通路であって,シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続されているとはいえない。
してみると,イ号物件の構成bは,本件発明の構成要件Bを充足しない。

請求人は,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」とは,シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁のシート部(弁部材と弁座の当接部)との間に接続した分岐通路と解釈できる(判定請求書6頁5?11行)旨主張する。
しかし,まず,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(特許法第70条第1項)から,特許請求の範囲に記載のない「シート部」なる構成を付加して解釈することは認められない。
また,仮に,請求人の上記解釈を採用した場合,本件特許明細書(段落【0034】,【0035】)及び図2の記載からすると,「通路25」が「シリンダ装置3」の「ボトム側圧力室3a(圧力室)」に連通するから,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁のシート部との間」には,「第1ボディ23」に形成されている「摺動孔26」や弁部材13の側部に形成された「環状溝」も含まれることになるところ,「摺動孔26」や「環状溝」は「パイロットチェック弁7」の一部であることは明らかであるから,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間」には,それらの間にない「摺動孔26」や「環状溝」まで含まれることとなり,矛盾が生じるので,請求人の上記主張を採用することはできない。
さらに請求人は,本件図2に示す第1実施例ではパイロットチェック弁7の弁部材13に形成された環状溝をその構成の一部としていることからして,イ号物件のようなパイロットチェック弁7そのものに分岐通路18の一部が形成される構成を除外するものではない(判定請求書7頁6?17行)旨,及び,本件図2とイ号物図2の断面図に示された分岐通路の構造は同一であるにもかかわらず,本件図1とイ号物図1の油圧回路図に示された分岐通路の線は相違しているのは,油圧回路をどのように描くかの単なる表現上の違いに過ぎないのであって,本件図1では,分岐通路18を流れる作動油がパイロットチェック弁7をバイパスすることをわかり易く表現するために分岐通路18と弁部材13を明確に分けて表現しているのに対して,イ号物図1では,分岐通路18をその構造に合わせて表現しており,両者の分岐通路の線の違いは単なる油圧回路の表現上の違いに過ぎない(判定請求書7頁18?25行)旨,主張する。
しかし,前述したとおり,出願当初の請求項1には「シリンダ装置の圧力室を,コントロールバルブとパイロットチェック弁との間の負荷保持管路に接続する分岐通路」であった記載を,その後に「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」と請求人・出願人・権利者自ら自覚的に補正し,この記載でもって特許が付与されており,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」自体の文言にはなんら疑義を生じるようなところがなく,これを普通の意味に解すのが当然である以上,仮に請求人が主張するように,油圧回路図では,その通路が同じ機能を達成する際に通路の接続点を製品と異なる位置にて描く場合があるとしても,請求人の上記主張を採用することはできない。

3.争点2(構成要件Cの充足性)について
本件発明の構成要件Cとイ号物件の構成cとを対比すると,後者の「ノーマル位置x」は前者の「ノーマル状態」に相当し,以下同様に,「第1段階位置yで負荷保持管路5に対して通路10を開き,通路10をパイロット通路8に対し遮断するとともに絞り20を介してシリンダ装置3の反ロッド側圧力室3aと負荷保持管路5とを連通する」態様は「切換わった状態で分岐通路を開くとともに絞りを介してシリンダ装置の圧力室と負荷保持管路とを連通する」態様に,「第1供給ポート51の連通を切換える切換弁19」は「第1切換手段」に,それぞれ相当する。
次に,本件発明の構成要件Cとイ号物件の構成cとは,前者が「ノーマル状態で分岐通路を遮断し」ているのに対し,後者がノーマル位置x(ノーマル状態)で負荷保持管路5に対して通路10を遮断するものの,通路10をパイロット通路8に連通している点で相違する。
以下,上記相違点について検討する。
まず,本件発明の構成要件Cの「ノーマル状態で分岐通路を遮断し」における「分岐通路を遮断し」の意味は,被請求人が主張するように「分岐通路を全ての通路や室と遮断する」意味と,ノーマル状態と切換わった状態との連通関係を対比した文脈を考慮し「(シリンダ装置の圧力室に連通する)分岐通路を負荷保持管路と遮断する」意味との2通りの解釈が考えられ,請求項の記載からだけでは明確ではない。
そこで,発明の詳細な説明を参酌して検討すると,本件特許明細書には,段落【0018】に「シリンダ装置3のボトム側圧力室3aとパイロットチェック弁7との間には,分岐通路18を接続している。」,段落【0019】に「上記パイロット通路8と分岐通路18とには,切換弁19を設けている。切換弁19は,遮断位置x,第1連通位置y,第2連通位置zの3つの切換位置を有する。そして,遮断位置xでは,パイロット通路8及び分岐通路18の両方を閉じている。」,段落【0020】に「上記切換弁19は,ノーマル状態で遮断位置xにある。」,段落【0022】に「図1に示すように,コントロールバルブ2が中立位置にあれば,・・・切換弁19が遮断位置xにあるので,・・・負荷Wをしっかりと保持することができる。」と記載されている。
これらの記載から,ノーマル状態で分岐通路を遮断するのは,分岐通路から圧力室3aの作動油が流出しないようにして,負荷Wをしっかりと保持するためであるといえる。そうすると,「分岐通路を遮断」の意味は,少なくとも分岐通路から作動油が流出しないように,分岐通路の流れを遮って止めることを意味していると解される。(このような解釈は,被請求人の主張とも一致する。)
そして,分岐通路の流れを遮って止めるためには,分岐通路がいずれの通路や室とも切り離されている状態に限らず,他の通路等と連通していても,それにより分岐通路の流れが生じない限り,「分岐通路が遮断」された状態ということができる。
そこで,イ号物件における構成cについて検討してみると,ノーマル位置xにおいて通路10がパイロット通路8に連通しても,通路10からパイロット通路8,パイロットチェック弁7の背圧室14と連通路28を通じて,結局通路10に接続することになり,通路10から外部に流体が流れることはないと解される。そうすると,このような状態も,「分岐通路が遮断」された状態といえるから,結局,イ号物件の構成cは,本件発明の構成要件Cを充足するといえる。

なお,被請求人は,イ号物件では,ノーマル位置xで通路10をパイロット通路8に連通している点に関し,負荷保持管路の破裂により操作レバーを中立位置(ノーマル状態)に戻したとき,シリンダ圧力室が通路10を介して背圧室に連通するので,直ちに背圧室の圧力が立ち上がり即座にパイロットチェック弁が閉じ,パイロットチェック弁の開から閉への応答動作が迅速に行われるため,パイロットチェック弁を経由して作動油が一気に流出することを防止でき,その結果,負荷の急速降下を防止できるという,本件発明では得られない効果を奏することができる(判定請求答弁書11頁16?24行)旨主張するとともに,負荷保持管路が破裂したような事態が生じた場合,作業者は,何はともあれ,まっさきに操作レバーは中立位置に戻す動作をとるのが自然な対応措置であるから,ノーマル状態で通路10と背圧室を連通するとした構成は,作業機械の油圧制御回路における基本構成の一つとして位置付けられる,重要な技術的事項というべく,この構成は本件発明と一線を画することができる有意な差異を示しているというべきである(判定請求答弁書11頁25?30行)旨主張して,イ号物件の構成cは,本件発明の構成要件Cを充足しない(判定請求答弁書12頁6行)旨主張している。
しかしながら,本件発明の「分岐通路が遮断し」の意味は,上記のとおり解すべきであり,イ号物件の構成cも,「ノーマル状態(ノーマル位置x)で分岐通路が遮断し」ていると解し得ることは上記のとおりであるから,イ号物件のノーマル状態と異なる状態(第1段階位置yからノーマル位置xに切換えた状態)における作動態様を根拠として,本件発明との相違をいう被請求人の上記主張は,請求項の記載に基づくものではなく,採用できない。
したがって,イ号物件の構成cは,本件発明の構成要件Cを充足する。

4.争点3(構成要件E-2の充足性)について
構成要件E-2では,第1切換手段及び第2切換手段が切換わることは記載されているが,どのような状態に切換わるかは特定されていない。
そこで,他の構成要件を見ると,構成要件Cで「第1切換手段が切換わった状態」を特定し,構成要件Dで「第2切換手段が切換わった状態」を特定し,構成要件E-1で第1,第2切換手段を切り換えるための構成を特定している。
ところで,本件発明の構成要件CないしE-2は,同一の請求項における構成要件であるから,各構成要件を相互に関連付けて,かつ全体として矛盾のない整合した解釈がなされなければならないことは当然である。
そうすると,構成要件E-2における「第1切換手段だけが切換わ」る態様は,構成要件Cの「第1切換手段が切換わった状態」を指し,構成要件E-2における「第1切換手段とともに第2切換手段も切換わる」態様は,構成要件Cの「第1切換手段が切換わった状態」と構成要件Dの「第2切換手段が切換わった状態」を指すものと解すべきである。
また,このように解釈しても,本件発明の実施例と矛盾するものではない。
そして,構成要件Cに「切換わった状態で分岐通路を開くとともに絞りを介してシリンダ装置の圧力室と負荷保持管路とを連通する第1切換手段」と記載されているから,構成要件E-2の「パイロット圧が所定圧を超えれば,第1切換手段とともに第2切換手段も切換わる構成」における第1切換手段の切換わる構成は,「切換わった状態で分岐通路を開くとともに絞りを介してシリンダ装置の圧力室と負荷保持管路とを連通」する構成と解すべきである。
ここで,イ号物件の構成e-2を見ると,「パイロット圧が所定圧を超えれば,切換弁19は第2段階位置zに切換わり,通路10と負荷保持管路5とは絞りを介さずに連通される」ものであるから,シリンダ装置の圧力室と負荷保持管路とを連通する際に絞りを介していない点で,本件発明の構成要件E-2と相違する。
したがって,イ号物件の構成e-2は,本件発明の構成要件E-2を充足しない。

なお,請求人は,「絞りは,第1切換手段だけが切換わった際に意味をなし,第1切換手段とともに第2切換手段が切換わった際には意味をなさない。・・発明の作用効果や実施例等の本件明細書の記載を参酌して総合的に判断すれば,第1切換手段とともに第2切換手段が切り換わった際に,分岐通路が絞りを介して負荷保持管路を接続されるかどうかは実質的に意味を持たないことは明らかである。このことから,構成要件Cは第1切換手段だけが切り換わった際に参酌される記載であり,第1切換手段とともに第2切換手段が切り換わった際に参酌される記載ではないといえる。」(判定請求書の11頁1?14行)と主張する。
しかし,特許請求の範囲に記載された各構成要件は,相互に関連付けて,かつ相互に矛盾なく解すべきことは上記のとおりであり,しかも,本件の構成要件E-2を上記のように解しても,明細書に開示された実施例となんら矛盾するものでもないから,「絞りは,第1切換手段だけが切換わった際に意味をなし,第1切換手段とともに第2切換手段が切換わった際には意味をなさない」としても,構成要件E-2を請求人の主張するように拡張して解釈することは妥当でない。

請求人は,また,仮に,構成要件E-2の「第1切換手段とともに第2切換手段も切換わる」が,被請求人が主張するように「第2切換手段が切り換わった際には,分岐通路は絞りを介して負荷保持管路に接続される」と解釈されたとしても,イ号物件の構成e-2は本件発明の構成要件E-2を充足するとして,以下のように主張する。すなわち,イ号物図5に示す第2段階位置zの状態において,スプール43のノッチ71aは絞りとして機能していないが,スプール43の第1ランド部71とスリーブ42の第1シート部81との間や,スプール43の環状鍔部70とスリーブ42の第1シート部81との間等は,負荷保持管路5に連通する排出ポート53及び分岐通路18に連通する第1供給ポート51の流路面積と比較して,その流路面積が十分小さいから,反ロッド側圧力室3aから分岐通路18を通じて負荷保持管路5へ排出される作動油の流れを絞る機能を有している。イ号物図3の状態(第1段階位置y)からイ号物図4(さらには図5;第2段階位置z)への変化は,絞りの形態が変化して絞りの開口面積が大きくなったことを示しているに過ぎず,スプール43が作動油の流れを絞っているという点では変化がない。(判定請求書11頁25行?14頁23行)
しかし,本件特許明細書には,段落【0038】に「ノーマル状態から,パイロット室19aにパイロット圧が導かれると,そのパイロット圧がサブスプール42の端面に作用する。したがって,このサブスプール42に押される恰好でスプール32がスプリング38に抗して移動し,ノッチ44を介してポート33とポート34とが連通する。そして,ポート33とポート34とがノッチ44を介して連通するということは,分岐通路18が絞り20を介して負荷保持管路5に連通するということであり,切換弁19が第1連通位置yに切換わったことになる。」,段落【0039】に,「ポート33が,ポート34だけでなく,環状溝45を介してポート35にも連通する。そして,ポート33とポート35とが連通するということは,パイロット通路8が負荷保持管路5に連通するということであり,切換弁19が第2連通位置zにまで切換わったことになる。」と記載されている。
これらの記載と図1及び図2を見ると,切換弁19が第1連通位置yにあるとき,分岐通路18と負荷保持管路5とを連通する通路に介在する絞り20は,ノッチ44が構成し,第2連通位置zにあるとき,パイロット通路8と負荷保持管路5とを連通する通路は,環状溝45が構成していることが明らかである。そして,環状溝45は,図1の対応する個所を見ると,絞りを形成していないことも明らかである。
ところで,本件発明において,第2連通位置zにあるときの環状溝が形成する通路は,イ号物件において,「スプール43の第1ランド部71とスリーブ42の第1シート部81との間や,スプール43の環状鍔部70とスリーブ42の第1シート部81との間が形成する通路」(以下「イ号物件の通路」という。)に相当するものである。
そうすると,本件発明における環状溝45が「絞り」を構成するものでない以上,「イ号物件の通路」も,「絞り」を構成するものとはいえない。
そもそも,スプールのランド部とシート部との間に形成される通路は,切換弁の通路がフルオープンになっている状態において十分に開口しており,「絞り」としての機能を果たすことはあり得ない。したがって,イ号物件における「ノッチ以外の部分」をもって「絞り」であるとする請求人の主張は採用できない。

以上のとおり,イ号物件の構成e-2は,本件発明の構成要件E-2を充足しない。

5.争点4(構成要件CないしE-2を総合したものの充足性)について
被請求人は,「本件発明は,本件図1のような3つの連通位置x,y,z(ノーマル状態,第1切換手段,第2切換手段)を有する1つの切換弁までも包摂して解釈することはできないから,イ号物件のように1つの切換弁で『延長通路』及び背圧室の接続先を切換える油圧制御回路は,本件発明の構成要件C乃至Eを充足しない」旨を主張する。(判定答弁書16頁27行?19頁2行)
しかし,上記1.(6)に記載したとおり,イ号物件における「第2供給ポート52の連通を切換える切換弁19」が本件発明における「第2切換手段」に相当し,上記3.に記載したとおり,イ号物件における「第1供給ポート51の連通を切換える切換弁19」が本件発明における「第1切換手段」に相当する。そして,本件発明の構成要件CないしE-2において,「第1切換手段」と「第2切換手段」とをそれぞれ別個の弁で構成するか,それらを合わせた一つの弁で構成するかについては,特段特定されていない。
そうすると,イ号物件の1つの切換弁が,別個独立の2つの切換弁から構成されていないことをもって,本件発明の「第1切換手段」と「第2切換手段」に相当しない旨の主張は採用できない。
したがって,イ号物件の構成cないしe-2における一つの「切換弁19」は,本件発明の構成要件CないしE-2における「第1切換弁」と「第2切換弁」とを充足する。
ただし,イ号物件の構成e-2が本件発明の構成要件E-2を充足しないことは上記のとおりであるから,結局,イ号物件の構成cないしe-2を総合したものは,全体として,本件発明の構成要件CないしE-2を総合したものを充足しない。

6.本件発明とイ号物件との対比結果
上記1.?5.に示すように,イ号物件の構成b及びe-2は,本件発明の構成要件B及びE-2を充足しない。

V.均等の判断
請求人は,「仮に,イ号物件が本件発明の構成要件E-2を充足していないと判断されたとしても,イ号物件は本件発明の均等の範囲にあるものである。」旨主張する。(判定請求書15頁14行?17頁3行)
そこで,イ号物件が文言上充足しない本件発明の構成要件B及びE-2について,均等の要件を充足するか否かについて検討する。
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日)は,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても,以下の5つの要件を満たす場合には,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であると判示している。
「(1)当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,
(2)当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,
(3)このように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,
(4)対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,
(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない。」

1.構成要件Bについて
上記IV.2.で検討したように,イ号物件の「通路10」は,パイロットチェック弁の弁部材13に形成された環状溝9を介してシリンダ装置の圧力室に接続される通路であって,シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続されているとはいえない。
そして,請求人は,審査過程において,出願当初の請求項1における「シリンダ装置の圧力室を,コントロールバルブとパイロットチェック弁との間の負荷保持管路に接続する分岐通路」なる記載を,その後の拒絶理由通知に対する応答時に提出した平成18年7月26日付け手続補正書によって「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」なる記載に変更する補正をしており,このような補正が,外形的に特許請求の範囲を限定した以上,意識的限定ないし除外に当たることは,上述のとおりである。
したがって,前記補正は,「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」以外の通路を意識的に除外する補正というべきであり,構成要件Bには「シリンダ装置の圧力室とパイロットチェック弁との間に接続した分岐通路」以外の通路は含まれないと解すべきである。
よって,イ号物件は,均等の要件(5)を充足するものとは認められない。

2.構成要件E-2について
イ号物件は,第2切換手段が切り換わった際に,分岐通路が絞りを介して負荷保持管路に接続される構成を,絞りを介さずに接続するように置換したものであるが,絞りをなくして分岐通路と負荷保持管路とを接続するよう改変する必要性ないし動機付けはないと言わざるを得ない。また,そのような構成が周知ないし技術常識であると認めることもできない。したがって,上記のような置換を当業者が容易に想到することができたものとはいえないから,イ号物件は,均等の要件(3)を充足するものとは認められない。

3.まとめ
以上のとおり,イ号物件は,少なくとも均等の要件(3),(5)を充足しないから,均等の要件を欠くものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから,イ号物件は,文言上本件発明の技術的範囲に属さず,また,均等論が適用される余地もないから,イ号物件は,本件発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲

 
判定日 2012-11-16 
出願番号 特願平11-313184
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (F15B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田村 嘉章
槙原 進
登録日 2007-02-23 
登録番号 特許第3919399号(P3919399)
発明の名称 油圧制御回路  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 須藤 淳  
代理人 後藤 政喜  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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