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審決分類 審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
審判 査定不服 1項1号公知 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
管理番号 1268139
審判番号 不服2010-20543  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-13 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2006-507298「動物の健康を増進するための方法及び組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日国際公開、WO2004/082518、平成18年 9月14日国内公表、特表2006-520601〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年3月18(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年8月13日付けで手続補正がなされ、平成22年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成23年10月28日付けで審尋がなされたところ、これに対する回答書は提出されず、平成24年4月9日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月10日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし40に係る発明は、平成24年7月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし40に記載された事項によってそれぞれ特定される次のとおりのものであるところ、請求項1、25及び29に係る発明(以下「本願発明1、25及び29」という。)は、請求項1、25及び29として記載されたとおりのものである。

【請求項1】
家畜に、少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含む製品を与えるステップを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法。
【請求項2】
前記製品を少なくとも7日間前記家畜に与える請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記家畜が、1日に少なくとも約48グラム?約155グラムのレトルト処理乳を提供するのに十分な製品を与えられる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記家畜が、1日総摂取カロリーの少なくとも20%をレトルト処理乳として提供するのに十分な製品を与えられる請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記レトルト処理乳が液状である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記レトルト処理乳が乾燥形態である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記製品が前記家畜の標準食の栄養補助製品である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記製品をペット用スナックとして提供する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記製品が、前記レトルト処理乳を含むコーティングを塗布した基材を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記基材がペットフード用キブルである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記家畜が伴侶動物である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記伴侶動物が、イヌ及びネコからなる群から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記製品が、乾燥物ベースで0.5重量%以下のラクトースを含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
伴侶動物の歯垢及び歯石の沈着の予防方法であって、前記伴侶動物に、前記動物の1日総摂取カロリーの少なくとも20%を、少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳として提供する製品を少なくとも定期的に与えるステップを含む、
方法。
【請求項15】
前記レトルト処理乳が液状である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記レトルト処理乳が乾燥形態である請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記製品が前記家畜の標準食の栄養補助製品である請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記製品をペット用スナックとして提供する請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記伴侶動物が、イヌ及びネコからなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記製品が、乾燥物ベースで0.5重量%以下のラクトースを含む請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記製品が、1日に少なくとも約48グラム?約155グラムのレトルト処理乳を提供する請求項14記載の方法。
【請求項22】
前記製品が、前記レトルト処理乳を含むコーティングを塗布した基材を含む請求項14記載の方法。
【請求項23】
前記基材がペットフード用キブルである請求項14記載の方法。
【請求項24】
少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理した液状のレトルト処理乳、及び乾燥重量で2.5%未満のラクトースを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できる
栄養製品。
【請求項25】
少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理した乾燥形態のレトルト処理乳を含む、家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できる栄養補助製品。
【請求項26】
前記製品の生地が、乾燥形態のレトルト処理乳を含むコーティングで覆われている請求項25記載の栄養製品。
【請求項27】
前記生地がペットフード用キブルである請求項26記載の栄養製品。
【請求項28】
前記製品が、乾燥物ベースで約0.05重量%?約2重量%のカルシウムを含む請求項25記載の栄養製品。
【請求項29】
伴侶動物に歯科予防を提供する方法であって、ペットの食餌にレトルト処理乳を含む乾燥製品を加えるステップを含む、方法。
【請求項30】
前記製品を前記家畜に少なくとも21日間与える請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記伴侶動物が、前記伴侶動物の1日総カロリー所要量の少なくとも20%をレトルト処理乳として提供するのに十分な製品を与えられる請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記伴侶動物が、イヌ及びネコからなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記製品が、前記レトルト処理乳を含むコーティングを塗布した基材を含む請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記基材がペットフード用キブルである請求項33記載の方法。
【請求項35】
家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できる家畜用歯科製品の製造方法であって、
乳を少なくとも115℃に加熱して乳のレトルト処理を行うステップ、及び
前記レトルト処理乳を前記家畜に与えるステップ、を含む、方法。
【請求項36】
前記レトルト処理乳を乾燥させて粉末にする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記形態がペット用スナックである請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記乳にラクターゼを加えてラクトース含有量を低減するステップを含む請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記レトルト処理乳を食用基材の周囲にコーティングするステップを含む請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記レトルト処理乳製品にカルシウムを加えるステップを含む請求項35記載の方法。

3 記載不備について
(1)記載不備についての当審拒絶理由の概要
ア 特許法第36条第6項第2号違反について
特許請求の範囲の請求項1ないし40には、「レトルト処理乳」との記載があるが、前記「レトルト処理乳」について定義付ける記載はなく、特許請求の範囲の記載は明確でない。
イ 特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号違反について
本願明細書の記載は、発明の詳細な説明の欄において、特許請求の範囲に記載の発明について、その課題を解決していることが裏付けられておらず、また当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、各請求項に係る発明の技術的意義が裏付けられていない。

(2)特許法第36条第6項第2号違反についての検討
ア 特許請求の範囲の請求項1,14,24,25,35には、「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳」について、どのような成分の乳に対してレトルト処理を行うのか、また加熱時間等の処理工程を定義付ける記載がなく、また特許請求の範囲の請求項29には、「レトルト処理乳」について、どのような成分の乳に対してレトルト処理を行うのか、また加熱温度及び加熱時間等の処理工程を定義付ける記載がない。
そこで、「レトルト処理乳」について、本願明細書の記載には、以下の(ア)ないし(ウ)の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(ア)「【0015】
一実施形態では、本発明は、乳を少なくとも250°Fに加熱して乳のレトルト処理を行うステップと、治療有効量のそのレトルト処理乳を、家畜に与えることのできる形態で提供するステップとを含む、家畜への歯科用製品の製造方法を提供する。」
(イ)「【0019】
通常、乳の組成は、全粉乳、水、及びラクターゼを含む。補助的なカルシウムを含めて、総カルシウム含有量を乾燥物ベースで約0.05%?約2%にすることもできる。微量成分には、カゼインナトリウム及びスクロースが含まれよう。家畜の食餌に加えることのできる乳の例は、Felix(登録商標)キャットミルクである。Felixキャットミルクは、ヨーロッパでNestle Purina PetCare Companyによって販売されている。」
(ウ)「【0021】本発明の一実施形態では、動物に与える乳は、レトルト処理工程にかけてある。そのような工程の一例では、乳の100g容器を、約5分?約12分間かけて少なくとも115℃(250°F)の温度に加熱する。」
イ 前記「レトルト処理乳」は如何なる動物の乳であって、上記(イ)記載の乳の組成以外の材料が添加されているのか否か、上記(ウ)記載の工程以外の工程の有無、処理後の組成成分、使用形態等具体的構成が不明である。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、特許請求の範囲の請求項1,14,24,25,35に記載の「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳」及び請求項29に記載のに記載の「レトルト処理乳」については明確でない。

(3)特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号違反についての検討
ア 当審において、平成23年10月28日付けで以下の(ア)の審尋を行ったが、これに対する回答書は提出されなかった。
(ア)『1 本願の特許請求の範囲には、…(略)…と記載されている。…(略)…
2 本願明細書には、
「【0019】
通常、乳の組成は、全粉乳、水、及びラクターゼを含む。補助的なカルシウムを含めて、総カルシウム含有量を乾燥物ベースで約0.05%?約2%にすることもできる。微量成分には、カゼインナトリウム及びスクロースが含まれよう。家畜の食餌に加えることのできる乳の例は、Felix(登録商標)キャットミルクである。Felixキャットミルクは、ヨーロッパでNestle Purina PetCare Companyによって販売されている。」、
「【0021】
本発明の一実施形態では、動物に与える乳は、レトルト処理工程にかけてある。そのような工程の一例では、乳の100g容器を、約5分?約12分間かけて少なくとも115℃(250°F)の温度に加熱する。」、
「【0026】
年齢が4才?17才の間の13匹の標本ネコを試験に割り当て、試験は、完全クロスオーバー設計として実施した。割り当てられる食餌治療群は、1)Pro Plan(登録商標)ドライキャットフードのみ、及び2)ドライPro Plan(登録商標)+Felixキャットミルクとした。Pro Planドライキャットフードの製造元は、Nestle Purina PetCare Companyである。ネコに、割り当てた食餌をクロスオーバーの各期につき21日間与えた。乳投与期には、ネコにドライフードを与えてエネルギー所要量を賄い、毎日2袋のキャットミルクを与えた。各袋は、約130?150グラムの乳を含んでいた。水はいつでも利用でき、水分摂取も記録した。ネコは、試験期間のあいだ個々のステンレス鋼製ケージに収容した。フード、乳、及び水分の摂取を毎日記録し、毎週体重をモニターした。」と記載されている。

3 上記1及び2から,本願請求項1、14、24,25、29、35に係る「レトルト処理乳」の具体例として、本願明細書は、Nestle Purina PetCare Companyによって販売されている「Felix(登録商標)キャットミルク」を唯一挙げる。そして、本願明細書の記載から、請求人は「Felix(登録商標)キャットミルク」が本願優先日前において公知・公用であることを自認するものである。
そこで、当該「Felix(登録商標)キャットミルク」について、請求人が知りうる限りの情報(例えば、入手方法、販売開始時期、商品パンフレット、成分組成、使用形態等)を、差し支えのない範囲で提示願いたい。』
イ 上記レトルト処理乳が家畜の歯垢あるいは歯石沈着の予防に有効であることを実証している唯一の実施例(本願明細書段落【0026】?【0045】参照。)は、Felix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)を年齢4才?17才間のネコに与えたものであるが、前記実施例は、Felix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)の成分組成、レトルト処理工程及び使用形態等がどのようなものであるか不明であるから、当業者が実施可能なものとはいえない。また仮に前記成分組成、レトルト処理工程及び使用形態等がどのようなものであるか明らかであるとしても、前記唯一の実施例のFelix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)以外のレトルト処理乳を与えた場合の歯垢あるいは歯石沈着の予防に対する効果が実証されておらず、またネコ以外の家畜の歯垢あるいは歯石沈着の予防に対する効果は確認できておらず、各請求項に係る発明の技術的意義が明細書において裏付けられていない。
したがって、本願明細書の記載は、発明の詳細な説明欄において、特許請求の範囲に記載の発明について、その課題を解決していることが裏付けられておらず、また当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、各請求項に係る発明の技術的意義が裏付けられていない。

4 進歩性について
なお、特許請求の範囲の請求項1及び25の「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳」並びに請求項29の「レトルト処理乳」との記載については上記3(2)のとおり不明確であるものの、それぞれについて、少なくとも各請求項記載通りのレトルト処理乳を含んでいれば、どのような処理工程が行われていようと他の成分等を含んでいても良いものとして、以下検討する。

(1)引用刊行物
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第01/70043号(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「1 A pet food comprising an edible, formulated, protein-rich body having a structure providing firmness of texture capable of inducing thorough chewing behaviour in a pet when fed in use to such pet and, through such behaviour, inhibiting the development of periodontal disorders in said pet.
2 A pet food according to claim 1 wherein the periodontal disorders include a build-up of at least one of plaque and calculus on said pet's teeth.
3 A pet food according to claim 1 wherein the induced chewing behaviour inhibits development of the disorders by promoting mechanical abrasion of the food against an affected tooth.
4 A pet food according to claim 1 wherein the formulated body has a moisture content of about 20% to 50 % by weight.
5 A pet food according to claim 4 wherein the moisture content is from 30% to 40% by weight.
6 A pet food according to claim 1 wherein the body has a minimum lateral dimension of at least 8mm.
7 A pet food according to claim 1 wherein the body has a generally blocky shape.
8 A pet food according to claim 1 wherein the body has a surface that has been exposed to dry heat of sufficient intensity and for sufficient duration to cause browning thereof.
……
20 A method of inhibiting the development of periodontal disease in a pet comprising allowing the pet to chew and swallow a pet food comprising an edible formulated protein-rich body having a structure providing textural firmness capable of inducing thorough chewing behaviour in the pet, such behaviour being effective to inhibit the development of said periodontal disorders.
21 A method according to claim 20 wherein the periodontal disorders include build-up of plaque and calculus.
22 A method according to claim 21 wherein allowing the pet to chew the body reduces, by abrasion, build-up of plaque and calculus on said pet's teeth.」(20頁1行?22頁16行)
(日本語訳: 1 食用の配合された蛋白質の豊富な本体を含むペットフードであって、ペットに使用して与えたときに、前記ペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有し、かつそのような動作によって前記ペットの歯周疾患の発生を防止する、前記ペットフード。
2 歯周疾患には、前記ペットの歯に、歯垢および結石の少なくとも1つの形成が含まれる、請求項1に記載のペットフード。
3 誘発された噛む動作は、侵された歯に対してフードの機械的磨耗を促進することによって疾患の発生を防止する、請求項1に記載のペットフード。
4 配合された本体は約20?50重量%の湿分含量を有する、請求項1に記載のペットフード。
5 湿分含量は30?40重量%である、請求項4に記載のペットフード。
6 本体は少なくとも8mmの最小側面寸法を有する、請求項1に記載のペットフード。
7 本体は一般的に塊状の形状を有する、請求項1に記載のペットフード。
8 本体は、十分に高温の乾熱および褐色化を生じるのに十分な時間にさらされた表面を有する、請求項1に記載のペットフード。
……
20 ペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された蛋白質の豊富な本体を含み、かつそのような動作は、前記歯周疾患の発生を防止するのに有効である、ペットがペットフードを噛みそして飲み込むことを可能にすることを含む、ペットの歯周病の発生を防止する方法。
21 歯周疾患には、歯垢および結石の形成が含まれる、請求項20に記載の方法。
22 ペットが本体を噛むことが可能であり、磨耗によって、ペットの歯の歯垢および結石の形成を減少させる、請求項21に記載の方法。)

イ 「According to a third aspect of the invention, a process for producing a pet food having a structure such that when being chewed by a pet, the body is capable of inhibiting development of periodontal disorders on said pet's teeth, includes the steps of
- providing a coherent edible protein-rich body - reducing moisture content of the body to provide textural firmness capable of inducing thorough chewing behaviour in the pet, such behaviour being effective in inhibiting the development of said periodontal disorders and
- increasing firmness of the body.

The periodontal disorders may include build-up of plaque and/or calculus.

The inhibiting of the development of the disorder preferably includes reducing, by mechanical abrasion, the said build-up.

The steps of reducing moisture and increasing firmness are preferably accomplished by exposing the body to a source of dry heat. Exposure to dry heat may cause browning of the surface.

In a preferred form of the invention, the method includes searing at least a portion of the surface.

Searing may include charring.

The searing may be accomplished by one or more of grilling, baking, roasting or frying the chunks. Preferably the frying is flash frying. The method may include reducing the moisture content of the body to about from 20 to 50% by weight.」(6頁5行?7頁2行)
(日本語訳:本発明の第3の特徴によれば、ペットによって噛まれたときに、ペットフード本体が、前記ペットの歯の歯周疾患の発生を防止することが可能であるような構成を有するペットフードの製造方法には、
-凝縮性の食用蛋白質の豊富な本体を供し、
-該本体の湿分含量を減少してペットに十分な噛み動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供し、そのような動作は歯周疾患の発生を防止するのに有効であり、そして
-該本体の堅さを増加させる
諸工程が包含される。
歯周疾患には歯垢および/または結石の形成が含まれる。
前記疾患の発生の防止には、好ましくは、機械的な磨耗により前記形成を減少させることが含まれる。
湿分を減少させ、堅さを増加させる工程は、好ましくは、本体を乾熱源にさらすことによって達成される。乾熱源にさらすことにより表面の褐色化が生じる。
本発明の好ましい態様において、前記方法には表面の少なくとも一部分を焦がすことが含まれる。
焦がすことには黒焦げ(charring)が含まれる。
焦がすことは、チャンクをグリル、ベーキング、ローストまたはフライの1種またはそれ以上にかけることによって達成される。好ましくは、フライはフラッシュフライである。
前記方法には、本体の湿分含量を約20?50重量%に減少することが含まれる。)

ウ 「Detailed description of embodiments

Embodiments of the invention are now described, by way of example only.

The invention is a pet food product in the form of a formulated food body. The food body is protein-rich, has a reduced moisture content and a structure that has textural firmness capable of rendering cleansing benefits to the teeth of an animal under the action of chewing. The body is produced from a thermally gellable protein source, preferably mixed with a starch source. The body is coherent in that it does not readily break up, but requires prolonged chewing by a pet before it exhibits signs of fragmentation. The chewing is prolonged in that is of a longer duration than is generally observed in respect of prior art foods of similar type.

A plurality of the bodies may be provided in a sealed container. They may be mixed with less resilient or less chew-resistant bodies when provided as a complete meal, for example in a canned or pouched product format. Each of the chew-resistant bodies of the invention, however, is coherent, firm and chewable and is suitably sized to facilitate effective plaque and/or calculus (also known as tartar) reduction on the teeth of the end consumer pet, as a result of mechanical abrasion through chewing. The body contains protein in an amount of at least 20% and has moisture content in the range from about 15% to 50% by weight. In this form, the body or piece is particularly suited for feeding to a cat or a dog, depending respectively on the final product make-up, as set out more fully below.

In a preferred embodiment, the body includes from about 2% to 10% by weight of ash. A more preferred ash content is from 4% to 7% by weight. The protein, starch and other ingredients may be from any suitable source, the choice thereof being largely determined by nutritional needs, palatability considerations, and the type of food to be produced.

The protein source may be a vegetable protein source, an animal protein source, or a mixture of these protein sources. Suitable vegetable protein sources are gluten, wheat protein, soy protein, rice protein, corn protein, and the like. These proteins may be provided in the form of flours, concentrates and isolates as desired. Animal proteins are however preferred. Suitable animal protein sources are muscular or skeletal meat of mammals, poultry, and fish; meals such as meat meal, bone meal, fish meal, and poultry meal; by-products such as hearts, liver, kidneys, tongue and the like; and milk proteins. Usually, the protein content does not exceed 90% by weight. Preferably protein content is in the range from about 25% to 65% by weight and, more preferably in the range from about 30% to 45% by weight.(8頁6行?9頁15行)
(日本語訳: (態様の詳細な記載)
本発明の態様を例として記載する。
本発明は配合されたフード本体の形態のペットフード製品である。フード本体は蛋白質が豊富であり、減少した湿分含量を有し、かつ咀しゃくの作用下で動物の歯を清浄にする利点を与え得る歯ごたえの堅さを持つ構成を有する。本体は、熱によりゲル化可能な蛋白質源から製造するが、好ましくは澱粉と混合する。本体は、容易に砕けないが、それが破砕される徴候を示す前にペットによって長く咀しゃくを必要とする凝集性である。類似の型の従来技術のフードについて一般に観察されるよりもさらに長い咀しゃく時間である。
複数の本体は密封された容器中に供される。それらは、例えば缶詰またはパウチ製品フォーマットで完全な食事として提供されるとき、さらに弾力または噛み抵抗性の少ない本体と混合してもよい。しかしながら、本発明のかみ抵抗性本体のそれぞれは凝集性で堅くかつ噛むことができ、そして適当な大きさにして、咀しゃくによる機械的磨耗の結果、最後の消費者であるペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする。本体は少なくとも20%の量の蛋白質を含み、かつ約15?50重量%の範囲の湿分含量を有する。この形態において、本体又は断片は、特に、さらに以下に詳述するように、それぞれ最後の製品形成によって、猫または犬に給与するのに特に適している。
好ましい態様においては、本体には、約2?10重量%の灰分が含まれる。さらに好ましい灰分含量は4?7重量%である。
蛋白質、澱粉およびその他の成分は、適当な起源から得られるが、その選択は、栄養の必要性、呈味性および造られるフードのタイプによって主として決められる。
蛋白質源は植物性蛋白質源、動物性蛋白質源、またはこれらの蛋白質源の混合物であってよい。適当な植物性蛋白質源は、グルテン、小麦蛋白質、大豆蛋白質、米蛋白質、トウモロコシ蛋白質等である。これらの蛋白質は、必要に応じて、粉体濃縮物および単離物の形態で供される。しかしながら、動物性蛋白質が好ましい。適当な動物性蛋白質源には、哺乳動物の筋肉または骨格肉、鶏肉、および魚、例えば肉粉、骨粉、魚粉および鶏肉粉のようなミール、例えば心臓、肝臓、腎臓、舌のような副産物、および乳蛋白質がある。通常、蛋白質含量は90重量%を越えない。好ましくは、蛋白質の含量は約25?65重量%の範囲、さらに好ましくは約30?45重量%の範囲である。」

エ 「The fried pieces may then be packed into suitable containers; for example cans or pouches. The containers are sealed. Preferably they are retorted. Presented in this manner, the fried pieces may be fed to pets as a meal or even as part of a meal. Prior to packing, the fried pieces may further be coated with an acid. The acidic coating, thus applied, may comprise from 1% to 5% of the total weight of each piece. Under the heat of retortion, acid in the coating may react with sugars in the contained pieces and cause enhanced browning of their surface.The browning is thought to enhance palatability.
As an alternative to frying, or even in a step complemental to moisture reduction by frying, the pieces may be dried under direct heat, such as in a hot air dryer. The pieces may be passed through a high velocity stream of hot air, such as countercurrently in a drying tunnel, where the temperature is conveniently in the range from about 140#C to 180#C. Residence time will depend to some extent on hot air relative velocity, temperature, ambient humidity and initial moisture content of the pieces to be dried. It is found that residence time in a conventional countercurrent high velocity dryer may be from about 4 to 6 minutes to achieve a final moisture content of 20% to 50 % by weight..

In preferred embodiments of the invention, the dried pieces preferably comprise about 10% or less by weight of starch; about 20% to about 40% by weight of protein; about 15% to about 25% by weight of lipid; and about 30% to about 40% by weight of moisture. If additional ingredients such as salts, sugars, spices, seasonings, flavoring agents, minerals, and the like are included in the fried pieces, these additional ingredients preferably make up about 0.5% to about 15% by weight of the fried pieces.」(11頁33行?12頁24行)
(日本語訳:次いで、フライにした小片を適当な容器、例えば缶またはパウチの中に入れる。そして容器を密封する。好ましくは、それらをレトルト処理する。この方法で供された物は、フライにした小片を食事としてまたは食事の一部としてペットに給することができる。
包装する前に、フライにした小片をさらに酸で被覆してもよい。このようにして適用された酸性の被覆は、各小片の全重量の1%?5%を含んでよい。レトルトの加熱下で、被覆内の酸は、含まれた小片内の糖と反応し、それらの表面に増加した褐色を生じる。褐色化は呈味性を増すと考えられる。
フライの変法として、またはフライによる湿分減少の補足的な工程において、小片は、熱風乾燥機のような直接加熱下で乾燥してもよい。小片は、例えば、温度が約140℃?約180℃の範囲の便利な乾燥用トンネル内を逆流の熱風の高速流を通して通過させてもよい。滞留時間は、熱風の相対温度、温度、周囲湿度および乾燥すべき小片の初期湿分含量の程度による。従来の逆流高速乾燥機による滞留時間は、20?50重量%の最後の湿分含量を達成させるのに約4?6分であることが見出された。
本発明の好ましい態様において、乾燥された小片は、好ましくは、澱粉約10重量%またはそれ以下、蛋白質約20?約40重量%、脂質約15?約25重量%、および湿分約30?約40重量%を含んでいる。もし、塩、糖、スパイス、調味料、フレーバ付与剤、ミネラル等の付加成分をフライ小片に含ませるならば、これらの付加成分は、好ましくは、フライ小片の約0.5?約15%にする。)

オ 上記ア及びウら、引用例には、次の(ア)及び(イ)の発明が記載されていると認められる。

(ア)「猫または犬のペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含み、かつそのような動作は、前記ペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする歯周疾患の発生を防止するのに有効である、前記ペットがペットフードを噛みそして飲み込むことを可能にすることを含む、ペットの歯周病の発生を防止する方法であって、前記本体は、十分に高温の乾熱および褐色化を生じるのに十分な時間にさらされた表面を有する、前記ペットの歯周病の発生を防止する方法。」(以下「引用発明1」という。)

(イ)「食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含む猫または犬に給与するペットフードであって、猫または犬のペットに使用して与えたときに、前記ペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有し、かつそのような動作によって前記ペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする、ペットの歯周疾患の発生を防止する、前記ペットフードであり、本体は、十分に高温の乾熱および褐色化を生じるのに十分な時間にさらされた表面を有する、ペットフード。」(以下「引用発明2」という。)

(2)対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1との対比・判断
(ア)対比
a 引用発明1の「猫または犬のペット」及び「ペットフード」は、それぞれ、本願発明1の「家畜」及び「製品」に相当する。
b 引用発明1の「製品(ペットフード)」は猫または犬のペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含むものであり、本願発明1の「製品」は少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含むものであって、前記レトルト処理したレトルト処理乳が動物性蛋白質を含むものであることが、当業者に自明であるから、引用発明1の「製品」と本願発明1の「製品」とは動物性蛋白質を含む点で一致する。
c 引用発明1の「ペットの歯周病の発生を防止する方法」は猫または犬のペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含み、かつそのような動作は、前記ペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする歯周疾患の発生を防止するのに有効である、前記ペットがペットフードを噛みそして飲み込むことを可能にすることを含むものであり、本願発明1の「家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法」は家畜に、少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含む製品を与えるステップを含むものであり、前記レトルト処理したレトルト処理乳が動物性蛋白質を含むものであることが、当業者に自明であるから、引用発明1の「ペットの歯周病の発生を防止する方法」と本願発明1の「家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法」とは、家畜に、動物性蛋白質を含む製品を与えるステップを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法の点で一致する。

d 上記aないしcから、本願発明1と引用発明1とは、
「家畜に、動物性蛋白質を含む製品を与えるステップを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
前記動物性蛋白質が、本願発明1では、「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳」であるのに対して、引用発明1では、そのようなものであるか否か明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 引用例には「ペットフード本体が、前記ペットの歯の歯周疾患の発生を防止することが可能であるような構成を有するペットフードの製造方法には、-凝縮性の食用蛋白質の豊富な本体を供し、-該本体の湿分含量を減少してペットに十分な噛み動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供し、そのような動作は歯周疾患の発生を防止するのに有効であり、そして-該本体の堅さを増加させる諸工程が包含される。歯周疾患には歯垢および/または結石の形成が含まれる。前記疾患の発生の防止には、好ましくは、機械的な磨耗により前記形成を減少させることが含まれる。湿分を減少させ、堅さを増加させる工程は、好ましくは、本体を乾熱源にさらすことによって達成される。乾熱源にさらすことにより表面の褐色化が生じる。本発明の好ましい態様において、前記方法には表面の少なくとも一部分を焦がすことが含まれる。焦がすことには黒焦げ(charring)が含まれる。焦がすことは、チャンクをグリル、ベーキング、ローストまたはフライの1種またはそれ以上にかけることによって達成される。好ましくは、フライはフラッシュフライである。」(上記(1)イ参照。)及び「フライにした小片をさらに酸で被覆してもよい。このようにして適用された酸性の被覆は、各小片の全重量の1%?5%を含んでよい。レトルトの加熱下で、被覆内の酸は、含まれた小片内の糖と反応し、それらの表面に増加した褐色を生じる。褐色化は呈味性を増すと考えられる。フライの変法として、またはフライによる湿分減少の補足的な工程において、小片は、熱風乾燥機のような直接加熱下で乾燥してもよい。小片は、例えば、温度が約140℃?約180℃の範囲の便利な乾燥用トンネル内を逆流の熱風の高速流を通して通過させてもよい。滞留時間は、熱風の相対温度、温度、周囲湿度および乾燥すべき小片の初期湿分含量の程度による。従来の逆流高速乾燥機による滞留時間は、20?50重量%の最後の湿分含量を達成させるのに約4?6分であることが見出された。本発明の好ましい態様において、乾燥された小片は、好ましくは、澱粉約10重量%またはそれ以下、蛋白質約20?約40重量%、脂質約15?約25重量%、および湿分約30?約40重量%を含んでいる。もし、塩、糖、スパイス、調味料、フレーバ付与剤、ミネラル等の付加成分をフライ小片に含ませるならば、これらの付加成分は、好ましくは、フライ小片の約0.5?約15%にする。」(上記(1)エ参照。)という事項が記載されている。
b 引用例には、「蛋白質源は植物性蛋白質源、動物性蛋白質源、またはこれらの蛋白質源の混合物であってよい。適当な植物性蛋白質源は、グルテン、小麦蛋白質、大豆蛋白質、米蛋白質、トウモロコシ蛋白質等である。これらの蛋白質は、必要に応じて、粉体濃縮物および単離物の形態で供される。しかしながら、動物性蛋白質が好ましい。適当な動物性蛋白質源には、哺乳動物の筋肉または骨格肉、鶏肉、および魚、例えば肉粉、骨粉、魚粉および鶏肉粉のようなミール、例えば心臓、肝臓、腎臓、舌のような副産物、および乳蛋白質がある。」(上記(1)ウ参照。)という事項が記載されており、また牛乳等が動物性蛋白質であることが、当業者に自明である(例.特開平11-196770号公報【0029】参照。)。
c ペット用レトルト処理乳は、本願優先日前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2000-14328号公報特に【0021】及び【0022】、特開平1-240177号公報特に1頁右下欄9行?2頁5行参照。)。
d 生乳を非通気性容器に充填密封してから115?118℃で15?25分の範囲で加熱処理したレトルト処理乳は、メイラード反応等によって褐色が著しいことが、本願優先日前に周知である(以下「周知事項」という。例.特開平2-207742号公報特に1頁右下欄9?末行、特公昭62-19810号公報参照。)。
e 引用発明1において、「動物性蛋白質の豊富な本体」について、ペットに十分な噛み動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供すべく前記本体の堅さを増加させ、呈味性を増すよう、上記b及びcから、動物性蛋白質として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに、上記a及びdから、前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理することにより褐色化させることは、当業者が周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
f 上記eの「『動物性蛋白質として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに』、『前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理する』」は本願発明1の「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳」に相当する。
g 上記e及びfから、引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
h 効果について
本願発明1の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知事項の奏する効果及び引用例に記載された事項から当業者が予測できた程度のものである。
i まとめ
したがって、本願発明1は、引用例に記載された発明、周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本願発明25と引用発明2との対比・判断
(ア)対比
a 引用発明2の「『猫または犬』の『ペット』」及び「ペットフード」は、それぞれ、本願発明25の「家畜」及び「製品」に相当する。
b 引用発明2の「製品(ペットフード)」は食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含む猫または犬に給与するペットフードであって、猫または犬のペットに使用して与えたときに、前記ペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有し、かつそのような動作によって前記ペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする、ペットの歯周疾患の発生を防止するものであり、本願発明25の「製品」は少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理した乾燥形態のレトルト処理乳を含む、家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できるものであって、前記レトルト処理したレトルト処理乳が動物性蛋白質を含むものであることが、当業者に自明であるから、引用発明2の「製品」と本願発明1の「製品」とは動物性蛋白質を含む、家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できる点で一致する。

c 上記a及びbから、本願発明25と引用発明2とは、
「動物性蛋白質を含む、家畜における歯垢及び歯石沈着を予防できる製品」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:
前記動物性蛋白質を含む、製品が、本願発明25では、「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理した乾燥形態のレトルト処理乳を含む、栄養補助」のためのものであるのに対して、引用発明1では、そのようなものであるか否か明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点2について検討する。
a 上記ア(イ)aないしア(イ)d参照。
b ウエットタイプのペットフードは犬や猫等の動物の歯に食品が付着して歯垢や歯石が歯間に付着し易く、結果的に虫歯になったり、歯槽膿漏になったりし易いという問題点があるが、ドライタイプのペットフードは口中で歯の周辺を磨く作用を果たすことが、当業者に自明である(例.特開平7-203866号公報特に【0003】及び【0011】参照。)。
c 栄養補助食としての犬,猫用ペットフードは、本願優先日前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2003-38103号公報特に【0001】及び【0002】、特開平10-276685号公報【0002】及び【0003】参照。)。
d 引用発明2において、「動物性蛋白質の豊富な本体」について、ペットに十分な噛み動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供すべく前記本体の堅さを増加させ、呈味性を増すよう、上記ア(イ)b及びア(イ)cから、動物性蛋白質の豊富な本体として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに、上記ア(イ)a、ア(イ)dから、前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理することにより褐色化させ、上記b及びcから、乾燥形態のレトルト処理乳を含む栄養補助食となすことは、当業者が周知技術1、周知技術2、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
e 上記dの「『動物性蛋白質の豊富な本体として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに』、『前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理する』、『乾燥形態のレトルト処理乳を含む栄養補助食となす』」は本願発明25の「『少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理した乾燥形態のレトルト処理乳含む』、『栄養補助製品』」に相当する。
f 上記d及びeから、引用発明2において、上記相違点2に係る本願発明25の構成となすことは、当業者が周知技術1、周知技術2、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
g 効果について
本願発明25の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知技術2の奏する効果、周知事項の奏する効果及び引用例に記載された事項から当業者が予測できた程度のものである。
h まとめ
したがって、本願発明25は、引用例に記載された発明、周知技術1、周知技術2、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本願発明29と引用発明1との対比・判断
(ア)対比
a 引用発明1の「ペットフード」及び「『猫または犬』の『ペットの歯周病の発生を防止する方法』」は、それぞれ、本願発明29の「製品」及び「伴侶動物に歯科予防を提供する方法」に相当する。
b 引用発明1の「製品(ペットフード)」は猫または犬のペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含むものであり、本願発明29の「製品」はペットの食餌にレトルト処理乳を含む乾燥したものであって、前記レトルト処理乳が動物性蛋白質を含むものであることが、当業者に自明であるから、引用発明1の「製品」と本願発明29の「製品」とは動物性蛋白質を含む点で一致する。
c 引用発明1の「伴侶動物に歯科予防を提供する方法(『猫または犬』の『ペットの歯周病の発生を防止する方法』)」は、猫または犬のペットに十分な噛む動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供する構成を有する食用の配合された動物性蛋白質の豊富な本体を含み、かつそのような動作は、前記ペットの歯上の歯垢および/または結石(また、これは歯石として知られている)の有効な減少を容易にする歯周疾患の発生を防止するのに有効である、前記ペットがペットフードを噛みそして飲み込むことを可能にすることを含むものであり、本願発明29の「伴侶動物に歯科予防を提供する方法」はペットの食餌にレトルト処理乳を含む乾燥製品を加えるステップを含むものであるから、引用発明1の「伴侶動物に歯科予防を提供する方法」と本願発明29の「伴侶動物に歯科予防を提供する方法」とは、ペットの食餌に動物性蛋白質を含む製品を加えるステップを含む点で一致する。

d 上記aないしcから、本願発明29と引用発明1とは、
「伴侶動物に歯科予防を提供する方法であって、ペットの食餌に動物性蛋白質を含む製品を加えるステップを含む、方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:
前記動物性蛋白質を含む製品が、本願発明29では、「レトルト処理乳を含む乾燥」したものであるのに対して、引用発明1では、そのようなものであるか否か明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点3について検討する。
a 上記ア(イ)aないしア(イ)d参照。
b 上記イ(イ)b参照。
c 引用発明1において、「動物性蛋白質の豊富な本体」について、ペットに十分な噛み動作を誘発し得る歯ごたえの堅さを供すべく前記本体の堅さを増加させ、呈味性を増すよう、上記ア(イ)b及びア(イ)cから、動物性蛋白質の豊富な本体として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに、上記ア(イ)a、ア(イ)dから、前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理することにより褐色化させ、上記bから、前記レトルト処理乳を含む乾燥したものとなすことは、当業者が周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
d 上記cの「『動物性蛋白質の豊富な本体として、ペット用レトルト処理乳を用いるとともに』、『前記ペット用レトルト処理乳を115?118℃温度に加熱し、レトルト処理する』、『前記レトルト処理乳を含む乾燥したものとなす』」は本願発明29の「ペットの食餌にレトルト処理乳を含む乾燥製品」に相当する。
e 上記c及びdから、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明29の構成となすことは、当業者が周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。
f 効果について
本願発明29の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知事項の奏する効果及び引用例に記載された事項から当業者が予測できた程度のものである。
g まとめ
したがって、本願発明29は、引用例に記載された発明、周知技術1、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)小括
上記(2)アないしウのとおり、本願発明1、本願発明25及び本願発明29は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1、周知技術2、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 公知・公然実施について
(1)本願明細書には、以下アないしウが記載されている。
ア「【0019】
通常、乳の組成は、全粉乳、水、及びラクターゼを含む。補助的なカルシウムを含めて、総カルシウム含有量を乾燥物ベースで約0.05%?約2%にすることもできる。微量成分には、カゼインナトリウム及びスクロースが含まれよう。家畜の食餌に加えることのできる乳の例は、Felix(登録商標)キャットミルクである。Felixキャットミルクは、ヨーロッパでNestle Purina PetCare Companyによって販売されている。」、
イ「【0021】
本発明の一実施形態では、動物に与える乳は、レトルト処理工程にかけてある。そのような工程の一例では、乳の100g容器を、約5分?約12分間かけて少なくとも115℃(250°F)の温度に加熱する。」、
ウ「【0026】
年齢が4才?17才の間の13匹の標本ネコを試験に割り当て、試験は、完全クロスオーバー設計として実施した。割り当てられる食餌治療群は、1)Pro Plan(登録商標)ドライキャットフードのみ、及び2)ドライPro Plan(登録商標)+Felixキャットミルクとした。Pro Planドライキャットフードの製造元は、Nestle Purina PetCare Companyである。ネコに、割り当てた食餌をクロスオーバーの各期につき21日間与えた。乳投与期には、ネコにドライフードを与えてエネルギー所要量を賄い、毎日2袋のキャットミルクを与えた。各袋は、約130?150グラムの乳を含んでいた。水はいつでも利用でき、水分摂取も記録した。ネコは、試験期間のあいだ個々のステンレス鋼製ケージに収容した。フード、乳、及び水分の摂取を毎日記録し、毎週体重をモニターした。」

(2)引用発明
上記(1)アから、「Felix(登録商標)キャットミルク」が製品としてNestle Purina PetCare Companyから販売されており、ネコを飼っている人は飼いネコに該「Felix(登録商標)キャットミルク」を与えることが行われているものと認められ、また飼いネコが家畜であることも当業者に自明であるから、請求人は以下の発明が、本願優先日前において公然知られ公然実施をされたことを自認するものである。

「家畜に、Felix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)製品を与えるステップを含む、方法。」(以下「引用発明3」という。)。

(3)上記(1)から、本願請求項1に係る「少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含む製品」の具体例として、本願明細書は、Nestle Purina PetCare Companyによって販売されている「Felix(登録商標)キャットミルク」を唯一挙げる。そして上記(2)から、本願明細書の記載から、請求人は「家畜に、Felix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)製品を与えるステップを含む、方法。」が、本願優先日前において公然知られ公然実施をされたことを自認するものである。そうすると、本願発明1は、引用発明3である「家畜に、Felix(登録商標)キャットミルク(Nestle Purina PetCare Company)製品を与えるステップを含む、方法。」を「家畜に、少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含む製品を与えるステップを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法。」と称したにすぎないものである。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明1と引用発明3とは、
「家畜に、少なくとも115℃の温度に加熱し、レトルト処理したレトルト処理乳を含む製品を与えるステップを含む、家畜における歯垢及び歯石沈着の予防方法。」である点で一致し、相違するところはないから、本願発明1は、引用発明3と同一である。したがって、本願発明1は、本願優先日前に外国において、公然知られ公然実施をされた上記引用発明3であるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができない。

6 むすび
上記3のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号並びに特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
上記4のとおり、本願発明1、本願発明25及び本願発明29は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1、周知技術2、周知事項及び引用例に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また上記5のとおり、本願発明1は、本願優先日前に外国において、公然知られ公然実施をされた上記引用発明3であるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2012-07-31 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-20 
出願番号 特願2006-507298(P2006-507298)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23K)
P 1 8・ 112- WZ (A23K)
P 1 8・ 111- WZ (A23K)
P 1 8・ 536- WZ (A23K)
P 1 8・ 537- WZ (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 理紗  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 星野 浩一
菅野 芳男
発明の名称 動物の健康を増進するための方法及び組成物  
代理人 清水 義憲  
代理人 池田 正人  
代理人 三上 敬史  
代理人 池田 成人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 黒川 朋也  

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