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審決分類 |
審判 査定不服 判示事項別分類コード:131 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1268199 |
審判番号 | 不服2011-21268 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-03 |
確定日 | 2013-01-04 |
事件の表示 | 特願2007-229020号「セメント混和剤及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月20日出願公開、特開2007-326779号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成15年2月26日(優先日:平成14年5月20日、出願番号:特願2002-144937号)に出願した特願2003-49887号の一部を平成19年9月4日に新たな特許出願としたものであって、平成22年8月9日付けの拒絶理由が通知され、同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年7月12日付けで拒絶査定され、これに対して同年10月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものであり、その後、特許法第164条第3項に基づく報告を引用した平成24年4月20日付けの審尋が通知され、同年6月21日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成23年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年10月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] (2-1)補正事項 平成23年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含み、補正前後の請求項1の記載は、次のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 ポリカルボン酸系重合体(A)とアミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)とを含んでなるセメント混和剤であって、下記セメント混和剤(a)又はセメント混和剤(b)である ことを特徴とするセメント混和剤。 (a)該ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が100>(A/B)≧4であり、かつ該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)がポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物であるセメント混和剤(a)。 (b)該ポリカルボン酸系重合体(A)が、下記一般式(5); -O-(R^(a)O)_(q)-R^(9) (5) (式中、R^(9)は、水素原子又は炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、80?130の数である。)で表される部位を有し、該ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が100>(A/B)≧4であり、 かつ該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)がポリアルキレンイミンであるセメント混和剤(b)。」 (補正後) 「【請求項1】 ポリカルボン酸系重合体(A)とアミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)とを含んでなるセメント混和剤であって、下記セメント混和剤(a)である ことを特徴とするセメント混和剤。 (a)該ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が16≧(A/B)≧4であり、 ポリカルボン酸系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が5000?100000であって、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)は、下記一般式(6)で表されるポリアルキレングリコールエステル系単量体であって、 かつ該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)がポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物であるセメント混和剤(a)。 【化1】 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子又は-COO(R^(a)O)R^(9)を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。nは、0?2の数を表す。yは、0又は1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である。」 (2-2)補正の適否 請求項1に係る補正の補正事項は、 (i)補正前の「セメント混和剤(a)又はセメント混和剤(b)」を、補正後の「セメント混和剤(a)」とし、 (ii)補正前の「(b)該ポリカルボン酸系重合体(A)が、下記一般式(5); -O-(R^(a)O)_(q)-R^(9) (5) (式中、R^(9)は、水素原子又は炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、80?130の数である。)で表される部位を有し、該ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が100>(A/B)≧4であり、 かつ該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)がポリアルキレンイミンであるセメント混和剤(b)。」を削除し、 (iii)補正前の「100>(A/B)≧4」を、補正後の「16≧(A/B)≧4」とし、 (iv)補正により、「ポリカルボン酸系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が5000?100000であって、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)は、下記一般式(6)で表されるポリアルキレングリコールエステル系単量体であって、」及び「【化1】 ・・省略・・ 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子又は-COO(R^(a)O)R^(9)を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。nは、0?2の数を表す。yは、0又は1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である。」を付加するものである。 ここで、 (i)、(ii)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「セメント混和剤」について、「セメント混和剤(a)又はセメント混和剤(b)」の一方の「セメント混和剤(b)」を削除して「セメント混和剤(a)」のみに限定するものであり、 (iii)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「(A/B)」について、これの範囲を「100>(A/B)」から「16≧(A/B)」に狭く(限定)するものであり、 (iv)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「セメント混和剤(a)」について、これの構造式等を具体的に限定するものであり、 かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、請求項1に係る補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的にするものである。 そして、願書の最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、「【0079】 【化5】 【0080】 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子又は-COO(R^(a)O)R^(9)を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。nは、0?2の数を表す。yは、0又は1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である。 上記一般式(6)における-(R^(a)O)-で表されるオキシアルキレン基、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であるqとしては、一般式(2)と同様である。 【0081】 上記R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であるqは、1?300の数である。qが300を超えると、単量体の重合性が低下することになる。減水性に優れたセメント混和剤を得るためには、qの範囲としては40以上が好ましく、また、300以下が好ましい。より好ましくは50以上であり、また、200以下である。特に好ましくは80以上であり、また、130以下である。 上記R^(9)は、一般式(2)におけるR^(5)と同じものが好ましい。」 「【0160】 【表3】 」との記載及び図示・表示があり、これらからして、請求項1に係る補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるので、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満足するものである。 (2-3)独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2-3-1)本願補正発明 本願補正発明は、上記(2-1)において示した補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 (2-3-2)引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用した特開2000-63164号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載及び図示がある。 (a)「【請求項1】 ポリアルキレンイミン化合物(A)とポリカルボン酸(B)とを含む重合体組成物。」 (b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はセメント混和剤に関する。詳しくは、ポリアルキレンイミン化合物とポリカルボン酸系分散剤とを含むセメント混和剤であり、高い減水性を達成でき、かつポリカルボン酸系分散剤に特有の凝結遅延性を改善したセメント混和剤に関する。」 (c)「【0019】ポリカルボン酸(B)の例としては、下記の<1>から<6>の様なものをあげることができる。 【0020】<1>アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体および必要に応じて共重合可能な単量体を共重合して得られる重合体を用いることができる。例としては、一般式(1) 一般式(1) 【0021】 【化1】 【0022】(R^(1)は水素またはメチル基を表し、R^(2)Oは炭素数2から4のオキシアルキレン基を表し、R^(3)は炭素数1から22のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニル基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数をであって、1から300の数を表す。)で示されるアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体および一般式(2) 一般式(2) 【0023】 【化2】 【0024】(R^(4)は水素またはメチル基を表し、M^(1)は水素、一価金属、ニ価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。)で示される(メタ)アクリル酸系単量体および必要に応じて共重合可能な単量体を共重合して得られる重合体があげられる。」 (d)「【0041】前記<1>、<2>に示したポリカルボン酸(B)の重量平均分子量は5,000?500,000のものを用いることができるが、好ましくは10,000?100,000、さらに好ましくは15,000?50,000である。重量平均分子量の範囲が5,000?500,000の範囲を外れると高い減水性能とスランプ保持性能を得ることができない。」 (e)「【0043】ポリアルキレンイミン化合物(A)とポリカルボン酸(B)との混合比率(A/B)は1/99?99/1(重量比)であることが好ましい。」 (f)「【0059】ポリカルボン酸(B)として、(B-1)?(B-3)を用いた。(B-1)は(株)日本触媒製ポリカルボン酸系分散剤(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、重量平均分子量:22000、カルボキシル基のミリモル数:1.85ミリモル/g)を用いた。」 (g)上記(c)の【化1】で示される一般式(1)のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体は、ポリアルキレングリコールエステル系単量体であるということできるので、引用例には、「ポリアルキレングリコールエステル系単量体」が記載されているということができる。 上記(a)ないし(f)の記載事項及び上記(g)の検討事項より、引用例には、 「ポリカルボン酸(B)とポリアルキレンイミン化合物(A)とを含んでなる下記セメント混和剤。 該ポリカルボン酸(B)と該ポリアルキレンイミン化合物(A)との質量比(B/A)が99/1>(B/A)>1/99であり、 ポリカルボン酸(B)は、重量平均分子量が10000?100000であって、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体(例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)及び(メタ)アクリル酸系単量体(例えば、メタクリル酸)及び必要に応じて共重合可能な単量体を共重合してなり、該アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体は、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールエステル系単量体であって、 かつ該ポリアルキレンイミン化合物(A)が『アルキレンオキシドを付加重合したポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン』であるセメント混和剤。 【化1】 上記一般式(1)中、R^(1)は、水素又はメチル基を表す。R^(2)Oは、炭素数2から4のオキシアルキレン基を表す。R^(3)は、炭素数1から22のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニル基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1?300の数である。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が開示されている。 (2-3-3)対比・判断 本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。 ○引用例記載の発明の「ポリカルボン酸(B)」、「ポリアルキレンイミン化合物(A)」、「セメント混和剤」、「(B/A)」、「重量平均分子量」、「アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体(例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)」、「(メタ)アクリル酸系単量体(例えば、メタクリル酸)」、「一般式(1)」、「水素」、「R^(1)」、「R^(2)」、「R^(3)」、「n」、「『アルキレンオキシドを付加重合したポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン』」は、 本願補正発明の「ポリカルボン酸系重合体(A)」、「アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)」、「セメント混和剤」又は「セメント混和剤(a)」、「(A/B)」、「重量平均分子量(Mw)」、「ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)」、「不飽和カルボン酸系単量体(b)」、「一般式(6)」、「水素原子」、「R^(11)」、「R^(a)」、「R^(9)」、「q」、「ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物」にそれぞれ相当する。 ○引用例記載の発明の「含んでなる下記セメント混和剤」は、本願補正発明の「含んでなるセメント混和剤であって、下記セメント混和剤(a)である、セメント混和剤」に相当する。 ○引用例記載の発明の「質量比(B/A)が99/1>(B/A)>1/99であ」ること、つまり、「質量比(A/B)が99/1>(A/B)>1/99であ」ることと、本願補正発明の「質量比(A/B)が16≧(A/B)≧4であ」ることとは、「質量比(A/B)が16≧(A/B)≧4であ」るという点で重複する。 ○引用例記載の発明の「アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体(例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)及び(メタ)アクリル酸系単量体(例えば、メタクリル酸)及び必要に応じて共重合可能な単量体を共重合」すること、つまり、「ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)及び必要に応じて共重合可能な単量体を共重合」することは、本願補正発明の「ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)を必須とする単量体成分を共重合」することに相当する。 ○引用例記載の発明の「【化1】 上記一般式(1)中、R^(1)は、水素又はメチル基を表す。R^(2)Oは、炭素数2から4のオキシアルキレン基を表す。R^(3)は、炭素数1から22のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニル基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1?300の数である」こと、つまり、「【化1】 ・・省略・・ 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1から22のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニル基を表す。R^(11)は、水素原子又はメチル基を表す。R^(a)は、炭素数2から4のアルキレン基を表す。qは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である」ことと、本願補正発明の「【化1】 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子又は-COO(R^(a)O)R^(9)を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?18のアルキレン基を表す。nは、0?2の数を表す。yは、0又は1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である」こととは、「【化1】 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子、及び、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?4のアルキレン基を表す。nは、0の数を表す。yは、1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である」という点で重複する。 上記より、両者は、 「ポリカルボン酸系重合体(A)とアミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)とを含んでなるセメント混和剤であって、下記セメント混和剤(a)である、セメント混和剤。 (a)該ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が16≧(A/B)≧4であり、 ポリカルボン酸系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が10000?100000であって、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該ポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)は、下記一般式(6)で表されるポリアルキレングリコールエステル系単量体であって、 かつ該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)がポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物であるセメント混和剤(a)。 【化1】 上記一般式(6)中、R^(9)は、炭素数1?20の炭化水素基を表す。R^(10)及びR^(11)は、同一若しくは異なって、水素原子、及び、水素原子又はメチル基を表す。R^(12)は、水素原子を表す。R^(a)は、同一又は異なって、炭素数2?4のアルキレン基を表す。nは、0の数を表す。yは、1を表す。qは、R^(a)Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1?300の数である。」という点で一致し、相違点を見いだすことができない。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。 (2-3-4)補正却下についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (3-1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記2.(2-1)で補正前として示したとおりのものである。 (3-2)引用例記載の発明 引用例記載の発明は、上記2.(2-3-2)で示したとおりである。 (3-3)対比・判断 上記2.(2-2)で示したように、請求項1に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的にするものであることから、本願発明は、本願補正発明を包含している。 そうすると、本願補正発明が、上記2.(2-3-3)で示したように、引用例に記載された発明であるので、本願補正発明を包含する本願発明も同じく、引用例に記載された発明である。 次に、請求人は、回答書において「A/Bの下限値を4以上とすることの臨界的意義については、本願明細書の実施例、比較例や上述した平成22年11月16日付け、及び、平成23年10月3日付けにて提出した実験データによって示されているものと確信します。」との主張をしているので、この点について検討する。 平成23年10月3日付けにて提出された実験データにおいて、実証例1、追加比較実証例1、追加比較実証例2のそれぞれは、「重合体5」及び「B-N-1」を用い、(A+B)を0.17にするという点で一致し、(A/B)が4.7、1.8、1.4という点で相違しており、この場合に、追加比較実証例1(A/B=1.8)及び追加比較実証例2(A/B=1.4)に比べて実証例1(A/B=4.7)の流動性が良好になることが示されている。 しかしながら、これは、「重合体5」及び「B-N-1」を用いる例における結果であるとみることもでき、そうである以上、A/Bの下限値の4に臨界的意義があることについて、上記の例のみをもって、本願補正発明の「一般式(6)で表されるポリアルキレングリコール系不飽和単量体(a)及び不飽和カルボン酸系単量体(b)を必須とする単量体成分を共重合してなり、重量平均分子量(Mw)が5000?100000であるポリカルボン酸系重合体(A)」及び「ポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物である、アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)」を用いるすべてにまで一般化するには、根拠が不十分であると言わざるをえない。 したがって、請求人の主張を採用することはできない。 (3-4)むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるので特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし5に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-01 |
結審通知日 | 2012-11-06 |
審決日 | 2012-11-19 |
出願番号 | 特願2007-229020(P2007-229020) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C04B)
P 1 8・ 131- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永田 史泰 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
斉藤 信人 真々田 忠博 |
発明の名称 | セメント混和剤及びその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |