• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1267370
審判番号 不服2011-17258  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-10 
確定日 2012-12-14 
事件の表示 特願2007- 27277「記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-192008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成19年2月6日の出願であって、平成20年3月10日付けで審査請求がなされ、平成23年2月1日付けで拒絶理由通知(同年2月4日発送)がなされ、同年4月5日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年5月9日付けで拒絶査定(同年5月11日謄本送達)がなされ、これに対して、同年8月10日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成23年9月5日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年12月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成24年1月4日発送)がなされ、平成24年3月5日付けで回答書の提出があったものである。

なお、上記平成23年8月10日付けの手続補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的としたものであり、これによって、当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成23年8月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「記憶装置であって、
不揮発的にデータを記憶し、それぞれ着脱可能である複数の記憶モジュールと、
前記複数の記憶モジュールをそれぞれ施錠固定する複数の記憶モジュールロックユニットと、
前記複数の記憶モジュールロックユニットの施錠状態を個別に制御するロック制御部と
を具備し、
前記ロック制御部は、
前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証部と、
前記複数の認証部に接続されて、前記複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認するAND確認回路と、
前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて、前記複数の認証部の全ての認証が確認された際に、該当する記憶モジュールを自動的に取り外すロック解除実行部と、
前記複数の記憶モジュールのうち、読み出し不可能な記憶モジュールの存在を知らせる記憶モジュール故障連絡部と、
前記記憶モジュール故障連絡部と前記AND確認回路とに接続されて、前記複数の認証部の認証結果に関係無く、読み出し不可能な記憶モジュールの取り外しを前記ロック解除実行部に許可するOR確認回路と
を具備し、
前記記憶装置と前記複数の記憶モジュールはそれぞれ、
お互いに接続されてデータを送受信するためのコネクタ
をさらに具備し、
前記ロック解除実行部は、
前記記憶装置から前記複数の記憶モジュールをそれぞれ必要に応じて取り出すために前記記憶装置に接続された複数のバネと、
前記複数の記憶モジュールにそれぞれ接続されて、それぞれ前記複数のバネの反発力を受けるための複数のパットと
をさらに具備し、
前記記憶装置と、前記複数の記憶モジュールのそれぞれとは、データの送受信を仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は前記複数のバネの反発力によって解除される
記憶装置。」

3.先行技術

(1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年2月1日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2005-301605号公報(平成17年10月27日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
本発明は、情報処理装置、セキュリティ管理方法、及びプログラムに関し、特に、少なくとも1つの情報記録媒体を装着可能な情報処理装置、該情報処理装置に適用されるセキュリティ管理方法、及び該セキュリティ管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。」

B 「【0019】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る情報処理装置の外観を示す図である。
【0020】
1は情報処理装置本体、20,30は、該情報処理装置本体1に対して着脱される記録媒体ユニットである。
【0021】
2は、記録媒体ユニット20,30の情報処理装置本体1に対する着脱を制限するための扉である。扉2にはラッチ2-1が設けられ、情報処理装置本体1側にはラッチ2-1と対向する位置に、開口部2-2と電子ロック機構(2-3、図2で図示)とが設けられ、扉2を閉めた状態の時にラッチ2-1が開口部2-2を通して電子ロック機構2-3に嵌合する。
…(中略)…
【0022】
4及び5は、記録媒体ユニット20,30がそれぞれ挿入、装着される記録媒体ユニット駆動ベイユニット(以下「ベイユニット」と略称)であり、挿入スロット4-1,5-1と、記録媒体ユニット20,30を取り出すためのイジェクトSW4-2,5-2とをそれぞれ備えている。イジェクトSW4-2,5-2が操作されると、記録媒体ユニット20,30は、電動排出機構(図示せず)によってそれぞれ排出される。
…(中略)…
【0024】
100はキーボード、110はモニタであり、それぞれ情報処理装置本体1に接続される。システムが立ち上がっている時には、ユーザがモニタ110の画面を見ながら、キーボード100の操作を行い、記録媒体ユニット20,30の初期設定やリモコンIDの登録を行なったり、記録媒体ユニット20,30へのデータ読み書き指示等のデータ処理操作を行なったりする。」

C 「【0026】
図2は、情報処理装置本体1のシステム構成を示すブロック図である。
【0027】
8はメインボードであり、ハードディスク装置の標準インタフェースであるATA(AT Attachment)インタフェースのケーブル10,11を介してベイユニット4,5と接続される。メインボード8は、ベイユニット4,5にそれぞれ装着される記録媒体ユニット20,30とデータの授受を行い、記録媒体ユニット20,30にデータの書き込みや記録媒体ユニット20,30からのデータの読み出しを行う。また、メインボード8にはキーボード100及びモニタ110が接続される。
【0028】
6は制御マイコン(マイクロコンピュータ)ブロックであり、制御線12を介して電子ロック機構2-3が接続され、信号制御ライン(I2C:Inter Integrated Circuit)13,14を介してベイユニット4,5がそれぞれ接続され、通信バス15を介してメインボード8が接続され、また液晶表示部3及び受光部7が接続される。制御マイコンブロック6は、受光部7を介してリモコン50、60、70から扉2の施錠・開錠制御信号をリモコンIDとともに受信し、電子ロック機構2-3を駆動制御する。」

D 「【0100】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0101】
第4の実施の形態の構成は、基本的に第1の実施の形態の構成と同じであるので、第4の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の構成と同一部分には同一の参照符号を付して、第1の実施の形態の説明を流用し、異なる部分だけを説明する。
【0102】
図12は、第4の実施の形態に係る情報処理装置の外観を示す図である。
【0103】
第4の実施の形態では、扉(A)2aが、情報処理装置本体1の挿入スロット4-1及びイジェクトSW4-2を覆う位置に配置されるとともに、扉(B)90が、情報処理装置本体1の挿入スロット5-1及びイジェクトSW5-2を覆う位置に配置され、扉(A)2aと扉(B)90とは互いに独立に動作される。扉90(B)にはラッチ90-1が設けられ、情報処理装置本体1側にはラッチ90-1と対向する位置に、開口部90-2と電子ロック機構(90-3、図13で図示)とが設けられ、扉90を閉めた状態の時にラッチ90-1が開口部90-2を通して電子ロック機構90-3に嵌合する。」

E 「【0104】
図13は、第4の実施の形態における情報処理装置本体1のシステム構成を示すブロック図である。
【0105】
図13に示すシステム構成は、図2に示す第1の実施の形態におけるシステム構成と基本的に同じである。ただし、第4の実施の形態では、制御マイコンブロック6が、制御線16を介して電子ロック機構90-3に接続される。」

F 「【0108】
図15及び図16は、第4の実施の形態における制御マイコンブロック6によって実行されるセキュリティ処理の手順を示すフローチャートである。
…(中略)…
【0120】
ステップS106では、開錠制御信号とともに受光部7で受信したリモコンのIDが、不揮発性メモリ6-1の領域6-1-10に登録されているリモコンIDのいずれかと一致するか否かを判別する。一致するならばステップS107へ進み、一致しないならば本セキュリティ処理を終了する。ここの例では、リモコン(A)50のIDが受信され、領域6-1-3及び領域6-1-4において一致するので、ステップS107へ進む。
【0121】
ステップS107では、受信リモコンIDと一致した登録リモコンIDと対になって登録されている記録媒体ユニットのIDが、ベイユニット(A)4に装着されている記録媒体ユニットのIDと一致するか否かを判別する。一致すればステップS110へ進み、一致しなければステップS108へ進む。ここの例では、領域6-1-3または領域6-1-4に登録されている記録媒体ユニットのIDと、領域6-1-1に示されるベイユニット(A)4に装着されている記録媒体ユニットのIDとが一致するか否かを判別する。ここでは、領域6-1-3の記録媒体ユニットのIDが一致するので、ステップS110へ進む。
【0122】
ステップS110では、扉(A)2aの開錠処理(電子ロック機構2-3でオープン処理)を行い、本セキュリティ処理を終る。」

G 「【0184】
また、上記各実施の形態において、開錠・施錠指示をリモコンで行なっているが、磁気カードやICカード等に記録媒体ユニットとの関連付け情報を記憶させ、これらのカードによって記録媒体ユニットの所持者であることを認証させた後に、液晶表示部3を使用して開錠・施錠操作を行なうようにしてもよい。さらには指紋認証システムを用いて指紋の特徴抽出データを使用したり、パスワード等のデータを液晶表示部3のタッチパネルから入力させるようにしたりしてもよい。」

(ア)上記Aの「本発明は、…(中略)…少なくとも1つの情報記録媒体を装着可能な情報処理装置」との記載、上記Bの「20,30は、該情報処理装置本体1に対して着脱される記録媒体ユニット」、「記録媒体ユニット20,30へのデータ読み書き」との記載、そして、通常、着脱可能な記録媒体ユニットが不揮発性メモリによって構成されることは当業者にとって自明の事項であることからすると、引用文献には、
不揮発的にデータを記録し、それぞれ着脱可能である複数の記録媒体ユニット
を具備する情報処理装置が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「2は、記録媒体ユニット20,30の情報処理装置本体1に対する着脱を制限するための扉である。扉2にはラッチ2-1が設けられ、情報処理装置本体1側にはラッチ2-1と対向する位置に、開口部2-2と電子ロック機構(2-3、図2で図示)とが設けられ、扉2を閉めた状態の時にラッチ2-1が開口部2-2を通して電子ロック機構2-3に嵌合する。」との記載、上記Dの「第4の実施の形態では、扉(A)2aが、情報処理装置本体1の挿入スロット4-1及びイジェクトSW4-2を覆う位置に配置されるとともに、扉(B)90が、情報処理装置本体1の挿入スロット5-1及びイジェクトSW5-2を覆う位置に配置され、扉(A)2aと扉(B)90とは互いに独立に動作される。扉90(B)にはラッチ90-1が設けられ、情報処理装置本体1側にはラッチ90-1と対向する位置に、開口部90-2と電子ロック機構(90-3、図13で図示)とが設けられ、扉90を閉めた状態の時にラッチ90-1が開口部90-2を通して電子ロック機構90-3に嵌合する。」との記載、及び関連する図12、図13からすると、電子ロック機構により施錠されることによって着脱が制限される記録媒体ユニットが読み取れる。してみると、引用文献には、
複数の記録媒体ユニットをそれぞれ施錠して着脱を制限する複数の電子ロック機構
を具備する情報処理装置が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「図2は、情報処理装置本体1のシステム構成を示すブロック図」、「6は制御マイコン(マイクロコンピュータ)ブロックであり、制御線12を介して電子ロック機構2-3が接続され、…(中略)…、制御マイコンブロック6は、受光部7を介してリモコン50、60、70から扉2の施錠・開錠制御信号をリモコンIDとともに受信し、電子ロック機構2-3を駆動制御する。」との記載、上記Dの「第4の実施の形態では、…(中略)…、扉(A)2aと扉(B)90とは互いに独立に動作される。」との記載、上記Eの「第4の実施の形態では、制御マイコンブロック6が、制御線16を介して電子ロック機構90-3に接続される。」との記載、及び関連する図13からすると、引用文献には、
複数の電子ロック機構の施錠・開錠を個別に制御する制御マイコンブロック
を具備する情報処理装置が記載されていると解される。

(エ)上記Fの「図15及び図16は、第4の実施の形態における制御マイコンブロック6によって実行されるセキュリティ処理の手順を示すフローチャート」、「ステップS106では、開錠制御信号とともに受光部7で受信したリモコンのIDが、不揮発性メモリ6-1の領域6-1-10に登録されているリモコンIDのいずれかと一致するか否かを判別する。一致するならばステップS107へ進み、」、「ステップS107では、受信リモコンIDと一致した登録リモコンIDと対になって登録されている記録媒体ユニットのIDが、ベイユニット(A)4に装着されている記録媒体ユニットのIDと一致するか否かを判別する。一致すればステップS110へ進み、」「ステップS110では、扉(A)2aの開錠処理(電子ロック機構2-3でオープン処理)を行い」との記載からすると、複数の認証処理(リモコンIDが一致するか否かを判別する処理、及び、開錠対象となる記録媒体ユニットのIDが一致するか否かを判別する処理(以下、施錠解除を目的としたこれらの判別処理を「施錠解除の認証処理」という。))を行う処理部(以下、「認証処理部」という。)と、当該複数の認証処理部の全てから施錠解除が認証されていることを確認する処理部(以下、「認証確認処理部」という。)を具備し、全ての認証が確認された際に、該当する記録媒体ユニットの開錠処理を行う処理部(以下、「開錠処理部」という。)を具備する態様が読み取れ、また、上記Bの「記録媒体ユニット20,30は、電動排出機構(図示せず)によってそれぞれ排出される。」との記載からすると、前記開錠処理において、記録媒体ユニットは自動的に取り外されるものと解される。してみると、引用文献には、
複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証処理部と、
前記複数の認証処理部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する認証確認処理部と、
前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて、前記複数の認証処理部の全ての認証が確認された際に、該当する記録媒体ユニットを自動的に取り外す開錠処理部と
を具備する制御マイコンブロックが記載されていると解される。
なお、上記Gの「上記各実施の形態において、開錠・施錠指示をリモコンで行なっているが、磁気カードやICカード等に記録媒体ユニットとの関連付け情報を記憶させ、これらのカードによって記録媒体ユニットの所持者であることを認証させた後に、液晶表示部3を使用して開錠・施錠操作を行なうようにしてもよい。さらには指紋認証システムを用いて指紋の特徴抽出データを使用したり、パスワード等のデータを液晶表示部3のタッチパネルから入力させるようにしたりしてもよい。」との記載からすると、引用文献には、IDによる認証以外にも、カード、指紋、パスワード等、様々な種類の認証を行う可能性も示唆されている。

(オ)上記Bの「記録媒体ユニット20,30は、電動排出機構(図示せず)によってそれぞれ排出される。」との記載、上記Cの「メインボード8は、ベイユニット4,5にそれぞれ装着される記録媒体ユニット20,30とデータの授受を行い、記録媒体ユニット20,30にデータの書き込みや記録媒体ユニット20,30からのデータの読み出しを行う。」との記載、及び、関連する図12、13、そして、着脱可能な記録媒体ユニットが、何らかのコネクタを用いて情報処理装置と接続されることは、当業者にとって自明の事項であることからすると、記録媒体ユニットは、電動排出機構によりコネクタ同士の接続が解除されることによって排出されるものと解される。してみると、引用文献には、
情報処理装置と複数の記録媒体ユニットはそれぞれ、
お互いに接続されてデータの書き込みや読み出しを行うためのコネクタ
を具備し、
前記情報処理装置と、前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれとは、データの書き込みや読み出しを仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は電動排出機構によって解除される
態様が記載されていると解される。

以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

情報処理装置であって、
不揮発的にデータを記録し、それぞれ着脱可能である複数の記録媒体ユニットと、
前記複数の記録媒体ユニットをそれぞれ施錠して着脱を制限する複数の電子ロック機構と、
前記複数の電子ロック機構の施錠・開錠を個別に制御する制御マイコンブロックと
を具備し、
前記制御マイコンブロックは、
前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証処理部と、
前記複数の認証処理部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する認証確認処理部と、
前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて、前記複数の認証処理部の全ての認証が確認された際に、該当する記録媒体ユニットを自動的に取り外す開錠処理部と
を具備し、
前記情報処理装置と前記複数の記録媒体ユニットはそれぞれ、
お互いに接続されてデータの書き込みや読み出しを行うためのコネクタ
をさらに具備し、
前記情報処理装置と、前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれとは、データの書き込みや読み出しを仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は電動排出機構によって解除される
情報処理装置。

(2)参考文献1に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布された、特開平9-138714号公報(平成9年5月27日出願公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0013】図1は本発明の情報処理装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【0014】本実施の形態の情報処理装置は、図1に示すように、データを入力する入力部1と、着脱可能に情報処理装置に装着できる固定デイスク装置10(内蔵型ハードウエア装置の例として)と、この固定デイスク装置10を情報処理装置から着脱不能に施錠する施錠部7と、施錠部7により施錠された固定デイスク装置10を着脱可能に解錠する解錠部6と、固定デイスク装置10が情報処理装置に装着されたことを検出するデイスク装着検出部5と、データを表示する表示部4と、乱数をパスワードとして発生する乱数発生部3と、入力部1から入力されたデータとパスワードとを比較しパスワードと同一データが入力されたことを判定するパスワード判定部2と、固定デイスク装置10が故障したことを検出する固定デイスク装置故障検出部8とを含んで構成されている。
…(中略)…
【0020】次に固定デイスク装置10の解錠時の動作について説明する。
【0021】入力部1から施錠時に規定されたパスワードと同一データを入力してパスワード判定部2に供給する。パスワード判定部2では入力部1から供給されたデータと施錠時に乱数発生部3から供給を受け格納しているパスワードとを比較して一致しているときには解錠信号を発生して解錠部6に供給する。
【0022】解錠部6はこの解錠信号の供給に応答して固定デイスク装置10を情報処理装置から着脱可能に解錠する。
【0023】一方、固定デイスク装置故障検出部8は固定デイスク装置10が故障になったときにはこれを検出して解錠信号を解錠部6に供給する。この固定デイスク装置故障検出部8による動作により固定デイスク装置10の故障時にはパスワードの入力を待つまでもなく、解錠部6により解錠動作が行なわれ、固定デイスク装置10の障害に対して取り替え等迅速な対策がとれることとなる。」

(3)参考文献2に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布された、特開2002-110297号公報(平成14年4月12日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0096】同時に、スライダ54は、イジェクトレバー19の起立部19dがロック部54cをハウジング12の第1のガイド部38aから離間させてYb方向への移動が可能となり、ロック解除される。これにより、スライダ54は、コイルバネ62のバネ力によりYb方向へ移動しながらカード係止部56cに係止されたメモリカード24をYb方向へイジェクトする。
【0097】これで、メモリカード24の各コネクタピン28は、コネクタピン40の接触部40dから離間する。また、メモリカード24は、スライダ54のイジェクト動作と共に、Yb方向へイジェクトされると、図24(A)(B)に示すように挿入位置より距離Lだけ余計に突出したイジェクト位置に排出され、容易に取り出すことができる。さらに、ロック部材56は、第1のガイド部38aから離間して凹部39に対向しているので、側方へのロック解除の規制が解除され、メモリカード24の取出し操作によりロック解除方向に変位する。」

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「情報処理装置」は、着脱可能である複数の記録媒体ユニットの施錠・開錠を制御する装置であることから、本願発明の「記憶装置」に相当するといえる。

(2)引用発明の「記録」及び「記録媒体ユニット」は、それぞれ、本願発明の「記憶」及び「記憶モジュール」に相当する。
したがって、引用発明の「不揮発的にデータを記録し、それぞれ着脱可能である複数の記録媒体ユニット」は、本願発明の「不揮発的にデータを記憶し、それぞれ着脱可能である複数の記憶モジュール」に相当する。

(3)引用発明の「複数の記録媒体ユニットをそれぞれ施錠して着脱を制限する」ことは、複数の記録媒体ユニットをそれぞれ施錠固定することに他ならない。また、引用発明の「電子ロック機構」は、本願発明の「記憶モジュールロックユニット」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数の記録媒体ユニットをそれぞれ施錠して着脱を制限する複数の電子ロック機構」は、本願発明の「前記複数の記憶モジュールをそれぞれ施錠固定する複数の記憶モジュールロックユニット」に相当する。

(4)引用発明の「複数の電子ロック機構の施錠・開錠を個別に制御する」において、「施錠・開錠を個別に制御する」ことは、施錠状態を個別に制御することに他ならない。また、引用発明の「制御マイコンブロック」は、本願発明の「ロック制御部」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数の電子ロック機構の施錠・開錠を個別に制御する制御マイコンブロック」は、本願発明の「前記複数の記憶モジュールロックユニットの施錠状態を個別に制御するロック制御部」に相当する。

(5)引用発明の「認証処理部」は、本願発明の「認証部」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証処理部」は、本願発明の「前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証部」に相当する。

(6)引用発明の「認証確認処理部」と、本願発明の「AND確認回路」とは、ともに、複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する“処理部”である点で共通する。
してみると、引用発明の「前記複数の認証処理部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する認証確認処理部」と、本願発明の「前記複数の認証部に接続されて、前記複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認するAND確認回路」とは、ともに、“前記複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する処理部”である点で共通するといえる。

(7)引用発明の「開錠処理部」は、本願発明の「ロック解除実行部」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれについて、前記複数の認証処理部の全ての認証が確認された際に、該当する記録媒体ユニットを自動的に取り外す開錠処理部」は、本願発明の「前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて、前記複数の認証部の全ての認証が確認された際に、該当する記憶モジュールを自動的に取り外すロック解除実行部」に相当する。

(8)引用発明の「データの書き込みや読み出しを行う」ことは、データの書き込みや読み出しを行うためのデータを送受信していることに他ならないから、本願発明の「データを送受信する」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「お互いに接続されてデータの書き込みや読み出しを行うためのコネクタ」は、本願発明の「お互いに接続されてデータを送受信するためのコネクタ」に相当する。

(9)引用発明における「コネクタ同士の接続」と、本願発明における「コネクタ同士の接続」は、ともに、ロック解除実行部(引用発明においては、「開錠処理部」)からの指示によって解除されるものである。
してみると、引用発明の「前記情報処理装置と、前記複数の記録媒体ユニットのそれぞれとは、データの書き込みや読み出しを仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は電動排出機構によって解除される」と、本願発明の「前記記憶装置と、前記複数の記憶モジュールのそれぞれとは、データの送受信を仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は前記複数のバネの反発力によって解除される」とは、ともに、“前記記憶装置と、前記複数の記憶モジュールのそれぞれとは、データの送受信を仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は前記ロック解除実行部からの指示によって解除される”である点で共通するといえる。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

記憶装置であって、
不揮発的にデータを記憶し、それぞれ着脱可能である複数の記憶モジュールと、
前記複数の記憶モジュールをそれぞれ施錠固定する複数の記憶モジュールロックユニットと、
前記複数の記憶モジュールロックユニットの施錠状態を個別に制御するロック制御部と
を具備し、
前記ロック制御部は、
前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて施錠解除を認証する複数の認証部と、
前記複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する処理部と、
前記複数の記憶モジュールのそれぞれについて、前記複数の認証部の全ての認証が確認された際に、該当する記憶モジュールを自動的に取り外すロック解除実行部と
を具備し、
前記記憶装置と前記複数の記憶モジュールはそれぞれ、
お互いに接続されてデータを送受信するためのコネクタ
をさらに具備し、
前記記憶装置と、前記複数の記憶モジュールのそれぞれとは、データの送受信を仲介する前記コネクタで接続されており、前記コネクタ同士の接続は前記ロック解除実行部からの指示によって解除される
記憶装置。

(相違点1)

複数の認証部の全てから前記施錠解除が認証されていることを確認する処理部の構成において、本願発明が、「複数の認証部に接続され」た「AND確認回路」であるのに対して、引用発明は、具体的な構成が明記されていない点。

(相違点2)

本願発明の「ロック制御部」が、「前記複数の記憶モジュールのうち、読み出し不可能な記憶モジュールの存在を知らせる記憶モジュール故障連絡部」と、「前記記憶モジュール故障連絡部と前記AND確認回路とに接続されて、前記複数の認証部の認証結果に関係無く、読み出し不可能な記憶モジュールの取り外しを前記ロック解除実行部に許可するOR確認回路」を具備しているのに対して、引用発明の「制御マイコンブロック」は、故障対応を行う機能を有していない点。

(相違点3)

本願発明の「ロック解除実行部」は、記憶モジュールを着脱する構成として、「前記記憶装置から前記複数の記憶モジュールをそれぞれ必要に応じて取り出すために前記記憶装置に接続された複数のバネ」と、「前記複数の記憶モジュールにそれぞれ接続されて、それぞれ前記複数のバネの反発力を受けるための複数のパット」を具備しているのに対して、引用発明は、記録媒体ユニットを着脱する構成として、具体的な構成が明記されていない点。

(相違点4)

コネクタ同士の接続を解除する構成に関して、本願発明が、「バネの反発力」によって解除されるものであるのに対して、引用発明は、「電動排出機構」によって解除されるものである点。

5.当審の判断

上記相違点1ないし相違点4について検討する。

(1)相違点1及び相違点2について

AND回路やOR回路を用いて処理回路を構成する技術については、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において、慣用的に行われている技術にすぎない。

また、当該技術分野において、装置に障害対策を考慮することは、常識的事項にすぎず、そして、障害対処機能を具備する記憶装置についても、上記Hに、

“着脱可能な固定ディスク装置と、施錠部と、解錠部を具備する情報処理装置であって、
解錠部は、パスワード判定部からの解錠信号、又は、固定ディスク故障検出部からの解錠信号により、固定ディスク装置の解錠動作を行う
ことを特徴とする情報処理装置”

が記載されるように、周知技術にすぎない。また、上記Hに

「固定デイスク装置故障検出部8は固定デイスク装置10が故障になったときにはこれを検出して解錠信号を解錠部6に供給する。この固定デイスク装置故障検出部8による動作により固定デイスク装置10の故障時にはパスワードの入力を待つまでもなく、解錠部6により解錠動作が行なわれ、固定デイスク装置10の障害に対して取り替え等迅速な対策がとれることとなる。」

と記載されるように、固定ディスク装置の故障の際には、認証結果に関係無く、故障した固定ディスク装置の解錠動作を行う技術(本願発明の「OR確認回路」に相当するものといえる。)についても、周知技術にすぎない。

してみると、引用発明においても、これらの周知慣用技術を適用し、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1及び相違点2は格別のものではない。

(2)相違点3及び相違点4について

バネの反発力によって、コネクタ接続を解除し、記憶媒体をイジェクトする技術については、当該技術分野において、慣用的に用いられている技術(必要であれば、上記J等参照)にすぎず、また、複数のバネを用いる技術、パットを用いる技術については、必要に応じて当業者が適宜採用し得る設計事項にすぎない。

してみると、引用発明においても、これらの周知慣用技術を適用し、相違点3及び相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3及び相違点4は格別のものではない。

(3)まとめ

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点4は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものにすぎず、格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、上記引用発明及び上記参考文献等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-19 
結審通知日 2012-10-22 
審決日 2012-11-02 
出願番号 特願2007-27277(P2007-27277)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹浜岸 広明  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 記憶装置  
代理人 工藤 実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ